どれだけ寝て起きて研究室行って帰ってきて飯食って寝て起きて研究室に行くローテをしていたのか……
とりあえず今回も日常回。暫くはグダグダやってからのわゆ編終わらせちゃいたいね。
高嶋が長きに渡る入院からようやく退院した。
思えば最初に酒呑童子を使ったあたりから彼女はずっと入院していた。何せ入院していたのに抜け出してまた入院してまた抜け出してと繰り返していたのだから。神世紀組だって高嶋の姿を外で見た回数よりも病室で見た回数の方が多い程だ。
しかし、そんな辛気臭い入院生活からはもうおさらば。高嶋はかなり長い事お世話になっていた病室から出て丸亀城へととうとう帰還した。
「いやー、大変長らくご迷惑をおかけしました」
「全くだ。これからはあんな風に暴走するのは止してくれよ。お前の暴走は分かりにくい」
「友奈が悪いんじゃなくて精神汚染が悪いのは分かってるけど、ちゃんと相談しろよ?」
「相談してくれたなら、いつだって乗ってあげるわ! いい答えになるかどうかはさておき」
「もちろん! 心機一転、頑張らせてもらいます! ところでアンちゃんどこ?」
「そういやどこだ? タマも見てないが」
「いつ撮っていたのか分からない数年前の着替え写真を園ねぇに横流ししていたから、二日前に海に沈めてきたわ」
「えぇ……」
「ちょっと回収してくるわ……」
色々と問題を起こした高嶋ではあったが、特に彼女を責める者は居ない。今回の事件に悪者は居ないからだ。いるとしたら彼女の中に爆弾を仕込んだあの村の人間か、この時代そのものだろう。
沈められた杏を回収死に向かう球子に向かって手を振り、高嶋は改めて一回頭を下げると、全員が別に頭を下げなくてもいいよ、と高嶋の頭を上げさせた。
そういったアレコレがあった後で。
「そういえば、そっちの雪花ちゃんと棗さんとはあまり話した事なかったっけ。改めて、高嶋友奈です!」
「おー、よろしく。えっと、結城っちの方の友奈は結城っちって呼んでるから、こっちの友奈は友奈でいっか」
「そういえば、わたしもなんやかんやで結城の方は結城呼びのままだったな……それじゃあ、こっちの友奈はわたしも友奈と呼ぼう。よろしく、友奈」
「よろしくね! にしても、友奈が二人いると結構紛らわしいね?」
「しゃーないしゃーない」
まぁ、高嶋が言ったことは最もである。
確かに紛らわしい事には紛らわしいが、呼び分けさえしてしまえばその紛らわしさも消える。
そんな場面をちょっと離れた所でうどんクッキーを食べながら見ていた結城の方の友奈は、高嶋が戻ってきてくれてよかった、と胸を撫でおろした。今日、西暦に居るのは暇していた友奈と美森の二人だけだったりする。まぁ、この二人が居て勝てないバーテックスを探す方が難しいのでなんやかんやで適切な人員振り分けである。
そんな友奈の元に、高嶋が笑顔で寄ってきた。
「ゆーきちゃん」
「んー?」
うどんクッキーを食べている友奈は寄ってきた高嶋がどうしてそんなに笑顔で寄ってくるのかが分からなかったが、すぐにその理由は分かった。
「組手しよう!」
「えっ、いきなり?」
どうやら高嶋は体を動かしたかったらしい。
友奈は退院していきなり? といういきなり? と、そんな前約束も無しにいきなり? といういきなり? の二つを込めたいきなり? を口にしたのだが、どうやら高嶋さんの方は既に今日の予定は友奈との組手で埋まっているらしい。
しかし、友奈の方にも特に用事なんてないので売られた組手を買わない理由がない。
残っていたうどんクッキーを口の中に詰め込んで飲み込み、ニコニコ笑顔で立っている高嶋の前に立つ。
「よし、やろう!」
「結城ちゃんならそう言ってくれると思ってた! じゃあ外でやろっか!」
「もちろん!」
「あいつら血の気多いな」
「まぁ、友奈同士で何か惹かれる物があるんだろう。知らんけど」
二人の友奈の血の気の多さに思わず棗が声を漏らしたが、若葉の方はなんやかんやで高嶋が負けず嫌いな所があるのは知っているので、高嶋がなんでいきなり組手を申し出たのか何となく察しながら移動する二人について行った。
丸亀城内の西暦勇者達が普段自身の訓練に使っているスペースに来た二人の友奈は、身長やその他の体のサイズがほとんど同じなため、高嶋のジャージを二人で着て、高嶋の訓練用の籠手を手に装着し相対した。
「しかし、こう見ると結城っちと友奈はパッと見分かりませんなぁ」
「髪型とかを見ないと分かりませんねぇ」
「そう? 結構分かりやすいと思うけど」
「そうね。結構分かりやすいわ」
「お前らが異常なんだよ、黒髪コンビ」
観客席の方で青いのと緋色のがレズっぽさを醸し出していたが、二人の友奈は気にしない。
籠手を着けてえっちらおっちらと柔軟体操を行いながら二人の友奈は適当に会話を交わしている。
「前は負けちゃったけど、今回は負けないからね」
「そう簡単には負けてあげられないかなぁ」
「いやいや、あの時はちょっと理性が飛んじゃってたけど、今は違うから。わたしが勝つから」
「いやいや、どんな時だってわたしが勝つから」
「普段はわたしの方が強いから」
「どんな時だってわたしが強いから」
はたして適当、なのだろうか。
売り言葉に買い言葉と言わんばかりになんか挑発的な言葉が飛び交っているが。美森と千景はなんとなーく、二人の友奈の間の雰囲気がピリピリし始めているのを感じはじめ、その後すぐに他の面子も二人の友奈の雰囲気がなんか変な感じになっているのを感じ始めている。
同じ顔で同じ体格で。クローンみたいだと言える二人だからこそ、自分に悪口を言うような感じで喧嘩言葉を飛ばしまくっている。
普段の友奈なら絶対にしないような意地っ張り。二人の友奈は確かに仲がいいが、互いに遠慮がほぼ無い故に、こういう時は滅茶苦茶色んなことを言いまくる。
そういう訳で。
「結城ちゃん、寝言は寝て言おうか?」
「高嶋ちゃんって昼寝が趣味なのかな? まだ昼なのに結構な寝言言うねぇ」
「あはははは。ぶっ潰す」
「ふふふふふ。ぶっ倒す」
あっ、これあかん。と観客席が察し、青いのが暴言吐く友奈ちゃんもいいわね……今度罵ってもらおうかしら。なんて考えたその瞬間だった。
二人の友奈が全く同時のタイミングで飛び出し、全く同じスピードで全く同じタイミングで拳を放った。
『勇者パァンチッ!!』
そして、全く同じタイミングで二人の友奈の勇者パンチが炸裂した。
拳と拳がぶつかり合い、痛そうな音が響く。しかし、二人の友奈は好戦的な笑みを浮かべたまま拳を合わせ、力比べだと言わんばかりに全力で相手の拳を押しやらんとしている。
だが、徐々に友奈の拳の方が徐々に高嶋の拳を押しやる。
力の方は友奈が上。友奈の方の笑みが強くなり、高嶋の表情が若干苦しくなったが、即座に高嶋は拳での拮抗を中止。力を抜き、即座に後ろへと向かって飛ぶことにより友奈のバランスを崩し、自身の間合いへと彼女を引き込む。
友奈がたたらを踏みながら高嶋の方へと一歩踏み込んだその瞬間に高嶋が友奈の腕を取り、そのまま背負い投げを繰り出す。
背中から地面に叩きつけられた友奈だったが、高嶋が友奈の手を離した瞬間に全身と両腕をバネにして起き上がり、高嶋の追撃の拳を躱し振り返りながら蹴りを叩き込んだ。
しかし高嶋、これをガード。だがそのガードの上から高嶋を吹き飛ばし、即座に友奈が追撃で飛び回し蹴りを叩き込むが、高嶋はなんとかそれを防いだ。
だが。
「いっ……!?」
「圓明流、旋ッ!! からの!」
すぐに高嶋の防御の上に飛び回し蹴りをしつつの飛び回し蹴りを叩き込んだ。初見殺しとも言えるこの技に高嶋は反応する事ができず、側頭部を蹴り抜かれる。けども意識は飛んでいない。まだ戦える。
しかし、友奈は着地後、軽い助走だけ付けると体を丸めながら跳躍し回転。そして回転の勢いと落下の勢いを利用し、高嶋の頭に踵落としを叩き込もうとする。が、それを高嶋はガード。
だが。
「圓明流、斧鉞ッ!!」
一撃目がガードされた瞬間、もう片方の足での踵落としが降ってきた。しかし高嶋はそれに何とか反応。ガードを解き全力で後ろに飛ぶことにより二撃目を躱す。
なんとか避ける事はできたが、まさかそんなビックリドッキリ技を繰り出されるとは思っていなかった高嶋は痛む側頭部とガードに使った腕を気にしつつもファイティングポーズを取り、思わずと言った感じで呟く。
「な、なにその技……」
「漫画の技!」
「それを実践に持ってくるのって結城ちゃんくらいじゃないかなぁ……?」
思わず感心してしまった高嶋だったが、すぐに気を引き締めて友奈と相対する。
一方その頃観客席は。
「……凄いねぇ、アレ」
「結城の方も強いな……酒呑童子を使った友奈を止めれただけはある」
「技は友奈の方が上だな。だが、結城の方はパワーが上だ。二人ともよく鍛えている」
「そういえば棗さんも武術を嗜んでいるんだったわね。武術を嗜んでいる人だからこそわかる事があるのかしら……」
「やってたのは沖縄武術だがな」
沖縄武術を習っていた棗が解説役を行っているが、美森と千景は何も言わずに現在二人の組手を撮影している真っ最中である。なんやかんやでブレない二人である。
そんな二人の事は全員で無視し、ダブル友奈の組手の方に集中する。
「まったく、結城ちゃんには驚かされてばかりだなぁ!」
「こっちこそ、高嶋ちゃんの技に驚かされてばかりだよ!! カポエイラとかキックボクシングとか! なんで足技も使えるのか意味不明!」
「鍛えてますから!」
と、言いながらダブル友奈がとうとう加減という二文字を忘れたのか、割とガチで殴り合いを始めていた。
友奈の蹴りと高嶋の蹴りが互いの威力を相殺したかと思えば高嶋の両腕が友奈の顔に伸び、そのまま掴んだと思えば膝蹴り。しかしそれを両手で防いだ友奈は二発目が来る前に顔を掴んでいる高嶋の片腕を引っぺがし、もう片方の腕を掴んでからアームブリンガーを仕掛けるが、高嶋はなんとかそれを力づくで脱出。そしてお返しにとチョークを仕掛けるが、身長がほぼ同じな事を利用した友奈が後頭部で頭突き。高嶋が顔を押さえて後退した所に追撃を仕掛けにかかるが、追撃の一発目をわざと体勢を崩して後ろに飛び、倒れ込むことにより避ける。
あっ、ヤバいと思った時にはもう遅い。倒れ込んだ高嶋が両腕の力だけで飛び、友奈の腹に蹴りを叩き込み、吹っ飛ばしてから着地。
「いっだぁ!!? 何その馬鹿力!!」
「こっちは腕しか武器にできないから、腕の力だけは結構鍛えてるんだよ!」
「わたしよりも力弱かったくせに!」
「勇者は根性!」
「同意! でもわたしの方が強い! 勇者キック!!」
喋りながら友奈が突っ込み、高嶋の両腕でのブロックを腕を掴んで無理矢理外してから勇者キックを思いっきり腹に叩き込む。
これは高嶋も結構効いたようで、数回咳き込んでからかなり好戦的な目を友奈に向ける。
おっと? と若葉が首を傾げ、棗が苦笑。武術経験者の二人がちょっと苦い顔をした辺りで他の面子も徐々にダブル友奈の雰囲気がピリピリというか、なんかちょっと危ない感じになっているのを察した。
そして。
「勇者パンチッ!」
「ぐっ!? やったな! 勇者キック!!」
「ぶへっ!? じ、人中は卑怯じゃないかな勇者アッパー!!」
「っだぁ!? 顔を殴ってきたのそっちだからね勇者エルボー!!」
とうとう二人が一応避けて攻撃していた顔面を躊躇なく殴り始めた。
あかんこれ。
「はい中止中止中止ぃ!!」
「流石に組手で顔面はダメだ」
『嫌だ!』
「嫌だじゃない! おい皆で取り押さえるぞ! じゃないとこいつら、また顔面血だらけになるまで殴り合いしかねん!」
「折角可愛い顔なんだ。もう少し大事にしておけ」
どうして二人とも友奈を相手にしたときに限ってこんな遠慮も加減も無しに殴り合ってしまうのだろうか。若葉と棗、ついでに他の面子全員で二人の友奈を取り押さえ、結局勝者は決まらないまま組手は中止となったのだった。
だが二人とも、この結果には満足いかないようで何度も何度も再戦したのだが、その度に顔面まで殴り合い始める始末なので結局組手が最後まで終わることは無かったとか。
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とある日の歌野の畑。
この日はとても天気が良く、歌野にとっては絶好の畑日和。大社から全部使いきれるもんなら使いきってみやがれといった感じで譲渡された畑に向かう最中、途中ですれ違った何人かの勇者達にも声をかけ、歌野は大社から用意されてからずっと使っている畑へとやってきた。
時期はいつの間にやら六月。そろそろ夏野菜を植える季節だと歌野は張り切り、既に過去と未来から選りすぐってきた種と鍬等を手に勇者達を引き連れ、一人で保有するには広大な畑の前に立った。
「よし、絶好の種植え日和! 早速種を植えて夏には沢山の野菜と果物を収穫するわよ!!」
「おー。とは言っても、俺達畑仕事なんて初めてなんだけどなぁ。園子なんて生粋のお嬢様だぞ? 畑仕事なんてやった事ないし土にだって手を触れた事なんて――」
「変な価値観を農業王に植え付けるのは止めようか?」
「園子の蹴りで藤丸が回転しながら宙を舞ったな。見事な蹴りだ」
「ハゲ丸が空を舞うのも慣れきっちゃったわねぇ」
「慣れる程空を飛ぶんだな、あいつ……」
「アレは特別だから……」
「藤にぃじゃなかったら何度死んでる事か……」
ちなみに、本日歌野の手伝いに来たのは園子、棗、夏凜、若葉、しずく、千景、空を舞うハゲ丸だ。いつも歌野と若葉に引っ付いている水都とひなたの二人は夕海子主催のお茶会に誘われたため、後輩巫女である亜耶と共にお茶会の方へと行っているため不在だ。
棗が天然というかなんというのかよく分からない感性で空を舞うハゲ丸を見て園子を賞賛し、生粋のお嬢様であるはずの園子の手によりハゲが空を舞う事に既に違和感がなくなった夏凜のボヤキと、呆れた感じの他三名の声を聞きつつ、歌野がそれぞれの勇者にスコップやら軍手やらを手渡す。
「畑仕事とは言っても、みんなにやってもらいたいのは種と苗を植えるだけよ。土作りはイエスタデイの内にわたしがしておいたから、指定した場所に種と苗を植えてくれるだけでオーケーよ! あ、でも数人は野菜の収穫の方に来てほしいかしら」
「まぁ、専門的な事は分からないから、小難しい事は歌野に任せて簡単な作業をするのが一番ね」
「その程度で良ければ、存分に使ってくれ。力になろう」
と、いう事でここからは班分け。苗や種を植える組と歌野の指導の下、歌野が春の内に植えておいた野菜を収穫する組に分かれるのだが、苗、種植えはハゲ丸と夏凜、若葉と棗と千景が担当する事になり、収穫組は園子としずくが歌野の指導の下で担当する事となった。
苗、種植え組にはちゃちゃっとこんな感じで、と歌野が指示を出し、五人がそれに頷いて土を弄りだしたのを見てから歌野は園子としずくを連れて既に成っている野菜の収穫に入った。
「春の間はちょっと忙しかったから植えた野菜は控えめだったの。でも、このトマトとかとっても熟していい感じね」
「うわ~、トマトもキュウリもいっぱいだね~。これ、全部農業王が植えたの~?」
「オールじゃないわよ。みーちゃんや他の勇者にも手伝ってもらったわ。若葉さんが植えたのも幾つかあるわよ?」
「何気に珍しい体験」
「でしょ? ほら、しずくさん。このハサミでここら辺からトマトをカットしちゃって」
「う、うん。やってみる」
生粋のお嬢様である園子と半ヒキニートのしずくがハサミを片手に歌野の指示に従って野菜を収穫していく。パチンパチンと実を収穫し、園子もしずくも結構楽しそうだ。
そして苗や種を植えている組もなんやかんやでワイワイと盛り上がりながら楽しく土を弄っている。
「海もいいが、土を弄るのもいいものだな。なんというか、落ち着く」
「そうね。暑いのがちょっと辛いけど、体力もつくし案外やっていると楽しいのよね」
「あぁ~……腰が徐々に悲鳴を……」
「オッサンくさいわよ、ハゲ丸。でも、ホントに畑仕事っていい感じに体を鍛えられそうね。定期的に歌野の畑を手伝いに来ようかしら……」
「それはいい考えだな。実は私も、ただ鍛えるだけじゃつまらないからよく歌野の畑に邪魔してるんだ。案外体力付くぞ? 獲れたての野菜なんかも食わせてもらえるしな」
なんて駄弁りながら苗を植えて種を植えて。
ハゲ丸はここで実った野菜で何か一つ作ってみるのもいいかもしれない、なんて考えながら苗を植え、夏凜はここで実った野菜で野菜ジュースを作ればもっと健康的に体を鍛えられるかもしれない、なんて思いながらせっせせっせと種と苗を植える。
そうして大体八割方無心で種と苗を植え終えた辺りで歌野から休憩に入る? という打診が入ったため、あんまり根を詰めて畑仕事をしても仕方ないだろうという事で一度近くの木陰で全員揃って休むことにした。
「こんなにも大勢でやったもんだから、もうすぐ今日やる事は終わっちゃいそうね。収穫も園子さんとしずくさんのおかげで殆ど終わったし」
「農業王の作ったトマト、そのまま食べてもすっごく美味しかったんだ~。果物みたいに甘かったよ~」
「キュウリをそのままがジャスティス」
「そうそう。野菜は採れたてこそが一番美味しいのよ」
と、言いながら歌野は満面の笑み。自分が丹精込めて作った野菜が褒められたことがやはり嬉しいのだろう。
お昼は三人で採った野菜でみんなにご馳走を、なんて歌野が言い、勇者達のテンションが上がる。ヘルシーで美味しい料理は女の子にとっては大歓迎。特に身内の作った最高に美味しい野菜を使った料理とくれば自然とテンションも上がっていくものだ。
「よし、休憩終わり! とっととやる事やって歌野の野菜でパーティーでもしようじゃない!」
「それはまた豪勢なパーティーだな。よし、だったら超特急で丁寧に植えていくとするか!」
夏凜と若葉の体力有り余ってるコンビが先んじて立ち上がり、その二人の後ろを残りの面子が追う。そして歌野も楽しい楽しいと言いながら園子としずくと共に収穫の続きへと向かった。
ちなみにこの後の歌野の野菜を使った豪勢なパーティーは相当盛り上がったそうな。
****
「そういえば、藤丸さんって勇者部の皆さんの事、どう思ってるんですか?」
「……ん?」
これまたとある日。
この日は杏が勇者部室に遊びに来ており、球子が風と樹と共に神世紀の讃州へと遊びに行っている。夏凜も若葉と訓練だと言って丸亀城の方へと向かっているし、友奈と美森は高嶋、千景と共に西暦の方で遊んでいる。
その結果、勇者部室には園子、銀、杏、ハゲ丸という何とも不可思議な面子が集まる事となった。
そうして集まって、ハゲ丸が作ってきたお菓子を食べながら園子と銀がボードゲームで火花を散らし、杏が本を読んでハゲ丸がゲームをしている中、唐突に杏がそんな事を切り出した。
「どう思っているって……例えば?」
「ほら、誰かが好きだとか、この人のこんな所が魅力的とか」
どうやら杏は勇者部どころか勇者内で唯一の男であるハゲ丸に対して色恋沙汰の話が聞きたいらしい。
これまた珍しい話題を、とハゲ丸は驚いたが、すぐに杏の問いに対して答えを返す。
「誰が好きとかは特に無いな。でも、みんな魅力的っていうか可愛いな。園子も銀もだし、今いない面子も」
「なんやかんやでズラっちってわたし達の事、結構そうやって褒めるよね~。チェック」
「まぁ、こいつも男だって事だろ。甘い、チェックだ」
「あー……まぁ、こういう聞き方だとこういう答えが返ってきますよね」
だが、杏が聞きたい言葉はもうちょっと違う感じだったらしい。
え? と聞き返したハゲ丸に向かって、杏がしばらく悩んでからとんでもない爆弾を投げつける。
「じゃあ、男の子として、勇者部の皆さんの事を性的に見てしまった経験とかは?」
「俺、伊予島の事は綺麗にした樹ちゃんだと思ってたけど違ったみたいだ。テメェよくもそんな爆弾投げつけてくれたなオイ」
「いやぁ、身内に男の子がいなかったので、そういう所の価値観の違い的なのが知りたくて」
杏は結構簡単にそう言うが、ハゲ丸にとってこの質問は特大の爆弾だ。
だって、答えようによっては確実に殺される。園子と銀によるセクハラ罪の粛清という名目で極刑にされてから焼かれる。
だが、これを無視すると杏からいつ再び同じ質問が飛んでくるかも分からない。結構恋愛脳的な部分があるのは既に知っているので、下手したら結構大人数の前でこんな質問を飛ばされかねない。
そうなったら斬られたり市中引き回しにされる可能性だってある。
それだけは避けたい。
「……ち、ちなみに、どこら辺まで聞きたいんだ?」
「わたし、小さい頃は入院ばかりだったので、小説の中に出てくる下ネタを喋る同級生とか見たこと無いんですよ。だから、それに近い感じで一つぶちまけてもらいたいなーって」
「お前簡単に言うけどお前それ俺にもお前にも被害が出るし多分俺が死ぬわ」
「答え方によってはね~?」
「そうだな。おっと、ここでチェック」
「じゃあチェックメイトっと」
「……ん? あっ、マジか!? いつから詰んでた!?」
「結構前からだよ~。でも、ズラっちの下ネタとか、結構わたし達に気を使った感じのやつばっかだし、男の子の本気の下ネタがどんなもんかっていうのを知りたいかな~。ネタになるかもだし~」
まさかあっち側から下ネタを振って来いと言われるとは思っても居なかったハゲ丸は若干困惑したが、そこまで言うのならと咳ばらいを一つしてから、後悔するなよ? あと殺すなよ? と散々注意をしてから、とりあえず自身が良く思う事をぶちまけることにした。
「……じゃあぶちまけるけど、園子。まず普通に可愛い可愛いとは普段から言ってるが、昔プールに行った時とかもそうだったけど、結構遠慮なく肌を晒すから滅茶苦茶エロい」
「遠慮なくって……そんな事無いと思うけど~?」
「そう言うけどなぁ!? 運動するときとか髪纏めてる時あるけど、その時に見えるうなじも妙に色っぽいし、仕草も上品すぎてなんかもう、エロい! しかも出るとこ出てるのもエロいし、勇者装束だってそうだ!」
「えっ、ちょ、ず、ズラっち? いきなり飛ばし過ぎじゃないかな~……?」
「今も着てる先代時のピチっとしたインナーだって体のラインが出るから十分にエロい! ついでに最新の勇者装束だってそうだ! 腰の部分がちょっと見えてるだろ? そこのチラリズムというかなんというか……服の間から見える肌色がただのエロ!!」
「そこまで言う!? っていうか流石に恥ずかしいんだけど!?」
「事実だから仕方ねぇだろ!? あとそっちで素知らぬ顔してる銀だってそうだからな!?」
「って今度はアタシか!?」
「そりゃそうだ! お前ら自分がどんだけ可愛くてエロいか自覚してねぇんだよ! 銀なんて特に無防備の塊だろ!? 可愛い系があまり好きじゃないからズボンとか好んでるんだろうけど、夏とか春の短パンから見える生足がエロいったらありゃしない! 視線逸らして無心になるのどんだけ大変か分かってんのか!?」
「は、はぁ!? 知らねぇよそんな事!?」
「そりゃお前らは完全に無自覚だからそう言うけどなぁ! 俺達思春期の男の子はちょっとした事にエロを覚えるくらいの馬鹿なんだよ! しかも銀、お前に至っては制服でもよく動くせいで偶にスカートの中とか見えかけるんだよ! 見てたいけど見てたら殺されるから視線逸らしてるけどなぁ! でも時折スカートの下の太ももが見えてすっげぇエロいって思う時あるんだからな!? あと、園子! お前、俺ん家に泊まった時もお前の風呂上りとか正直に言えばクッソエロいし、そのままこっちに来る時だってある上に時折襟元が緩い服を着ているからそのまま服の下が見えそ――」
散々自身が感じていたあれこれを暴露するハゲ丸。
彼だってまだ中学三年生の男の子だ。園子や銀のような美少女のアレコレに興奮の一つや二つだってするし、それでもなるべく二人に不快感を与えないように努力してきた。皆の前で軽い下ネタだって言わず、場を盛り上げるためにほんの少しの軽い下ネタしか言わないのだって年頃の女の子達に気を使ってたからだ。
だが、その枷が外れれば彼だってこんなもんだ。もうこの際だからと自分がエロいと思った事を全部言ってしまおうかと思い、色々とぶちまけ始めた瞬間だった。
『中止ィ!!』
園子様と銀さんが同時に手元に武器を召喚し、ハゲ丸の鳩尾を思いっきり園子が石突で殴った後に銀が斧の峰の部分で思いっきりハゲ丸を殴り飛ばした。
「ぴぶるちっ!!?」
その連携でハゲ丸は意識を失い、そのまま勇者部室の窓から射出。地面へと落下したが、勇者部室からハゲが飛んでくる事なんてよくある事の一つなので特に誰も気にしない。
そしてハゲ丸を処した園子と銀だったが、散々自分達のアレコレがエロいとか言われてしまったので顔がかなり赤い。
「……と、とりあえず、ズラっちの前でももうちょっとしっかりしよっか。そうだよね、ズラっちも男の子だしね……」
「あ、アタシ等が無防備すぎるんだよな、これ……あいつが何も言ってこないから完全にそこら辺考えてなかった……」
「聞いてる限り、藤丸さんって性欲捨ててるレベルですよね。普通なら勘違いしたりとか我慢できずに押し倒したりとかしてそうなんですけど。というか園子先生のお風呂上がりの件は割と致命傷レベルかと」
「た、多感なお年頃だもんね~……暫くの間、ズラっちの前で寝るのは控えておこうかな……ズラっちのためにも……」
「アタシもスカートの時とかもう少し気を付けるか……」
一応今回ここまで言わせてしまったのは自分達の方に責任があるので、園子と銀はこれ以上彼にお仕置きをすることは無かったとか。
なお、気絶から覚めたハゲ丸は若干スッキリした表情で勇者部室に戻っていったとかなんとか。でも園子と銀に顔を合わせづらかったとかなんとか。
「……ちなみに、わたしの場合はどんなことを?」
「……聞きたいか?」
「あっ、やっぱり結構です」
偶にはハゲを出しておくかぁと最後にハゲにぶちまけてもらいました。なんやかんやでこの二人が一番ハゲとつるんでるからね。ハゲだって一応思春期の男の子なので多少はね?
で、そんな話を書いている間に、まさかのミノさんの満開がゆゆゆいで実装されましたね。この作品でも満開を出した時、ミノさんはわすゆ組って事で船かなーと思って小さい船って事にしましたが、大体合ってる……でいいのかな? 詳しい設定が見たい……
実はこの先にも満開を使う展開があるのですが、そのっちの満開をわすゆ原作版にしてミノさんをそっちに合わせようかなーとか思ってたんですが、公式がミノさんの満開を出すっていう超ファインプレーしてくれたのでミノさんの満開はゆゆゆいの満開っぽく描写します。
それではまた次回。次回は防人組の出番だよ