ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回は久しぶりに防人組とハゲの話です。

あと一日遅れましたが、友奈ちゃん誕生日おめでとう!!


防人&巫女&ハゲ

「今日は楠が、来る?」

「はい。藤丸先輩のお菓子が食べたいみたいで」

 

 ある日の藤丸家。もうすっかり居候兼座敷童として違和感がなくなった亜耶としずくの二人は、ソファに座って今日の予定……というよりも来客について話していた。

 しずくの膝の上にすっぽりと収まって抱かれている亜耶はしずくと一緒に昼ドラを見てご満悦な様子。

 ハゲ丸が千景を膝の上に乗せていたのを見てからしずくも亜耶なら乗せれるかも、と思い乗せてみたところジャストフィット。

 それからと言うもの恥ずかしがる亜耶を膝の上に乗せて共にテレビを見るのが日課となった。

 なんやかんや亜耶がいい感じに温いので亜耶の頭の上に顎を乗せて抱いているといい感じに寒くもないし暑くもないのである。軽いし。

 そんなお二人の今日の予定は、昼過ぎ暗いから遊びに来る芽吹の出迎えだ。

 

「……最近、来ることが多い」

「なんやかんや言ってますけど、やっぱりしずく先輩にも会いたいんだと思いますよ? しずく先輩、あんまり家から出ませんから」

「多分、違う……」

 

 確実に亜耶に会うために来ているのだが、そこら辺理解していない辺り少し謙虚な所がある。まぁ普通、そんな事を思ったらナルシスト化一直線なので何とも言えないが。

 だが、芽吹の目的にはしずくの様子を見るというのも勿論含まれている。何せ、しずくもなんやかんやで防人の中ではマスコットに近い枠だった。そんなしずくに偶には……というのも芽吹にはある。

シズクはどこに放り込んでも生きていけそうなレベルには腕白だが。

 

「……というかしずく先輩、流石にこの季節は暑くありません?」

「いい感じに温い……」

 

 しずくはいつも通り29とプリントされたパーカーと謎の生物がプリントされたTシャツを着ているため、暑いのではないかと亜耶は心配したのだが、どうやら心配はご無用だった様子。

 とろーん、といい感じに眠気も襲ってきたのか顔が蕩けているしずくを下から見て苦笑した亜耶は特に抵抗する事なくテレビを見る。

 そろそろしずくが本格的に寝落ちしかけたとき、ハッとしてしずくが目を覚ました。

 

「しずくが寝ちまった。こりゃ暫く起きねぇな」

「あれ? シズク先輩?」

「おー、国土。ってか何だこの状況」

 

 と思ったらどうやら人格が交代したらしく、出てきたシズクが今の自分の状況に困惑していた。

 人格が違う故に記憶まで違うという二重人格者としての悩みにシズクは一瞬頭を抱えたが、まぁいいやという事でとりあえず温い亜耶の頭頂部に顔を埋めた。

 

「ひゃわーっ!?」

 

 そしてびっくりした亜耶の変な声が上がった。思いっきり息を吸われてかなり変な感触が走り亜耶が腕をバタバタさせて逃げようとするが悲しいかな。しずくの肉体はシズクも使うが故に普通に鍛えられてるため亜耶では抜け出せない。

 

「あー……国土ってすっげぇ安心する匂いがする……シャンプー何使ってんだ?」

「シズク先輩のと同じですぅ!」

「そーだったそーだった。風呂はしずくに任せっきりだしなぁ……」

 

 ぷんすかと怒る亜耶と悪かったと謝るシズク。藤丸家に居候してからはシズク自身も自身で楽しむようになり笑顔が増えた。

 シズクは戦うための人格だ。そんな彼女の笑顔が増えたということはそれだけ彼女達は充実してるということ。

 シズク自身、丸くなったなぁと思いながらも亜耶の頭を撫でる。

 

「で、国土。今日の予定は?」

「……芽吹先輩が遊びに来ます」

「楠か。そういや天の神戦以来会ってねぇな。久々に話すか」

 

 少し不機嫌な亜耶の頭を撫でながらもシズクは最後に見た芽吹を想起する。

 安芸先生を一緒に撃っていた。ちょっと嫌な記憶が蘇ったが、まぁシズクに私物なんて無かったので特に問題はなかった。居候先も手に入れたし。

 亜耶としばらくボーッとしてると、ピンポーンとインターホンが鳴った。どうやら芽吹が来たらしい。

 

「あっ、はーい!」

 

 一瞬にして機嫌を取り戻した亜耶がパタパタと玄関へと駆けていき芽吹を迎えた。

 入ってきた芽吹はシズクを見てすぐにどっちのしずくかを理解すると片手を上げて気さくに挨拶をした。

 

「久しぶりね、シズク。天の神戦以来かしら? 元気してた?」

「おう。お前も元気そうだな」

「えぇ。でもあなたは少し筋肉が落ちたんじゃない?」

「戦う必要がなくなっちまったんだ。そりゃ筋肉も落ちる」

 

 けたけたと笑うシズクであったが、一応多少は筋肉の維持のためにしずくから体を明け渡された間に筋トレなどはしている。

 そんな訳で多少の筋肉は残れど筋肉は落ちた。脂肪が付かない程度の筋トレなので実はシズクは痩せていたり。

 亜耶がお茶とハゲ丸が先んじて作って冷蔵庫に入れておいたお菓子を持って来るために台所にパタパタと駆けていったのを尻目に二人は改めて久しぶりに会話を交わす。

 

「そういえば、シズクってちょっと前から結構自由に人格を入れ替えてたわよね。確か自分の意志じゃ入れ替わらないんじゃなかったかしら?」

「まぁ、最近はよく入れ替わってたせいでそこら辺が上手い感じにできるようになってな。一応しずくの方が強いけど、俺から主導権を奪う事もできるし、逆もまた然りだ」

「結構便利よね。将来役に立ちそう」

「就職とかしたら面倒なの全部押し付けられそうな気ぃしかしねぇわ」

「いいじゃない。面倒からしずくを守ってあげれば」

「こりゃどっちが主人格なのやら……」

 

 あははと笑う二人だったが、ふとシズクの瞼が一瞬だけ落ちた。どうやらしずくが眠りについたのは一瞬だけらしく、シズクが体を使えるタイムリミットがもう迫ってきていた。

 

「あ、そろそろしずくが目を覚ますみたいだ。んじゃ、楠。しずくの事よろしくな」

「言われなくても。久しぶりに話せて楽しかったわ、また会いましょう」

「おう、またな。しっかし、俺にも友人ができるなんざ、人生どう転ぶかわかんねぇな……」

 

 シズクがソファに座ったまま眠るように瞳を閉じ、次に彼女が目を開けばそこに居たのはシズクではなく主人格であるしずくだった。

 目を覚ましたしずくは状況確認のために左右に目線を配ってから芽吹を見つけると、ようやく自分が眠りについていた事を理解した。気が付けば膝の上の亜耶もいないし。

 

「楠……? おはよ」

「えぇ、おはようしずく。さっきまでシズクが表に出てきてたわよ」

「……そうみたい?」

 

 シズクにチェンジした事で左右に払われた前髪をいつも通りに戻すと、しずくは軽く背筋を伸ばした。

 

「……国土は?」

「お茶とお菓子を用意してくれてるわ」

 

 と言って芽吹が視線を向けた先には鼻歌を歌う亜耶がお茶を淹れていた。

 それを見てそこそこの時間、寝落ちしてシズクに体を明け渡したことを理解したしずくは一度だけあくびをすると、そういえば、と芽吹に見せるものがある事を思い出した。

 

「……そういえば、プラモ」

「あら、何か分からないところとかあった?」

「ううん……完成した。今持ってくる」

 

 と言ってしずくは自分の部屋へと向かうと、昨日の夜中にやっとこさ完成した。

 何せガンプラみたいにパチパチ組み立てれば完成、という訳ではなく接着剤で組み立てるかなり本格的なキットだったので、貰ってから毎日作ってもかなりの時間がかかった。

 そんな苦難の末にできたお城を手にしずくは戻ってきた。

 

「中々上手いじゃない。藤丸に教えてもらったの?」

「……藤丸は、ガンプラ専門だった、から……ほぼ独学」

「にしてはしっかり歪みなく組み上がってるし、塗装もできてるわね」

「塗装、は……手伝ってもらった」

 

 それはもう大変だった。

 ネットで作り方を調べて組み立てて塗装を手伝ってもらって……そうして作り上げた丸亀城。

 土台の方は手付かずではあるが、それでも城本体はしっかりとできている。芽吹視点から見ても初めて作ったにしては相当上手くできている程には。

 

「どう? 案外プラモ作りって楽しいでしょ」

「……それなり、に」

 

 楽しくなかったわけではない。むしろ完成した瞬間は作ってみて良かったとすら思ったほどだ。

 だが、そこに至るまでの過程……つまりランナーからパーツを切り離したり、プラモ用接着剤に四苦八苦したり、歪みをどうにかしたりという部分はやはり面倒に思ったり思い通りにいかずシズクが出てきかけたり。

 楽しかったのだが、笑顔でそう頷けないという微妙な感じ。それが今のしずくの心境だった。

 

「でも、初心者ならやっぱりガンプラの方がよかったかしら。BB戦士とかなら素組み程度なら十分程度で終わるし」

「……そっちの方がよかった」

「ちょっとテンション上がってたのと家に余ってたから押し付けただけなのよ。あまり怒らないでほしいわ」

 

 多分シズクならイイエガオで芽吹の胸倉を掴んでいた事だろう。実際の所、面倒な箇所は大抵しずくがシズクにバトンタッチしシズクにやってもらっていたから。主人格であるしずくの方が人格的な力は上なので明け渡してそっぽ向いておけばシズクからの干渉は防げてしまうのである。

 誰も居ない実家でならその後シズクが喚き散らして一人でどんちゃん騒ぎでも開催したのだろうが、生憎今は居候中の身なので深夜に喚き散らす事は出来なかった。

 

「というか藤丸は? 今春休みだから居るんじゃないの?」

 

 と、ここでふと芽吹が居候二人は居ても家主である藤丸家の面々が居ない事に気が付いた。彼の両親は大赦勤めで今とても忙しいため居ないのは理解できるが、藤丸が居ないのが少し気がかりだった。

 それに対してしずくが欠伸をしてから答えようとする前に戻ってきた亜耶が芽吹の前に紅茶とクッキーが乗ったお盆を持ってきながら質問に答えた。

 

「藤丸先輩は勇者部の活動でもうちょっとだけ外にいるみたいです。何でも今日は野球部の練習試合に助っ人として駆り出されているとか」

「野球部の助っ人? 初心者が入っても結果なんて変わらないんじゃないの?」

「それがそうとも言えないみたいなんです。藤丸先輩って勇者としての訓練で野球ボールを打つ訓練をしていたみたいで。そのお陰で結構打率はいいみたいですよ?」

「ボールを打つって……あぁ、もしかして反射神経を鍛えていたのかしら?」

「どうなんでしょう?」

 

 一応彼が防御特化の勇者だという事は防人も巫女も知っている事だ。そんな彼に反射神経が必要だという事は芽吹も考えればすぐに分かった。

 それにバーテックスは銃弾程の速度を持つ攻撃はしてこないが、プロ野球選手が投げる野球ボール程度の速度の攻撃はしてくる。それを身をもって理解しているからこそ、丁度それに近い速度のボールを打ち返す特訓はそこそこ有用だろうとも。

 あいつも結構大変なのねぇ、と芽吹は独り言ちながら亜耶が持ってきたクッキーを食べる。

 一口齧って口の中で味を確認すると、ふとクッキーの味がちょっと前に食べたハゲ丸のクッキーと違うのが分かった。どちらも美味しいが、どこか味に少しだけ違いがある。こちらの方が少し甘めだろうか。紅茶との相性が抜群だ。

 

「ん? これ、もしかして藤丸が作ったやつじゃないの?」

「あ、分かったんですか? 実はわたしが作ってみた――」

「さいっこうに美味しいわ。無限に食べられそうなくらいに」

「そ、そこまでじゃないですよ~……」

「……相変わらず国土にはダダ甘」

 

 しずくのジト目を華麗にスルーして亜耶が作ったクッキーを口に運ぶ。天使が作ってくれたクッキーは正に芽吹の好みの味だ。

 藤丸のクッキーは紅茶やコーヒー、その他客に出す飲み物となら大抵合うように作られているので亜耶のクッキーのように紅茶を飲むのに適している、ちょっと女の子好みの甘いクッキーではない。

 どちらも好きだが、芽吹はどっちかと言ったらこっちのクッキーの方が好きだ。

 

「実は昨日、藤丸先輩に教えてもらいながら作ってみたんです。なのでちょっと焦げてるのもありますけど……」

「別に問題ないわ。亜耶ちゃんの手作りならどんなものでも美味しいに決まってるわ」

「……藤丸の言ってた意味、分かったかも」

 

 青いのと同格だなぁ、とか呟いていた藤丸の言葉の真意が分かったような気がしたしずくだった。青いの、というのは分からないが確実にやべー奴という事だろう。何度もやべー奴と呟いていたのを聞いたし。

 明らかにぶつける愛と言うか何というかが重いのだが、亜耶は特に気にしていないのか大きすぎるお世辞に困ったように笑っているだけ。

 しずくが小さく溜め息を吐いて紅茶を一口飲むと、玄関の方から音が鳴った。

 

「たでーまー。あー、いい感じにくたびれたわ」

「あ、藤丸先輩。お帰りなさい」

「おかー」

「お邪魔してるわよ」

「おう、ただいま。あと楠さんもおひさ」

 

 どうやらハゲ丸が戻ってきたようだ。少し汚れた格好で顔だけを見せたハゲ丸は三人に顔を見せると、そのまま自分の部屋へと向かって行った。

 

『ちょっとシャワー浴びるからお菓子はもう少し待っててくれー』

「別に時間ならたっぷりとあるから気にしなくてもいいわよ」

 

 汗臭いし汚れているので先にシャワーだけを浴びてくる気らしい。ドタドタと藤丸が奏でる慌ただしい音を聞きながら芽吹は紅茶を一口口に含んだ。

 そして暫くガールズトークをしつつ時間を潰しているとハゲ丸は数分でちゃちゃっとシャワーを浴び終えると適当な部屋着に着替えた状態で三人の前に姿を見せた。

 

「いやー、なんとか最後に逆転ホームランでサヨナラ勝ちできた。気持ちよかったわ」

「へぇ、案外活躍したのね。というかこんな春休みのド真ん中に試合がある上に助っ人って、中々にハードね」

「まぁな。ちなみに夏凜もそこそこの頻度で剣道部やソフトボール部に助っ人頼まれてるぞ?」

「あの三好さんが? そんな事するんなら木刀振ってそうなのに」

「結構前からこんな感じだぜ? 夏凜って案外チョロいからな」

「……あぁ。なんかわかるわ」

 

 夏凜のチョロさを知っている者同士でシンパシーを感じ合っていると、亜耶としずくは誰の事かよくわかっていないので首を傾げていた。

 流石に長時間二人を放置しておくわけにもいかないので藤丸は台所に立ち、エプロンを身に付けると冷蔵庫の中から今回作る物の材料を取り出した。

 

「今日は前作ったプリンア・ラ・モードでいいんだっけか?」

「えぇ。あのプリンア・ラ・モードを食べて以来ファミレスとかのじゃ満足できない体になってしまったから」

「なんじゃそら。まぁいいや。プリンはもう予め作ってあるし盛り付けるだけだからちょっと待ってな」

 

 そう言うと、藤丸は容器を取り出して盛り付けを始めた。

 流石に練習試合の助っ人を終えてから作ると時間がかかって夕食に響きそうだったのでプリンは予め作っておいたのだ。

 後は後ろから年頃の少女達の視線をその身に受けながら果物一式を適当な形にカットし、この間買ってきた専用の容器にプリンと共に盛り付け、生クリームをプリンの上にトッピング。

その上にお約束のさくらんぼを一個乗せてやればあっという間にプリンア・ラ・モードの完成だ。

 

「そら、プリンア・ラ・モードの完成だ。是非とも感想をば」

「やっぱり美味しそうね……! それに飾りつけの技術も上がったかしら? 前よりも綺麗に見えるわ」

「果物も可愛くカットしてありますし、ちょっと食べるのが勿体ない感じもしますね」

「うまうま……」

 

 素直に抱いた感想を口にしつつ写真を撮って最近始めたSNSに写真を投稿する芽吹、ちょんちょんとプリンをつつきながらちょっと食べるのをためらっている亜耶。そしてそんな事知った事かと言わんばかりに味を堪能するしずく。

 三者三様の反応に藤丸は苦笑しつつ、自分の分のプリンア・ラ・モードとコーヒーを片手に三人の座っているソファーではなく椅子に座り、そこで食べる。

 プリンの味は上々。果物も新鮮な物を買ってきたので瑞々しく欠点なし。強いて言うならば生クリームを市販の物ではなく手作りして、果物のカットももうちょっと可愛らしくした方がよかっただろうか。あとは飾りつけももう凝って可愛らしくして少女達にもっと楽しんでもらえそうな感じにするべきだったか。

 

「それにしても」

 

 自分のプリンア・ラ・モードの評価をしていると、自分の隣の席にプリンア・ラ・モードと紅茶を持った芽吹が座った。

 亜耶としずくの方はいいのかと思い振り返ってみると、どうやら芽吹の携帯にかかってきたらしい雀とのビデオ通話をしているらしく、二人とも芽吹の携帯に向かって話しかけている。

 

「藤丸に二人を預けて正解だったわ。二人とも、毎日楽しそうだし」

「楠さんからそう言われりゃ責任は果たせてるって思えるよ」

「十分よ。しずくも、なんやかんやで毎日充実してるみたいだし、亜耶ちゃんもゴールドタワーでのちょっと質素な生活から抜け出せて楽しいみたいだし」

「俺がしてんのはこういうの作って親を説得しただけなんだけどな」

「あの子達は家庭環境が複雑だから。居候先で家族ができて、毎日楽しかったらそれだけで十分よ」

 

 芽吹も、雀も、夕海子も、彼女達を居候させることはできなかった。

 親が心中し居場所が無いしずく。親から引き離されて大赦の教育を受け続けたがために自分の両親と合わす顔が無い亜耶。行き場のない二人をこうして拾って毎日充実した生活を送らせている。

 それだけで芽吹は十分だ。預ける時はやっぱり思春期の少年と一個屋根の下だし……と心配がなかったわけではないが、こうして笑顔な所を見るとやはり二人の身柄を預けてよかったと思う。

 

「……あと、写真の提供はホントに感謝するわ。乃木園子さんだったかしら? 彼女と寝ている写真はマジで最高よ」

「はっはっは。マジでお前クソレズに似てきたなオイ」

 

 金髪の純粋天使とやべーやつのツーショットはどうやら芽吹の中ではトップクラスに尊い写真だったらしい。園子も黙らせて亜耶と並べればどことなーく姉妹っぽい気もしないでもない。

 バレたら確実に市中引き回しの刑にされるが、バレなきゃ犯罪じゃないんですよと某邪神様が言っていたのできっと大丈夫だ。

 

「というかホント亜耶ちゃんマジ天使。この世界の一番の功績は亜耶ちゃんと言う天使をこの世に生み出した事に違いないわ。もう亜耶ちゃんの誕生日を祝日にした方がいいのでは?」

「順調にクソレズの道を歩んでますねこの防人……」

 

 おかしいなぁ、最初は夏凜と美森の真面目で硬い所を取り入れたお堅い人だったんだけどなぁ、と藤丸は天井を仰いだ。

 それもこれも亜耶という天使の影響なのか、それとも彼女が元から抱えていた残念な部分が露見しただけなのか。一眼レフをどこからか取り出して写真を撮ろうとする芽吹を抑えながらハゲ丸は溜め息を吐く。

 

「あーホント亜耶ちゃんマジ可愛いわ……もう結婚して一生私の側にいてほしい……ん? もしかして性転換をして男になって亜耶ちゃんと付き合えば叶ってしまうのでは……?」

「おーい落ち着けクソレズ二号。神世紀の技術でも完全な性転換は無理だぞ緑のクソレズ」

「いえ、駄目ね。私という存在で亜耶ちゃんを穢す事は許されない……! 私は一人の防人として亜耶ちゃんの写真をこの一眼レフに収めるしか……!!」

「いい加減落ち着け緑色」

「だってあんなに可愛いのよ!? もう天使よ! あの笑顔なんてほら!!」

「ちょっ、わかったから、分かったからそんな背中叩くんじゃねぇ! ちょっとあぶ――」

 

 ズラが落ちるから危ない。そう言おうとした時だった。

 芽吹の手がズレてハゲ丸の背中から頭を打ち、その衝撃で乗せていただけだったズラがポトっと床に落ちた。

 

「えっ……?」

 

 その光景を見た芽吹は目を見開いたまま目の前の光景を見て固まった。ハゲ丸もマジか……と固まった。

 ついでに。

 

「……急に静かに………………ふぁっ?」

「しずく先輩? なにかあっ…………」

 

 丁度そのタイミングで振り向いたしずくと亜耶がハゲ丸のハゲを目撃してしまった。二人の目は信じられない物を見たという感じになっており、丁度通話していた雀は「あっ、バレちゃったんだ」と現場の事を察して呟いていた。

 芽吹は自分の手を見て、ハゲ丸の頭を見て、もう一度自分の手を見て。そしてそっとハゲ丸のズラを拾い上げるとハゲ丸の頭の上に乗せた。

 

「そ、その……私、知らなかったのよ……男の人の髪の毛がこんなに脆いだなんて……」

「いや、違うんすよ……もう見たまんまなんすよ……」

「……そ、そうなると藤丸はこの歳でハゲてるって事に」

「ハゲてるんすよ……もうハゲてるんすよ……ずっと生えてこないんすよ……」

 

 ハゲ丸の髪の毛を全て毟り取ってしまったと思い込んでしまう芽吹。まさかの事実にビックリ仰天するしずく。何をしたらいいのか分からない亜耶。

 まさか同年代の少年がハゲている。しかもそれをずっとズラで誤魔化していたのにこんな些細な事でバラしてしまった。ハゲ丸的にはもう好きにしてください……と言った感じの心境なのだが、芽吹はどう謝ったらいいのか分からない感じになっているし、しずくはコミュ障も相まってなんて言葉をかければいいのか分かっていない。

 だが、ここで天使が動いた。

 

「ふ、藤丸先輩。大丈夫ですよ」

 

 亜耶が立ち上がってハゲ丸の前に立ち、ハゲ丸の手を取った。

 

「きっといつか髪の毛は生えてきます。それに、わたし達は藤丸先輩がハゲてるだけで今更どうもしませんから」

「亜耶ちゃん後輩……」

 

 もう髪の毛を生やすのは諦めているのだが、亜耶に言われると本当に生えてきそうな気がする。

 それにいの一番に笑うのでもなく揶揄うのでもなく、真剣にこのハゲの事を受け止めてくれた亜耶の優しさに思わずハゲ丸は泣きそうになった。

 今思えばハゲがバレた時は見ないふりをされたり笑われたりツッコミをされたり揶揄われたりと散々だった。が、こうして優しい声をかけてくれたのは亜耶が初めてだ。それ故にハゲ丸は思わず泣きそうになってしまった。

 そして同時に。

 

「……なぁ、楠さん」

「……な、なに?」

「俺も亜耶ちゃん後輩がこの世に生誕した日を祝日にできないか、色々と走り回ってみるよ」

「えっ!? い、いきなり何言ってるんですか!?」

「藤丸……! あなた、同士ね! ハゲてるとか関係なく同士になったのね!」

「今ならお前の考え、ちょっとは理解できる……!!」

「ちょ、二人とも何を……!? し、しずく先輩も何か……」

「あ? しずくなら今猛烈なストレスを感じて篭っちまったけど。なんかあったのか?」

「ってシズク先輩になってる!? そこまでショックだったんですか!?」

「あー、もしかして藤丸がハゲてる事か? それなら前にあいつの部屋に悪戯しに行ったら見ちまったから俺は何とも思わねぇけど」

「ってシズク先輩は知ってたんですか!?」

「まずは園子の部屋に殴り込みしてこの案ぶっ通すぞ! いくぞ、楠さん!」

「えぇ、藤丸! あと私の事は芽吹でいいわよ! 私達はもう同士なのだから!」

「ん? 喧嘩か? なら面白そうだし俺も行くか。あと藤丸。俺としずくの事は色々と面倒だから名前で呼んでいいからな」

「よし! なら芽吹、シズク! 園子の部屋に殴り込みの時間だぁ!!」

「っていい加減止まってくださいよ~!!」

 

 あーもう滅茶苦茶だよ。そんな雀の通話越しの言葉は聞こえる筈もなく、園子の部屋へと奇襲をかけようとする三バカを亜耶が必死に止める音だけが藤丸家に響き渡った。

 ちなみに最終的に亜耶の「人に迷惑かける先輩達は嫌いです!」という言葉に芽吹とハゲ丸が無事死亡し、シズクは調子に乗り過ぎたと一言謝った。なお死んだ二人は冗談ですから起きてください! という亜耶の言葉により無事蘇生し、落ち着きを取り戻して園子の部屋に奇襲をかける計画はパーとなった。

 結局この日はこの後芽吹が夕食までご馳走になった上に亜耶の部屋に泊まり、ハゲ丸はいつも通りズラを被ったまま過ごした。あの畜生集団勇者部のように彼をハゲ丸と呼ぶ者はこの場には存在しなかったのである。




この前Apexで0キル0ダメージでチャンピオンになりました。クッソ笑いました。

という訳で今回は防人組+ハゲの話でした。久しぶりにしずく&シズクと亜耶ちゃんが書きたくなったので書きました。その結果が呉蘭のありさまだよ!!

そしてとうとう防人組にハゲがバレたハゲ丸くん。でも大天使亜耶ちゃんや比較的マトモな芽吹としずくからは勇者部のあんちくしょう共のような扱いはされなかった模様。よかったねハゲ丸くん。

あとしずくって両親が心中してしまった複雑な家系で育ったって設定ですけど、両親が心中した後のしずくってどうしてたんでしょうかね。親戚に引き取られていたとかそんな感じでしょうか。

とりあえず次回は修羅場時空か銀IFの続きか……ですが、皆さんがどの話を率先して読みたいのか気になるのでテストがてらアンケートを出してみる事にします。
それを元にして続きを書く……かもしれません
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