あと歌詞掲載もできるんだしちょっとした事もやりたかった。
秘密の取引、というのはいつの時代だって存在する。
あくどい取引だったり、友達に内緒での取引だったり、単純な闇取引だったり。神世紀には闇取引なんて存在しないが、しかしその闇取引は今、勇者間で行われようとしていた。
「園子先生、これが例のブツと、ひなたさんが何故か持っていたとある日の千景さんの音声です」
「ふむふむ~。それじゃああんずんにはこれを~」
そう、園子と杏。二人が誰にも見つからないよう闇取引を行っていた。
園子の小説を読んでから先生付けで彼女を呼び始めた杏が渡したのは、とある写真ととある日の千景が自害しようとまで考えた原因となった彼女の自爆音声。そして園子が代わりに渡したのは写真。
園子から写真を受け取った杏は代わりに写真と千景の音声入りSDカードを手渡し、受け取った写真に目を通す。
その写真とは、園子が持っていた美森と銀の小学六年生時代の写真。つまりロリ時代の写真だ。片方は美森ではなく須美と名乗っていた時期だが。
「はぁぁ~……ちっちゃい東郷さんも銀さんもかぁいいなぁ~……」
そんな二人の写真を見て杏は興奮。時折仲間たちの小学生時代の写真を見て一人はぁはぁしているロリコンが二人の写真を見て興奮しないわけがなく。
自分の写真を渡さないのは自分の写真で興奮されたら多分ドン引きする事間違いないからだ。というか目の前で自分がオカズにされるのは普通に嫌だ。と言う事で彼女は友人売った。こいつひでぇな。
そして園子が受け取った写真は、千景の写真だ。ひなたが撮っていた写真から様々な千景の写真を貰い、それを交換条件として須美と銀の写真を買った。その際にどうせならと貰った音声ファイルは勿論杏も聞いたが、これで弄るのは可哀想だと思った。思ったが、多分その内ソレを使って千景を揶揄う。
「成長中ちーちゃん可愛いなぁ~。っていうかこれってなに~?」
「聞いてみれば分かりますよ」
「へぇ~。じゃあ一回聞いてみよっと~」
園子が軽い気持ちでノートパソコンにSDカードを突っ込み、音声を再生した。
『虐殺勇者千景ちゃんなのだ☆』
そう、その音声とは偶々あの時の会話を物陰で録音していたひなたが切り取った千景が自害する事間違いなしな自爆音声だった。
軽い気持ちで聞いた結果ヤバい位破壊力のある音声を聞いてしまった園子は固まった。
「……あれ? 園子先生? 急にどうし……し、死んでる……!?」
園子は破壊力抜群のソレを聞き、天へと召された。
しかし、それから数分後、なんとか自力で息を吹き返した。
「あ、危なかった……危うく死ぬところだったよ……」
「心臓止まってましたが……?」
「その程度で勇者はしなないよ~。つい数か月前までわたしの心臓止まってたし~」
「えぇ……普通それで死ぬような……」
「まぁまぁ、それは置いておくとして、次の音声を~」
『死神勇者千景ちゃんです☆』
「ア゛ッッッッッッッッッッ!?!?!?!?!?!?」
「また死んでる……」
しかし次の弾丸により園子は再び心停止し天へと召されたのだった。
勿論数分後に自力で息を吹き返した。こいついっつも千景関連の事で死んでるな。ちなみに杏はこの後すぐにハゲ丸にも闇取引を仕掛け、見事園子の小学生時代の写真をゲットし、代わりに千景の写真と例の音声データを渡したのだが。
「どれどれ、ちーちゃんのどんな声が……」
『虐殺勇者千景ちゃんなのだ☆』
「ン゛ッッッッッッッッッッッッッッッ!?!?!?!?!?」
「こっちも死んでる……」
やはりこっちも死んだ。
このシスコン共は千景のちょっとした仕草で死ぬので、こんなにもノリノリで普段言わないような事を言う千景なんて兵器を越えた何かにしかならないのだ。
ちなみに二人はこの音声をしっかりと持ち帰り、幾十ものバックアップを取って携帯で取り込み、癒しが必要になった時に聞いては死ぬようになったとか。せめてもの救いは、千景がこの事実をまだ知らない事だろうか。
恐らく知った瞬間、杏の命が危ないが。下手したら切り札を使ってでも仕留められる。
しかしそんな事よりも己の欲。ロリ時代の先代組の写真を見てぐへへへ……と明らかに美少女がするような笑い方ではない笑いを漏らしながら彼女は今日も欲に正直に生きていくのであった。
****
「土居さんッ!! あの馬鹿は……伊予島はどこッ!!」
「うわっ、ビックリした。あんずか? あんずなら急に四国中の本屋をめぐってくるって言ってさっき出て行ったけど。ってかなんだそのフル装備。生太刀に双剣に双斧、ついでに槍鏡弓大剣天の逆手籠手ワイヤー……お前とりあえず全員の武器借りてきたろ」
「くっ、伊予島ァ……ッ!! 絶対にとっ掴まえてぶっ殺してやるッ!! あと旋刃盤貸しなさい!!」
「お、おう……? よく分からんが、とりあえず怪我無いようにな……?」
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杏がとある海辺の沖に沈められた翌日、一部の勇者部員はなんとなーくカラオケに向かっていた。
カラオケに向かった面子は友奈、樹、園子、銀、ハゲ丸、若葉、千景、ひなたの合計八人。その時暇で偶々神世紀組とすれ違った面子が引っ張られる形でカラオケに参加した。こういう時は百パーセント参加する球子は杏を探しているため不参加となった。
そういう訳で八人は親睦を深めると言うか暇潰しに遊ぶためにカラオケに来ていた。
「こういう場所には来た事が無いからなぁ……何をしていいんだ?」
「歌を歌えばいいのよ」
「お歌を歌う若葉ちゃんを激写です!」
ちなみに西暦組の三人はカラオケに来るのは初めてである。
なんやかんやで行く機会が無かったので行った事が無かった千景、ひなた以外友達がいなかったためカラオケに行くという発想すらなかった若葉、そんな若葉と一緒だったので一度も言った事が無かったひなたの三人。ちなみに他の面子は杏以外は全員一度はカラオケに行った事がある。
「それじゃあ歌うか! という事で一番手は三ノ輪銀でゴー!!」
と言いながら銀がドリンクを片手に早速曲を入れてマイクを片手にはしゃいだ。
「PAN-PAN PUNCH☆MIND! PAN-PAN-PAN-PAN パンチ☆マインド!」
「銀さんからは想像ができない位の萌えボイスが!?」
「ミノさんの声って結構可愛くなったりイケメンになったり千差万別なんだよね~」
はっちゃけた笑顔で可愛い声を出しながら歌う銀。いつもの銀からは想像できない感じの可愛い声を出しながら歌う銀に驚いた千景が声を出すが、銀がカラオケだとこういう可愛い声を出したりイケメンボイスを出したりするのは身内だと結構普通な事なので神世紀組はスルー。その間に園子が曲を入れ、次は友奈と樹が機械を操作している。
「一緒にがんばっちゃおう! がんばっちゃお! 元気になれって叫んだら、生命力アップだ! 精神力アップだ! 強い自分になれそうだい!」
「ふむ……こういう感じで歌えばいいのか。なら何とかなりそうだな」
「そんなにレパートリーがあるんですか?」
「任せておけ」
と言いながら若葉も友奈と樹から回ってきた機械を操作する。
その間も銀ははっちゃけながら歌を歌い。
「PAN-PAN PUNCH☆MIND! PAN-PAN-PAN-PAN パンチ☆マインド! PAN-PAN PUNCH☆MIND! UNHAPPYよバーイバイ!!」
見事に完走。その直前に入れた採点は八十点後半を記録していた。まぁまぁだな、と銀は頷くと、そのまま飲み物を一口飲んだ。
どうやら可愛い声を出すとちょっと喉に負担があるらしい。
そんな事はさておき次は園子の番。数回咳払いして喉を調整してから。
「Brush UP! ユウキ今日も、わたしのハートきらめく! Next Future、始まってるね!」
園子の声はいつも通りだがかなり優しい感じで癒される感じで歌を歌っていた。
期待を裏切らない園子の声に千景が声を出し、ついでに若葉も子孫の歌声というか声質がこんなにも違う物なのかと驚いた。そして何故か園子の写真も撮るひなた。やっぱり園子って。
そんな感じで園子が歌い、その間に他の面子も歌を入れていく。
「止まらない! カラダ中に、流れ出すエナジー! 最高のわたしで、飛んでいけ!」
そのままラスサビも歌いきり、次は友奈と樹の番となった。
「それじゃあわたしと樹ちゃんでいきまーす!」
「将来の練習としてこの場を沸かしまーす!」
という事で二人の番だ。
「Yes! Party Time!!」
「Yes! Golden Time!!」
『揺らせ! 激しくHeart Beat! 君のEmotion! 曝け出せたら無敵だね!』
もしもここに美森と風が居たらウザい位に合いの手というかコールを入れていただろうが、ハゲ丸と園子が賑やかしにコールを入れる程度で二人の歌をライブ感覚で聞く。どうしてか若葉が途中で混ざりかけていたが、どこかの並行世界の記憶でも脳内に混ざったのだろうか。
そんな感じでカラオケボックス内で始まった友奈&樹のプチライブは五分経たない内にラスサビに入った。
「歌おうSinging!」
「踊ろうDancing!」
『こ、こ、か、ら! ちゃんと見てるよ!! 目と目があった時、始まるのはLove Story?』
友奈と樹の可愛い声組のデュエットが終わり、ハイタッチしてジュースを飲んだ。そして次は若葉なのだが、野武士の事だからきっと美森みたいなかたっ苦しい歌が流れだすんじゃとみんなが想像した。
しかし、流れてきた音楽は違った。
なんだかポップと言うか、アイドル系と言うか。あれ? と全員が首を傾げた瞬間、若葉が立ち上がりそのまま振り付け付きで。。
「おーねがい、シーンデレラ! 夢は夢で終われないっ!」
「まさかの可愛い系!? あの野武士がこんな歌を歌うなんて……上里さん、あなたはあの野武士がこんな声を出せるって知って……上里さん? あれ? いつの間に寝て……し、死んでる……」
まさかのアイドルソングを思いっきり歌い始めた。しかも可愛い系の声が聞こえたためひなたが死んだ。
ひなたも若葉の事だからもっと違う感じの歌が流れてくると思い込んでいたのだが、結果はまさかの振り付け付きのアイドルソング。ひなたは鋼の意志でカメラではなくスマホを取り出し録画しているが、恐らくこの後ひなたはこの映像を見返して何度か死ぬことだろう。
一人殺した若葉はひなたの事に気が付かず、そのまま歌い続ける。
「涙のあとには、また笑って! スマートにね? でも可愛く、進もう!」
歌いきった若葉がそのまま息を吐き、改めて座る。
「どうだった?」
「若葉ちゃんってあんな感じに歌えるんだね!」
「キャラ崩壊凄かったですね」
「ご先祖様可愛かった~」
「なんか声帯がアタシみたいな感じなのはわかった」
「もはや誰も野武士が人を一人殺したことに何も言わないのね」
だって誰かの可愛さが原因で誰かが死ぬのは最早日常茶飯事だし。
そんな訳で次はハゲ丸なのだが、まぁ勿論彼は特撮ソングな訳で。
「グリッドマン! 誰もが皆、ヒーローに、なぁれるぅよ!!」
「これいつの時代の特撮の歌?」
「えっと、グリッドマンっと……二十年くらい前ね」
「となると神世紀的には三百二十年前の歌……ホントこいつの特撮レパートリーどうなってんだ」
そんな感じでハゲ丸が歌えば次は千景が歌い、無事園子とハゲ丸が死んで死者が三人に増えたり、樹が将来の練習のために思いっきり持ち歌を歌ったり、友奈、樹、若葉が何故か三人で歌い始めたりと、結構カラオケは盛り上がったのであった。
ちなみに死者三人はカラオケが終わったらなんとか蘇生した。
****
結局海の底へと沈められている杏ではあるのだが、それを知らない球子はとりあえず返ってこない杏を探すために外に出掛けていた。
旋刃盤片手にあんずー、と声を出しながら杏を探すものの、絶賛重りを括りつけられて海の底に沈んでいる杏がそれに反応できるわけもなく、球子はちょっと心配しつつも、まぁあんずの事だし無事だろうと思いつつ捜索を続けていた。
「おーい、あんずー。居たら返事しろー」
なんて気の抜けた声を出しながら歩いていると、球子の前に見知った顔が現れた。
「まさかしずくから西暦のラーメン屋探索に付き合ってくれって言われるなんて思ってもいなかったよー」
「どうせ加賀城に用事なんてないだろうから」
「えっ、軽く酷くない? こう見えてわたしが彼氏持ちで今日はデートの予定がー、とか考えたりしなかったの?」
「もち」
「ひどっ! こう見えても結構ガワはいいとは思ってるんだよ!? そりゃあ一部はひんそーでちんちくりんではありますが!」
「……ふっ」
「こやつ、わたしと育ち方が似てるくせに鼻で笑いおった!!」
「わたしの方が身長は高い」
「たった数センチでしょうが!」
何気に雀さんは防人組の中では亜耶の次に身長が低いのである。
そんな事情はさておき、歩きながら漫才みたいな事をしつつも笑いあっているしずくと雀が球子の前に現れた。西暦のラーメン屋巡りに来たらしいが、香川にはラーメン屋よりもうどん屋の方が多いため、どれだけしずくが気に入るラーメン屋を見つけられる事やら。
球子が元気有り余ってんなぁ、と思いながら二人を見ていると、二人もその視線に気が付いたようで球子を見つけた。
「土居? こんな所で、奇遇」
「おう、奇遇だな。早速だけどあんず知らね?」
「いやー、わたし共は今日二人以上の勇者は見かけてない次第でございましてからに」
「相変わらず変な口調と態度だなオイ。けど、そっかぁ、見てないかぁ。だとするとマジで千景に処されたかもなぁ」
「千景も勇者部らしくなった」
「勇者部はやべー集団だって言った千景の言葉の真意が千景の行動で分かった気がしてきた」
まぁ、千景の事なので杏をマジで殺したわけではないと思うが、まぁどこかでボロ雑巾になって転がってるのだろうと球子は察した。まさか海の底に昨日のうちに沈められ、まだ生きて何とか脱出しようとしているとは思ってもいないのだろう。
球子も千景の事は信用しているし、まさかガチで殺害するほど怒っていたとも思えないので杏も暫くしたら平気な顔して戻ってくるだろうと改めて考え、とりあえず杏を探すという名目で二人について行くことにした。暇だったし。
「そういやお前らは勇者部じゃないのな。千景の知り合いだし最初見た時は勇者部なんじゃないかって思ったぞ」
二人に合流してラーメンを食べに行く許可を得てしずく&雀のなんやかんや言って仲がいい二人に球子が混ざり、しずくが先んじて調べておいたラーメン屋へと向かう。
その最中、球子はふと勇者部について尋ねた。
しずくと雀は夏凜と共に過去に来た芽吹の仲間としてこの四国に来た。なので、芽吹も実は勇者部で、この二人も勇者部なんじゃないかと思っていたのだが、その事実は違った。防人の詳細をまだ把握しきれていない球子はそこら辺がまだ少しだけ疑問に残っていたりする。
「勇者部は風が讃州中学の勇者候補を集めて作った部活。わたしは違う中学だったから」
なのでしずくが分かりやすい感じで球子に勇者部について説明した。
しずくと雀が違う学校に通っているのは初見の時に一応聞かされた。そこら辺の中学事情も実は大赦が違和感ないように操作していたのだが、そこら辺は濁して自分達は讃州中学じゃないから勇者部じゃないと教える。
勇者部はあくまでも讃州中学内にある部活動だ。部外者なのに所属している千景がイレギュラーなのである。
「同じく。わたしとしずくも一応、それに近い部活に入ってたんだよねぇ。いやぁ、今思うと勇者に任命されずに助かったよぉ。勇者になってたら今頃死んでたと思うし」
とはお喋り雀の言葉。まぁ、確かに死にはしないが。
「乃木は内臓の八割近く持って行かれたらしいけど、精霊のおかげで絶対に死ななかったらしい。今は違うらしいけど」
「残念だったな雀。勇者になってたら内臓の八割消し飛んでても生きてるビックリ人間になってたぞ」
「生きてりゃどうなってもいいってもんじゃないからね!? せめて五体満足内臓健全な健康状態で生きていることに意味があるんだからね!?」
死にはしないが代わりに将来に支障が出るかもしれなかった。
下手したら一生満開の後遺症を背負って生きていく羽目になる。園子だって呼吸に必要な肺は残っていたのに心臓が無いから呼吸できるのに心臓が動いていないとか言うビックリ人間と化していたワケだし。
そんな状態で人様の前に出れるわけがない。下手したらその場で妖怪認定だ。
「しっかし、未来の勇者事情は複雑だよなぁ。精霊バリアの代わりに満開とか、量産型勇者システムの防人とか」
「三百年経って詰将棋が更にヤバい事になってたから……」
「お外火の海だったもんねぇ……」
「聞いた聞いた。せめてここは火の海になる前にどうにかしないとなぁ。タマもさっさと勇者のお役目なんて終わらせて自由に遊んで生きていたいぞ」
「そっちは勇者って公表してるんだもんねぇ。いいなぁ、将来は世界を救った救世主として持て囃されながらチヤホヤされて生きていくなんて。わたしゃそれに守られてる一般人が精一杯ってモンですわ」
「おっ、今度一緒にテレビ出るか? 一瞬でこっちの勇者として認定されて救世主認定だぞ」
「嫌だぁ! 最終的に逃げる事すら許されない立場に立たされるの絶対嫌だぁ!!」
「そういう自分の欲に正直な所、タマは結構好きだぞ」
自分の欲というか生存本能と言うべきか。
そんな事を言っている間にしずくが行きたかったラーメン屋に到着し、三人で適当なテーブルに着席しメニューを広げる。
さて、何を食べようか。三人でメニューと睨めっこしていると、そんな三人のテーブルの横に誰かが立った。
「ん?」
「ちーっす。これまた珍しい三人組が珍しい場所に居ますなぁ。奇遇奇遇」
「おわっ、本日二人目の勇者様とエンカウント!」
やって来たのは雪花だった。どうやら球子達が店の中に入る前から既にこのラーメン屋でメニューと睨めっこしていたらしく、偶々この店に入ってきた三人を確認してからこっちに来たらしい。
「誰かと思ったら雪花か。マジで奇遇だな」
「まさかここで身内と会うとは思っても無かったよ。同士よ、ちーっす」
「うーっす。座る?」
「そうしますわ。どっこいしょっと」
「年寄くせーぞ」
「よく言われますわ」
ラーメン派二人と愛媛出身者二人という、ちょっと謎な四人組がここで誕生した。
そんな四人組はとりあえず積もる話は後にしてメニューと睨めっこし、注文だけを先に決め、店員を呼ぶ。
「えっと、タマはこの味噌ラーメンで」
「わたしは普通のラーメンを」
「チャーシューメンに煮卵トッピング」
「んじゃ、あたしゃこの煮干しラーメンってやつで」
「雪花って煮干し好きなのか?」
「いや、某赤いのの影響で食べてみよかなって」
雪花は今も自室で煮干し食いながら筋トレしているであろう赤いのを思い出しながらメニューにあった煮干しラーメンをチョイスした。
サイドメニューは特に頼むことなくラーメン四杯だけ頼み、店員は何度か球子と雪花へと視線を戻してから厨房の奥へと戻っていった。
「そういや球子は変装とかしなくても大丈夫だったん?」
「変装? ……あー、そういやタマと雪花はもう有名人だっけか。ってかそりゃお前もだろ雪花」
「あたしにそんな堅苦しい事は似合わないよん」
西暦組の勇者はメディア露出もしている有名人だ。なにせ、今この世界を守っている守護者であり救世主であるのだから。
球子だってもう何回インタビューなどを受けてかは覚えていないし、雪花も雪花でつい最近メディア露出したばかりだし。それに、勇者はあまり大っぴらに外に出ることは少ない。出る事はあっても変装していたりする。
なので変装していない球子と雪花が思いっきり普通に入店して飯を食おうとしている事に驚いていたのだろう。厨房の奥で何か話しているし。
「いやー、西暦の勇者様達は大変ですなぁ」
「有名人は大変」
「お前らもその仲間に入れてやろうか?」
「わたしなんかが勇者に祭り上げられたら数秒で炎上してそのまま炎上芸で燃えまくってその内メンタルが病んで死んじゃうよぉ!」
「面倒」
「雀は案外余裕そうだよな。しずくは……まぁ、うん。面倒だ。クッソ面倒だ」
「暇だしあたしは炎上芸してみよっかな」
「やめれ」
なんだか勇者になってからツッコミ役としての素質が磨かれつつあるなぁ、と自覚する球子であった。
そうして結構な勢いでボケる仲間たちにツッコミを入れながら待つ事数分。店員がラーメンを乗せた盆を手に球子達の席へとやって来た。
「こちら煮干しラーメンになります」
「あっ、それあたしで」
「こちらがラーメンです」
「わたしわたし」
お盆の面積の関係でラーメンが二つしか乗らなかったため、まずは煮干しラーメンと普通のラーメンが。
そしてもう一回店員が厨房へと戻ってから他のラーメンをお盆に乗せてやってきた。
「こちらが味噌ラーメンとチャーシューメンです」
「味噌がタマだ」
「チャーシュー、こっち」
球子としずくの分のラーメンも来たのでこれで注文は全部来た。後は食べるだけだ。
「それじゃあ新ラーメン同盟の結成を祝って」
「いや、成立してねぇけど」
「いただきますっと」
「いただきます」
「もういいよそれで……んじゃいただきま、ん?」
球子がツッコミを入れるのを諦め、手を合わせいざ実食、という所で球子のポケットの中の携帯が鳴った。
SNSではなく普通に通話がかかってきたようだ。なり続ける携帯を手に取ると、液晶に出た名前はまさかの棗だった。接点が多いとはお世辞にも言えない球子と棗。どうして棗から? と球子が首を傾げるが、とりあえず一言謝ってから電話に出ることに。
「もしもし?」
『もしもし。球子で合ってるか?』
「合ってるけど、なんかあったか?」
『あぁ。今、海に居るんだが』
どうやら棗は今、海に居るらしい。
だが、そうなるともっと疑問が深まる。何故海に居る棗に球子へと電話をかけるような用事が生まれるのか。
それで? と棗に次の言葉を催促すると、棗はちょっと言いづらそうに少し言葉を濁らせてから、すぐにいつも通りの声色で球子に電話をかけるに至った用事を告げた。
『海の底に杏が沈められていたんだが、助けるべきか? さっきから凄い助けを求められてるんだが』
「……あぁ、うん。回収してくれると助かるかな」
『了解。用事はそれだけだ』
「おう。そんじゃ」
どうやら棗は海に沈められた杏を発見していたらしい。
まぁ、十中八九千景に沈められたんだろうなぁ、と確信しつつ球子は今日はこれから暇だし、暫くは新ラーメン同盟に籍を置き暇を潰そうと思ったのだった。
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「……なぁ、ラーメン屋次で四店舗目なんだが」
「そろそろわたしもお腹が破裂しそう……」
「何言ってんの。まだまだこれからだよ」
「次はここ」
「おっ、いいチョイスしてんねぇ。んじゃ、四件目いくぞー!」
「でんでんででででん。かーん」
「カーンが入ってる。褒美にしずくには味噌バターコーンを食べる権利をやろう」
「ありがたき幸せ」
「……もういいよ」
という事で短編集的なお話でした。この話だけでハゲとそのっちが二回死んでるしひなたんも一回死んでる。合計三回も一話で死人を出すギャグ回って……
ちなみに本編中で出た楽曲は『PUNCH☆MIND☆HAPPINESS』、『SUPER∞STREAM』、『Yes! Party time!!』、『お願い!シンデレラ』、『夢のヒーロー』です。
ハゲの選曲は単純にSSSS.DYNAZENONの記念。他の曲は中の人繋がりです。多分Yes! Party time!!以外はそれぞれの声優さんのソロがあります。
本当はぐんちゃんにあの子にドロップキックとか、上々↑↑GAO!!とか歌わせようかなーとか思ってましたが、どれにしようか迷った結果、また次回、カラオケ回があったら書くことにしました。
あと、最初に若ちゃんの声優をへごちんだと知った時、マジで驚きました。そして普通に若ちゃんのイメージ通りの声で驚きました。自分の中のへごちんって卯月だったので。声優ってすげーって思いましたね。
んでもって何気に24時間近く海の底に沈められても生きているあんずん。こいつもそろそろギャグ補正やべーやつ組に入ってきたな?