のわゆ書き始めたら、ちょっと原作と違う感じのたかしー書きたいなぁとかずっと思ってたんですけど、ここまで闇抱えた子になるとは自分でも思ってませんでした。
ごめんねたかしー。全部終わったらちゃんと汚染された感じの君を書くから……
先代勇者組が壁外へ他の勇者を迎えに行った翌日。千景達四国勇者組はとある任務を言い渡された。
それは、先日千景が報告した外の様子。巨大バーテックスが未完成状態で浮いていたという証言から決められた任務であり、端的に言えば外にいるバーテックスの掃討であった。
巨大バーテックスを倒す必要はない。ただ、それになる可能性があるバーテックスを掃討し、未来の勇者達が来るまでの時間稼ぎをしろという事だった。
現在サンプルとして譲渡された防人システムは解析中であり、勇者システムは未だに初代のまま。無理に喧嘩を売って死ぬよりも時間を稼いで確実性を取ったほうがいいというのが、最終的な大社の決定だった。
これには四国勇者組全員が参戦することになる。高嶋もなんとか回復が終わり、ダンクされた若葉と歌野も戦闘に支障はないため、全員での戦闘が命じられた。
「怪我人に鞭打たせるとは、大人は汚いな」
「話を聞いてウキウキ気分で刀を持った野武士は誰だったかしら」
「知らんな。どこの乃木若葉だ?」
「お前よ、乃木若葉」
「ははは、まいったまいった」
とは言うが、口振りから分かる通り若葉は案外元気そうである。
本当は先代勇者の中で自分の子孫である園子と模擬戦でもしたかったのだが、残念な事に園子が若葉の体のことを考えてそれを却下した。
故に、軽く暴れ足りないのだ。前回は敗戦したので、思いっきり暴れたいのだ。
「あんまり無理しないでくださいね、若葉さん」
「ぐんちゃんも。次はわたしがしっかり守るからね」
「ん、まぁ考慮しておこう」
「えぇ、高嶋さん。背中は任せたわ」
結構無茶する若葉と、なんやかんやで無謀な部分はある千景に注意が飛んだところで、六人は改めて壁外へと歩を踏み出す。
そしてすぐにその目に飛び込んできたのは、大量の星屑。
まるで四国そのものを囲える程居るのではないかという程の星屑と、それが集まり融合する事で誕生しようとしている巨大バーテックス達。その数は三体。
総攻撃の日に見た未完成の巨大バーテックスしか居ないが、しかしこのまま放置していたら明日にでもこれが足並み揃えて突撃していただろう。
「なるほど、これは掃除しないといけないわけね」
歌野の言葉に若葉が頷き、武器を握る。
自分達が手を付けられるのは、未完成の巨大バーテックスまでだ。今日は先代組が讃州組に合流する日であり、先代組と讃州組が戻ってくるのは少なくとも明日の夜中近くになる。
このまま待っていたら確実に四国がヤバイことになる。そうなる前に、この未完成巨大バーテックスを叩く。いや、叩けなかったとしても、せめて体の一部を削ぎ取って完成までの時間を自分達で稼ぐ。
そうしなければ、明日、自分達の負けが決まる。
「さて、行くぞ。お掃除のじか……」
若葉が生太刀を引き抜き、そして構えた瞬間だった。
誰かが、戦闘に立つ若葉の後ろから巨大バーテックスの方へと駆けていった。
あの背中は。サイドで結った桜色の髪は。
「友奈!? 待て、一人だと危険だ!」
高嶋だ。
即座に若葉が呼び戻そうと声を荒げるが、高嶋はそれを聞かない。そのまま一直線に巨大バーテックスの元へも走っていく。
死ぬ気か、という言葉を飲み込み、若葉が駆け、千景もそれに追い付く。
球子、杏、歌野も即座に遠距離攻撃でサポートに入るが、高嶋は止まらない。一歩、二歩と着々と巨大バーテックスへと迫っていき。
「酒呑ッ!!」
叫び。
「童子ィィィィィィィィィッ!!」
殴り付ける。
「なっ!? 新たな精霊!?」
若葉が驚き、新たな精霊、酒呑童子の力を宿した高嶋に目を奪われる。
そして、驚愕する。
勇者装束と高嶋の体そのものが変化し、両腕には巨大な腕が。そして、額からは赤い角が生え、高嶋らしくない獰猛な笑顔を浮かべながら拳一つで巨大バーテックスを打ち砕く高嶋の姿に。
「あははははははは!! そうだよ、この力だよ!! これがあれば……これさえあれば、どんなバーテックスだってぇ!!」
「た、高嶋、さん……?」
「死ねよ! 逝っちゃいなよ!! ぐんちゃんを傷付ける悪い虫は全部逝っちゃえよ!!」
今の高嶋の様子を表すのなら、鬼神。
その容姿も相まって、今の高嶋にはその言葉こそが相応しかった。
笑い、嗤い、嘲笑い、ただただ目の前の敵を破壊する。西暦勇者元来の力では歯が立たない程だった巨大バーテックスすらも腕力のみで破壊し尽くす高嶋の姿は、最早見ていて痛々しい。
「くっ……! 千景、友奈を止めるぞ! 杏、お前は歌野と球子を使って巨大バーテックスをある程度壊せ! その間に私達で友奈を止めて撤退する!」
「わかりました! 若葉さんと千景さんも、多分同士討ちはしないでしょうけど……くれぐれも気を付けてください!」
「おい若葉! 相手は友奈だからな! 斬るんじゃないぞ!! 本当に斬るんじゃないぞ!!」
「お前ともどうやらお話が必要みたいだなアァ!!? 斬らねぇからお前はあっち行ってこい!!」
球子の言葉に半ギレで返しつつ、若葉が駆け、千景も駆ける。
戦況的に見れば、高嶋を止める事は考えなくてもいい。むしろ、高嶋をそのまま動かすべきだ。だが、今回やる事はあくまでも巨大バーテックスの完成の阻害だ。破壊まではしなくてもいい。
無駄な事をして自らを傷つける必要はない。
今の高嶋は正しく鬼神の如き力を発揮しているが、切り札を一度使った二人は知っている。例え、どれだけ自分達の力の上限が上がったところで、肉体が許容できる上限は変わりはしない。今の高嶋は、小さな入れ物に巨大な物を無理矢理ねじ込んでいるだけに過ぎないのだ。
ならば、このまま放っておけばどうなるか。
高嶋が壊れる。
「友奈、止まれ!」
「高嶋さん、落ち着いて!」
二人で高嶋の巨大な腕を一本ずつ押さえつける。高嶋の腕に連結するようについている巨大な腕を無理矢理押さえつけて高嶋を止めようとするものの、高嶋は止まらない。
「邪魔!」
高嶋のドスが聞いた言葉と同時に若葉が押さえつけていた右腕が振り回され、その勢いに若葉の体が吹っ飛んでいく。
「高嶋さん、本当にどうしたの!? こんなの高嶋さんらしくないわよ!?」
そして千景は割と勢いよくぶっ飛んでいった若葉の事を一切気にせず、高嶋に声をかけ続ける。どうして若葉だけが吹き飛ばされたのかはよく分からないが、最悪の場合は切り札を使ってでも押さえつけないといけない。
そう思いながら近距離なのを構わず大声を出すが、しかし高嶋は止まらない。自由になった右腕で巨大バーテックスを壊していく。
「これだけはやりたくなかったが! 後で謝る!!」
そしてとうとう若葉が生太刀を抜きながら突っ込んでくる。勿論、峰打ちをするために逆に刀を握っているが、勇者の力が乗った峰打ちだ。相当痛いとは思うが、今は切り札を使わせない事が先決だ。
跳躍し、両手で構えた生太刀を振り上げ、それを高嶋にぶつけようとするが、高嶋は即座にその場を跳躍して離れ、若葉の斬撃を避ける。
「千景、離れろ! 気絶させて後ろに下げるぞ!」
「そうするしか、ないのね……! わかっ……え?」
若葉の言葉を聞いて後ろに下がろうとした千景だったが、動こうとしても動けなかった。
左の巨大な腕を切り離した高嶋の手が、千景の体がひしゃげんばかりの力で抱き寄せていたからだ。ギリギリ千景が潰れない程度の強さだが、十分に千景の体には痛みが走る。高嶋の細い腕のどこにこんな力が、と驚愕しつつも何とか抜け出そうとするが、抜け出せない。
「大丈夫……」
もがくが、無駄。代わりに聞こえてきたのは、大丈夫と言う言葉。
「ぐんちゃんはわたしが守るから……この力で、守るから……」
「た、高嶋、さん……?」
「もう、傷つけさせない。バーテックスにも、人にも、何にも。わたしが全部守って、傷つけさせない」
囁くように呟く高嶋の表情は。
とても、不気味な笑顔だった。
あの高嶋が。優しい彼女が浮かべるには不相応な、とても不気味な。千景ですらそう思ってしまう程の、笑顔。
「力に溺れたか、友奈!」
友奈が、守る事にどこか執着しているのは、遠征が終わった後の会話で知っていた。知っていたが、きっと友奈なら自分で自分の道を、正しい道を見つけられると若葉は信じていた。
だが、その結果はこれだ。もっと言葉をかけておけば、と若葉は後悔するが、もう止められない。
刀を握るしか、ない。
「溺れてないよ。これは、必要な力。わたしに一番必要だった力!! どんな敵にも負けない、どんな敵も潰せる最強の力!!」
「ほざくな! お前が本当に必要だった力が暴力であるものか!! 私がお前に必要だと言いたかったのは、そういう力ではない! 仲間を、千景を信じる己が心の強さだ!!」
「違う!! 理不尽を跳ね除ける絶対の力!! これがあれば何が来ても怖くなんてない!!」
「力だけで何が解決できる! どこまで墜ちる気だ!!」
「ぐんちゃんを守れるんなら、どこまででも!!」
「人を守るために人を傷つける修羅の道を往くと愚を喚くか!!」
言葉は通じない。
ならば、力づくで止める。とうとう生太刀の刃を逆さではなく普段通りに戻し、構えを取る若葉。
高嶋であれど、斬る。その雰囲気が千景にまで伝わってきた。
「駄目よ乃木さん! 相手は高嶋さんよ!?」
「お前もほざくか!! 今の友奈の状況を見ろ! 言葉が通じる相手か!!」
「そ、それは……」
「分かったら黙っていろ! 私とて、仲間を傷つける気は毛頭ない!!」
両手で生太刀を握り、大きく呼吸。
そして、高嶋の呼吸に合わせる。
大丈夫だ、やれる。手加減こそしないが、殺す気もない。全力全開の手加減で、高嶋を止める。
「そういえばお前とは喧嘩したことは無かったな。いい機会だ、ここで一つ喧嘩といこう」
「喧嘩……? 切り札も使ってない若葉ちゃんがわたしに勝てるわけないじゃん」
「はっ。今さらスペック差が関係あるかよ」
ゆっくりと、ゆっくりと。呼吸を合わせ、刀を構え、刀の先を、そして足の先を右へ。それを見た高嶋がそちらへと移動しようとした瞬間。
「左だ、阿呆」
一瞬で左、高嶋から見れば右側へと回り込み、巨大な腕を斬りつける。
しかし、斬れない。
あのバーテックスを一方的に殴り壊せる程の力を受け止めるだけの事はある。舌打ちしつつも腕を振るって若葉を殴り飛ばそうとする高嶋だったが、若葉はそれを簡単に避けて下がり、生太刀を構える。
「どうした。お前の暴力は最強ではないのか?」
「馬鹿に、するなぁ!!」
「するさ。お前のそんな力などな!!」
とうとうなんの躊躇もなく振るわれる高嶋の拳を、若葉は生太刀を使って受け流す。
「っ!?」
「柔よく剛を制す。まさかお前が分からないわけがないだろ?」
「そんな小手先!」
高嶋が吠えながら何度も拳を振るうが、若葉はそれを受け流しながら下がっていき、常に体勢が崩れないように立ち回り続ける。
例え後手に回ろうと、いつか反撃の機会は来る。そう信じ、今はひたすらに一撃を貰わないように立ち回る。きっと、あの攻撃は一度でも受ければ瀕死。いや、もしかしたら体が千切れ飛ぶレベルだ。そう思えば嫌な汗が額を流れるが、しかしそれにビビってしまっては高嶋を止める事なんてできない。
「確かにその力は正しく使えば最強の矛となろう。だが、誤れば新しいおもちゃを貰ってイキるクソガキ同然だ! 一度考え直せ!!」
叫び左腕を受け流すのではなく全力で下から上へと弾き、生太刀を振り切った状態のまま高嶋の懐に潜り込み千景を抱きかかえる左肩に思いっきり柄を叩き込む。
骨が折れない程度に、しかし痛みを与えるように。痛々しい肉と骨を叩く音が響き、高嶋の表情が歪んだその瞬間、若葉は千景の手を引いて高嶋の手から千景を引き剥がしてそのまま千景を後ろに放り投げる。
「きゃっ!?」
「ぐ、ぐんちゃん!!」
「そらみたことか。お前の暴力で何が守れた」
「こ、のぉ!!」
「まだ冷静にならんか!」
しかし、それが高嶋の琴線に触れた。若葉の事を完全に敵と判断した高嶋の攻撃が若葉を襲うが、若葉はそれを完璧に避け、受け流す。
目の前が真っ赤な、技術なんてすっかりと抜け落ちた人間の拳程度、若葉からしたら下手を打っても当たるものではない。しかし、その暴力は若葉に反撃の機会を与えない。これは少しマズいかもしれない、と戦闘が長引いていることに顔を顰める。
若葉自身はいつまでだってこの攻撃を受け流して機会を待つ事はできる。だが、高嶋にこの力を使わせ続けるのは、マズい。いつ高嶋の体に限界が来るかなんてわからない。
どうしたらいいか。考えながら高嶋の攻撃を捌き続け。
「ごめんなさい、高嶋さん!」
その攻撃の間に潜り込んだ千景が、槍の石突で思いっきり高嶋の腹を突いた。
「ごっ、ぁ……!?」
「ち、千景……?」
まさか千景が攻撃するとは思ってなかった若葉は自分と高嶋の間に潜り込んできた彼女を見て驚愕する。
だが、高嶋は。
「ぐん、ちゃ……」
割り込んできた千景を覆い抱くように倒れ、そのまま切り札も解除されて気絶した。
その時に見えた一瞬の表情は、笑顔。
高嶋を抱きかかえた千景は、槍を地面に落としながら若葉に聞く。
「……ねぇ、乃木さん。私、どうしたらよかったのかしら。今日まで、何をしたらこんな事にならなかったのかしら」
千景には高嶋がこんな事になる兆候なんて、分からなかった。
だが、それは若葉とて同じ。確かに高嶋からは千景を守る事に固執しているような言動が時折見られた。今思い返せば、結構顕著な形で出ていた。
それを放置していた結果がこれだ。
高嶋があまり自分の事を表に出さない。そして、いつも笑顔。だから大丈夫だと信じていた結果が、これだ。
「……さぁな。私も所詮はおもちゃを与えられてイキってるただのクソガキだ。適当な答えが見つかるはずもなかろうよ」
俯き、生太刀を鞘に納め若葉はつぶやく。
既に杏達三人は他の巨大バーテックスの体を幾分か破壊し終えている。そして高嶋が攻撃していた巨大バーテックスも、八割程体が崩壊している。
これ以上長期戦をしていては物量で押される可能性がある。若葉はこちらを見る杏に向かって結界の方を指さしてから手を振り、戻るように伝えた。
「帰ろう、千景。友奈を病院に届けなければならん」
「……そう、ね。帰りましょう」
「……あまり気負うな。お前だけの責任ではない」
「…………」
結界内へと戻る二人の足取りは、とても重かった。
****
千景と若葉によって病院に送られた高嶋の容態は、とても酷いとしか言いようがない状況だった。
全身の筋肉を極限まで酷使した事による全身の疲労。そして、筋肉痛。これはまだ軽い方であり、バーテックスを殴りつけた両手の方は酷い物だった。
両腕は肉離れを起こしており、そして拳の皮膚は裂け、血が流れ肉の方も若干傷つき回復までには神樹様の恵みがあっても一週間ほどは絶対安静でなければ駄目だとまで言われる程だった。少なくとも、数日は拳を握る程の握力すらない。握ろうとすれば、酷い痛みが走る程に。
「……形振り構わず殴って止めるべき、だったか」
「そう、ね……高嶋さんだからって、躊躇うんじゃなかったわ」
その報告を医師から聞いた二人は、病院の屋上で空を見ながら後悔を吐露していた。
若葉は高嶋は仲間だから、勇者の中でも一番優しい人物だからと、暴走しても少し声をかければ正気を取り戻すと思っていた。千景も、高嶋の事が好きだからこその盲目的な信頼があったせいで、手を下すのが遅れてしまった。
自分達の甘さが、高嶋の体を傷つけた。
そう思うと、後悔が積もる。
「二人のせいじゃないわよ。ほら、コーラでも飲んで落ち着きなさい」
そんな二人の後ろから、コーラを手に持った歌野が近づいて二人の横にコーラを差し出す。こういう時はカッコつけてコーヒーじゃないのか、と正直に思ってしまったのは悪くない事だろう。
「歌野か……すまんな、ありがたく貰おう。で、奢りか?」
「当然よ。ほら、千景さんも」
「ありがとう、白鳥さん。ありがたくいただくわ」
コーラを受け取り、三人で並んで空を見ながらコーラを煽る。
「……コーラなんて久しぶりに飲んだな」
「そう? 私はたまに飲んでるけど」
「いや、私が単純に茶などを好んで飲んでいるからだ。甘ったるいのを買うのなら茶でも、と思ってしまう性分でな」
「嫌いだった?」
「いいや。別に好きだが、私を構成するモノの八割が和だから、必然的にそうなるだけだ」
「ならよかった。私炭酸飲めないんですー、とかいうぶりっ子が居なくてよかったわ」
「勇者に限ってソレはないわね」
コーラを飲みながら他愛のない会話を続ける三人。
こんなくだらない話でもしていればもしかしたら気も晴れるかもしれない、なんて思っていたが、しかし不思議な事に心は晴れないまま。どうしてもどんよりとした雲が心の中で影を作ってしまう。
コーラを一口飲んで溜め息を吐いて。歌野が飲み終わったコーラの缶を握り潰し、暫く経ってから今度は歌野が溜め息を吐いた。
「二人らしくないわよ? しんみりしちゃって」
「らしくない、か。まぁ、その通りさな。少しばかり今回のはメンタルに来た」
「そうね。何で高嶋さんはあんなことを……」
「分からん。分からんが、私は友奈がお前を守る事に執着していた事は知っていた。だが、あいつに限ってそれが暴走することは無いと思っていたが……」
「私を守る……」
千景は高嶋とは、普通の友人的な距離感で接していた。
接していたはずだが、一体どうして彼女がそんな事に固執するようになってしまったのか。考えても分からない。
若葉だって理由は分からない。しかし、彼女がそれらを表面に出したのは、若葉の記憶では遠征から帰ってきてすぐの時だけ。それ以外で高嶋は何も特異な事を口走っていなかったようには思える。
思えるが、高嶋の口から守るという言葉が多く聞こえたのは何となく記憶にある。
「まぁ、友奈とは追々話して行こう。時間なんて幾らでもあるんだ。ここでこうやって、答えの出ない自問自答を繰り広げてもどうにもならんだろうよ」
「……正論ね。言い返せないくらいには」
「正論を言うなとでも言いたいか?」
「いえ。ちょっとばかり気持ちを切り替えるのに時間が欲しいと思っただけよ」
「ならば幾らでも時間を使え。言っただろ? 時間は幾らでもあるとな」
「それもそうね。ここでコーラを飲みながらゆっくりと気持ちを切り替えるわ」
だが、ここで後悔を吐露し続けていてもどうにもならない。若葉はコーラ缶を片手に体を伸ばしながら、振り切ったように明るい声で千景に告げ、千景も少し暗い声を出したが、すぐに明るい声を出した。
歌野はようやくいつもの二人っぽくなってきた、と笑いながら屋上のゴミ箱に空き缶を投げ捨てた。
ホールインワン。きっとこの後は良い事が起こる事だろう。
「で、二人はいつまでコーラを飲んでるの? 飲むのがスロウリィじゃない?」
「いや、あんまり炭酸を一気に飲めない体質でな……ちょっと時間がかかるんだ」
「私も。缶コーラをグビっと一口、とかは無理ね。すぐお腹いっぱいになっちゃうし」
「ぶりっ子どもめ」
「お前のぶりっ子判定厳しいな? さて、そろそろ園子達もここへと到着する事だろう。歓迎の準備を……っと」
若葉が手を振りながら病院を出て行こうとした時、ポケットの中の通信機が音を立てた。園子から手渡された連絡用のソレは千景の物と同じだが、千景のは鳴っていないという事は緊急事態ではなく業務連絡的なモノらしい。
それをポケットの中から取り出し、二人に見せてから通信に出る。
『もしもしご先祖様~?』
「あぁ、そうだ。園子か?」
『そうだよ~。こちら沖縄組~』
『あ、もう通信始まってるのね。こっちは北海道組よ。若葉さんとそのっちでいいかしら?』
「あぁ、問題ない」
通信中に北海道組の援軍へと向かった美森も混ざってきた。
どうやら声振りからして特に問題は起きず計画は順調らしい。よかったよかった、ともろ手を振って喜ぶのはまだ先だ。今は通信の理由を聞かなければならない。
「それで、何かあったか?」
歌野と千景もこっち来いと寄せて通信の内容を共有する。
歌野は避難してきた勇者繋がり、そして千景は通信先の面子とは部活動仲間だ。一応聞かせても何ら問題はないだろう。後で共有する手間が省ける。
確認の言葉に園子と美森が通信の理由を口にする。
『大体、明日の夜かな~? それぐらいに四国に着く予定~』
『こちらもね。友奈ちゃんと夏凜ちゃんは今休んでるけど、襲撃もパッタリと無くなったし、奴さんは諦めたっぽいわね』
『こっちはわたし達の合流前にヴァルゴとピスケスは来たらしいけどね~』
『そっちも二体星座型が来たの? 北海道方面はライブラとカプリコーンが来たわ。一応、ライブラ戦は間に合ったけど』
ヴァルゴとピスケス。そして、ライブラとカプリコーン。それが何を指すのか若葉は一瞬分からなかったが、歌野と千景が携帯で巨大バーテックスの種類の事、とカンペを出し、ついでに先日共有されたバーテックスの情報の中にあった、巨大バーテックス全十二種の姿の中から、その四体を携帯で見せた。
その四体はどれも若葉が見たこと無い物であり、同時に今日の璧外での戦闘でも見なかったバーテックスだ。
「星座型と言うと、あの巨大バーテックスの事か。無事か? 死者は出なかったか?」
『避難民含めて全員無事で~す』
『楽勝ね。今さら私達の敵ではないわ』
あの巨大バーテックスと同種の物が二体ずつも出てきた事に若葉は不安に襲われたが、しかしどうやら二部隊とも死者どころか怪我人すら一人もでなかったらしい。それも、避難民全員を含めて、だ。
流石の戦闘力と言うべきか、咄嗟の機転と言うべきか。本人たちはそういう護衛戦は苦手と言っておきながら被害一つ出さずに終わらせる。それがどれほど難しい事かなんて、若葉達が一番知っている。それも、あんな強大な敵を相手に、だ。それを簡単に成し遂げたという辺り、やはり未来の勇者も歴戦の強者、という事だろう。
「そうか。しかし、明日の夜か……分かった。こちらから大社に言っておこう。くれぐれも死なないように気を付けてくれ。お前達は客人だからな。死なせてしまってはこちらの顔が立たん」
『心配ご無用だよ~。いざという時は満開があるし~』
『こっちも、まだ三人分の満開があるから、まだまだ余裕ね。この襲撃頻度なら余裕で耐えられるわ』
「それは頼もしいな。では、引き続き護衛の方を……」
と、そこまで言ったところで、若葉は肩を叩かれた。何かと振り返れば千景が携帯を手に立っており、その画面には「どうせならパーッとやっちゃいましょう」という言葉が。
どういう意味か分からなかったが、すぐに若葉は理解した。
なるほど、これをプロパガンダの一つに組み込むという事か、と。前回の諏訪とは違い、今回はフェリーと言う大きな乗り物での避難だ。嫌にもそれは目に付く事だろう。
故に、それをプロパガンダとして。勇者の力を示し四国の民を安心させるための手段として利用する。いい手段だ。
「園子、東郷。悪いがちょっと話を聞いてくれ。今さっき、北海道と沖縄の避難民をパーッと盛大に歓迎するという計画を思いついてな」
大社には事後承諾で首を縦に振ってもらう。
どっちにしろ、大社も考え付いた事だろうし、勇者達はそれに思いっきり乗らせてもらおう。
野武士の顔がちょっと悪い感じに笑った。
はい、切り札による精神汚染カウンター(特大)がたかしーに置かれました。精神汚染カウンターによりここから先、多分原作後半のぐんちゃん並みにたかしーの精神状態が酷い事になります。
というか、汚染によって他の子が鋼メンタルになった結果、原作で一番鋼メンタルだった子のメンタルが一番弱くなるってどういうことなの……?
ちなみに、たかしーの酒呑童子は全力を出せば現在の全勇者の中で一番の力を出せると考えております。
純粋な力関係的には、牛鬼有り全盛期ゆーゆ>酒呑童子たかしー>全盛期神世紀勇者>超絶弱体化ゆーゆ>その他神世紀勇者>切り札使用西暦勇者>通常時たかしー>西暦勇者、みたいな感じですね。
満開は勿論牛鬼有り全盛期ゆーゆを越えてます。
そういえば赤嶺友奈の章が配信され始めましたね。まだ一話だけなので何ともですが……話の全貌が分かったら今度は赤嶺友奈の章に……ってやってったらキリがない気がする……w