ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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藤丸「(髪の毛よ)咲き誇れ〜……思いのままに……」
東郷「駄目です」
藤丸「あああああああああああああ!!(発狂)」

息抜き作品の息抜きなので更新は未定。あと原作に沿っていくよ。

それと、まだゆゆゆを知ってから一か月ちょっとなので間違ってても許してちょ。


あ! やせいの ハゲ が あらわれた!

 ハゲ。

 それは頭が荒野地帯の人間を的確に表す言葉だ。

 しかし、その言葉が嫌々ながらも似合ってしまう頭になってしまう年ごろというのは、少なくともおじさんや、おじいさんと呼ばれるような歳になってからだ。少なくとも大きな病気をやっていない中学生が似合うような言葉ではない。

 だが、その例外となってしまっている少年を見た勇者部の反応は様々だった。

 怖いもの知らずなのかコミュ力お化けだからか、何の躊躇もなく藤丸の頭を撫でる友奈。腹を抱えてうずくまり、車椅子から落下した東郷。どうすんのよこれ、と天を仰ぐ風。何をどうやっても力の逆位置しか出ないため苦笑いする樹。

 風自身、まさか後輩が同級生の男を連れ込んできたと思ったら、その男からハゲをどうにかしてくれと相談されるなんて考えたこともなかった。

 十円ハゲ程度なら、力を貸すことはできただろう。美森という、情報戦には詳しい彼女がネットで情報を調べるなり、樹と友奈にストレス解消に付き合わせたり。それ以外にも風の持つ勇者部になってからできたコネを当たったり。

 だが、今回は次元が違う。だってハゲだもん。ツルッパゲだもん。太陽の下に出したら光反射してくるレベルだもん。

 今にも自殺しそうな表情をしている彼の頭をペチペチ叩く友奈を引き剥がし、そっと光を当てて反射具合を確かめようとしている樹から携帯電話を奪い、笑い転げている美森の背中を蹴ってから友奈に丸投げする。

 

「いやー、ごめんね? ウチの部員が騒がしくて」

「……いえ、予想はできてたので、平気です…………」

 

 どこがだ。風は大声で叫びたかった。

 

「いやー、にしても見事なツルッパゲだね! ハゲ丸く……じゃなくて藤丸くん!!」

「おいそこの天然。ちょっと黙ってなさい」

「は、ハゲま……ぶふっ!!」

「そこの国防芸人、ちょっと正座してなさい」

「でも、ハゲ丸先輩のハゲは流石に治らないんじゃないかな」

「樹、あなたの晩飯はそばよ」

「そんなぁ!?」

 

 どうして今日に限って勇者部は他人を虐めることに精一杯なのだろう。軽く頭痛がしてきた頭を抑えながら風は一言ハゲ丸に謝っておく。

 もうハゲって言葉がゲシュタルト崩壊を起こしかけている風ではあったが、勇者部として、出された依頼を投げ出すわけにはいかない。

 勇者部五箇条の一つ、なせば大抵なんとかなる、だ。もしかしたらこの不毛地帯が雑木林顔負けのフッサフサな頭に復活するかもしれない。ハゲ丸くんが髪丸くんにジョブチェンジを果たせるかもしれない。

 

「はぁ……で、藤丸。あなた、病院には行ったの?」

「行きましたよ! 何度も行って……鼻で笑われて帰ってきました」

「もうこれアタシ達でどうにかなる事じゃないでしょ」

 

 思わず口に出してしまった。

 医者が鼻で笑うレベルで手遅れなのだ。もう素人がどうこうできる問題じゃないだろう。というか無理。解決手段が思い浮かばない。

 だが、まだ。なるべく諦めないのが勇者部だ。風はカッコつけの指パッチンをしてから妹に一つ命令を下す。

 

「樹、タロットよ。藤丸の頭について占いなさい」

「はーい」

 

 樹のタロット占い。それはかなりの精度を誇る、最早占いではなく予知とも言えるレベルにまで達している。これなら、細かいことは分からなくても藤丸のハゲ丸がどうなるか、大雑把なことは分かる。

 樹がタロットカードを並べるのを尻目に、風は車椅子に戻った美森へと命令を下す。

 

「東郷。ネットでハゲの治療法をできる限り集めなさい」

「無駄だと思います」

「シャラップ。やるのよ」

 

 そして渋々美森が動く。絶対無駄なのに、と愚痴をこぼしながら。

 

「あれ? わたしは?」

 

 と友奈。

 

「アンタは……東郷の画面でも覗き込んでなさい」

 

 一瞬、藤丸の機嫌を取るように、と言おうとしたが、きっと彼女の無慈悲な無邪気は藤丸の心に深い傷をつけて終わるだけだろう。だったら、年長者であり先輩の自分が世間話でもした方が、藤丸の心も安らぐだろうと。謎の結論をつけてから、友奈を美森に押し付ける。美森は笑顔で彼女を迎え入れた。

 友奈が来ると露骨だなぁ、なんて思いながらも風は一つ咳ばらいをしてから藤丸の対面に椅子を置いて座る。視線が自然と頭の方に行きかけるが、視線を気合でなんとか顔に戻す。

 しかし、会話が続かない。

 頑張れ私。日ごろからうどんで鍛えている女子力を見せるのよ。なんて内心で自分を鼓舞してから藤丸に話しかける。

 

「え、えっと……まゆげとかまつげは生えてるのね」

 

 最速で最短で真っ直ぐに事故った。

 これ完全に藤丸に、どうして頭がツルッパゲなら頭部の毛を毟り取らなかったんだと聞いているも同じだ。

 冷や汗ダラダラでなんとか弁明しようとして。

 

「……唯一の希望なんです……!! 頭部からも毛は生えるんだって……!! 唯一の……!!」

「ごめんアタシが悪かった勘弁して泣かないでッ!!」

 

 どうして勇気を出して秘密を暴露してくれた少年の心をこうも的確に抉ることができるのだろうか。なんて軽い自虐をしながら、樹のタロット占いが終わるのを待つ。

 が、すでに何度もカードを集めては切って、それを改めて配置してを繰り返している音は聞こえるが、結果が聞こえてこない。このままじゃ彼の心をこれ以上痛めつけるだけだと思った風は樹に途中でもいいから占いの結果を聞くことにした。

 

「い、樹! 結果、結果は!?」

「え? 結果……うん、出てることには出てるんだけど……」

 

 が、樹の言葉はどうにも煮え切らない。

 どうして、と言いながら風はそっと樹の配置したタロットを覗き込む。そして、苦笑が出てきた。

 一応、樹の占いを自分にもよくしてもらっているため、そこそこタロットの配置が生む意味は分かる。分かるのだが。これは流石にひどかった。

 

「さっきはハゲ丸先輩全体に対して占った結果、力の逆位置だったんだけど……これは、ハゲ丸先輩の頭に対して占ったの。その結果は……」

「し、死神の正位置……」

「しかもこれ、何度やっても死神の正位置なんだよね……ほら」

 

 そう言って樹はもう一度占って見せる。

 結果は、死神の正位置。

 つまり、彼の頭には死神が立っている。もうあの荒野地帯は樹のタロットではもう二度と復活しない死の土地へと変貌しきってしまっているという事なのだろう。これには流石の風も苦笑いすることしかできなかった。

 何度も樹はタロット占いをするが、結果はやはり死神の正位置。ほら、ファイブカード。なんて樹は場を和ませるためにふざけてみたが、つまりは死神が五回連続で出たということ。絶望戦隊死神ファイブだ。もうこれはどうしようもないだろう。ハゲ丸の表情はもう絶望そのものだ。某魂の宝石があったなら今頃真っ黒に染まりきってしまっているだろう。

 

「と、トウゴー!! そっちはどう!!?」

 

 オカルトは完全にダメ。だったら科学の方はどうだ。

 風はダメ元で美森と友奈へと成果を聞く。が。

 

「いや、やっぱり駄目ですって。どこ見てもありきたりな情報ばかりですから」

 

 やはりと言うべきか。結果は同じ。美森が調べて出てきたのは、どこかで聞いたような眉唾なハゲ治療法だ。そんな物に効果があるのならこの世のハゲは全員フサフサだ。つまり、効果は殆ど見込めない。

 アカン、と風はもう一度天を仰ぎかけて。

 

「試しにワカメと昆布を頭に乗せてみたらどうかな?」

「それトドメだからァ!!」

 

 最後に友奈のトンデモ回答を聞いて地に倒れ伏した。

 頭にワカメと昆布を乗せて歩いたりなんかした日には、自分は頭に対して何かしらの異常を抱えていますと言っているようなものだ。というか、ほぼ全員がそれを見てハゲてるのかな? と疑問に思うこと間違いなしだろう。もうハゲ丸は諦めきった表情を浮かべ、風はボケしかしない周りに疲れきった。

 おかしいなぁ。昨日までは全員普通だったんだけどなぁ。そう思いながらも風は絶望を表情に浮かべるハゲ丸に対して、一つ宣言をする。

 

「藤丸。アンタ、勇者部に仮入部しなさい」

『えっ!?』

「……え? どうして、ですか?」

「こうして相談された以上、何があってもハゲを治してあげるわ。だから、それまでは勇者部所属ということにして、私達が接触しやすいようにしなさい」

 

 それに、大赦の方から言われていた事もあるし、と風は言葉に出さず、自分の内心の身で呟く。

 可能であれば、との事だったため今までスルーしていたが。しかし、こうしてチャンスができたのならお役目は果たすべきだと。

 

「まぁ、このまま勇者部から去ったら、どうして勇者部に行ったのか。悩みはなんだって探られてハゲがバレる可能性もあるわ。だから、ここは私直々にスカウトしたってことにしておいて、お茶を濁しましょう?」

 

 それは勇者部としての意地でもあるし、彼女の持つお役目を果たすため。そして、流石にこの歳でツルッパゲな彼をどうにかして助けてあげたいという、風の中の良心故だった。彼女の父も、ここまで見事なツルッパゲではなかったし。

 

「い、いや、でも……」

 

 しかし、藤丸は躊躇する。

 流石に、この女子ばかりの部に自分がお邪魔していいのか。というか、確実に自分のハゲを治すだなんて無理なんじゃ。そう思い。しかし、風のいいから言うこと聞けという視線に文句一つ言えず。

 だが、もしかしたら。もしかしたら彼女なら自分のハゲを。没個性で、趣味も特にない自分の唯一の悩みであるこのハゲを治してくれるのでは。そんな希望をもって。あと、こんな美少女達とちょっとお近づきになれたらという少しの打算も込めて。

 

「……じゃ、じゃあ、そういう感じでお願いします」

 

 結局、風に押し切られたような感じで風の言葉に頷いた。

 風はそれに対してよろしい、と首を縦に振った。

 

「え? ハゲ丸くん、勇者部に入るの!?」

 

 無邪気な無慈悲の言葉によりハゲ丸くんの心に大ダメージが入った。

 

「お姉ちゃん……流石にハゲ丸先輩の頭は無理だって……」

 

 樹の諦めた言葉に更にダメージを負って。

 

「……このハゲが」

 

 友奈にうれしそうな声をかけられたという嫉妬から来たであろう、美森の殺意の籠った言葉に心が砕けかけた。というか、美森が結構マジで罵倒してきているのがかなり心に来た。来たのだが、どこか懐かしい感じもあった。

 三人からのハゲ呼びに耐えながらも、ハゲ丸は希望を見出す。この勇者部に。もしかしたら何かしらの方法で自分の頭を荒野から森に変えることができるのではないかと。

 

「じゃあ、これからよろしくね、ハゲ丸くん!!」

「わ、わたしも! よろしくお願いします、ハゲ丸先輩!」

「このハゲーーーーーーーーッ!!」

「何叫んでんの東郷!!?」

「……ごふっ」

「ハゲ丸先輩、ダウン! ワン、ツー、スリー!」

「追い打ちかけないの樹ィ!!」

 

 しかし、精神的なダメージをこれから負い続けるんだろうなぁ、と。ハゲ丸は思った。




同級生から無邪気に笑顔でハゲ丸くんと呼ばれ、初対面の後輩からいきなり不穏な占いされた上にハゲ丸先輩呼ばわりされた上に、もう一人の同級生にストレートで罵倒されるハゲ丸くん可哀想。

ちなみに、タグは精一杯文字を打ったよ。その結果があれだよ。そのっちとミノさんのタグの意味はまた後でだよ。

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