ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今まであっち行ったりこっち行ったりしながら卒研しつつ旅行にも行っていたので全然続きを書く時間ができず、気が付いたら年が明けてました☆

という事であけおめことよろです。この作品も新年を祝うのは二回目ですかね。去年末もタイに行っていたのですが、来年からは社会人なのでもう学生時代のように遊べないと思うと……

目標は三月までにのわゆ編終わらせる事ですが……ここから卒論と卒研が忙しいので書けるかどうか……w

まぁ、そんな事はさておき、本編をどうぞ。


事件も終わって

「この間はごめんね、結城ちゃん! 結城ちゃんのおかげでわたし、取り返しのつかない事をしなくても済んだよ!」

「わ、わたしの方こそごめんね! なんかもう……こう、顔が!」

「この程度なんてことないよ! 高い授業料って感じだし」

「いや、見てるだけでもう痛々しいよ! やったのわたしだけど!」

 

 とは、病院での二人の友奈の会話。

 もうかなり長い期間病院のベッドでお世話になっている高嶋はガーゼやら絆創膏やらで肌が露出している面積よりも、治療用に貼られたそれらでおおわれている面積の方が多いレベルだが、高い授業料だと彼女は納得しているし、西暦組も納得している。

 神世紀組は結構ボロボロな高嶋を見てちょっと焦ったが、本人達からどういう理由があってこうなったのかは聞いていたので、とりあえずあまり触れないようにお見舞いと世間話だけして帰った。

 

「まぁ、友奈の事は置いておくとして、だ。園子、未来で切り札の後遺症をどうにかする方法は見つかったか?」

「いい返事は言えそうにないんよ~……色々と探したんだけどね~……」

「一応、大社では清めの儀など……つまり、普段わたし達がやっているような滝行などを行ってもらうのが一番手っ取り早いのではないか、という結論に至ってます」

「またアレをやるのね……しかもこんな春先に……」

 

 そして切り札の後遺症についてだが、これについてはまともな解決策が出てこなかった。

 呪術的な穢れによる瘴気。これによる精神汚染なんて物は大社側はほぼ考えてなかったと言っても過言ではない物であり、これに対する解決策などそう簡単に思い浮かぶわけもなかった。

 また、園子達の時代。つまり、若葉が鳥となり高嶋が牛鬼となっている世界の時間軸で若葉は切り札の後遺症を発覚後は理性で抑え込み後々それを解消するために特殊な儀式など行っていないので、精霊を体内に入れてはならないとは言っていても入れた後の事を一切考えてないのである。故に、園子達の方は完全に空振り。西暦側で全てを解決せねばならぬ事となった。

 

「でも、若葉達の方はアレでしょ? もうすぐ芽吹達の防人システムでアップデートした勇者システムが完成するから、切り札に頼る事もなくなるって」

「確かに。だが万が一も十分に考えられる。その時に使う切り札を何とかしてデメリット無しにしておきたいものだが……」

「そう都合のいい話は無かったって事ね」

 

 現在病室に居るのは、西暦組から若葉ひなた千景。神世紀組からは友奈美森夏凜園子。合計八人もいる。

 故にちょっと狭いが、まぁなんやかんやで話すだけなら高嶋も交えてここで話した方が落ち着くのである。病室で落ち着くと言うか病室でワイワイと色々話している時点で論外に近いのだが、まぁそこら辺は権力で何とか。

 

「そういえば、他の面子はどこに行ったのか分かるか? なんか一部は模擬戦に行くと言っていた気がするが」

「あぁ、それならハゲが球子さんに引っ張られていったけど……」

「球子さんが藤丸さんを? 接点ってあんまりなかったような気がするんですが……」

 

 球子とハゲ丸。この二人を見てみると、接点なんてほとんどない。まだ神世紀組が合流してから日が浅いという事もあるのだが、一部の勇者達は一対一で話した事すらないほど。例えば友奈はまだ棗と一対一で話せていないし、美森も歌野とはまだ一対一で話せていない。

 そこら辺は追々各自で距離を縮めながら話して親交を深めていく予定だが、現時点で球子とハゲ丸に接点はあんまりない。

 故に、どうして球子が、とひなたは首を傾げる。ここで彼の事を異性として見ているからという意見が周りから一切出ない辺り、既に西暦組からも彼は論外という結論が出てしまっているという事だろう。

 

「……もしかして、武器繋がりだったり?」

 

 と、ここで千景の言葉。

 自身も鏡を使っているからこそ、何となく分かる。球子は鏡を扱う千景を似た武器を使う者と軽く捉えている。だからと言って球子が千景をライバル視して仲が悪くなっている、という事は今までの彼女達の関係を見て分かる通り、そんな事は無いと一蹴できるのだが、球子は競争心が旺盛だ。

 故に、武器繋がりで鏡を使うのが本業である彼を引っ張っていったと言うのが容易に想像できたのだ。

 

「そういえば球子は自身の武器のせいで撃墜数が他と比べて少ないのをちょっと気にしていたな……あいつはそもそも撃墜数を稼ぐ立ち回りじゃなくてヘイトを稼いでそれを誰かに押し付けつつ誰かを守り、それを行いながら相手を倒すという一番難しい動きをしているから気にする事無いんだがな」

 

 そして若葉からも、球子の情報が。

 彼女は星屑の撃墜スコアが勇者内では低い方だ。それこそ、一対一の戦いを得意とするため大量に敵を倒せない高嶋と並ぶ程度には。

 しかし、それは武器の問題だ。彼女の武器は特殊で扱いにくい故に撃墜スコアを稼ぐのには向いていない。サポートには向いているのだが。

 球子が普段やっている戦い方は、まさに若葉が言った通り、言うは易く行うは難し。そう簡単にできる事ではない。ハゲ丸だって球子の武器を持たされてさぁやれ、と言われてもできやしないだろう。

 周りの見るのが得意で、前に出るのも得意で、そして気遣いもできる球子だからこそできているポジションだ。恐らく、勇者内で球子以外にこの戦い方をできる者は存在しない。

 だから気にする事なんて無いのだが。

 

「まぁ、球子みたいなのはそこら辺でも対抗心持っちゃうのよ。あたしもちょっとそれに似てるし」

 

 夏凜の言葉に結局若葉もそういう事か、と頷くことに。

 誰かが手柄を立てれば負けてられるかと競争心を燃やすのが土居球子という勇者だ。こういう時は無理に止めるのではなく、頑張れと言って無理しだすまでは放っておくのが一番だ。無理し始めたら止めてやれば彼女はすぐに止まれる性格だ。無理に止める方が彼女には返って悪影響だ。

 若葉は頷き、とりあえず滝行でも行くか、と嫌がる千景を引きずってひなたと共に大社へと向かうのだった。

 この後滅茶苦茶滝行して千景から若干瘴気が漏れた。そしてよくも巻き込んでくれたなとこの後千景から延々とゲームでハメ殺された。

 

 

****

 

 

 一方その頃、球子はやはりハゲ丸を連れて丸亀城内の自分達が運動や訓練に使っているスペースに立っていた。

 手には旋刃盤。勇者装束ではなく体操服とジャージだが、武器を持っているだけでも勇者の身体能力は強化される故に問題なし。そしてハゲ丸も大社の職員が貸してくれたジャージを身に纏って手に神獣鏡を装備して立っている。

 そこから少し離れた所には杏が。

 

「よし、藤丸! タマと勝負だ!」

「勝負って……俺、これじゃタイマンなんて勝てないんだけど」

「じゃあ勝負じゃなくて旋刃盤のいい扱い方を教えろ! 正直、タマはこの旋刃盤、クッソ扱いづらくて困ってる!」

「扱い方を教えろって……」

 

 確かに球子とハゲ丸は同じような武器を使っている。

 だが、決定的に違う部分が存在している。

 まず、球子の旋刃盤は空中に浮かす事ができないしビームの反射なんて事もできやしないが、攻撃能力を備えている。対してハゲ丸の鏡は空中に浮かせてビームを精霊の力で跳ね返せるが、代わりに攻撃能力を一切持っていない。

 似ているようで案外違うのだ。この二人の武器と言うのは。

 

「俺ができるのは、攻撃の防ぎ方を教える程度だぞ?」

「どうしてだ? お前だって未来で戦ってたんだろ? だったら攻撃の一つや二つ……」

「いや、俺に攻撃能力なんて無いから。武器を借りないと星屑すらまともに倒せん」

「……マジ?」

「大マジだ。俺は防御特化だからな」

 

 何気に彼は一度も敵を自らの武器で倒したことはない。彼の撃墜スコアの全ては誰かの武器を借りた……というよりも、主に園子の槍なのだが、それを借りた時にだけ付いている。

 星屑と戦った時だって押し退け跳ね除け誰かに押し付け、そして自分で引き付けて戦いやすい場を作る事しかできていない。そりゃあ勇者の力で何度も殴り続けていれば倒せるかもしれないが、そんな事をするよりも仲間を頼った方がよっぽど戦いやすい。

 

「……まさか星屑すら倒せないなんて、タマはおっタマげたぞ」

「そりゃそーだ」

 

 球子からしたら、未来の勇者達は誰もが強いから、ハゲ丸だって防御特化とは言うが星屑程度なら軽く蹴散らせる程度の力は持っていると思っていた。

 だが、そんな事はなかった。このハゲは一切の攻撃能力を捨てている代わりに防御力を得ているだけのメイン盾なのだ。

 

「でも、防御特化の勇者が居るって事は、未来の勇者の皆さんは相当戦いやすかったんでしょうね」

 

 とは見学している杏の言葉。

 西暦勇者のブレインとして活躍している杏だからこそ、防御特化の重要性はよく分かっている。あの時この時にハゲ丸と同じ能力を持った勇者が居れば、と考えたことは少なくない。それを千景や球子に頼って何とかしているが、やはり防御特化で絶対に攻撃を後ろに通さない盾と言うのは居るだけで安心できる。

 だからこそ先代組は自分達の被弾なんて考えずに突っ込めるし、讃州組も万が一の時は彼を盾にしていくらでも時間を稼ぎ、次の作戦を安心して練る事ができる。

 

「俺はそんな自覚ないけどな。あいつ等普通に強いし」

「でもタマは何とかして若葉達にスコアで勝ってみたい。藤丸、なんかいい案無いか?」

「いい案かぁ……すまん、俺にゃあんまり」

 

 旋刃盤はワイヤー付きの盾のような物だ。

 特撮の中で盾を使うキャラは多くはないが少なくもない。例えば某メロン兄さんなんて最近出てきた盾持ち特撮キャラでは結構強いと評判だが、彼が盾で特別な攻撃をしているかと言われればそんな事はない。

 投げてぶつけて叩き斬って。今の球子とあまり大差ない戦い方をしている。精々零距離でシールドバッシュをする頻度が多い程度か。

 それ以外にも盾を使う特撮キャラはそこそこ居るが、大体盾に超常的な力が付いているか、そもそも盾で殴ったら相手が倒れるかの二択。

 

「……キャップみたいな戦い方、とかか?」

 

 盾を使いつつも特殊な能力はなく硬いだけの普通の盾でどうにか相手を倒していく強いヒーロー。それにヒットしたのは、某アメリカのキャプテンことキャプテン・アメリカだった。

 彼は壊せる存在の方が少ない程の盾を使い戦っている。その使い方は本来の盾の用途の他にも、攻撃を反射したり投げて攻撃したり。恐らくハゲ丸でもできそうな戦い方をしている。最も、投げる直前に反射角を完全に計算しつくし投げた後は手元に戻ってくるように寸分狂わず盾を投げる、なんて真似はできやしないが。

 

「キャップっていうと、アレか。アメリカの」

「そうそう、それそれ」

「タマもちょっと見た事あるけど、今とあんまり大差ないんだよなぁ。結局は投げて倒してるし、防いでるし」

 

 うーん、と首を傾げる。

 結局今の球子の戦い方は、盾を使うキャラクターを参考にしつつ実戦の中でアレコレ学んで変化させていった我流の戦い方だ。結局それで一番安定しているし、撃墜スコアも安定している。

 

「まぁ、タマっち先輩は今のままでいいと思うよ? あんまり変な戦い方して怪我しちゃうのが一番駄目な事だし」

「そうなるかぁ。こればっかりは仕方ないな」

「そうだよ。元々タマっち先輩は武器がサポート向けなんだし、無理して前に出るのが間違ってるんだよ」

 

 一応、球子と杏もコンビネーションは持っている。

 球子の旋刃盤を反射板として、クロスボウの連射力を宛てにした一瞬だけの二方向からの同時攻撃。実戦でやったことは無いが、訓練での命中率は百パーセント。実戦でも外すなんてことは無いだろう。

 

「俺だって結局は誰かと組んでようやく一人前なんだし、土居さんと伊予島さんもそれでいいんじゃないか? 二人で真の力を発揮する勇者って事で。カッコいいじゃないか」

「そ、そうか? 二人で一人ってなんか半人前みたいじゃないか?」

「いやいや。二人いるからこそ、他の勇者よりも強い一人前になれる。すっげぇカッコよくね?」

「それもそうだな! タマとあんずは無敵だから二人そろえば怖いもん無しだ!!」

 

 二人で一人の勇者。いいじゃないか。新しくて。

 少なくとも神世紀の勇者達は一人で完結している部分が多い。ハゲ丸はそこにそっと混ざってサポートしていく完全防御特化勇者だ。だったら、元々二人で一人で完結するタイプの強力な勇者が居たってなんらおかしくはないし、寧ろ頼もしい。

 相も変わらず感情の浮き沈みが激しい球子ではあるが、心持ちを改めてくれたようで何よりだ。

 

「……ちなみに、神世紀勇者の誰かを盾にして自分は延々と攻撃するガードベント戦法っていうのも」

「邪悪にも程があんだろその戦法」

「由緒正しい仮面ライダーの戦闘スタイルだぞ」

「えぇ……」

 

 由緒正しいとは言うが、やったのはダークライダー側である。故に正解を口にするなら、由緒正しいダークライダーの戦法である。

 勿論球子はそんなダークライダーの戦い方なんてする気はないのでハゲ丸の提案は軽く受け流したが。

 とりあえず、スコアが低いのはこんな武器をツモさせてきた運命が悪いという事にし、模擬戦と称して球子&杏のペアが延々とハゲ丸を的にして練度上げという名の集団リンチを行うのであった。ハゲ丸は空を舞った。

 

 

****

 

 

「私達も一応勇者って称号は得ている一般防人集団なのだけど、このまま招待されるのを待っていたらずっと神世紀で待ってる事になりそうだから防人組四人と亜耶ちゃんで西暦に来てみたわ。という事でどうも乃木若葉さん。劣化勇者集団防人のリーダーしてた楠芽吹よ」

「おうとりあえずその説明口調で捲し立てるのやめーや。とりあえずよろしく、芽吹」

 

 バーテックスの侵攻もなく勇者側の不祥事をプロパガンダに変え、高嶋も精神的に安定しライトサイドに戻ってきたので全体的に順風満帆に事が進んでいる西暦の時代のとある日、芽吹が防人組を連れて遊びに来た。

 本来は神世紀勇者側が援軍として用意していた防人組なのだが、合流が数分遅れたために置いて行かれた結果、その後の合流に悉く乗り遅れ、このままではいつ西暦に遊びに行こうと招待されるか分からなかったので何か言われる前に芽吹が防人組四人と亜耶を連れて遊びに来た。

 急に来て挨拶された若葉はちょっと困惑したものの、一応防人組の事は話に聞いていたので落ち着いてよろしく、と言葉を返した。

 

「それと、そっちの諏訪の勇者さんも。えっと、確か歌野さんだったわね。生きていてくれて何よりだわ」

「こうやって生きているのもあなたのおかげよ、芽吹さん。本当にあの時はサンキュー!」

「とは言われても、あの時やったのなんて雑魚を散らして武器あげただけなのだけど……」

「あの銃剣があったからこそ生き抜けたのよ。無かったら多分今頃デッドね」

「えっ、あの銃剣、そんなに役に立ったの……? バーテックス相手に刃も通らないクソザコナメクジ銃剣だったのに」

「あんた最近なんか嫌な事あったの? さっきから自虐酷いけど」

「冗談に決まってるじゃない」

 

 仮にも苦楽を共にした武器である銃剣に対して酷い言い草である。

 だが、あの銃剣のおかげで歌野が救われたのも事実。パーソナルカラーも結構似ているし歌野みたいな性格の人間は嫌いではなく好きな部類なのでこれからも楽しくやれそうだった。

 今の防人組は少なくとも西暦勇者組より少しだけ上だ。アップデートされた防人システムと、アップデートされる前の防人システムを参考にした西暦勇者システム。これにより現在のスペックは下から西暦勇者、防人、神世紀勇者となった。今の防人組は四人一組なら恐らく星座型バーテックス一体なら倒せる程度のスペックを持っている。

 しかし今はそれが活きる時ではない。とりあえず芽吹はリーダー繋がりと過去の繋がりで若葉と歌野、ついでに今日は西暦側で待機していた夏凜と楽しく会話。

 そのちょっと横では。

 

「神世紀のラーメン派ってしずくの事だったのね。同じくラーメン派として手を結ぼうじゃないの」

「もちろん。ラーメン派に悪い人間はいない」

「その通り! よし、早速あたしが旭川ラーメンをご馳走してしんぜよう!」

「楽しみ。とりあえずわたしも徳島ラーメンをご馳走する」

 

 ラーメン派がガッツリと握手していた。

 この二人、なんやかんや言ってうどん派に囲まれ過ぎて同類に飢えていたのだ。こうなるのも何もおかしいことは無いだろう。ガッツリ握手した後何故か高速でピシガシグッグした後、そのまま二人はキッチンへと歩いて行った。マジでラーメンを作る気らしい。

 そしてそこから離れた所では。

 

「おぉ、初代勇者様の中にも愛媛出身者が! ミカン、いいよね」

「分かってるじゃないか! とりあえずこの間実家から送られてきたミカン食おう」

「っていうか、未来の勇者の出身地事情って何と言うか……とにかく香川出身、多いんですねぇ」

「今の防人組も愛媛出身はわたしだけだし、高知出身が弥勒さんってだけだしね~。同士が見つけられて嬉しいっすわ~」

 

 愛媛組がミカンを手にほのぼの。なんやかんやで勇者組とはあまり交流がない雀ではあるが、どうやら球子と杏とは出身地繋がりもありすぐに仲良くなれていた。

 そもそも球子のコミュ力が友奈達ほどではないが高かったのも雀が仲良くなれた要因の一つだろう。

 そしてちょっと離れた所で。

 

「あら、高知出身って私と千景さんだけですの? というか千景さんって高知出身でしたのね」

「一応、ですけど。高知県のどこか森の奥で生えてきた人間とでも思ってください」

「ご家族の事情は聞いておりますが、本当に相当アレでしたのね……とりあえず持ち込んだカツオ食べませんこと?」

「いただきます。でも紅茶とカツオって合わないですよね。思いっきり合いませんよねこれ」

「そうですの? あ、あとそうそう。千景さんはしっかりと名家のお嬢様として相応しい紅茶を飲む仕草、練習してましたのね。まるで深窓のお嬢様の如くですわよ」

「弥勒さんも、似非お嬢様感がしっかりと出てますよ」

「ん? 今サラッとディスりませんでしたこと?」

「気のせいですの」

「そうですの?」

「ですのですの」

 

 同い年となった千景と夕海子が椅子に座ってお嬢様っぽい感じで紅茶を飲んでいた。何気にこの二人、出身地が高知繋がりなのである。

 とりあえず夕海子がどこからか取り出したカツオの刺身を食べながら二人で紅茶を飲み、似非お嬢様空間を作りながら楽しく会話。ちなみに若葉もいい所の家出身なので並ぶと恐らく夕海子の庶民感が凄い事になるし、園子と並んでしまえばガチのお嬢様と並ぶ事になりマジで夕海子の庶民感が浮いたりする。

 そんな似非お嬢様共から離れた場所で。

 

「やっとわたし達にも未来のお仲間がやってきましたね~。こんなに可愛らしい後輩が居たなんて聞いてませんでしたよ」

「東郷さんも巫女の適性があるって言ってたけど、東郷さんは勇者の方が本業だもんね。亜耶ちゃん、とりあえずお蕎麦どうぞ」

「ありがとうございます、水都さん。わたしも、西暦の巫女であるお二人に会えたことが嬉しいです」

「……ねぇ水都さん。この子を見ているとなんだか浄化されそうな気がするのって気のせいでしょうか?」

「わたし達って汚れてたんだなーって痛感しますよね。この子こそが一番巫女らしいというかなんというか」

「へ? ど、どうしてですか? お二人の方がわたしよりもよっぽど巫女らしいと思うんですけど」

「うぅ、純粋な眼差しが眩しい!」

「こ、これが真の巫女……!!」

 

 巫女ンビ改め巫女ーズが談笑していたのだが、亜耶の純粋さに軽く浄化されかけていた。

 何気にレズ率が3/4である巫女界隈。実は亜耶は巫女の中では一番純粋と言うか綺麗と言うか、少なくとも友奈ガチ勢、若葉ガチ勢、歌野ガチ勢よりはよっぽど綺麗な女の子をやっているのである。

 しかし亜耶はそれに気づかずに先輩巫女さん達凄いです、と純粋な視線を飛ばす。

 実は巫女としての力も幼いころから巫女として育てられた亜耶の方がなんやかんやで上だったりもする。

 

「これからは私達も戦線に参加するわ。何かあったら呼んでちょうだい。力になるわ」

「あぁ。その時になったら是非とも力を貸してもらう。しかし、勇者も大人数になった物だな……最初は五人だったのが嘘のようだ」

「これなら本当にバーテックスを根絶することだってドリームじゃないわね」

「つまり天の神も倒すのよね……アレ、私達が混ざったところで倒せるのかしら……」

「……そこまで強いのか?」

「ま、まぁ、この時代の天の神が弱い事を期待するしかないわね……いや、ホント……」

 

 まさか満開勇者が手も出せず、自分達も千景砲という名のクソデカビーム砲で援護したのにもかかわらず傷らしい傷を与えられませんでしたとは言えるわけもなく、言葉を濁した芽吹は笑いながらそっぽ向くのだった。

 とにもかくにもこれにて防人も戦線に参加。二十人近い勇者達が西暦の四国にて戦線に参加するのであった。




とりあえず書きたい話を適当に詰め込んだだけ。

そんな感じの話でしたが、防人組も正式に参戦です。通常時の戦力的には神世紀勇者>防人>西暦勇者みたいな感じ。でも基本的に四人一セットで動く戦力なので戦場においては神世紀勇者を上回る戦力にも成りえる的な。でも満開や切り札を使われると劣る的な、良くも悪くも戦力にムラが無い戦力。

次回からはちょっと日常系と言うか戦いつつも日常系、みたいな感じの話をやってからのわゆ編の後半をやっていきたいと思います。

それではまた次回、お会いしましょう

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