ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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どうもどうも。今回はドッペルゲンガーこと原作側のキャラとのコラボです。

神世紀側ではなく西暦側での話となりますが、色々とギャグもシリアスも詰め込んだ結果二万文字以上に。西暦側の時間軸は上巻の壁外調査前辺り。

では、頭のネジが外れ頭勇者部となった西暦組と原作組のコラボをどうぞ。


ドッペルゲンガーの集会所再び

 神となった高嶋友奈が己の暇潰しと愉悦のために世界の壁をぶっ壊して平行世界の自分とこんにちわする事件が起きたのは覚えているだろうか。

 あの事件を高嶋友奈が起こした際、彼女は言う程神の力を行使はしておらず、結構簡単に平行世界との垣根をぶっ壊して見せた。その結果は勇者という特別な存在とも言える人物たちのみが分裂している奇妙な世界が構成される、という事象に落ち着いたのだが、その事件が示す通り、案外平行世界同士の壁を壊す事は神からしてみれば結構容易い事なのである。

 最近になってトラックに轢かれたら異世界に行く現象が無駄に信じられたせいでそういった概念を込めて神が平行世界の壁をパンチしたら案外平行世界への道は簡単に開けるようになっている。

 つまり、だ。現人神……とはちょっと違うが、神樹様に取り込まれた事で神となった神様っぽくはあるが人間っぽくもあるよく分からない存在である高嶋友奈にできる事なら、他の神でも結構簡単にできてしまう、という事なのである。

 

「……あら? 何故か急に神託が」

 

 そのためこちらからではなくあちら側から勝手にこちらの世界に接続され、あのドッペルゲンガー現象が発生する、という事が容易に起こり得るかもしれないのである。

 神樹様が四六時中花弁を撒き散らし、最初こそ神聖視されていたが、そろそろ街中に舞い散る花弁の量が馬鹿にならないので神樹様も自重を始めた今日この頃、唐突にひなたが神託を受け取った。

 授業の間のお昼休み。この世界で頑張って勉強を進めておけば元の世界に戻った時にちょっと早めに自分達の理想の生活を体現する事が可能なのではと思い普通に授業を受けていた西暦勇者八人+巫女ンビであったが、最近はめっきり少なくなった神樹様からの神託に勇者達が首を傾げながらひなたの方を向いた。

 

「ん? どうしたひなた。防衛戦でも開始になったか?」

 

 今は絶賛、神様主催のドキッ☆勇者だらけのチキチキ陣取り合戦~ポロリはないよ~の最中なので神託から疑似バーテックス軍の香川侵攻かと思い、仕方ないと重い腰を上げながら西暦勇者達が携帯を手に取ったのだが、どうやらひなたはそうじゃないと答えた。

 

「いえ、そうじゃないんです。なんだか不思議な神託で……」

「ストレンジな? そう言えばみーちゃんは神託を受けてないのね」

「あっ、言われると確かに……ひなたさんにだけ神託が行くのって結構珍しいですね」

「えぇ、確かにそうなんですけど……あー、これってそういう……? そう言えば園子さんがそんな事もあったと……あぁ、なるほど」

「なんかひなたが一人で納得してるんだが」

 

 神託というのは案外不便なもので、巫女達の脳内に送られる神託というのは紙芝居のような物となっている。一枚の絵から何が起こるのかを把握し、それを巫女が言語化して伝えると言うのが神託の一連の流れだ。

 そのため複雑な事柄だと少し理解には時間が必要になってしまう。かつて水都がカーナビとなった時のように道を示すだけなら数秒もあれば理解はできるのだが、複雑怪奇な神託は受け取ってから解釈するまでに時間がかかる。今回はその例だったようで、ひなたは首を傾げて頭のイメージを何とか理解し、言語化に努める。

 そして一頻り納得し、理解したひなたはどんな神託が来たのかと構える西暦勇者達に神託の内容を伝えた。

 

「どうやら平行世界の神様が面白半分で平行世界の壁を壊してしまったらしく、今現在わたし達……えっと、四国外出身の方々を除いたわたし達が分裂して丸亀城に居るそうなので覚悟の準備をしておいてください、だそうです」

『まるでさぱらん』

 

 さっぱり分からん、略してさぱらん。

 

「どうやら前に、園子さん達は平行世界の自分とこんにちわした事があったらしいんです。それが今回はわたし達の身に起きていると。なのでそれを修復するから一日ほど我慢してくれ、だそうです」

 

 それがひなたが受け取った神託の内容だった。

 分かる者にはすぐに分かるのだが、平行世界と世界がいい感じに合体してしまい、勇者達が現在平行世界とこの世界分で分裂してしまっている状態にあるのだ。

 つまり、ドッペルゲンガー事変西暦verが急に開催決定の運びとなってしまったのである。

 だがそれを急に言われた所でどうしたらいいのかさぱらん。

 

「我慢してくれって言われてもな……」

「ちなみにその弊害か、神世紀側には本日中は遊びに行けないそうなのでご注意を」

「えー。折角今日はしずくとラーメン探求in神世紀をする予定だったのに」

「あちら側にせめて今日はドタキャンのメッセージを送れない物なのか……」

「あっ、どうやらNARUKOの方はいつも通り使えるように取り計らってくれたみたいですよ」

「ご都合展開過ぎない……?」

「でも連絡できないよりかはいいんじゃないですか? あっ、樹ちゃんからメッセージだ」

 

 という事で、西暦側から代表して若葉が風に向かって今日の部活というか、明日まではこういう事情があるので神世紀には行けないと連絡を一つ入れてから、一先ず先に食事だけしてしまおうと言う事で、目の前のうどんorそばorラーメンorソーキそばをとっとと食べ終え、十人全員で教室の方へと向かった。

 急にあちらに遭遇して何か言われるよりかはこちらから先に接触してしまえ、という理論で恐らく四国組が居るであろう丸亀城の教室の中を覗いてみた。

 すると、居た。何やら困惑して言い合いをしているもう一組の四国勢が。それを見て、知っていたには知っていたがやはり目の前の光景が有り得ないので全員が全員、ここにもあそこに居る本人が居るよね? と確認した後にもう一度中を覗いて四国勢が居るのを見て。

 

「違和感凄いな……自分で自分を見るなんて……」

「私が私を見つめてました」

「なんで? なんで?」

「ふーたりいる」

「はいそこ歌わない」

 

 千景、杏、雪花の順でふざけたら球子からツッコミが来た。心がぴょんぴょんしていた三人はとりあえず自重し、とりあえずどうするかを若葉に任せる。

 全てを任された若葉はどうしようか首を傾げ、何故か携帯を操作すると、唐突に全員の携帯が震えた。

 西暦組で構成されたグループに、今から五個後のメッセージを初手のアクションにする、と若葉からメッセージが来ていた。まさかの安価形式である。これには勇者も巫女も悪乗りしないわけがなく、一瞬でメッセージが九人分届いた。

 

『普通にこんにちわする』

『乃木さんを放り投げる』

『1680万色に発光してT〇N〇INと叫びながらNIGHT OF FIREを流して首を回しながら突撃する』

『とりあえず拉致して海の良さを教えるために海に放り投げる』

『対面の時間だゴルァ!! と叫びながら某放送室にカチコミをかける画像みたいに突撃する』

『若葉ちゃんを攫って私の部屋に監禁する』

『そばを流し込む』

『ラーメンを流し込む』

『今から諏訪に行ってうたのんを拉致してわたしの部屋に監禁する』

 

 上から高嶋、千景、杏、棗、球子、ひなた、歌野、雪花、水都である。こいつらマジでフリーダムすぎる。高嶋の普通の反応に思わず涙が出る。というかせめて現実的にできる事を書いて欲しかった。なんだ1670万色に発光しながらって。やれるもんならやってみろよ。あと欲望解放勢はもっと欲望を隠せ。その手があったかって顔すんじゃねぇよ白いのと緋色の。

 心の中で一頻りツッコミを入れた若葉はメッセージで『素敵な回答ありがとう。頼むから友奈以外全員一度死んでくれ』と返事をし、高嶋を除く全員から『は? キレそう』と返事が返ってきたところで懐からサングラスを全員分取り出し、配布。それを着けた所で球子の言葉を決行する事となった。

 

「平行世界の自分と対面の時間だゴルァァァッ!!」

 

 若葉、全力で叫びながらドアを蹴破り乱入。事情を何も知らない人からしてみたら完全に頭がイカれた人間の所業である。

 

「な、なんだ!?」

「わ、若葉ちゃん!? ま、まさか本当に二人に!?」

「というか若葉ってあんなことする奴じゃないだろ!?」

 

 あちらの世界の若葉、高嶋、球子がすぐに反応して言葉を返すが、その直後に今度は若葉の後ろから1680万色に発光するカカポのマスクを被った西暦勇者&巫女ンビが首を回しながらNIGHT OF FIREを流して突入してきた。

 これには思わず若葉もびっくり。

 

「ふ、不審者……!?」

「意味わからないです……」

「平行世界のわたし達って一体……」

 

 まさか1680万色に発光するゲーミングカカポの覆面を被って突撃してくる馬鹿が居るなんて……というか、間違いなくあの中に平行世界の自分達が居る事を察したひなた(平行)はドン引きしている。

 そりゃあ一応平行世界の同一人物ではあるが初対面の人間が急にグラサンをかけてドアを蹴破ったと思ったらその後ろからゲーミングカカポが突っ込んで来たら誰だって驚きながらドン引きするだろう。

 さて、初対面も済んだところで挨拶と行こう。

 

「初めましてだな、平行世界の私達。私は乃木若葉だ。御覧の通り、勇者だ」

「いや、どこがだ?」

 

 若葉が若葉(平行)から辛辣なツッコミをくらう。

 

「いやいや、赤い軍服着てヘルメットとマスク着けた真っ赤な大佐が同じような事を言うよりかはよっぽどそれっぽいだろ」

「すまんが私は急に教室のドアを蹴破って突っ込んでくる輩を勇者とは認めたくないぞ」

「認めるんだ私よ。私は乃木若葉なんだ。誰が何と言おうと乃木若葉なんだ……!!」

「本当にこれが平行世界の私なのか……? い、いかん、頭痛が……」

 

 初手から頭勇者部全開な若葉に若葉(平行)が思わず頭を抱える。そりゃあ、あんなふざけたことをしでかす輩が平行世界の自分だなんて言われたら同じ顔をしていても疑いたくなるだろう。

 これで作画の一つでも違えば若葉は自分の事を乃木若葉と思い込んでいる一般乃木若葉としてネタになったかもしれないが、残念ながら彼女は名実ともに乃木若葉なのである。自分の事を乃木若葉と思い込んでいる一般乃木若葉ではないのである。

 

「え、えっと……そのインコの覆面付けてるのってわたし、なんだよね……?」

「うん、そうだよ! 初めまして! 早速だけど組手しない?」

「いや、しないけど……」

「そっかぁ……」

「そ、そんなに露骨にがっかりしなくても」

 

 そして一番頭勇者部化の汚染が軽い高嶋も高嶋で初手から組手に誘い相手の顔面を殴ろうとしている。いつから友奈はバーサーカーの代名詞となったのだろうか。

 露骨に落ち込む高嶋に流石のコミュ力モンスター高嶋(平行)もどうしたらいいのかよく分からない模様。そりゃそうだ。

 

「私は……認めないわ。あなたみたいな人が、私なんて……」

「認めてしまいなさい。この私はこうなのよ」

「そうですよ。認めてしまえば楽ですよ」

「頭空っぽにして何も考えずにネタに走るのは気持ちいいわよ」

「あの、お願いですからそのカカポマスク付けた状態で肩組んで首を回しながらこっちににじり寄ってくるのやめてくれませんか……?」

「分かりました! そこの四人のカカポ、カモン!」

「やめろって言ってんのに増やすんじゃないわよ……!!」

「さぁネタに走ってカカポマスクを被りなさい、私。このカカポ六連星に混ざるのよ」

「死んでもお断りよ!!」

「というかそこの四人は一体誰なんですか!?」

『TI〇TI〇』

「本気で鏖殺されたいの……!?」

 

 千景(平行)、ガチギレ。そして杏はカカポ六連星の圧に完全に引いてしまっている。そりゃそうだ。

 杏はまさか平行世界の自分がこうもビビりというか扱いやすいと言うか弱気と言うか、そんな物だとは思っても居なかったので完全におちょくっているというかなんというか。止めてと言われてからカカポを増やして首を回す始末である。

 そして呼ばれた四人のカカポこと歌野、水都、棗、雪花は何か聞かれたらT〇NT〇Nと答えるだけの機械となり肩を組み、六人で千景(平行)と杏(平行)を囲み首を回している。一見したらただのホラー映像である。しかもカカポマスクは1680万色に発光しているのだから目に悪い。

 

「……なぁ、タマはこの惨状をどうしたらいいんだ?」

「知らね。カカポマスクいる? 首が回るぞ」

「死んでもいらん」

 

 そしてダブル球子はどちらかと言えば苦労人ポジションなのでその光景を見て呆然としていた。カカポマスクは拒否られた。

 

「えっと……一応神託でどういう状況下は聞いていましたが……あの、本当に平行世界のわたし達、なんですよね?」

「そうですよ。それにしてもそっちの生真面目若葉ちゃんも可愛いですね。襲っていいですか?」

「お、襲っ……!? 駄目ですよ! 若葉ちゃんはわたしのなんです!!」

「あらら、残念。正直ダブル若葉ちゃんでハーレムプレイして二人にわたしの子供を孕んでもらって最高のハーレムを構築するのもありだと思っていたんですけど。というか考えるだけでテンション上がりますね」

「ごめんなさい神樹様……! 今猛烈にこのわたしを殺したい気分で一杯です……!!」

 

 カカポマスク着用状態で1680万色にマスクを発光させながら首を回すひなたと、そんなひなたに殺意が沸いたひなた(平行)。そりゃあ初対面でそんな異常性癖を自分の顔で語られたら殺意の一つも沸くだろう。

 自分の事を自分の事と認めたくないのが一人、なんか急に傷つかれてどうしたらいいのか分からないのが一人、ガチギレ一人、ドン引き一人、困惑一人、殺意一人という何ともまぁ濃い初対面となったが、

 

「さて、いい感じに自己紹介ができたところで」

「お前ホントいい加減にしろよ。なぁ、乃木若葉を名乗る以上そろそろいい加減にしておけよお前」

「この場に同一人物が居ないそこのカカポマスク四人組も自己紹介をしたらどうだ?」

 

 約一名がガチギレモードに入ろうとしているが、それを無視して若葉がこの場に同一人物が居ないカカポマスク四人衆に声をかける。

 暇だったので1680万色にマスクを発光させながら助演男優賞の例の踊りを延々と繰り返えしていたカカポマスク達だったが、声をかけられたカカポマスク四人衆はそういうのなら……とカカポマスクを外し顔を見せる。しかし、平行世界の若葉達は彼女達の顔を見た事が無いので急に顔を晒されてもピンと来ず首を傾げる。

 

「あら? わたし達の事はまだ知らないのね。なら名乗らせてもらうわ! わたしは農業王こと白鳥歌野!」

「うたのんの所で巫女をしていた藤森水都です。人呼んで……特にありません!」

「古波蔵棗だ。海の事ならわたしに任せろ」

「そしてこのあたしが四国内ラーメン布教委員会会長こと秋原雪花よ。ラーメンこそが志向だと思っているわ」

「通称敗北者ね」

「敗北者ァ……? 取り消せよ今の言葉ぁ……!!」

「ラーメンは時代の敗北者じゃけぇ……!!」

「そばこそが時代の敗北者じゃけぇ……!!」

『敗北者ァ……? 取り消せよ今の言葉ぁ……!!』

「落ち着け三人とも。ソーキそばこそが勝者だ」

『うるさい敗北者』

「はぁ、はぁ……敗北者……?」

 

 深刻なツッコミ不足である。

 ノンストップでボケ倒す四国外組に口を挟むことすらできない平行世界組。しかし、若葉のみが歌野の名前を聞き、歌野、歌野……と何度か彼女の名前を反復して呼び、そして自分の記憶の中にあった一つの名前と彼女の名前を合致させた。

 ちなみに暇になった若葉を除く四国組は視界外でぴえんのマスクを被ってキレッキレのダンスをしている。最近千景が爆笑しながらやっていたホラーゲームの影響だ。

 

「白鳥歌野ってまさか、諏訪の勇者の白鳥さんか!?」

「え? えぇ、そうよ。諏訪の勇者こと白鳥歌野よ。そばという時代の勝者を崇める者よ」

『そばは敗北者じゃけぇ』

「はぁ……はぁ……敗北者……? 取り消せよ、今の言葉……!!」

『ゴミ山大将敗北者』

「そばはこの時代を築き上げた日本を代表する料理だ!! 馬鹿にすんじゃねぇ!!」

 

 自己紹介をしてなおボケ倒すのを止めない四国外組。というか普段はどちらかと言えばツッコミ寄りな棗がボケに混ざってふざけ倒している辺り、もう本気でストッパーが存在していない事が伺える。

 どこからか銃剣を取り出し今にも発砲せんとする歌野だったが、彼女が諏訪の勇者である白鳥歌野である事を確認した若葉(平行)は呆然としている。

 

「そ、そんな馬鹿な……諏訪はあの時、もう持たないと……!!」

 

 歌野が生きて目の前に立っている。それが信じられない若葉(平行)は呆然としたままそんな事を口にした。

 若葉(平行)達の今の時間軸は、総攻撃と呼ばれる若葉(平行)が源義経を使い巨大バーテックス、つまりは未完成の星座型バーテックスを倒した直後当たりだ。なので、歌野(平行)と水都(平行)は確実に死んでいるのである。

 そんな彼女達が目の前に居る。それは若葉(平行)が呆然とするには十分だった。

 

「そっちの事情は知らんが、歌野と水都はこちらへの侵攻が始まる前に千景が助けに行ったぞ。その時に私が体のいい生贄にされたが……ん? 今になってキレそうになってきたぞ?」

「た、助けに行った……!? しかも千景がか!? 一人で行かせたのか!!」

「そうだが?」

「お前っ……! 千景一人にそんな重荷を背負わせたと言うのか!! 無理難題を吹っ掛けて!!」

 

 若葉は何故若葉(平行)がそこまでキレているのか理解できなかったが、若葉(平行)からしたら勇者を一人で壁外に向かわせ、しかも侵攻の真っただ中である諏訪に向かわせるなんてリーダーとして信じられないとしか言えない判断だった。

 千景(平行)は確かに勇者として申し分ない戦力を持ち合わせているが、それでも壁外に一人で放り出して諏訪への援軍として向かわせるには足りない。いや、千景どころか五人で行ったとしても足りないかもしれない。それを若葉(平行)は先の総攻撃で実感している。

 だが、若葉からしたらあの場での判断は最適解だと思っている。

 

「仲間を信用しなくて何がリーダーだ? 私は千景を信用している。あいつがやれると言ったから私は信用した。ぶん殴られて頼る事を教えられ、あいつがやれると言ったから信じただけだ」

「だが、一人で行かせるなどと……!」

「むしろ千景一人でなければならなかった。あの時点で最も強く、決断力もある千景だからこそ行かせられた。あの場で私や友奈が行ったとしても、足を引っ張ったに違いない。それぐらいの惨状だったと聞いているからな」

 

 当初は若葉だって、一人で行かせるなんてとは思った。いや、それどころか諏訪へ援軍を向かわせるなんて不可能だと思っていた。

 だが、大丈夫だと断言したのは千景だった。一人で向かい、一人で戦い、若葉の友人である歌野を助けて見せると言って見せた。だから若葉はそれを信じ、千景に全力で動いてもらうために汚名も被った。

 

「そっちの千景だって槍と鏡を持っているんだろう? なら千景を行かせるのがあの場では最適解な筈だ」

「槍と鏡……? そんな物を千景は持っていない。鎌だけで突破力があるなどとよくほざける」

「いや、お前こそ何を言っている。千景は未来製の槍と鏡を持っているだろ?」

「なんだそれは。持っていないと言っているだろ」

『……ん?』

 

 そしてここで認識の違いが発生した。

 若葉達は未だに平行世界の自分とこの自分達の違いがどういう物なのかを理解できていなかった。だが、こうして話してみて徐々にだが認識の差が生まれてきた。

 千景が槍と鏡を持たない、という事は千景が未来の二人と会っていない、もしくはこの世界は未来との関りを持っていないと言う事だ。

 つまり。

 

「つまりあれか。お前等神世紀の勇者部知らないだろ?」

「神世紀……? だからさっきから一体……」

「なるほど、そう言う事か。お前たちは『乃木若葉』に到達するかもしれない世界の私達、という事か」

「『乃木若葉』って……あぁ、あの最終決戦で若葉さんに力を貸してくれた」

「えっ、じゃあここの若葉ちゃん達って……」

「あの時代に繋がると言う事は、顛末は知っての通りかもしれないわね」

 

 つまり、この世界の若葉達は天の神とぶつかり合うことなく敗北し、若葉以外の勇者達は全員死ぬか神樹様に取り込まれてしまう。

 そう言う事だろう。

 流石にそれを認識した西暦勇者達はふざけるわけにもいかず、一度カカポマスクとぴえんマスクを部屋の隅に放り投げ、さて、どうするかと審議。

 五分後。

 

「まぁ、ここで考えても変わらんか。ただ、アドバイスするとしたら……いのちをだいじに、だ」

「意味が分からん。大体、どの立場からのアドバイスだそれは」

「既にラスボスを倒し世界を救ったお前たちの成功例としての立場からのアドバイスだが?」

「ら、ラスボス……?」

「あぁ。私達は既にバーテックスを撃退した。平和はいいぞぉ? 青春謳歌し放題だ」

 

 その言葉を聞き、若葉(平行)が見てわかるレベルで驚いた。

 まさかこんなお茶らけた馬鹿野郎どもが自分達が未だに苦戦しているバーテックスの撃退……いや、撃滅に成功している。その事実が正直に言って信じられなかった。

 しかし、現に若葉達は神世紀の力を十全に借り、かの悪逆無道の神を打倒した。そして、平和を掴み取った。青春を謳歌する権利を得たのだ。

 

「なっ……ど、どうやったんだ!? 未だに私達はバーテックスを根絶するための手がかりすら……攻勢に移る事すらできていないんだぞ!?」

「あー、攻勢か? それなら止めた方がいいぞ。少なくとも、千景が未来との交流を持っていないのならな」

 

 若葉(平行)からしたらバーテックスを撃滅に至るまでの手がかりは何としてでも欲しい情報だ。こんなふざけた奴らにできるんなら、自分達にだってできるはずだと。だから、情報が欲しかった。

 しかし、返ってきたのは攻勢は止めた方がいいという弱気な意見。そして、千景の名。

 

「ど、どういう事だ!? お前たちにできたのなら私達にだって!!」

「攻勢に出れば死ぬぞ。これは誇張表現でも何でもない。本当に、殺されるぞ。勇者が先に殺され、次に簡単に四国が崩壊し、そして人類が絶滅する。私達だけではアレに勝てないんだ。例え相手がどれだけ逆立ちしようとな」

 

 まずは攻勢に出れば死ぬ、という言葉の対処から。

 攻勢に出る事が条件なのかどうかは分からないが、しかし天の神は勇者達が攻勢に出て勢いを付けたその瞬間に鏖殺のために動いた。未来の勇者達を過去に送り込み、舐めプで絶望を与え、そして一週間の猶予の後に出張って殺しに来た。

 もしもあの後神世紀勇者達が来れなかったらどうなったか。

 勇者達は天の神に手も足も出ずに敗北し、死ぬ。そして、四国は崩壊して人々は無惨に食い殺され、絶滅。

 これが天の神が描いていた天の神しか笑う事が無いシナリオだ。

 

「いいか、この際だから言っておく。相手は神だ。バーテックスは神の劣兵だ。撃退なんぞできん。アレを根絶するには神を下すしかない」

「か、神、だと? だ、だが、神だろうと私は!」

「樹海を一瞬で焼却するほどの攻撃力を持ち、超巨大バーテックスの攻撃を重ね超強化して幾重にも重ね、五人での切り札をぶつけても傷一つ付かない文字通り規格外の化身である神を下すか? 手立てがあるならむしろこっちが聞きたいな」

 

 若葉(平行)は例え神でも、と吠える。

 だが、若葉は違う。アレと相対し、そして戦ったからこそわかる。

 アレは奇跡を算段に入れて戦わなければ勝てないような神だ。もしもこの世界に『乃木若葉』が飛来したのなら。自分と同じように若葉(平行)が人の力を束ね、意志の力で刀を振るったのならば、勝機はあるだろう。

 だが、アレは未来からの贈り物が無かったら叶わなかった奇跡だ。若葉(平行)達では確実に起こす事ができない奇跡だ。

 

「私達は未来の勇者達の力を借りた。そして、歌野を助け雪花と棗にも四国に避難してもらい、二十人の勇者を天の神にぶつけ、ようやく勝ったんだ。まぁ、奇跡が起きなければ二十人の力がまるで羽虫のように叩き落とされていた事には違いないがな」

「に、二十人……!?」

 

 若葉(平行)には勇者が二十人も集った光景など想像もつかない。

 しかも奇跡が起きなければ二十人いても足りないとすら言う。

 この馬鹿野郎どもにできたのなら、と息巻いていた若葉(平行)だったが、二十人の勇者が居ても奇跡を算段に入れなければ勝てないと言われれば黙るしかなかった。それと同時に、平行世界の西暦勇者達の表情も曇る。

 彼女達とて二十人も勇者が居れば今までの戦闘がどれだけ簡単に攻略できたかなんてすぐに想像できる。だが、それだけ勇者が居ても羽虫のように叩き落としてくる相手がいるのでは、例え四十人以上勇者を揃えても勝てないと思ってしまう。

 

「まぁ、私からのアドバイスとしては、ひたすら生き残る事を考えて動け、という事だな。未来からの援軍が来るとしたら、それは千景がトリガーだ」

「わ、私……?」

「あぁ。私達の世界の千景は小学五年生頃から半年ほど、未来の勇者達の元で暮らしていた。そして、とある時期にその未来の勇者達が千景に会いにこの時代へとやってくる。この奇跡が大前提として存在していなければ、天の神は倒せん」

 

 千景(平行)はいきなりよく分からない事を言われ困惑していたが、ふと千景の方を見て自分と比べてみた。

 少なくとも自分はやらない1680万色カカポマスクを被り首を回し、更にぴえんマスクを被りキレッキレのダンスをする彼女はどう考えても平行世界の自分とは思えない。というか、思いたくない。

 だが。

 

「……あなたは、未来で……何を、学んだの?」

 

 もしも彼女が、あの暗黒の時期を明るく暮らしていたのなら。

 敵しかいなかったあの場所に、もしも味方が来てくれていたのなら。

 

「そうね……色々よ。色々学んで、私は愛されてもいいって事を。私は望まれなかった命じゃないって事を学んだわ。だからこそ、あんなクソみたいな村も、クソ親父も捨てることができた。だから、覚えておきなさい。あなたは自分の事を卑下してるかもしれないけれど、そこに居る野武士も、高嶋さんも、ロリコンとロリも、全員あなたの事を仲間として、友達として愛してくれてるわ」

「……あの、すみません、良い事話してる時に悪いんですけどロリコンってもしかしてわたしの事ですか……?」

「ロリってタマの事だよな? おい?」

「大丈夫だよ、わたし。もうロリコンって認めちゃった方が楽だから!!」

「あの、本当に本当にお願いなんですけど、わたしをロリコンという前提で話を進めようとしないでくれません? というかその笑顔気持ち悪いんですけど」

「……えっ、あんずってロリコンなのか?」

「最終決戦で思いっきりレ〇プしたいって言われたから確定だろ」

「あ、あんず……?」

「誤解です! 誤解ですからタマっち先輩! それもこれも全部このクソッタレからの風評被害です!!」

「ちっちゃい子、いいよね」

「もうあなた死んでください!!」

「あんずのマジギレ初めて見た」

 

 徐々に口が悪くなっていく杏(平行)。まぁ、ロリコンという風評被害を受けたら当然こうなるだろう。

 まぁ、ここまで必死という事は裏があるのかもしれないが。

 ふざけ始めたあんたま四人組の方を見ていた千景(平行)は改めて千景の方を見た。

 楽しいわよ? と悪い笑顔。

 

「……私には高嶋さんだけでいいわ」

「あらそう? でも土居さんとキャンプに行ったり伊予島さんとゲームするのは楽しいわよ?」

「……無理よ。特に土居さんとは……色々と、合わないもの……」

「それはあなたが壁を作っているからじゃないの? みんながみんな高嶋さんみたいに手を強引に引っ張ってくれるわけじゃないのよ。こっちからも踏み込まないと」

 

 その言葉が痛かったのか、千景(平行)は顔を逸らした。

 

「あなたは私の可能性だもの。何が欲しくて動いているかなんて、簡単に分かるわ。だから言っておくけど……誰かに褒められたいから、誰かに自分の価値を見出してほしいから戦う、なんてことは止めなさい。それはいつかあなたを傷付けるわよ」

「っ……!! うるさい!! そんなに私の心に入り込んで!!」

「あなたは誰に価値を見出してもらいたいの? 高嶋さん? それとも大社の職員? それとも……あの村のクソ野郎共と両親?」

「そ、れは……」

 

 千景の言葉に千景(平行)が黙り込む。

 千景は彼女が自分だから。園子と藤丸に救ってもらえなかった自分だからこそ、彼女の内面がよく分かる。

 愛に飢えている故に。誰かに愛してもらいたいがために戦う彼女は、言うならば承認欲求の塊。愛を与えてもらえなかったからこそ、トラウマの元凶たちが相手でも、愛を貰いたい。郡千景という存在を認めてほしい。そう思い、行動している。

 一人でも多くに愛してもらいたいから。

 

「あの村の人間は、すぐに手のひらを返すわよ。一回でも誰かが重傷を負ってみなさい。すぐにあの村の連中も、自分達が守っている人々も手のひらを返して価値が無い、無意味だと叫ぶわよ。私達の父親だって、一回でもミスをしたらどんな反応をするかなんて、考えればすぐに分かるでしょ?」

 

 千景(平行)は、誰かに認めてもらいたいから。自分を見下したあの人達からも認めてもらいたいから。そんな危うさから戦っている。

 しかし、それも長くは続かない。

 一度でもミスをしたら、ああいう連中はすぐに手の平を返す。そう言われて、その光景が思い浮かばない千景(平行)ではない。

 

「じゃあ……どうしたら、いいのよ。私はなんで、こんな誰も必要としてくれない、世界で……痛い思いもして、辛い思いもして……戦わないと、いけないのよ」

 

 だから、そこを突かれて出てくるのは、弱音か怒り。

 逆上して襲い掛かってこなかったのは、一瞬でも自分相手にそんな事をしても無駄だと思ったからか、高嶋(平行)が見ている手前か。

 だが、千景はその問いに答えを持っている。

 

「そんなの決まってるじゃない。乃木さんや、高嶋さんのため。みんなで笑い合う未来のために戦えばいいのよ」

 

 あんな連中に認めてもらう必要なんてない。

 仲間から認めてもらえれば。それだけでいい。

 

「あんな連中は放っておきなさい。文句言ってきても言い返せばいいのよ。じゃあお前等が戦ってみろって」

 

 それが全てだ。

 

「例え乃木さんや高嶋さんに憧れようと、伊予島さんや土居さんみたいな人を目標にしようと、あなたは郡千景なのよ。でも、郡千景を認めてくれる人っていうのは、もうあなたの周りにいるの。だから、暫くはその人たちのために戦いなさい。その人たちを傷付ける人たちと戦いなさい。ちなみに私は思いっきりあの連中に鎌の先向けたし普通にクソ親父ぶん殴ったわ! えぇすっごいスッキリしたわよ!! 石投げられたら投げ返したらすっごい顔するから気持ちいいわよ!! だから立場に任せたキチガイ行為して言い返されてもうるせぇハゲで済ましちゃったら後は」

「ぐんちゃーん、そろそろ落ち着こうかー?」

 

 なんか急にぶちまけ始めた千景を高嶋が止めた。

 確かにそれをやれれば手っ取り早いのだが、少なくとも目の前の千景(平行)に急にそれを求めるのは無理だろうというのが高嶋の考えだ。

 そう言う事は段階を踏んでゆっくりと、だ。

 

「まぁ、ぐんちゃんの言ったことは間違いじゃないよ。多分そっちのぐんちゃんはわたしと一緒で周りがよく見えてないだけだから。だから、まずは若葉ちゃん辺りと色々と本音で語り合ったらいいと思うよ?」

「高嶋さん……」

「ちなみにわたしは思いっきり周り見えなくなった上に闇落ちして普通に民間人ぶっ殺しそうになったよ!! うん、そりゃあもう周りの声も評価も聞こえなかったし割とマジでぐんちゃん苛めてた人達に殺意沸いたからね!!」

「高嶋さん、ステイステイ」

 

 千景が暴走したと思ったら今度は高嶋が暴走した。

 千景(平行)と高嶋(平行)は高嶋から飛び出た暴言にビックリして目を見開いている。だって高嶋友奈という少女がここまで普通に暴言吐くなんて今までなかったから。冗談でもぶっ殺すとか言わない彼女が普通にぶっ殺しそうになったとか言っているのだからそりゃあビックリもするだろう。

 ついでに言うと、高嶋(平行)はサラッとぶちまけられた千景の過去にビックリした。

 

「っていうかぐんちゃんって昔苛められてたの!?」

「そ、それは……」

「そうだよ! だから苛めてた奴ら全員ぶっ殺してやろうって思ったんだ! 酷かったって聞いたよ? 体中に傷跡とか耳切られたりとかして。石投げられてたし」

「そ、そんな……どうして相談してくれなかったの、ぐんちゃん!」

「だ、だって、もう……終わった事だし……」

「まだ終わってないよ! あの人達は反省しないから何度だってぐんちゃんを苛めるよ! だから平行世界のわたしはぐんちゃんを守ってあげないと!」

「う、うん……ぐんちゃんみたいな人を苛めるなんて……!!」

「あ、あの、た、高嶋さん? なんか雰囲気が……」

「高嶋さん!! 平行世界の高嶋さんに闇落ちアンハッピーセット押しつけるのはやめなさい高嶋さん!!」

 

 あーもう滅茶苦茶だよ。

 

「いい、私! 高嶋さんが闇落ちしてアンハッピーセット購入する前にしっかりとその兆候は見ておきなさい! 割と高嶋さんの闇落ちは分かりづらいから! じゃないと私が闇落ちする前に高嶋さんが闇落ちするわよ!!?」

「そうだ……一回ぐんちゃんの実家に行って事実を確認して……もしも本当だったら……」

「ほら見なさい! 高嶋さんは優しすぎるから目の前に余裕がちょっとでもあると普通にその余裕を使って闇落ちするわよ!! 闇落ちアンハッピーセット押しつけられて今にも闇落ちするわよ!? あなたこんなにも高嶋さんから愛されてるのにまだあの連中の肩持つつもり!?」

「そ、そうね……高嶋さん、私は大丈夫だから……」

「でもぐんちゃんって抱え込んじゃうから……私が……」

「もうアンハッピーセット注文してるぅ!!」

 

 親友が苛められていたと知り、徐々に徐々に切り札の影響もあってか闇落ちし始めている高嶋(平行)。なんやかんやで友人に対する愛と言うか価値観と言うか、そこら辺が人一倍な高嶋(平行)を闇落ちさせるなんて千景の真実をボソッと伝えておけばいいのだ。

 対して高嶋はやっちまったぜ、と言わんばかりに後ろでてへぺろしている。可愛いので千景は許した。

 

「高嶋さんの暴走を止めたかったらしっかりとみんなと腹を割って話す事! 過去の事も今の事も全部ひっくるめて話す事! じゃないと高嶋さんが闇落ちしてそのままアンハッピーセットでみんな不幸よ! いいわね!?」

「わ、分かった、わ……」

「あと、土居さんや乃木さんみたいな人を毛嫌いしない事! 話してみるといい子だから! 確かに土居さんは空気読めないし乃木さんはザ・生真面目で鬱陶しいけど、友達としては普通にいい人材だから!」

 

 という事でこの話題は一旦終わり。

 とりあえず高嶋(平行)を千景(平行)に押しつけくっ付けさせ、このまま闇落ちルートを直行する事だけは免れる。

 まぁ、千景(平行)がしっかりと腹を割って話し、高嶋(平行)もまだ周りが見える状態でそれを聞いていれば闇落ちアンハッピーセットを購入する事はないだろうし、今はとりあえず放っておけば大丈夫だろう。

 ちなみにその頃。

 

「この子です。この子が乃木園子さんで、若葉ちゃんの子孫なんですよ」

「わ、若葉ちゃんの……た、確かに言われてみると面影が……」

「ちなみに性格はどちらかと言うとわたし似です。おっとりしてほんわかした子なんですよ~」

「そ、そうなんですか?」

「はい。しかも若葉ちゃんが結婚した相手というのは空欄で分からないので……」

「つ、つまりそういう事なんですか!?」

「えぇ、そう言う事です」

 

 ダブル上里はなんか盛り上がっていたがここは割愛。

 

「まぁ、なんかあっちはあっちで盛り上がっているが、千景がああなら多分私達の世代ではアレを倒せん。諦めろ」

 

 暫く千景達の話を黙って聞いていた二人の若葉だったが、あっちが落ち着いたところで若葉が若葉(平行)に改めて口を開いた。

 諦めろ、の一言。

 あぁ、諦める、と言うのは容易い。抱えている物を全部投げ出して、もう嫌だとふさぎ込んで、仲間達を連れてどこかに逃げればいいだけだから。

 けれど。

 

「……嫌だ。私は、諦めない」

 

 諦めるわけにはいかなかった。

 乃木若葉という少女には、四国中の人達の希望がのしかかっている。それを払い退けるなんて、乃木若葉という存在にはできやしない。

 それは若葉だって分かっている。故に、だろうな。と頷くしかできなかった。

 

「そうか。だがな、超巨大バーテックスと戦い続けるには切り札が必要不可欠だ。切り札を使い、穢れを内にため込み続ければ、戦いの中で心がイカれるぞ」

「それは……いや、待て。また新しい情報が出てきた。なんだ穢れって」

「お前等はまだそこか……まぁ、いい。簡単に言うとだな」

 

 そう、超巨大バーテックス……つまりは星座型バーテックスと戦うためには精霊の力。つまり切り札が必要不可欠となる。それも、酒呑童子や大天狗のような、強力な力を持つ精霊達の力を纏った切り札が。

 だがそれを繰り返していけば、勇者達は精神を壊す。

 穢れというどうしようもない黒くて重い塊のような物が胸の内に溜まっていき、ちょっとしたことで悪感情が爆発しかける。そんな爆弾を抱えながら一週間戦った若葉だからこそ。バーテックスを撃退した勇者達だからこそ、未来の勇者達の力無しで戦う事は無茶で無謀だと、分かっている。

 

「切り札を使うごとに溜まっていく穢れ……それにより精神が不安定になり、暴走の可能性もある、か……」

「大社に言えば多少は改善されるだろうさ。だが、多少だ。どうしても穢れは溜まっていく。五人で互いに守り続け防戦一方で戦い続けても、最終的には穢れで廃人同然になるだろうさ。それでも戦う事を選ぶか? 乃木若葉」

 

 若葉(平行)は口を閉じた。

 これは重大な選択だ。

 戦う事を選択したら、自分達はいずれ死ぬ。戦わなければ自分達諸共四国の人々が死ぬ。

 どっちにしろ、勇者には死ぬ未来しか残されていない。

 そんな事実を突き付けられ、若葉(平行)は黙り込んだ。仲間を犠牲にしたくない。だが、仲間達の心を犠牲にし続けなければ、バーテックスを押し留める事すら叶わない。

 そんな彼女を見て、若葉はだろうな、と一言だけ呟いてから自分の携帯を取り出し、平行世界の自分からも携帯をポケットの中から拝借した。

 

「この裏技が可能かどうかは知らんが……ひなた。私と平行世界の私の端末のデータを勇者システム以外そっくりそのまま入れ替える事はできるか?」

「え? あ、はい。できますけど……あっ、もしかして」

「そう言う事だ。私の勇者システムは恐らく初期の頃に戻したとしても暇潰し大好きな神様達に強制的に最新の物に置き換えられるからな。今の私の勇者システムなら、切り札を使わずとも封印の儀で星座型を封印する事はできる。それなら、防戦一方という前提ではあるが、勇者の力を失うその時まで戦う事は可能だろう?」

 

 黙りこくっていた若葉(平行)が目を見開きながら携帯をひなたに手渡す若葉を見た。

 その光景を見ていた四国組も、全員携帯を取り出しひなたに預け、同時に平行世界の自分達から携帯を勝手に拝借してひなたに手渡す。

 

「エネルギー式の精霊バリアとそれとは別の共有された満開ゲージ。スペックは神世紀勇者と同等で封印の儀まで搭載。レオ・スタークラスターとやらが来ない限りは基本的にどうにかなるだろう」

「ま、待て! 本当にいいのか!? いや、本当に可能なのか!? 変に希望を見せるだけなら……」

「んー、じゃあ勇者システムコピーしとくか。ひなたー、できるかー?」

「むしろそっちの方が楽ですねぇ。だって内部データそっくりそのまま上書き保存しちゃうだけですし」

「だそうだ」

「いや、そうじゃなくてだな!」

「戻った後の事でしたらご心配なく。先ほど神樹様からの神託で勇者システムのコピー程度なら、まぁいいでしょう。と来たので」

 

 その言葉を聞いて更に若葉は口をあんぐり。

 そりゃあそんな顔にもなるだろう。なんか明らかにまともじゃない方法でこれから先のあれこれを回避しようとしてくるのだから。

 というか勇者システムをコピーして持って行けなんてパワーワードにも程があるし、そもそも勇者システムってコピーできるものなのかという疑問すらある。携帯を奪われ未来タイプに強化しておくね! なんて言われても事態が上手く飲み込めるわけがない。

 携帯を手にどこかへ行ったひなたを見送り、さて、とわざとらしく声を出してから若葉は若葉(平行)の方を改めて向いた。

 

「まぁ、これで次世代へと希望を繋ぐことくらいはできるだろう。アレと決着をつける事なんて、そうそうできやしないからな」

 

 若葉は知らないが、一応天の神を現代の状態で凌ぐ方法はある。

 奉火祭。それを行う事で天の神の赦しを乞えるのは、未来の勇者達が知っている。しかし、それを行うと言う事は巫女数人の命を犠牲にする事に繋がる。

 なので、現状若葉の頭にある案というのは、ただ耐え忍ぶこと。未来の勇者システムを使い、ただひたすらに耐え、次へ次へとバトンを渡し、天の神を打倒する物を手に入れる事。それが、未来の力を得られず奇跡を算段に入れる、というリスクマッチを仕掛けない場合の最善解だ。

 

「……だが、倒せないのでは私は四国の者達の期待を」

「自分と仲間の命と期待のどっちが大事だ?」

「えっ、いや、それは…………仲間の命、だが」

「元々神殺しなんて無茶無謀なんだ! 奇跡を起こす算段が見つかるまではじっとする事も兵法の一つだ!」

「えっ、若葉さんが猪武者以外の思考回路を持ち合わせているなんて……大変です、あの若葉さん偽物ですよ!!」

「本物の乃木さんをどこにやったの!!」

「伊予島ァ!! 千景ァ!!」

 

 若葉、キレた。

 どこからか取り出した生太刀を片手に杏と千景に斬りかかる若葉。しかし千景はそれをどこからか取り出した神獣鏡で防ぎ、一度杏の矢に乗じて距離を取ると、二人が座れる程度の大きさになった鏡に乗り、そのまま教室の窓から飛び出しそのまま大空へ。

 

『ざーこざーこ!!』

「きさっ、ぶっ殺すッ!! 大天狗ァ!!」

「あっ、あの落ち武者とうとう共有ゲージ使って切り札使いやがったわよ!!?」

「だとしても日常的に精霊バリアあるので無傷には変わりないんですけどね」

「だったら貴様らを強制ジェットコースターの刑に処してやる。オラ大空の旅へご招待じゃァ!!」

『ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?』

 

 そして大天狗を使った若葉に腕をひっ捕まえられ、そのまま大空を超高速で飛び回る刑に処された。その光景を何だアイツら……と言わんばかりの視線で眺める平行世界組と、なんだいつもの光景かと言わんばかりに無視する西暦勇者組。

 ちなみにこれは若葉も普通に酔う事が義経を使った際に発覚しているので、この後三人揃って海に胃の中の物をリバースするか、墜落する事だろう。

 

「……本当になんなんだ、あいつら」

「というか生身で切り札使ってない……?」

「深く考えちゃ駄目よ。この世は全部フィーリングなのだから」

「まぁ、タネを話すとすれば、切り札ゲージとも言える満開ゲージが別のナニかで可視化され共有化されたからこそ、適当に叫んでおけば使用可能……なのかもしれない。正直わたし達も色々とフィーリングだからな。まぁ、やれると思ったからやれたんだろう」

『えぇ……』

 

 あまりにも雑な棗の説明に平行世界組が思わず軽く引いたような感じの声を漏らす。そりゃあこんな声も漏らすだろう。

 とうとう高速で移動し続けた結果酔って海に墜落した若葉達は無視し、今度は四国外組の方から平行世界組に話しかける。

 

「さて、ギャグも挟んだことだしシリアスいきましょうか。とりあえず平行世界の若葉さん。わたしの事は気にしなくてもいいわよ」

 

 一瞬平行世界組はギャグとシリアスの格差に風邪を引きそうになったが、歌野からの言葉に若葉は何も言えずに口を閉じた。

 あの時、もしも自分が四国の事と諏訪の事を半々に考えて救援に向かっていたのなら、もしかしたら歌野は。そう考えてしまう。なにせ、それを成して彼女を救出した者達が自分達の可能性として現れたのだから。

 だが、歌野は言う。気にするなと。

 

「元々死ぬのは上等。せめて数年だけでもって思って戦ってたのだから、デッドとしても誰も恨みやしないわよ。強いて言うなら、若葉さん。あなた達は一人もリタイアしちゃ駄目よ。多分誰かがリタイアしてヘヴンに行ったら、平行世界のわたしからあの世で殺されるわよ」

「あの世でって」

 

 実際、歌野は諏訪外からの援軍は諦めていた。

 どこもかしこも自分達の事で精一杯だ。後々知った事だが、一番大変と言うかライフラインや食料の確保が難しかったのが諏訪だった、というのは衝撃の事実ではあったが、それでも北海道や沖縄は勿論の事、当時の四国にだって勇者一人を援軍に出すなんて事は無理だと思っていた。

 だと言うのに援軍を出してくれた若葉と助けてくれた千景には今も感謝しているが、彼女達が援軍を出さなくても、来なくても、歌野は恨まない。

 元々いつ終わるか分からない命だったのだ。故に、あの時死んだ場合に祈る事は一つ。

 せめて、自分の戦いで救われた命がありますように。あの日、あの時戦い時間を稼いだ日々はきっと未来の平和に繋がっていますように、と。

 だからこそ、歌野は思う。死んだ後に四国の勇者があの世に来たら、何で来ちゃったんだよと叫びながら思いっきりチョークを仕掛けたことだろう、と。

 

「という事で次、雪花どうぞ~」

「うむ。という事で言わせてもらいますとだね。北海道はできれば助けてほしいけど……まぁ、無理だろうねぇ。あたしも頑張ってはいたけど、死ぬまで秒読み段階だったのは間違いないし。余裕があったら助けてほしいにゃ~って」

「余裕って言われても……そんなもの、私は……」

 

 そしてそれは雪花も同じだ。

 自分だけ生き残る事を考えて。でも、それが無理で戦い続けて。そうしていく中で雪花は多分死んだだろう。恐らく、友奈と夏凜が来てくれたあの日がターニングポイントだった。

 あの量の星屑を雪花は一人で倒せない。故に、死んでいた。

 だが、死んでいたとしても四国の勇者を恨まない。死ぬまで戦う事を選んだのは自分の責任なのだから。それを誰かにせいにして押しつけるなんて真似、みっともなくてしたくない。頼まれたってやりたくない。

 だから、余裕があったら。できるんなら助けてほしいかな、程度。

 

「だから自分達が生き残る事を考えて戦いなされ。あたしだって仕方ないって思ってんだから、恨みゃしないわよ。って事で次はなっち、よろ~」

「お前からなっちって初めて言われたな。まぁ、沖縄も同意見だ。元々わたし達は四国へと避難する計画を立てていたが、恐らくそれを奴らは許さない。命を賭してみんなを守る事に精一杯だろう。だから、沖縄の避難民を受け入れてほしい。それがわたしの最後の願いだろう」

「……」

 

 四国への避難計画。それを初めて盗み聞きした時、棗はそこが自分の命の使い時なのだと思って疑わなかった。

 そこに風と樹が来てくれたからこそどうにかなったが、来てくれなかったら棗はたった一人で二体の星座型を相手にして、きっと命を散らしただろう。だが、命を散らしたその時だって、棗はきっと思っている。

 沖縄の人達が、未来で生きていますように、と。

 故に、恨みはしない。ただ、沖縄の避難民を受け入れてほしいと、願うのみだ。

 

「はいシリアス終わり! という事で後は適当に遊びに行きましょうか!」

「そうだな。よし、骨付き鳥でも食いに行くぞ」

「うわっ、若葉いつの間に!?」

「ついさっきよ」

 

 そしてシリアス終わりを宣言した直後、若葉、千景、杏が帰ってきた。

 なお三人とも海に落ちたので全身びしょぬれであり、ついでに言うなら若葉は頭にワカメを被っているし、千景はタコと魚をポケットに突っ込んで帰ってきているし、杏に至っては顔面にクラゲが張り付いて喋れない。

 普通にクラゲが気色悪いので全員一気に杏から距離を取った。

 

「とりあえずそこのキモい顔面クラゲ人間は放っておいて、とっとと行くぞ。この一日だけの貴重な時間を無駄には……っておい杏。こっち来るな。肩を掴むな。おいそのまま顔を近づけるの止めろ!! クラゲが!! クラゲがぁぁぁ!!?」

「よし、アレほっといて行きましょ」

「い、いいのか……? というかこっちはシリアスを全部投げっぱなしジャーマンされて心が情緒不安定のまま落ち着かないのだが」

「遊んでりゃどうにかなるわよ。はい、プレゼント」

「お、おう? なんだこれ」

「海の底で拾ってきたナマコ」

「うおぉぉぉキモイぃぃぃぃぃぃぃ!!?」

「きゃっ、こっちに投げないください若葉ちゃん!」

「って言いながらこっちに投げないでください!」

「だからってタマを盾にするな!」

「じゃあ弾いてこっちに飛ばすんじゃないわよ土居さん!!」

「みんな、可哀想だから落ち着こう!? ナマコも生き物だから! 空中を舞うナマコが可哀想だから!!」

 

 千景が手に持っていたナマコを若葉(平行)に手渡しパニックが発生。これによりシリアスは完全に砕け散り、平行世界組がナマコをパスしあっている。流石に可哀想なので途中で回収して晩飯に回したが。

 ちなみに杏と若葉はクラゲ越しに濃厚なキスをしていた。零距離顔面ド迫力のクラゲフェイスである。

 なおキスどころか顔面全体にクラゲを押しつけられた若葉は全てを諦めた顔をしている。

 こうしてドタバタしながら勇者システムのコピーが完了したりクラゲ越しにキスしている杏と若葉にひなたがドン引きしたり、どれだけ天の神が怖いかを当時の映像記録などで振り返ったりと色々とあり、夜も更け、そして一日が過ぎてたった一日だけの奇跡は終わりを告げたのであった。

 

 

****

 

 

 奇跡も終わり、平行世界組はあのクソ五月蠅い平行世界の頭がおかしい自分達から解放された。

 夢だと思いたかったが、手元の勇者システムは三百年後に作られたという超最新の勇者システムに変わっており、画面には変身するためのボタンに加え、切り札ゲージという全員共有の時限強化用のゲージが増えている。

 まだゲージは空だが、ヘルプを見てみれば星屑等を倒す事でゲージは溜まっていき、ゲージを一定以上使う事で切り札を使う事ができる。しかも穢れは溜まらないのだとか。

 更には精霊を具現化させてペットみたいにする事ができるという。

 

「……何と言うか、凄い高価な土産を貰って気分だ」

「す、凄いです。今までの勇者システムとは比べ物にならないほど体が軽いです」

「これならラスボスの……なんだっけ、天の神も倒せるんじゃないか!?」

 

 そして試しに勇者装束を纏い模擬戦をしてみると、そのスペックの向上は凄まじかった。今までとは比べ物にならないほどの身体能力の向上に加え、エネルギー式無限バリアこと精霊バリアによる生存能力の確保までされている。

 今まで通りに動いたのでは逆に機敏すぎる体に振り回される程のスペック。それ故に全能感を覚え、天の神ですら倒せるのではないかと誤解するのは仕方がない事だった。

 だが、それでも冷静でいろ。生き残る事を優先しろ、というのが先人の言葉だ。奇跡が起こらない限り、アレには勝てない。

 

「……いや、駄目だ。この勇者システムを持った勇者を八人。それ以下だが前までの私達より強い力を持つ者を四人、更に私達八人が加わって蹂躙されたと言っていたんだ。相手は神だからこそ、油断は禁物なんだ」

「そんなのアイツらがビビってるだけだろ! 今のタマ達なら!」

「球子も見ただろう。樹海を焼き払う天の神の一撃を。切り札を五つ重ね、満開と呼ばれる超巨大バーテックスを羽虫のように叩き落とす力を八つ重ねても傷一つ付けられなかった神の姿を」

 

 彼女達が見た映像記録は、大満開友奈が登場する前までの絶望的な光景。そこからどうやって勝ったのかは、映像記録には無かった。そこからは神樹様が映像記録を残すのではなく共に戦う事を選んだため、映像が残っていなかった。

 だからこそ、彼女は気付いてしまった。自分達では神に勝てない。神に対する対策を万全に行い、神を下すための武器を手に入れ、奇跡を算段に入れ、ようやく蹂躙から辛うじて戦いになる状況にシフトできるという事に。

 そんな彼女に憤りを覚えたが、悔しそうな彼女の顔を見れば、その結論がどれだけの苦悩の先にあるのかが理解できた。

 

「……ごめん」

「いいんだ。むしろ、謝るのは私の方だ。こういう時こそ、勝てる。大丈夫だ。策はあると言ってこそのリーダーなのだがな」

 

 弱気な彼女を見るのは、多分初めてだ。

 どんな時も前に立つ者として誇りと強気を胸に戦ってきた彼女の弱気な表情は、とてもじゃないがこれ以上声を荒げる気にはならなくて。

 そして、親しみがあった。

 

「……意外、だわ。乃木さんも、そんな表情……できたのね」

「笑いたければ笑ってくれ、千景。所詮私は井の中の蛙だった訳だ。勝てない相手に勝てると踏んで、きっと大丈夫だと信じこんで、これが最善だと信じ込んで……だが、そのどれもが違った……!! 最善の手を打てず、大丈夫だと思っていた策は全て敵の手のひらの上で……!!」

 

 受け取った力は凄まじい。全能感を覚える程に、凄まじい。

 だが、その全能感を以てしてすら、天の神は下せないのだ。故に、恐怖した。これでも勝てないような相手を敵に回していることに。この力でも一方的に蹂躙してくる神に畏怖を覚えた。

 

「……仕方ないわよ。でも、私達がここに居る意味は……進行してくるバーテックスと戦うため。真実を知るのは、私達だけ。なら、大社に情報操作は任せて……私達は、生きるために戦えば……それでいいのよ」

 

 いつもよりもどこか言葉にトゲが少ない彼女は少し意外だったが、それでも慰めの言葉にはなった。

 そうだな、と頷けば、彼女も頷いた。

 

「……その、今度、私も腹を割って……話すわ。色々と……家族の事、とか……昔の事、とか……あの私に、教えられたわ。あなた達から近寄ってくれても……私が、遠ざかろうとしては……全部、私のせいで無意味になるんだって……だから……少し、勇気を出すための時間を……ちょうだい」

「千景……あぁ、分かった。こんな私で良ければ、いつでも待っている」

「お、おう! タマだってばっちこいだ!」

「……あなた達のそういう無駄に陽気な部分……嫌いだけど……でも、それは嫉妬……なのかもしれないわね。特に、乃木さん……あなたは、特に」

「ふふっ。なんだか千景さん、前よりもちょっとだけ明るくなりましたね、友奈さん」

「うん、そうだね。わたしもぐんちゃんが若葉ちゃん達と仲良くしてくれると嬉しいかな」

「……そう言えば、あちらの千景さんが叫んでいたアンハッピーセットとやらは?」

「あー……えっと、その……あの後色々とありまして。ぐんちゃんと一杯お話して、気づけなかった事と言わなかったことをごめんなさいして、元通りかな?」

 

 この戦いに勝機は無い。

 だが、生き残る事はできる。生き残れるからこそ、未来の戦いに身を置きながらも束の間の平和を享受するための準備を進めていっている。

 きっと、この時間軸は三百年後まで戦いを引っ張る事だろう。しかしこの少女達はきっと死ぬことはない。笑い合いながら次代へと勇者システムを引き継ぎ、バーテックスを倒しきれなかった無能と言われようと、攻勢に出なかったヘタレ共と言われようと、真実を知り無謀を分かっているからこそ気にする事無く、生きていく事だろう。

 そして。

 

「確かに攻勢に出はしない。だが……助けられる命は、助ける」

「北海道、沖縄救出作戦。あちらの状況が事細かく分かっているからこそ。そして、勇者が二人以上居れば四国防衛は可能であると考えられるからこその作戦。諏訪は既に手遅れですが……」

「せめて北海道と沖縄はどうにかしましょう。放っておけと言われたから死ぬのを見送れる程、わたし達は諦めが良くなった覚えはありません」

「勝てないんなら、最上の結果で次回持ち越しにしてやる!」

「せっちゃんと棗さんを助けて、七人でこれから戦おう! きっとわたし達なら、誰も欠ける事無く戦い抜けるから!」

「高嶋さんが、言うのなら……私だって、全力を出すわ」

 

 現状から考えられる最上の結果を求め、少女達は戦う。

 その戦いの果てに、未来へとバトンを渡せるのだと信じて。




【悲報】若葉と杏のファーストキスはクラゲ【頭勇者部】

という事でザ・カオスとしか言いようがない原作とのコラボでしたとさ。改めて頭勇者部書きながら原作ののわゆ組書いていると乖離というかキャラ崩壊と言うか、それが酷すぎて。しかもシリアスも混ぜるからシリアスとギャグの差で風邪ひきそうでした。

もう色々と無視してギャグを詰め込んで、ザ・頭勇者部をやらかしましたが、その結果は平行世界のアレコレに関与して最終的には勇者システムをプレゼントしちゃうという。これで原作組も少なくとも四国組は死ぬことはないでしょう。それもこれも、全部うひみを四話まで読んでガチ泣きしたからなんだ。とりあえず言えるのはぐんちゃんの親父が自分で書いたのよりも百倍くらい酷かったって事ですかね。死ねばいいのに。

で、この二週間くらいの間で芙蓉ちゃん達のキャラデザ公開とかゆゆゆ三期決定とか色々とありましたが、三期決定によるハナトハゲの今後については活動報告に書きましたので気になる方はそちらへどうぞ。

あと芙蓉ちゃん達はどうしようか迷ってます。電撃G's買わなきゃいけないかなぁ……って。うひみ+ふゆゆというか、勇者外典の単行本出るのって多分相当後でしょうし。
ただ、美佳ちゃんもそうですし、そろそろ真鈴さんにも出番を与えたいな、とも思っているので、そこら辺の子達の話も書きたいなーと思っていたり。

とりあえず次回からは折角先代現役組とかも話に混ぜたんだしそこら辺や巫女さん達も使って色々と書きたいなーという所で今回はここまで。

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