ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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ど  ん  な  ミ  ラ  ク  ル  も  起  き  放  題

そんな感じの話です。


神世紀勇者参戦?

 それは、突然だった。

 千景が全ての武器を失い。それでも、鏡が戻ってくるのが間に合うと信じて四人の前から立ち退かず、最後まで諦めずに立ち続けた。

 腕は凄く痛いと思う。今にも楽になりたいと思っていると思う。それでも、なるべく諦めず、成せば大抵何とかなるからと立ち続け、その体に針が突き刺さる最後の一秒まで決して諦めまいとした。

 その意思に応えるかのように、奇跡は起きた。

 倒れる勇者達の後ろから、光を纏った人間が二人飛び出し、そのまま一人が完全に針を受け止め、直後にもう一人が尾を中程から切断した。その手に持っているのは、千景の持っている物と似ているようで少し違う、槍と鏡。

 

「よく頑張ったね、ちーちゃん」

「後は任せな」

 

 二人の後ろ姿を見て。すぐに振り向いた二人の顔を見た千景は、緊張と死ぬかもしれないという恐怖からその場で尻もちをついて。

 

「……なる、ものなのよ。こういうのはね」

 

 なんて、カッコつけた事を言った

 千景のその言葉に二人は頷き、そして改めてバーテックスの方を見る。敵は巨大。三十メートルの巨体で悠然と佇む暴力の化身。

 人間じゃ太刀打ちできないほど強い。勇者でさえ蹴散らされる程強い。

 だが、それに真っ向から立ち向かえる者が居る。それを何十体と狩ってきた勇者が、ようやく現れた。

 

「えっ……? だ、だれ……?」

 

 いきなりの急展開に杏が思わず呟く。

 そりゃそうだ。勇者はこの四国には六人しか居ない。そして、その六人全員が今、バーテックスに圧倒されている。

 だと言うのに、追加戦力がどこからともなく現れれば、こんな事も言う。

 現れた二人は杏の声に振り向き、声を出そうとしたが、その隙を狙ってか再生した巨大バーテックスの尾が高速で二人に迫る。危ない、という声を出す前に、恐らくアレは二人を貫く。声をかけてしまったばっかりにと、杏が後悔した時。

 

「二人とも、油断は禁物よ?」

 

 後ろから飛んできた青色の矢が尾に突き刺さり、はじけ飛ぶ。

 今度は何だ。また新しい戦力か。

 

「まぁまぁ、感動の再会ってやつだしな。多めに見てやろうぜっと!!」

 

 今度は炎を纏った赤い光が後ろから飛び出し、その炎を地面に向かって叩きつけた。叩きつけられた炎はそのまま炎柱となって一気にバーテックスへと向かって行き、そのままバーテックスの体を焼く。

 球子の切り札ですら傷一つ付かなかったバーテックスの体表が燃え始めるが、しかしすぐに炎はバーテックスの尾によって振り払われる。

 青色の矢を射った少女と、そして炎を巻き起こした双斧を手にする少女は鏡と槍を手にする二人の横に並び立ち、改めてバーテックスと対峙する。

 

「スコーピオンねぇ。嫌な思い出しかねぇっての」

「でも、一体だけよ。今の私達なら、障害でもなんでもないわ」

「ところでゆーゆ達は?」

「……あれ? 居なくね? まぁいいや。とりあえずこれ片付けて通信機で通信だ。って事で」

 

 目の前に居るのは正真正銘の、勇者ですら適わないバケモノだと言うのに、四人は呆気からんと、あの程度は敵ではないと言い捨てる。雰囲気も軽い。

 一体この四人はなんなのか。杏が困惑していると、丁度その辺りで若葉と歌野が目を覚ます。

 

「い、いかん、気絶してた……全身いってぇ……んでもって知らん奴いるぅ……」

「み、みーちゃんの膝枕プリーズ……って、どういう状況……?」

「さぁ……?」

「え、援軍、でいいのか?」

 

 急に増えた戦力に呆然とする四人。ついでに立ち上がれないからと這って移動してきた高嶋もきょとんとしている。

 しかし、千景だけが安心している。

 目の前に立つ四人に。三百年という時間を越えて来てくれた、頼もしい人たちに。

 

「そうね。槍と鏡持ったのが園ねぇと藤にぃで、残りの二人もその仲間の勇者って言ったら、多少は分かるかしら?」

「確かその二人って、千景さんの武器の持ち主……っていう事は、あの四人って!?」

「そう、あの四人は正真正銘の勇者。私の、頼れる義理の姉と兄で、先輩にして後輩」

 

 そう。この四人は。

 

「妹分を苛めてくれたお返し、ウン倍返しで叩きつけてやるとするか!!」

「アタシ達の可愛い可愛い後輩に手ェ出したツケは払ってもらわねぇとな!!」

「先代勇者チームを敵に回したこと、後悔させてあげるわ! そのっち、いつも通りお願い!」

「オーケー! それじゃあズラっち、ミノさん、わっしー! いっくよ~!!」

 

 三百年後の四国にて世界を救った勇者。その中の先代勇者チームと括られる四人である、園子、銀、美森、藤丸の四人だ。

 四人にとっては一日。しかし、この世界にとっては三年半という時の流れを越え、今再び過去の四国にて戦うためにやって来たのだ。

 

「ミノさん、斬り込みよろしく~!」

「あいよあいよあいよぉ!!」

 

 そして園子の指示により、まずは斬り込み隊長である銀が斧を両手に駆ける。突き出される針を華麗に避けながら尾を解体し、そのまま一気に本体の元までたどり着く。

 攻撃を避けながら反撃をしつつ、一気に懐に潜り込む。それは正しく斬り込み隊長としての理想であり、同時にバーテックス戦に手慣れている者の動きだ。そして潜り込んだなら、後は解体するのみ。

 

「久々に熱いのいくぜ!! 鳳凰天駆ッ!!」

 

 飛び上がり、炎を纏った斧を手にバーテックスに取りつき、そのままスコーピオンを解体し始める。その勢いは、四国勇者チームの比ではなく、正しく圧倒的とも言えるスペックで一気にスコーピオンの解体にかかる。

 しかし、それを許さないために星屑が居る。

 追従していた星屑が銀を早急に排除せねばならない戦力だと見極め、三十以上の星屑が銀へと迫るが、青色の光が銀の周りを一瞬跳ねたと思うと、星屑は一瞬にして穴あきチーズと化し、消滅していく。

 

「腕は鈍ってないようね、ハゲ」

「テメェもな、クソレズ」

 

 それを行ったのは、勿論ライフルを持った美森と、鏡によって弾丸を跳弾させたハゲ丸の仕業だ。例えブランクがあったとしても、染みついた技はそう簡単に忘れることは無い。

 銀はスコーピオンをそのまま勢いのまま解体し尽くし、全体の半分ほどを一人だけで一気に解体して見せた。だが、スコーピオンはそれでも沈まず、再生を始める。

 だが、再生するバーテックスの倒し方は、既に知っている。園子と銀は初めてだが、きっとできると信じ、己の武器を手にバーテックスの近くへと降り立つ。

 尾の再生を確認した園子が十文字の槍を振り回しながら伸ばして高速で振るう事により、もう一度尾を解体。直後に園子がその場を飛んで離脱し、それと全く同時に襲ってきた星屑が再び青色の弾丸により穴あきチーズに。

 

「一か八かだけど、やるよ~!!」

「おっと、離れてってと……よし、行くぞ!!」

「タイミングは合わせるわ!」

「任せとけ!」

 

 銀と園子が武器を構えながら一気に周囲の星屑を掃除し、スコーピオンが再生する前に対角線上に立ち、それとほぼ同時に後ろに居た二人も前に出て園子、銀、美森、ハゲ丸の四人がスコーピオンを囲む。

 そして園子が槍の石突を地面に突き立て。銀が両手の斧を左右に突き刺し腕を組み。美森がライフルの銃口を地面へと向け、ハゲ丸が鏡を地面に突き立てそれに足を乗せ。

 

『封印、開始!!』

 

 封印を、開始する。

 未来の勇者システムに搭載されている機能がこの一言で起動し、スコーピオンの足元から青い光が吹き荒れる。その光により、スコーピオンの体が割れ、その中心から三角錐の形をした物体が現れる。

 そう、御霊だ。

 結局バーテックスを倒すのなら、これが一番手っ取り早いし簡単だ。特に、一度戦ったが故に、御霊の性質を知っているバーテックスなら。

 スコーピオンの御霊の特性は、分裂。

 かつては樹が一気に纏めて潰していたが、そんなものを許す程、今の美森は無知ではない。即座に封印の陣形を一番に抜け出し、ライフルを一度消し、両手に二丁のショットガンを持つ。

 

「この距離なら、分裂はできないわね!!」

 

 そして、御霊が現れた瞬間、分裂する前にショットガンの弾丸を全弾叩き込んで御霊を削りきる。

 しかし、それでも御霊は分裂を止める事無く美森のショットガンで削られた部分を一気に再生。そのまま再び増えそうになったが、その前にもう一度美森が弓を手にし、三秒ほどエネルギーをチャージしてから矢を放ち、分裂した御霊の三分の一をそれだけで消し去る。

 

「再生は阻害するわ! そのっち、銀、前に!!」

「おうよ、任せな!」

「封印は任せたよ、ズラっち!」

「存分に暴れてこい!」

 

 弓を消した美森の手には、拳銃。それの反動を抑える事無く、腕を大きく振りながら大口径の拳銃を撃ち続ける。その弾丸は空中で軌道を変えて御霊を全方位から削っていく。

 そうして美森が御霊の再生を阻害している間に園子と銀の二人が武器を構えながら飛び、御霊の元へ。

 

「ちーちゃんを苛める悪い虫は、消えちゃえ!!」

「これが先代組の力ってな!!」

 

 園子の十字に振り抜いた槍が再生を阻害されていた御霊を文字通り十字に斬り裂き、その中心へと銀が突っ込み、炎を纏った状態で回転しながら四分割された御霊を破壊しつくす。

 そのついでと言わんばかりに園子が最後に槍を振り回しながら巨大化させ、周囲の星屑を羽虫を払うかのように一気に殲滅。石突を地面へと叩きつける音が響くと同時に破壊された御霊は虹色の光を噴出し、消滅。スコーピオンの体もそのまま消えていき、そして完全に消滅していった。

 

「……か、勝っちゃった」

「えっ……なんだあれ……えっ?」

「もうあいつらだけでいいんじゃないかな」

「あー……なんかあの時の理解を越えた現象に似てる……そーいうこと……」

「おかしいなぁ。わたしの拳でも倒せなかったんだけどなぁ……」

「なんかこう、あそこまで滅茶苦茶してくれてこその勇者部よね。うんうん」

 

 四国勇者チームは、先代勇者チームの戦いを見て、なんかもう自分達の理解を越えた戦い方をしていたので呆然と元に戻っていく世界を見つめるしかなかったのであった。

 

 

****

 

 

「ちーちゃあああああああああああああん!! 元気にしてたみたいでよかったよおおおおおおおおおおおお!!」

「ちょっ、園ねぇ、みんなの前よ。ちょっと恥ずかしいわ」

「たった一日見ないだけでこんなに成長して……!! 俺は、俺はぁ……!!」

「って、藤にぃまで、そんなに泣く事じゃないでしょ?」

「……えっ、なにこれ?」

「知らね」

 

 戦闘が終わり、樹海から戻された四国勇者チームはボロボロの状態で帰還したのだが、帰還した直後、勇者システムを解除した園子が千景に抱き着き、もう頬ずりするわ撫でるわと好き放題。そしてハゲ丸も成長した千景を見て男泣き。

 あーもう滅茶苦茶だよ、という状況。なにこれ、と思わず呟いた若葉の言葉には球子の理解を諦めた言葉が飛んできた。

 千景の方が三年半も会えていなかったのに、一日しか離れていなかった園子とハゲ丸の方がなんかもう重傷も重傷で、思わず千景が二人に落ち着くように声をかける始末だった。

 

「まぁ、なんかあっちはあっちでエラい事になってるから自己紹介しとくか。どーも、三ノ輪銀っす。勇者してます」

「同じく勇者してる東郷美森です」

「お、おう……? わ、私は乃木若葉だ……?」

「いやいや、自然と自己紹介する流れになってるけどおかしいからな!? なんでタマ達以外にも勇者がいるんだ!? あと若葉は流血をどうにかしないとただのホラー映画だってのを自覚しろ!!?」

 

 勇者装束を解除して丸亀城付近に戻された勇者達ではあるが、その内若葉と歌野は全身から血をぴゅーっと噴出している明らかに重症な感じだし、ついでに球子と杏も片足が動かないので立てない。ついでに高嶋もダメージが酷過ぎて立つのを諦めて空を眺める始末。今日も重症だ空が綺麗。

 

「ってか友奈。お前なんでアタシ達よりも先にこっち来てんだ? しかもなんかこっちの勇者のメンツにしれっと混ざってるし」

「え? だってわたし、勇者だし」

「いやいや、勇者だけどな? っつかお前自前の勇者システムどこにやったんだよ」

「持ってるけど? ほら」

「だからそうじゃなくてだな?」

「え?」

「え?」

『え?』

 

 そして銀が案の定友奈と高嶋を見間違えてかなり食い違った感じの会話を繰り広げている。

 高嶋からしたら初対面の人がさも知り合いのように話しかけてきて意味わかんない事を言ってきて普通に謎だし、銀からしたら自前の勇者システムを持ってるはずの友奈がどうしてシレっと現地の勇者に混ざっているのかが謎である。

 しかし、それに対して千景が助け舟を……

 

「銀、勘違いしているようだけど、その子は友奈ちゃんじゃなくて、友奈ちゃんによく似てるだけの子よ?」

「え? いやいや、そんなミラクルが……いや、須美が言うんならその通りなのか……」

 

 出す前に、青いのが銀に助け船を出した。

 しかしその結果、もう色んなことがごちゃ混ぜになり、話がまとまらなくなってきた。これは果たしてどうするべきかと思っていると、丁度そのタイミングでひなたが勇者達の元へと駆けてきた。

 

「皆さん、大丈夫ですか……って増えてる!!?」

「あー……ここは一旦話を区切って、こっちの事情を話すとするか」

「そうね。そのっちとハゲは使い物にならないし、千景ちゃんも拘束されてるし、私達で簡単に事情を伝えちゃいましょうか」

「ま、まぁ、そっちから話してくれるのならこっちとしては……」

「って若葉ちゃんが死んじゃう!!?」

「ごっはぁ!!?」

「あっ、若葉がひなたのタックルで死んだ」

『この人でなし!!』

 

 あーもう滅茶苦茶だよ。

 

 

****

 

 

「えーっと、つまり、だ。お前達四人の勇者はこの時代の勇者ではなく三百年後の未来の勇者で?」

「三年半前にこっちに置き去りにした千景と会うために未来から来てみたら?」

「なんかバーテックスとバトってたからとりあえず加勢して?」

「あちらで千景さんにくっ付いているのがよく千景さんが仰っていた園ねぇさんと藤にぃさんで?」

「時間の流れが違ったから未来の皆さんは千景さんと別れた直後だから千景さんの記憶と全く変わらなくて?」

「友奈さんとそっくりさんが一人そちらに居るからさっきはちょっと困惑して?」

「首を突っ込んだからとりあえずラスボスである天の神を倒すまでは協力してくれると?」

「まぁ、そんなところ」

「理解してもらえたかしら?」

『できてたまるか、こんな不可思議現象!!』

「ですよねー」

 

 とりあえず事情を説明した銀と美森だったが、勿論それが簡単に受け入れてもらえるはずもなく、傷の治療をしながらそれを聞いた勇者達は聞いた事を大体整理して間違いが無いかを聞いたが、一切間違いがない事を伝えられ、分かるかと勇者達が声を荒げた。

 当然である。

 一応西暦勇者チームは全身ミイラが二名、神樹様の恵みで解毒中が二名、全身打撲状態なので車椅子状態が一名と、なんかもう人体の神秘を見せつけているが、神世紀勇者達はそれを華麗にスルー中。

 

「わたしも声を荒げたいのは山々なんですけど……」

「神樹様も土地神様も、ゲスト八名追加で入りまーすって神託を出してきまして……」

 

 だが、巫女ンビは神世紀勇者チームの参戦を神樹&土地神の神ーズに神託で話の最中に告げられており、どうやら神様は神様で色々なアレコレがすでに終わっているらしい。

 勇者達にとっては神様からのお告げなんて聞こえないので目で見れるもので判断するしかないのだが、実際に神世紀勇者チームがたった四人であのバケモノ染みたバーテックスを倒しているのを見ている。それが未来の力だ、と言われれば納得できてしまうのも現状。

 そして歌野は、それに近しい存在を一度見ている。

 

「ねぇ、もしかしてだけど、三好夏凜さんと楠芽吹さんって……」

 

 そう、夏凜と芽吹。

 厳密にいえば一人は勇者ではないが、しかしあの日、あの二人に助けられたことは未だに歌野の記憶にしっかりと刻まれている。もしもあの二人が来ていなかったら。もし、芽吹が銃剣をくれなかったら、歌野は今頃ここには居ないだろう。

 つまり、あの二人は歌野の命の恩人だ。なので、お礼を言いたいのだが。

 

「夏凜と芽吹か? アタシ等の友人だけど」

「そういえば二人は一度だけこっちに来たって言ってたわね。もしかして見た事あるの?」

「あー……なるほど、千景さんの言ってたことって……。えぇ、あの二人には助けられたの。できれば、お礼を言いたいのだけど……」

「……そういや夏凜どこ行った?」

「多分また別の所に飛ばされたんじゃないかしら……」

 

 そう、夏凜さん、現在絶賛行方不明である。

 神世紀勇者チームもとい、先代勇者チームはレーダーで神世紀勇者の位置を確認できるのだが、レーダーを見ても友奈、樹、風、夏凜の後期勇者チームとも呼べる四人の反応が四国内で見つからないのである。

 つまり、あの四人は同じ時代のどこか遠くへと飛ばされた、という事で間違いはないだろう。

 

「まぁ、すぐ見つかんべ」

「そうね。友奈ちゃんは少し心配だけど、残りの三人はダーさん*1みたいな生命力ですもの」

 

 遠くへ飛ばされたとしても、あの四人ならどうせ元気にやっている。そんな確信から二人は特に問題なくそう告げるが、西暦勇者からしたら四国内に居ないと聞かされてかなり焦り始めた。

 

「ちょっ、結界外に居るんならマズいんじゃないのか!!? 死ぬぞお前らの仲間!!」

「ど、どーすんだ!? タマ達が探しに行った方がいいのか!?」

「でも闇雲に外を探すのは危険だし、わたし達こんな状態だよ!? 外に出たら即アボンだよ!!?」

 

 だって西暦勇者からしたら璧外なんて危険が危ない地域。勇者一人でポイっと放り出されたら死あるのみだ。

 しかし、先代勇者チームは特に動じない。

 

「いやいや、落ち着きなって。大丈夫だから」

「大丈夫って、そんな訳がないだろ!?」

「いえ、本当に大丈夫よ。だって、私達はその気になったら空も飛べるもの」

 

 空も飛べる。

 その言葉には思わず西暦勇者達も巫女も首を傾げる。

 しかし、歌野の方はもしかして、と口にする。

 

「そういえば、未来の勇者には何か切り札みたいなのがあったような……もしかして、それ?」

「あぁ、それだ。満開って言うんだけどな、それを使えばバーテックスも蹴散らして移動ができる」

「それが無くても、精霊バリアっていう絶対防御があるの。ほら、こんな感じで」

 

 と、言いながら美森がアプリを操作して銃を出すと、隣の銀に向かって発砲する。

 思わず目が飛び出そうになる西暦勇者達だったが、弾丸は銀の前に現れた精霊が張ったバリアによって四散する。

 

「おい須美。あとで喧嘩な」

「あらあらうふふ」

「……なんかもう、とりあえずお前らは滅茶苦茶だからほっとけばいいってのが分かった。私は理解をやめることにする」

「ちなみに、あっちにいる金色の乃木園子ってのは若葉の子孫な」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁもうやだおうちかえるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「若葉が次々来る放っておけない事実に耐え切れずに発狂した!」

『この人でなし!!』

 

 閑話休題(若葉を殴って元に戻して)

 

「……まぁ、なんだ。これからよろしく頼む」

「えぇ、よろしく」

 

 頭にでっかいタンコブを作った若葉は美森と無事握手し、なんとかかんとか西暦勇者と先代勇者の共闘関係が実現した。

 そしてその頃、園子、ハゲ丸、千景の三人はと言うと。

 

「にしても、驚いたわ。まさか園ねぇ達の方はあれから一日しか経過してないなんて」

「ホントだよ~。こっちに来たらちーちゃんがおっきくなって戦ってるから驚いたよ~」

「ちーちゃんも立派になったなぁ。もう俺達よりも年上なんだろ?」

「でも、私の中では二人は園ねぇと藤にぃのままよ。あっ、そっちは終わった?」

「あぁ、まぁ、なんとか。理解を諦めた」

「そこら辺はゆっくりと理解したらいいのよ、ゆっくりと」

 

 園子とハゲの狂乱も無事終わり、普通に団欒していた。

 まぁ、なんやかんやで一日しか離れていなかった兄代わり姉代わりと、精神的に成長した千景だからここまで早くいつも通りになっただけであり、もし神世紀側も西暦と同じくらいの時が進んでいたら、二人の発狂はこの程度ではなかっただろう。

 それに、積る話は後でもできる。

 と言う事で。

 

「そういえばにぼっしー達は~? ゆーゆはそこに居るけど~」

「夏凜ちゃん達は行方不明よ。で、友奈ちゃん似の人は似てるけど別人よ。高嶋友奈さんらしいわ」

「あ~、初代勇者の~。あ、よく見たらご先祖様もいる~」

「あ、あれが本当に私の子孫……!? うっそだろおい……」

「とりあえず通信機ぽちっと~」

 

 まずは夏凜たちがどこに居るかを割り出す必要がある。

 ポチっと通信機の通信開始ボタンを押し、通信先を先代組以外へと設定。暫く発信していると、ほぼ同時に二つの通信機からの応答があった。

 どうやら無事、通信機は使えたようである。

 

『もしもし園ちゃん?』

『おっ、友奈の声。んでもってかけてきたのは乃木ね』

 

 通信に出たのは、友奈と風の二人だった。

 友奈の声を聞いて西暦組(千景除く)はバッと高嶋の方を見たが、高嶋は首を傾げている。自分では自分と全く同じ声になんて気が付けないのは当たり前だが、西暦組からしたら高嶋と同じ声が通信機から聞こえてくるモノだからビックリ仰天ものである。

 

「ゆーゆとフーミン先輩? にぼっしーとイっつんは~?」

『夏凜ちゃんはわたしと一緒に居るよ』

『樹もね。東郷たちは?』

 

 どうやら、友奈夏凜と犬吠埼姉妹の二組に分かれて各地に散っている状態らしい。しかし、一人だけでどこかに放り出されたとかではなくて本当に良かった。

 いや、一人だけだったら即座に四国への参戦要請を出して満開を使わせてでも来てもらうのだが。

 全員の無事はこれにて把握できたので、後は所在地を聞いてこちらに合流してもらうだけなのだが。

 

「こっちに四人全員居るよ~? ちなみにゆーゆ達はどこに居るの~?」

『それが、わたしと夏凜ちゃんは北海道に行っちゃったっぽくて。雪が凄いんだよ~!』

『私達は沖縄ね。いやー、海が綺麗ねぇ』

「……え゛っ」

「まさかの上下の最先端に……」

 

 あの四人はまさかの上下の最先端。しかも、海を隔てた場所へと放り出されてしまったらしい。

 これはあの四人の合流は暫く先になるかもしれない。そんな気配を、先代勇者チームは感じたのであった。

*1
ダークサイドさん。つまりはゴッキー。どうしてそう呼ばれているかは勇者部所属をチェック!




神ーズ「ヘルパー八名入りまーす」
巫女ンビ「えぇ……(困惑)」

はい、ゆーゆ&にぼっしーは北海道へと。犬吠埼姉妹は沖縄へと飛ばされました。
絶望しか無かった土地。そこに頭あっぱらぱーでやべー勇者がやってきて、何も起こらない筈もなく……

と言う事で次回からはちょっと事後処理をしてから秋原雪花の章、古波蔵棗の章をやって、二人と四人を合流させてから乃木若葉の章の後半へと話を進めていきたいと思います。

あと、若葉とひなたの未来での知名度に関しては、なんか自分の中でごっちゃになったので、聞いた事はあるけどあんまり有名じゃない、みたいな感じの知名度でやっていきます。
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