ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回でたかしーがようやく原作通りの性格に戻ります。

いやー、翳りたかしー書いている期間長すぎてちょっと辛かったし自分の中のたかしーが結構やべー奴で固定されてる気がしないでもないですが、ようやくたかしーが正気に。

それでは本編をどうぞ。


光は再び

 高嶋を病院に送り届けた友奈の顔は暗く、そして二人の友奈を見た病院の看護婦はビックリ仰天していたが、友奈は高嶋ちゃんをお願いします、とだけ言うとそのまま背を向けて変身したまま病院から飛び立った。

 顔を殴り続けたが脳はあんまり揺れてはいないようだったし、暫く顔の傷は残ると思うが跡を残さず治ってはくれるだろう。だが、体の方はどうなるか分からない。

 友奈でさえ分かるレベルで高嶋は無理をして戦っていた。その代償がどこまでの物かなんて、友奈には予想できていない。故に、高嶋が全治何週間の怪我を負ったのかなんて分からなかった。

 そんな高嶋をすぐに止める事ができなかった罪悪感と後悔。そして、あの村の人間に対する嫌悪感で友奈の心は今までにないくらいモヤモヤとしていた。その結果、一人で心を落ち着けたいと思い、彼女の足は誰も来ないであろう丸亀城の破風の上へと向かい、辿り着けば一人で膝を抱えて座っていた。

 西暦は神世紀ほど綺麗な時代じゃない。そう園子は言った。それは事実であり、その一端を友奈は自身の身で経験した。だが、それが自分に向かうだけなら平気だ、とも思っていた。自分がそれに巻き込まれるだけなら、自分が我慢して、仲間にどうにかしてもらえればそれでいいと。

 だが、人の心が生み出す刃は友奈だけに向かってはくれなかった。

 少なくとも今日、その刃は高嶋に向いた。そして、千景にも向いていた。勇者として頑張るだけじゃどうにもならない現実を見てしまったのだ。

 神世紀という綺麗過ぎる時代に産まれ、そこで育った友奈にとってあの光景はとても直視しがたく、そして醜い。そんな光景だった。

 

「こらこら結城っち。破風の上に座って怪我したり丸亀城が傷ついたらどーすんの?」

 

 そんな友奈の元に勇者装束を身に纏った雪花がやって来た。

 若葉から少し遅れる形で高嶋を追っていた彼女は友奈と若葉が丸亀城方面へと戻ってきたのを知り、他の面子は高嶋の容態を見に、雪花は思う所があって友奈の元へとやってきた。

 あの村の事は、千景から移動がてら棗と共に聞いた。村ぐるみで子供一人を苛めるなんて性根腐ってんなぁ、と溜め息しか出なかったが。しかし、そんな性根が腐った人間と友奈が会ってしまえばどうなるか。

 少なくともいい影響にはならない。そう思った雪花は友奈の位置を携帯で確認して追ってきた

 

「せっちゃん……? うん……ごめん」

 

 そして軽く冗談交じりで言った言葉は、友奈の暗い声に返された。

 予想以上に重傷だ。相当、直視したくない物を見てしまったのだろう。流石にこれ以上はふざける気にもなれないが、慰めるためにかける言葉があまり見つからず、結局は頬を掻きながら友奈の隣に座るだけ。

 これが夏凜や美森ならもっと気の利いた言葉を、とも思わないでもないが、居ない者に頼っても仕方ない。なんとかこの優しい子を立ち直らせないと。

 

「結城っちはなんでそんなにナーバスなのかな? 良かったら話してくれない? 相談くらいは受け持つよ?」

「……うん」

 

 だが、とりあえずは話だけでも聞いてみよう。そんな感じで話しかければ、友奈は結構すんなりと先ほどの事を話してくれた。

 悩んだら相談、無理せず自分も幸せであること。勇者部の六箇条が雪花の言葉に首を横に振るという選択肢を奪ってくれた。もしもこの六箇条が無かったら、きっと友奈は黙り込んでいただろう。

 ぽろぽろと溢れてくる友奈の愚痴に近いものを聞き、雪花は特に変な横槍は入れずにしっかりと彼女の言葉を聞く。

 人に失望するなんて初めての経験をした彼女の言葉を。

 

「……わたし、どうしたらいいのかな。あんな人達のために戦いたくないのに、戦わなきゃって思って……頭の中、ぐちゃぐちゃなの」

「うん。あたしだってそう思う時はあったよ。というか、多分こっちの時代の勇者は全員、一度は考えてると思うけどね」

 

 どうしてあの人のために。あんな事を言う人のために。

 そうやって考える事は、仕方のない事だろう。西暦勇者の中でそれを考えた事が無いのは恐らく棗だけ。きっと歌野だって四国に来てからふとそれを考えた事があるだろう。

 だが、それでも戦っている。その理由は一つ。

 

「でも戦ってるのは、守りたい人がいるからだと思うけどね。あたしだって、結城っちを人質にとるような人達のためになんて戦いたかないよ。でも、戦わないとあたしの助けを必要としてくれている人たち守れないからね」

 

 脳裏に浮かぶのは、雪花に礼を言って申し訳なさそうな表情をしながらそれでも逃げてくれる老人。戦い終えた雪花にお菓子をくれた子供。雪花の到着に安堵を覚える人たちの表情。

 そんな人たちもいるのに、この人が好きじゃない。この人のために戦いたくない。そんな思いで戦わない選択肢を取れば、真に守りたい人を守れない。

 しかし、それは友奈だってよく分かってる。故に、頷く。

 でも、煮え切れない。そんな表情。

 

「……まぁ、ここら辺の踏ん切り付けるのは難しいよ。あたしだって一回、そのせいで戦うのやめよって思ったんだし」

「……そうなの?」

「あたしゃ他の勇者程強かないんすわ。だから弱さに負けそうになっちってね。誰かのために戦って死んでたら元も子も無い。あたしの事を道具としてしか見ていない人たちのために死にたくないって。ってかそもそも死にたくないし?」

 

 でも、と雪花は付け加える。

 

「やっぱ吹っ切れないといけないんだよね。守りたくない人を守る事に繋がるとしても、それでも守りたい人を守るために戦うんだって」

 

 吹っ切れる。

 あんな人達も居る。それでも、守りたい人を守るために戦う。そうやって仕方ないものは仕方ないと割り切って行かないとこんな役柄、受け入れる事なんてできやしない。

 神世紀では、そんな事は無かった。強いて言うならば大赦だが、大赦なんてこちらから殴り込みをかけていつだって壊滅させる事はできた。いつでも壊せるから多少の好き勝手はいいや、なんていう心が少なからず友奈にだってあった。

 そうやって、多少の好き勝手は見逃すしかないと吹っ切れる事。

 それが、この時代では必須だ。

 

「結城っちは戦わないって選択肢、取れるんでしょ? 無理にそうやって割り切れとは言わないけど、どうするの?」

 

 何も突き放しているわけではない。

 だが、友奈には戦わない選択肢を取ったっていいのだ。勇者部の皆だって、友奈がもう戦いたくないと言えばそれに頷くだろう。この戦いは、自分達の世界を守るための戦いじゃない。勝手に自分達から首を突っ込んだ修羅場だ。そこに好き勝手に背を向けて誰がそれを責められようか。

 そうやって背中を見せても、きっと仲間達は戦う。戦い続ける。だから、友奈は戦う。そう言ったのに、やっぱりあんな人達のために戦いたくない。そんな思いは浮かんできてしまう。

 

「……戦う。戦うけど、あんな人達のためにこの拳は振るいたくない」

「うんうん。それじゃあ言葉を変えてみよっか」

 

 言葉を、変えてみる。

 

「仲間と守りたい人たちのために戦う! それ以外のはオマケだ! ってね。あたしはそうやって割り切った」

「それ以外は、オマケ……なんか、ちょっと酷い事言ってる気分」

「いいの。こっちを悪く言ってきた人たちを庇う理由なんて何もないんだから。結城っちはやっぱりちょっと優しすぎるんだよ」

 

 優しすぎる。

 いつか誰かから言われたような、そうでもないような。

 だが、そんな優しさは友奈の良い所だ。その優しさがあったからこそ、神世紀は救われた。そう言っても過言ではない。

 しかしその優しさは時に心の弱さにもなってしまう。

 それが、今だ。

 人の事をあんまり悪く言えない友奈だからこそ、こういう時に誰かを悪く言う事に忌避感を持ち自分を責めようとするが、自分を責める口実が見つからないので心の中で出口のない袋小路をあっちに行ったりこっちに来たりしてしまい、結果的にこうして暗い気分を晴らす事ができない。

 

「まぁ、もしもの時は見捨てるくらいの気持ちで居た方が、精神的には楽なんだけどね。あいつ等こっちの事悪く言ってるけど、いざという時はそのせいで死ぬんだぞって。人の命握ってるのってなんだか心地良かったりするんだよ?」

「そ、そこまでの事は流石に……」

「結城っちには考えられないよね。分かってる分かってる。だから、今は守りたい人を守るために戦う程度に思ってあたし達のために戦ってくれるのがありがたいかな」

 

 そうは言われても、やっぱりあんな人達のためになんて戦いたくない。

 でも、割り切らないといけない。

 夏凜がそこら辺は割り切ってるのは、友奈にも何となく分かっている。ならば、自分だって割り切らないと。

 いつまでも引き摺ってしまっては勇者部のみんなから心配されてしまうし要らない世話を焼かせてしまう。あんな奴らのために仲間に迷惑なんてかけたくないから。

 

「……ん。そーするね」

「うん。やっぱ結城っちはいい子だねぇ」

 

 本当に、あり得ない位にいい子だ。

 こんな子にここまで考えさせるなんて、やっぱり人間の腐った部分はしょうもない。

 かつて見てきた人間の腐った部分を思い返しながら、やっぱり守りたくない人間の中身なんてしょうもないと思い、二人は一緒に溜め息を吐いた。

 

「こうして子供は大人になっていくんだよ、結城っち」

「こんな思いするんなら子供のままでいいよ」

 

 それもそうだ、と雪花が笑い、つられて友奈も笑う。

 彼女が完全に吹っ切れるにはもう少しだけ時間を要するだろうが、それでもきっと彼女はいつも通りに戻ってくれる。

 なんとなく、雪花にはそんな確信があったのだった。

 

 

****

 

 

 高嶋が目を覚ましたのは、その翌日だった。

 既に問題は明るみに出ているものの、同時に勇者の切り札の後遺症についても大社側からの言及があり、若葉の一言が添えられる事により様々な意見が飛び交った。そして、被害者側とは既に示談を終えているという報道は高嶋の勇者としての地位をなんとかその場で留めてくれた。

 勿論示談は園子と千景が行った。苛めていた過去を今回の事件の説明と一緒にバラされたくなかったら分かってるよな? と園子が笑顔で脅し、後ろからはもしも示談に応じてくれなかったら当時にお返ししちゃうかもなーと千景がチラッチラッと鎌をチラ見せした結果、被害者側はなんと快く示談には応じてくれた。やはり人間話し合いが一番である。

 

「まぁ、そういう事だ。友奈はあの事について何も気にするな」

 

 高嶋が目を覚ましてすぐに若葉は高嶋の元へと向かい、それらの事情を説明した。

 何も気にする事はない。これは切り札の後遺症が起こしたどうしようもない事件なのだから、気負うな。そう若葉は告げたが、ベッドで眠る高嶋の表情は暗い。

 酒呑童子の限界まで力を引き出して戦った高嶋の体は既に限界を超えており、全身の筋肉痛は勿論、酷い所は骨にひびまで入っており、神樹様の恵みがある今でも絶対安静が一週間、完治までは二週間以上はかかると言われた。

 しかし、それ以上に高嶋は友奈の言葉で自分がやって来た事の間違いと取り返しを付かない事をしてしまったという自覚を芽生えさせていた。

 故に、高嶋は自責を続け精神状態は芳しいとは言えない状態だった。

 

「……切り札の後遺症については、解決の糸口は見つけられていない。どうにかする事ができない以上、わたし達は心の闇と向き合い続ける必要がある。友奈、心を強く持て。お前はこの程度で挫ける程弱い人間では――」

「若葉ちゃんに何が分かるの」

 

 そして、切り札の後遺症。

 これについての解決策はまだ出てきていない。何せ瘴気による呪術的な精神汚染などどうしたらいいのかなんて大社側もまだ理解できていないのだ。神世紀組が未来の巫女や大赦に援軍を求めて解決策を見つけてくれるかもしれないが、少なくとも何か動きがあるまで自分達は心の闇と向き合う必要がある。

 だが、きっと高嶋なら大丈夫だと言う若葉の確信は、高嶋自身の言葉によって覆い隠された。

 

「……弱いよ。わたしは、弱い。やっちゃいけない事だって心の底では分かってたハズなのに、それに負けて……やっちゃいけない事をしようとした。結城ちゃんが居なかったら、今頃わたしは……」

「そんなもしもを考えるな」

「でも……!」

「確かにお前は取り返しのつかない事をしそうになった。だが、それは未遂に終わった。それでいいじゃないか」

「よくないよ! わたしは勇者で、みんなを守らないといけないのに……なのに、わたしはこの手で守らなきゃいけない人を!!」

「仕方ない事だ。お前の酒呑童子はどの精霊よりも精神汚染が強い。その後遺症が強く出ただけだ。きっとお前以外の誰かが酒呑童子並みの力を使えば、精神を破壊されていたかもしれん。お前だから、その程度で済んだ」

 

 高嶋を慰めながら、若葉は自身の第二の精霊を思い出す。

 大社から使うなと言われた、高嶋の酒呑童子並みの力を持つと言われる第二の精霊。名も既に教えられている。

 大天狗。神格すら帯びたとまで言われる程の大妖怪。酒呑童子に勝るとも劣らないその力とネームバリューが齎す後遺症は、恐らく酒呑童子並みかそれ以上。それを切らなければいけない場面がきっといつか出てくる。

 それを使った時に若葉が今の若葉を保っていられるかと聞かれれば、答えを口にはできないだろう。

 それほどまでに、大天狗の力は強大であると伝えられており、若葉も何となくそれを察している。

 だから、それでも自身の信念を曲げながらも貫こうとした高嶋の心は強い。そう、若葉は感じている。もしも汚染が酷ければ、きっと高嶋は言葉を聞かないほどに暴走し、ただの虐殺機関となり果てていただろうから。

 

「私が言った言葉の意味、今なら分かるか?」

「……うん。あんな暴力じゃ、守りたい物も守れない。だから、一人で守り切れない所をみんなで守る。わたしを含めた全部を、全員で守る。それを信じる、わたしの心が強さだって事だよね」

「そういう事だ。なんだ、しっかりと理解できてるじゃないか」

 

 しかし、高嶋はしっかりと自分の意志を取り戻した。

 人は一人じゃできることに限界がある。人一人を守る事だって、一人じゃ十全にできやしない。だからこそ、一人を守るために二人が、三人が、勇者達が戦い、その勇者一人一人を勇者一人一人が守る。そんな絆こそが、人の強さなのだと。

 それを、再び彼女は思い出した。ならば、これから先、彼女が再び酒呑童子の力に溺れることは無いだろう。

 

「ちょっとばかり高い授業料は払ったようだがな? こんなに顔を腫らして血まで流して。結城もあんな優しそうな雰囲気でよくもここまでやってくれたものだ」

「あ、あはは……結城ちゃんも必死だったから。その必死さのおかげで、わたしも止まれたから」

「きっと結城にも思う所があったんだろうな。案外、あいつもお前と同じように独善で動いて手遅れ寸前までいったタチかもしれん」

「そんな事無いと思うけど」

 

 普通にそんなタチでした。

 相談しようにも相談できないので自分で動き続けた結果普通に取り返しのつかない所までいきそうになったお転婆娘でした。

 

「……いいか、友奈。何もあの時の事を忘れろとは言わない。だが、乗り越えろ。もう二度と、自分の手であんな事をしないと強く誓い乗り越えるんだ。お前が今やるべきことは、それだ。もしもそれが厳しいのなら、私達が居る。存分に頼れ。確か、なんだったか……悩んだら相談、だったか? いつか千景が言ったことだ」

「悩んだら相談……うん。今度からは、ちゃんと相談するね」

「それでいい。今はそれでいいんだ。私達はまだ玩具を貰ってはしゃいでいるだけのガキだからな。こうやって、成長していけばいい。悔やみ、泣き、後悔し、二度とそれを繰り返さぬように強くなるため成長する。それでいいんだ。そうだろ、千景?」

「え?」

 

 若葉が言葉の最後に千景の事を呼び、高嶋がどういう事? と声を上げた。

 その答えは、不自然に音を立てた病室の扉だった。暫くしてから扉が開き、そこからは千景が顔を覗かせた。どうやら見舞いに来たらしく、手にはフルーツの盛り合わせが握られている。

 不器用な奴め、と笑う若葉だったが額にリンゴが炸裂し、不器用な奴め、と笑いながら若葉が生太刀を手にした。額に突き刺さったリンゴをそのままに千景を斬ろうとする若葉は高嶋のどうどうで静止。野武士は今日も野武士らしい。

 

「友奈さんにボコられたにしては元気そうで何よりだわ」

「あはは……結構一方的にやられちゃった」

 

 恐らく、高嶋がしっかりと理性を保っている状態で、二人とも勇者システムを解除している状態で戦えば戦績は恐らく五分五分にまで持って行けるだろう。

 だが、勇者システムを纏っている状態では友奈の方に分がある上、あの時の高嶋は理性を半分以上は失っていた。しかも友奈の方はエネルギー方式の無敵バリア付き。高嶋は一方的にやられたとは言っているが、もしも友奈に精霊バリアが無ければ友奈は今頃片腕骨折とか片足骨折とか顔面血塗れとか、それくらいの大怪我は負っていた事だろう。

 

「仕方ないわ。友奈さんは勇者部の中では一番強いんだもの。それに、一度世界を救った勇者なのだし」

「そういえば神世紀の勇者達は黒幕の天の神を倒してるんだったな」

「相当ギリギリだったとは聞いたけど」

 

 そう言いながら千景も椅子に座り、持ってきた果物の中からミカンをチョイスして皮を剥いてから身を一つ取って高嶋にあーんする。

 高嶋もそれになんの遠慮もなく食いついたが、食いついた瞬間に千景が片手の指を高嶋の口の中に押し込み、ついでにもう片方の手の指も高嶋の口の中に入れてから内側から彼女の頬を伸ばす。

 

「高嶋さん? 私は高嶋さんに守られ続ける程、弱い女に見えたかしら?」

ふ、ふんひゃん(ぐ、ぐんちゃん)……?」

 

 いきなりどうしたの? と聞こうとした高嶋だったが、すぐに千景の表情を見て言葉を呑み込んだ。

 だって千景さん、笑ってるんだもの。笑ってるのに笑ってないんだもの。

 俗に言うマジギレ状態なんだもの。

 これには思わず若葉も溜め息。まぁ、諦めて千景の説教を受けろ、という事だろう。

 

「第一、私が帰省の時に傷ついたとか言ってたらしいけど、私、気にしてないってあんだけ言ったわよね? なのに勘違いを拗らせてこんなに色んな人に迷惑をかけて」

ひゃい(はい)……」

「そもそも、私が傷ついてると思ったんならまず私に聞いてみて――」

 

 そして始まる千景のお説教。

 高嶋にとっては耳が痛いお言葉ばかりであり、若葉もその後ろで頷いている。その通りだと言わんばかりだ。

 本当にあの時の事は気にしていない事。確かに守ってもらいたいときはあるが、四六時中守ってもらう程弱い女ではない事。高嶋がそんな事をしても自分を含めた勇者達が傷つくだけだという事。そもそも悩んだんなら相談の一つはしてほしい。だって友達なのだから、と。

 当たり前の事を何度も何度も高嶋に言い続け、言いたい事を大体言い終わった千景はようやく高嶋の口から指を引き抜いた。内側から頬を引き延ばされた高嶋は変な感じする~、と口元を抑えた。

 

「まぁ、でも。高嶋さんが止まってくれてよかった。あんな奴らのせいで高嶋さんが罪を背負ってたら、私、高嶋さんを連れて未来に逃げて監禁してでも高嶋さんがこれ以上罪の上塗りをしないようにしてたわね」

「か、監禁って……まさかそんな……」

「ん?」

「えっ、もしかしてガチのやつ?」

「ガチのやつよ? 泣きながら高嶋さんを守るために監禁したわね」

「まさかのわたしとぐんちゃん共倒れルート!?」

「ついでに言えば私達も全滅ルートだったかもしれんな……」

 

 この局面で勇者二人が行方不明とか割と笑えない。高嶋の脳裏には自分がコンクリ打ちの四角い部屋の中で拘束されている中、千景が一人横で病んだ感じで高嶋の面倒を見ている絵が浮かんできた。結構割とハッキリと。

 もしそうなっていたらと思うと笑えない。

 まぁ、その可能性はこれにて無くなったのだが。

 

「千景のお説教も済んだことで、だ。友奈、もう翳るなよ? お前の拳は私達皆が頼りにしている。千景を守りたいと言うのは別に構わんが、だからと言って周りを見れなくなるような真似はもうするなよ? お前が翳ると割とどこまで翳ってるのか分からん」

「そうね。それに、私を守るために高嶋さんに何かあったら、私は多分自殺するわ。だから、もう無茶な真似なんてしないで。ちゃんと背中を合わせて、やるんなら互いに互いを守りながら戦いましょう?」

「割と無視できない言葉があった気がするけど……うん。今度からは、わたしも皆を守るよ。わたしを守ってくれるみんなを守る」

「それでいい。互いに互いで協力し合う事こそが、バーテックスにはできない人間の強さであり、賛歌だ。それを私達は極めていこう」

 

 やった事は少し取り返しがつかなくなるかもしれなかった事だが、終わり良ければ総て良し。後はマスコミの対処が大変だが、そこら辺は未来の自分達に丸投げだ。

 今は明日を手繰り寄せるために英気を養う事に専念し、若葉と千景は高嶋の病室を後にした。

 

「……うん。わたしも頑張らないと。もう、あんな事はしない。みんなを守るために、みんなと一緒に戦うんだ」

 

 もう、高嶋の心が闇に包まれる事はないだろう。

 

 

****

 

 

 ちなみに、報道は後日再び行われた。

 それは友奈の事についてなのだが。

 

「実は、あの時友奈を止めた存在は、精神を汚染された友奈の中で残っていた理性、つまりは光としての部分だったのだ!! 友奈は精神汚染により闇に墜ちたが、残った勇者としての力と理性が実態を持ち人々を守るため友奈を止めてくれた!! 故に、もう二度とこんな事は起きないだろう。私達には光がある! 間違ったことを止めれる光がある!! それは人々の胸の中にもある物だ!! 人よ、胸の内の光を信じろ!! その光こそが、未来へと繋がる道となるのだ!!」

 

 と、思いっきりでっちあげた。だってこれが一番楽な方法だし、ついでに勇者としての威厳を保つための最適な方法なのだから。園子や風、そして当事者の友奈もそれでいいよ、と頷いてくれたので若葉は遠慮なく自分達に都合のいいプロパガンダを行う。

 あーもうどうなってもしらね、と言わんばかりに大社の用意した原稿を魂込めて読み上げるマシーンとなった若葉は、若干自棄になっていたそうな。

 ちなみに友奈はこれ以降、高嶋とそっくりの状態で外に出たらトリックがバレるかもしれないという事で、髪型をいつものサイドポニーではなくローポニーテールだったり普通のポニテだったり、そのままのセミロング状態だったりと、結構頻繁に髪型を変える事となった。そんな友奈を見た美森は一度浄化されかけた。




ゆーゆ吹っ切れ&たかしー完全復帰。これにて全勇者が本格的に一つの目的に向かって歩み始める事になります。これが花結いのきらめきちゃんですか?

あと、くめゆ組ですが残念ながらのわゆ編ではお留守番……ではありません。もうすぐのわゆ編も終わりという事で、そろそろ参戦してもらいます。花結いよろしく、後半戦からの参戦となりますが、なんとか見せ場は作ってあげたい所。

それではまた次回。少しだけギャグとか、絡ませたかったキャラ同士の話とか書いてから、のわゆ編は終わりへと向かっていきます。
のわゆ編が終わったら……どうしよ。完結とするか、花結いをやるか……一応IFはまだ銀IF2とちーちゃん(小)IFをやる予定なので終わってからも少し更新はすると思いますが……
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