ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回は二本立て。とは言っても時間を進めたかったので書いたとも言えます

またぐんちゃんが汚染されます。

で、関係ない事なんですけどFGOの今回の高難易度、百ターンくらい耐久する羽目になりクッソ疲れました。またあるとしたらここまで耐久するようなクエストにせずにワンパンで消し飛ばさせてほしいものです。


2/19に園子IFその2を上の方に纏めました。


風先輩卒業祝い&春休みの園子さん家

『風先輩、卒業おめでとー!!』

「ありがとみんなー!」

 

 三月も下旬に差し掛かったとある日の勇者部室。部員全員が集まった部室の中で風は卒業証書が入った丸筒を片手に後輩達からの祝いの言葉に笑顔を浮かべていた。

 今日は讃州中学の卒業式。三年生である風は満を持して卒業となり、風も例外なくこの讃州中学から卒業となる。四月一日までは一応讃州中学に在籍しているという形にはなるのだが、それも些細な事だ。

 

「いやー、慌ただしかった中学生活もこれで終わりとなるとなんか感慨深いわねぇ」

「特にわたし達は慌ただしいってレベルじゃありませんでしたからね~」

 

 四月からバーテックスと戦ってついこの間は天の神まで打倒した。ほぼ十か月もの間勇者というお役目から切っても切り離せない位置に居たからこそ、この波乱の一年を乗り切って卒業したという事実は風の胸にはどこかジーンときた。

 まぁ卒業した所で恐らく結構な頻度でこの校舎に足を運ぶことにはなるのだが。

 なので校舎の中がもう見れない、とかそういう気持ちは一切なく、後輩達にも会えないという訳ではないので風の気持ちは結構軽い。

 

「それじゃあ風先輩の卒業祝いって事で昼飯も兼ねて食事会といきますか!」

「いっぱい作ってきたからみんなでいっぱい食べてね」

「持ってくんの大変だったけどな」

 

 そして勇者部室で開かれる昼食を含めた食事会。テーブルの上に所狭しと並べられたうどんや骨付き鳥を始めとした食事の数々。そしてケーキもかなり豪勢な物がドンっと置かれた。

 ちなみに大量のうどんは美森が、骨付き鳥は銀が、ケーキはハゲ丸が作ってきた。そしてその他の料理は三人共同で作った力作だ。ちなみに、千景もちょっとだけ手伝った。

 

「しっかし、こうやって後輩に囲まれて卒業を祝われるなんて思ってもいなかったわ。寧ろちょっと恨まれてもおかしくないって覚悟だったし……」

『あぁ……』

 

 風が骨付き鳥を食べながら感慨深くそんな事を呟いた。

 風は昨年から色々と裏でやらかしていた人間だ。勇者というお役目を隠したまま勇者達を勇者部へ誘い、そして過酷な運命へと導いた。きっとその過酷な運命が他に向かったとしても、防人としての役割が回ってきていた。

 つまり風はどう転んでも部員達を命懸けの戦いへと誘う結果となっていた。それが分かっているから勇者達は風の言葉に何とも言えない表情で頷いた。

 確かに過酷な運命だったが、先代組と夏凜は風が居なくても命懸けの運命を歩む事を既に自分達で決めていたし、友奈と樹はあの苦しかった日々を嫌な思い出とは思っていない。なので風に対する一切の恨みは持っていないのだが……しかし、風には妹を含めた初期メンバーからは恨まれてもおかしくない行為をしたという自覚があるのだ。

 故にそんな事を口にした。恨まれていないと分かっているから軽く冗談半分で。

 

「……なにか、したの?」

「ちょっと、な。まぁ本人がそう思ってるだけだから気にしないでいい案件だよ」

「まぁ、フーミン先輩もお仕事だったからね~。恨まれ役を買って出ただけだから~」

「でも、そのお陰でいい方向に物事は傾きましたから。過程がどうであれ結果が良けれ全て良し、です」

「ほんと、アタシにゃ勿体ないくらいの後輩よ、あんた等は」

 

 寧ろ風だからこそここまで着いてきたのだが……どうやら本人にはその自覚がないらしい。

 なんやかんやで色々と抜けていたり詰めが甘かったりアホだったりする所がある先輩だが、しっかりと人を纏め、ケアもしっかりとしていて、姉御気質があるおかげで部員達と早いうちに打ちとけることもできた。

 彼女でなければきっと勇者達の戦いはここまでいい方向には進まなかった。全体的に見ればプラス方向に全ては進んでいるのだから彼女は何気に勇者部一の貢献者……なのかもしれない。

 

「まぁそんなしんみりした話は置いておくとして! 今日は気が済むまでどんちゃん騒ぎするわよ!」

「先生には許可貰ってるから陽が落ちるまではここを使ってて大丈夫だよ!」

「料理もあるしゲームもある! 飲んで食って遊ぶぜ!!」

 

 友奈と銀の声におー! と勇者部の声が重なり、そして風の卒業祝いはいつもの数割増しで喧しく進んでいくのであった。

 ちなみに、途中で挟まったゲーム大会は全てにおいて千景の圧勝だったというどうでもいい話もここには付け加えておく。何気に彼女もこの短い期間で大分染まってきているのであったとさ。

 

 

****

 

 

 風の卒業が終われば今度は在校生の修了式。それも終わり、とうとう讃州中学の在校生たちは春休みを迎える事となった。

 春休みには目立った課題も無く、次の新年度に備えて遊ぶもよし、寝るもよし、節度をしっかりと守れば何してもよしな長期休みが待っている。そんなとある日の園子の部屋。その日は美森と銀、それからハゲ丸が園子の部屋に訪れて園子、千景と共に台所に立っていた。

 どうしてこうなったのかは実に簡単。千景が本格的に料理を覚えたいと言ったからだ。

 西暦の時代に居た頃は料理なんてする気にもならないほど精神的に疲弊して、こっちに来てからはなんやかんやで周りの人たちに甘えっきりだった。だが、安芸先生から家庭科の一環として料理を習い始めてから千景の中で少しだけ意識に変化が生まれ、ついでに風の汚染がいい感じにマッチした結果、女子力を高めるには料理からという思考が完成した。

 結果、千景は料理のできるハゲ丸に料理を教えてほしいと頼み、ハゲ丸はそれを了承。ついでに色々とレパートリーはあった方がいいし、園子に教える料理も一緒に作ろうという事で美森と銀も混ざった五人での料理教室が始まったのだった。

 初めて汚染がいい感じに動いた瞬間である。

 

「そうそう、食べやすいなって思う大きさに野菜を切っていくんだ。ちょっと失敗しても気にせずにな」

「ほ、包丁って……結構、難しい……」

「まぁ最初はな。慣れれば見なくても切れるようになっちまうもんだ。あ、園子、焼きそばはもうちょっと……そうそうそんな感じで焼いてけばいいから」

「やっぱりそのっちは教えればスポンジのように吸収していくわね」

「園子さんゆえに~」

 

 今日作るのはカレーと焼きそば。明らかにできあがるスピードの比率がおかしいが、焼きそばは量をかなり少な目に作って全員でちょっとだけ食べて、残りはカレーをみんなで食べるという形で昼食を終わらせる予定なのでこれぐらいのペースさで丁度いい。

 千景が苦戦しながら野菜を切っている横では園子はせっせせっせと焼きそばを作っていく。味付けは銀が自分の家でよく作っている三ノ輪家特製の味付けだ。

 ハゲ丸が千景の横で野菜を切るお手本を見せ、美森は今の所は園子と千景の様子を見つつどっちかのアシストに入る感じだ。彼女の和食教室は夕食時なので本番はもうちょっと先だ。

 千景が悪戦苦闘しながら何とか怪我なく野菜を切り終えた。一応安芸先生とのうどん作りで時々包丁は握っていたが、軽く具材を切る程度だったので本格的に包丁を使って野菜を切るというのは初めてだった。

 

「ってかちーちゃん、包丁使うの上手いな。包丁握って一か月も経ってないのにここまで綺麗に切れるのは凄いぞ」

「そ、そんな、こと……」

「アタシなんて指を落としそうになったからそれに比べりゃ全然上手い方だっての。な、須美」

「ふっ。私は手の甲を思いっきり切り裂いたわ。めっちゃ痛かった」

「俺なんて大根切る時に上手く切れずに思いっきり刃を握って包丁を引っこ抜いたから手のひらが思いっきり切れたぞ。おもっくそ泣いた」

「りゅ、流血沙汰が……」

「根本はぶきっちょさん集団だからね~」

 

 銀の指を落としかけると言うのは危ないと思う程度で時折起きる事だとしても、残りの二人はもう軽い事故に発展するような物なので千景の言葉が正しいのであって、それを特に問題と思っていないこの四人の感覚がマヒしてるだけだ。

 体に風穴があいたり腕欠損したりブラックホールになったり半ミイラ状態になっていたが故にもう感覚がマヒしているのだ。決して千景がオーバーリアクションをしているわけではない。

 そんな事は置いておき、園子が味付けの最終段階に入り、千景は鍋にサラダ油を引いて鍋で肉と野菜を炒め始める。

 

「……鍋で炒めて、いいの?」

「そういうもんだからな。フライパンで作る時ってのもあるけど、その時はフライパンが鍋代わりになる」

「まぁこれが一番オーソドックスなカレーの作り方だな。そうだな……今度作る時は無水カレーなんてどうだ?」

「おっ、いい事言うじゃん、銀。キャンプで無水カレーとか作ったらきっとモテモテだぞ、ちーちゃん」

「特に、モテるとかは……考えてない、けど……」

 

 だが、彼女の頭の中では誰かとキャンプなどに行った際ドヤ顔で余り物の食材で絶品な料理を作り仲間からちやほやされる妄想が流れていた。

 もしそうやってしっかりと料理ができたのならきっとカッコいい事間違いなしだろう。そんな事を思いつつ野菜を炒めていると、どうやら園子の方の焼きそばが完成したようで、一人前を五等分したちょっとだけの焼きそばがそっと小皿に乗せられて差し出された。

 

「ちーちゃん、食べてみて~?」

「うん……いただきます」

「んじゃその間は俺が火を見とくわ。あ、焼きそばうまっ」

「うん、アタシの焼きそばそっくり」

「……園ねぇ、美味しい」

「えへへ~」

 

 片手間で野菜を炒めているハゲ丸を始めとした全員が園子の作り上げた焼きそばを絶賛した。教師もよかったし生徒もよかった結果、園子の作り上げた焼きそばは大成功とも言える完成度を誇っていた。

 これは腕を越されたかもな、なんて笑いながら言う銀だったが、二年前は一人だけ料理ができずにちょっとだけいじけかけていた彼女がしっかりと料理ができるようになったのを見て満足感が心を満たした。二年以上経ってしまった約束がようやく果たされたようで。

 じゃあ今度はあの料理を教えるかな、と思いながら笑顔の園子と肩を組み、思いっきり頭をわしゃわしゃと撫でて合格を表す。

 

「こら、二人とも。台所であんまり騒がないの」

『ごめんなさ~い』

 

 そしてかつてはツッコミ役だった美森にお小言を貰って二人で謝りながらも笑う。

 かつてと変わらない感じで笑えるこの当たり前を噛みしめつつ、とりあえず今は新しく見る事となった生徒の方に集中する事にする。

 

「そんじゃ、この中に後は水を入れて、沸騰させる」

「えっと……水を入れて……火加減を調節して……にぼしとサプリを入れて……」

「おっとそれは止めようか。とりあえずにぼしとサプリはまた今度な」

「完全食……」

「それはあの赤いヤツの精神汚染だから忘れような。で、水を入れたら暫く待つ…………よし、沸騰したな。なら後はアクを取りながら弱火から中火で煮込むんだ」

「なん、分?」

「十五分くらいだな」

「……長い」

「カレーなんてそんなもんさ。アク取りと煮込むのは俺がやっとくから、ちーちゃんは休憩してていいぞ。アク取りなんて誰でもできるからな。お前らもあっちで待ってていいぞ」

 

 カレーも完成間近、という所でハゲ丸は後ろで待機していた三人と千景に休んでいても大丈夫だと告げ、自分で面倒なアク取りと火を見る係を引き受けた。

 その言葉に甘え、一応千景はアク取りの様子をちょっとだけ見てからルーを入れるまでの間、若干の休憩をする事となった。

 

「あ、そうだ園子。これ、約束の漫画」

 

 その休憩の間に銀が園子に紙袋に入った漫画を差し出した。中身は全て少女漫画であり、最近になってようやく完結した結構長めで人気な少女漫画だ。前々から園子が読んでみたいと言っていたので完結したら貸すという約束をしていたのでその約束を果たすために銀が持ってきたのだ。

 

「ありがと~ミノさん。今日の夜に読んでみるね~」

「どうせなら今読んじまったらどうだ? どうせカレーができあがるまでは残り三十分近くあるし」

「うーん……じゃあそうしちゃうね~」

「……歴史物じゃないのね」

「それは今度貸してやっから」

 

 約一名、紙袋の中身を見てテンションを下げたのが居たが、千景の興味は紙袋の中へと向けられていた。

 西暦の時代には勿論漫画はあった……それどころか神世紀よりも遥かに漫画家が多いだけあってその数は数倍なんて生易しい物ではなかったが、千景はあまり漫画を読んでこなかった。

 単純にゲームをする方が好きだったからなのだが、この時代に来てから発行されている漫画雑誌等の数が驚くほど少なく、コンビニの本棚が同じような本ばかりだったのを見て驚いた経験がある。そんな世界の少女漫画だ。

元々ゲームの方で乙女ゲーなども嗜んでいたために気にならないわけもなく。千景の視線が紙袋の方に吸われているのを見た銀がちょっとだけニヤッと笑うと、そっと自分の携帯を千景に差し出した。画面には電子書籍の漫画が写されている。

 

「千景、これアタシのオススメなんだけど読んでみてくれよ」

「え……? いい、の?」

「いいっていいって」

「……それじゃあ、お言葉に甘えて」

 

 千景が携帯を受け取ってソファに座る園子の隣にちょこんと座って漫画を読み始めたのを見てからガッツポーズをした。

 布教完了、と。

 

「……まぁこの程度ならそのっちも何も言わないわよね」

 

 サラッと千景を少女漫画脳に汚染しようとしている銀だったが、そんな彼女を見て美森は止める事無く携帯に入っている友奈の写真を見ながら至福の時を過ごす事とし、銀は次は何を布教しようかと頭の中で次に千景に読ませる少女漫画を選定していた。

 ちなみにカレーはしっかりと完成してみんなで食べた。かなり美味しかった。

 

 

****

 

 

 夕食も教えてもらう予定だったので勿論三人ともまだ園子の家に居て暇潰しがてらゲームなどをしてワイワイと遊んでいるのだが、美森と園子がFPSゲームで千景でないと追いつけない程の異次元戦闘を繰り広げている中、千景がちょいちょいと銀の袖をつまんで引っ張った。

 リアルスナイパー美森と才能の塊園子による異次元のバトルを見ていた銀はすぐそれに反応して千景の方を向くと、千景は銀の携帯を手にしたまま銀の方を見ていた。ちなみにその横には半分ほどが無くなったにぼしの袋がある。

 

「あ、あの……これ、面白かったわ」

「おっ、そうかそうか」

「それで、あの……他に面白い、漫画とか……ない、かしら……?」

「あるぞあるぞ! そんじゃあ次は……これでも読んでみな。きっとハマるから!」

「えぇ……ありがとう、銀さん」

「……なんか銀さんって言われるとアタシが銀髪のちゃらんぽらん侍だな、ズラ」

「ズラじゃない、桂だ。あ、違った。藤丸だ」

 

 二人の即席漫才を聞きながら千景はまた本の世界に沈んでいった。

 この日から千景は少女漫画を好んで読む傾向になり、自分のお小遣いをゲーム以外にも漫画に費やしたりどこの誰かから聞いたのか分からないが恋愛小説をよく読むようになったのだが……まぁその程度なら普通の女の子によくある事だろうと園子様は特に何も言わず千景の買った漫画を読ませてもらうのだった。

 ちなみに、この日の画面を上下分割したFPSバトルはこれまた千景がスナイパーライフルを八割以上頭か胴体にぶち当てて即死をもぎ取るという若干頭がおかしい成績を残してぶっちぎりの優勝となるのであった。




という事で今回はミノさんからの汚染、少女漫画が好きになってちょっと乙女チックな思考回路になるでした。汚染が悪影響だけを及ぼすとは思うでない。

何気にフーミン先輩の汚染はちょっといい方向にぐんちゃんの意識を変えてくれた模様。家庭的になって某青いクソレズの再来みたいになれるよ! やったねぐんちゃん!! 

これで汚染は現在クソレズ化(美森)、にぼっしー化(夏凜)、女子力魔神化(風)、乙女チック化(銀)、図太い(勇者部全体)となりました。クソレズ化はまだ形を潜めてますが、にぼっしー化と女子力魔神化はちょくちょく出てきている様子。

のわゆ編ですが、もう作中時間なんてのわゆが終われば花結で適当な所で固定されるんだし知った事かという結論に至ったので恐らく夏頃がタイムリミットとなり、そこからがのわす編スタートとなります。そこでロリぐんちゃんとはお別れ……になると思います。

あと汚染についてですが、ぐんちゃんにプラスになる汚染を一個とどっちにもならない汚染を一個……まぁゆーゆと樹ちゃん後輩なんですが、彼女らの汚染で終了となると思います。そのっちとハゲの汚染は……その時の気分次第ですかね、えぇ。でも二人の汚染はくだらない汚染となること間違いなしですね。

さて、あとがきで怪文書を書いたところで今回はこれでおしまいです。実はちょっとずつゆーゆIFが思い浮かんできていたりしていなかったり。もしかしたら次に書くIFのアンケートをハーメルンの新機能で取るかも。

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