ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

162 / 184
大変長らくお待たせしました。ちょっと卒業旅行とか最後の長期休みとか研修とかバタバタしてたのでかなり投稿が遅れてしまいましたが、今日より投稿を再開します。

なんかゆゆゆいのショートアニメが放送決定とかしましたね。それに、勇者部五箇条も六箇条に増えてのわゆアニメ化の可能性もまだ消えてませんし。っていうかマジでそろそろ五箇条発表から一年経ちそうなのが……あれ? 経ってる? どうだっけ。

で、そろそろ乃木若葉の章も開幕してから一年半も経過してしまったので……

今回の連続投稿で、乃木若葉の章は完結させます!! というか、実はもう最後まで書きあがっています!!

という事で最後の大団円に向かって、レディーゴー!!


最終決戦に向けて

 これ以上の戦力は例え逆さに振ったとしても存在しない。

 それは風と園子、芽吹をリーダーとした未来の各勇者チームのリーダーが口にした言葉だった。

 神世紀勇者達は元より、防人達も芽吹達で打ち止めな状態だった。他の防人は既に地元へと帰還しており、呼び付ければ来てくれる者達ばかりではあるのだが、防人システムの方が現状四人分しか動かせない状況なので、呼んだとしても戦力には数えられないのだ。

 防人という勇者の量産型が存在しているため、大社は防人は勇者以上の数が揃っているのではないかと踏んでいたのだが、事実はその通りでも動かせやしない。そんな状況だった。

 故に、これ以上の戦力は決して来ることはない。もし、自分達の知らない時代の勇者が参戦したのなら話は別ではあるが、しかし奇跡による新たな戦力は現状、これで打ち止めだ。

 防人を含めた勇者達が二十人以上。それも、半分以上はこの時代の勇者達よりもスペックが高く、バーテックスを撃退しこの世界を取り戻す事に成功した勇者達だ。

 そんな中で防戦一方を続けてしまっては、きっとこの時代でバーテックスからこの世界を取り戻す事は不可能に近い。ならば、攻勢に出なければならない。

 そう判断した大社上層部は、とうとうバーテックスへとこちらから打って出ることを提案し、風達へと伝達した。

 

「……つまり、結界の外にアタシ達が出ていって、九州と関西からバーテックスを完全に排除し、九州と関西を取り戻そうってわけね」

「言っちゃえばこの戦いって陣取りゲームだからね~。徐々に徐々にこっちの陣地を広げるのは間違ってないと思うけど~」

「そうやって気軽に攻め込めない理由があるのよね」

 

 讃州勇者、先代勇者、防人のリーダーである三人は大社の職員から受け取った計画書を見ながら、しかめっ面を浮かべる。

 これが普通の陣取りゲームなら、大社の作戦には賛成だ。防衛が十全にできており、戦艦大和のような弩級の切り札だって倒せる戦力が整っている今、徐々に徐々にこちらの陣地を広げていく事は何も間違ってはいない。

 だがそうとも言いきれないのがこの陣取りゲームだ。

 

「なんやかんやで天の神の事を隠して、天の神への対策も不明なままでこうなっちゃったのはマズいわねぇ。出てきたらマジで詰みじゃない?」

「その時は未来へエスケープ~、が最終手段であるんですけどね~」

「私の強化装束が間に合ったとしても、焼け石に水よね。でも、この作戦を迂闊に蹴る訳にも……」

 

 芽吹が口にした強化装束は、今後行わなければならないであろう壁外調査を円滑に進めるための新たな力だ。

 言うならば、防人の満開だ。

 ただのバーテックス戦であれば、満開勇者が一人増えることは、その分だけ戦闘が楽になり、勝利の確実性が大幅に向上するのだが、相手が天の神では満開勇者が一人二人増えた所で、恐らく勝てない。

 特に、天の神と相対し、実際に戦った園子は特にそれを理解している。アレは、満開勇者がどうこうできる領域ではない。アレは、大満開のような規格外を数人連れてきてようやく互角の戦いができるような規格外だ。

 

「うーん……もうちょっと穏便な計画にできないもんかしら?」

「無理だと思いますよ~。天の神の領土をこっちから突いたら何をされるか~。そもそもこの時点で結構穏便ですし~?」

「それもそうね。天の神が怖いからと言ってずっと防戦しているわけにもいかないわ。私達にだって、私達の生活がある。このまま次の世代まで四国防衛戦なんてやってられないわ」

 

 だからと言ってこの作戦を行わず、防戦に徹するのは神世紀勇者達にとっては中々無理な相談だ。

 神世紀勇者達にも自分達の生活がある。この生活をあと何年も続けるのは不可能だ。

 この時代の戦いに関与した時点で、天の神と戦い勝利しなければならないという条件は、前提として存在してしまっている。

 どの道、天の神とは近い内に戦い、勝利しなければならない。

 

「……一応、やりましょうか。作戦内容はシンプルだし」

「そうですね。作戦内容は確かに攻勢に出る形ではありますがやる事はかなりシンプルですし」

 

 それを考慮し考えた結果、今回は大社の作戦に乗る事にした。

 大社の攻勢作戦は、簡単に言ってしまえば結界を張るための基点の確保と、それの維持だ。

 神世紀勇者と西暦勇者がそれぞれ結界の外へと赴き、地脈が通っている場所に神の力を与えられた無垢なる少女達、勇者を配置し、その勇者達を一度基点とし、結界を拡張する。

 それが今回の作戦だ。

 本来なら巫女の方が成功率は高いのだろうが、現状その大役を任せられるほどの素質を持つ巫女は大社が言うには二人。ギリギリそれができそうなのが二人だ。

 上里ひなた、藤森水都。そして、ギリギリなのが安芸真鈴という球子と杏を見出した少女と、花本美佳という千景の存在を感じ取った少女の二人。つまりは勇者に限りなく近い存在達だけだ。

 安芸真鈴の方は風は出会ったことがあるが、他の二人は未だに出会えた事が無い。そして花本美佳という少女とは三人とも一度も会えていない。どうやら引き籠りになったとかなんとか。

 それともう一人、高嶋を導いた烏丸久美子という女性も、もしも勇者達と同年代であったならばこの作戦の基点として使えたかもしれない女性らしいのだが、彼女は既に巫女の力を失っているため、もう巫女としての仕事はできないらしい。

 ここに神世紀の中では唯一こちらの時代に精通している巫女である亜耶と巫女の素質を兼ね備えている美森が混ざったとしても、数が圧倒的に足りない。

 故に、巫女は結界内に置いて作戦起動のキーとし、実際に動かなければいけない部分は勇者を使うのだとか。

 

「んじゃ、この作戦は引き受けることに決定っと」

「そうですね~。天の神なんて出てこずに終わるのが一番ではありますけども~」

「きっと奴は出てくる。いつ出てきても柔軟に対処するために準備を進めておくべきね」

 

 園子の部屋で作戦会議を終わらせた三人は、天の神戦が発生した時のための準備のために大赦へと向かった……のではなく、まじめな話をして疲れたので、お茶しに行こうという事で近くの喫茶店へと向かったのだった。

 

 

****

 

 

 乃木若葉はこの世界を代表する勇者達を率いるリーダーである。

 彼女達の性格を触り程度にしか知らない者達でも、勇者チームのリーダーは若葉であるべき、と口を揃えて言うだろう。もしもこれが勇者軍団、なんて軍勢を率いるのならばリーダーは杏であるべきだと言われるだろうが、少人数を率いるリーダーとしてなら、若葉以上の適任は居ない。

 しかし、既に勇者のリーダーというのはオンリーワンの称号ではなくなっている。それどころか、最近は勇者の一員として相応しいのか。そんな事をふと考えてしまう。

 

「どうしたんですか、若葉さん。そんな顰め面して」

「お前がンな顔してるとタマ達まで参っちまうんだからもう少し馬鹿みたいに笑えって」

「杏に球子か……いや何、ちょっと、な」

 

 そんな風に顰め面を浮かべながら考えていた若葉の元に訓練終わりの球子と杏がやってきた。普段なら若葉が顰め面を浮かべていようと特に気にはしないのだが、訓練終わりの食事時に若葉がそんなしみったれた表情を浮かべていたら嫌にでも気になってしまう。

 なので話しかけたのだが、その言葉を聞いて二人して溜め息を吐いた。ちょっと重症かもしれない。

 こういう時ひなたが居てくれたらと思わないでもないのだが、今ひなたは大社の大事な用事があるとか何とかで席を外してる。後は千景が居れば彼女を煽って発破をかけてくれるかもしれないが、彼女は今現在高嶋と共に歌野の畑で畑仕事中なので、同じように席を外している。

 棗と雪花も同様なので、今丸亀城に居るのはこの三人だけ。そうなれば必然的に彼女の顰め面をどうにかするのは球子と杏の二人の仕事になる。

 

「で、何悩んでんだ? タマに言ってみ?」

「悩んだら相談、ですよ」

 

 底抜けに明るい感じの二人に思わず表情を緩め、一度お茶を飲んで一息ついてから、実はな。と切り出した。

 

「最近、私達の戦いは大型バーテックスを未来の勇者達に任せ、私達は星屑の相手をするという物だろう?」

「ん、そうだな」

「それが一番勝率高いですからね」

 

 未来の勇者達には本当に感謝している。切り札を使ってようやく。いや、切り札を使っても勝てるか怪しい相手を切り札なんて使わず、封印の儀なんてものでどうにかしてしまっている。

 大社も大社で封印の儀の実装はそろそろだと言ってはいるが、例え実装されたとしてもその上に切り札を重ねなければ、きっとあの巨大バーテックスは倒せない。安全性の確保こそできるが、肝心な火力だけはどうしても据え置きなのだ。

 故に、今の戦い方が一番安定感があり、同時に勝率が高い。それは軍師伊予島のお墨付きなのだが、そこに若葉は不満に近い物を感じていた。

 

「……これは、私達の戦いだ。自称私の子孫である園子達の戦いは、既に終わっているというのに、彼女達は何の躊躇いも無くこの戦に参加してくれている」

「そうだな。タマ達的にはすっげぇありがてぇけどな。あと園子はマジでお前の子孫らしいから諦めろ」

「若葉さんの写真とか勇者御記も発見されたらしいですし」

「そこは一旦触れるな……! シリアスが全部壊れるだろう……!!」

 

 咳払いして一度空気を改めて。

 

「もう一度言うが、これは私達の戦いだ。だと言うのに、未来の勇者達の力を借り、バーテックスを根絶しようとしている……これは、本当にいい事なのだろうか。本当は私達がやらなければならない使命を、未来の勇者達にも背負わせてしまう事は……」

 

 高嶋が誰も知らない内に抱えていた闇も、切り札の後遺症も、他の地で戦っていた勇者達の問題も、全部解決した。唯一バーテックス信仰のみが問題ではあるが、それは大社の圧力により活動を抑えられている。

 後はバーテックスを根絶するのみ。既にいくつものプロセスをクリアし、戦いは最終局面に移っていると言っても過言ではないこの状況。

 だが、これは本来西暦勇者達がやらなければならない事だ。高嶋の問題も、切り札の後遺症も、他の地の勇者の事も。全部、自分達がやらなければならなかったことだ。それを未来の勇者達に手伝ってもらって解決するのは、本当に正しい事なのか。四国の人々の希望をその背に背負った自分達がやっていい事なのか。

 それが、若葉に最近抱えた悩みであった。

 それを聞いた二人は驚いたように目を見開き、顔を合わせ、もう一度若葉と顔を合わせる。

 

「なんだ、若葉。そんな事で悩んでるのか?」

「そんな事ってなぁ……私はこう見えても真剣にだな」

 

 自分達の使命を関係ない者達に背負わせる。そんなの、本当に許されるのか。

 しかし、そんな考えは二人にとって、はっきりと言ってしまえばかなりどうでもいい事だった。

 

「若葉さん。この世にはこんな言葉があります。弱肉強食、勝てば正義、勝てば官軍負ければ賊軍、どんな手を使おうとも最終的に勝てばよかろうなのだーッ!!」

「お前タマの部屋のジョジョ読んだろ」

「面白かったです。まぁ、つまりです。そんな事を気にせずに勝ってしまえばどうでもいいんですよ。逆にそんな変な事考えた結果誰かが死んだら目も当てられませんよ。甘い蜜は吸うべきです」

 

 何ともまぁ利己的な考え方で。

 だが、杏の言う事は確かだ。この戦は負ければ全ての人間が根絶やしにされる生存戦争だ。それに対してわざわざ戦力を減らすなんて愚行を冒して挑む方がどうかしている。

 しかし、しかし。

 それでも、彼女達はこの生存戦争を切り抜け平和を勝ち取った時代の勇者達だ。そんな者達をもう一度戦いに巻き込むことは。

 

「じゃあ若葉さん。もし、私達が自力で天の神を倒したとしましょう。しかしある日、未来に行ってみれば、そこではかつて私達が戦っていたバーテックスと天の神に苦しめられている未来の勇者達が居ました。若葉さんはどうしますか?」

「決まっている。断られても参戦し、絶対に天の神を滅する」

「そういう事ですよ。それが神世紀勇者の皆さんが考えている事です。止めたってあの人達は関わってきますよ」

 

 そう言われると納得せざるを得なかった。

 そのもしもを想像してみるとしよう。天の神を打倒し、平和を勝ち取ってから未来に飛ばされてみれば、そこでは未来の勇者達がバーテックスと戦い苦戦している。それも、自分達が戦えば絶対に勝てる相手に。

 ならば戦うしかあるまい。未来だろうとどこだろうと関係なく、人々を助けるため、勇者仲間である未来の勇者達を救うために。今の若葉のように別の時代の勇者達の力を借りるなんて……と言われようと、何が何でも戦いに混ざって絶対に平和をもう一度勝ち取る。

 例え称賛なんて無くてもいい。礼なんて言われなくてもいい。その末に邪魔者扱いされたっていい。自分達は勇者であるのだから。目の前で人が殺されるところなんて見たくないから。

 その戦いの末に誰もが笑顔になれる平和があるのなら、命を賭して戦うだろう。

 これとほぼ同じ状況なのが、神世紀勇者達だ。

 

「……つまり、だ。私がこうやって考えてもあっちは勝手に関わってくると」

「ついでに言うなら、考えるだけ無駄なので甘い蜜を存分に吸わせてもらいましょう。勿論何かあったら神世紀の皆さんを未来に押し込んででも助けますが、それが無いのならあっちは何を言おうが混ざってきますから。断るよりも受け入れた方が色々な面で楽ですよ」

「礼とかを気にしてるんなら、全部終わったら適当にすりゃ問題ないだろ。丸亀城あげるとかゴールドタワーあげるとか」

「逆に貰っても困るだろそれ……」

「うどん一年分とか」

「最高じゃないか。よし、礼はそれにしておくか」

「貰った所で絶対に腐りますね」

 

 杏の言葉を皮切りに、三人で笑う。

 なんというか、よく考えてみれば考えてもどうしようもなく、受け入れるしかない状況だった。それも、受け入れれば受け入れる程いい方向に進んでいくのなら、受け入れる以外はないだろう。

 それでもあれこれ考えてしまうのなら、礼をしっかりと考えて報酬として最後に渡せば問題なし。

 

「あー……すまんな。私としたことが、要らん世話をかけた」

「気にすんなよ、それぐらい。どーせここまで来たんならどんなこったろうと最後まで付き合うっきゃないだろ?」

「そうですよ。もう一蓮托生の仲なんですから」

「そうだな。何にしても、私達にできる事は未来からの助力を無駄にしないため精一杯を尽くす事。それが未来の勇者達への恩返しにも繋がるのなら、そのために我武者羅になるしかないな。っつか最終的にニート予定だっていうのに、ニートに至るまでの手段を考え始めてどうしろと言うんだ」

「その計画まだ続いてるのかよ……」

「というか、わたし達は大人になったら権力に物言わせて自由にできると思うから、今から考えて損はないと思うよ、タマっち先輩。ちなみにわたしは国立図書館に住む予定です」

「すっげーキリっとした顔で文化の独占を宣言しやがった」

 

 だが、それぐらいポジティブに考えてもバチなんて当たらないだろう。こちとら世界を救う勇者なのだから。世界を一つ救ったのならそれぐらいの我儘は許されるハズだ。

 思わず溜め息を吐く球子だったが、球子も球子で将来は色んな土地を旅して色んな所でキャンプしたりアウトドアな遊びをして、遊んで生きていきたい、なんて思っているので彼女も結構どっこいどっこいだ。

 

「よし。景気づけにどこか行くか。この戦はもう私達の勝ち確ムードだ。多少ハメを外したところで文句なぞ言われんさ!」

「ならカラオケ行くか!」

 

 三人がカラオケに向かい、いつも通りの日常を謳歌し始める。

 だが、着々と、バーテックス……いや、天の神との決着の時は、近づいてきていた。




今回の話は前座。次回から一気に対天の神戦へと話が進んでいきます。

で、話は変えますが、某名前を簡単に出せないウルトラマンコスモスの赤色のモード名の名前と同じ名前が付いているせいでコスモスに風評被害を与えているあのウイルスのせいで延期しているウルトラマンタイガの映画、まだ公開延期のままですね……そろそろウルトラマンZも始まるのに……コスモスに浄化されてこの世から滅されないかな、あのウイルス。

まぁ、明日からはウルトラマンZの放映なので、あまり落ち込まずにいきまっしょい。

ご唱和ください我の名をが好きすぎて頭から離れない今日この頃。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。