ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回が四国勇者の初陣となります。

果たして若葉ちゃんは五人分の骨付き鳥を奢る事になってしまうのか。

ちなみに、原作ではこの戦闘での星屑の数は進化体に融合した数を含めて五十体となっていましたが、今作では既に百体という三桁の大台に乗っかっております。

ぐんちゃんが外で暴れたので、その分だけバーテックス側は戦力倍プッシュしてきました……けど、ぐんちゃんが既に星屑相手には何があろうと後れを取らない一騎当千の無双キャラ化していますし、既に勇者同士にの仲がいいのでコンビネーションと作戦があるので……

まぁ、どうなるかは本編をどうぞ。


初陣、そして

 勇者のスペックは、千景が戦った進化体バーテックスや巨大バーテックスと比べればお世辞にも高いとは言えない。そして、相手は一撃で勇者を殺せるレベルの攻撃力さえ備える大量の雑魚兵を保持している。

 つまり、勇者達は相手の攻撃を掠る事すら許されず、自分達のスペックより上の相手を確実に確実に倒さなければならない。

 それが、千景の勇者システムと歌野の言葉で判明した勇者対バーテックス事情であった。

 しかし、そんな事勇者達にとっては知ったことは無い。

 バーテックスはサーチアンドデストロイ。見敵必殺。殺される前に殺してしまえば敵の強さなんて関係ないのだ。

 

「若葉さんと友奈さんは最前線で大暴れしてください! ただし、一瞬でも危なくなったと思ったらすぐに後退を! 千景さんは二人の後退に合わせてそこへと援護に入る形で戦闘への参加をお願いします! タマっち先輩とわたしで、どうしても溢れてくる敵を叩きます! 進化体バーテックスは出現次第、千景さんを中心に若葉さんか友奈さんが援護をする形で倒してください!」

『了解!!』

 

 勇者達のスペックは、近距離特化が二人、中距離型が一人、遠、中距離型が一人、遠距離特化が一人の編成だ。対して相手は数百。これは五人が各々戦ったとしても、どうしても撃ち漏らしが発生してしまう程の量だ。

 そのため、撃ち漏らしを覚悟で若葉と高嶋を最前線へと投入し、その突破力と戦闘力で五人でカバーする範囲を二人でカバーしてもらう。そして、最もスペックの高いとも言える千景はそのどちらかの援護に入り続けてもらい、若葉と高嶋の消耗を防ぐ。

 そして、撃ち漏らしを球子が狩り、更にその撃ち漏らしを杏が狩る。

 若葉と高嶋の近接能力を信じているからこその作戦であり、進化体バーテックスが現在一体も居ないという前提の物で動く作戦であった。

 しかし、若葉と高嶋にとっては、その程度の作戦、朝飯前。

 

「行くぞ友奈ッ!!」

「うん、若葉ちゃん!!」

 

 二人の勇者が、壁となって迫りくるバーテックスへと突貫し、埋もれる。

 直後。

 

「笑止千万!! 温いわ豆腐のバケモノ共がァ!!」

「対空勇者パァンチッ!!」

 

 白がはじけ飛んだ。

 相手は一撃で屠れる紙装甲。ならば、一撃の鋭さ、威力は後回しだ。とにかく手数で範囲攻撃と一撃突破をし続ける。

 バーテックスを足場に、その足場にしたバーテックスを切り刻みながら天狗のようにバーテックスの間を駆け抜けてバーテックスを倒し続ける若葉。そして、高嶋は軽いフットワークでジャブ一発でバーテックスを吹き飛ばしながら戦場を駆け抜け、一体一体確実にバーテックスを倒していく。

 だが、若葉のように振れば何体も屠れる武器ではない高嶋はどうしても大量のバーテックスに対処しきれない。思わず一歩引いた瞬間、後方から大量の矢と回転する旋刃盤が高嶋の周りのバーテックスを吹き飛ばし、同時に千景が鎌と槍を持った状態で回転しながら空中から降ってくる。

 

「ぐんちゃん! それに、タマちゃんにアンちゃんも! ありがとう!!」

「どういたしまして。だけど、作戦変更よ、高嶋さん。乃木さんが予想以上に天狗だから、高嶋さんと私がツーマンセルで半分を確実に殲滅するわ。土居さんには乃木さんの方を重点的に援護してもらいつつ、伊予島さんが全体の援護よ。だから、背中は任せたわ」

「うん! 絶対にぐんちゃんの背中には傷一つ付けないよ!!」

 

 作戦の方は、いい方向で変化した。

 若葉が単騎でありながらも予想以上にバーテックスの集団を蹴散らす事に成功している。一太刀で三体以上のバーテックスを屠る事もあれば、空中を飛び跳ねて神樹様の方へと向かおうとするバーテックスから順番に斬り伏せる。

 その結果、破壊力こそあるが制圧力が若葉に劣る高嶋の元へ、若葉以上の制圧力を誇る武器を持つ千景を送り、球子には千景高嶋ペアを完全に見捨て、若葉の方を重点的に支援する形となった。

 

「さぁ、鏖殺の時間よ……!!」

「ぐんちゃんはわたしが守る!!」

 

 そして、襲い掛かってくるバーテックスに対し、高嶋が先に動いた。前を右、左に動き、動き回るバーテックスを重点的に狙い、時折地面を殴った衝撃でバーテックスの動きを止め、飛び蹴りなどで数体のバーテックスを蹴り抜ける。

 しかし、どうしても高嶋ではカバーできないバーテックスは、千景の鎌と槍による斬撃が食らいつく。そして、鏡により抜けていくバーテックスを空中で殴り、戻ってきたバーテックスを鎌でお出迎え。しかも、他所の撃ち漏らしは杏という固定砲台が確実に仕留めるため、かなり優勢に事を進める事ができていた。

 神世紀では、単騎による暴力を、勇者数人により押し留める戦いが基本だったが、ここでは逆だ。単騎による暴力で、バーテックスを押し留める。

 しかし、バーテックスも馬鹿ではない。隊列を組み、それが蛇のように動きながら空中から一番武器を多く持つ千景へと迫る。

 

「ぐんちゃん!」

「大丈夫よ! 園ねぇの槍なら、この程度!!」

 

 高嶋がすぐに千景を守るために動くが、千景はそれを拒否し、槍の矛先をエネルギー状に変化。巨大な矛先となったそれを構え、上から降ってくるバーテックスに対し跳躍して飛び込む。

 星屑如きにその槍を噛み砕けるわけもなく、隊列を組んでやってきたバーテックスはその槍を受け、一気に四散。千景は全くの無傷だった。

 しかし、空中へと飛び上がった千景は高い視点からとある物を発見した。

 バーテックスの奥の方で、進化体バーテックスが生まれようとしている光景だ。

 

「高嶋さん! 向こうに進化体よ!」

「えっ、もう!?」

 

 もう、とは言うが、実はバーテックスの数はもう半分以下。いや、四分の一程度にまで少なくなっている。何故なら、今回襲ってきたバーテックスは百体。一人二十体程倒せば終わる計算だ。

 そして、恐らく若葉の方が既にバーテックスを三十体以上は屠っている。千景と高嶋も合わせれば二十以上はバーテックスを倒しているし、球子と杏も二十体近くバーテックスを倒している。

 そうなると、残り三十体。その内十体近くが進化体となろうとしている。

 そもそも、千景は周りの事を考えなければ百体以上のバーテックスを一人で屠れるほどの性能を有している。完全に武器スペックのおかげではあるが、現に千景は諏訪の総攻撃を歌野と二人だけで退ける程の力を見せた。

 つまり、百体程度のバーテックスは、千景に肉薄するスペックを持つ四人の勇者が居る時点で役不足だったのだ。

 

「けど、敵はあと少しよ。乃木さん達に後は任せて、私達は進化体に行くわよ」

「い、いいの? 若葉ちゃん一人に任せて……」

 

 高嶋が千景の言葉にちょっと不安を覚えた所で、携帯が鳴った。どうやら杏からだ。

 出てみれば、杏からの指示が飛んできた。

 

『進化体を発見しました。千景さんと友奈さんはそのまま進化体へ向かってください』

「で、でもアンちゃん。若葉ちゃんが」

『……あのリーダー、完全にハイになってるので多分放っといても大丈夫です。それに、あと三十体程度ですし、十分わたし達でどうにかなるレベルです』

 

 ハイになっている。

 その言葉を聞き、二人は若葉の方を見た。

 

「はーっはっはっはっは!! 弱い、弱いぞ貴様等!! 所詮は豆腐だったなボケ共!! にしてはクッソマズい!! 醤油くらい持参して食われる用意くらいしてこい化け豆腐共が!! 食えないんなら死ね! 食えても死ね!! お前ら全員ぶっ殺したらあああああああ!!」

 

 なんかバーテックスを一口齧っては斬り捨てる謎の妖怪がいた。

 

「ぐんちゃん。わたしにはアレが若葉ちゃんの皮を被った妖怪しか見えないから、この戦場が不安になってきたよ」

「大丈夫よ。アレは食事の妖精。ああやってバーテックスを食う事で自分こそが捕食者であるという威厳を示している馬鹿よ」

 

 若葉、壊れる。

 一応、彼女の友人はバーテックスに食われたというのは知っているが、まさか食い返すとは。流石の高嶋と千景もこれにはドン引き。そっと若葉から視線を外し、進化体の方へと向かった。

 進化体は既に完成しており、何やら板のような物を空中に浮かべている。千景も初めて見るタイプの進化体バーテックスだ。

 杏の方で若干の余裕ができたのか、遠くから矢が飛んできたが、それが板のような物に当たり、弾かれて杏の方へと飛んでいった。二人はすぐに心配して杏の方を見るが、杏はなんとか跳ね返ってきた矢を避けていた。

しかし、何気に命の危機だったためか結構青い顔をしながら援護は無理、とバッテンマークを手で示した。

 

「遠距離攻撃を跳ね返すバーテックス……つまり、私達なら余裕ね」

「勇者の拳を受けてみろ! 勇者パンチ!!」

 

 遠距離攻撃が駄目なら、近距離攻撃。高嶋が拳を細いバーテックス本体に叩き込もうとするが、杏の矢を跳ね返した鏡がそれを防いだ。しかも、高嶋の拳ですら板は傷一つ付いていない。

 ならば、と千景が今度は槍を構える。

 エネルギー状の矛を展開し、鎌を地面に突き刺して槍を両手で構え、エネルギーが臨界点近くにまでなった瞬間、飛び出す。

 

「墜ちなさいッ!!」

 

 しかし、千景のチャージすら板に止められた。目が焼ける程の紫の光が槍を中心に溢れるが、押し切る事ができない。

 このバーテックスは恐らく防御特化型。それを理解した時にはチャージは跳ね返され、千景は舌打ちをしながら着地し、鎌をもう一度片手に持つ。なるほど、中々厄介だ。

 だが。

 

「その反射板、一枚しかないのなら!」

 

 封殺する事なぞ、容易い。

 千景が槍を投げ、そして鏡を蹴り飛ばし、それに追従させる。投げられた槍は板にて反射され、千景の方へと向かっていくが、それを鏡が跳ね返す。そして、鏡と板による反射合戦が繰り広げられる。

 これで、進化体バーテックスはあの板を使う事ができない。

 つまり。

 

「高嶋さん、行くわよ!」

「で、でも鏡壊れない!? 大丈夫!?」

「あの程度で壊れるんなら、とっくに私が壊しちゃってるわ。だから、二人で行くわよ!」

「それなら、うん! 行こう!」

 

 ムッシュムラムラ(私刑の時間)だ。

 千景と高嶋が飛び、千景が鎌を投げる。それがバーテックスを傷つけ、弾かれる。しかし、弾かれた鎌を高嶋がキャッチし、もう一度投げ、バーテックスを傷つけ、千景がキャッチする。それを何度も繰り返し、バーテックスに無数の傷を傷つける。

 そして最後は千景がその手で鎌を持ちバーテックスを斬り裂き、高嶋とすれ違いざまに高嶋へと鎌を渡す。

 

「これがわたしとぐんちゃんのコンビネーション! 幻夢ッ! 断鏡闇ッ!!」

 

 そして、高嶋が勇者として強化された、勇者内で一番とも言える膂力を存分に使い、渾身の力を込めて鎌をバーテックスへと突き立てる。

 だが、バーテックスの体に鎌は少し突き刺さっただけで、それ以上バーテックスを傷つける事ができなかった。

 

「くっ……! 進化体にはこのままじゃ通じない……!!」

 

 やっぱり鎌で反射合戦をすべきだったか、と千景が舌打ちするが、高嶋は諦めていない。

 突き刺さった鎌を足場に、更に跳躍。進化体バーテックスの上空を取り、拳を構え、己の内にある力……いや、神樹様からこの世界に存在する数多の概念の中からその一つを選び、抜き取り、己の中へと定着させる。

 大社より教えられた勇者の力の一つ。

 その名は、切り札。そしてその身に下ろす精霊の名は、『一目連』。

 

「だったらッ!!」

 

 拳を構え、精霊の力をその身に纏う。

 勇者装束に変化が生じ、高嶋の拳に竜巻が収束していく。千景の槍のチャージに等しいその力を、落下の勢いを乗せて叩き込む。

 

「烈風正拳ッ! 勇者パンチッ!!」

 

 竜巻の力は、コンクリート製の建造物すら打ちこわし、核兵器にも匹敵する暴力を与えるという。その竜巻の力をその拳に纏わせ、一点集中で進化体バーテックスの脳天へと叩き込む。

 その一撃で進化体バーテックスの全身にヒビが入る。だが、生きている。

 生きているのならば、もう一度叩き込むだけの事。歯を食いしばり、もう一度拳を握り、引き、叩き込む。

 

「二連ッ!!」

 

 二発目の勇者パンチ。しかし、それでもバーテックスは耐える。

 だったら。

 

「三連ッ!!」

 

 駄目押しの三発目。竜巻の力を得た拳は一切の迷いなくバーテックスに叩き込まれ、空間そのものが揺れているのではないかと思うほどの衝撃が舞う。

 その駄目押しの三発目でただでさえ一撃でヒビが入っていたバーテックスは完全に崩壊。バラバラに崩れ去り、消えていった。

 それとほぼ同時期に残りのバーテックスも若葉、球子、杏が完全に仕留め終わり、四国内に侵入したバーテックスは完全に消え去った。

 

「よし、全部片付いたな! 私達の勝利だ!」

「なんだ、案外楽勝だったな!」

「まぁ、一体一体がワンパンですもの。こうもなるわ」

「百回攻撃したら終わる簡単なお仕事です」

「進化体は結構固かったけどね」

 

 千景はしっかりと槍と鏡を回収し、五人は笑顔でハイタッチした。

 だが、若葉には一つ懸念があった。

 

「友奈、お前、切り札を使ったが大丈夫か? 何かこう、体に反動とか……」

「ん? 特に何もないよ? この通り元気元気!」

 

 切り札は、大社から何かしらの反動があると聞いた。しかし、それは使ってみなければならない。なので、使う際は注意して使うようにと言われていたのだが、高嶋はそれを簡単に使ってみせた。

 もしかしたら、反動なんて存在しないのかもしれない。そんな事を思いながら、若葉は高嶋の笑顔にそうか、と頷いた。

 

「……さて、それじゃあ私はこの後メディア出演か……あっ、千景も一緒に出演だからな。お前も一面の記事に載るんだよ!!」

「は? キレそう。週休八日を希望するわ」

「お前が一番年上だろうが。偶には体を張れ陰キャ」

「何よクッソマズい豆腐大好き人間」

「あ? お前私が好きでバーテックス食ったと思ってんのか? ん?」

「えぇ、もちろん!!」

「いい笑顔してんなぁオイ? よし分かった。そっ首叩き落してやる!!」

「上等よ野武士風情が!!」

 

 また始まったよ、と三人は呆れた感じの溜め息を吐き、若葉と千景は武器こそ抜かないがほぼゼロ距離でにらみ合う。やってる事が完全にガラの悪い人間のそれである。

 しかし、そんな事はさておきと樹海は徐々に消えていき、四国はいつも通りの姿を取り戻すのであった。

 ちなみに、若葉は夕食寸前までひなたに説教されまくったし、若葉はその後ひなたの分まで自分の行きつけのちょっと高級な骨付き鳥を出してくれる店に行き、五人分の骨付き鳥を奢り、財布が冬を迎えましたとさ。

 

 

****

 

 

 その夜、四国へと侵入してきたバーテックスを勇者と呼ばれる存在が撃退したという報が、四国内をニュースとして駆け巡った。

 また、戦闘の直前には諏訪にて起こったバーテックスによる総攻撃を諏訪の勇者と四国の勇者が協力して押し留め、更に諏訪の生き残りを四国まで連れてきたという事までニュースは報道。

 それと同時に若葉達勇者の事は実名と顔写真付きで報道された。五人の勇者と、一人の諏訪の勇者。そして、四国の五人の勇者は無事、今日襲ってきたバーテックスを撃退した、と。この報道だけでは嘘っぱちと捉える人もいる可能性が高いため、どうやって撮ったのかは分からない樹海内の映像の、若葉達がカッコよく戦っているシーンを切り取ってこれも報道。

 四国内は勇者の事で話題騒然となった。それもそうだ。なにせ、今まで一体すら倒すことができなかったバーテックスを打倒する存在が現れたのだから。

 

「ヤバいな。私達が一躍有名人だ」

「下手な芸能人よりも持て囃されてるわね」

「なぁ、これ見てみろよ。ネットではタマ達の事を救世主だとか、神が遣わした天使だとか言ってる奴いるぞ。やべーなこれ」

 

 そのニュースを、勿論勇者達もお茶やコーヒーを片手に見ていた。

 自分達ってあんな感じで戦ってたのか―、とか。こんな風に報道するんだー、とか。そういう感じで。

 そして翌日、若葉と千景は新聞やら雑誌やらの記者の前で色々とインタビューを受けた。表面上はニコニコと、乃木若葉十四歳、正義のために頑張ります! とか、郡千景、四国のみんなのためにバーテックスを倒します! とか、リリカルマジカル、頑張ります! とか。そんな綺麗なキャラを演じるようにと書かれた大社からのカンペによる指示を事務的にこなし、朝から夕方まで二人は拘束された。多分途中から適当だったと思う。

 ちなみに、このインタビューまでの短い間に、大社が千景の勇者服をしっかりと洗ってアイロンをかけてくれたので、しわは無くなっていた。どうやら洗濯は大社側でやってくれるそうなので、千景は気にしなくてもいいらしい。

 インタビューが終わった後は、ニコニコしすぎて頬が暫く変な感じになったが、それはどうでもいい事だ。

 顔が戻らない。

 

「あー……途中から素で対応してやろうかと思ったぞ……」

「私、今真顔よね……? 笑ってないわよね……?」

「引き攣ってら」

「親切に教えてくれたお礼に一つ教えておくけど、あんたもよ野武士」

「……もう二度と綺麗な女の子を演じない。絶対にだ」

「私もよ。こんなに疲れるんならヨゴレだろうがヒールだろうがなってやるわよ……」

 

 二人はトイレで鏡を見ながらそんな事をボヤいていたが、インタビューをした記者はそんな事知らなかった。

 ぐにぐにと自分の頬を弄ってなんとか元通りにして、それでも違和感を覚えつつ、他の勇者&巫女の所へと戻れば、仲間たちはお疲れ様と出迎えてくれた。

 

「お疲れ様です、若葉ちゃん、千景さん。ニュースは今も昨日の戦いについて熱烈報道中ですよ」

 

 と、言いながらひなたは食堂にあるテレビを指さす。

 そこにはまたもやニュース番組が勇者の事についてを色々と話していた。しかし、どうやら此度の話題はちょっとばかり簡単ではないらしい。

 倫理的な問題についてを話し合っていた。

 

『確かに勇者という存在は我々の希望ではあります。しかし、子供たちにそんな役目を担わせていいのでしょうか?』

『と、言いますと?』

『倫理的な問題から見ても、子供を戦場に送り出すなど言語道断です。大社はそれを正しい事として知らせようとしている。もしかしたらこの勇者という存在は、近い未来に四国中の子供達をバーテックスと戦わせるための――』

 

 ここで千景がイラっとしてテレビの電源を切った。

 これだから自称知識人は。何が倫理だ。それで人類が助かるんなら既に助かっている。

 そうも言ってられない世紀末的状況だからこそ、使える手を使わなければならない。じゃないと死ぬのだから。

 

「おい千景。みんなテレビを見ている途中だぞ」

「聞いててもイラつくだけよ、こんな自称識者の言葉。ネットでんん、とか言って論者でもやってなさいっての」

「……まぁ、言いたい事は分かる」

 

 今、この四国は半数以上がバーテックスを打倒する事ができる勇者という存在を歓迎し、勇者に戦ってもらえるのならと安堵している。

 だが、もう半分は違う。

 子供が戦うのは、とか、戦うのは大人が、とか、そもそもバーテックスとは対話の余地が、とか。そんな識者ぶった者どもの自己中心的な考えが同調し、変な意見を次々と出してきている。

 千景が昨日のうちにネットで見た意見は、女の子を戦わせるんじゃなくて男の子を出せばいいのに、とかチンプンカンプンな事を言いだしている馬鹿も居た。

 

「聞くだけ無駄よ。どうせ、私達への否定意見ばかり。いつか手のひらドリルする馬鹿よ」

「違いないな」

「直接罵倒してこないんなら、臆病者の独り言よ。付き合う義理は無いわ」

 

 もし、直接言ってきたのなら。

 その時は、千景が汚れ役となってでも仲間たちを守る。自分の居場所は、この四国以外にもあるのだから、問題解決後に追われる身となったとしても、ほとぼりが冷めるまで未来に逃げていればいい。

 優しい高嶋、球子、杏にそんな悪意の矛先を向けさせるわけにはいかない。

 若葉? アレは勝手に何とかするタチだ。

 

「それじゃあ私は部屋に戻ってゲームやるわ。フラストレーション溜まりまくってんのよ」

「なら私も混ざる。ストレス解消したい」

 

 そしてインタビューに行っていた二人は好き勝手場を荒らしてから勝手にゲームをやりに千景の部屋へと向かっていったのだった。

 それを見送り、ひなた、高嶋、球子、杏は苦笑い。

 

「なんというか、精神面強すぎだよな、あいつら」

「でも、二人の心持ちが理想なのかもしれませんね。人の言葉に振り回されず、我が道突き通すくらいが」

「そうですね。一応、私の方でも大社の方に変な情報を発するメディアには規制をかけるようには言っておきます。その方が精神衛生上、マシですし」

 

 球子、杏、ひなたはそう話すが、高嶋だけは唯一その会話に混ざらず、自分の拳を見ていた。

 先ほどの識者の言葉。勇者は、倫理的に間違っている存在だという言葉。

 もし、その声が大きくなれば? もし、自分達が一つでも間違いを犯し、それが原因で今は少数派の声が多数派となったとしたら?

 その時に起こる惨状に近い物を、高嶋は千景の故郷の村で見ている。

 体を張って人々を助けた千景にぶつけられた、いわれのない言葉。どうしようもない悪意の数々を。

 それを思い出しながら、高嶋は携帯を見た。昨日からちょくちょくとネットの声を勇者達で確認しているのだが、その中で発見してしまった声を。

 

『勇者が三年前から居たんなら、もっと早く戦えばよかった。そうしたら死人も少なかったのかもしれないし』

『そもそも勇者がすぐに戦ってくれれば母が死ぬことも無かったかもしれない』

『所詮三年間も引き籠っていた無能集団』

『とっととバーテックスを倒して全部どうにかしろよ勇者共』

 

 似ている。

 あの日、千景の故郷へと向かったあの日、高嶋も聞いた千景への罵倒に。自分達の理想通りに動かなかったせいで千景を無能扱いし、殺人者扱いし、罪人扱いしていた人間達に。

 中には、その声に止渇をする者も居る。だが、そういう人間は持論を翳して決して自分の考えを撤回しようとはしない。

 この声がもし、伝染していったら。

 もし、また、千景がこの声に晒されたら。

 ただでさえ村ぐるみでイジメられ、人の悪意を受け続けてきた千景が更に悪意に浸されたら。人の声が勇者達を、千景を殺す事に繋がってしまったら。

 

「……守らないと。全部、守らないと。ぐんちゃんを、守らないと…………」

 

 拳を握り、呟く。

 そうだ。この手には、呪詛(祝福)がある。迫りくるものを倒すために与えられた神からの力がある。

 だから、守らないと。バーテックスから勇者達を。謂れのない悪意を防ぐために、みんなを守って、もう二度と千景にあんなひどい言葉をかける人間が現れないように。

 守らないと。

 戦わないと。

 強く、ならないと。

 みんなで一緒に笑うために、守らないと。

 

「友奈さん? 球子さんと杏さんも部屋に戻るみたいですけど、友奈さんはもう少しここに居ますか?」

「え? あ、あれ……? あ、わたしも戻るよ」

 

 気が付けば、球子と杏は既に席を立って自分の部屋に戻ろうとしていた。

 流石に一人でずっとここに居る理由もない。高嶋は立ち上がり、二人の後を追っていった。ひなたはその様子に首を傾げたが、ボーっとする程度は誰にでもある事だろうと思い、ゲームをしている若葉と千景の元へと向かうのだった。




明らかに原作での五人揃った状態の戦力を越えていてもおかしくない戦力を有する四国勇者達が百体の星屑程度に負けるわけがないんだよなぁ?

という事で進化体バーテックスもぐんちゃんが反射には反射で返した結果何もできないタダのカカシですな状態になり、たかしーの切り札により爆散。そして幻夢断鏡闇も使っていく。
なお、この世界にはテイルズオブザレイズは存在しないのでたかしー&ぐんちゃんの中二病が爆発した結果となっております。

なんかもう若葉は覚醒するわ初手からワザリングハイツさんは全力で作戦立てるわタマっち先輩は振り回されるわと初戦からやりすぎ最強ムーヴ。おっ、なろう系かな?

そして途中からは戦闘が終わってからのアレコレ……でしたが、たかしーに不穏な影が。

ぐんちゃんを故郷に連れて行って傷つけたかも……と自責した上にそれよりも酷い物がぐんちゃんに降り注ぐかも……と思ってしまった結果、切り札使用による精神汚染も相まってたかしーが。表面上はぐんちゃんの言葉を受け入れたようには見えても、たかしーは優しいですから、無駄に考え込んで傷ついているという……

次回も話は引き続きますが……原作でのぐんちゃんメインの話、やる意味が無いと言うかやれないというか……w
さてどうしようかw

さて、今週土曜日はジオウファイナルステージin東京に現地参加決定予定だぜひゃっほう! 今の内に色々と準備しとか……台風くん!?
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