あと、園っちのPCゲームでの立ち絵みたんですけど、両手広げてる立ち絵可愛すぎません? 反則じゃありません? そのまま抱きつきたくありません? 私は抱きつきたい(欲望)
園っちと小説のネタの出し合いとかしたりストーリーの練り方の談義とかがしたい人生だった……
美森の病院から電車で一時間程の所にある病院。
その一室に入院している少女が、携帯に届いたメールを確認し、小さく声を漏らした。
彼女の声は、その隣の椅子に座って持参した机で問題集を解いている隻腕の少女にも聞こえた。その少女が、銀がなんだ? と軽く聞くと、寝ている少女、園子がいつものような笑顔ではなく、真面目な顔をして口を開く。
「ミノさん。ズラっちが来たってさ」
「ってことは……」
「自力で思い出した、みたいだね」
「……そっか。わかった。ちょっくら行ってくるよ」
銀は立ち上がり、自分の端末を手に出ていこうとして。一度園子に呼び止められ、銀の本当の端末を投げ渡された。
本来、相互監視によって自分の本来の端末を……勇者に変身するための端末を預け合っている二人だったが、園子がそれを銀に投げ渡した。その意味は。
「ズラが、んな真似するとは思えないけど……一応か」
ハゲ丸が何も聞かずに逆上し、銀に襲い掛かるかもしれないということ。
端末を取り上げられている状態では、精霊も呼び出せない。精霊が呼び出せないなら、勇者とて普通の少女でしかなくなる。その状態で勇者であるハゲ丸に襲い掛かられれば、確実に死んでしまう。
故に、万が一を避けるための処置として、精霊バリアは張れるようにと園子は銀に端末を投げ渡した。
銀の言葉の真相は、そういうことだった。
銀は、少し悲しそうな眼をして病室を出ていき、そのまま病院の外へ。ハゲ丸がたどり着くであろう場所に先回りする。そして、銀のついた場所にハゲ丸が走ってくる。
「ようズラ。元気そうだな、調子はどうだ?」
「……」
「あぁ、最悪? それとも
揶揄う様に笑う銀に、ハゲ丸はそのまま掴みかかりそうになる。が、ハゲ丸はそれをギリギリで抑える。
そんな事をしたらいけない。彼女は、そういう事をしていい少女ではないと本能が訴えるから。銀も、ハゲ丸は乱暴な事をしてこないと分かっているから何も言わない。何もしない。
今にも人を一人殺してしまいそうな表情をしているハゲ丸を見て、銀は怖がらない。
そんな表情を受けたとしても、ハゲ丸は何もしないと信じているから。
「聞きたいのは満開の後遺症についてか? それともズラの記憶? どっちも? 答えれる事だけ、答えてやるさ」
「全部言え」
「おいおいおい、人の話聞いてた? 答えれる事だけって」
「全部言えって言ってるんだよ、三ノ輪銀!! 乃木園子の事! 鷲尾須美の事!! 満開の事!! その後遺症の事!! 答えろよ先代勇者!!」
怒鳴る藤丸。
しかし、それに対して銀は何も言わない。
ただ思う事は。変わらないなという。こんな時でも仲間の事ばかりで。自分の事は後回しにしてしまう。それが変わらないなと。
かつて、プロト満開を使って自分と共に三体のバーテックスと戦った時と変わらないと。
「悪いが、それは無理だ。答えれるのは、満開の後遺症はあるということだけ。それ以外は、応えられない」
「そんなの分かりきってんだよ!! 俺が聞きたいのは、それが治るかどうかなんだよ!!」
プロト満開。それは、藤丸の予測が正しいのなら、満開というシステムを生み出す際に作り上げた試作品だ。試作満開だ。
かつて、夏凜に言ったことを思い出す。
試作機は自分たちなのだから、完成形勇者である夏凜は、量産型なのだと。
だとしたら。プロト満開が試作機で、満開はその機能を安定、強化した量産型なのだと仮定できるのだとしたら。満開の後遺症がそのまま残っている状態で満開を量産したのだとしたら。出力と後遺症を増やして量産、実装したのだとしたら。
「……答えられないな」
「答えろよ銀っ!! 惚けるな!!」
「無理だ。まだ、時期じゃない」
「時期じゃ……ない?」
藤丸が声を出した瞬間、銀の後ろから数人の人間が出てきた。
和服と、仮面をかぶった人間たち。
大赦の人間。
「大赦……? やっぱり大赦は……!!」
「おい、出てくんな。下がってろ」
銀は、藤丸との会話では出さなかった、威嚇するような声で大赦の人間にそう告げた。それに藤丸は驚いた。
しかし、大赦の人間は去ろうとしない。
「おい、勇者のあたしの命令が聞けないのか?」
その言葉に、ようやく大赦の人間は引く。
異様な光景だった、としか言えない。言えないが、どこか銀らしいとも言える。そんな光景。
銀は苦笑しながらもう一度藤丸の方を向く。
「わりぃな。邪魔入っちまって」
「い、いや、別に……」
どこか銀の態度に安心している自分がいる。それを感じながら、銀は大赦の人間がどこかへ行ったのを確認してから藤丸に囁く。
「これから先、多分バーテックスの残党が来る。その時に、全部話すよ。あたしと、園子がさ」
「……鷲尾須美は。もう一人の勇者はどこだ」
「それについても。全部話すよ。だから、今は我慢してくれ。我慢して、帰ってくれ」
だけど。
バーテックスの残党が来て、もしもまた満開をしたら。
また、感覚を失ったのなら。
「もう、獅子座のバーテックスみたいなのは暫く来ない。だから、満開さえしなかったら大丈夫だ」
「……信じていいのか?」
「もし駄目だったらあたしと園子を木の下に埋めてもらっても構わないぜ!!」
「じゃあ先に埋めておきますね」
「まだ結果出てねぇだろぉ!!?」
笑いあう銀と藤丸。
なんだかこのやりとりが懐かしい。こんなやり取りを昔、よくやっていたような気がする。
だから。その感覚に免じて、今は信じる事にする。自分の心に、自分の感情に。
背中を向け、去る。そんな藤丸を銀は一度だけ呼び止めた。
「なんだ?」
「お前の満開はさ、全体的に不完全なんだよ。だから、記憶も時々戻っている。でも、全部は戻らない。不完全に捧げているってだけ覚えていてくれ」
「……あぁ。なんか察したよ」
つまり、他の満開をしたみんなは。
友奈の味覚は。美森の髪……はどうでもいいや。風の目は。樹の声は。
「……やっべ、大赦潰してぇ」
「分かるけどやめてくれ。頼むからやめてくれ。もう、やっちまったもんは仕方ないんだから……」
「……最初に知らせてくれれば」
「無理だった。あたしも園子も。あんまり自由できねぇんだ。特に、勇者関係に関しては」
「だとしても」
「言ったところで信じたか? 言ったところで満開しなかったか? いや、無理だ。無理だったよな」
藤丸はその言葉に何も言い返せず。
きっと友奈も。美森も。風も。樹も。そして、自分も。身体機能を喪失する代わりに満開ができるのだと知っていても、満開しただろう。この機能喪失ガチャに挑んでいた事だろう。
だから、銀の言葉に何も言い返せない。
「そうだ。どっちにしろお前らは満開していた。勇者だから。この世界を守るためだからって」
「……それもそうだな」
「諦めろとは言わない。恨んでくれていい。木の下に埋めてもらってくれてもいい。だから……」
覚悟しておけ。
言外に銀はそう言う。藤丸は、それに頷くことはできなかった。
「……もし、お前らが何かやらかしても。少なくともあたしと園子は何も言わない。それが世界を救った勇者の選択なんだって、尊重して、何もしないよ」
「……世界を壊すと言ってもか?」
「従う。その選択権があると、あたしと園子は考えているから」
藤丸はその言葉を聞くと、そのまま去っていった。
それを見送ってから、銀も背中を向ける。
言うべきことは言った。プロト満開の事、全てを打ち明けるということ。
だが、それでも。
「はぁ……悪役に周るってのも辛いもんだね。な、園子?」
振り返った銀が、園子の名を呼んだ。
そしてすぐに、園子が。松葉杖をつきながらもちゃんと歩いている園子が銀の前に姿を現した。
「全くだよ~。っていうかミノさん。サラッと一番きっつい役押し付けたよね?」
「だってあたし、満開してないし?」
園子は、満開を繰り返した勇者だ。銀は、満開をしなかった勇者だ。
だから、満開について語るのなら、当事者である園子が一番だと、そう思った。だから、銀は全てを説明せず、残りの全てを園子に説明してもらおうとしている。
園子もそれは分かっているし、園子自身そのつもりであったため、この言葉はちょっと銀に意地悪をしたかっただけだ。最も、その意地悪も効果はなかったようだが。
「でも、あの説得はナイスだったよ~?」
「え? あぁ、絶対満開したろってやつ? まぁ、ズラが記憶も半分以上消えてんのに満開して園子に加勢したの知ってるし……」
「だね~。もしズラっちが来なかったら、きっとわたしは達磨と変わらない状態だったよ~」
「ホント、園子は運良かったよな。十回? くらい満開して両手と片足が無事なんて」
「左手は動きにくいんよ~」
「あぁ、そうだっけ。いっつも両手で小説書いてるから忘れてたよ」
「案外どうにかなっちゃうものなんだぜ~」
「で、最後の最後で調子乗った結果オーバーキルの満開して片足が使えなくなった馬鹿が言っております」
「動かせるけど感覚だけが無いからどっちにしろ無いのと同義なんだぜ」
園子と隣り合って歩きながら、思う。
二年前なら、自分と園子の隣には、須美と藤丸……いや、桂がいた。
養子組として、芸人コンビとして息があっていた須美、美森と桂、藤丸。そんな二人の芸人っぷりに混ざる天然の園子と、それを見て頭を抱える銀。でも、帰るときはいつもこうやって、横になって四人で歩いていた。時々車が来て、縦一列になって、園子が須美に抱き着いたり、銀自身が桂のズラを叩き落してみたり。
もう戻らないであろうあの日々。
大赦によって与えられ、大赦によって奪われた、友情。記憶。青春。
それを思い、銀は空を見る。
「この空をさ、ズラと須美が守ったんだよな。あたし達じゃない、仲間と一緒に」
「……悲しい?」
「そりゃな。須美もズラもあたし達の事忘れてんだもん。あたし、まだ守ってもらった礼をズラに言えてないしな」
「そんな事言ったらわたしもだよ。ズラっちに、一緒に戦ってもらったお礼、言えてない」
藤丸になら、お礼を言える。
だが、それはきっと、桂にお礼を言ったことにはならない。同一人物でも、藤丸には藤丸としての記憶しかないのだから。桂としての記憶は、人格は。もう消えてしまっているのだから。
だから、悲しい。友を友と呼べないこの感覚が。嫉妬にも似たこの感情が、鬱陶しくて悲しい。
二年も時間があって、満開の後遺症をどうにかする方法を何一つ見つけられなかった事が、悔しい。須美を美森にして、桂を藤丸にして、再びあの戦場へ送り込んだ大赦が憎い。
大赦を潰したい? そんなの、銀と園子が一番思っている。満開の説明をせず。ただ選ばれたからと勇者にして。無限に湧いてくるバーテックスと、完全なる植物状態と変わらない状態になるまで戦えと言い、世界の寿命を延ばすあの組織が。
憎くて、憎くて。仕方がない。
「……ほんっと。あたしが戦えたら戦ったんだけどな。全部背負ってでも」
銀は、未だに勇者だ。
だが、神樹様に認められていない。もう戦えないと、見切られてしまった。だから、今銀が持っている端末に入っている勇者システムは、園子の勇者システムと全く同じだ。銀にしか起動できない、園子の勇者システム。それを纏えば勇者としての力は得られるが、樹海に入れない。だから戦えない。それは園子も同じだ。
もう戦えないから、樹海には入れない。だから、バーテックスと戦えない。しかも、一つの勇者システムを共有しているため銀と園子の二人が共闘することも出来ない。どちらか片方しか出る事しかできない。銀の勇者システムは、もう夏凜へと渡っているから。
「……それはわたしも同じだよ、ミノさん。精霊を十数体連れてるわたしなら、並みのバーテックスなんて」
でも、戦えない。
樹海に入れない。きっと、この後遺症を全部取り除くまで樹海には入れない。神樹様に、戦える勇者だと認めてもらわないと、入れない。
園子も、神樹様に認められていないのだ。最終兵器としてしか。現勇者達が暴走した際。もしくは敗北した際に呼び出される最終防衛ラインとしてしか、認められていない。
「……まぁ、あとはあいつらに任せるしかないな。あたし達は、もうなにもできない」
「これが前線を引いた兵士の気持ちなのかな~? あ、小説のネタにできるかも」
「どんなキャラ書く気だよ……ってかそろそろあたしと須美だったり桂だったりでくっつけるのやめてくれよ」
「駄目です」
「あたしは桂はタイプじゃないし、須美は同性だからもっての外なんだけどなぁ……」
「フィクションはなんでもありなんだよ! なんだったらミノさんがモデルのキャラに生やして……」
「おい中学生」
「残念今はニートだよ」
「おい十四歳」
「ふゅっふゅふゅー」
「おい口笛吹けてねぇぞ」
だからその気持ちをこうして誤魔化しながら。
世界の命運を、あの六人へと託す。
それを邪魔する資格なんて、無いのだから。
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「あー……やっぱ辛いなぁ……記憶も若干あるから、親しかったのは知ってるし。仲良かった奴に詰め寄るなんて、なんか最低な事した気分だ……八つ当たりだったし。今度樹ちゃん後輩にそば味のジェラートを食わせて気を紛らわそう……」
ということでちょっとした答え合わせ。
ハゲ丸くんが時々記憶を取り戻してたのは、プロト満開が不完全な満開なので、供物になった記憶を時々思い出しているのです。思い出せる程度にしか供物になっていないとでも言いますか。頭の記憶は消えても心の記憶は消えなかったと言いますか。ついでに、供物として消えるまでにもちょっとインターバルがあったりすることも。
で、園っちですけど。片足両手以外が原作と同じです。左手は痺れる程度らしいので一応動かそうと思ったら動くという設定に。
銀ちゃんは満開してません。片手失った段階でもう戦えないと判断されて勇者システム剥奪、そのまま勇者じゃなくなったって感じです。現在は状況に応じて園子の勇者システムを借りて戦う勇者って感じです。
というか、園っちが戦闘時に樹海内にいない理由を考えて、こうなのかな? って思って設定しました。どこ見てもストッパーとして存在してるとかしか書いてないので。
暫くハゲ丸くんが無理して笑う期間が出てきますが、この人は悩んだら相談をする気があるのでしょうか。まぁ五箇条は守られる事の方が稀なようなきもしますし。
それではまた次回。