ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回は結構リクエストがあったと思う平行世界……というか原作(に限りなく近い性格にしたつもりの)勇者部と頭勇者部となったここの勇者部の会合の話です。

一応一万文字程度の話なんですが、書きたい事書ききれなくて最後無理矢理纏めました。もしかしたら第二弾とかやるかも。

そんな感じの話です。どうぞ。


ドッペルゲンガーって集会を開くの?

 その日は特に何もない一日だった。

 ボーっと授業を受ければ勝手に過ぎ去っていく時間。気が付けば帰りのSHRも終わり凝り固まった体は伸ばすと小気味のいい音と爽快感を与えてくれる。

 今日も今日とて部活だ。銀は予め教科書を詰めておいた鞄を片手に立ち上がると、突っ伏して寝ている数年来の友人の頭をシバく。

 

「ほれ園子。とっとと起きれ」

「んん……ミノさん? おふぁよ~……」

 

 寝ぼけながら起きた親友に苦笑しつつも銀は寝起きの親友こと園子の代わりに彼女のバッグを持つと、園子がフラ付きながらも立ち上がるのを待つ。後ろの方ではすでにクラスメイト兼同じ部活動仲間の友奈達が先に部室へと向かっており、銀は園子を急かすと小走りで友奈達と合流した。

 

「あ、やっと来たのね」

「やっと来たよ。ったく、置いてくなっての」

「だってそのっちって一度寝るといつ起きるか分からないんですもの」

「起こすまで待ってくれや……」

 

 銀の若干疲れがこもった声を聞くが、美森は小さく笑ってスルー。どうも彼女の中では園子のお世話役は完全に銀に一任されているらしい。

 お前も手伝え、と美森をどつくが、倍以上の強さでどつかれ返されたので戦争勃発。変な構えをしながら銀と美森がバトり、それを友奈と夏凜が苦笑しながら見守る。そして戦争の火種になった園子様はと言うと、夏凜の背中にもたれかかって彼女の頬を吸っている。どうやら煮干し味らしい。

 既に慣れた物なので夏凜も園子を無視して前を歩く。後ろではなんかバトってる音が聞こえる。

 

「そういえば友奈。今日の小テスト、大丈夫だった?」

「ちょっとヤバいかなぁ……山外しちゃった……」

「全く、言わんこっちゃない。しっかりと勉強しなさいって言ってるのに」

「あははは。まぁ、何とかなるよ、多分!」

 

 根拠のない友人の言葉に夏凜は頭を抱える。

 この子は一体いつになったら受験生としての危機感を持つのやら。いざとなったら園子様&青いのによるスパルタ勉強会が開催されるので万が一は無いハズだが、それでも夏凜の頭の中は既に心配事でいっぱいだ。

 それじゃあ、と夏凜が一つ声を漏らす。

 

「小テスト返ってきたら見せなさい。分からないトコ教えてあげるから」

「ホント!? 助かるよ、夏凜ちゃん!」

『おい友奈! お前いい加減この勇者達にちょっかいかけようとするの止めろ!』

『ちょ、若葉ちゃん今はダメだって! 今ちょっと慎重な操作を……あ゛っ』

「まぁアンタだけ特別……って、友奈。なんか言った?」

「え? 言ってないけど」

 

 そう? と夏凜は返すが、彼女は確かに聞いた。

 友奈っぽい声によるなんか変に焦った声と音。ついでにガシャンっ。と変なのが割れるような音が。

 しかし友奈は何も言っていない。そして美森と銀もそれを聞いておらず、園子は聞いているのか不明。少なくともあの声と音を聞いたのは自分だけだろう。それなら、きっと気のせいだ。

 

『お、おい、友奈。これヤバいんじゃないか……』

『……っべーだよこれ。マジっべーよ。どれくらいヤバいかって言うとマジっべー』

『お前あっちの世界のお前とこんにちわしてるぞ!? これ完全に世界が混ざったぞどうするんだお前!?』

『ちょっ、あっちのわたし! 今から世界戻すから協力して!』

『えっ? あれ? 結城ちゃん……じゃなくて本物のわたし!? えっ、なにがどうなって……』

『いいから手伝って! 世界戻すよ!!』

 

 なんかすっごいのが聞こえてきた。

 夏凜はなるべく聞こえないフリをしていたのだが、なんだかマジで不安になってきた。なんだか変な声が分裂してるし、新しい変な声が聞こえてくるし。これ誰だよマジで。

 しかし夏凜の心情はスルーされ声はヒートアップしている。外をチラッと見るとなんか牛鬼っぽいのが二体と青い鳥が一匹見えた気がしたが、気のせいだとタカを括って声を完全にスルーする事を決意。

 そのまま三年生組は部室前に着き、これからは部活の時間だ。

 

「結城友奈他三年生女子組、入りまーす」

 

 友奈が声を出し、ドアを開けた。

 そしてその先には部長の樹が。

 

「あれ? ……あれ?」

「どうしたの? 友奈ちゃ……扉に怪奇現象!!?」

「ん? 今友奈、なんか言っ……はぁ!!?」

「ゆ、友奈さん達が二人……!? ど、どうなって……」

「あ、あたし!? あたしが二人!!?」

「え~? なになに~? ……へ? う、うそ……ミノさん……?」

『すみません間違えました』

 

 なんか部長の他にいっぱいいた。

 友奈達は一言謝ると全力でドアを閉じた。そしてすぐにこの部屋が何かを全員で確認した。

 勇者部部室。間違ってねぇや畜生。

 だが、勇者部部室には先客がいた。自分達という先客が。それも、なんかちょっと自分達と違う雰囲気の自分達が。

 中に居たのは、友奈、美森、風、樹、夏凜、園子の六人。銀、ハゲ丸の二名は居なかったが、しかし中に居た方の園子の様子はなんだかおかしかった。一体何が起こった。ドッペルゲンガーか何かか。

 夏凜が代表して小窓から中を見ると、確かに居る。呆然とするもう一人の自分達が。

 

「ど、どうすんのよこれ! なんかあたし達のそっくりさんが居るわよ!?」

「お、思いっきりお茶してたよね……」

「ふ、風先輩が居たわね……卒業したはずなのに……」

「園子達も居たな……」

 

 取り乱す二年生組五人。

 だが、この時夏凜が一つ思い出した。

 

『これ完全に世界が混ざったぞどうするんだお前!?』

 

 聞き覚えの無い声が言った言葉。

 世界が混ざった。もしもそれを額面通りに受け取るのだとしたら、間違いなくあそこに居るのは。

 絶対に違う。そんな訳ないと思っても夏凜だけは知っている。こういう事件には前例があることを。千景が来る少し前に起こったハゲ丸と付き合っている平行世界の勇者部員たちの記憶がインストールされ起こった修羅場を。そしてそれが起こった時、友奈の声が聞こえた事を。

 つまるところ、これはその時とほぼ同じ現象。今回は記憶だけではなく本人たちを連れてきてしまったという現象。いや、もしかしたら自分達が知らぬ間に平行世界にお邪魔してしまったのかもしれない。

 だが、それを他の部員は知らない。故に、夏凜がここは仕切る事にした。

 

「みんな。よく聞いて」

 

 指をあげ、注目を集めてから夏凜は口を開いた。

 

「多分、あそこに居るのは平行世界のあたし達よ」

「平行世界ぃ? 夏凜ちゃん、頭大丈夫?」

「黙れ青いの。実はあたし、皆には内緒にしていたけど平行世界の自分と会った事があるのよ」

 

 夏凜の口から放たれた衝撃の真実。それに二年生組は目を見開いた。

 まぁ、嘘ですが。

 だが、ここは嘘を吐いておいた方がこの状況を何とか穏便に収める手段になりえる。

 

「あの時はあたしだけだったし、特に何も無かったから言わなかったけど……でも、間違いないわ。これは平行世界のあたし達よ。それも、前にあたしが会った平行世界のあたしとは違うあたし達」

「そ、そんなファンタジーみたいな事……」

「神樹様と勇者と天の神とかいうファンタジーに触れておいてそんな事言える?」

「無理だね」

 

 友奈の反論を真っ向から叩き伏せ、みんなから信用を得た所で夏凜は一つ咳払いをする。

 

「とりあえず。中に居るのは平行世界のあたし達。ドッペルゲンガーとかじゃないわ。だから、ここはあっちのあたし達にも事情を説明して穏便に事を収める必要があるわ」

「そ、そうだね……平行世界のわたし達に会うなんて普通はない事だし、普通に挨拶して普通に仲良くなろうよ!」

 

 流石コミュ力モンスター。言う事が違う。

 そしてこの場に居るメンバーに友奈の意見を無為にできる者は居ない。というか勇者部員に友奈の意見をギャグ以外で即却下できる者は存在しない。故に、先代勇者組が友奈の言葉に頷き、とりあえず現状の混乱を落ち着かせ騒動に発展しないように振舞うことに決めた。

 そして意を決めて五人はもう一度勇者部室のドアに手をかけ、開けた。

 

「ま、また来た!!?」

「悪霊退散悪霊退散悪霊退散……えっ、うそ……銀……?」

「く、来るなら来なさい! 完成型勇者をナメるんじゃないわよ!!」

 

 あーもうあっちも滅茶苦茶だよ。だが、少なくとも自分達が全力で取り乱した時ほど取り乱してはいない。

 木刀を取り出し震えながら構える平行世界の自分に夏凜は苦笑しつつもステイステイと手を振る。

 

「と、とりあえず落ち着きましょう、あたし!」

「う、うっさい! あんたみたいな偽物、あたし一人で!」

「いいから落ち着きなさいっての! 全部説明するから! 友奈も風も、それでいいわね!?」

「え、あ、うん……」

「そ、そうね……あっちから説明してくれるんなら……」

 

 比較的物分かりが良い平行風と平行友奈はこちらの言葉に頷いてくれて、平行樹は縮こまったまま。平行夏凜はまだ木刀を片手に威嚇してくるが、こういう時に無理矢理相手に襲い掛かる性格をしていないのは自分が一番知っている。

 だが、返事の一つも返さないのは青いのこと平行美森と平行園子だ。彼女達だけはこちら……というよりも銀を見てふらふらと近づいてきている。

 

「ぎ、銀……なのよね? 本物の……」

「夢じゃ、ないんだよね……?」

「お、おう? そりゃ本家本物の。お前らの知ってるミノさんですよ、アタシは」

 

 近づいてきた二人に銀は笑いながら何言っているんだと言わんばかりに近寄って二人の肩を叩いた。

 何も痛い事はしていない。だと言うのに平行美森と平行園子は銀に触れられ、そして銀に触れ返し、そこに銀が居る事を確かめると大粒の涙を流し始めた。

 

「銀っ!!」

「ミノさん!!」

 

 直後、二人は思いっきり銀へと抱き着いた。

 

「どわぁ!!?」

 

 急に二人分の体重を受け止められるわけもなく。銀はそのまま二人に抱き着かれた状態で背中から倒れ込んでしまった。すぐさま美森と園子が二人を引き剥がして銀を助け出そうとするが、平行美森と平行園子は泣きじゃくり、引き剥がそうにも引き剥がせない。

 銀は困りながらも泣き虫だなぁ、なんて言いながら平行世界の二人を抱き返している。それを美森と園子は力づくでどうこうするわけにもいかず、一旦好きにさせておくことに。

 

「……えっと、あっちは放っておいて、事情だけ説明するわね」

「お、おう……ばっち来い」

 

 そしてとりあえず、今はこの事情についてを説明する事にした。じゃないと何も解決しないし。

 

 

****

 

 

「つ、つまり……あんた等はここに居る部員たちの平行世界の同一人物……って事、なのよね? それで、どうしてこうなったかは不明、と」

 

 平行風と平行夏凜への説明はつつがなく終わった。最初は半信半疑だったが、目の前で起きていることを否定する材料もないわけだし、平行風も平行夏凜も一応事実を認める事となった。

 

「ったく……ようやく天の神との戦いも終わって一段落したってのに、こんな事になるなんて……」

「天の神? あぁ、そっちのあたし達も天の神を倒したのね」

「そうよ。つい先週、友奈がね」

「先週? あたし達からしたら半年近く前の話よ?」

「は、半年ぃ?」

「そう、半年……って事は時間もズレているみたいね。一応あたし達はもうここの三年生だし、風は卒業済みよ」

「あー、もう頭パンクしそうよ……」

 

 どうやら平行風が居る理由は、まだ彼女達の時間的には一月下旬に差し掛かったあたり。つまり天の神を打倒し勇者としてのお役目がようやく終わった頃だったかららしい。しかし夏凜からしたらもうそれはほぼ半年前の出来事。まだゴールデンウィークはもう少し先故に半年ではないが、それに近い時間が既に経過している。

 平行風と平行夏凜は既にそれに参っているらしく、机に突っ伏している。それから視線を逸らして後ろを見ると。

 

「ねぇねぇ、わたし。わたしの趣味って、わたしと一緒で押し花?」

「うん、そうだよ。もしかしてわたしも?」

「うん! あ、これ、この間作った押し花なんだけど……」

「わぁ、すっごーい! それじゃあわたしのも見せてあげるね」

「ありがと~」

 

 友奈と友奈がほんわか空間を作っていた。コミュ力モンスターという点はやはり変わらなかったか。

 というかもうどっちがどっちか分からない。美森なら判別付きそうだが、容姿が完全に同じな上に平行世界の自分の呼び方を分けていないのだ。だからセリフだけ聞くとただ友奈が一人芝居をやっているようにしか思えない。

 下手に触って平行世界の友奈だったら気まずいので触りはしないが、あの桃色コンビは放っておいても問題は無いだろう。

 問題と言える問題は。

 

「小生意気じゃないイっつんって珍しいな~」

「あ、あの、そ、園子さん、あんまり見ないでほしいです……」

「いいじゃないかいいじゃないか~。減るもんじゃあるまいし~」

「あうあう……」

 

 まずは平行樹に絡んでいる園子様。平行樹はどうも小生意気なガノタではないらしく、園子の過度なスキンシップに目を回している。それが面白くて園子もついつい樹に構いっきりになってしまう。

 そして青いのは。

 

「ナイスでーす。ナイスでーす」

 

 なんて言いながら一眼レフを片手に残像を出しながらダブル友奈の写真撮影をしていた。自重しろクソレズ。

 そして一番重症なのは銀の周りだろうか。

 

「銀……!」

「ミノさん……!」

「ったくよぉ。お前らは急に甘えんぼになるよな、ホントに。アタシゃそれだけが心配だってのに」

 

 椅子に移動こそしたが、平行美森と平行園子が抱き着いたまま。流石の銀もこれには心底参ったようでかなり困っている。どうやら平行世界の銀が何をやらかしてこんな事になっているのか、かなりご立腹のようで。

 しかし平行美森と平行園子は暫く抱き着いて、それからちょっと気持ちが落ち着いてきた辺りで小さく声を漏らした。

 

「……銀は、二年前、死んじゃったから」

「また会えるなんて……夢みたいだよ~……」

「死んだ、ね……」

 

 平行夏凜と平行風は平行園子と平行美森から彼女達の過去は大体聞いていたが、三ノ輪銀という名前までは聞いていなかったようで、今二人が抱き着いている銀こそが、二年前平行園子たちと共に戦った先代勇者の一人なのだと気が付いた。

 そして夏凜も。銀が死んでいる故に二人はこうしていると思えば口を挟む気にはなれなかった。

 そして当事者の銀は平行世界の自分の死因に心当たりがある様子。

 

「……アレか。遠足終わりのあの戦い」

 

 あの戦い。須美と園子がダウンし、銀と桂の二人が三体のバーテックスを相手にしたあの戦い。あれは銀も桂もいつ死んでもおかしくないような戦いだった。全身傷だらけになって戦ったあの時。

 自分の死因は予想できる。桂があの時、ダメージに耐え切れず一緒にダウンしたのだとしたら、銀は一人っきり。三体のバーテックスを一人で相手にしたのだとしたら、流石の銀とて生き残る事は。

 

「……あぁ。って事はズラの野郎がダウンしちまったって事だな」

「……ズラ?」

「あぁ。あいつが居たからこのアタシは何とか生き残れたようなモンだし……」

「……ズラって、誰? ミノさんの知り合い……?」

「…………」

「……えっ? ちょっと待って園子。あんた何言ってんの?」

 

 平行園子の言葉を聞いて夏凜が間抜けな声を漏らした。

 そういえば平行世界の自分達に出会った衝撃ですっかり忘れていたが、居ない。あのハゲがどこにも居ない。

 

「ね、ねぇ、平行世界のあたし。藤丸はどこ行ったの?」

「は、はぁ? 藤丸? 誰よそれ」

「いや、藤丸よ! 勇者部の一員で、ハゲの!」

「ちょ、ちょっと夏凜。あ、平行世界の方ね。で、藤丸だったかしら? そんな部員、ウチの勇者部には居ないわよ。そもそもこの部活を作った理由、アンタも分かってるでしょ?」

「じゃあ何で居ないのよ! あいつも勇者よ!? 歴代で唯一男の!」

「だから居ないってば。男の勇者なんて今まで一人も居なかったわよ」

 

 藤丸が、居ない。

 その言葉を聞いた瞬間、夏凜の頭の中でこの世界と混じった平行世界がどういう世界なのかが何となく理解できた。

 平行風達の世界には、藤丸……つまり、歴代で唯一の男の勇者である彼が居ない世界。彼が居なかったからこそ先代勇者は三人だけであり、その状態で銀が口にした戦いがあったからこそ、銀はたった一人で戦いに赴き、死んでしまった世界。

 彼が居なかった故に都合のいい未来の一つが消えた世界。

 

「……あー、そういう事ね。アイツが居ない世界って事」

「アイツって……逆に聞くけど、そっちの世界にはもう一人勇者が居たっての?」

「居たわよ。完全防御特化の勇者が一人、先代勇者に交じってね」

 

 もしも故意に居ない事にしているのなら腹の一つも立てるが、そもそも居ないのならまぁ納得できる。

 どうやら混ざった先の平行世界に居ないのは藤丸だけのようだ。彼が居ない状態でも平行世界は何とかうまく回ったのだろう。いや、そもそも彼はイレギュラーな男勇者なのだからそっちの方が正常なのかも。

 夏凜はそんな事を思いながら息を吐き、鞄の中から煮干しを取り出し齧った。

 

「んで、だけど。多分これは明日には解消するわ」

「うっわー、平行世界でも夏凜って変わんないわね……で、何でそんな事分かんのよ」

「経験よ」

『友奈ァ!! おまっ、これ明日には直るんだろうな!!?』

『わ、分かんないよ~! でもこっちのわたしと全力で直してみるから許して~!』

『もう何が何んやら分かんないよ……』

 

 なんか賑やかな声が聞こえてきたが夏凜は意図的に無視した。

 だが、多分明日には平行世界の事も何とかなっているだろう。なので今日は世界を越えた会合を楽しむとしよう。

 

「それじゃあ……ここにいる銀は、明日には居なくなっちゃうのね……」

「折角またミノさんに会えたのに……」

 

 だが、楽しめない複雑な心境なのが二人。

 平行美森と平行園子。彼女達は故人となってしまった友人と折角会えたのにも関わらず、明日には会えなくなってしまう。そう思ってしまい、複雑な顔をしている。

 それもそうだ。夏凜とてもし友奈が死んでしまって、目の前に平行世界の友奈が現れて、たった一日しか会えないのだとしたら、どんな顔をしたらいいのか。ただ、確実に泣くと思う。

 

「だーもう湿っぽい!」

 

 だが、そんな雰囲気を壊したのは銀自身だった。

 

「アタシはお前らをそんな風に育てた覚えはないぞ!」

「育てた覚えって……」

「今日しか会えないってんなら今日だけで今まで分もこれから分も楽しめばいいだけだ! 付き合ってやるからンな顔すんな! って事でアタシ、ちょっと美森と園子連れて遊びに行ってくるから!」

「えっ、ちょ、ミノさん!?」

「いいから行くぞ二人とも! もう会えなくても構わないくらいには遊び倒させてやる!!」

 

 有言実行とは正にこの事か。銀は二人の手を握ると有無を言わさずそのまま外へと走っていった。

 きっとあの二人は今日だけだが、また三人で集まってバカやるだけの、過去に戻ったかのような日を過ごすだろう。そして銀は平行世界の親友達にもう二度と寂しい思いをさせないために精一杯を尽くす事だろう。

 夏凜はそんな銀を見送ってから、平行風と平行夏凜と顔を合わせ、小さく笑った。

 そしてその直後。

 

「うーっす。なんか銀達がどっか行ったけどなんか知ら……すんません、ドッペルゲンガーの集会所と間違えました」

 

 ハゲがログインしたがすぐにログアウトしていった。

 夏凜はすぐに彼を追って部屋の中に引き入れると、自分の隣に座らせた。

 

「こいつが件の藤丸よ。で、藤丸。これはかくかくしかじか」

「まるまるうまうまウィザードリングって事か。なるほど、大体わかった」

「ホントに?」

「つまりディケイド案件だな」

「…………まぁ本人が納得してんならそれでいいわ」

 

 夏凜は特撮に明るくないので彼が何を言っているのかは分からなかった。そして勿論平行世界の風と夏凜にも。

 しかし彼は一人だけそれで納得すると改めて平行風と平行夏凜へと一つ挨拶した。

 

「まぁ紹介されたように藤丸です。勇者してました」

「お、おう……なんつーか、マイペースな奴ね……」

「マイペースってのは初めて言われたな……っていうか園子。お前何してんの?」

 

 挨拶を終えてからすぐ、ハゲ丸は平行樹を可愛がっている園子の元に。

 園子は現在、平行樹の頭を撫でたり膝の上に乗っけてみたりと、今まで樹にできなかった事を散々している。対して平行樹は自分の知る園子よりもヤケに距離も近いし触りに来る園子に困惑しているまま。

 

「いや~、こんなイっつん珍しいでしょ~?」

「何で樹ちゃん後輩はそんなやられっぱなしなんだ……って、そうか。この樹ちゃん後輩は平行世界の方か」

「お、男の人!?」

 

 平行樹は自分の事をじろじろと見てくるハゲ丸に驚き、園子の後ろに隠れてしまった。

 内気で臆病な樹。確かに最初の方はそうだったかもしれないが、すぐに今の生意気後輩に変わっていったのでこんな樹は珍しかった。

 珍しかったが、同時にちょっと悪い事を考えた。

 今まで散々殴られたり窓から投げられたりしてきたのだ。ちょっとくらい平行世界の同一人物を可愛がってみてもいいんじゃないかと。

 具体的には撫でてみたり高い高いしてみたり。樹にやったら確実に拳とか膝が飛んできそうなことを。

 

「ほらほら怖くないぞ? ちょーっと先輩として可愛がってやるだけだからさぁ」

「言う割には悪い笑顔じゃないですかぁ!」

 

 園子の後ろの平行樹を捕まえるために悪い顔をしながら手を動かすハゲ丸。傍から見たらただの変質者と哀れな被害者である。

 これには流石の平行風も看過できないと立ち上がったが、それを夏凜が止めた。

 どうせ園子様に止められるからと。

 

「ズラっち?」

 

 ハゲ丸の手を園子が掴んだ。

 園子様の顔はイイエガオだ。思わず寒気がするような。

 あかん、これ普通に怒ってらっしゃると気が付いた時には時すでに遅し。園子様はどうやら平行樹が気に入ったらしく、平行樹に害成す存在を排除しようとしている。

 

「そ、園子さんや……?」

「このイっつんはお客さんなんだから、自重! 霊子障断ッ!!」

「ぐっふぅ!!?」

 

 せめて言い訳を、と口を開いたが、園子は止まらなかった。

 ハゲ丸にほぼ零距離で霊子障断を叩き込みハゲ丸を浮かす。更に。

 

「霊子障断! ユベルティ! スクリュースパイク、スクリュースパイク、エクスクローッ!」

「ごっふぅ!!?」

 

 もう一発霊子障断を叩き込んだ後に空中でユベルティを叩き込み、そこから空中でスクリュースパイクを二発叩き込んだ後、秘技を発動させてエクスクローでハゲ丸を滅多打ちにした。

 いきなり園子様が機敏に動き出したことに平行風と平行夏凜があんぐりと口を開き、平行樹も目を見開いている。そして夏凜も、時折園子がテイルズ的な動きをするときはそこそこあったがこうも大胆にやるとは思わなかったのでちょっと驚いていた。

 

『おいなんか私の子孫に流れ込んでいるのが見えたぞ!? まさかまたミスったんじゃないだろうな!?』

『た、多分大丈夫! ちょっと光子格闘とかが使えるようになっただけだから!』

『それ本当に平気なんだろうな!!?』

 

 どうやらまた知らない存在達のミスによって園子様が超強化されたらしい。

 とりあえず今も光翼天翔とマックスエクステンションをくらって空を舞っているハゲ丸に夏凜はそっと合掌した。今日は多分あのまま秘奥義フィニッシュコースだろう。

 そして夏凜は今も暴走中の青いのへと視線を飛ばした。

 

「えっと、こう、でいいの?」

「なんかちょっと恥ずかしいかも……」

「大丈夫よ友奈ちゃん達。ただの記念撮影だから心配はないわ」

 

 青いのは友奈二人にポーズを指定していたのだが……二人ともちょっと服がはだけており、なんかちょっと扇情的な感じのポーズを取らされている。ちょっと屈んだら下着まで見えそうな程度に。

 流石の夏凜達もこれは看過できない。二人で木刀を合計四本握って青いのを仕留めにかかろうとした時。

 

「いい加減わっしーもお仕置き! スカラーガンナー!!」

「え? げっふぅ!!?」

 

 秘奥義までしっかりと叩き込んだ園子がスカラーガンナーを美森に叩き込み、美森が爆発。そのまま吹っ飛び壁に叩きつけられ、そこから園子のCCが続く限りのコンボが始まった。アストラルベルトとか叩き込まれているが、まぁ心配は無かろう。

 とりあえず夏凜達は友奈達に服をしっかりと着直すように指示して、美森がボコられているシーンは体で隠した。

 

「ふぅ……これでお仕置きは大丈夫かな~」

 

 そして園子様のお仕置きはようやく終わったようで、ハゲ丸と美森は無事気絶するまで叩きのめされた。

 まぁ、二人ともボコられるだけの事はしたので致し方ないだろう。園子様の怒りを買ったのが悪かった。

 

「それじゃあわたし、この二人捨ててくるから~」

 

 園子様はそう言うと、二人の首根っこを掴んでそのままどこかへと歩いて行った。多分石でも抱かせてプールに沈ませてくる気だろう。まぁその程度じゃあの二人は死なないので放っておいても大丈夫だ。

 出ていった園子を見送って平行夏凜が夏凜に話しかけてきた。

 

「なんつーか……あんたの方、大変そうね……」

「むしろアレがノーマルだったからもう慣れたわ」

 

 ちなみにその後は千景と樹が遅れてやってきたが、まぁ千景もファンタジーな事を体験した身なので、今回はそういう事か、程度で済ませて平行世界の勇者部と仲良くやっていた。樹は平行樹を煽って楽しんでいたが夏凜からゲンコツを食らって普通に談笑するに留まった。

 夜中は平行世界の勇者部がそれぞれの家に帰り、そうじゃないメンバーは園子の実家でお泊り会となったのだが、寝て起きたら平行世界の面々は消えていたのでどうやら世界の混ざりっこは何とかなったらしい。

 そんな感じの、勇者部にとっては時々あるファンタジーな一日でしたとさ。

 

 

****

 

 

「結局、銀はあれから何してたの?」

「え? アタシか? そりゃ遊び倒しただけだけど」

「それだけって……で、どうだった? 平行世界の二人、楽しんでた?」

「あぁ。ただ、時々寂しそうだったな」

「そりゃね……」

「まぁ、しゃーないけどな。最も、アタシは勝手に動くアタシの体の中からあれしろこれしろって時々命令していただけだけど。まぁ、それで須美や園子は満足していたし、あっちのアタシもまたねって約束果たせてたし、満足げだったな」

「そう……って、え? 銀、あんた何言ってんの……?」

「さぁな。あー、体貸すなんて真似、簡単にやるんじゃなかった。でも、それで驚いて号泣した二人まで見れたし十分か」

「ちょ、銀!? 体を貸したって一体どういう!?」

「帰ってしょうゆジェラート食うか~」

「銀!? ちょ、答えなさいよ!!」




原作わっしーとそのっちとミノさんを会わせたかったお話。実はミノさん、結構序盤の方から原作ミノさんに体を貸して内側から命令しているだけでした。なのでセリフの殆どは原作ミノさんの物。

後のメンツはまぁ適当にいつも通りを原作勇者部に見せつけて終わり。ただそのっちに異物が混入した模様。レイズのソフィさん、強いですね。

多分原作組との会合はあと一回くらいやる……かな? 多分それをやる時はのわゆも終わってるでしょうし、やるとしたら結構先になるかも。

それかここの勇者部がゲストとして原作ゆゆゆいに放り込まれる話を書くとか? まぁどうなるかは分かんないです。
とりあえず次回をお楽しみに。
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