とりあえず今回は全員でキャンプ回。前回はタマっち先輩とちーちゃんの二人だけだったので文字数も一万文字前後ですみましたが、今回は六人もいるので前回よりも長め。
そろそろこいつらも頭勇者部化させていかないとなぁと思ったので普段よりもおふざけ多め?
とある日のキャンプ。
この日の参加者は珍しく西暦勇者全員であり、近場の丁度いい感じに広く、ある程度は騒げそうなキャンプ場へと来ていた。
諏訪は大変な状況ではあるし、キャンプ客も色んな事情があってかほとんどいない状況と、かなり寂しいと言うか身も蓋もなく言ってしまえば寂れている状態ではあるが、しかしそんな物に構っていてはいつか来る戦いに押しつぶされてしまいそうだ。
と、言う事で世間のアレコレなんかは気にせず中学生となった五人&小学生一人はペグを地面に刺してテントの設営をしていた。
「……やっぱり私のとひなたのテント、なんか安っぽいな?」
「そりゃタマのは本格的なアレだけど、そっちのは二千円のやつだし。千景のはちょっと高めの二人用だけど、お前のはクッソ安くてクッソ狭い二千円のやつだし。ケチったお前が悪いんだよ野武士」
「なんだと劣化コンバトラーV」
「超電磁ヨーヨーぶつけられたいか落ち武者。しかもそれ一人用だぞ野武士。何見てそれ買ったんだよ馬鹿武者」
「値段に決まってんだろ劣化ボルテスV」
なんか初手で劣化コンバトラーVと落ち武者が口論しているが、これに関しては野武士が悪い。
劣化ボルテスVのは親に買ってもらった結構本格的で普通に高いやつであり、千景が買ったテントはしっかりと二人用の物であり、しかもそこそこいい値段がする、中学生が買うにしては十分高級品というレベルである。
馬鹿武者が買ったのは二千円のクッソ安いテントである。二人で寝る予定なのに一人用である。縦幅は何とかなっても横幅に問題がある。
「大丈夫ですよ、球子さん。わたしは若葉ちゃん布団で寝ますから」
「ん? なんかおかしい言葉が向かい側から聞こえた気がするぞ?」
一人用のテント。そして誰も入ってくる事ができない密室。何も起きないわけがなく。
どうやら若葉の貞操は今日、ひなたに奪われてしまうらしい。
そして完成したのは、とても立派な数人で寝れる広いテントが一つ。二人用の普通のテントが一つ。二千円のクッソ安っぽい一人用テントが一つ。
「ひなた。寝れなかったらこっち来ていいからな?」
「むしろ寝かせません!」
「き、キマシ……」
「うーん、この悪寒。千景、この正体分かるか?」
「対面の紫に直接聞きなさい。高嶋さん、テントの中はどう?」
「結構心地いいよ、ぐんちゃん!」
テントの中には既にマットを敷いてあり、それに加えて寝袋にも入るのだから千景のテントは十分に朝まで寝れる状態だ。それに、この中では一番料理ができるであろう千景が高嶋とペアを組んでいるので、食事という面でも充実したキャンプになるかもしれない。
球子のテントは言わずがな。何度も自分の身で色んなことを経験してきた球子がその経験から用意したキャンプ用品の数々を杏に貸しているため、不足は殆どないと言ってもいい。
若葉はとりあえず安いの買っとけ精神で色々と買ったので、二千円のテントに五百数円の銀マット、そしてクッソ安い寝袋。春先で夜中は冷える時期なので、もしかしたら二人は凍え死ぬかもしれない。もしかしたら夜中に運動して暖を取るかもしれない。
「しかし、六人で対抗キャンプだなんて、土居さんも変な事考えた物ね」
「まぁ面白そうだろ? 用意も食事も全員別々! 遊ぶ時だけ一緒に行動! ある者は他のペアを羨み、ある者は他のペアに優越感を得る! そういう遊びだ!」
アウトドア派の球子、若葉、高嶋。中間タイプの千景。タマっち先輩とならどこでもいいよぉな杏、若葉ちゃんとならどこでもいいですようふふなひなた。半数以上がアウトドアに興味があり、残りはある人と一緒ならどこでも構わないタイプなので実現したキャンプ対決とも言えるような物だ。
その結果、ひなたはキャンプの事がよく分からないので若葉に全てを任せ、その結果若葉が買ってきたテントは一人用の二千円。寝袋だけは二つある。どうやって寝る気なのだろうか。
「んでもってこっからは遊ぶぞ! 若葉、キャッチボールするぞ!」
「よし来た。お前の顔面に豪速球を叩き込んでテントを奪い取る!」
「考えてる事が邪悪ゥ!!」
「あっ、わたしもわたしもー!」
そして根っからのアウトドア派はその足でキャッチボールへと向かった。なんやかんやで体を動かすのが楽しい子達なのである。
対してインドア派はタープを張った千景のテントにできた日陰に椅子を展開し、そこに腰を下ろしてくつろぐことに。杏は球子が持っている半分寝るような形で座れる椅子に。千景も同じような、でも少し安めの椅子に。
ひなたは数百円の小さな安っぽい椅子に。
「……お尻痛いです」
「……良かったら、私の椅子、使う?」
「いいんですか? でも、そうすると千景さんの椅子が無くなって……」
「いいのよ。私には切り札があるから」
そう言いながら、千景は自分の鞄の中からとある物を取り出した。
それを組み立てれば、千景がこの日のために購入してきたハンモックがしっかりと自立した。そこに寝転がればこの三人の中の誰よりも快適で、木陰の涼しさを味わう事ができる空間が生まれた。
流石の球子もハンモックまでは買っていなかったようで、杏が恨めし気に千景の方を見ている。そしてひなたは千景が譲ってくれた椅子に。
「快適快適。最高ね、ハンモック」
「いいなぁ、千景さん……」
「後で変わってあげるわよ、伊予島さん」
ハンモックに揺られてゲームをする千景。椅子に座って本を読む杏。椅子に座りながらもカメラで若葉の様子を撮り続けるひなた。
若葉のせいでひなたが困り顔をしていたが、これでなんとか全員が快適な環境でそれぞれしたい事ができるようになった。しかし、ハンモックというのは意外と眠くなるようであり、千景は数十分で舟を漕ぎ始めていた。
一番年上だからと普段からちょっとお姉さん顔をする事が多い千景の瞼が少しずつ落ちかけているのはどことなく珍しい光景だった。
「あれ? ぐんちゃん、寝ちゃってるの?」
杏とひなたが声を殺して笑っていると、少し休憩に来た高嶋が舟を漕いでいる千景に気が付いた。
そんな高嶋に杏とひなたは口に手を当て、静かに、というジェスチャーで高嶋の声のボリュームを落とさせた。高嶋もそれに従ってボリュームを落とし、既に半分以上瞼が落ちかけている千景の顔を覗き込んだ。
もう意識が殆ど残っていない千景は高嶋に気付かず、思わず高嶋はそんな千景に笑ってしまい、ひなたが座っていた椅子に腰を落としてハンモックを手で揺らし始めた。
結果、千景は就寝。ハンモックに揺られて快適な眠りに就いた。
「千景さん、可愛らしいですね。こんな風にわたし達の前で寝るのって初めてな気がします」
「わたしとゲームをしてる時は時折寝落ちしますけどね。けど、こうやってマジマジと見るのは初めてな気がします」
「えいっ、ぐんちゃんと自撮り!」
高嶋たちはそんな千景をまじまじと見て笑っている。特に高嶋なんて珍しい千景の寝顔と一緒に自撮りなんてする始末。これを千景が知っても彼女は恥ずかしがるだけだろう。
杏やひなたなら、恥ずかしがって消してと懇願するだろう。
若葉と球子なら力づくで彼女達を叩き潰して携帯を奪い取って写真を消すだろう。
「……しっかし、若葉ちゃんと球子さんはいつまでキャッチボールしてるんでしょうか?」
「多分、体力無くなるまでずっとだと思いますよ」
実際キャッチボールに関してはその通りであり、二人は息が切れて腕に違和感が残るまでの二時間以上、ずっとキャッチボールをしているのであった。しかも、中学生の女の子が投げるにしては相当速すぎる速度で。
****
「……どうせなら起こしてほしかったわ」
「まぁまぁ。外で寝るのもいいじゃないですか」
「そうだぞ。休息は誰にだって必要な物だ」
結局千景はその日の夕食の食材を買いに行くまでの時間、爆睡をかまして見事に球子と若葉にも寝顔を見られてしまった。
だが、二人は写真を撮らなかったようで、千景は一応二人にお咎めを行わなかった。
そんなこんながあったが、その後はそれぞれのチームから一人、食材を買いにキャンプ場近くのスーパーへと向かった。
食材購入&調理組は千景、杏、若葉。そして調理場を整えて料理をできる環境にするのは球子、高嶋、ひなたとなった。
本来はひなたが食材を買いに行く予定だったが、キャンプ飯は私に任せろ! と若葉が豪語したので若葉が食材担当となった。一応、高嶋には千景が持っている焚火台に炭と着火剤を入れて着火。それで火が付くからと言ってあるので、何度かキャンプに言ったことがある高嶋なら問題はないだろう。
球子も大丈夫。ひなたは少しばかり不安だが、彼女もここに来る前に勉強していたので問題はないだろう。
「それじゃあ、ここからは別行動ね」
「そうだな。千景、杏、お前ら私のキャンプ飯を見て羨ましがるんじゃないぞ?」
「それは無いと思うけど……なんでだろう、一抹の不安が……」
「ひなたさんが可哀想な事にならないといいですけど……」
そんな杏の言葉は若葉にとって挑発にもならなかったようで、そのまま別行動となった。
千景が今日作るのは、スキレットで作る簡単パエリア。そのパエリアの横でチーズフォンデュをするためにチーズを溶かし、同時にそのチーズフォンデュにつける具材&肉を焼く。
多めに無水カレーを作って、米を食った後は残ったカレーでカレーうどん、なんていうのも良かったのだが、偶にはガッツリ肉や野菜を焼いて食うのもいいな、と思った結果、チーズフォンデュをしながら焼き肉&焼き野菜、あとついでにパエリアという事になった。
米は先んじて球子が用意したので、それ以外の具材をパパパッと。パエリアの具材と、焼くための肉と野菜。それを籠の中に入れて会計を済ませて待ち合わせ場所に向かえば、そこには既に買い物を終えていたらしい若葉が。
「あら、乃木さん。相当早いのね」
「あぁ。千景こそ早かったな?」
「私はもう買う物が決まってたもの」
千景は予め買う物を決めていたため、買い物はかなり早かった。そうなると、若葉も買う物は決まっていたのだろう。にしてはなんだか袋が小さい気がするが。
暫く若葉と適当に話していたら、買い物を終えたらしい杏が合流。球子がダッチオーブンを持ってきていたのは千景も知っているし、杏もそれに合わせて買い物をしてきたらしいので、そこそこ袋の中身は多いように見える。
というか、白い袋の内側にカレールーが見えるのでカレーを作る気なのだろう。
「あぁ、杏。結構買ってきたな?」
「千景さん程じゃないですけどね。というか千景さん、結構買いましたね」
「作る物は一つだけじゃないもの。そりゃこうもなるわ」
チーズフォンデュはアルミホイルでカマンベールチーズを包んで上の方を切り取り、それを網で焼けばチーズフォンデュの完成だ。カマンベールチーズの表面は溶けにくいので、こうしたらチーズフォンデュができあがるのである。
あとはパエリアを食べつつ、肉や野菜をそれにつけたり、焼き肉のたれにつけて食べる。簡単だがとても美味しいキャンプ飯になるだろう。一応、若葉がやらかした時のためにひなたの分も焼き肉と焼き野菜は用意はしてあるが。
買う物を買ったらとっとと退散。徒歩でキャンプ場に戻れば、三人は無事火を起こして調理組を待っていた。
「あっ、待ってたよぐんちゃん!」
「やっと戻ってきたか、あんず! もうタマの腹はぺっこぺこだぞ!」
「わ、若葉ちゃん……? 袋が随分と小さいような……」
満面の笑みで千景を迎える高嶋。早く早くと急かす球子。やっべ、やらかしたと言わんばかりの表情を浮かべるひなた。これは若葉の提案を蹴ってでも自分が行くべきだったと後悔している顔だ。
しかし時すでに落とし。火はある、料理はある、水道もある。ならば後は料理をするだけだ。
「ぐんちゃんぐんちゃん、何作るの?」
「パエリアとチーズフォンデュよ。嫌いな野菜とか、あったかしら?」
「特にないよ。っていうか、チーズフォンデュ!? キャンプでできるの!?」
「えぇ。ちょっと小さいけどね」
と、喋りながらも腹が空いているであろう高嶋のためにササっと調理に入る。
作るパエリアはシーフードパエリアなので、とりあえずオリーブオイルでにんにくを炒めて香りが出てきたところでシーフードミックスを炒める。
そこに米を入れて二、三分ほど炒める。既にこの時点で結構いい匂いがしている。どうやら球子&杏ペアは米は既に球子が炊いていたようで、すぐにカレーの調理に入っている。今はダッチオーブンで野菜を炒めている最中らしい。
ひなたは表情が死んでいる。マジで若葉がやらかしたらしい。
「ぐんちゃん、手際すごくいいね。いつも何か作ってるから慣れてるの?」
「えぇ。料理は慣れって部分が結構多いから。でも、パエリアは結構簡単な部類よ?」
「そうなんだ。今度教えて?」
「もちろん」
言いながらも、米を炒め終わった千景は米、コンソメ等を入れ、後は米に芯が残らない程度に炒め続ける。そこら辺の加減は千景の感覚次第だが、パエリアはここに来る前に練習で何度か作ったので特に問題はない。
それを炒めている間に高嶋は千景に言われたとおりにチーズをアルミホイルで包み、それの上の部分を切って焚火台の端っこの方で焼き始めた。後はチーズが溶け始めた辺りで焼き肉&焼き野菜の開始だ。
そこまで行った辺りで千景はチラッと若葉とひなたの方を見た。
「うん、やっぱり外で食ううどんは美味いな」
「美味しいですけど……美味しいですけどぉ……!!」
やりやがったあの野武士。
どうやら野武士は外でうどんを茹でてそれを食べる事にしていたらしい。
確かに香川のうどんは美味しい。コスパもいい。だが、いくら何でもただ茹でて市販の汁を入れただけのうどんをパエリアとカレーに囲まれて食べるのは、流石に悲しい思いになったらしい。一応きつねうどんだが、普通に家でも簡単に作れるようなうどんだ。だって市販の物を数分で調理しただけだもの。
ひなたは釈然としない顔でうどんを啜っており、若葉は満足げにうどんを啜っている。ここまで来てきつねうどんって。
「流石に一束数十円のパックうどんは予想できませんでしたよ……」
しかも麺に関しては安物らしい。数個で百円程度の。
それを茹でてその上に油揚げを乗せただけ。汁に関しては出汁を薄めた感じの適当に作ったうどん汁。
美味しいけども。
美味しいけども、二人以上のキャンプで食うにはいささか質素にも程があると言うか、周りが周りだけに余計にみじめになってくる。だって周りはカレーとパエリア&チーズフォンデュだもの。すっごいいい匂いがしてくる。
「ひなた、一つで足りるか?」
「……えぇ、もういいです」
流石にひなたも愛でどうにかできなかった模様。
若葉はなんか満足しているので放っておいてもいい。だが、ひなたは流石に可哀想だ。と、いう事で千景はひなたをちょいちょいっと呼び寄せ、ひなたは見て分かるレベルで表情を明るくして千景&高嶋ペアの方へ。
「流石にこの状況でアレは……」
「一人で食べるならまだしも……」
「お家で数百円あれば誰でも作れますよ、アレ……」
実際うどんを茹でて出汁をお湯で割って油揚げを乗せればはい完成。素うどんじゃなかっただけマシだが、キャンプに来てまでそれなら、もうちょっと凝ったうどん料理を作るとか、外でしか作れないようなうどんを作るとか。
朝に食べるのならば十分すぎるし、一人で食うのならそれで十分事足りるだろう。外で一人、静かな空間でうどんを食べる。カップラーメンが外だと美味しくなるように、うどんだって外ならば美味しくなる。しかし、それは周りに誰も居らず、一人で静かで優雅な朝や夜を迎えた時に限る。
「美味しかったんですけど、流石に皆さんが凝ったものを食べてるのに、アレは……」
なにせ周りがカレーとパエリア&焼き肉+チーズフォンデュだ。数分で楽に作れるうどんだけでは流石に悲しくなってくる。
「なんでだひなた! うどん美味しいだろ!?」
「美味しいですけど、わたしはもっと凝った若葉ちゃんの手料理が食べたかったんです!」
「高級うどんだったらよかったのか!?」
「いや、そういうわけじゃ……でもそれならまだ……いや、でも……うぅ……! とにかく、折角頑張って火を起こしたんですから、もうちょっと凝った物が食べたかったんですよぉ!」
そこで迷う辺りひなたも立派な香川県民だ。
わかひなで痴話喧嘩をしている間に千景の方はパエリアが完成。流石にひなたも炭水化物をそんなに食べると後が怖いので、パエリアは千景と高嶋で食べ、チーズフォンデュを三人で食べる事に。念のために三人分買ってきておいて正解だった。
「ほら、上里さん。痴話喧嘩してないで食べましょう? 野菜、焼けたわよ」
「もう、若葉ちゃんも千景さんみたいに凝った料理ができればいいんですけど……あっ、美味しいですね!」
「パエリアも美味し~!」
「我ながら上手くできたわね」
パエリアと焼き肉も家でやろうと思ったらできる。だが、そこまでにかけた手間やら何やらが更に美味しさを際立たせているのだ。
球子&杏もカレーを作れたようで、二人とも笑顔でカレーを食べている。
若葉は一人寂しくうどんを食べている。身内がみんな凝った物食べてるのに一人だけうどんを食っている。美味しいけども、どこか寂しい。
「若葉ちゃんにお料理を教えるべきでしょうか……」
「まぁ、乃木さんも悪気があったわけじゃないし、気にしたら負けよ」
「このモヤモヤはこの後のお風呂とテントの中で発散する事にします」
それはモヤモヤじゃなくてムラムラの間違いではなかろうか。
だが、暫く食べればひなたも笑顔で若葉の元へと帰っていった。野武士はジッと千景達の方を見ていたが、まぁ気にする事はないだろう。
結局野武士は放置したまま、千景達は食事を終わらせ、そのまま洗い物を済ませてから六人で一緒に近くの温泉へ。
荷物に関しては大社職員がしっかりと見張ってくれているので問題はない。こういう時のためのどこにいるのか分からない大社職員だ。
「そういえば、みんなで温泉に来るのは初めてだな。なんやかんや付き合いは年単位になったが、案外まだ一緒にやってない事は多いな」
「みんなでキャンプも今日が初めてだったもんね。今度は何する?」
「夏になったら海とかどうでしょう?」
「いいですねぇ。スイカ割りとか、ビーチバレーとか」
そして温泉、というよりかは銭湯。六人で並んでお湯の中に浸かれば、自然と体中の力が抜けて溜め息が漏れる。
頭の上にタオルを乗せる、どこの昭和スタイルだと聞きたくなるような感じでお湯に浸かる若葉が特に何を気にするのでもなく、適当にそんな事実を口にすれば、高嶋達がそれに続いて今度は何するか、どうするか、なんて事を話し始める。
ちなみに、脱衣所ではひなた、千景、杏の三人が結構チラチラ、もしくはガッツリと若葉、高嶋、球子の脱衣シーンを見ていたのは言うまでもない事である。
閑話休題。
千景もその会話には混ざるが、その視線はとある部分へ。
「……にしても、伊予島さん。いつも思うのだけど、歳の割には相当育ってるわよね」
「え? 相当って、何がですか?」
「立っ端と胸」
立っ端。つまりは身長。ついでに胸。
そう言われて自分の体に視線をやった杏は、そっと自分の体を腕で抱くような形で隠した。いや、全然隠せてないのだが、気持ちの問題だろう。
「そ、そんな事ないですし、じろじろ見られると恥ずかしいんですけど……」
「それは悪かったわ。でも、そろそろ見られるよりも恥ずかしいことをされるかもしれないわよ?」
なんで? と聞こうとした杏、直後に怪しい気配を察知。
千景が杏の前を指さすと、そこにはいつの間にやら湯船の中を突き進んできていたタマっち先輩が。あっ、と気が付いた時にはすでに遅し。球子が自分の体を全く隠す事無く全裸で思いっきり杏に飛びかかった。
「ふははは! 油断したなあんず!!」
「ちょっ、タマっち先輩!?」
「お前は後輩なのに何でタマよりもこんなに色々とデカいんだ! もげろ! もしくはタマに寄越せ!!」
「む、無理ですからタマっち先輩! というかみんなが見てますから止めてください!」
「断る!」
「即答!?」
なんて、球子と杏が痴話喧嘩みたいなものを始めた。
球子はなんか徐々に悲しい表情になってきているし、杏はなんか恍惚とした色っぽい表情になってきているし、ちょっと一緒に居ると色々と勘違いされそうな光景が生まれているが、今、周りに他の客は居ないので安心してバカ騒ぎできる。
あまり褒められたことではないが。
しかし、あんまりやり過ぎると白いのが球子を逆に襲ってここでナニを済ませてしまうかもしれないので、この辺で千景が声をかけて球子の事を止めた。
「止めてくれるな、千景! お前なら分かるだろう! タマと同じ感じの千景なら!」
「あんたよりはマシよ、合法予定ロリ!」
「がぼぉ!?」
なんか幼児体系と同じ境遇にされそうだったので、思いっきり球子の頭を掴んでお湯の中に叩き込んだ。
こんな事をしたら普通に怒られるのでやめましょう。
しかし、球子だって腐っても勇者。お湯の中から腕を伸ばし、そのまま千景の頭を掴むと、力づくで千景の頭もお湯に叩き込んだ。
「おいおい、行儀が悪いぞ、お前ら」
「まぁまぁ、若葉ちゃん。わたし達以外誰もいないからね?」
呆れた表情の若葉と苦笑する高嶋。杏もひなたも高嶋と同じような表情をしているのは言うまでもない。
一人だけ呆れた顔をしている若葉に、頭だけを出して黒いクラゲと化した千景が煽りをかける。
「そうよ、ナイチチ堅物ガール」
「んだと新種のクラゲが。やんのか?」
安っぽい喧嘩の売り方と買い方である。
しかし、若葉は気づかない。いつの間にか球子が千景の手を離れてどこかに行っていることに。
「行きなさい、タマコファンネル」
「若葉も我等ナイチチ同盟に入れてやるってんだよぉ!!」
「ふざけんな、私は平均程度にはがぼぼぼぼ!!?」
若葉の抗議も虚しく、球子の手により温水の中へと引きずり込まれてしまった。
あらら、と笑う高嶋。だが、そんな高嶋の手をそっと千景が掴んだ。
「高嶋さん」
「なにかな?」
「こちら側へようこそ。あなたは選ばれたわ」
「ちょっと待とうか。わたしも平均程度にはあるからね? タマちゃんやぐんちゃんほど平坦じゃないからね?」
「よく言ったわね、高嶋さん。さぁ、沈みましょう?」
「この理不じぶくぶくぶく……」
結局高嶋もそのまま温水の中に引きずり込まれて行き、結局大人しく湯船に浸かっているのはおっとり系巨乳二人だけとなった。
あらあら。ど、どうしましょう。と困り顔を浮かべる二人を、新種のクラゲと化した四人が湯船から鼻から上を出して見つめる。
「やっぱアレ反則だろ」
と、タマコクラゲ。
「何をどうしたらあんな風に……」
と、チカゲクラゲ。
「私は立っ端ばかり増えたのだがな」
と、ワカバクラゲ。
「食べてるものと規則正しい生活、とかかな? あと適度な運動?」
と、ユウナクラゲ。
結局体の成長には個人差があるので、一概にコレが、とかアレが、とかは言えないのが悲しい所だが、しかし羨ましいのは変わらない。
巫女さんなんていう神聖な職に就いておきながら体つきはドスケベなひなたと、おっとりインドアガールの典型的な例みたいなのに、誰よりもスタイルがいい杏。結局、平均程度と敗北者にはそれを羨む事しかできないのである。
「……嫉妬は、醜いものね」
「そうだな……」
最終的には千景と球子の心が無事ぽっきりと折れて終了。クラゲ共は再び髪を纏めて大人しくお湯に浸かる事にした。
なんやかんやで勇者や巫女なんて物をしている六人だが、結局は年頃の女の子六人。風呂が嫌いなわけもなく、最終的に雑談とかをしながら十数分は湯船で今までの疲れを癒す事に。
「ちなみに、この中の誰かが恋バナとかできないのか? タマ達もそういうアレコレの一つがあっても……」
「やめなさい、土居さん。辛い真実を直視するだけよ」
主に、色々と整っている六人の誰もが告白を受けた事ないという事と、球子がロリコンのレズに狙われているという事。
若葉は小学生時代は堅物だと思われ距離を取られ続け、ひなたはそんな若葉にべっとりで近寄りがたく。球子は同年代の異性からは遊び仲間程度にしか思われず、杏はそもそも学校よりも家と病院に居る時の方が多かった。千景は言わずがな、高嶋も同性とワイワイやるだけで異性に告白されるイベントなんてなかった。
結局、色恋なんて知らないレズ三人とノンケ三人なのである。
「で、これ以上はのぼせるからと湯船から出た訳だが……」
「髪が長いと大変そうだよね。乾かすのにも時間がかかるし」
そんな悲しい色恋沙汰報告はなかったので湯船から出る事となったのだが、湯船から出れば体を拭き、髪を乾かす事になるのだが、ロングヘア―である若葉、ひなた、千景、杏は自分の髪を乾かすのに相当な時間を使っていた。
既に高嶋と球子の二人は着替え終わっており、髪はこれからはもう寝るだけなので、特に纏める事無くそのままにしてあるが、他の四人は丁寧に髪を乾かしているので結構な時間がかかっている。
「全く持ってその通りだ。私もバッサリと切ってしまいたいんだが……」
「それだけは許しませんよ、若葉ちゃん?」
「と、ひなたにしつこく言われてるからな。結局このままだ」
「私は………………理由なんてないわ」
「わたしも、特に理由もなくこのままですね。変える気も無かったので特に弄らず何年も」
若葉はひなたに言われたから、ひなたは若葉にそう言っているのだから自分も合わせて、千景は言葉を濁したが、正直に言えば面倒だったから。だって散髪しに行くには村から出て村八分が届かない場所で髪を切る必要があったし。杏は、特に理由もなく。強いて理由を言うのならば、髪を切りに行く余裕があるんなら本を読みたかったから。
大体十分ほども経てば四人も髪を乾かし終わり、着替えも終わってホカホカ気分で銭湯を後にした。
道中も他愛のない事で盛り上がり、そのままキャンプ場へ戻って自分達のテントの前に展開した椅子に腰を下ろした。
ちなみに杏には昼寝する前に約束していた通り、ハンモックを貸した。ハンモックに揺られて本を読む杏はどこかご機嫌だ。
「はぁ~……ご飯いっぱい食べて、お風呂も入ったから段々と眠くなってきたよ……」
「外もいい感じに涼しくて気持ちいいものね。眠くなるのも仕方ないわ」
とは言うが、ガッツリ昼寝したのであまり眠くない千景。対して高嶋は昼間から全力で稼働し続けているので流石に眠くなってきたらしく、座ってから数分で何度も欠伸をし始めた。
だが、それはどこのペアも同じようで、唯一元気にしているのは、あまり動いていなかった杏くらいだろうか。
「高嶋さん、眠かったら先に寝てていいわよ」
「ぐんちゃんはぁ?」
「もうちょっと夜風に当たってから寝るわ」
と、ちょっと年上ぶってみるが、内心はちょっとドキドキ。
銭湯では合法的に高嶋の脱衣と裸を見られたし、一緒にお風呂入れたし。更には寝顔をじっくりと見るチャンスまで来たのだからそれを逃す手はない。荷物の中に仕込ませたカメラでしっかりと高嶋の寝顔を撮るために、あとちょっとカッコつけなければ。
とかなんとかやっている内に他のペアも大体はテントの中に入っていったようで、杏以外の面々は既に姿を消していた。
なんか若葉の所はテントが明らかに内側から押されて変な形に変形しているが。テント破れたりしないだろうか。
「伊予島さんは、まだ寝ないの?」
「もうちょっとこうやって本を読んでたいなって思っちゃいまして。外で本をじっくり読む機会なんてないですし」
「それもそうね。外で涼しく、ランタンの明かりを頼りに本を読むなんて乙な物よね」
「全く持ってその通りです」
と、ちょっとだけ千景は杏と会話。流石に長時間話しかけてしまっては彼女の時間を奪う事になってしまうので、本当にこれだけ。
後は高嶋が何をしても起きない程度にはしっかりと寝付くまで、ゲームでもしようと待っていた時。なんか動きがあった。
『もう我慢できません!』
どうやらひなたの理性の糸がプッツンしたらしい。あとは単純に、あんなに狭い所で寝かされたのだから我慢の限界だろうか。
急にうるさくなった隣のテントに千景と杏はビックリしてそっちに視線をやる。
『うおぉ!? いきなりどうしたひなた!? どうして寝袋から出る! どうして私の体を触る!?』
『若葉ちゃんがいけないんですよ! こんな小さなテントで二人一緒だなんて、襲ってくれと言っているような物じゃないですか!!』
『何がどういう事だ!? というか脱ぐな脱がせるな!! お前ほんとにどうした!?』
『さぁ若葉ちゃん! この小さいテントで眠れないほどの情熱的な夜を!!』
『するかぁ!!』
と、言ったところで急にテントの出入り口が開き、そこから半分だけ寝袋を被ったひなたが射出されてきた。そしてそこからは色々と乱れた若葉が顔をのぞかせた。
「と、とりあえず頭を冷やせ、ひなた! 私にその気はないからな!!」
それだけ言って若葉はテントを閉め、ひなたを完全に締め出してしまった。
ようやく戻ってきた静かな時間。しかし、めっちゃ気まずい。明らかにアレしようとしたひなたがやっちまたっと言わんばかりの顔で二人の方を見ているのだから。もう視線を逸らして時間をやり過ごすしかないじゃない。
「……その。とりあえず、テントの端っこのほうでいいので、貸してくれませんか?」
「わたしの所で良ければ……」
「いや、ほんと、すみません……アレは我慢できませんって……」
そのままひなたは球子が現在就寝中のテントへ。一応、二人以上寝れる程には広いテントなので、ひなたが入っても何ら問題はないだろう。
確かに、あんな狭いテントで寝ろと言われたらそりゃ色々と我慢も限界に達するだろう。仕方のない事だとは思っても、レ〇プ未遂された若葉にはちょっと同意する。だが、ちょっと若葉の表情は満更でもないといった感じになっていたのは気のせいだろうか。
杏も数十分か数時間後か分からない程度の時間が経過した後にあくびを一つして、ハンモックから降りてすごすごとテントの中へと入っていき、千景もそろそろゲーム機のバッテリーが限界なのでゲームを終わらせ、テントの中へランタン片手に入った。
「……高嶋さん、よく寝てるわね。可愛いわ」
テントの内側にランタンを吊るして高嶋の方を見れば、高嶋はあどけない表情で眠りに就いていた。
一応、千景と球子はキャンプ時の寝具は封筒型の寝袋を使っている。そのため、布団に入り込む感じで寝る事ができる。二人とも、一人でキャンプに行くことは無いので二人用のを購入しており、高嶋も今は千景の二人用封筒型寝袋で眠りに就いている。
なので、そんな高嶋の寝顔を一枚撮り、ランタンの明かりを消してから寝袋に潜りこみ、誰かと寝る時の癖でついついそのまま高嶋を抱きしめた。
「ん……ぬくい……」
寝袋に入ってすぐに眠気に襲われた千景は、暫く高嶋の寝顔を見てウトウトしながらそのまま就寝。無事夢の中へと旅立ったのであった。
これにて勇者六人のキャンプは無事に終わり、あとは片付けて帰るだけ。なんともまぁ騒がしいが、楽しいキャンプとなったのだった。
ちなみに、次の日の朝はひなたが若葉に平謝りするという珍事があったりなかったり。
高嶋を抱き枕にして眠った千景の方は、その後、高嶋は寝ながら千景に抱き着いたようで、互いに抱き合いながら眠る様子を、起こしに来た杏に撮られて微笑ましい視線で見られてしまったとかなんとか。
その時の写真は、千景が責任をもって買い取りましたとさ。
ひなたさん、レ〇プ未遂をしてしまうが何とか許してもらうの図。やっぱり園子って……
とりあえずしっちゃかめっちゃかになったキャンプでしたとさ。次回辺りに若葉&千景の回を作りたい所。
若葉&千景、高奈&千景をやってから最後に全員での話をやってのわゆ本編に突入、みたいな感じで考えてます。ゆゆゆベストアルバムでのわゆ組の新曲が世に出る頃には神世紀勇者達も出したいですね……あと一ヵ月ですけど……
ちなみに、のわゆ組の新曲であるキボウノツボミと勇気のバトンは試聴動画が公式から上げられているので気になる人はチェック。
勇気のバトンはパート分けが分からぬ……サビまでは若葉、あんたま、ひなた、高奈、ぐんちゃん、全員、若葉、ひなた、わかひな、あんたま、ぐんたか……みたいな感じかなーとは思ったんですが……聞き取り苦手な人なので辛い……