ぐんちゃんを取り巻くアレコレが多すぎるので、地道に消化しつつほかのキャラとのコミュも深めていく感じ。
ちなみにこの話は八月の頭辺りで完成していたり。その辺りではもう、シンフォギアの二次を毎週書いてたので投稿してなかっただけで……
勇者としての鍛錬は、かなり厳しく苦しい。
若葉のような、既に達人の域に立つほどの剣の腕を持っているのなら、後はそれを伸ばしていくだけだが、他の勇者は違う。友奈は空手や柔道を始めとした様々な格闘術を一から学び、球子は扱いが難しい旋刃盤を巧みに扱うための訓練を行い、杏も同じように連射式クロスボウを確実に相手に当てるための特訓をしている。
そして、千景も。鎌は勿論の事だが、槍と鏡までもを一流に扱えるような特訓をしている。
鎌と槍。二つとも同じく長物であり、友奈のような零距離、若葉のような近距離戦ではなく、そこから更にちょっと距離を離した中距離戦を得意とする武器。
更に鎌は内側に刃が付いている事から、薙ぎ払う事にも技術が必要で、目の前の敵を切るだけでも鎌を振るい、タイミングよく引く。剣や拳のような一つのアクションだけではなく二つのアクションを素早く行う必要がある。
「デスヘルみたいな、ビームサイズ……なら! 楽、だった、のに!」
これがもし、刃がビームで構築されていたなら、そんな事考えずに当てれば斬れるのだから槍よりもちょっと範囲が広い武器として扱えたことだろう。
だが、千景の鎌、大葉刈にそんな便利機能はない。鎌を振って、引き斬る。この動作を確実に行う必要がある。
しかも、千景はそこに加えて槍と鏡までもを同時に扱えるようになるため特訓をしている。頭で鏡を動かし、両手で異なる斬り方が必要な武器を動かす。並大抵の努力でできる事ではない。
「しかも、重い!」
文句を言いながら、しかし二人の残してくれた武器を扱うために腕を振るう。
頭の中で星屑を思い浮かべ、それらが攻撃してくるのをイメージしながらそれに対する反撃を行う。
寄ってくる星屑を鎌で真っ二つにしながら体全身を動かして槍を突きさし、そこから槍を抜きながら体を後ろに下げつつ、鎌を動かして自分ごと動くことで星屑を斬る。そして鏡を一周動かして安全圏を一時的に作った後、再び斬りかかる。
しかし、動いているうちに本来は両手で握るような重量の物を片手で動かしていたからか、槍がすっぽ抜けてちょっと離れた場所に落ちた。
「はぁ、はぁ……握力、が……」
もう既に鍛錬を始めてから一時間以上が経っている。休憩こそ挟んでいるが、それでも握力は徐々に落ちて行く。左手で握っていた槍がすっぽ抜け、すでに右手の方も大葉刈を保持するだけで精いっぱい。
このままでは鍛錬もままならない。右手に装着している、大社に作ってもらった神獣鏡を装備するためのアタッチメントに神獣鏡を装着し、大葉刈を分解して万が一の事故が起きないようにしてから、今度は放り投げる結果となってしまった槍を回収し、矛先を傘にして刃を潰してから日陰に座り込む。
「お疲れ様です、千景さん。スポーツドリンク、飲みますか?」
「上里、さん。ありがとう、いただくわ」
大粒の汗を流す千景に、ひなたがそっとスポーツドリンクを差し出した。
時期は既に秋になったとは言え、運動をしたら暑くもなるし汗もかく。スポーツドリンクを胃に流し込み、喉の渇きを潤してからようやく一息吐き、ひなたがそっと差し出したタオルで汗を拭う。
「千景さんは凄いですね。鎌に加えて、槍まで使うなんて。それに、その鏡も」
「凄くは、無いわよ。一つを極めるんじゃなくて、三つに浮気してるだけ、だから」
次にバーテックスが襲来する日は未だに分からない。
もしその日が近づけばひなたが神託を受ける、とは言われているが、その神託は予告なしに来る物。今急に神託が来ても何もおかしくはない。
そうなった場合、千景はきっと足手まといになる。今はまだ勇者システムも完成しておらず、神樹様の力を受け取り身体能力をより向上させるための戦装束をシステムを通さず着こんだたとしても、きっと千景はスタミナが切れて足手纏いになる。
それに加えて、扱っている武器の難解さ。これがそれに拍車をかける事だろう。
「それなら、両手に二つじゃなくて、状況に応じて持ち変えればいいんじゃないですか?」
確かに、ひなたの言う通りだ。
だが。
「二刀流みたいに二槍流とか……それに近い方ができた方が、かっこいいでしょう?」
「え、えっと……」
郡千景、十二歳。ちょっと早い中二病の到来である。
確かに千景のやるゲームには時々二槍流とか六刀流とか、鎌二刀流とかやるキャラが出てくる。それに憧れるな、と言う方がちょっとばかり酷だろう。
だが、ひなたにそんな事言っても彼女は年頃の女の子。ロマンを求める女の子ではないので困惑するだけだ。
藤にぃなら分かってくれるのに、なんて言いながらちょっと拗ねていると、ひなたが再び声をかけてくる。
「その、藤にぃ、って方。それと、園ねぇって方でしたか。時々千景さんが口にしてますけど、どういう人なんですか?」
この質問をされたのは、二度目だ。
一度目は球子とのキャンプの時。そして、二度目は今。
球子の時は、話した結果、球子に二人は星屑に食われたとでも思われて球子のテンションが下がるのは嫌なのではぐらかしたが、今なら別に言ってもいいか。
どこからどこまで話そうか、なんて思いながらそうねぇ、と口にして時間稼ぎをしていると、丁度球子が休憩しにやってきた。
「二人とも何話してるんだ? タマも混ぜてくれ」
「あぁ、球子さん。今、千景さんから藤にぃって方と園ねぇって方の話を聞こうとしてたんですよ」
「そうだったのか? でも無駄だぞ。千景からはどうせ好感度が足りないとか言われて……」
「いえ、別に構わないわよ。土居さんも。前回はキャンプの雰囲気を壊さないためにはぐらかしただけだし」
「ありゃっ」
ちょっと意地悪してみても良かったのだが、疲れでそこまで頭が回らなかったので球子も聞きたいのなら聞けばいいと本当の事を話す。
とは言っても、どこからどこまで話したらいいモノか。まさか未来の人だなんて言う訳にもいかないし。
「なんだ、三人で何を話してるんだ?」
とか思っていたら若葉が。
更に高嶋と杏までもがそこに混ざってきた。どうやら全員休憩に入ったらしい。チラッと日向の方を見てみれば、今日は友奈と杏に着いていた講師が何やら相談をしている。あの二人が何かを話すからこっちに来たのか、単純に一度休憩に入ろうとなったのが重なったのか。
その理由は分からないが、混ざってきたのならどうなるかは目に見えている。
ひなたが千景から何を聞こうとしていたのかを話し、なんやかんやボソッと呟くことが多かった二人の名前から二人の事が気になり、全員が千景から話を聞こうとする始末。
「えっと、それじゃあ話すけど……ちょっと前まで私が村ぐるみで苛められてたのって、もう……話したわよね?」
『いや、初耳だけど!?』
サラッと暴露した千景に対し、球子、友奈、杏が思わず声を上げる。
あれ? と首を傾げる千景。これには流石の若葉もひなたも驚いたようで、目を見開いている。
「まぁ、苛められてたのよ。石投げられたり服燃やされたり。今思い出しても、ムカつくわ。正直……ぶっ殺したい」
「いやいや!? そんな、細かいところは置いておいて、みたいな事で済む内容じゃないだろ!? 何かこう、公的機関が動くような事だろ!?」
流石の若葉も、過去の事をのんびり話すかのように、困ったわねーははは、なんて雰囲気を出す千景にツッコミを入れる。そしてそれに反応する他四名。
「しかもお父さんは、助けてくれないし……お母さんは、浮気で出ていくし。家庭環境も、もうボッロボロで。まぁ、原因はその二人、なのだけど」
「無視か!? 無視でいいのか!?」
千景も頭勇者部という事が徐々に証明されているが、千景にとっては既に過去の話。
「過ぎた事は、いいのよ。報復なんて、いつでもできるわ」
「い、いつでもって……」
「私には、公的機関の権力と……鎌がある。後は、分かるわね? それと、何かやっても……目撃者なんて、居ないのだし」
「村の人間全員殺してから行動記録をもみ消す気か!?」
千景がそっと目線を逸らした。
勿論冗談なのだが、基本的にやられた事には報復をするのが信念な若葉からしたら、千景の言葉は本気にしか思えない。
しっかりしろ、考え直せと千景の肩を揺する若葉。それが冗談だと言えた頃には既に千景は休憩する前よりも遥かに体力を使っており、暫くは回復に時間を割いた。
「そ、それで……まぁ、苛められてたのよ」
何という雑な導入。
みんな複雑そうな顔をしているが、もう千景からしたらあんな連中、知った事じゃない。もう関わりたくもない。精々今まで苛めていた人間に頭を下げて媚び諂い続けるのがお似合いだ。
それが嫌になったら千景の今の立場から真実を語れば、それだけであいつ等は破滅する。
もうあの村の人間の運命は千景の掌の上なのだから。
「その時、藤にぃと園ねぇが、来てくれたの。迷ってきたみたい、なのだけど……初対面の私を、助けてくれたの」
今でも鮮明に思い出せる。
明らかに不審者みたいな感じで現れて明らかにエロ漫画の導入的な展開になりそうだったあの時を。二人の芸人のようなやりとりを。
あれ? ファーストコンタクト、ろくなものじゃなくね?
「……ま、まぁ、それで。私は帰る二人の、提案に乗って、ついて行って……そのまま園ねぇと一緒に住んでたの」
「そうだったのか……」
「その間にも、色々とあったけど……全部、割愛するわ。でも、二人は私にとって、かけがえのない家族のような存在よ。ダメ親父と、浮気女なんかよりも」
「千景!? さっきからちょっと口悪くないか!?」
だって事実だし、と唇を尖らせる千景だったが、時折飛び出る千景からの暴言に若葉は驚く。
だが、勇者部に居たのならこの程度日常茶飯事。明らかに妹系の内気といった感じの新部長からは唐突なボディーブローが飛ぶし、大和撫子みたいな青いのからはクソレズ発言とそれに伴う行動が出てくるし、普段はおっとりのほほんな姉代わりは怒ると人を埋めるし吊るすし沈めるし。
そう、この程度の暴言、勇者部からしたらなんてことないのだ。
しかしそれを知らない西暦勇者からしたら千景のキャラが壊れたとしか思えない。やはり勇者部とは頭のネジが数本外れているやべー奴の集まりなのである。
「その二人が、使ってたのが……この、槍と鏡」
「二人が使ってたって、どういう事? 大社の人が言ってたけど、それもわたし達の武器と同じ感じの武器なんだよね?」
ここに居る勇者達が持っている武器は、基本的に神社や社等に奉納されていた神器にも似たような物。それを握った、勇者としての適性がある者が勇者となった。
ならば、それと似たような武器を持っていたその二人は。
「分からないわ。でも、二人は言っていた。自分達は、勇者だって」
最後のあの時、二人の口からきいた言葉。
それは紛れもなく、勇者という単語。
――既に千景の中では、もう大体の事が分かっている。あの二人は……いや、少なくとも美森、銀、園子、藤丸の四人は勇者というお役目。つまりは自分達と同じようにバーテックスを倒す役目を担った勇者であり、千景がかつて着させられたあの装束は、未来の勇者の装束。三百年後のソレだ。
つまり、この戦いは少なくとも三百年後。あの四人が勇者として戦うその日まで続くのだ。
それを千景は分かっている。だが、それをここで言うわけにはいかない。故に、誤魔化す。
五人からの追求を、さぁ。もしかしたら昔から勇者という存在は居たのかも、なんて言いながら。
「だから、これは私にとっては、かけがえのない物なの。もし大社の人に渡せば、原型を残したまま、戻ってこないかもしれない……から。だから、渡してないし、私が使ってるの。二人はまだ生きてる、し。それに、また会いに来てくれるって……約束も、してくれたから」
これを渡したら、もしかしたら勇者システムは大幅に進化し、三百年の時を待たずしてもバーテックスを倒せるかもしれない。
だが、その結果、この槍と鏡を失うわけにはいかない。それに、二人は言ってくれた。また、会いに来てくれると。だから、三百年後の勇者であるあの二人にも協力してもらえれば。バーテックスを倒し尽くした勇者達の力を借りれれば。
それまでは、自分がこの槍と鏡を預かり、三百年後に続く歴史を守ってみせる。
「……そうだったのか。千景にとって、それはとても大事な物だったんだな」
「っていう割には扱い雑だけどな」
球子の言葉に何も言い返せない。
乗って移動したり、すっぽ抜けて放り投げてしまったり。最近なんて鏡をお盆代わりにして夜食を運んだり、鏡の上に腰かけて遅刻遅刻―、なんて言いながら教室までの最短距離を飛んでいったり。しかも走るよりも速いし。
槍なんて時々傘替わりにしてるし、矛先が三つに分裂してある程度は広がるから、ハンガーが無い時はハンガー代わりにして洗濯物を干したり。ついでに洗濯棒代わりにしたり。
なんやかんや扱いは雑である。
「……い、いいのよ。二人とまた会えたら返す予定だし」
「それまでに壊れてんじゃねぇの?」
「…………」
「ぐんちゃん……」
何も言い返せない千景に高嶋も苦笑い。
でも、多分これはバーテックスの攻撃を何度も受けて、それでも壊れなかった武器たちだ。そう簡単に壊れるわけがない。
だって時々千景が誤って地面に落としたり、その上で飛び跳ねても神獣鏡はヒビ一つ入らないし。
「…………さっ! 休憩終わりよ!」
「あ、逃げた」
「逃げましたね」
まぁ、聞かれた事は話したのだ。
千景はとっとと槍と鎌を持つと、そのまま外へとすたこらさっさと逃げていった。
だが、なんやかんやで西暦勇者の中で神世紀である二人の像は、ぼんやーりと固まっていくのだった。
まぁ、出会ったらその像は木端微塵にぶっ壊れるのだが。
****
時は移り、神世紀。
千景が西暦に置き去りとなり、しかし勇者として頑張っている時。既に神世紀と西暦の時間はズレにズレており、既に西暦では一か月以上の時が経ったと言うのに、神世紀の方では数時間程度しか経過していなかった。
その数時間の間で園子と藤丸は千景を西暦に置いてきてしまった事を悔やみ、しかし既に機能を失った鳥居に対し何もする事はできず。
しかし、それでも。もしかしたら勇者部に相談したら事態は好転するかもしれない。そう思い、二人は暇な勇者部達を集め、事実を全て暴露した。
「……つまり、なに? 千景は乃木の遠縁の親戚とかじゃなくて、過去から連れてきた子で?」
「本格的にこっちで過ごさせるために、千景をもう一度過去に連れて行って、父親と話させようと思ったら?」
「バーテックスの襲来と重なっちゃって、そのまま西暦に置き去りになっちゃったと……」
突拍子もない話だ。
だが、それでも信じてしまう自分達が居る。既にバーテックスと勇者。更には平行世界の自分とご対面なんていうあり得ない事態に遭遇してしまっているのだ。今さら千景が過去の存在だった、とか、過去から連れてきた、とか。そんなのはどうでもいい。
「……まぁ、よく話してくれたわね、二人とも。悩んだら相談できるってのはいい事よ。そこの青いのもピンクのも、私もそうだけど相談しなかったし」
『てへっ』
青いのとピンクの呼ばわりされた美森と友奈はてへっ、と可愛くとぼける。まぁ、過ぎた事だし可愛い事なので許しましょうという事で風は話を進める。
「で、乃木、ハゲ丸。あんたらはどうしたいの?」
「ぢーぢゃんをむがえにい゛ぎだいぃぃぃぃ!!」
「だずげてくれよぉぉぉぉぉぉ!!」
「やっぱ黙りなさい」
相談をしてからずっと顔を伏せていた二人だったが、顔を上げれば大号泣。風はそっと二人の頭を抑えて無理矢理顔を伏せさせると、どうするかと部員達と目を合わせる。
流石の元勇者でも時を超えるなんて真似、早々できやしない。
タイムマシンなんて物はない。そもそも過去に行けた事自体が奇跡なのに、それをもう一度起こすとなると流石に首を捻っても打開策なんて出てこない。
時とは人間が干渉できない領域だ。故に、どうしようもない。
部員達がどうしたらいいか迷っている中、夏凜は一人部室の外へと出て、部室の中に声が聞こえない位置に立つと、窓の外を見上げた。
そこには、ピンク色の牛鬼っぽい存在と、青色の鳥が。
「……どうせまた、アンタ達の仕業なのよね。何が目的?」
夏凜の声は聞こえているのか聞こえていないのか。いつもはぴーちくぱーちくうるさい謎の存在も今日は黙りこくっている。
平行世界から部員の記憶と魂だけ飛んできた時。平行世界の自分達と出会った時。その時はいつもこの牛鬼っぽい存在と青色の鳥のような存在が見えた。そして、喋っていた。最近のそういう不可思議現象は全部こいつらの仕業だからこそ、二人が時を超えたのも、この珍獣達が原因だと夏凜はすぐに理解した。
そして、それは当たっている。
『……もう、いいの。この時代の勇者達にこれ以上負担を与えるわけにはいかないから』
牛鬼っぽいのがそっと夏凜の側に近寄ってきた。
そして、青色の鳥も夏凜の肩に止まる。
『千景の事は心配するな。あの千景なら、もうきっと――』
青い鳥の声は、遮られた。
夏凜が牛鬼と鳥の首根っこを思いっきり掴んだことにより。
「そういう問題じゃないのよ。散々利用して終わったらポイ捨てのつもり? だったらアタシ達にも利用されろっつってんのよ」
夏凜がまさか相手からの一方的な言葉を聞き続けるか? いや、否。夏凜の心には静かな炎が燃え滾っている。
二人を利用した事は良い。それで千景が幸せになったのならそれでいい。
だが利用するだけ利用して、こちらの事情を考慮せず千景を奪う事。そんな行為が夏凜は許せなかった。
あの二人を泣かせてまでする行為を。
『で、でも。あなた達はバーテックスと戦い抜いた。だからもう、あの時代には……』
「それがどうしたってのよ。バーテックスと戦い抜いた? えぇ、そうよ。戦い抜いて撃退したわ。だからこそ、聞くわ。だから何?」
牛鬼……いや、この時代まで神樹様の一部として存在し続け、そして神に等しい存在にもなった高嶋友奈と、地縛霊のようにこの時代にしがみつき、ただひたすら高嶋友奈を探し続けた乃木若葉はその言葉に目を見開く。
バーテックスとの戦いの苛烈さ。それは二人も知っている。
知っているからこそ、奇跡を起こしてまで天の神を倒した勇者達を、これ以上戦わせるわけにはいかない。そう思っていた。
だが。
「もう一度言うわよ。だから何? 過去に行ったらバーテックスとまた戦う? 天の神とガチンコの戦争をする? えぇ、結構よ。だから二人を……いや、アタシ達を過去に送りなさい」
『……本当に、いいの?』
『また戦う事になるんだぞ。終わりの見えない戦いと、仲間を失う無常さを、私達は知っている。今度はお前達がそれを受ける事になるかもしれないんだぞ』
「終わりが無い? 仲間を失う? はっ。随分とお茶らけた事を言うのね。だったら、真っ向から言わせてもらうわ」
夏凜は、二つの珍獣を窓から投げ捨て、指をさす。
「アタシ達勇者部をナメるんじゃないわよ、この珍獣風情が! 分かったらとっととアタシ達を過去に行けるようにしなさい! しなかったら明日の献立に並ぶことになるわよ!!」
啖呵を切った夏凜はそのまま部室の中へと戻っていった。
明日には行けるようになる。そう伝えると、部室の中からは驚きの声と、二人の泣きながらの感謝が聞こえてくる。
それを聞き、高嶋と若葉は顔を合わせ、溜め息を吐いた。
『この時代の勇者って、結構血気盛んだね、若葉ちゃん』
『全くだ。少しは老体を労ってほしい物だ』
『……もう、あの時代とこの時代は完全な平行世界に分裂してる。過去と未来を繋げるよりも容易いけど』
『代わりに、何年の差が生まれる事か』
『でも、一度繋げれば時間の経過は同じにできるから、頑張ろう?』
『そうだな。後輩たちにちょっとは良い所、見せてやるか』
そして、もう一度神の奇跡は起こる。
神世紀の勇者達が西暦の勇者達と手を取り合う日は、近いのか。それとも、遠いのか。
ぐんちゃん、訓練中に借り物を壊してしまうのでは疑惑を抱いてしまう。大丈夫、それバーテックスからの攻撃でヒビも入らなかったやべー硬度持ってるから。床に落とした程度じゃ傷一つ付かへんで。
そしてサラッと自分の過去を暴露。そして勇者部や兄代わり姉代わりが結構いい人みたいな感じで西暦勇者の中ではイメージが固まりましたが、その実はただの頭あっぱらぱー集団。さてどうなるファーストコンタクト。
後半は場面は移って神世紀へ。修羅場時空で唯一記憶が残っているがために高奈神とワカバードが見える夏凜ちゃん。
そのっちとハゲを強制送還したのは、既に戦いを終えた勇者達をまた戦いに誘うのは……という優しさからでしたが、余計なお世話だと夏凜ちゃんが一蹴。
更にサラッと高奈神が色々と暴露。どうやらこの作品のタイムパラドックス理論は、過去を変えると未来がその分だけ分裂するタイプだったようで。
ついでに参戦までには少し時間がかかるかもよ、とは高奈神とワカバードの言葉。神世紀勇者の参戦はまだ遠いのであった。