いや、ちゃうんすよ。ちょっとシンフォギア五期が始まったんで、それに合わせてちょっとそっちの作品の方に集中してまして……あと銀IF2が予想以上に何も思いつかなくて、結局のわゆ編をちょっと書いていたらなんか五話分くらいストックできたけど銀IF2を出すまで更新するわけには……ってなった結果なんすよ。
明日卒業を賭けた第一の関門である中間発表があるけど、それから現実逃避したくて書いたとかじゃないんすよ!!
あ、今回の話の元ネタはバカテスです。
とある日の勇者部。そこで友奈が何に感化されたのか分からないが、こんな一言を言った。
「みんなで闇鍋しよう!」
と。
闇鍋。普通なら、みんなで持ち寄った具を鍋の中に入れ、暗闇の中でそれを食し、当たり外れで一喜一憂するエンターテインメント性を含んだ食事。つまり楽しい食事となる物だ。
だが、勇者部の事を考えてほしい。
芸人集団とも言えるこの集団。良心が数人いるとは言え、その良心すら時折キャラ崩壊する集団。持ってくる食材が普通なわけがない。
故に、ハゲ丸は普段はかなりはっちゃけた食材でも持って行くか、それともスイーツでも鍋に浮かべてやろうかと悪戯を仕掛けるのだが、流石にそれだと千景が地雷を踏んで病院送りの可能性が存在してしまう。何故なら、メンバーの中には、一人では未だにマトモな物を作れず、紫を生産する錬金術師が居るのだから。
だがら、ハゲ丸は丁度良かったと言わんばかりに夕海子から送られてきたおすそ分けの海産物詰め合わせセットを手に集合場所である犬吠埼家へと向かったのだった。しずくにぶーぶー言われたが、海産ラーメンを作ったら特に何の文句もなく送り出してくれた。
「よーっす、来ましたよー」
「遅かったじゃない、ハゲ丸。どうかしたの?」
「いや、同居人にちょっとラーメン強請られまして。上がっていいっすか?」
「んなの聞かなくてもいいわよ。あと、もうみんな揃ってるわよ」
「マジっすか。まだ集合時間前だってのに」
既にもう全員来ているという報告に驚きながらも、そそくさと室内へと入り、海産物詰め合わせセットを片手に居間へ。
そこには見慣れた勇者部メンバーが顔を合わせており、その中心には土鍋が。まだ具材は入れていないようだが、肝心の具材はどこに。
「あぁ、具材ならアタシがあっちの方で保管しとくわ。中身が見えないようにしてね」
「そういう事っすか。んじゃお願いします」
「あいよー」
風に海産物詰め合わせセットが入った袋を手渡し、ハゲ丸も自分に割り当てられた席に座る。千景と美森に挟まれる形での席。そして千景は園子とハゲ丸に挟まれている。
これなら地雷食材を千景に渡す事無く闇鍋を済ませる事が可能だろう。恐らくこの布陣を先に考えていたのであろう親友達にグッジョブ、と親指を立てる。
今回の闇鍋はそもそも無傷で終わらせられるなんて悠長な事は一切考えていない。例え先代組がまともな食材を持ってきたとしても、無邪気で無慈悲な友奈の食材、樹の食材という懸念材料が待っている。特に樹の食材。
きっと夏凜もネタ食材を持ってきている。銀だって同じだ。初手ケーキとか初手青汁とかやってきたとしても何らおかしくはない。もし談合でもされていたら、あんこ入りパスタライスなんてキメラを生み出される可能性だってある。
「ズラっちズラっち」
大丈夫かこれ、と冷や汗を掻くハゲ丸に園子が声をかけた。
千景は現在席を離れ友奈と話している。結託のための談合をするなら今がチャンス。
「どうした」
「肉壁、お願いね!」
「園子。偶にはお前が」
その瞬間、つま先に激痛。
「喜んでやらせていただきます」
どうやら園子様は自らが千景のための贄となる気が無いらしい。こういう時に暴君としての尾鰭が出てくるのはどうにかしてほしい所である。
だが、言ってしまった以上は千景の肉壁にならざるを得ない。いや、その程度喜んでやるけども。しかし園子の肉壁にはならない。偶にはお前がダメージを受けろ。
そんなハゲ丸の思考は一旦置いておき、今度は美森がハゲ丸の脇腹を突いた。
「ハゲ」
「どうしたクソレズ」
「一応教えておくわ。樹ちゃんが持ってきた食材、なんか紫の煙が出てたわよ」
「あぁ、ありがとうクソレズ。なんとしても園子に食わせるぞ」
どうやら今回の闇鍋は毒物が確実に一個混ざっているらしい。恐らく美森は千景を守るためにその情報を流したのだろう。しかし、ハゲ丸とていつも殴られ続けるだけじゃない。故に、園子を陥れる。
そう告げれば、美森が手を差し出してきた。どうやら、美森も自分が死にたくはないらしい。
ここに毒物を園子に流すための同盟が成されたが、直後に園子が箸をぶん投げ、美森とハゲ丸の後頭部と額に突き刺さった。
「おい」
『うっす』
最近の園子様、キツイや。
「よーし。んじゃ、みんな揃った事だし闇鍋始めるわよ」
変なショートコントが挟まった物の、全員揃ったという事で闇鍋の開始宣言が風の手によって成された。
闇鍋と言えば参加者が持ち寄った食材を暗闇の中で鍋に入れ、全員が入れ終わったら同じく闇の中で鍋の中身を取り、取った物は絶対に食べなければならないというルール。なのだが、普通過ぎてもつまらないため、ちょっとした追加ルールを入れる事となった。
「じゃあ、最初は出汁作りからよ! 一人ずつ台所に行って好きな調味料を持ってきなさい!」
「ちなみにわたしと風先輩が買ってきました!」
どうやら最初は出汁作りかららしい。
だが、これはチャンスだ。相当味を濃くしてやれば体を破壊する食材を入れられたとしても、味覚を潰す事によりダメージを半減させることができるかもしれない。
美森、園子、ハゲ丸の視線が一瞬交錯する。
ここで友奈に、千景にどんな鍋を食わせるかが決まる。しくじってはならない。
「んじゃ、電気消すから友奈から時計回りで調味料取ってきなさい。で、取ってきた物を最後にみんなで投入するわよ」
シリアスムードに入った三人を他所に、風が電気を消す。
順番は、友奈、樹、風、夏凜、銀、園子、千景、ハゲ丸、美森。前五人がどんな入れるかが勝負所とも言える。
ドキドキしながら待つ三人を他所に結構すんなりと調味料決めは終わり、園子、千景、ハゲ丸も調味料を取ってきた。後は美森を残すだけなのだが、美森には一つ秘策があった。
それは。
「ふっ。風先輩も甘いわね。まさか私が予め犬吠埼家の調味料を確認しておかなかったとでも思ったのかしら?」
そう。美森は既に犬吠埼家に保管してある調味料を頭の中に叩き込んである。
友奈と風が買ってきた物に加え、元からこの部屋にある物。それを、皿を取ってくるという名目で確認しきっておいたのだ。
故に、美森は他の調味料と相性のいい調味料を選び、友奈に美味しい鍋を提供する事ができる。これが美森の秘策だった。
「さて、みんなは何を選んだのかしら?」
小声で呟きながら美森は持って行かれた調味料を確認し始めた。
そして、なくなっていたのは以下の通り。
タバスコ(使用中)。
タバスコ(新品)。
タバスコ(予備)。
タバスコ(業務用)。
タバスコ(ピザのおまけ)。
タバスコ(弁当の付属品)。
タバスコ(うどんにかける用)。
タバスコ(粉末)。
「馬鹿しか居ないんじゃないのこの部屋!!」
そう。まさかの全員がタバスコをチョイスしたのだ。あの園子と千景とハゲ丸までもが、タバスコをチョイスしたのだ。しかもピザのおまけと弁当の付属品のタバスコなんて物まで持って行きやがった馬鹿までいるのだ。
これでどんな出汁ができるか? ただのタバスコを煮たものだ。タバスコ100%だ。いちご100%のようなラブコメも始まらないモンの出来上がりだ。
美森は幾分か辛い物には耐性がある。そして友奈も多少はある。タバスコをちょっとかけた程度なら辛いけど美味しいと言える位には。
だが出来上がるのはただのタバスコだ。タバスコ100%のタバスコ出汁だ。何入れようとただのタバスコ味にしかならない。正直辛い。そろそろタバスコがゲシュタルト崩壊を起こしてくる。
「……えぇ、いいわよ。本当はハゲの皿に思いっきりぶち込んでやろうと思って買ってきたコレ。みんながその気なら使ってあげるわよ。そんなに辛いのがお好きならやってやろうじゃない」
もうこうなっちまったら何入れようがただのタバスコだ。タバスコ100%がタバスコ90%くらいにしかならない。
なら、流れには逆らわない。むしろ、みんなそんなに辛い物が好きならやってやろうじゃないか。もっと辛くしてやる。
「ふ、ふふふ。さぁ、みんな、タバスコを持って行ったことを後悔しなさい。その結果、このデスソース様がご降臨したのだから……!!」
美森が自分の懐から取り出したのは、デスソース。
わざわざハゲ丸の隣に座ったのはこの存在があったからだ。これをハゲ丸の皿にぶっかけ、闇鍋を面白おかしくするのが目的だったのだが、気が変わった。
全力でこの場をひっかきまわしてやる。一応、友奈のために牛乳をこそっと持ち出してはおくが。
美森はニコニコしながら自分の席へと戻った。勿論、暗闇の中なのでニコニコしているかは分からないが。
「あ、東郷が戻ってきたわね。じゃあ、みんなで一気に調味料を入れるわよ。準備は良い?」
「大丈夫でーす!」
「こっちも問題ないわ」
「ちょっとワクワクしてくるな、これ」
まさか美森がデスソースなんてものを持参しているとは思わない勇者部員達はタバスコを入れる事を心待ちにしている。
そして、風のせーの! の声と共に全員がタバスコとデスソースを鍋の中へと投入した。
ドポドポドポ……べちゃっ。
「……なんか液体少なくない?」
そりゃ全員タバスコなんだからこんな音もする。
「気のせいよ。ほら、風先輩、かき混ぜちゃってください」
「はいはーい」
美森がとっとと急かし、風がお玉で鍋をかき混ぜる。あの鍋の中は、元から風が用意した出汁に加えてタバスコとデスソースがブレンドされた激辛出汁である。美森はこそっと友奈と、お情けで千景の水を牛乳へと入れ替え、ついでに自分の分の水も牛乳に入れ替えて最悪の場合に備えた。
「ちなみにみんなは何を入れたの?」
と、友奈が素朴な質問を。
勿論、内容について答えるのはNGだ。だが、断片的な情報を与える事はできる。
「今回はちょっと刺激的にいこうと思いました」
「アタシもね。偶には刺激的に行こうと思って刺激的な物を入れてみたわ」
「あら、奇遇ね。私もよ。いつも通りじゃ味気なかったし、丁度いい物があってよかったわ」
「ほうほう。まぁ、アタシの入れたモンを知ったらみんな驚くだろうな」
「へぇ~。ミノさんはそんなの入れたんだ~。実はわたしも、あっと驚くものを入れてみたよ~」
「私も……ちょっと、意外性を」
「俺も今回は遊んでみようかと思って、意外なモンを入れてみた」
全員、タバスコを入れたくせに自信満々である。全員タバスコが被っているくせに誰もが被っていることを想定していない。
塩とか砂糖とかマヨネーズとか、色々とあったのにタバスコを持ってきたくせに。意外性を求めるならもっとあっただろう。青汁とか牛乳とか。
だが、そんな事は関係ない。あの鍋の中は既にタバスコよりも凶悪なデスソースによって支配されている。食べたら悲鳴を上げる事間違いなしだ。そんなあくどい事を考えて暗闇の中で笑う美森に誰も気が付けない。
「そんじゃ、次は食材よ! 台所に置いてあるから順番に取ってきなさい!」
という事で、次は食材投入タイム。
今度は逆に、美森から食材を持ってきて入れる事となった。美森、ハゲ丸、千景、園子、と入れていき、そして樹の番になった。紫の煙を発する食材を持った樹の番に。
「えいっ」
そんな可愛らしい声と共に、ぼとっ、ぼとっ、ぼとっ、と音を立てて食材が投入された。
次の瞬間。
――ジュワアアアアアアアアアアアア――
そんな音が響いた。
「いやおかしいだろ!? 樹ちゃん後輩、おまっ、何入れた!?」
「何って……今朝作った物ですけど」
「食材なんだよな!? 食べられる物なんだよな!? なんか溶ける音がしたけど!?」
「んー……炭酸でも入ってたんですかね?」
「なんで自分で食材の内容量把握できてねぇんだよ!? どんな悪魔合体したら何かが解ける音が響く食材が作れんの!?」
樹が持ってきた食材。それの詳細は誰も知らない。強いて言うならば樹が唯一その内容物を知っているのだが、樹からそれを聞けばこの鍋を食べる事はできなくなるだろう。主に恐怖によって。
流石のハゲ丸も体の内側が丈夫とは言い切れない。一度スペシャルうどんを食わされて撃沈しているが故に自らが盾となった場合耐えきれるとは言い切れないのだ。
しかし、どうしてか美森、園子、ハゲ丸以外のメンツは特に気にしていない。いや、むしろ樹が何を入れたのか少しばかり気になっている模様。
別に風や夏凜や銀が貧乏くじを引いて死ぬんなら構わないが、友奈と千景だけはダメだ。純粋と最年少をこんな所で殺すわけにはいかない。
「くっ、ハゲ、どうするの! これじゃあ死人が!!」
小声で叫ぶ美森。彼女がここまでうろたえるのは逆に珍しい……のかもしれない。園子も声が出ていないのか、千景と喋る声すら聞こえてこない。
きっと園子は今回ばかりは戦力外。ここは二人がどうにかするしかないのだ。
「……いや、落ち着けクソレズ。俺に考えがある」
だが、ハゲ丸には考えがあった。あの謎の物体を誰も食べられないようにする秘訣が。
「俺が持っていた物は海産物セット。そしてアワビとホタテと蟹を投入済みだ」
「それで一体……はっ! そ、そういうことね!」
「そうだ。貝殻で樹ちゃん後輩が叩き込んだ謎の劇物を閉じ込める! そして封印! それによって樹ちゃん後輩が叩き込んだ紫色であろうナニかは誰の口にも入らない! しかもそれを誰に押し付けるかも俺達の思いのまま!」
「でも、それには鍋の中に貝殻が残っている状態にしないと……」
「クソレズ。お前がホタテとアワビの身を一番に取るんだ。そして、俺が貝殻で封じ込める。これしか方法はない!!」
「……友奈ちゃんのためよ。やってやろうじゃない!」
そう、これは互いに守りたいものが存在する戦い。美森は友奈のために。ハゲ丸は千景のために。
食材を取る順番は食材を入れた順。つまりは美森から。でないと、最後に入れた人が自分の食材を取って安全圏を確保、なんてこともできてしまうから。
既に紫色の何かが浸かっている液体という、手遅れレベルの代物ができてしまっている事は否めないが、しかし浸かるだけで毒を散布するようなどうしようもない代物というわけではあるまい。
故に、勝てる。この戦い、勝てる。
「それじゃあ食材を取る順番は東郷からよ。一度持ち上げたら戻すのはダメだから注意しなさい」
「えぇ、取らせていただきます。南無三……!!」
そして、美森が箸を鍋に突っ込んだ。
これは闇鍋ではない。人命救助任務だ。絶対にしくじるわけにはいかない。
タバスコとデスソースで構築された出汁の中で箸を動かし、そして美森は見つけた。こつんと当たる何かを。
「えっ、異物?」
呟きながら、美森はそれを取った。
それを暗闇の中で確認すると、何かすぐに分かった。
丸い穴が空き、中身がどこかへ消え去ったアワビの殻だった。
「私急用思い出したので帰り」
「逃がさねぇよ!?」
「ぶっ!!?」
ヤバイ。こんな存在が眠っている鍋は最早鍋じゃない殺戮兵器だ。
流石の美森もわが身が大事。立ち上がり逃げ出そうとしたが、すぐさまハゲ丸が横から足を払い、美森を転ばせた。だが、転ばされてからすぐに美森も正気に戻った。あんな破壊兵器が残っている鍋を友奈に食わせるわけにはいかない。
この事態を重く見ている者同士で結託し、あの破壊兵器をどうにかしなければならない。
「……ご、ごめんなさい。なんかこう、貝殻を取ってしまって。これを食べなきゃいけないと思うとつい」
「別に貝殻まで食えなんて言わないわよ。せめて食える物が出るまでのリトライはオーケーよ?」
「で、ですよね……」
一度正気に戻った美森は改めて自分が一度取った貝殻をもう一度取り、自分の皿に。そして、ハゲ丸の皿に音もなく移し、彼に今の惨状を伝えた。
樹の持ってきた食材は、貝殻を消し去るような毒物なのだという事を。
「う、嘘だろ……!? ど、どうすんだよこれ!?」
「……まだよ。まだ手はあるわ。けど、それには蟹を使う必要がある」
「蟹……? そ、そうか、そういうことか!」
「蟹を何としても見つけるのよ! そして殻を!」
「ここは協力だ! 何としても蟹を!」
しかし、現実とは思い通りに行かない物である。美森が決死の思いで取り出したのは、イチゴ。そしてハゲ丸は溶けた貝殻から出てきたのであろうホタテの身。
そして千景はどうやらどこかの馬鹿が入れたらしいスナック菓子(ドロドロ)、そして園子は。
「えっと、じゃあこ……か、鰹節さん!!?」
「え? 鰹節……あっ」
一体どうして鰹節にそこまで驚いているのか不思議だったが、すぐに理解はできた。彼女は鰹節で自分と千景が箸を伸ばす部分に結界を作り、樹の食材を防御しようとしたのだろう。だが、樹の食材はそれを貫通、溶かし、園子の鰹節の結界は見事に崩壊していた。
自分と千景だけ抜け駆けしようとしたことにちょっとばかりイラッときたが、しかし園子とて千景を救う事に必死なのだ。仕方のない事だ。
そしてその後も手番は進んでいき。
「んじゃみんなが食材を取ったところで食べるわよ」
「これなんだろ~。暗くて見えないから分かんないや」
「ホントですね。何を取ったのか分かりません」
そしていよいよ始まるジャッジメントタイム。少なくとも美森、ハゲ丸、園子は樹の入れた爆弾を手に取ってはいないが、他の部員が何を取ったのかは不明。
友奈と千景が爆弾を手に取っていない事を祈り、風の言葉に合わせ取った食材を口に運び……
「かっら!!?」
「ごっふごふ!!?」
「ちょ、なにこいだだだだだ!!?」
「辛いを通り越してぇぇぇぇ!!」
「み、水水!!」
「ま、まだへいき……ごめんやっぱりむり!!」
「辛い……けど、イケる」
「おおおぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
「うわー、大惨事ね……」
少なくとも千景と美森以外の全員がダメージを受けた。しかし、友奈も叫んだ割にはそこそこ平気なようで、美森が用意した牛乳を飲んですぐに復帰したが、他のメンツは水を全力で煽ってなおも悶えている。
千景は西暦に居る頃、一時期ゲームのせいで辛い物にハマり、辛い物ばかり食べていたころがあったので、その名残でデスソースも平気だった。
「ど、どうしてこんなに辛く……」
いち早く回復した夏凜がそんな事を呟いているが、少なくとも夏凜はタバスコを入れている。
「一体誰がこんなにも辛く……」
なんて園子が言っているが、園子もタバスコを入れている。
「ち、ちーちゃんが無事でよかった……」
と、ハゲ丸が半分死に体で言っているが、彼もタバスコを入れている。粉状から液体のタバスコまで様々なタバスコがあの鍋には入っている。素知らぬ顔をしているが、そもそも全員があの場にある中では一番辛かったタバスコを投入している時点で全員同罪である。
というかうどんのおまけとかピザのおまけとか、そういうのしか残っていなかった時点で誰かがタバスコを持って行ったとは思わなかったのか。
「み、みんな落ち着いたわね! なら二巡目よ!!」
そしてここで二巡目。一応食材を追加し、手順は変わる。
「……ここはそのっちにも相談しないと。あの鍋の中にはまだヤバイのが眠っている……!!」
だが、このままでは恐らくじり貧。蟹の殻を使ったとしても、もしかしたらがあり得るのが現状。
恐らく樹の食材は貝殻を溶かし、鰹節をどうにかするほどの威力を持ったナニかだ。そんな物を蟹の殻で投獄できるとは思えない。故に、ここは自分達の参謀であり最も頭がキレるであろう園子へと連絡を入れる事にした。
勿論、声を出さない。出すのは、音。
トントン、と規則正しい音を鳴らし、美森は園子へと言葉を……いや、信号を送る。
モールス信号と呼ばれるものを。
『そのっち』
その信号にすぐ園子は反応した。
『なに』
『異物除去。案を求む』
あまり長ったらしい文を送ると怪しまれる可能性がある。美森は声で何にしようかなー、何て言いながら早急に園子に助けを求めた。
それから暫くして、園子は一つの案を出した。
ここはもう、犠牲無くしてはどうにもならない現場だ。ならば、手っ取り早く犠牲を出してしまうのが一番いい。
『ハゲ、食わせる』
『どうする』
『案あり。協力求む』
『了解』
どうやらハゲ丸が犠牲になる事は既に決まってしまったようだ。
ならば、と一応美森は蟹を探し、そして探り当てた。なので蟹を取り、サササッと殻だけの状態にすると、その殻を横のハゲ丸へと手渡した。
ハゲ丸の作戦を使うのなら、後は彼がこの殻を使って何とかするはず。
「ん? なんだこれ」
なんて言いながらハゲ丸が何かを持ち上げる。きっと、これが樹の兵器。これを異物だ何だと言って蟹の殻に乗せ、後で廃棄する気なのだろう。
する気なのだろう……が。
「……あれ? マジでなんだこれ」
ハゲ丸がそんな声を上げる。
美森も暗闇の中、ハゲ丸の箸の先を見る。
ハゲ丸の箸の先は、なかった。まるで何かに触れ、そこから溶けて千切れたような跡があるだけで。
「いや箸が溶けてんだけどォ!!?」
「あら、折れちゃったのかしら。そこの箸箱から適当なの持っていきなさい」
「う、うっす……いや、マジか……マジか……」
だが、今が好機。全員がハゲ丸に気を取られているうちに、美森は蟹の殻をもう一度鍋に投入。樹の兵器を閉じ込めるための檻を沈めた。
ならば後はハゲ丸に任せるのみ。
新たな箸を手にしたハゲ丸は勇猛果敢に鍋に攻め入る。
「……見つけた。今度こそ見つけたぞ。箸もまだ溶けてない」
そして、見つけた。樹の投入した異物を。
ならば後は簡単。ハゲ丸は即座に樹の兵器を蟹の殻に投入、封印。暗闇の中でハゲ丸の安堵の息が漏れ、それに美森と園子が作戦は成功し、ハゲを犠牲にしなくてもいい闇鍋に安堵した。
そしてハゲ丸が適当に食材を取り、千景も適当に取り、そして園子の番になった。
「さ~て、何があるかな~? …………あれ、なにこれ、抜け殻かな~?」
園子の番になったが、園子がどうやら鍋の中で抜け殻か何かを発見した様子。
まぁ、貝の殻とかそういう物だろう。だが、それが鍋の中にあっては邪魔だ。故に、それを除去するために園子がそれを持ち上げた。
カラカラと音が鳴る、半分ほどが溶け千切れた蟹の殻を。それは、取り出された瞬間、一瞬鍋の下の炎によって照らされ、美森とハゲ丸にも見えていた。
「嘘でしょ!!?」
「だ、脱獄しやがった!? 檻を破壊して逃げやがった!!?」
まさかのプリズンブレイク。それに美森とハゲ丸が声を荒げる。
当たり前だ。ようやく封印に成功したと思ったダークマターが逃げ出した……いや、蟹の殻を本当に破壊するような物体が食材として紛れているこの現実をそう簡単に想像したくはなかったから。
だが、こうなってしまった以上、作戦は園子が発案した、ハゲ丸を犠牲にした作戦へとシフトする。
それを園子は既に考えているし、手も打ってある。
「ご、ごめんね~。本当に抜け殻だったよ~……」
なんて言いながら、園子は適当な食材を一つ見つけ、同時に樹の兵器を共に見つけ出して摘まみ、箸が溶ける前にそれを摘出。
皿すら溶かしそうなソレを園子は自分が食べる……のではなく。
「あっ、手が滑ったァ!!」
と、叫びながら箸に拳を落とした。
その箸の上に乗っていた兵器は園子の手によって打ち上げられ、そのままハゲ丸の皿の上に軽い音を立てて乗っかった。
そしてハゲ丸は園子の方を向く。
何しやがんだこの女、という意を込めて。
「あはは~。ごめんね~。次良いよ~?」
そして園子は何事も無かったかのように次の番へ。
そう、これが園子の作戦。
とりあえず摘出して打ち上げてハゲの皿に送り、ハゲに拒否らせる間もなく発言権を失い、そのまま流れでハゲに食わせるという人身御供作戦。
つまりは、当初の作戦。
「マジかよ……あの暴君、マジかよ……!!」
「さ、流石ね、そのっち……」
暴君園子様。頭は回るし体の方も良く動くので止められる者が誰も居ないのである。
そしてその後はサササッと手番が回り、いよいよ取った物を食べる事に。
「んじゃみんな取ったところでいただきます!」
風の言葉に合わせ、全員が取った食材を口に運ぶ。
そして、ハゲ丸も。
「だ、大丈夫だ……死にゃしない……死にゃしないから……」
と、呟きながら樹の兵器を口にした。
「くっ……いや、案外イケごふっ!!? まずっ、辛酸っぱ苦ゴッパァ!!?」
最初は、本当に案外イケるかと思った。ちょっと辛くて、苦くて、マズいだけで。
でも、それを噛んだ瞬間、酸っぱい物が流れ出してきた。そしてそれが口内を蹂躙し、更に辛さと苦さが襲ってきて、そこから更に……と激痛と苦痛がハゲ丸を襲いかかり、そのままハゲ丸は気合で飲み込んだものの、今度は胃が拒絶反応を起こし、胃痛と吐き気と頭痛を感じそのまま撃墜された。
倒れるハゲ丸。それを見て顔を青くする美森と園子。もし、これが自分に当たったらと思うと。
「ちょ、ハゲ丸!? なんで倒れたの!?」
「……さ、さぁ」
「じ、自分で入れたハズレ食材でも取ったんじゃないかな~……」
二人は死んだ英雄に敬礼し、そして第三ラウンドに備えた。
もうあの兵器はどこにもない。ここからは平和な闇鍋……のはずだった。
「だ、だいにらうんど……ふぁいと…………」
だが、ハゲ丸がそんな言葉を呟いた直後、美森の箸に何かが絡みついた。
貝殻や鰹節や鍋の底やら箸やら。それらを溶かした結果、美森の箸をも溶かそうとして、しかし溶けなかったが故に絡みついたソレを。
そう、美森も園子も忘れていた。
樹が入れた兵器の数は、入れられた時に出た音を察するに、一個だけじゃない。
最低でも、ぼとっ、ぼとっ、ぼとっと音が出た分だけ。つまりは三個はあるのだと。
闇鍋サドンデスは、メイン盾を失った状態でまだまだ続くのだった。
ちなみに後日、美森、園子、ハゲ丸が病院で原因不明の食中毒にかかったがために検査入院をしたとか何とか。
なんか樹ちゃん後輩の料理の腕がとんでもない事になっちまいましたが、まだ誰かのサポートが無いと時折こんなモンを作り出すって事で一つ。
一応、もうのわゆ編をちょっと書いているんですけど、ぐんちゃんがちょっとオリ主みたいな事してるというか、予想以上に頭勇者部が強すぎてヤバいと言うか、ぐんちゃんってコミュ力付けてタマっち先輩や若ちゃんともちゃんとしたコミュニケーションできてればほぼ全員といい関係築ける感じだったから、それができてしまうせいでなんかぐんちゃんが活き活きしているというか。
なんかそんな感じです、はい。