ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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前回、どうやって神世紀勇者達が西暦の地に再び戻ってきたのかを書きつつ、満開勇者&強化装束芽吹VS天の神です。

ゆゆゆいの方で銀満開と強化装束芽吹が来たので、銀の満開はゆゆゆいverに変更し、芽吹も当初は素の状態のままで千景砲を担いで走り回ってもらう予定だったものを強化装束を使い空を舞ってもらう事になりました。

で、わすゆ組の満開が本当に全員乗り物で確定してしまったので、ハゲの満開もかなり大幅に変更して乗り物的なものにしています。


絶望到来

 神世紀から西暦へと至る道。それを再構成するのは、容易な事ではない。

 少なくとも高嶋友奈の神性ではそれを行う事は不可能だ。いくら神樹様と同化していた八百万の一柱だったとしても、その神性は少ない方だ。

 だからこそ、様々な神性の力を借りる必要がある。

 そのために必要なのが、巫女という存在だ。神樹様という八百万の集合体である神々の共通の巫女であった少女と、それを集めて溜め込める装置。つまり。

 

「亜耶ちゃんを中心にわたし達勇者と防人が陣の基点となるように立って神様たちを呼び込んで、神性を集める……か。本当にこんなので集まるのかしら?」

『そのための千景砲でもあるんだよ。千景砲は霊的な力を集めて射出する砲台だから、わたしみたいに特定の姿形を持たない神様が留まるには最適な装置なんだよ』

 

 亜耶を中心に高嶋友奈が教えた陣を勇者達を基点として形成。そしてその中心の亜耶が祈る事により、この世界に散っていった八百万の神から力を集める。もっとも、力だけを渡せない神は自らの存在を削る事で力を与えるため、この場に留まるための依り代が必要になる。

 それが、千景砲。ゴールドタワー射出のために小型化され取り外されたソレが今にやって役に立った。

 今も陣の中心では亜耶が膝を付き手を合わせ祝詞を唱え、八百万の神々に祈っている。その祈りを聞き届けた神様たちが徐々に徐々にこの陣へと集まり、千景砲にその身を入れ込んでいる。

 大体、この千景砲が一杯になる程度が必要最低限のラインだ。

 

『友奈。こちらも準備が終わったぞ』

 

 そうして千景砲に力を集めている中、青色の鳥がやってきた。

 その鳥を見た友奈は、あっ! と声を上げる。

 

「あの時の!」

『ん? あぁ、時々空から見ていたが、こうして顔を合わせるのは久しぶりだな。私は……いや、言わない方がいいか。私はただの亡霊だ。天の神の滅亡と、平和になった世界を見守るだけの、な』

 

 やってきた鳥はそれだけ言い、自分の名を語らない。

 だが、この場に居た全員がこの鳥が一体誰なのかを理解した。いや、分からないわけが無かった。

 この鳥は……彼女は、間違いなく乃木若葉だ。今こうして牛鬼となって存在している高嶋友奈の仲間であり、今の園子へと繋がる乃木若葉だ。思わず園子がご先祖様、と声をかけたくなるが、彼女がそれを語らない以上、こちらからそれを指摘するのは野暮という物だ。

 

『友奈、そっちの調子はどうだ? 私は神ではないからよく分からん』

『その時生きてた人達の信仰で半神みたいになってるのに、頑なに神様である事を認めないよね。えっと、こっちの方は……うん、あとちょっと。その時になったら、同化するね』

『分かった』

「えっ、同化って……」

『道を作るのには力がいるから、多分これが終わったら実体を保てないの。だから、復活するまでの間、実体を間借りするだけだよ』

 

 牛鬼の姿がそう告げる高嶋友奈だったが、どうしてかその言葉が嘘に思えて仕方がない。

 だが、嘘を吐く必要もない。故に、友奈はそれ以上何も言わず、心配そうな視線を飛ばすだけでそれ以上の言葉は告げなかった。

 そして、亜耶の祝詞が唱えられる中、いよいよ神性が十分に達したのか、自分達を基点に作った陣が光り始める。その光に包まれた勇者達はいよいよか、と気持ちを引き締める。

 過去に飛べば、そこに居るのは恐らく天の神。それを討伐しない限り、この時代には戻ってこられない。

 それは、あの時心に決めた。絶対に天の神を倒し、またこの時代とあの時代の道を作って見せると。友達を見捨てず、絶対に守り抜いて共に戦ってみせると。

 

『じゃあ、始めるよ。みんな、覚悟はいい?』

 

 高嶋友奈の言葉に勇者も防人も頷く。

 そして、陣の中心の亜耶は高嶋友奈から今だよ、という言葉を受け、合わせていた手をそっと空に向かって広げる。それに続くように地面の光が、千景砲の中の神性が、高嶋友奈一柱に集まっていく。

 神性が集まっていくその現象が、牛鬼の姿を取っていた高嶋友奈に変化を与える。

 光に包まれた牛鬼が、その姿を変える。その姿はまるで大満開の友奈。だが、決定的に違うのは友奈の大満開にあった緑色の部分が全部桜色になっているという事だ。

 

『わたしが、今から空に道を作る。みんなは、その道の中に飛び込んで。きっと、開けていられる時間は凄く短いから』

『道の先は私が案内しよう。だが、私ができるのは道案内と帰り道を作るための友奈を同化して連れていく事だけだ。天の神との戦いは、任せたぞ』

 

 高嶋友奈の肩に青い鳥が止まり、彼女は拳を構えた。

 

『道を殴り開く……!! 神性勇者ぁ……パァンチッッ!!』

 

 そして繰り出される、友奈達の代名詞である勇者パンチ。三百年の時を越えて放たれたそれは、世界の壁という人間では関与できない物へと叩き込まれ、世界の壁に穴をあける。

 新たに作られた世界と世界を繋ぐ道。しかし、その道は開けられた途端に徐々に徐々に小さくなり始める。

 天の神が目敏く新たに開けられた道を見つけ、閉じにかかっているのだ。

 

『後は……お願いね』

『任された』

 

 そして、高嶋友奈の姿が消え、桜色の光になると青い鳥と同化する。

 これで高嶋友奈の仕事は終わった。後は、帰りに同じような事をしてもう一度道を作るだけ。この道の道案内は、青い鳥の仕事だ。

 

『行くぞ! 私に続け!!』

 

 青い鳥が飛び立ち、穴の中へと飛び込んだ。

 後は、勇者達が飛び込むだけ。勇者達は互いに顔を見合わせ、頷き、防人組も千景砲を担ぎ、穴の中へと飛び込んだ。

 

「どうか皆さんに、神樹様のご加護がありますように……!」

 

 亜耶の祈りが後ろから聞こえるとともに、穴が閉じる。

 帰り道が、閉じてしまう。

 だが、一度入ってしまえばこっちの物だ。青い鳥が世界と世界を繋ぐ道を先導し、勇者達を過去へと……いや、新たにできた平行世界へと案内する。

 

「うわっ、ここ凄いわね……」

「今まではこんな所見た事が無いのに……」

 

 平行世界同士を繋ぐ道は、まるで虹色のトンネルだった。目が悪くなりそうだったが、その中はどうしてか飛行が可能で、満開時と同じよう感覚で飛ぼうと思えば簡単に飛行ができる。

 防人組は満開の経験が無いため最初はかなり狼狽えていたが、すぐに芽吹とシズク、夕海子が慣れたため、芽吹が雀を担いで飛んでいる。

 

『さぁ、もうすぐ着くぞ……ん? これは……!?』

 

 平行世界とは言えど、所詮は過去で分岐したかなり近い場所にある平行世界だ。そこに行くまでの時間はかなり少ない。

 だが、その道の途中で青い鳥が羽ばたきを止める。

 それに対して急に止まれなかった友奈が青い鳥の先を行ってしまったが、青い鳥から一メートルも進まない場所で何故か何かに顔面からぶち当たり、硬いものとぶつかった時特有に痛そうな音が響いた。

 

「いったぁ!!? なにこれ!!?」

 

 顔からぶつかった友奈は顔を抑えながら自分がぶち当たったソレを触る。

 それは透明な壁だった。まるで、勇者達の侵入をそれ以上許さないと言わんばかりの、透明な壁。

 

『しまった……天の神め、こちらの動きを予測していたか』

「それって、どういう事なの?」

『世界の間に奴は壁を作ったんだ。勇者が通れないように……そして、この空間に入った勇者を、ここで朽ち果てさせるために』

 

 用意周到、とでも言うべきか。

 例えもう一度勇者達がやってこようと、それを凌げるように。勇者達が何をしようと、この場で朽ち果て死ぬように、平行世界と平行世界の間に壁を作り上げた。

 帰り道は無く、進むべき道も壁により閉ざされている。

 まさかの事態に唖然とする青い鳥だったが、友奈はそんなの関係ないと言わんばかりに拳を握った。

 

「それなら、この壁を壊すだけだよ」

 

 拳を構え、引く。いつもの、勇者パンチの構え。

 それを見た青い鳥は、無茶だと叫びそうになった。叫びそうになったが……だが、それが友奈なのだと、高嶋友奈で慣れているため、何も言わなかった。

 

「わたしは、諦めない!」

 

 拳を叩き込む。

 だが、壁は壊れない。だが、その拳一発で壁が押しやられたのか、壁の向こうにあちらの世界の光景が見えた。

 西暦勇者達が倒れ伏し、今にも天の神の追撃で燃やし殺されそうな光景が。

 

「諦めないで!!」

 

 友奈が壁の向こうの仲間に、そして、後ろに居る仲間達に向かって呼びかけながら、壁を殴る。

 壁に、ヒビが入る。

 神の作り上げた壁に、ヒビが入る。その光景に青い鳥が目を見開くが、こういう時に無茶苦茶をやってのけるのが友奈だ。そう思うと、何でか納得できてしまった。

 

「まだ終わってない! それは、みんなが分かっているはず!」

 

 更にもう一発、叩き込まれた。

 壁が砕け始め、その向こうに道が見える。

 友奈の拳は、ただの拳ではない。仲間達の思いが籠った、優しい拳だ。

 そして、天の神をぶん殴った拳だ。故に、か。彼女の拳には、一つの概念が既に付与されていた。

 それは、神殺し。

 神を殴り、そして撃退に導いた友奈に、神々が既に与えていた天の神由来の物へと特攻となる呪いが天の神を実際に殴り撃退した事により変質した、新たな力。それこそが、神殺し。

 故に、友奈の拳は神をも殺し、神が作った壁程度なら、簡単に壊して見せる。

 

「勇者は、根性!! 根性があれば!!」

 

 そして、三発目が叩き込まれ、壁が崩れる。

 その瞬間、勇者達がその壁の向こう側へと突入し、平行世界へと侵入を果たし。

 

「世界の壁だって、越えられるッ!!」

 

 平行世界へと侵入し、見えたのは天の神と、その天の神が放った火球の数々。

 それを見た瞬間に、勇者達が己の武器を構え、芽吹も己の携帯を取り出し、既に開いておいた画面をタッチする。

 

「そしてこれが!! わたし達の!!」

『満開ッ!!』

 

 友奈の声に応え、勇者達が満開する。

 世界の壁を乗り越えて、高嶋友奈が放った神性が満開の力となり彼女達が抜けてきた道から勇者達の中へと吸い込まれて行く。

 その光景は木の枝の先で咲き誇る花々。神性という力の具現が木となり、その先に満開をした勇者達が花となり、枝の先で咲き誇る。更にその力の奔流が天の神が放った火球を全てかき消し。

 

「讃州中学勇者部!!」

「防人部隊総勢四人!!」

『見参ッ!!』

 

 勇者達は、一度目よりも二度目よりも万全の体勢で天の神と三度、相対した。

 

 

****

 

 

 神世紀の勇者達の到来。その幻想的な光景は、西暦勇者達が唖然とし、呆然とするほどだった。

 満開勇者。この時代で一度も満開した事が無い勇者までもが満開し、飛んでいる。

 友奈は一対の巨大な拳を握り、美森は弩級の戦艦の上に立ち、風は巨大な大剣を携え、樹は大量のワイヤーを巡らせ、夏凜は四本の腕で握った二対の双剣を構え、園子は槍を生やした船の上で笑い、銀は四脚の獣のような装置の上で腕を組み、藤丸は三人の旧友達に合わせるように鏡張りの衛星とも船とも呼べる物に乗る。

 そして、芽吹も強化装束を身に纏い、二本の銃剣が変化した超巨大なライフルをその手に持っている。

 

「おっとっと。えっと、みんな大丈夫!? だいじょばないなら下がっていいよ!?」

「うわ、ひっでぇ怪我だな。本当に大丈夫か?」

「ちょっと天の神に喧嘩を売りに来ましたわ。全員、生きているようで何よりですわ」

 

強化装束を持たない雀、シズク、夕海子はこれから天の神との戦いで他の事に集中なんてできないであろう勇者達と芽吹のために西暦勇者達の救出に走る。

 西暦勇者達は三人の手で肩を貸され、なんとか一か所に集まり天の神と相対する神世紀勇者達を見上げる。

 

「これが、満開か……」

「園ねぇ達の、全力……」

 

 切り札とは次元が違うとすら言える、神世紀勇者達の切り札。それを携え構える勇者達がが、その表情に一切の余裕はない。

 相手は天の神。満開をしていても勝てる要素など、何一つない。

 それでも、万に一つの勝ちを積みに行く。そのために、たった一度きりの満開を無駄にはしない。

 

「さぁて……美味しい所を友奈に取られちゃったけど、こういう所は名誉部長ことアタシが決めるわ! 讃州中学勇者部!! 目標はあのドぐされ神野郎!! ぶっ潰して明日を掴み取るわよ!!」

『了解ッ!!』

 

 風の命令を聞いた勇者達が、天の神へと向かって飛び立つ。

 それを迎撃しようと、天の神は先ほどまでとは比べ物にならないほどの物量で勇者達を潰さんと攻撃を仕掛けてくる。

 火球が先ほどとほぼ同等の数放たれ、更にその間からスコーピオンの尻尾と爆弾と水が飛び交い、まるで弾幕のように空を覆いつくす。

 それを見た勇者達は一度突っ込むのを止め、一度後ろに向かって下がる。そんな中で一歩だけ前に出たのは、藤丸だった。

 

「一発たりともお前の攻撃は通さねぇ!! 意地があるんだよ、男の子にはなぁ!!」

 

 藤丸が片手を上げる。それに連動し、彼が乗っている鏡張りの船とも衛星とも言えるものが彼の足場となっている神獣鏡を残して分離する。

 その分離した鏡は、小型の鏡達。それを腕を振り下ろすだけで全て動かし、物量で押してきた天の神に対して物量での防御を行う。

 一枚一枚の鏡が火球を、尻尾を、爆弾を、水を受け止め、跳ね返し、空中で攻撃同士を同士討ちさせて爆散させていく。それを確認した勇者達が藤丸の防御に全ての攻撃を任せ、一気に天の神へと肉薄する。

 しかし、天の神も一枚岩ではない。勇者達の進撃を止めようと、自身の前に反射板を置き、それで勇者達を完全に封じ込めようとする。

 だが。

 

「芽吹さん!」

「合わせるわ!」

『一斉射撃ッ!!』

 

 美森の戦艦からの一斉射撃と芽吹の持つ二丁のライフルからの砲撃により、反射板が全て意味をなさずに砕かれ、天の神に攻撃が直撃して爆発する。

 更にその道を友奈達が突っ切る。

 ならば近接組を止めようと、今度は少しでも壁になるようにと星屑を大量に召喚し、自分を覆い隠すように配置する。

 

「邪魔を、しないで!!」

 

 それならば、全てを潰すだけ。

 樹の超大量のワイヤーが空中に展開され、全ての星屑を一気に纏めて捕らえ、力づくで握り潰して消滅させる。

 ならばと今度は星座型のバーテックスを配置する。

 が。

 

「それごと貫くッ!!」

 

 園子が船を捨て、飛び立つ。直後にその手に召還した槍に、船の側面についていた大量の槍が集まり、変形し、一本の巨大な槍となる。

 それを突き出し、全力で突進。それをバーテックス如きが防げるわけもなく、天の神に槍が突き刺さる。

 が、貫けない。

 即座に槍を引き抜き退く園子だが、それと入れ替わるように風、夏凜、銀の三人が天の神へと得物を叩きつける。

 

「ぶった斬るッ!!」

「完成型勇者ナメんなああああああああ!!」

「質量に速度と威力を掛け算で最大威力だああああああああああ!!」

 

 風の大剣と夏凜の四本の双剣が叩き込まれ、銀の四脚の装置に爪代わりに生えている斧を全て叩き込む。

 が、砕けない。

 ならば。

 

『友奈ッ!!』

 

 最後は、友奈だ。

 三人も同時に退き、入れ替わりで友奈が天の神へと肉薄する。

 天の神に、防ぐための手段はない。

 

「満開!! 勇者ァ!! パァァァァァァンチッ!!」

 

 そして、勇者パンチが。神殺しの拳が、天の神に炸裂した。

 

 

****

 

 

 勝った。

 そんな確信が、勇者達にはあった。友奈ですら、自身の拳に神殺しの力が宿っていると自覚していないにも関わらず、自分の拳は天の神を殴り殺したと確信した。

 だが、その確信は直後に感じた手応えによって無に帰した。

 天の神が妖しく光り、風圧なのか、威圧なのか、それとも気迫なのか分からない力で友奈と、そしてその後ろで待機していた風、夏凜、銀、園子の体を拭き飛ばし、更に樹までもを巻き込み、六人が地面に叩きつけられる……前に、藤丸が全ての小型鏡を制御し六人を受け止め、失った前衛を補うように美森と芽吹が前に出て構える。

 

「一撃で駄目なら何発でも叩き込むだけよ!」

「わたしだって、もう勇者なのよ!」

 

 叫び、砲門とライフルからビームを放つ。

 だが、そのビームはほぼチャージ無しで放たれたビームによっていとも容易くかき消され、美森と芽吹に迫る。

 

「通さねぇっつってんだろ!!」

 

 だがその後ろに居た藤丸が小型鏡を二人の前に配置し、ビームを鏡の屈折により分散と同時に反射し、天の神に叩き込む。

 が、天の神は跳ね返されたビームをキャンサーの反射板でいとも簡単に反射仕返し、藤丸の大量の鏡と反射板の反射合戦となる。その間に満開勇者達が体勢を立て直し、同時に嫌な予感に従い地面の西暦勇者達と防人を回収し、その場を急いで離れる。

 

「よく避難してくれた……! すまんが……限界、だ!!」

 

 そして、とうとうビームが鏡を割った。

 その均衡の崩れにより藤丸一人に殺到するビーム。それを精霊バリアで防ぐものの、物凄い勢いで満開を維持するためのエネルギーが減っていくのを感じる。

 だが、殺到して一秒後には既にビームの弾幕の中からは離脱できている。できているが、その一秒でかなりのエネルギーを持って行かれた。

 

「くっ……! あんにゃろう、俺たちの時よりもパワーアップしてねぇか!?」

「かもしれないね。むしろ、今が全盛期って可能性も大いにあるよ」

「芽吹も加えた満開八人でこれかよ……! あん時から分かっちゃいたが、やっぱ次元が違うな……!」

「でも、私達に退却は許されないわ。不退転で戦うしかない!」

 

 後退してきた藤丸に先代勇者達が並び立つ。そして天の神が追撃にと放ってきた火球、爆弾、尻尾を見て顔を合わせ、アイコンタクトでやる事を伝えあうと、藤丸が鏡を手元に手繰り寄せ、それを展開する。

 数こそ減ったが、その程度なら満開エネルギーの消費で補充できる。故に、即座に補充し、美森の前に鏡を配置する。

 

「即席のファイナルメテオール!! スペシウム・リダブライザーだ!!」

「国防砲! 撃てぇ!!」

「突風を起こすよ!!」

「アタシの魂の炎、喰らいやがれ!!」

 

 一人で駄目なら二人。いや、四人でかかればいい。

 それを体現した藤丸の鏡で作り上げたファイナルメテオール、スペシウム・リダブライザーを参考にした遠距離攻撃の反射増幅装置。その中に美森が全力の砲撃を叩き込み、園子が槍で起こした風を叩き込み、銀が四脚全ての斧から放った炎を叩き込み、それらを反射し混ぜ合わせ、増幅させてから拡散させて放つ。

 その拡散合体攻撃により迫ってきていた攻撃の数々が一瞬にして相殺され、爆散する。

 

『収束!!』

 

 攻撃を相殺したのなら、あとはぶつけるだけ。

 藤丸が鏡の反射を調整し、極太の砲撃を作り出し、それを天上の神へと叩き込む。

 普通のバーテックスなら百度死んでも足りないほどの一撃。藤丸の鏡という合体増幅装置を経由したその一撃はそのまま天の神を砕く……筈だった。

 天の神はその合体攻撃を受けても傷らしい傷を負わず、むしろ拡散攻撃が無くなったのを見て水球やタコ足を束ねたドリル攻撃を繰り出してくる。

 

「これも効かねぇのかよ!!」

「なんつーインチキ!」

 

 四人でも、駄目だった。

 なら。

 

「藤丸! こっちの攻撃も混ぜなさい!!」

「千景砲、発射準備オーケーだ!!」

 

 防人組も混ぜてしまえばいい。

 芽吹が四人の横に並び、更に地上から千景砲を担いで構える防人組三人の声が響く。

 それを見た藤丸が頷き、更に鏡を変形。合計五つの攻撃を全て纏めて増幅させて反射するための内部機構を作り上げる。

 

「もう一度よ!!」

「今度こそ!!」

「おっ死ねやッ!!」

「最大出力よ!!」

「千景砲、発射ですわ!!」

「これ重いしすっごい勢いだからあんまり使いたくないのにぃ!!」

 

 そして鏡の中に七人の攻撃が吸い込まれ、中で反射屈折し増幅され、一度拡散攻撃として放たれ天の神の攻撃を全て相殺してから天の神へと攻撃が収束され、直撃する。

 だが、無傷。

 一切動じている気がしない。

 

「嘘だろ!? 個々の攻撃を何倍にも増幅してるってのに!!」

 

 そのあまりの頑丈さに藤丸が驚く。

 天の神の力の強大さ。それを思い知っているつもりだったが、まさか満開勇者達の攻撃と千景砲の一撃を合わせても届かないとは思わなかった。

 歯噛みするが、攻撃中の隙を縫って天の神が嘲笑うかのように今までの攻撃を全て混ぜて空を埋め尽くして攻撃してくる。

 

「拡散させる!!」

 

 だが、攻撃が来たなら拡散させればいいだけ。

 即座に鏡の中に反射を調整し、束ねていた攻撃を拡散させる。

 これで攻撃は相殺できる……はずだった。今までは相殺できていたはずなのに、拡散した攻撃で相手の攻撃は一切止まらずにこっちへ迫ってくる。

 

「なっ!? だったら束ねる!!」

 

 ならばと束ねた攻撃でそれを相殺しようとするが、束ねてもダメ。

 満開勇者五人に加え千景砲の一撃を混ぜ合わせ増幅させた一撃でも、天の神の大雑把な攻撃の一部にすら届いていない。

 

「冗談だろ!?」

「私達の攻撃があんな簡単に!?」

「言ってる場合じゃないよ! ズラっちにある程度任せてこっちはこっちで対処しないと!!」

 

 信じたくない光景を見た銀と美森が声を出すが、それを思考の端に追いやり今を優先した園子が攻撃を止めて飛び立つ。それを見てから美森達も飛び立ち、地上の防人組は芽吹が回収して空へと上がる。

 

「くっ、追尾してきやがる……!!」

「待ってろ銀! そっちを助け――」

「駄目だよズラっち! そっちにも攻撃が!」

「いや、この程度なら防いで……って、鏡が割れっ――ぐおおおおおおおおおっ!!?」

「ズラ!!? このっ、よくも――げっ、しまっ、ぐうううううう!!」

「二人とも!? 助けに行かないと――きゃあっ!!?」

「そ、そんな……満開でも逃げ切れないなんてっ……このっ、しつこっ……うわわわわわわわわっ!!?」

 

 仲間を守る事に意識を割いた藤丸が防御のための手札を使いきり被弾し、銀もそんな藤丸に気を取られ被弾。更に美森までもが被弾し、園子だけが何とか攻撃を攻撃で弾きながら空中をまるでサーカスのように飛び回る。

 だが、それにも限界が来てしまい、園子がビームで撃ち抜かれる。

 精霊バリアがあるため、死んではいない。

 死んではいないが、四人の満開がこの攻撃で解けてしまい、地面に叩きつけられる。

 

「みんな! 天の神め、よくもっ!!」

「駄目だよメブ! ここで反撃しちゃうと!!」

「チッ! おい盾貸せ!! オレが防ぐッ!!」

「いえ、これはそもそも防いではいけませんわ! 全部避けないとこちらが……あっ」

 

 そして、芽吹も攻撃に被弾し、強化装束が解除されながら四人一緒に地面に叩きつけられた。しかし、雀がかなり無理矢理芽吹の体を動かしたおかげか、被弾こそしたものの怪我はかなり少なく、地面にたたきつけられた際も雀がシズクから盾を奪って何とか衝撃を減らす工夫をしたため、気絶こそしたものの特に問題は無かった。 

 だが、これで満開勇者とそれに匹敵すると言っても過言ではない芽吹が落とされた。

 唐突に戦力が半分以下となってしまったが、それでも勇者達は諦めない。

 

「みんなが抜けた穴は!」

「あたし達でなんとかするっての!」

「遠距離で駄目なら突っ込むしかないって事よ!」

「わたし、中距離専門なんだけど……」

 

 約一名がボヤキながらも、攻撃の中へと勇猛果敢に潜り込む。

 既に西暦勇者は墜落した仲間達の救出へと向かっている。ならば後方は任せて前に進むしかない。日和って下がってしまっては、天の神には勝てない。

 故に、攻撃を拳で、剣で、ワイヤーで防ぎ、無理無理に前へ前へと進んでいく。

 しかし、防御役が前に居ないせいで攻撃がかなり激しく、弾き防ぐだけではどうしても手数が不足し、近づけない。

 

「こんな物量、流石に……って、まずった!!?」

「やっば……囲まれちった……精霊バリア、持ってくれるかしら……」

「だから前に出たくなかったんだけどなぁ……」

 

 それでも近づいて行った勇者達だったが、それが罠だと気が付いたのは夏凜、風、樹の三人が三百六十度を攻撃で囲まれた時。

 降参、と言わんばかりに両手を上げた風と、同じように肩を落とす樹。諦めまいと視線を巡らせ、自分達の力では突破不可能だと思い知った夏凜が、わずかに見える隙間から友奈に向かって親指を立てる。

 その瞬間、三人に殺到する攻撃。解除される満開。精霊バリアのおかげで何とか無事なようだが、それでももう彼女達は空を飛べないため、満開勇者が必要なこの戦場では前に出る事はできないだろう。

 だが、友奈が居る。

 神殺しを携えた友奈が。

 

「だと、してもッ!! みんなが開いたこの道を、無駄にはしないッ!!」

 

 攻撃と攻撃の合間の狭い道を掻い潜り、友奈が天の神へ向かって突っ込む。

 潜り抜け、潜り抜け、無限にも思える物量を潜り抜けた先に、ようやく見つける。

 天の神の本体を。

 その天の神が待っていたと言わんばかりにチャージしていたビームを。

 

「あっ、その……インファイターにそれは反則だってわたしは思うんですけどぉ……そこら辺どうなんで――」

 

 あまりの絶望的な光景に表情を強張らせて抗議をしたが、次の瞬間に友奈の視界は真っ白に染まった。

 そのビームは地を焼き、友奈を地面に叩き付け満開を解除させる。

 これで、天の神に勝つための手札は、無くなった。

 あの神世紀勇者全員の満開ですら、歯が立たず。

 勇者達は、敗北した。




実はこの作品、生きている事自体がイレギュラーな銀と、とある事以外は全て公式から公開されている情報のみを使用して書くという事を前提に書いているので、うたのん、せっちゃん、なっちが切り札を使わないのは公式で情報が公開されていないからこっちが下手に出せないという裏設定があったり。

なので、今後うたのん、せっちゃん、なっちの切り札が公開されたら今まで三人が切り札を使わずに温存している場面を三人も切り札を使い戦う場面に差し替えると思います。

というか、うたのんがゆゆゆいで割り振られてる精霊は覚なので、純粋な戦闘力強化とは考えにくいという事は、うたのんを強化するんじゃなくてうたのんのサポートをするのが一番相性がいい……とか考えていてうたのんの戦闘センスを高めに設定しているっていう裏設定もあったのですが、うたのんの切り札を出すとせっちゃんとなっちの分の切り札も考えないといけないので出せませんでした。
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