ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回はサブタイの通り、先代組の合流となります。

いやぁ、ここまで来るのが長かった……というか、ホント自分の話を進めるスピードと言うか、話の組み立て方というか、そこら辺が結構下手というか、遅すぎてアレというか……w

どちらにしろ遅いのでそこら辺は自分の課題ですねぇ。あと、キャラが多いと誰かが空気化するというのも。


先代組合流

 友奈によるショートカットはかなりの功を奏した。

 なにせ、本来は二日ほどかかる筈だった移動が数時間はそれによって削れたのだから。

 雪花の分析によってバーテックスは人の多い場所を優先して狙うという傾向がある事は分かっている。なので、襲撃を受ける可能性がある時間を少しでも減らす事は利点以外の何物でもないのだが、代わりに友奈の精霊バリアは心もとない状態となってしまった。

 即座にリチャージが入っているため、数分で一回は精霊バリアを張れる程度には回復しているものの、だからと言って無茶をしたら精霊バリアの回復が追い付かずにダメージを貰うことは間違いない。

 あまり友奈に無茶をさせられる状態ではなくなってしまった。元々零距離での戦闘を得意とする友奈に精霊バリアが無いのは、いささか不安要素成りえてしまう。

 そのため、前衛は夏凜が。その後ろから友奈は火車の炎による援護を飛ばす事となった。

 なったのだが。

 

「あんまりバーテックス来なくなったね」

「もしかしたら風達のほうに行っているのかもしれないわね」

「まぁ敵さんが来ない方があたし的にはいいんだけどねぇ」

 

 案外バーテックスはその姿を現さない。

 沖縄との同時進行によりこの計画を動かしているため、もしかしたらバーテックスの戦力補充が間に合っていないのかもしれない。

 バーテックスは北海道ではなく沖縄と四国。その二つに戦力を集中させていると考えられる状態であり、北海道の方面のバーテックス群はかなり手薄な状態となっていた。現に風達は出航寸前にヴァルゴとピスケスの襲撃を受けており、四国も先代勇者達が出陣と同時にレオと交戦をした。

 北海道ではそれがない。

 これを北海道が放置されていると見るべきか、それとも嵐の前の静けさと見るべきか。雪花的には前者の方がいいのだが。

 時折通信機で自分達の情報を共有しあっているが、どうやら風達の方は既に二回の襲撃を受けているらしい。一回目は、ヴァルゴとピスケス。二回目は星屑と進化体群。先代組の合流が遅い方である沖縄方面が集中的に狙われているとも言えるこの状況はあまり好ましい状況ではないが、犬吠埼姉妹には頑張ってもらう他ない。

 

「ちなみに先代組はもうちょっとで合流できそうなの?」

『合流できそう……とは言いたいのだけど』

『さっきから襲撃が時折あってな。移動しようとしたらコレだから、ちょっとばかり時間が必要になりそうだ』

 

 そして先代組にも。

 どうやらバーテックスは先代組の方にも襲撃を仕掛けているらしく、通信機越しに爆音が時折鳴り響いている。本来数時間程度で北海道組は先代組が合流する予定だったのだが、ショートカットまで使ったのにも関わらず未だに先代組が合流しないという事は、予想以上に移動に手間取っているのだろう。

 だが、先代組が移動に手間取っているという事は、移動している北海道、沖縄組に攻撃が来ないという事。守るべき無力な存在が居ない先代組に攻撃が行ってくれた方が、まだ犠牲者が出る確率は低い。

 

『一応、沖縄組の方は何とかなりそうだけど……ちょっと不安があるのよね』

「不安?」

『バーテックスの事。一回目の襲撃は本土方面から来ていたんだけど、二回目は本土じゃなくて西から。中国や朝鮮だったかしら? そういう外国方面からやってきたっぽいのよ』

 

 外国方面からやってきた。

 その言葉を聞き、夏凜は頭の中で世界地図を思い浮かべる。四国では日本地図すら無用の物となり、一応日本地図は覚えているが世界地図の方は覚えなくてもいい。そんな感じの扱いになっているため、西暦に来る前に即席で覚えたのだが、記憶では日本に近い国は中国や朝鮮。

 そして、ユーラシア大陸の上半分近くを領土としているロシア。

 あっ、ロシアって結構北海道と近いんじゃない? と夏凜が思った矢先だった。

 友奈のスマホのレーダーに、赤い点が映りだす。

 

「わっ、夏凜ちゃん。星屑がいっぱい来るよ」

「どこから来たのか分からないけど、やっぱりそう簡単に避難はさせてくれないって訳ね」

 

 バーテックスが来ている方角は、北西。あぁ、やっぱ外国を駆逐し終わったバーテックスが日本に集まってきているんじゃ……と嫌な想像をした夏凜だったが、そんな暗い事を考える前に臨戦態勢。

 先代組の二人が来てくれれば、このジリ貧もどうにかなる。そのためにチョイスした戦力は、この場で足りない戦力を補ってくれる力を持っている。

 

「さあて。行くわよ!」

「まずはご挨拶がてら! 勇者パンチ!!」

 

 そして星屑がチラホラと見え始め、夏凜が双剣を構えた。それと同時に両腕に炎を纏った友奈がその場で拳を振り抜いて炎を飛ばし、見えていた星屑をある程度焼き尽くす。

 

「雪花、槍投げなさい!」

「あいよっと!」

 

 戦闘開始の火蓋が文字通り切って落とされたと同時に夏凜が雪花に槍を投げるように指示。それに従った雪花の投げ槍の上に夏凜が乗り、どこぞのバトル漫画のように空を駆ける。

 彼女だってドラゴンボール愛読者だ。桃白白の移動方法だって勿論頭の中に入っている。今回はそれを実践してみただけだ。

 なんか雪花が引いているが、そんな事は気にしない。槍から星屑へと足場を変えて星屑を切り刻む。

 時には双剣よりも短い小刀サイズの剣を取り出して投げつけて爆破し、更に空中を駆ける。まさに未来版若葉とも言える移動をスペックに任せて行う夏凜であったが、しかしその視界が嫌なものを捉えた。

 なんかドリル状になって突っ込んでくる巨大なやつ。

 

「か、カプリコーン!?」

 

 まさか星座型までこっちに出てきたのかと驚いたが、即座に夏凜は双剣を構えて防御姿勢を取る。空中と言う踏ん張りがきかない場所で戦っていたがために避ける事もできず、夏凜は防御の上からカプリコーンのチャージを貰い、吹き飛ばされる。

 なんとか体勢を整えてフェリーの側面に両足揃えて着地すれば、夏凜を中心にフェリー側面に軽いクレーターができあがり、その衝撃にフェリーが結構危ない感じに傾いてしまう。

 まぁ沈まなかったのだ。許してほしい。

 

「チッ。とうとうこっちにも御霊があるやつが出てきたわね……」

 

 舌打ちをしつつ、フェリーの側面を駆けのぼって友奈と雪花の元へ合流すれば、雪花は槍を構えながらも一歩退いていた。

 

「い、いやいや……あんなの聞いてないんだけど……」

「あれ? 言ってなかったっけ。あれがわたし達がよく戦ってたバーテックスだよ」

「合計十二種類は確認できてるわね。どれも面倒な能力持ちよ」

「で、デカすぎでしょ……ってか夏凜、さっきの大丈夫なの? あたしなら五回くらい死んでそうな勢いで叩きつけられてたけど……」

「あの程度掠り傷にもならないわよ。精霊バリアもあるし、無くっても大丈夫なようには叩きつけられたし」

「やっぱ君達のスペックバグってない? 大丈夫?」

 

 初めて星座型のバーテックスを見た雪花は恐怖しながらも声を絞り出すが、アレを倒す方法が見つからない。ついでに夏凜のスペックと、精霊バリアに戦慄する。

 例え夏凜と友奈の火力をもってしても、三十メートルのバーテックスを倒すのなんて相当な時間を要するだろう。

 

「ちなみに、アレは標準装備として再生能力があるわね。樹海の中でなら封印ができるのだけど……ないのなら、きついわね」

「だったら、一から十まで全部壊すまでだよ!」

「いや、チミ達あんなん相手によくそんな意気込みができるね……あたしゃ雑魚の掃討を担当したいけど……雑魚が雑魚って言えない程度の数になっちゃってんのがなぁ……」

 

 少なくとも、星座型の攻撃は一発たりともフェリーに当ててはならない。掠りでもしたら最後、フェリーは転覆してしまうだろう。神樹様を守りながら戦っていた時よりも守るべき対象は近く、そして敗北条件はほぼ同じ。

 クソゲー度が加速してしまった。どうしてくれる。

 だが、やらねばならない。

 覚悟を決め、夏凜が双剣を構え友奈が両手両足に炎を纏う。もしも勇者パンチの火力が全盛期レベルなら、友奈一人でもカプリコーンの解体ができたかもしれないが、それができない以上は。

 

「行くわよ友奈!」

「了解! 全力で燃やし尽くす!」

 

 夏凜の言葉に合わせて友奈が炎を噴出しながら飛び立ち、それを夏凜が追う。夏凜はそのまま真っ直ぐにカプリコーンへと向かって行き、友奈は三十メートルあるカプリコーンの更に上空を陣取り、一回転すると同時に構え。

 

「勇者ぁ! イナズマキックッ!!」

 

 腕と足の炎をすべて推進力とした飛び蹴りと叩き込む。

 カプリコーンの表面が陥没し、更に四本ある足の内一本を焼き尽くす程の友奈の蹴りは威力が落ちているとは思えないほどだったが、即座にカプリコーンは足を再生し始める。それを夏凜が食らい付いて阻害に入るが、武器のリーチや特性上阻害が精いっぱいとなり、攻撃に転じる事ができない。

 しかも、炎によってカプリコーンの表面を焼きながら距離を取った友奈に向かって残り三本の足が槍のように突き出され、友奈自身も中々攻勢に出れていない。

 もしもここが樹海ならば封印の儀ができたし、例えできなかったとしても地上で体勢を整えて勇者キックを何度も叩き込めただろうが、空中という慣れないバトルフィールドは連続での勇者キックを許してくれない。

 

「だったら、これで!!」

 

 勇者パンチで突き出された足を跳ね返し、その場で手を合わせる。

 そして両手の指先から炎を凝縮したレーザーを放ち、腕を上下に振り抜くことによって一気に足を繋げていた器官を炎を以て切断。

 

「やるじゃない友奈! トドメも任せるわよ!」

「うん!」

 

 それを見た夏凜は再生の阻害を止め、一気に頭部へと駆け昇り全力を込めて二本の剣でカプリコーンの胴体を中程まで切断する。その胴体の合間から御霊らしきものが見えた瞬間、夏凜が胴体を蹴ってカプリコーンから離脱。

 夏凜の行動からそれを既に分かっていたと言わんばかりの友奈が、再生が完了してしまう前にカプリコーンの頭上を取り、右腕に炎を纏わせる。

 炎を纏わせ、纏わせ、硬め、光り輝く超常の力をその右拳に宿らせ、構え。

 

「豪炎爆砕ッ!! 勇者パァンチッ!!」

 

 炎の力を一度だけ借り、空中で加速しながら落下。そのままカプリコーンの脳天に赤熱化した拳を叩き込み、カプリコーンと共に海中へと落ちていく。カプリコーンが海底に叩きつけられ、友奈の拳と地面とでサンドイッチとなった瞬間。友奈の右腕が纏っていた炎が解放。

 炎は海水を蒸発させるほどの柱となりカプリコーンを燃やし尽くし、友奈はその炎の流れに身を任せて空中まで飛び上がり、炎を振り払いながらフェリーに着地した。

 

「うわー。あんな火柱、ゲームのトドメ演出でしか見た事無いわぁ……」

「派手にやるわね、友奈」

「えへへ~。久しぶりに火車と一緒だから、ちょっと張り切っちゃった」

 

 キラキラと燃え上がる火柱に思わず雪花が呟く。

 しかし、現時点で星座型バーテックスが出れば友奈にしか倒せないと言うのも事実となった。

夏凜の攻撃は、手数こそ勇者部内ではトップクラスだが、いささかリーチと破壊力に欠けている故に、封印の儀無しでは対星座型バーテックス戦では、恐らく貫通力に長けるがそれしかないとも言える樹と同じレベルで相性が悪い。昔の自分なら躍起になって、とか頭を掻きながら考えるが、ふと視界の端が煌めいた。

 あー、これは、と呟きながら夏凜が自身の携帯を見ると、いた。

 

「友奈、雪花、追加。ライブラよ」

「ライブラって事は……てんびん座? どんなのだっけ」

「ほら、レオの時に居た秤みたいな」

「…………あー! あれだね。すっごい影薄いから覚えてなかったよ」

「君達あんなのと何度も戦ってんのね……あたしはもう新種が出まくってて困惑しまくってるよ……」

 

 ライブラ。てんびん座のバーテックスであり、交戦した記憶が深いのは先代組の方だろう。讃州組での戦闘でライブラは出てきた事には出てきたのだが、特に交戦することなくレオ・スタークラスターの合体素材となり悪魔合体してしまったので全くと言っていい程、印象に残っていない。

 一応夏凜は全バーテックスの情報は頭の中に叩き込んであるので覚えているが、どんな攻撃をしてくるのかと言われたら覚えていない。

 しかし、出てきたのなら倒さねばならない。徐々にその姿を現してきた金色の秤がそのまま大きくなったようなバーテックス、ライブラを目視で確認し、三人が臨戦態勢を取る。

 その瞬間。友奈と夏凜の通信機に通信が入った。

 

「こちら北海道組だよ」

『その声は友奈ちゃんね。私よ、東郷よ』

 

 通信を入れたのは美森だった。

 東郷さんだ! と友奈は無邪気な声を上げ、夏凜はこのタイミングでの通信になるほど、と口を開く。

 陸地は、見えない。ちょっと陸地から離れていることから今すぐの合流は難しいが、そこは夏凜が想定した通り。だからこそ。

 だからこそ、ここへの援軍として選出した勇者は。

 

『ライブラが一体ね。了解、狙い撃つわ』

「え? でも東郷さん、どこにも居ないけど……」

『大丈夫。陸地から援護するから』

 

 その言葉が聞こえた直後、三人の頭上を青色の光が駆け抜けていき、ライブラの天秤を吊るす糸のような物がその光に貫かれ秤が一つ、海面に落下する。

 更に一発駆け抜けた青い光が反対側の秤を海面に落とす。

 そう、北海道組の援軍として選んだのは、陸地からでも正確無比な狙撃が可能であると考えた美森。そして。

 

「はっはー! 水中からアタシ様参上!! んでもって通算三度目の鳳凰天駆ァ!!」

 

 斧からの火炎噴出により例え水中だろうと移動が可能であろうと考えた銀。この二人だ。

 陸からの美森の狙撃と、高機動高火力の銀。そして、沖縄方面は鏡による空中の移動と運搬が可能なハゲ丸と、全勇者中トップクラスのスペックを持つ園子。これが、参謀三人が考え出した各方面への援軍だった。

 ライブラの目の前の水面から炎を噴出しながら飛び出した銀が火炎を纏い空へと舞い、そのまま落下の勢いと空中で噴出した炎の勢いを使いながらライブラへと肉薄。大きくライブラの体にバツの字の傷を付けながら、ライブラへと完全に取りついた銀が斧を振るい、瞬く間にライブラを解体していく。

 

「……うわぁ。スペックの暴力」

「友奈、アタシ達も行くわよ!」

「がってん! いっくよぉ!」

 

 更にそこへ友奈と夏凜が参戦。陸の美森からの援護射撃を受けながらライブラを片っ端から解体していき、ライブラが何かする前に完全に封殺する。

 解体解体と再生前に圧倒的な暴力でライブラを解体し尽くせば、残るのは御霊だけ。逆三角形のそれを目の前に、三人が同時に跳躍。その内二人が炎の力を借り、夏凜は満開ゲージのエネルギーの内一割程を自身の斬撃に乗せる。

 

「これで!」

「トドメ!」

「の勇者パンチ!!」

『ン狙撃っ』

 

 夏凜と銀の同時斬撃と、友奈の炎を固めた灼熱の勇者パンチ、そしてオマケの狙撃が御霊を完全に破壊し、虹色の光が溢れた。

 そして夏凜と銀は海に落下したが、友奈が空を飛んでなんとか二人を回収し、船の上へ。美森はフェリーを陸の方へと寄せてもらってから友奈が回収する形で無事合流を果たした。

 

「やっと合流できたね、東郷さん!」

「えぇ、友奈ちゃん! あぁ、やっぱり生友奈ちゃんこそが最高だわ!」

「実は須美の奴、戦闘区域が射程圏内に入るまではずっと友奈の写真を見て友奈欲を控えてたんだぜ……」

「……まぁ、いつも通りね」

「濃いねぇ、結城っちと夏凜のお仲間さん……あっ、秋原雪花です、どーも」

「ん、アタシは三ノ輪銀だ。あっちは東郷美森。アタシは銀って呼んでくれ。あっちは東郷呼びのが好きらしいから、東郷って呼んでやってくれ」

「あいよ」

 

 美森と銀の名を雪花が知り、美森が存分に友奈欲を解消した所で、雪花が一つ咳払い。

 これからの事、というか当初から考えていたあれこれについてだ。

 

「そんじゃま、結城っちと夏凜は暫くは休憩だね。まだ船旅は長いし、ゆっくり休んでね」

「えぇ、そうね。友奈ちゃんが疲れのせいで海にでも落ちたら大変だもの。あとは私と銀に任せてゆっくりと休んでちょうだい」

「あたしの心配は無しかい。まぁいつも通りだけど」

「だって夏凜ちゃんに戦闘面で心配する事なんてないもの」

「ま、まぁ、あたしは完成型勇者だもの! 数時間の連戦程度楽勝よ!」

「ちょっれぇな」

 

 なんか久しぶりに出た完成型勇者理論を美森はスルーし、銀はちょろいなぁ、と一言。最も夏凜にそれは聞こえておらず、結構上機嫌に二人は船内へと入っていく。一応、勇者装束の方は念のために纏ったままだ。

 念のために。

 

「あ、そうだ。あたしもちょっとついてくわ。みんなにさっきまでの揺れとかを説明しなきゃだし」

 

 そして雪花の方も、先ほどまでの揺れなどの説明のために一度船内に行く事に。一度戦闘が起きたらもう暫くは起きないだろう、という理由からなのだが、一応雪花は敵襲があればすぐに外には出れるように気を張ったまま。

 雪花とは途中で別れ二人は勇者ようにと当て割られた部屋へと向かうのだが、その道中でもターミナルの方から雪花を見つけた北海道民たちの声が聞こえてくる。

 

『勇者様! 先ほど凄まじい揺れがありましたが、本当に大丈夫なんですか!?』

『やっぱり四国への避難なんて無理があったんじゃ!?』

『先ほどの炎はやっぱりバケモノの攻撃なのですか!?』

『むしろどこからどこまでがバケモノの攻撃だったのですか!?』

 

 まぁ、そうなるのも当然だろう。

 相手は底が知れぬバケモノ。対してこちらは人間だ。超人的な力を持っているとは言っても、北海道民の中で友奈と夏凜、そして新たに援軍として到着した美森と銀の存在を知るのは極僅か。雪花一人があの火柱を起こしたとも、あれを起こしたバケモノを倒せるとも思えないのは無理がない事だ。

 雪花はそれに対して援軍が居るから、心配はないから、揺れは全部戦闘による余波で船には傷一つ付いていないから、と声を荒げるが、果たしてどこまで鎮静化できるのか。

 それを聞きながら二人はちょっとだけ顔を顰めながら歩く。

 

「……やっぱり、みんな不安なんだね」

「そりゃそうよ。いくら大丈夫と言っても、戦ってるのは所詮中学生の女の子よ? 信用しきれない部分だってあるのは仕方ないわ」

「そう、だよね。っていうか普通そうだよね。普通に考えてこれ、中学生の女の子がやるバトルじゃないよね?」

「そこら辺は神樹様次第よ。神様の力を宿せるのは無垢な女の子だけなんだし……って無垢? 東郷が無垢……? じゃあハゲ丸って………………いえ、考えるのは止めましょう」

 

 なんか一瞬悍ましい事を考えた夏凜だったが、まぁ現実でそうなってるんだから仕方ないと、思考を切り替える夏凜。

 しかし友奈の言葉は実際その通りだ。いくら戦力的には十分とは言えど、守っているのは中学生の女の子。十八にも満たない少女達が戦っているから安心です、なんて言われてもそれだけで安心できるなんてことは無いだろう。

 例え守っているのが自衛隊だったとしても、船が戦闘で揺れれば不安は絶対にできあがる。故に、あの言葉は四国に実際に到着するまでは何をしても出てくる言葉。

仕方のない言葉なのだ。

 それは友奈だって分かっている。だから悲しそうな表情はせず、そりゃそうだよね、としかめっ面を苦笑に変えて笑う。

 

『だから言ったのだ。四国になぞ行かず北海道に残ればいいと……!』

 

 そしてそろそろ自分達の部屋だという所で、自分達が通りがかった部屋から厭味ったらしい言葉が聞こえてきた。

 この声は聞き覚えがある。出航前に友奈を人質に取りこの計画を白紙に戻そうとした男の声だ。

 悪意が込められたその言葉に友奈はたじろぐが、夏凜は何も言わずに扉の前に立ち、そして外側から完全に固定されて内側からは開けられないようになっている扉を壊さない程度に、しかし大きな音が鳴るように蹴る。

 

『ひぃっ!? な、何をする!?』

「そんなに北海道に戻りたいなら、あたしが無人の北海道に放り出してやるわ。いつまでも終わった事をブツブツと女々しいのよ! 勇者が居なけりゃ自分の権力も満足に振るえない肝っ玉の小さい男が嫌味ばっかり言いまくって! 少しは恥を知りなさい!!」

『わ、私は事実を言ったのだ! 四国行きなぞ計画しなければ危険な目には!』

「じゃあ死ねば?」

 

 自分でこじ開けることもできない扉の内側で喚き散らす男に夏凜が言った言葉は、あの時雪花が口にした言葉と同じだった。

 少し違う部分があるとしたら、夏凜が人様に見せられない程度にはキレてる表情を浮かべている所だろうか。彼女の兄が見たら卒倒する程度には、というか友奈ですら見た事が無いような結構なキレようだ。

 

「か、夏凜ちゃん!?」

「あたし達に守られるのが嫌なら窓から海に飛び込んで北海道に行くなり、ここをこじ開けて脱出艇にでも乗って北海道に戻るなりして。いいじゃない、自分に賛同する人だけそうやって連れて北海道に行けば」

『ゆ、勇者が居なければどうにもならないだろうが!』

「だからその勇者は四国行き希望なのよ。あんたの我儘に付き合う気は無いっての」

 

 ぶん殴ってやりたい、とすら思うが、ここをこじ開けて変な事をされるのも困る。寝込みを襲われても精霊バリアがあればどうとでもなるし、今の友奈のエネルギー残量でも精霊バリアは多少張れるし、成人男性が殴ろうが蹴ろうが多分リチャージ速度の方が上なので、本当に何をされても問題はないが。

 ただ、舵を無理矢理動かされて沈没、とかそんな事をされたらたまったものじゃない。だから、扉は開けない。

 

「言ってんでしょうが。勇者が居なけりゃ何もできない肝っ玉の小さい男って。それを自覚したらとっとと寝なさい。文句言っても何言っても決まった事は決まった事なのよ。多数決で決まった事に従うなんて幼稚園児でもできる事を大の大人ができないとかわめくな、鬱陶しい」

 

 言いたい事を言うと、夏凜はそのままドアから離れ、友奈の先を歩いた。友奈は少しおどおどしていたが、すぐに夏凜について行った。

 

「か、夏凜ちゃん……いいの? あんな事言って」

「いいのよ。友奈は優しすぎるからあんなのにもそうやって優しい言葉をかけるんでしょうけど……あたし的にはイラッと来た。雪花も多分イラつくだろうし、園子も似たような事を言うと思うわ。他のメンツは……友奈みたいに優しいから、なんて言うか分からないケド」

 

 夏凜がこんな事を言えたのは、園子から予め色々と聞いていた事にも起因する。

 西暦の時代。それは色々なドラマでもあった通り、神世紀の常識。即ち出会う人の九割近くが善人であるという常識は捨てた方がいいという事。出会うのは五割が悪人だと思ってもいいとすら、園子は言った。

 だからこそ夏凜もあんなことが言えた。神世紀じゃあんな事、口が裂けても言う機会はないだろう。

 

「まぁ、あとの色んな事はあたし達の仕事じゃないし、ゆっくりとしてましょう」

「い、いいのかなぁ……」

「いいのよ。それに、友奈が気負う事でもないんだし。ああいうのは当人の性格次第なんだから、友奈は何も言えないわよ」

 

 友奈はいささか他人の事を気にしすぎている。

 ただ、気にしすぎた結果、自分の身がどうこうなってしまっては元も子もない。それも友奈が一番知っていることなので、まぁこうなった以上は仕方ないと割り切る。

 彼女だって西暦にはそういう人がいる、と園子から聞いていたため、本当にこればっかりは仕方ない。そういう人なんだと割り切るしかない。いささか優しすぎる友奈だが、そんな友奈だって成長しているのだ。

 そういう術もちょっとずつだが身に着けている。

 

「無事東郷たちも合流したし、あとは四国に到着するのも待つだけね。あたし達はフェリーのちょっといいベッドで寝てましょうか」

「はーい。あっ、机の上にジュースあるよ。飲む?」

「じゃあもらうわ。って、リボンシトロン……? なんじゃこら」

「さぁ? でも美味しいよ?」

 

 四国までは長いが、しかし上で戦っているのは頼れる仲間達だ。友奈と夏凜はホテルのようなフェリーの室内で鍵をかけてからゆっくりと眠りに就くのであった。

 

 

****

 

 

 一方その頃沖縄。

 

「なんとか空を飛んでフーミン先輩達に合流したけど~……」

「なんか本格的な襲撃は終わっちまったっぽいな……」

「いやぁ、わざわざ来てくれたのに申し訳ないわね」

「満開もお姉ちゃんが使っただけだしねぇ」

「まぁ、なんだ。とりあえずソーキそば食べるか?」

 

 こちらは本格的な襲撃が終わった後なので特に何事もなく、時折来る襲撃を捌きながら結構優雅な船旅となったのだった。




今回の戦闘でゆーゆが使った技は多分分かる人には分かる。というか大分ゆーゆが炎属性極めているというか、原作で一度しか使われなかった火車さんが大活躍しているというか。

そしてサラッと参戦する青いのとミノさん。一方沖縄にはそのっちとハゲが向かったものの、現在バーテックスさんは日本各地に主力となる星座型を送り込んでいる状態なのでそのっちとハゲが必要なかったとかいう。まぁ、その分他の勇者が休憩できるし、多少はね?

それと最近、結構ゆゆゆいやってるんですけど、編成ってどうやったらいいのか分からず襲来クエストとか全然勝てずにチラッとツイッター見たら攻撃力十万の若葉ちゃんとか意味分かんない攻撃力でバーテックス薙ぎ倒してるらしいのを見て何で攻撃力が十万超えるのか意味分からないしできる気しないので諦めました。
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