ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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なんかこれ書いてる最中に、シリアスの方がなんか書きやすいなぁ……とか思いました。楽しいのはギャグ書いてる時なんですけどネ

あー、もうすぐテストだぁ……なんて思いながら現実逃避気味の更新。もっと全休が欲しいよう……


ハゲしのゲン

 結局ハゲ丸は海に腰までしか浸からなかった。同じように海へ行ったらハゲがバレる美森も車椅子で上半身が出るような場所までしか行かなかったため、あまり楽しめなかった。

 二人は基本的に砂浜で遊んでおり、それを見た友奈によるチキチキビーチバレー大会が開催し、ハゲ丸の顔面に友奈の勇パンにより超加速したボールが叩き込まれたり樹による風とのゴールデンシュートでハゲ丸が吹き飛ばされたり、夏凜の完成型勇者ショットがハゲ丸の大事なところに突き刺さったり、美森によるパスがどうしてか豪速球となりハゲ丸の鳩尾に突き刺さったりと、ハゲ丸がとにかく体を張る形になった。そしてキレたハゲ丸VS勇者部女子陣による鬼ごっこが開催されたりもしたのだが、それは余談だ。

 そうしてはしゃぎにはしゃいで迎えた夕方。眼福な水着を見れる時間は終わりを迎えようとして、今日という日は明日という朝を迎えるための準備へと入る。

 

「ふぅ、遊んだ遊んだ!」

「なんだかちょっと物足りない感じもしますね、風先輩」

「そうねぇ。まぁ、海なんて来年でも再来年でも来れるんだし、今日の所はこれでお別れとしましょ。ほら片付け片付け」

「ちゃっちゃとやってお風呂入ってご飯にしましょう! もうお腹ペコペコですよ~」

「じゃあ我慢できなくなったら夏凜でも齧ってなさい」

「いやどういうことよ」

「あむっ」

「マジで齧るな」

「あむあむ……塩味?」

『海水に漬けて塩の風味をつけたにぼっしー。税込み二百五十円』

「にぼっしーじゃないししかも安い!!?」

 

 来年も再来年も。

 その言葉にハゲ丸は後ろの方で顔を顰める。

 来年も再来年も、自分たちはきっと勇者のままなのだろう。銀の言う事をそのまま飲み込むのであれば、勇者のお役目は、そう簡単に終わるものではない。バーテックスの残党と、戦い続ける。レオ・スタークラスターのようなバーテックスは暫く来ないと言っていたが、裏を返せばいつかレオ・スタークラスターのようなバーテックスが再来するということ。

 あれと二度、三度と戦えば、きっと勇者部は自分含めて全員満開を繰り返す。自分の身体機能を犠牲としてバーテックスと戦い続けるのだろう。そして、その先には。この世界を守り続けた勇者たちは。

 本当に、また海に来れるような身体機能を残せるのだろうか。

 

「……ハゲ。ちょっとは楽しそうにしなさい。友奈ちゃんにバレたら心配されるわよ」

「……わりぃ、クソレズ」

 

 そんなハゲ丸の元に美森が一人寄ってくる。

 彼女の行動原理は基本的に友奈が絡む。友奈が絡むからこそ、全員の事を心配する。少なからず好意を持っている勇者部の面々に、ウマは合わないのにどうしてか気にかかるハゲ丸。友奈の心配をするからこそ、ハゲ丸に言葉を投げかける。

 そして、美森だけはハゲ丸が、腹に何かを抱えているのを知っている。いや、分かってしまう。

 戦闘でさえ阿吽の呼吸でバーテックスを倒す二人だからこそ、表情を見れば何か悩み事を抱えているというのが分かってしまう。美森は、ハゲ丸の表情からそれを察して、口にする。

 

「……満開の事かしら」

「っ……よく分かったな」

「元は私が話したことよ。あの時から急に様子がおかしくなったのだから、嫌にでも分かるわ」

 

 それもそうか、とハゲ丸は小さく返した。

 だが、大体の事を察している美森に対しても、ハゲ丸は口にできない。口止めをされているから。

 唇を噛むハゲ丸を見て、美森は溜め息を一つ吐く。

 

「……勇者部五箇条一つ。悩んだら相談」

「……悩んでない。解決方法は分かっている。それを実行に移すには時期尚早なだけなんだ」

 

 嘘だ。悩んでいる。

 この真実を勇者部の面々に告げていいのか。告げずに、ハゲ丸が銀と園子に逆に口止めをしたら、彼女たちはこの残酷な真実を見ずに、希望だけを見て生きていけるんじゃないか。もしかしたらが起こるのではないかと。

 だから、嘘を吐く。

 時間はまだあるから。

 

「時間が解決するってこと?」

 

 それすらも美森は理解している。分かっているが、敢えてそれを口にしない。

 きっと彼が悩んでいるのだと知りながらも。それを聞き出すのは野暮だと。彼の内心をこれ以上探らない。表面上の言葉だけで物事を進める。

 

「少なからず」

「なら黙っていてあげるわ」

 

 友奈ちゃんに変な心配をさせたくないから。

 美森の言葉の尻にはその言葉が付属した。だが、それすらも今のハゲ丸には助かった。

 助かる、と言えば美森が貸し一つと告げる。

 風が旅館に行くと二人に告げ、ハゲ丸が車椅子を押して風達を追いかける。今の表情は、偽りの笑顔を張り付け勇者部に悩みを悟られないようにしていた。それがいつまで持つのかは、分からない。

 

 

****

 

 

 それから勇者部一同は旅館の温泉に浸かってから勇者部が借りている部屋へと向かった。

 男が混ざってもいいのか。というか同じ部屋に泊まるのは果たしていいことなのかとハゲ丸は聞いたが、他の部員曰く、ハゲ丸にそんな根性はないし、手を出そうものなら友奈の勇パンによる顔パン、美森の鉄拳制裁&射撃、風の女子力(物理)と夏凜の木刀二刀流による殴打、最後に樹からのスペシャルうどんがお見舞いされるのが分かりきっているので別に構わないとの事。

 ついでにハゲ丸は男として見られていないというのも発覚し、ハゲ丸は泣きかけた。どうやら美少女に囲まれてもフラグなんて一切建たないらしい。もしもハゲていなかったらワンチャンはあったかもしれないが。

 温泉から女子陣よりも少し早めに出たハゲ丸が十分以上待ちぼうけをくらうという珍事が起こったり、女湯で美森のカツラをどうするか等の問題は起こったが、まぁそこらへんは何とかなった。何故なら勇者部の入浴時だけは大赦が貸し切りにしていたから。

 そして、部屋に戻った勇者部一同の目に飛び込んできたのは。

 

「……か、蟹だわ」

「それ以外にも豪華な料理が……お、美味しそう……!!」

「俺、船盛とか初めてみたぞ」

『ヤベーイッ!!』

「その声何!? え、仮面ライダーの変身音? 今そんな感じなのね……」

「涎を垂らす友奈ちゃんハァハァ……」

 

 約一名ヤベーイッ!! 奴がいたり、携帯から謎のボイスを流すのが居たりしたが、どちらにしろ勇者部の目は点になっていた。

 いくら世界を救ったご褒美とはいえ、こんな好待遇。移動費宿泊費等々を恵んでもらってしかもこの食事。さっきまでは世界を救ったご褒美だなんてはしゃいでいたが、ここまで中学生にするご褒美にしては贅沢すぎる物を見てしまうと、恐れ多くなってしまう上にどこか怖くなってしまう。

 部屋を間違っていないか風が確認するが、間違っていない。そして料理はとんでもない豪勢。

 

「か、カニカマじゃないよこれ!」

「そりゃそうだけど……これ、間違ってるんじゃ」

 

 風がチラッと部屋の入り口を見る。そこには女将達が三つ指をついて座っていた。

 その女将達は、そっと首を横に振った。

 

「それでは、ごゆっくり」

 

 その言葉と共に扉が閉められる。どうやら本当にこれが勇者部の夕食らしい。

 一人一つの蟹。しかも中央には巨大な船盛。一生のうちに片手で数えれる程度食べられたらいいレベルの豪勢な夕食が並んでいる。その光景に圧巻し、生唾を飲まないわけがなかった。

 各々が席に座り、目の前の蟹を見る。物言わぬ蟹はどうしてか今すぐ食べて。美味しいよ。なんて言っているようで。今すぐにでも食べたいくらいだったが、ふと風は友奈を見た。

 味覚がない。それなのにこんな豪勢な料理。友奈は辛くないのかと思ってしまう。

 思ってしまうのだが。

 

「ほら友奈、沢山食え。いっぱい食え」

「わっ、ハゲ丸くん蟹剥くの上手!」

 

 友奈は今にもハゲ丸が剥いた蟹に食らいつきそうだ。

 どうやらその心配は杞憂だったらしい。よく思い返せば彼女はうどんもジュースもジェラートも、匂いと色で味を想起し美味しいと本気で言う優しい子だ。こんな心配をする方が失礼だったとも言えてしまう。

 風は自嘲気味に小さく笑ってからハゲ丸と友奈を一度止める。

 

「ほら、先に全員で手を合わせなさい!」

 

 こんな豪勢な食事なのだ。マナーくらいは守らないと、きっと神樹様の罰が当たると思って。部長権限で全員が手を合わせたところで、日本人らしい言葉を口にする。

 

「はい、いただきます!」

『いただきます!』

 

 食事に感謝して。神樹様に感謝して。

 勇者部はそのまま蟹に食らいつく。

 

「んん~! この喉越し、この舌触り! たまんないよ~!」

「蟹を食べる友奈ちゃんもいいわ……! いいわ……!!」

「ほら友奈。この味噌を身に付けて食ってみろ。ヤバいぞ」

 

 友奈、美森、ハゲ丸の三人が思い思いに蟹を剥いて蟹を食べる……というかハゲ丸が蟹を剥き、友奈がそれを食べ、美森が写真を撮るという謎の連鎖が起こっている。が、ハゲ丸と美森の心は同じ。美味しそうに食べる友奈を見たいという願望からきている。

 対して風、樹、夏凜の三人は。

 

「いやぁ、いつかは普段からこういうのを食べれる身分になりたいわね」

「まぁ分からないでもないけど……そう簡単にいかないわよねぇ」

『ヤベーイッ!!』

「いやなんで?」

『失礼、噛みました』

「いや、わざとでしょ」

『かみまみた!』

「わざとじゃない!?」

 

 こっちもこっちで好き勝手に食べている。

 風は刺身を食べ、夏凜は蟹を剥き、樹も蟹と刺身に夢中だ。そのためか樹がテンプレで用意している音声を間違えたりしているが、それも些細な事だ。

 

「ハゲ丸くんは食べなくていいの? ずっと剥いて……ってあれ!? ハゲ丸くんの蟹の足、半分ないよ!?」

「え? うわっ、マジだ!?」

「蟹うめぇわね、ハゲ」

「く、クソレズ!? Kiss summer!!」

「ふっ……食事は戦闘よ。油断大敵という言葉を……あれ? 私の蟹、足しかない……」

「残念だったなクソレズ。俺は身よりもカニミソが好きなんだよ! ということでお前の蟹の本体は俺が貰った!!」

「こ、このハゲッ!! Kiss summer!! 私のカニミソを!! まぁ私、カニミソよりも身の方が好きなのだけど」

「あれ? これ等価交換じゃね?」

「……そうね。等価交換ね」

『……YU-JO!!』

「なんか勝手に喧嘩して勝手に仲直りしてるよ……」

 

 そしていつも通り芸人のコントが挟まったが、それも些細な事だ。

 友奈の分の蟹を剥き終わったハゲ丸は自分と美森と交換した蟹の甲羅を開き、身にミソを付けて至福の時を過ごし、美森も蟹の身を存分に堪能し、友奈も色々な刺身に手を付けて夕餉を堪能している。

 

「そういえばハゲ丸くんって毛ガニとか食べないの?」

「え? なぜに?」

「だって毛ガニって食べたら毛が生えそうでしょ?」

「それで生えたら俺は毎日毛ガニ食ってるよ」

 

 こんな、友奈の無邪気パンチもあったことにはあったが、ようやく友奈の言葉では精神的ダメージを受けなくなったハゲ丸はその言葉を軽く返す。

 そうして楽しい食事は終わり、女子陣はもう一度風呂に行き、ハゲ丸は一人寂しく全員分の布団を敷き、温泉から勇者部女子陣が戻ってきて、自然と流れはそのまま就寝へ。

 

「……っていうか、ふと思ったんだけど」

 

 そんな流れの中で、風が口を開いた。

 風がこういうときに口を開くと、大抵は話がコロコロと転がるいい塩梅の話題を提供するか、もしくはとんでもなくどうでもいい事を切り出してくるときもある。

 そして今回の話題は。

 

「誰か浮ついた話とかないわけ?」

 

 とんでもなくどうでもいいとも言えるが、言い感じの塩梅の話題だった。

 浮ついた話。つまり、恋煩いとか恋人とか。そんな感じの話題という訳だ。しかし、そんな話を常に忙しいとも言える勇者部が持っているわけがなく。いや、約一名現在進行形で恋煩いというよりも親友にヤバイ感情を持ってはいるが、それはカウントしない。

 同姓愛ではなく異性愛で何か無いかと。その結論は。

 

「……何よつまんないわね」

「おう何も無い犬先輩が何言ってんだ」

「何よ失礼ね。アタシはあるわよ?」

「え、マジすか」

「アレはアタシが……」

『はいこれもう十回目なのでカット!!』

「あ、そうなん?」

「ちょ」

 

 まぁどっちにしろ何もなかった。華の女子中学生と男子中学生であったが、どっちにしろ浮ついた話はないようだった。寂しいわねぇと風が言い、うるせぇとハゲ丸が噛み付き、風がハゲ丸に飛びかかりチョークスリーパーがハゲ丸を締め上げる。

 枕をタップするハゲ丸。それを止める友奈と夏凜。笑う美森と樹。なんともカオスな光景だったが、一番勇者部らしいと言える光景でもあった。

 

「死ぬかと思った……で、樹ちゃん後輩よ。ちなみにその話の結末は」

『告白してきた人……まぁ、男の人と女の人なんですけど。その二人が付き合ってお姉ちゃんがハブられるってオチです』

「流石に草生えるわそんなん」

「キエェェェェイ!!」

「クエェェェ!!?」

 

 再びのチョーク。タップするハゲ。もう疲れたのか解放する手伝いをしない友奈と夏凜。笑う美森(ハゲ)と樹。

 どっちにしろ勇者部に浮ついた話は一切合切無かった。不純異性交遊が無い事を喜べばいいのか、それとも貴重な学生時代の青春をこんなピンク色の一切ない日々で終わらせかけていることに泣けばいいのか。少なくとも、もうあと数年は学生なのだしあまり急ぐ必要はないのだろうという結論に至った。

 そうして適当に駄弁っているうちに、ふと風が隣で布団に入っている夏凜に目をやり、気が付いた。

 

「ありゃ。寝落ちてるわね」

「三好さんが先に落ちたか……意外だな。俺は樹ちゃん後輩か友奈辺りが寝落ちるって思ってたんだが」

「わたしは案外平気だよ~?」

『こんな時間に寝てたら深夜アニメ見れないので』

 

 最早平行世界(原作)の樹とは乖離し尽しているが、そんなことは勇者部は気が付かないし気にもしない。だから身長が伸びないんだよ、と呟いたハゲ丸の顔面にプラカードが刺さる光景を最後に部屋の電気が消える。電気が消えてもプラカードが顔面に刺さったまま上を向き寝るハゲ丸には謎の威圧感を感じたが、電気が消えて暫くし、美森が急に口を開いた。

 

「これは旧世紀で起こった事なのだけど……とある車がトンネルを抜けようと走っていたのよ」

「えっ、ここで怪談!?」

「ちょまっ、電気つけ……ちょ、これ誰ぇ!? あ、樹か」

「顔面プラカードマーン……」

「ぎゃー!!? 謎の威圧感が迫ってくるぅ!!?」

「それでトンネルを途中まで行ったとき、ふと頭を誰かに触られたらしいのよ。それで、その人は後ろを向いたのだけど……その人は一人で車に乗っていたから誰もいるわけがなく……」

「顔面プラカードマーン……顔面プラカードマーン……」

「ちょ、やめっ、何このカオス!! こっち来んなぁ!!」

「ピブルチッ!!?」

「あっ!? なんかハゲ丸くんの首が百八十度回ったよ!?」

「それでその人は急いでトンネルを抜けて、車を降りたらしいのよ。で、その時に判明したの。その人、髪形をかなり高いモヒカンに髪型を変えていたから、ただ車の天井にモヒカンが擦れて誰かに触られてた気がしただけっていう……」

「しっかも東郷の怪談が怪談じゃない!! オチがとんでもなく間抜け!!」

「えー、実は私、夏凜ちゃんがおっぱいが小さいのを気にして温泉でおっぱい揉んでいたのを知っています」

「それは猥談!! っていうか猥談にしてはすっごい地味!! どうせなら《バキューン!!》が《チョメチョメ》で《見せられないよ!!》なところまで言いなさいよ!!」

「風先輩、それ以上いけない!! っていうかハゲ丸くんの首戻らないんだけどどうしよう!!?」

「友奈ちゃん、こういう時は大人しく鳥葬の準備よ」

「そ、そうなの? じゃあ外でカラスを捕まえてくるね!!」

「ちょ、友奈! その言葉を鵜呑みにしない!! って本気でカラスを捕まえに行くなぁ!! ちょ、誰か友奈止めなさい!! 樹、ちょっと友奈を……」

『鳥葬ならハゲワシがいいらしいからハゲワシ捕まえてきますね!!』

「ってお前もかい!!? あ、ちょ、待ちなさいアンタ等!! 待てゴルァ!!」

 

 なんともまぁカオスな空間だったが、結局全員一時間後には布団に戻って眠りについていた。なお、その間夏凜は一度も目を覚ますことはなかった。

 そして。

 

「――――――」

 

 ハゲ丸は首が百八十度曲がった状態で布団の上に投げ捨てられているのであった。きっと勇者じゃなかったら死んでいただろう。

 

 

****

 

 

 もうすぐ夜明けの時間。友奈は自然と目を覚ました。

 もう太陽が薄い明かりで部屋の中を少しだけ照らし、寝る前までは見えなかった部屋の中の惨状を見せてくれる。風と夏凜は、きっと風の寝相が悪かったのだろう。風が夏凜に抱き着き、夏凜がそれを抱き着き返した。もしくはその逆が発生したのだろうと容易に想像できる光景となっており、樹はハゲ丸の顔面に覆いかぶさるように寝ている。ハゲ丸の顔に刺さっていたプラカードはどこかへ行っており、代わりにハゲ丸は息ができていない。たぶん死ぬでしょう。

 そして、美森が布団で寝ていなかった。

 部屋の中を見渡せば、美森は一人、窓際の椅子に座って外を見ていた。その手には、普段から肌身離さず持っているリボン。今はカツラのに巻いているリボン。

 友奈はそっと立ち上がり、美森の元へと向かった。

 

「肌身離さずだね、そのリボン」

「あ、友奈ちゃん……うん。これだけはどうしても手放せないの」

 

 何故なら、このリボンは事故で記憶と足の自由を失った時からずっと持っていた物。だから、どうしても手放せない。髪の毛を失っても、これだけはないと。

 リボンを握りながら、美森は朝焼けの空を見る。焼けと言っても空は青く。光が少し刺している程度。あぁ、綺麗だと思い、海を見て、太陽の光の反射に目を奪われて。

 だからか。その光に若干の不安を当てられたのは。

 

「……戦いは、本当に終わったのよね」

 

 この海を、空を、光景を自分たちが守った。

 それなのに。あの激闘を制したのは自分たちなのに。どうしてだろうか。不安が押し寄せてくるのは。

 戦いは終わっていない。まだ戦いは続く。覚悟を決めろ。まだ護国は終わっていないのだと美森の中の何かが話しかけてくるようで。でも、友奈はそれを優しく受け止め、肯定する。

 終わったんだよ。もう戦いは過ぎたんだよと。そっと立ち上がり、美森を後ろから抱きしめながら。

 言い聞かせるように。自分にも、美森にも。もしかしたら、もしかしたらで襲い掛かってくる不安を。戦いを。万が一を掻き消すように。

 終わったんだ。戦わなくていいんだ。平和は勝ち取ったんだ。

 

「勝ったから、私はハゲたのよね。この国を守り通したのよね。髪と引き換えに」

「……うん。でも、大丈夫。この世界は無くなったら終わりだけど、東郷さんの髪の毛はきっとまた戻るから。ハゲ丸くんみたいなのはレアケースだから」

「だって生まれた時からツルッパゲだものね」

 

 その言葉に二人が笑う。

 そうだ。もう終わったんだ。

 もう気にしなくてもいいんだ。

 今、手元に勇者システムの無いスマホがあるのがその証拠だ。もう戦いは終わったんだという証拠だ。

 もう、勇者部は勇者じゃなく。勇者となるべく人助けをするただの中学生の集まりだ。結城友奈は、東郷美森は、勇者部である。だが、勇者ではない。

 

「……味覚、戻るといいわね」

「……髪の毛も、ね」

 

 静かな朝は二人の会話すらも静かなものにして。

 上りゆく太陽はまるで二人の気持ちを。不安に当てられた気持ちを明るく照らすかのように、徐々に赤く煌めき始めた。




ハゲ丸(たしゅけて……たしゅけて……)
樹ちゃん後輩(駄 目 で す)
ハゲ丸(こいつ、直接脳内に……!?)


ハゲ丸くんは生きていますのでご安心を。次回からお役目延長戦の時間でございます。そろそろ園っちと銀ちゃんが本格参戦のお時間ですね。残党討伐の後から一気にギャグ少なくなりそう……

なんとかあの展開にギャグを差し込んでシリアル状態にして笑いを取りたい所……でもフーミン先輩ガチギレからの大赦絶対潰すウーマン化する所とかギャグ化できる気がしない

まぁ何はともあれまた次回。っていうか、このペースなら案外早く一期は片付きそう。これはわすゆも普通に書けるくらいの余裕はあるかも
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