ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回は久しぶりに後半の方でハゲが主人公っぽく話の中心にいきます。

やっとだよ! やっとこいつが主人公っぽいムーブするよ!!


いよいよなハゲ

 高嶋の暴走の翌日の夜。四国の港に二隻のフェリーが現れた。

 港には既に報道陣が押しかけており、それを体を張って止める警備員や警官。その先には若葉を始めとした高嶋以外の四国の勇者四人が立っている。

 そう、このフェリーは雪花が率いる北海道民を乗せたフェリーであり、一瞬だけ顔をのぞかせていた美森は即座に奥に引っ込んで変身を解除し、北海道民の一人として外に出るのを今か今かと待ち構えている。

 そしてフェリーが港に着艦し、スロープがかかると同時にそこから雪花が降りてくる。

 

「あー、これで肩の荷が降りたって気がするわぁ……っと。休む前にお仕事お仕事……」

 

 この演出は勇者の間で決めた物であり、まずは雪花が降りてきて四国勇者のリーダーである若葉と握手。そんな歴史的瞬間的なナニかを報道陣がしっかりと記録した後に大社の職員が北海道民を誘導する運びとなっている。

 ちなみにそれを決めるために若葉達とは一度通信機越しに会話しているので、雪花は一度若葉の声を聞いている。

 ボヤキながらも雪花はしゃきっと背筋を伸ばし、こちらへ向かって歩いてくる勇者の一人の元へと歩く。勿論若葉の姿は写メで確認しているので、間違いはしない。

 

「秋原雪花さんだな。四国の勇者のリーダーをやっている乃木若葉だ。遠路はるばる、よく来てくれた。私達はお前達北海道の民を歓迎しよう」

「そりゃどうも。これから長いお付き合いになると思うし、よろしくね?」

「あぁ、こちらこそ。北海道を守り抜いた勇者の力、頼りにさせてもらう」

「こっちも、四国を守ってきた勇者の力、頼りにしてるよ」

 

 と、台本に書いておいた通りのセリフを口にして握手。その瞬間、カメラのフラッシュが炊かれて思わず雪花は目を細めてしまう。

 盛大にやった結果、めちゃくちゃマスコミが集まってきてしまったが、それも計画の内。若葉はすまんな、と一言謝り、雪花がそれにだいじょーぶ、と返してから数秒間の握手の後に大社の職員が動き出してフェリー内に居る北海道民の誘導を始める。

先頭の集団が出てきてから暫く、サラッとそれに混じって誘導される友奈、美森、夏凜、銀の姿を見て雪花と若葉は頷き、勇者達の元へと戻っていく。

 

「全く。カメラの前はどうにも肩が凝る」

「同感。初めてあんなカメラの前に立ったよ。んで、こっちがお仲間さん?」

「そうだ。右から郡千景、土居球子、伊予島杏だ。あと、今は入院中だが高嶋友奈。そして諏訪の勇者の白鳥歌野が今は丸亀城で待機している」

「へぇ。結城っちと同じ名前の人がいるんだ。こっちではありふれた名前?」

「いいや、そういうわけじゃないが……まぁ、友奈の事を見たら驚くだろうな」

 

 結城の方の友奈の事も高嶋の方の友奈の事も知っている若葉は苦笑しながら雪花の言葉に答え、千景も何とも言えない笑顔を浮かべている。

 球子と杏は結城の方の友奈の事をまだ知らないので、特に何か反応したわけでもないが、一応話程度には聞いているのでまぁそういう事らしい、という感じの微妙な表情を浮かべるだけ。

 雪花はよく分からず、へぇ、の一言でそれを済ませてとりあえず若葉の隣に立つ。

 

「んで、あたしはこっからどうしたらいいのかにゃ? 野宿?」

「いいや。勇者であるお前にはこっちから住居を提供する事になっている。私達と同じ寮だがな。不満か?」

「いやいや。暖かい布団と屋根と美味しい食事さえあれば何にも。こうなった以上、あたしだけどこかに引き籠る訳にもいかないし、一宿一飯の恩程度には命を張って戦わせていただきますよ」

「それは助かる。まぁ、こちらには心強いバグがついてくれたからな。雪花もあまり緊張せず気楽に戦ってほしい」

「バグねぇ。結城っち達の事ってのは分かったけど、言い得て妙でちょっと笑いそう」

 

 ちなみに、その心強いバグ四人は現在大社の誘導に従い、報道陣に絶対に見られていない位置で北海道民の間から離脱して丸亀城へと向かう手筈になっているので、このイベントが終われば改めて顔を合わせる事になるだろう。

 今回のイベントは大社が企画した、北海道沖縄の避難民を迎え入れるという歴史的なイベントという体であり、日本各地の勇者が四国へと合流してこの四国を守るために戦うため手を取り合う、という感じの体裁になっている。なので、残りは沖縄の方から船が到着すればこのイベントは無事終了。報道陣は各地から集まってきた避難民にスポットを当てた取材をする事だろう。

 また悪意に捻じ曲げられた報道をしなければいいが、と若葉は暗い表情を浮かべながら、大社の誘導に従って四国の地に上陸する北海道民たちを見送る。

 中にはなんか暴れている人がいたが、周りの人間に取り押さえられていたので、まぁ中で喧嘩でもあったのだろう。狭い船内だ。そういう事があっても何らおかしくはない。

 そうこうしていると、若葉の持つ無線機が振動した。声こそ聞こえないが、着信を伝えるソレがあったという事は、もうすぐ沖縄からの避難民が到着するという事なのだろう。若葉が視線で杏にソレを伝え、杏に動いてもらってそれを大社に伝える。

 それから大体ニ十分ほどだろうか。そろそろ北海道民が全員四国上陸するという辺りで、一般人の肉眼でも見える程度の位置に沖縄からの船が見え始めた。

 

「ん、来たか。さて、演技の時間だ」

「あたしは何かする?」

「そうだな。一応、来てくれ」

「はいはい」

 

 軽い打ち合わせをして二人で少し前に出て、沖縄の船が港に着艦するのを待つ。一瞬空を飛ぶ鏡が見えたので、ハゲ丸が若葉達の存在を鏡の反射で確認して手筈通り沖縄の避難民に混ざり始めたのだろう。

 暫く待っていると雪花の時と同じように船の中から沖縄の勇者である棗が出てきて、若葉と雪花の前に立った。

 

「古波蔵棗さんだな。乃木若葉だ。遠路はるばる、よく来てくれた。私達は沖縄の民を歓迎しよう」

「ん。よろしく、若葉。そっちは?」

「秋原雪花。北海道の勇者だよ。これからよろしく」

「うん、よろしく、二人とも。こんなにも新たな仲間ができて、頼もしい限りだ」

「こちらこそ頼もしい仲間ができてくれて嬉しい。沖縄を守り抜いたその力、頼りにさせてもらうぞ」

「こっちも、四国と北海道の勇者の力、頼りにしてる」

 

 話す事を話し終わり、若葉と棗が握手。それにフラッシュが炊かれてから暫くして雪花も棗と握手。それにもフラッシュが炊かれ、暫く後に大社の誘導が始まって沖縄民が船の中から出てくる。

 その中には勿論犬吠埼姉妹と園子、ハゲ丸の姿もあり、サラッと避難民の中に混じって行動中だ。犬吠埼姉妹は沖縄の避難民の前にガッツリと姿を晒していたが、棗から二人の事は秘密にしてほしいという申し出があったので、沖縄民は全員、犬吠埼姉妹の事を口外することは無いだろう。

 報道陣からしたら雪花と棗に取材をしたいところだが、それは大社の方からNGが飛ぶ。二人は長距離の移動と戦闘により疲労がたまっているから、また後日にするようにと。

 そんな注意事項が飛ぶ中、この場の西暦勇者六人が合流し、移動を始める。

 

「勇者が六人か……凄いな、ちょっと前までは考えられなかった」

「それはあたしもかなぁ。結城っちと夏凜が来てくれなきゃ、多分あたしはここに混ざらなかっただろうね」

「そういう意味では、未来の勇者達は私達の命の恩人でもあり、こうして引き合わせてくれた恩人でもある、か……つくづく頭が上がらんな」

「そんなに気にする事無いわよ、乃木さん。あの人達はそうやってお礼を言われるためにやったんじゃないから」

「元々アレに混ざってた千景の言葉はなんか違うな」

「というか、なんか今の千景さんを見ると今までよりも生き生きしている気がするのは気のせいでしょうか?」

「身内を褒められてる感じだもの。ちょっとは嬉しいわ」

 

 なんて話を報道陣に聞こえないようにしながら勇者達はそのまま迎えのバンに乗り、港から丸亀城へと移動する。別に全員で飛び跳ねて移動してもいいのだが、それだと目立つし雪花と棗が疲れているためついて来れない可能性もある。

 そんな可能性からバンに六人全員乗っての移動となった。ちなみに、神世紀勇者は一足先に迎えの車で丸亀城へと向かっている。

 車の中でも軽く談笑し、北海道や沖縄では何があったか、なんて事を喋りながら移動する事数十分。丸亀城に着いた若葉達はひなたと水都の巫女ンビと、待機していた歌野に出迎えられた。

 

「お帰りなさい、若葉ちゃん、皆さん」

「もう歓迎会の準備はできてますよ」

「それに、神世紀のみんなももう到着済みよ。あっ、わたしが白鳥歌野よ。よろしく、北海道と沖縄の勇者さん」

 

 高嶋は入院中なので居ないが、外に出れる西暦の面子はこれにて全員、顔を合わせた事となった。

 とあるパラレルワールドでは一部は声を交わす事すらなかった同じ時代の勇者達がこうして一堂に会している。この光景は、奇跡が生みだした物と言っても過言ではないだろう。

 駐車場での会話も盛り上がるが、今はここで盛り上がっている場合じゃないので勇者と巫女ンビで移動。そして丸亀城の勇者達と巫女ンビが普段授業に使っている教室のドアを開けると。

 

「あっ、せっちゃん達も来たよ!」

「ようやく到着ね。テレビの前でのアレコレ、お疲れ様」

「そんじゃ、現地の勇者達も揃ったところでパーティーの時間よ!」

「なんでお姉ちゃんは船旅の後にそんなに元気なの……?」

「まぁ、風だしそんなもんよ」

「そうだね~。フーミン先輩といったらこんな感じだし~」

「まぁ、みんな来た事だしとっととパーティーといくか!」

「一人入院中だが、まぁめでたい事には変わりないしな。腹も減ったし、とっとと乾杯して食っちまおうか」

 

 そこには神世紀から来た勇者部の面々が。

 そう、これが盛大にパーッとの中の一つでもある、勇者達の親交を深めるための歓迎会的なものだ。なにせ、折角過去未来から勇者システムを手に取った者達が集まったのだ。初対面の人間だっているんだし、こりゃ肩が凝る事をした後には盛大にパーッとお祝いするしか無かろうて、と。

 発案は千景、提案が若葉。そしてそれに乗ったのは勇者と巫女全員。こういうノリが嫌いな者が勇者に混ざっているわけもなく、全員が喜んでの参加となった。

 既に手には飲み物を持っており、北海道沖縄&神世紀勇者合流パーティーを行う気満々である。勿論西暦勇者達もすぐに飲み物を持ち、約二名程変身ではなく普通に勇者装束を着込んでいるのでそのままだが、それも気にせずにグラスを合わせるため、誰が音頭を取るか視線を巡らせ。

 

「んじゃ勇者部名誉部長のアタシがありがたいスピーチといきたいけど、ンな事する前に過去未来の勇者が揃った祝いにかんぱーい!!」

『乾杯!』

 

 結局風がその役を買い、全員で同時にグラスを掲げた。ぶつけあったら絶対に悲惨な事になるというか、まず人数的にそんなことできないので必然的にこんな乾杯となった。

 

「って、流れで乾杯しちゃったけど、普通に初対面の面子もいるし、自己紹介いっとく?」

「それもそうですね。雪花さんと棗さんは神世紀の一部の勇者部の方々の事は分からないでしょうし、逆もまたしかりですし」

「タマとあんずもそうだな。そこの友奈そっくりの奴とか、よく分からんし」

「完全に雰囲気だけで歓迎会開幕したからな」

 

 と言う事で自己紹介をし、無事高嶋を除く西暦勇者と神世紀勇者が無事一つの部屋に集まる事となった。最も、防人の面子やここから数十年後に現れる勇者システムを使わなかった勇者が居ないのだが、そんなツッコミは野暮というものだ。

 四国勇者主催の勇者会合パーティーは大社が用意した料理やら飲み物やらを飲みながらわいわいがやがやと。結構遅い時間だったが、そこら辺は権力によってカバー。今時丸亀城に入り込んでいるのなんて勇者や巫女くらいしかいないので、良識の範囲内ならば騒ぎ放題飲み放題だ。

 

「しかし、勇者部か。前にそっちに行った時から思ってたんだが、直球的なネーミング故にいい名前だな、風さん」

「でっしょー? どう、若葉達も勇者部に入んない? 名誉勇者部員として迎えるわよ?」

「それはいいな。私達は特に部活動はやってないしな。西暦勇者部、なんてのもいいかもしれん」

「そういえば、私はそこら辺の立場ってどうなってるのかしら? 名誉勇者部員?」

「そうだねぇ。一応、肩書はそのままだから名誉勇者部員じゃないかな? っていうか、千景ちゃんってもうわたしよりも二つくらい年上なんだよね……勇者部内でまた一番小っちゃい存在に……ん?」

「なんでタマの方を見た? おい、素直に答えてみろ?」

「勝った!!」

「よしガチンコの喧嘩だ外に出ろ!!」

「樹ちゃんもタマっち先輩もちっちゃいから……うへへへへ……」

「伊予島さんは安定のロリコンね……」

「初見の時は伊予島と樹ちゃん後輩って似てる気が……とか思ったけど、そんな事は無かった。っていうか男女比やべーな。俺しか男いねーじゃん」

「女の中に男一人でやんの」

「ですけど、こうも異性がいっぱいだとちょっと居心地悪そうな気が……色々と大丈夫ですか?」

「あぁ、藤森さんだっけか。大丈夫大丈夫。周りに女の子しか居ないのは慣れてるから」

「藤丸さんは結構女性慣れしてるみたいですねぇ。ちょっと思春期の男の子っぽくない気はしますけど」

「ははは。上里さんや、周りの女の子から直接論外って言われるとこうもなるんですよ、男ってのはね……ははは……」

「まぁハゲなんて論外だしね~」

「そうね。いい奴だけど論外よ」

「まぁ、彼氏にしたいかと言われたらなぁ。あんまイケメンじゃないし」

「ハゲとフラグ……? はっ!!」

「な?」

「割とフルボッコでリーフ生えるわ」

 

 まぁ、こんな感じだ。

 一部ハゲ丸に対しての当たりが強いと言うか、ハゲの事を知っている神世紀勇者達はハゲ丸に対して論外論外言いまくる。その結果ハゲ丸の心がボロボロにされて泣きそうになっているが、彼がこうやって異性から身も心もフルボッコにされるのはいつもの事なので神世紀勇者は特に気にしない。

 なんか球子とガチンコの喧嘩に発展しそうな樹だったり、小っちゃい二人を見ていつも通りをかます杏だったり。一応、一部は既に顔を合わせた事があるので普通に話していたり食事をしていたり。

 しかし、一部屋に勇者と巫女が合計十八人もいるというのは、普通に会話しているだけでも相当騒がしく、女三人寄ればとも言うのでもうそれはそれは結構騒がしい。

 ちなみにこの中での最年少は樹であり、ダブってる杏も学年的には中学二年生で最年少だが、年は球子たちと同じなので勇者部内で一番小さいのはまたもや樹になってしまったのである。千景は既に風と同い年の最年長組なのだ。

 

「それにしても、ぐんちゃんってちょっと見ない間に本当におっきくなったよね~。この前までは樹ちゃんよりも小さかったのに」

「もうこっちで三年以上も過ごしてますもの。友奈さんよりも年上にもなったし、背もそこそこ大きくなりましたから」

「もう高校一年生なのよね。まさか歳まで越されるなんて思っても居なかったわ」

「そう、ですけど……東郷さんには勝てなかった……」

「へ?」

「こっちの話です。ほんとに規格外すぎる……!!」

 

 美森の規格外、と言えばどこを指しているかは一発だろう。

 その言葉にうんうんと頷いているのは樹からロメロスペシャルを受けている球子と、球子にロメロスペシャルをかけている樹と、銀、水都の四人。夏凜はまぁ今さらだし、とスルーし、友奈はだよね~、と言うばかり。

 しかし、結構体型にはコンプレックスがある者数人と、小六の頃から既に規格外だったことを知っている銀は猛烈に頷いている。

 

「ってか何食ったらそうなるんだよ! タマに教えろ! それか寄越せ!!」

「そうですよ東郷さん! そろそろわたしにその秘訣を教えてくれてもいいじゃないですか!」

「別に普通にしてただけだから言う事なんて……というか、なんでロメロスペシャル?」

「やられちまった。でもなんか気持ちいい」

「痛みを与えられない自分が悔しい」

「そんな球子の腹の上によっこいしょ」

「若葉お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

 あーもう滅茶苦茶だよ。

 ロメロスペシャルを受けている球子の腹の上に若葉が座り、球子の表情が面白いように変わる。ついでに樹の方も支える手と足がプルプルしている。そして悲鳴を上げる球子のズボンの裾からそっとパンツを覗き見ようとする白いのと、流石に場を弁えろとその頭を叩くツッコミ役の夏凜。

 更にちょっと離れた所では。

 

「あっ、なんだか樹ちゃん後輩のスカートの中が見えそうに……」

「空を飛べハゲ!!」

「わたしも手伝うよ~!」

「うーん、この」

『ちょっ!!?』

 

 ロメロスペシャルという技の性質上、樹のスカートの中がチラッと見えそうになり、それをハゲ丸が口に出してしまった。

 口に出したが最後、そのままハゲ丸は勇者部名誉部長と先代勇者隊長の手により教室の窓から外へ向かってフライアウェイする事となり、ハゲ丸のフライアウェイを初めてみるロメロスペシャルに関与していない面々は思わず声を上げた。

 

「ちょっ、流石に死んだんじゃない!?」

「だ、大丈夫なんですか!?」

「助けに行った方がいいんじゃないか……?」

「ふぅ。いつもとは違った光景が見れてなんか新鮮だった」

『って無傷!!?』

「藤にぃのいつものはそういう物だと思っておいた方がいいわよ。一々驚いていたらキリがないし」

 

 そして無傷で生還したハゲ丸を見て驚く面々。

 ハゲ丸が飛翔して無傷で戻ってくるのはいつもの事だ。だってこいつ、精霊バリアが無い時だって普通に窓から飛翔しても無傷で生還したり、数時間も冷蔵庫にお片付けされて無傷で生還したり、石を抱えた状態でプールに沈められても普通に生きていたりと、多分殺せる手段を探す方が難しいハゲなのだから。

 お仕置きを最早お仕置きとして受けていないハゲ丸だったが、またロメロスペシャルの方を見ると、きっともう一度空の旅をプレゼントさせられる事となるのでハゲ丸は極力そっちを見ず、何事も無かったかのように復帰。

 

「おっ、白鳥さんのはそばか。そういや長野県民だっけ?」

「そうよ。やっぱりそばこそがジャスティスよ! 藤丸もそばを食べなさい!」

「いや、別に俺は……」

「みーちゃん、わたしが押さえつけるから口に流し込んで!」

「うん、うたのん!!」

「ちょ、お前ら止めろ!!? 別に言われなくても食うからちょっと落ち着――」

 

 そして、悲劇は起きた。

 抵抗するハゲ丸と、それを押さえつけようとする歌野。そんな歌野の手が偶々ハゲ丸の頭に、髪の毛に当たる。

 つまり、どうなるか。

 乗っているだけのズラがその衝撃によってパサッと地面に落ち、千景を含めた西暦組の時が止まり、ついでにハゲ丸も声を失う。しかし神世紀組はいつもの事だと特に気にしていない様子。

 そりゃそうだ。だって唯一の男子の髪の毛が、小突かれた程度で地面に落ちたのだから。そんな状況を見てしまったら、何も言えずに固まるしかない。

 しかし、それをやってしまった歌野だけは顔が青くなっている。

 

「そ、その……ち、違うのよ。わ、わたし、男の子の髪の毛がこんな簡単に抜けるとか思ってなくって……か、髪の毛ってもうちょっとこう丈夫にできていると思って……」

 

 歌野は落ちたズラを手に言い訳しながらそっとハゲ丸の頭の上に乗せて固定できないか、とか試してみる物の、元々それはハゲ丸の髪の毛ではないので勿論それが固定されるわけもなく、歌野がもう一度叩いてみればパサッと音を立てて地面にズラが落ちる。

 

「あぁ、気にしなくぞ、歌野。だってこいつハゲてるだけだから。それズラだし」

「い、いや待とうか銀。えっ、それって藤丸ってこの歳でハゲてるって事に……」

「そうよ、雪花。そいつ、産まれた頃からハゲてんのよ。あたし達の間じゃ今更だってのに……ねぇ、千景?」

「は、初耳ですよ夏凜さん!! えっ、藤にぃハゲてたの!!? 普通に初めて知ったわよ!! というか今までズラ被ってたの!!? 樹さんや皆が藤にぃの事ハゲって言ってるのって本当にハゲてるからだったの!!?」

 

 そして、ハゲ丸のハゲの事を知らなかった千景は思いっきり声を荒げる。

 そりゃそうだろう。今まで普通の兄貴分として見ていたハゲ丸がハゲていた事を三年半越しに知れば、そりゃあ声の一つや二つ荒げたくなる。 

しかし、みんながハゲハゲ言っていた理由が千景もようやく分かった。樹がいつかハゲ丸のハゲと呼んでいることが分かる日が来るとは言っていたが、まさか文字通りハゲているなんて思いもしなかった。

 

「あれ~? ちーちゃんって初見だっけ~? ズラっちがハゲてるのってもう常識だったから気づかなかったよ~」

 

 通算四度目近くになるこのハゲバレだが、もう神世紀勇者からしたらいつもの事。勇者関係者でこれを知らないのは恐らくハゲバレ時に通話をしていなかった夕海子とこの場に居ない高嶋くらいだろう。

 逆に言えばそれ以外の面々にはハゲの事が知られてしまったという事になる。

 悲しいね。

 

「……は、はは。失望したよな、ちーちゃん。今まで普通に振舞ってきた男が実はハゲてたなんて……」

「い、いえ、別に今さらハゲ程度でどうこう言うほどじゃ無いわ。ちょっとビックリしただけで」

「っていうか人間ってあんなに綺麗にハゲれるんだな。おっタマげたぞ」

「ギャグ漫画みたいなハゲでしたね」

「立派なハゲだったな。確かに驚いたがよく見れば立派なハゲだ」

「ザ・ハゲってくらいにハゲですねぇ」

「みんな揃いも揃ってハゲって言わないでくれない!!?」

『うるさいハゲ!!』

「神世紀組テメェ!! それ以上言うとセクハラするぞ!!?」

「わたしに触ったら極刑で~」

「焼く」

「全身蜂の巣よ」

「樹に触ったら挽肉にして人肉ハンバーグの刑」

「市中引き回しで」

「人間プラネタリウムにしてやるわ」

「ごめんなさい。二度とそんな事言いません」

『よわっ』

 

 まぁ、ハゲバレはあったものの、勇者部員達のいつも通りの会話に、まぁ別にいいかと西暦組も先ほどまでのテンションに戻ってどんちゃん騒ぎを始める。

 しかし千景だけは。

 

「……そういえば、一緒に寝た時に若干髪の毛がズレていたような…………今思えば結構それっぽい所が……」

 

 過去の思い出から、なんかハゲ丸のハゲ要素はあったようななかったような、と首を傾げていた。

 まぁ、兄貴分がハゲていた所で今さらだ。いくらハゲていてもあの日あの時、千景の事を助け妹のように扱ってくれて、園子と同じように友愛を注いでくれた事には変わりないのだ。彼の人物像にハゲという二文字が追加されただけで特に千景の中のハゲ丸像が何か変わる事もない。

 勇者部員だし、そういう汚点とも言える部分が一個くらいはあった方がらしいや、なんてことも思いながら千景は表情をいつも通りに切り替えて。

 

「それでハゲにぃ。今度、こっちで見つけたうどん屋に園ねぇと一緒に行かない?」

「おう、勿論……って、なんかサラッとハゲにぃって言わなかった?」

「気のせいよ、ハゲにぃ」

「ちょっ、ちーちゃん!!?」

 

 今日一日くらいはハゲにぃ呼びして揶揄うとしよう。

 今までハゲの事を黙っていた事に対する可愛い仕返しだ。まぁ、仕返しするほど恨んだりはしていないのだが。




ようやくのハゲバレ! ちーちゃんが三年ちょっと経ってようやくハゲのハゲを知る事ができました。

そして次回から普通にたかしーの話に入るので、またもやハゲは主人公からさらば! 本当にコイツ主人公……? タイトル変えた方がいいのではないかとまで思ってしまう。

という事で次回からはまたたかしーの話。それではまた次回。
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