棗はどうも、沖縄からの避難民が乗った船に一緒に乗って戦って、その果てに死んでしまったっぽいですし、本番は避難が始まってからになりますね。
「おぉ、外からの勇者様でしたか。ささ、どうぞこちらへ。長旅は堪えましたでしょう」
「棗様もどうぞこちらへ。丁度ソーキそばができた所なんですよ」
「え? あ、どうもどうも……」
「あ、あはは……なんかすっごい歓迎ムードだね」
「今時、外からのお客様は少ないからな。それに、これからの事もある。四国へ向かうお前達に頼みたい事もあるだろうしな。言ってしまえばご機嫌取りだ」
「そういう事です。ささ、どうぞ。ソーキそばでも召し上がってください」
友奈達が北海道で頑張っている頃の沖縄。
棗の手引きにより、まずは拠点として棗の家へと招待されたのだが、その最中に犬吠埼姉妹と棗は現地の人につかまり、そのまま現在、南城市一帯の自治を何とか執り行っている、おばばと呼ばれる人の家へと招かれたのだった。
どうして勇者だとバレたかと言えば、ずっと勇者装束を身に纏っている棗の側に居て、何者かと聞かれたら棗が外の勇者とすぐに答えた結果だ。この質問が飛び交う間に一切の悪意が無かった当たり、勇者である事はこの時代だと隠すべきことではないのだろう。
悪意が全くなく、本当に歓迎のためだけに連れていかれたため、犬吠埼姉妹も特に断る事なんてできず、どうもどうもと言いながら居間に案内されていた。
沖縄は現在三月だと言うのに、四国の六月並みの、要するに初夏とも言えるくらいの気温があり、思わず二人は春服の上を脱ぐほど。三百年前の映像や書籍から沖縄という地は暑く、また観光業も盛んにおこなわれており、独自の文化を構築している、というのは何となく知っていたが、その目で沖縄を見た二人は、思わず声を漏らす程だった。
三月なのに暑い。そして、建物は平べったい物が多く、シーサー等の独特の像がある。
三百年前から使われている沖縄の写真のソレとほぼ同じものを見てみれば、思わず声も出るという物だろう。
「ほえー、これが本場のソーキそば。どれどれ……うん、美味い!」
「あ、ホントだ。一応四国でも食べれるところはあるけど、こんなに美味しいソーキそばは初めてかも」
「そうなのか? なら、心行くまで味わってくれ」
そして本場のソーキそばに思わず笑顔。
風と樹のそんな表情に思わず嬉しくなったのか、おばばも笑顔で二人に話しかける。棗も地元の料理が褒められて頬が緩み、少し嬉しそうだ。
だが、笑顔だけで終わらない話題が、今、この沖縄の南城市には渦巻いている。
沖縄。沖縄に住む人のこれからを決める、重要な案件が、残っている。
「では、棗様。そしてお二人の勇者様も、食べながらで結構ですので聞いてくだされ」
おばばの真剣な声に思わず風と樹、そして棗の表情が引き締まる。
それは、兼ねてより勇者である棗は抜きにして進められていた計画だ。いや、厳密には、棗を抜きにしなければ進まなかった計画、とも言える。
「棗様。沖縄の者は、近い内に。それこそ、一週間以内にこの沖縄を出て避難場所である四国へと向かう事を決定しました」
「四国、にか。時折誰かが話しているのを盗み聞きしたが、やっぱり行くんだな」
「棗様のお力を信用していないわけではありません。しかし、棗様お一人ではいつか限界が来てしまいます。なので、棗様には四国行きの船の護衛に乗っていただき、避難民の護衛と、退避をお願いしたいのですじゃ」
その言葉を聞いた風と樹の脳裏には、一つの歴史が過った。
四国の外が殺人ウイルスによって汚染され、そして神樹様が現れてから暫く。沖縄からは少なくない避難民が四国へと来たという。
赤嶺、という家名が四国には残っている。その赤嶺家は元は沖縄の人間であり、調べてみれば沖縄にて確認されていた家名だという事もすぐにわかる。
もしその歴史が、今、起ころうとしているのなら。殺人ウイルスではなくバーテックスに襲われた沖縄の民が四国へと逃げ出そうとしているのなら、それは、風達が関与しなくてもどうにかなる話となる。
しかし、聞いてしまった以上は断る訳には行かない。
「だったら、利害の一致ね。アタシ達も四国へと向かいたいの。だから、棗に協力してその船を守らせてちょうだい」
「それは……確かに、それを頼もうとは思っていましたが、よろしいのですか? こちらからの報酬は何も……」
「それなら今貰ったわ」
今貰った。
おばばが二人に渡した物と言えば、ソーキそば程度なもので。
「このソーキそば。これがそのお代よ。アタシ達はコレのためなら命も張るわ。返せって言われてももう遅いわよ?」
貰えるものなんてなんでもいい。
気持ちだけでも十分だ。その気持ちに上乗せして、ソーキそばまで貰えた。ならば、沖縄の人全員を守って四国へと向かうには十分すぎる。これ以上ない報酬とも言えるだろう。
おばばは軽く唖然としていた。勇者として戦った事があるのなら。あのバケモノを見た事があるのなら、そんな事を容易く言うなんてできる筈がない。それほどの怪物を、勇者は相手にしなければならないのだ。だから、容易く言うなんてできない筈なのに。
しかし、目の前の黄色の勇者は。そして、その横に居る妹は、胸を張り頷いている。任せろ、と言わんばかりに。
「……なるほど。外の勇者様は、とても善き人なのですな」
「んなこたないわよ。ちょーっと人助けする部活に入ってるだけで」
「そのちょっと、で沖縄の者を守りながら四国へと向かえる。その善性は、とても善きものですじゃ。誇ってくだされ」
いやー、あはは。と言いながら風は手を振るが、しかしこうも真正面から戦う事に礼を言われると満更でもないというか、嬉しくなると言うか。ついついソーキそばを照れ隠しでかっ食らう程度には。
棗も二人に感謝しつつ、それなら、と四国行きの計画のための準備を推し進めるため、おばばに話しかける。
「じゃあ、おばばも準備をしないとな。荷物があったら、手伝うぞ」
棗の言葉に風も樹も頷くが、しかしおばばは何も言わない。
その様子に三人が首を傾げるが、暫く後におばばは決意を固めた目で、口を開いた。
「私は、ここに残りますゆえ」
「ここに、残る……? まさか、四国へ行かないのか?」
棗のまさか、という確認の言葉に頷いたのは、間違いなくおばばだ。
勇者三人は、近い内にここ、沖縄を出る。しかし、おばばはここに残る。つまり、彼女はここで死ぬことを選択したという事だ。守る者が誰も居ない地で、バーテックスに食われて死ぬのを、ただ待つのみ。
「私達は、沖縄から離れるには少々生き過ぎました故に……」
「生き過ぎたって……そんなの、関係は……」
「いえ。離れたくないのです。例え死ぬとしても、この地に愛着がありますので。精々、あと数年しかない人生の終わりが縮まるだけです」
確かに、そうだ。
老人と言うのは、老い先の人生が後何年あるかどうかなんてわからない。一か月先に急に寿命が来てぽっくりと、なんて事も十分に考えられるのだ。
でも、生きていることに意味がある。
そう、樹が切り出そうとしたがが、その直前に風が樹の肩を叩いた。これは当人の問題だから、と首を横に振れば、樹も渋々と口を閉じた。
「だ、だが!」
棗が更に口を開くが、しかしおばばの態度は変わらない。
決心は、硬いのだろう。きっと、ここに残るという言葉の真意には、残り僅かな人間の食い秩序を少しの間でも長く保つために、というのも残っているのだろうが、やはり一番大きいのは、この地に愛着があるから。
例え骨が残らないのだとしても、この地に居たい。この地で最後を迎えたいという気持ちが、とても大きいのだろう。
歳を取れば、死生観が緩くなるとも言う。もう何年も経たない内に自分が死ぬからと、徐々に達観し、そして死を受け入れ始める。恐らく、この決断をした老人たちは、自分の死を受け入れているのだろう。
ソーキそばを食べ終わり、ふと携帯を見る。
そういえば、ここはレーダーが使えるんだっけ、と。そう思いながら携帯の電源を入れて。
「棗様いる!? さっき、あっちの方であのバケモノが出たの!」
レーダーを確認しようとした直前、誰かがドアを開けて家の中に入ってきた。歳は大体同じ程度の少女だった。
バケモノ、と言えば恐らくバーテックスの事だろう。それが、襲来してきた。レーダーの方を確認してみても、確かに赤い点が幾つも表示されており、星屑がこの地へと再び攻めてきたという事が嫌にも分かった。
「むっ……まだこちらは話している途中だと言うのに……」
「まぁ、すぐに片付けて戻ってきましょう」
「それはいいんだが……風、樹。お前達、勇者の服に着替えなければならないだろ?」
「え? そんなん、ポチっとワンタッチ変身よ」
と、言いながら風が勇者アプリで即座に変身。同じく樹も変身し、それを見ていた棗、おばば、バーテックスの事を伝えに来た少女の三人が目を見開いた。
そりゃそうだろう。だってスマホの画面をぽちっと押しただけで変身しているのだから。
「わー……魔法少女みたいな変身が……」
「これは……便利だな」
「最近のスマホはこんな事までできるのですなぁ……」
なんか約一名ちょっと違う事を言っているが、変身したのなら準備は完了。豆腐のバケモノを倒すためにいざ出陣だ。
「よし、じゃあ行くわよ棗! アタシ達の力、見せたげるわ!」
「あぁ、頼りにしている」
そして三人の勇者がおばばの家を飛び立った。
ちなみにソーキそばは、風が飛び立つ五秒前に一気に樹の分まで完食し、残すことは無かった。流石の女子力である。
****
棗は西暦の勇者の中でもトップクラスの戦闘力を秘めている。
沖縄の武術とヌンチャクを組み合わせた動きに加え、風達に例えれば神樹様のような存在も、海の神であるため、水中においては無類の強さを発揮する。
しかし、基礎戦闘力は言ってしまえば四国の初代勇者にも劣ると言えるだろう。海の神は神樹様のような多数の神の複合体ではない。故に、多少力が劣るため、スペックにもそれが現れてしまっている。
が、それでも西暦勇者内でもトップクラスの戦闘力を持っているという事は、それだけ棗自身が強いという事。
星屑が百体程度なら一人でもなんとかできるほどの強さを持っている……のだが。
「行っくわよー!! どっせーい!!」
「久しぶりのオールレンジ攻撃!」
「……なんか、違くない?」
横で戦う二人のスペックが、なんかバグってる。
思わずそんな事を言ってしまう程度には二人のスペックがおかしい。大剣をブンブンと振り回して周囲の星屑を壊滅させていく風と、右腕から伸ばす緑のワイヤーでバーテックスをガンガン貫いては殺していく樹。
棗が頑張ってヌンチャクをブンブンしている間に犬吠埼姉妹は秒速レベルでバーテックスを屠っていく。これには棗も苦笑い。
「よし樹! アレいくわよ!!」
「えー。なんか面倒なんだけど」
「いいからいいから!」
「はいはい。よっこいしょっと」
個々の戦闘力ですら明らかに異常なのに、なんか合体技までしようとしている。
樹が風の足をワイヤーで掴み、思いっきりぶん回す。その結果、風が大剣を持ったまま振り回されて回る。近づくだけで危ないやべー結界の完成である。最早星屑が近づくだけで細切れになっていくレベルでやべー結界だ。
「ひっさーつ!! 犬吠埼ぃ!!」
「大車輪、からのリリース!」
と思ったらある程度の星屑を倒した段階で風が射出された。
空へと舞い上がっていく風はなんか面白い光景であり、なんかシュールだったので笑いそうになった棗だったが、なんかおかしい。
具体的には、風と大剣の縮尺。徐々に風が小さくなっていっているのに対し、大剣は全く大きさが変わらないのだ。いくら目を擦っても大剣の大きさは風が手に持っていたサイズと全く変わらず。
それが、そのまま落ちてきた。
風が射出された瞬間から巨大化し続けていた大剣が、風と共に。
「そして電撃稲妻お姉ちゃんだぁ!!」
そのまま風は大剣を剣の刃の部分ではなく、腹の部分を地面に叩きつけて星屑を一気にぺしゃんこにする。
火力の暴力。ここまでのスペック差を見せられてしまっては流石の棗も声が出なかった。自分があんなことをやろうものなら、まず高所からの落下による足首挫き、そして武器が巨大化しない事から星屑をぺしゃんこにできないという攻撃範囲の問題。
明らかにこの二人は自分とは次元が違う何かに身を包んでいる。それが棗には何となく分かった。
しかし、負けていられない。
「だったら、こっちは海で戦おう」
「えっ、棗さん!?」
そう、棗には海がある。
星屑は、海から来ている。ならば、海の中に潜り二人を狙う星屑を引き付けて水中で倒す。そうすれば、二人の戦闘も楽になるから。
樹の言葉を聞かずに海へと潜り同時に水中へとやって来る星屑に対してヌンチャクを構える。
普通の勇者なら、水中での戦いなんて不得手にも程があり、確実に星屑のおもちゃにされることだろう。だが、棗は違う。棗が力を貰っている神は海の神であり、そして棗自身幼いころからずっと海と共に生きてきた。
これらの要因が合わさり、海の棗は陸上の棗の何倍も強い。
水中を勇者として強化された身体能力で高速で泳ぎながら星屑達を殲滅していく。その殲滅力は未来の勇者である二人には少し劣るものの、しかし少しだけ。水中という、三次元的軌道を描いて戦闘ができる空間で、高速で動き回りながら、一発でも殴れば倒せる星屑を倒すという単純な作業ならば、水中の棗は風と樹にすら並ぶ殲滅力を得る事ができた。
「す、すっごぉ……」
「水中であんなに戦えるなんて……」
これには思わず犬吠埼姉妹も驚いて口が開くほど。
元々樹海と言う木々が生い茂る場所での戦闘しかしてこなかった風と樹にとって、水中で戦闘ができる棗と言う存在は、素直に凄いと言える存在だった。
しかし、口は開いても攻撃は止めず。水中と言う自分のフィールドで戦い始めた棗と、陸上を薙ぎ払い空中をワイヤーで駆けながら斬り裂く犬吠埼姉妹の殲滅力はたかだか星屑が百体二百体程度で止める事なんてできず、三十分も経たない内に星屑の殲滅は終わった。
「ぷはっ。お疲れ、二人とも」
「えぇ、お疲れ様。にしても凄いわね、棗。水中で戦う勇者なんて初めて見たわ」
「わたしは海が好きだからな。言っては何だが、陸上よりも水中の方が戦えると自負している」
「水中特化の勇者……凄い新鮮ですし、頼もしいです」
「いや、いつもは水中で戦い続けていると打ち漏らしが出てしまうからな。二人が居るからこそ、わたしも水中で戦えた。この勝利は、二人のおかげだ」
「んな水臭い事言わないの。これは三人の勝利よ」
風の言葉に棗も笑い、三人は再びおばばの家へと戻ったのだった。
****
おばばの決意は、硬かった。
おばばを始めとする南城市の老人の殆どはこの地に残る事を既に決めており、四国への避難を行うのは、最年長でも四十代。既に南城市全体にこの計画の事は知らされており、住民一人一人に連絡網で確認を取った結果が、これだ。
四国へ向かうための船の準備は既にできており、後は住民たちの総意の違いがない事、南城市の外にも居る多少の生き残りにもこの事をしっかりと伝える事。
取り残される避難希望者が居ない事をしっかりしたうえで計画は実行に移されるという。
「大体、三日後が計画の遂行となります。勇者様方は、どうかそれまでゆっくりとお休みくだされ」
「……決意は、硬いんだな」
「元より、この地で死ぬことを決めていた身故に。いつかこの世界を元通りにして、我等の子孫が墓参りにでも来てくれれば、悔いはありませぬ」
「……わかっ、た。勇者の名に懸けて、みんなを四国へと連れて行こう」
もう説得は無駄だ。
死を受け入れた者の気持ちは、硬い。これ以上は無駄な押し問答を繰り返すだけで三日間を過ごすだけだと理解した棗は、おばばの言葉を受け入れる事となった。
犬吠埼姉妹は棗の家に三日間厄介となるため、棗に連れられて棗の家へと向かおうとしたのだが、風がおばばに声をかける。
「……本当に、ここに残る気なの?」
「そう決めましたが故に」
「あなたが死んで悲しむ人も、少なくともここに三人はいるのに?」
「嬉しい事ですな。ですが、未来を創るのは老人ではありません、若者です」
「その若者を導く人って言うのが!」
若者を導くのが、老人だ。誤った未来を創ろうとする若者を正しい方向へと導くのが、老人なのだ。
その知識は。その魂は、あんなバケモノに食われていいものではない。
あんなバケモノのせいで悲しむ人なんて、もう見たくない。
バーテックスという存在のせいで、一度は絶望した風だからこそ、バーテックスのせいでこれ以上誰かが悲しむのなんて見たくはなかった。だから、と引き下がるが、そんな風の手を樹が引いた。
「お姉ちゃん」
「樹……」
樹の一言で、風は黙ってしまった。
察したのだろう。妹は、もうこれ以上何を言っても無駄だと言っているのだと。そして、風も何となくソレは理解していた。
だから、黙った。
「お婆さん達の、人生最後の我儘だから。わたし達に、止める権利なんて元からないんだよ」
その通りだ。
もう老い先短い命。それを縛り付けるなんて事は、できない。
せめて、最後の我儘に付き合ってあげる方が、きっといいんだ。無理矢理に連れて行っても、この人たちは後悔し続けるだけなのだから。
だから、せめて後悔が残らない死に方を、選ばせてあげるべきだ。
「ほっほっほ。そう、これは老人の我儘。最後は何十年も過ごしてきた地で、何十年も見てきたお天道様に看取られる。これ以上に最高の死に方がありましょうか?」
「……死に方に、最高も最悪も、ないと思うわ」
「いいや、そんな事はありませぬ。最後にこの地が見たかったと思いながら死んでいくよりも、この地に看取られて死んでいく。人生最後の望みを果たして死ぬことと、果たせず死ぬこと。そこには大きな差異がある。最後は笑って死ねる事こそが、人生最後の楽しみにして、最も清く美しく誇れる物なのです」
沖縄の滅びは、もう決まっている。
風と樹がここに残って戦い続けたとしても、いつか確実に天の神はこの沖縄を勇者ごと滅ぼすために、本気を出す。
風と樹にできるのは、流れに身を任せて四国へと向かうか、老人たちが黙って死ぬのを見過ごせないからと戦うか。二つに一つなのだ。
例え今から四国に行き全力で戦い天の神を打倒しても、老人たちはそれまで耐えきる事なんてできやしない。だから、風にできるのは。
「……ごめん、なさい。もっとアタシに力があれば。バーテックス全部倒せるくらいの力があれば」
「勇者様は、未来へと繋がる命を守ってくださる。それは、十分に凄い事で、誰にもできない事なのです。その力を蔑むことなく誇ってくだされ。たった数日と言えど、あなたのような優しい勇者様と出会えたこと。それは、間違いなくこのおばばの人生最後の幸運なのです」
風は流れに身を任せる。
こんなに立派で優しい人たちが沖縄には居たという事をしっかりと覚え、四国へと向かう。
「アタシも。あなたみたいな人と出会えたことは、人生の中でトップクラスの幸運な出来事よ」
人生とは出会いと別れの繰り返し。
風は沖縄で育まれた優しい命に見送られ、過去を助けるために。自分達の時代のように燃やし尽くされる事無く、綺麗な形をなるべく保ったまま沖縄を取り戻すために、剣を握る。
それが、風に生まれた新しい戦う理由だった。
次回からは北海道、沖縄の避難を実行する話となります。
それが終わったらいよいよ乃木若葉の章も話は佳境。神世紀勇者参戦のタイミングが原作中盤の後半って感じになってしまったので、まぁ仕方ないと言えば仕方ないですが。
とりあえず次回はそこら辺の作戦会議フェイズと、ちょっとした勇者同士に交流となります。