ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回は久々にハゲ丸が中心の話となります。

いやー、こいつが中心になる話は本当に久しぶりですね。えっ、主人公なのに久々はおかしいって?

まぁ、ハゲだし。

で、今回の話ですが前回の後書きでチラッと書いていたハゲ丸がエロ本で~、な話です。本当はそのっち&ミノさんへの思う所を暴露する話のターゲットを他のキャラに変えてやろうと思って話を考えたんですが、気が付いたらエロ本な話に。

更に話を変えますが……明日はクリスマスですねぇ!! 皆さんご予定はありますか!!?
自分? 自分はですねぇ!!

あるわきゃねーだろ。
今年はタイにも行かずにクリぼっちだよ。


災難なハゲ

 今日のハゲ丸はとてもピンチだった。

 それはもうとても。

 勇者部メンバーが勢揃いしている……いや、してしまっている部室内で自分だけ早めに帰る事ができず、冷や汗をダラダラ流しながら、過去の自分である桂に同情されつつ、なんとかかんとか生を繋いでいる。

 どうしてこうなった……というか、どうして一目散に逃げなかったのか。そんな事を思うハゲ丸だったが、その発端はつい一時間ほど前に遡る。

 いつも通り授業を受け、いつも通り暇だし部室に行くか、と今日のスイーツ各種を仕舞ったクーラーボックス片手に立ち上がったまではよかった。そう、ここまでは普通だった。

 しかし、そんなハゲ丸へと、彼が讃州中学に入学してからの友人である才村が声をかけてきた。

 

「な、なぁ、藤丸」

「ん? どした。もうケーキの余りは残念ながらないけど」

 

 何故だか凄い申し訳なさそうに声をかけてきた才村に向かって、もしかして小腹でも減ったからクーラーボックスに入っているケーキをくれ、とでも言いに来たのかと思い先に釘を打ってみたが、彼はそうじゃなくて、とハゲ丸の言葉を否定した。

 本当にどうしたんだと思いったものの才村はハゲ丸をこっちこっち、と教室の隅へと誘導してきたのでそれに従う。本当に不思議でならないが、とりあえず彼に従い付いて行けば、彼は隠し持っていたらしい紙袋をハゲ丸に手渡した。

 

「悪い藤丸! これ、明日まで預かっておいてくれ!!」

「え? あ、預かる? 別にいいけど……何故に? っつかなんぞこれ」

「今日、どうしてもコイツが部屋の中にあるといけないんだよ! 別に中見てもいいけど、明日まで預かっててくれ! いいか、他言無用だぞ!!」

「いや、だからまずこれが何だって話をだな」

「んじゃ! 俺すぐ帰んなきゃいけねぇから!!」

 

 藤丸に押しつけるものを押しつけた才村はそのまま脱兎のごとく自分の鞄を片手に走っていった。

 紙袋を急に押しつけられ、呆然とするしかないハゲ丸は走っていってしまった才村に向かって一応手を振り、気を付けてなー、と適当な言葉を返してから、紙袋に視線を落とした。

 紙袋の中身は上から少しは覗くことができたため、中身が何かの雑誌である事はすぐに分かった。が、どんな雑誌かは分からない。

 ゲームかアニメの雑誌ならここまで必死に隠し通す事もないだろう。かといって漫画や小説の類ではない。

 それじゃあこの袋の中身は一体何なのか。溜め息を吐きつつ紙袋の中から適当に一冊、本を抜き取った。

 抜き取ってすぐ、肌色率百パーセントの表紙が出てきた。

 

「ぶっ!!?」

 

 そして即座に紙袋の中に収めた。

 すぐにこの光景を誰かに見られていないか確認し、紙袋を自分の体で隠す。

 間違いない、この紙袋の中身は。

 

「え、エロ本かよ……!! あんにゃろう……! なんつー地雷を置いていきやがったんだ……!!」

 

 もしかしたらあの一冊だけがそうなのかもしれない。そんな希望的観測を持ってもう数冊チラッと表紙を見てみれば、それらは大体肌色率百パーセントか、大事なところが露出しているか。

 神世紀になってから、こういう年齢制限付きコンテンツに対して未成年が手を出す事は無くなった……とは、あまり言いにくい。

 やはり小学校高学年から中学生辺りの年齢でそういうコンテンツに興味を惹かれるのは致し方ない事だ。故に、クラスに数人は父親が隠し持っていた物か、ネットの通販で買ったそういうモノを所持しているし、健全な男子とも言える者達ならネットでそういう動画を調べて視聴する事もある。

 故に、才村がこういうのを持っていてもおかしくはない。おかしくはないが、それを預かってくれと言いながら渡す場所とタイミングと相手が悪すぎる。

 

「ま、間違いなく勇者部員にバレれば死あるのみ……!! よくもそんなモンを持ち込みやがったなって事で殺される……!! 家に持ち帰ったとしても、亜耶ちゃん後輩かしずくに見られたら確実にシズクが出てきて殺される……!!」

 

 そう、ハゲ丸の場合、見つかれば即命の危機となる場面が多すぎるのである。

 特にピュア組に見つかればどうなるか考えてみろ。確実にその保護者か処女を付け狙う変質者共の手により確殺される。

 それだけは。それだけは、確実に避けなければならない。

 

「ねぇねぇハゲ丸君。さっきからそんなところでどうしたの? 部活行かないの?」

「わっひゃい!!?」

「わっ、ビックリした……」

 

 紙袋を自分の体で隠しながら自分の死亡ルートを確認し、それを避けるための策を練っていたハゲ丸の元へ、恐らく一番バレたくない相手である友奈が声をかけてきた。思わず変な声が出てしまったが、それはどうでもいい。

 問題なのは友奈にこの紙袋の中身がバレる事だ。

 友奈にこの紙袋の中身がバレれば、確実に青いのがこっちを殺しに来る。というか下手すると夏凜がそこに混ざって殺しに来る可能性がある。

 勇者部の最初期ピュアメンバーである友奈こそ、恐らく一番死に直結しやすい相手なのだ。

 

「い、いや、その、別に何も?」

「にしては汗凄いよ? もしかして体調が悪いんじゃ……」

 

 体調が悪い。

 その言葉を聞いた瞬間、ハゲ丸の脳裏に電流が走った。

 そうだ。体調が悪い事にして帰っちまえばいいんじゃないか。帰ってからすぐにこの爆弾を自分の部屋のベッドの下とかクローゼットの奥の奥に収納して素知らぬ顔をしたらいい。そうしたら勝ちだ。明日、才村の顔面に紙袋を叩き付けてやればそれですべて終わりだ。

 それで行くしか。

 

「もう、そんな訳ないじゃない友奈ちゃん。だってハゲよ? コイツ、お役目関連以外で体調崩した事なんて一度たりともないのよ?」

(ク、クソレズテメェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?)

 

 と思った直後に青いのが退路を塞いできた。

 確かにハゲ丸は勇者関連の事以外で学校を休んだことはない。特に体調不良なんてここ数年間は完全に他人事だった。

 適度に運動して体を鍛えてバランスのいい食事をとっているからこそ、風邪やら何やらとは無縁の生活だった。しかし、それが今回は仇となった。

 体調は至って健康そのものだし、熱も無く顔色も良く。強いて言うなら変な地雷を持たされたことによる冷や汗だけ。

 

「ほら、早く部室に行きましょ、友奈ちゃん」

「はーい。ほら、ハゲ丸くんも」

「お、おう、そ、そう、だな……」

 

 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらもハゲ丸は友奈と美森の後ろをついて行き、そんな彼女達を待っていたらしい夏凜、銀、園子の三人と教室出口付近で合流し、部室へと向かう。

 その間もハゲ丸は鞄の中に入り切らない紙袋を必死に自分の体で隠してなるべく誰かの視界に入らないようにと必死に動いているが、その動きが挙動不審にも程があって前を歩く讃州勇者部三年トリオに何してんの……? という目で時折見られている事に気が付いていない。

 あまりにも挙動不審なのでそろそろ銀がハゲ丸にちょっかいをかけようと足を止めた時だった。

 

「園子せんぱーい!」

 

 丁度六人が差し掛かった廊下の分かれ道の先から、讃州中学内に作られた小学生組&72年組専用特別教室から丁度部室に向かっていたらしい園子(小)が園子に向かって突撃してきた。

 勿論園子はそれを受け止め。

 

「あっ、そのっちー。そんなに走ると危な」

「どーんっ!」

「ごふぅ」

 

 小学生特有の有り余る元気によりミサイルの如くぶっ飛んできた園子(小)の頭が見事みぞおちに突き刺さり、園子様は腹を抑えながら悶絶する羽目になった。なお、園子(小)は何が面白いのか笑いながら悶絶する園子様に抱き着いたまま。

 そんなダブル園子に苦笑する三年生女子組だったが、そこにその後ろから普通に歩いてきた残りの小学生組と72年組が合流する。

 

「あーあー。ごめんねぇ? 園子ちゃんは一応止めたんだけど、全然止まんなくって」

「ノギノギは嵐のような子やからなぁ。っつか、案外過去の自分の思考回路って予想できそうやから避けれそうな気もするんやけどな」

「そういうもんなのか? 未来のアタシはそこら辺どう考えてんの?」

「んー……まぁ、三年経つと色々変わるって事だよ、過去のアタシよ。園子は暴君になるし、須美はレズになるし。案外分からんもんなのだよ」

 

 少なくとも小学六年生の頃の園子はハゲ丸を八つ当たりで冷蔵庫にお片付けするような暴君じゃなかったし、須美こと美森も可愛い子を可愛い可愛いという事はあってもレズっ気は無かったし。

 三年あれば人間は穢れるのよ……と美森が遠い目をしながら呟いたが、須美はそれを白い目で見ている。

だって未だに美森が未来の自分だなんて一から十まで信じる事ができていないのだから。

 

「なんつーか、俺から見ると園子と園子さんって同一人物っていうか姉妹にしか見えねぇんだよなぁ。ほら、髪色とか違うし」

「あぁ、言われてみると確かに。横に並んでるとさらにそれっぽく見えるわよね」

「それに関してはそのっちもストレスが溜まる事が沢山あったとしか……ね、ハゲ」

「お、おう? え、えっと、ストレス、だっけ? そうだな、そうだったな。園子も大変だったもんな、うん?」

 

 桂と須美の言葉に園子も苦労したんだよ、と簡単に説明する美森。そして話を振られたハゲ丸はかなり挙動不審。それに思わず美森は溜め息を吐き、須美は首を傾げる。

 一応、桂と須美の言いたい事は分かる。園子(小)は天真爛漫でちょっと腹黒い所はあれど基本的にはいい子なのに対し、園子は天真爛漫ではあれど暴君の片鱗が滲み出ているし腹黒さが更にエスカレートしている。

 その成長を加味すると、なんというかダブル園子は姉妹にしか見えないのだ。

 それに関しては同一人物である二人同士の認識的にもそれに近いような感じではあるので、気にしない方がいいのかもしれない。ダブル銀もどっちかと言えば過去の自分と言うよりかは姉と妹的な立場に収まりつつあるし。

 

「ま、まぁ、姉妹的な感じっていうのは、間違ってないかもね~……」

「わたし、元々お姉ちゃんか妹が欲しかったから~」

「それに関しちゃアタシも一応同じか。弟だけだとどうしても姉ちゃんか妹が欲しかったし」

「やっぱ弟だと話し合わねぇことあるんだよな~」

 

 とは同一人物たちの言葉。

 しかし、それに賛同しない同一人物ペアが一組。

 

「じゃあ、桂と藤丸さんは? そっちもそういう感じなの?」

「いや、俺達は何と言うか……歳が前後した友人程度か? ほら、俺と須美ってこの後事故って二年間記憶飛ぶらしいじゃん? その部分の記憶が混ざってるから家族として、というよりかは友人として、位にしか見れなくてな」

「なるほど……あっ、東郷さんと私に関しては同一人物じゃないし他人なので」

「須美ちゃん、その辺にしてくれないと泣くわよ? 来年高校生の人間がこの場でみっともなく大声で泣くわよ?」

 

 なんやかんやで須美の事は気に入っている美森さん、ガチ泣きまであと一歩である。だが、よーしよしと友奈に慰められてメンタルは回復した。なおその際の表情を須美に見られ、思いっきりドン引きされた。当たり前である。

 このまま廊下で談笑……というのも別にいいのだが、それでは色んな人に迷惑が掛かってしまうので、とりあえず部室まで全員で移動する事に。

 その際もハゲ丸は後ろの方で挙動不審状態。だが、流石にそれが目についた桂はこそっと後ろに下がってハゲ丸に声をかけた。

 

「なぁ、俺。さっきから何してんだ? 明らかに挙動不審になってるけど」

「い、いや、これは、その…………いや、別に俺にならいいか……実はな……」

 

 一瞬過去の自分である桂にもビビったが、よくよく考えれば桂相手なら同性だし同一人物だし、ビビる必要も隠す必要も無かった。

 という事で、桂に才村からエロ本を押しつけられてしまい、それが紙袋の中に入っていることを説明すると、桂はどこか諦めたような、そんな感じの表情をして。

 

「……そうか。俺、中学三年で死ぬんだな……」

「生きるのを諦めるなよ過去の俺ェ!!」

 

 桂は生きるのを諦めた。

 だってアニメや漫画や小説でこういう状況になったキャラって大抵最終的には紙袋の中身がバレて処されるんだもん。人によってはこちらの言い分も聞いてくれそうではあるが、確実に先代組はアウト。見られた瞬間即デッドエンドなのはもう疑う余地もないだろう。

 そしてピュア組もアウト。初代組も恐らく千景に見られればハゲ丸は自ら首を吊るし、高嶋に見られれば罪悪感で首を吊る。他のメンツはレズという名の保護者が居るし、アウト。

 恐らく大丈夫なのは県外組、72年組、状況によっては風と夏凜、芽吹、雀、夕海子程度だろうか。他のメンツに見つかれば確実に滅されるか、ハゲ丸が自分で首を吊る。

 

「頼む、協力してくれ……! お前だって中学三年で死ぬ未来なんて嫌だろ? な? な?」

「そりゃ嫌だけど……ってか、そういうのって隠しているから悪いんじゃねぇの? 正直にありのままを言っちまった方が……」

「馬鹿か! お前は勇者部の恐怖をまだ十分に知らないんだ……!! エロ本なんてどんな条件を付けて持って行っても確実に殺されるぞ……!!」

「えぇ……」

 

 まだ付き合いの浅い桂は分からない。確実にあのメンツはハゲ丸がエロ本を持っていったら処するし、その後も精神的に処してくる。そうなったらおしまいなのだ。

 だから、一番の案はエロ本が見つからないように今日一日を過ごし、帰宅してから紙袋を隠蔽し明日の朝一番に才村の机の中に紙袋をぶち込む事に限ってしまうのだ。

 まぁそもそもかけがえのない仲間達に友情とか云々よりも恐怖を感じている時点でそもそもどうなのか、という話にもなりかねないが。

 悩んだら相談。勇者部内で一番守られない勇者部六箇条です。

 

「ま、まぁ……もし見つかっても俺からも庇うから……俺も中学三年で死ぬ運命なんて嫌だし……」

「頼んだぞ、俺……! いや、本当にマジで……!!」

 

 そもそも、あの空間でエロ本を持っている事がバレたら気まずさで首を吊る、というのは置いておこう。

 そんなこんなあり、なんとか過去の自分である桂の協力を取り付けられたハゲ丸は桂と共に勇者部室へ。勿論、エロ本が入った袋は自分の体で隠しながら、だ。

 

 

****

 

 

 勇者部室。いつもなら特にどうした事も無く入る憩いの場なのだが、今日の部室は今までとは違う。

 紙袋の中を見られたら即デッド。確実に処刑されるし処刑を免れても首を吊る。

 何故なら今日は亜耶や友奈ズといった純粋無垢組含めた全勇者部メンバーが普通にいるのだ。特に亜耶に見られてみろ。例え本人が許して手を出せない空気になってもハゲ丸は自ら首を吊る。ぷらーんぷらーんと首吊り死体が一つできあがるだけだ。

 バレてもいい人物を挙げるとするなら、強いて言うなら、強いて言うならば72年組の蓮華と静。それから棗辺りだろうか。あのメンツはまだ話を聞いてくれそうだし、事情をしっかりと理解してくれそうだ。他のメンツは頭勇者部なので確実に殺しにかかるし、赤嶺も友奈族なので恐らくピュア。見せちゃいけない。

 というか、部室で普通に腹筋触る? とか無邪気に聞いてくる辺りピュア以外の何者でもない。まだ色を知らないだけなのである。

 

「そうそう、この間みんなでNGワードゲームやってね~」

「あら、随分と面白い事をしていたのね? 弥勒も誘ってくれたらよかったのに」

「なら今やってみる~? メンツは~……わたしとわっしー、それからにぼっしーで」

「やっぱアイツ暴君だよ……」

「いいわよ、やりましょう。はい、NGワード」

「あんがと。じゃあパパっとNGワードも決まった事だしやりましょうか」

「そうね。まぁ、『弥勒』にかかればこの程度のゲーム――」

『ドーンだYO』

「………………」

「ご先祖様がFXで有り金全て溶かした顔しておりますわ……」

 

 なんか蓮華が一人称をNGワードに設定され即落ち二コマみたいな事をブチかましている。流石勇者(げどう)共だ。例え初心者が相手だろうと見事な全力疾走からの右ストレートだ。しかし、ハゲ丸にはそんな事一切関係ない。

 そっとお菓子が入ったクーラーボックスを机の上に置き、撤退。部室の端っこでなるべく気配を殺す。

 しかし、気付いてほしくない時程、人というのはその気配を敏感に察知して気が付いてくるという物。部室の端っこでガクブルしているハゲ丸を見て(緑の悪魔)が近づいてきた。

 

「どうしたんですかハゲ先輩。そんな端っこで震えて」

「え゛っ、あ、いや、別に……?」

「なんでそんなに挙動不審なんですかキモいなぁ……」

「隠しきれない殺意が沸いたわ」

「あーっ!!? ああああああーっ!!? あだだだだだだだだだだぁー!!?」

 

 少しもオブラートに包まずにブチかましてくる後輩に思わず眉間に皺が寄ってしまい、とりあえずお仕置きとしてウメボシの刑に処した。これにより樹は戦闘不能。とりあえず風に回収してもらい、難を逃れた。

 とりあえずこれで一安心……とはいかないのがこういう時のお約束。樹を処したのでもう一度部室の端に置いてある紙袋の元に戻ろうと振り返った時だった。

 友奈がなにこれ? と言いながら紙袋を拾い上げていた。

 

「ィァ――――――ッ!!?」

 

 声にならない悲鳴をあげながらハゲ丸が人間としての限界を超えて高速移動を行い、友奈の手から紙袋を奪い取った。

 

「わっ、どしたのハゲ丸くん」

「い、いや、ごめんな!? これ、預かりモンなんだわ!!? あまり中は見ないでくれって言われてんだわ!!?」

「そ、そうなの? じゃあ触っちゃってごめんね?」

「いや、俺の方こそこんなの触らせて本当にごめんなさい!!」

「う、うん?」

 

 もう情緒不安定としか言えないハゲ丸の言葉。しかし友奈はそんな事に対する疑問よりもテーブルの上に広げられ始めたハゲ丸特性のおやつに興味が引かれたのか、そっちの方にふらーっと吸い寄せられていった。

 それを見て一安心。ハゲ丸はもう一度紙袋を教室の端に置く。

 このまま置いておくのでは、もしかしたら友奈のように手に取って確認しようとする者が現れるかもしれない。何かカモフラージュ用に横に置いておく何かを用意した方がいいのかも……と思った時。

 

「ねぇねぇ藤丸くん」

 

 赤嶺が藤丸を呼んだ。

 赤嶺とはあまり一対一での関りは無いため物珍しく思いながら彼女の元に行くと、彼女は水筒にしては大きい容器を片手にちょっと困ったような表情を浮かべていた。

 

「どうしたんだ?」

「あのね、わたしって筋トレとかしてるから結構プロテインとか飲んでるんだけど、最近味に飽きてきちゃったんだよねぇ。味にこだわる物じゃないんだけど、ほら、みんな甘い物食べてるじゃん?」

「あー……だから自分も甘いものを食べたいと。できればプロテインで」

「そういうこと。何かアイデア無い?」

「そうだなぁ……」

 

 勇者部のスイーツ担当こと藤丸。そう言った相談には思わず本気になってしまう。

 プロテイン。それ即ち筋トレの友。赤嶺にとっては切っても切り離せない関係のモノ。それを美味しくするには。

 それを自分の知識で美味しくするためには、と考え、スムージーやプリン、更に粉物に混ぜてパンケーキにしてしまうのもいいんじゃないか、と様々な提案をした。その提案を赤嶺は受け入れ、今度試してみるよ、といい笑顔を浮かべてくれた。

 夏凜のために作っているサプリ&にぼし配合スイーツのように赤嶺用に何か作るのもいいかもしれない。そんな事を思いながら、ハゲ丸は紙袋の元に戻ろうとした。

 そして、見てしまった。

 

「…………あっ」

 

 園子と銀がみんなに背を向けながら紙袋の中身を取り出し、ガッツリと表紙を見てしまっているシーンを。

 それ即ち。

 

「お、終わった……」

 

 勘違いからの処刑ルート待ったなし。

 震えながら園子と銀の元へと近づくと、二人は近寄ってくるハゲ丸を察知してびくっとしてから紙袋の中に本を戻した。

 

「あ、あの、さ……その、これはだな……誤解で……」

 

 多分通じないだろうが、精一杯の弁明と命乞いを始めるために二人に声をかけた。

 しかし、二人はそれを聞いてからようやくハゲ丸の方を向き、真っ赤な顔を見合わせていた。

 真っ赤な顔を。

 

「わ、分かってるよ? う、うん、分かってるから」

「こんな女所帯に男一人だもんな? そりゃあ、ほら、色々と思うところとかあるよな?」

 

 今まで見た事無いレベルで顔を赤くしながらてんぱっている二人。その様子にハゲ丸の頭の中にハテナマークが浮かんでくる。

 どうしてこの二人がそんなザ・乙女と言わんばかりの反応をしているのか。この二人なら特に自分を抹殺するために動いてもおかしくないのに。

 

「そ、その、ここのメンツに手を出さなきゃいいとは思ってるし……」

「あ、アタシ達だって結構、ほら……なんつーか、アレな所とか偶に見せちまってるもんな?」

「あの……お二人さん? とりあえず俺の話を……」

「そ、そんなに色々と思うところがあるなら、わたし達も気を付けるから」

「た、ただ、その……こーいう本はこっそり隠しておけよ? じゃないとほら、何言われるか分かんないからな」

 

 二人はそれだけ告げるとハゲ丸に紙袋を突き付け、そのまま他のメンツの元に戻っていった。

 どうしてあの二人が。そう思いながらとりあえず紙袋を教室の隅に置き、ふとちょっと前に杏に言われて更に園子と銀に思いっきり煽られたせいで二人に対して常日頃から思っていた事を暴露したことを思い出した。

 と、するとだ。

 

「考えにくいけど……」

 

 二人はこの紙袋がハゲ丸の物だと分かったうえで、何かしらをしようと思い中を覗いた。その結果出てきたのは肌色率100%の代物。それを見た二人はその時の事を思い出し、ハゲ丸も我慢の限界に至ったので、どうにかしてそれを学校内で調達して持って帰ろうとしたと考えた。

 その我慢の限界は自分達が原因なので、あまり責めるよりも軽く注意だけして終わる事にした、といった所だろうか。

 詳細は違っても、多分あの一件が二人の態度に関与している事は間違いない。しかも、弁明ができなかったのでこれが才村の物だと言ってももう無駄。

 つまり、だ。

 

「………………死にてぇ」

 

 親友にエロ本見られて自分の性事情を察せられた、という事だ。

 普通に死にたい案件だったので、ハゲ丸は普通に部室の隅で膝を抱えて縮こまっていた。そして園子と銀はその日の内はハゲ丸の方を見ると軽く顔を赤くし、ハゲ丸はその度に死にたくなった。

 違うんです、と言ってももう弁明は不可能だろうから。

 

 

****

 

 

 その後はしっかりと本を家に持ち帰り、部屋の隅にそれを放り投げてからふて寝した。

 そりゃあふて寝だってするさ。もう数年来の友人にエロ本見られて優しくされたのだから。そりゃあ死にたくもなるしふて寝も死にたくなるさ。

 夕食は適当に食べておいて、と亜耶としずくには言っておいたので二人も適当に何か食べただろうと思い、ハゲ丸は放課後はずっとふて寝していた。そして、久しぶりに十何時間か寝て朝に起きた。

 そして、自分の机の上を見て、表情が凍った。

 

「……あ、あれ? 俺、紙袋に入れたまま部屋の隅に置いておいたよな……?」

 

 昨日、紙袋から一切出さずに置いておいたエロ本が何故か机の上にポンっと置いてあるのだ。

 それを見て表情が凍り、そしてサーっと血の気が失せていく。

 エロ本が移動しているという事は、だ。このエロ本を手に取り、机の上に置いた誰かが居るという事で。

 着替えるのすら忘れて全力でいい匂いがし始めている居間に向かい、軽く乱暴にそのドアを開け放ち、私服姿で鼻歌を歌いながら朝食を作っている亜耶に朝一番というにはかなり大きな声で一つ質問をした。

 

「あ、亜耶ちゃん後輩! 昨日、俺の部屋入ったのか!!?」

「わっ!? ふ、藤丸先輩?」

「俺が寝てる間に部屋の中入ってなんかした!?」

「え、えっと……お、お掃除だけさせてもらいました。藤丸先輩、洗濯物もお部屋の中に脱ぎっぱなしだったので……」

 

 部屋の中に入って、掃除した。

 という事は……

 

「それで、掃除して……紙袋の中身って……」

「…………そ、その、男の人ってああいうの好きなんですよね? わ、わたしは気にしてないので大丈夫ですよ?」

 

 つまり、そういう事だった。

 同級生に察せられて、居候の後輩に気を使われた。

 

「…………俺、今この瞬間が人生で一番消え去ってしまいたい……」

 

 今なら天の神のレーザーだって喜んで生身で受けに行く。そのレベルで藤丸はこの世から消え去ってしまいたかった。

 居間の入り口で両膝を付き、消え去ってしまいたいと蹲るハゲ丸。そんな彼の肩を、第三者がそっと叩いた。

 顔を上げると、そこには藤丸家の居候第二号である、まだ起きたばかりのしずくが。

 

「し、しずく……」

 

 きっと彼女には訳が分からないだろう。どうして藤丸が蹲っているのか。

 とりあえず何もないとだけ言って立ち上がろうとしたが、しずくはそんな彼に向かって。

 

「……大丈夫。男はエロが大好きな人種だって国土にはある程度教えておいたから」

 

 トドメを刺した。

 

「………………ナニイッテンノ?」

「国土が昨日、藤丸の部屋から顔を真っ赤にして出てきたから何事かと思ったら、エロ本があったから。まぁ、藤丸も男だから……とりあえず、そういう事もあるとだけ国土には言っておいた。あと、エロ本は見つけたら机の上に置いておくのがお約束とも」

「…………お前の今日の晩飯、卵かけご飯だけな」

「えっ…………え゛っ?」

 

 自分の物じゃないエロ本のせいで自分の評価が酷い事になり始めている事実。それにハゲ丸は本当にこの世から消え去ってしまいたかったが、とりあえず亜耶に変な事を教えたしずくには罰を与えておくことにした。

 ちなみにその日の朝は、亜耶が藤丸の顔を見るたびに顔を赤くし、しずくは夕食が卵かけご飯だけという事実に絶望し、ハゲ丸の表情は完全に死んでいた。

 

 

****

 

 

 その後、学校にて。

 

「藤丸! 昨日は急にすまんな! 早速だけど、アレを返して――」

「テメェのせいで俺は園子と銀に変に優しくされて後輩に気を使われて座敷童に男だからで全部片づけられてんだよ死に晒せゴルァァァァァァァァァッ!!」

「ぎゃあああああああああああああ!!?」

 

 ハゲ丸はのこのことやってきた才村に対して全力で叫び、そのまま才村をぶん投げ、窓からフライアウェイさせた。

 外から何かが潰れるような音と生徒の悲鳴が聞こえてきたが、ハゲ丸にとってはどうでもよかった。エロ本が入った紙袋を才村の机の上に叩き付けるように置き、そのまま自分の席に座ると顔を伏せた。

 もう、なんというか。

 本当に、死にたいという気持ちでいっぱいだったから。

 ちなみにしずくには何やかんやで変なものを見せた罪悪感があったため、夕食は卵かけご飯オンリーではなく、亜耶としずくへの謝罪の意味も込めてビーフシチューにしたとか。




ちなみに才村くんはこの後普通に朝のSHRに無傷で参加しました。

で、この話ですが、そのっち&ミノさんに暴露した話が存在していないと二人からのガチ制裁によりハゲはこの世を去っております。でも、もしかしたらハゲにとってはそっちの方がよかったかもしれませんね……

元々はハゲの勇者部への思う所の暴露回の予定だったのにどうしてこんなギャグになったのか……

で、前回のアンケートの結果ですが、ふゆゆ勢はもしもゆゆゆい時空……というか勇者達と関わらせて問題ない経歴のまま話が終わるなら普通にこの時空にぶち込みます。なんかリリ奈ちゃん達が72年組が対処したアレの原因とかいう不穏な考察もあるので……

とりあえず次回は未定。次回をお楽しみに。
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