ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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日刊五位やったぜ。もっと評価と感想とお気に入りを増やしてもいいのよ?(乞食感)

園っち&銀ちゃん本格的に参入。

さて、爆弾抱えた二人はちゃんとシリアスな空気でその爆弾を爆発させることができるかな?


ハゲしい空気の切り替わり

 友奈、美森。そして、ハゲ丸の樹海からの帰還はイレギュラーという形になった。

 大破した大橋の前にある祠で、友奈と美森は辺りを見渡す。そして、ハゲ丸がやっとか、と肩の荷が下りるような気がして。すぐにハゲ丸は銀と園子を見つける。

 片腕の無い銀と、ベッドに寝ている園子。ついこの間見たばかりの銀と、そして約二年ぶりに見る園子。園子の姿はとても痛々しい物でとてもじゃないが見ていられないと目を逸らそうとして、その手にもっている物を見て目を見開いた。

 何故なら彼女は。そして銀は。

 

『バーテックス残党狩り達成おめでとう!』

 

 と言いながら手にもっていた物、クラッカーを思いっきり鳴らした。銀に関しては口で紐を引っ張っている。

 思わず呆然とするハゲ丸と友奈、美森。振り向けばそこにはどこからか持ってきたベッドに寝ている少女と、その隣に見覚えのない少女。二人が笑顔でクラッカーを鳴らしているのだ。もう何がなんやらという状況だ。

 呆然とする三人を見てもなお、銀と園子は特に笑顔を崩さなかった。

 

「やぁやぁお役目ご苦労さん、後輩勇者諸君」

「わたし達は先代勇者、つまりは先輩勇者なんだぜ!」

 

 思わず呆然としてしまう友奈と美森。そんな二人に若干イラつくハゲ丸。

 そんな三人を差し置いて銀が片手で椅子と机を運び、まぁまぁ座りなよと三人に座るように諭す。そして三人が座ったところで銀がそっとティーセットを持ち出して三人の前に紅茶……ではなく緑茶を注ぐ。どうして外なのにこんなに色々な物があるのかと気になってしまうが、有無を言わさない銀と園子に何も言えないでいる。

 そんな状況でさて、と園子が口を開いた。

 

「これで少しは空気が和んだかな?」

 

 和んだか和んでいないかと言われたら、頭の中がちんぷんかんぷんで埋まっているというのが一番だろう。ハゲ丸も昔からあまり変わっていない園子と銀に頭を抱えている。

 そんなハゲ丸を差し置いて再び園子が口を開く。

 

「そうだねぇ……まずは何から話そうかな。話すことは決めてたハズなのに、いざ会ってみたら何言えばいいのか分からないや」

 

 その言葉に銀も顔を下に向けた。

 友奈と美森からしたら知らない人が何か言っているだけ。しかし、園子、銀からしたらもう二年近くあってなかった仲間であり親友の須美とハゲ丸。先代勇者が久しぶりに全員揃った時なのに。相手が覚えていないのだから笑顔で久しぶりとも元気にしてた? とも。何も言えないのだ。

 親友に対して初対面と偽ってしか。会えなかったのだ。その気持ちがなんとなく分かるからこそ、ハゲ丸も何も言えない。最初の笑顔と歓迎は、自分たちの寂しさを紛らわすためのものであったのだと、園子と銀は白状したかったが、白状したところでと思いぐっと堪える。

 時間はあまりない。話すことを話すことを話さないと。

 

「わたし達はね、勇者システムの真実について教えに来たの」

「勇者システムの……真実?」

「……まさか」

 

 美森は大体予想できているのか、表情を引き締めた。そして、ハゲ丸は申し訳なさそうに顔を伏せるだけ。唯一友奈だけはよく分からないと言った表情をしているが、それでも園子は続ける。

 

「……ねぇ、満開のシステムってさ。どうして満開って名付けられたんだと思う?」

「そ、れは……作った人が……」

 

 決めたんじゃないかと言おうとしたが、作った人が満開と名付けた理由を聞いているのだ。それは正しい答えではない。

 園子はその質問に答えは返ってこないものだと分かっていたのか、何も言わない。

 代わりに、その質問に対する答えだけを口にする。

 

「……花一つ咲けば、花一つ散る。二つ咲けば、二つ散る。満開っていうのは、花を咲かせる行為なの。その代償は花が散るということ。わたし達はそれを散華って呼んでる」

 

 散華。

 花が散るという摂理を現したソレには、ある状況が当てはまった。

 満開の後遺症と美森が呼んでいる物だ。それが散華に当てはまるのだとしたら。それは、過労や疲労ではなく、満開をしたことに対する代償でしかない。

 そして、散った花は。

 

「花が散れば、もうその花は枯れていくだけ。もう、戻らないんだよ」

「戻らないって……それ、まさか!?」

 

 美森のまさか、そんなわけないという思いを込めた言葉には、沈黙による肯定が返された。

 そしてその言葉の真意は、友奈にも伝わった。彼女はそっと自分の口元を手で押さえた。つまり、もう自分の味覚は。何かを食べてその味を楽しむという行為はもう一生できないのだと。暗にそう告げられたのだ。それが大きなショックを与えないわけがなかった。

 そして、その散華という物が与える真実の中には、勇者の成れの果てとも言える少女の姿があった。

 

「……わたしもね、満開を繰り返したんだ。その結果が、これ」

 

 そう言いながら両手を広げる園子の姿は、痛々しい。

 見えているのは上半身だけで、下半身は見ることができない。そして、その下半身の足であろう部分には『膨らみが見えない』。つまり、彼女の足は。

 

「……そんな」

 

 友奈が思わず呟いた。それぐらいには、彼女の姿は。勇者として戦いつくした彼女の姿はショックそのものでしかなかった。それは美森も同じで。

 

「……じゃあ。そんな残酷なことが真実なら!」

 

 叫びながら、美森は自分の髪の毛を掴む。

 え? と声を出す園子。は? と声を出す銀。

 二人は勇者部全員の散華の内容を一応聞いている。その中で美森の散華だけは、言葉を濁されたのだ。問い詰めた結果、『毛』としか返ってこなかったので多分体のどこかの毛が生えなくなったのだろうと勝手に推測していたが。

 事態は、思ったよりも重大であった。

 

「この髪の毛は、もう二度と生えてこないの!!?」

『ぶっ!!?』

 

 そして、美森のズラが取れる。

 その下から現れる、太陽の光を反射する眩いほどの頭。ハゲ丸と同じような、不毛地帯となってしまった頭。

 つまりは、ハゲ。

 それを見た園子が笑ってはいけないと瞬時に理解したものの耐えられず吹き出し、銀は丁度飲んでいた緑茶を思いっきり吹き出してしまった。

 そのまま腹を抱えて笑う園子と銀。

 

「ぷっ……くくっ、あははははは!! わっしーなにそれ!! どうして散華の時までそんな芸人気質なの!? あっはははははは!!」

「げほっ! ごほっほふふははは!! ダメだって須美それ反則だってあはは!! ハゲを笑ってたやつがハゲてやんの!! いっひひひひひひ!!」

 

 大笑いする園子と銀。

 彼女たちは美森が須美の時代からハゲ丸の事をハゲと言い笑っていたのを知っている。知っているからこそ、笑ってしまう。ハゲを笑っていた張本人がハゲているという事実に。完全に因果応報としか言いようがない彼女の今の現状に。

 だが、折角シリアスな空気を出していたのに思いっきり笑われて。しかも髪の毛の事で笑われた美森の内心はもう笑いどころではない。美森は何も言わずスマホを取り出し変身すると、両手にハンドガンを召喚し二人へ向けて発砲した。

 弾は二人の髪の毛を掠めて飛んでいき、枕とベッドには穴が開いた。園子と銀は顔色は笑顔のまま青くなった。

 

「笑いごっちゃねぇんだよ。お前らも丸刈りにしてやろうか? ん?」

『す、すんません……』

 

 ガチギレ美森。思わず謝る園子と銀。

 そんな美森をどうどうと友奈が静め、改めて会話が再開される。

 

「で、えっと……なんだっけ? わっしーのハゲで飛んじゃったよ~」

「あれじゃないか? ちょうど散華について話し終わったところ」

「あぁ、そうそう! ありがと~ミノさん」

「いや、あれは仕方ないって」

 

 なのだが、美森のハゲのせいでどうにも空気が安定しない。

 そんな中、ハゲ丸がそっと美森に何かを言い、二人が同時に立ち上がり自分の頭に手を当てた。

 そして。

 

『10倍太陽拳(べぇてぇようけん)!!』

 

 二つのハゲが思いっきり光った。

 結果、それは園子と銀と、ついでに友奈の目を焼いた。

 

『目が!? 目がぁぁぁぁぁ!!?』

『これがハゲを笑った者への罰だ……』

 

 あーもう滅茶苦茶だよ。

 そして園子と銀と、ついでに友奈が復帰したのはそれから大体五分後だった。ただでさえ光量がヤバイ太陽拳が二つも同時に放たれたのだから、回復にも相当の時間を要した。だが100倍太陽拳じゃなかっただけマシだろう。

 もうシリアスさんの息の根が完全に止まったあたりで園子はあー……と小さくうめいた。全部芸人のせいでシリアスな空気が崩壊したのだ。ちょっとうめきたくもなる。

 

「あー……もうさぁ。いいたいこと飛んじゃったんだけど。なんだっけミノさん」

「バーテックスの事がまだじゃね?」

「あぁ、そうだったね。そうそう。じゃあ、もう面倒だし適当に言うけど、勇者って精霊に守られているから死ねないのと、バーテックスってまだいるから」

『え?』

 

 サラッと衝撃的な事実を口にされた。思わず三人は聞き返してしまった。

 

「自害できません! だって精霊が守るから!! ついでにバーテックスって十二体だけかと思った? 残念、少なくとも数十倍はまだいます!! ということで頑張ってね」

「い、いやいや!!? サラッと言ってるけどそれかなり重要じゃね!?」

「だってどこかの誰かさんがシリアスムード壊しちゃったんだもん。じゃあこっちも壊すしかないよねって」

「だからって!?」

 

 その瞬間、美森と銀が振り向いた。遅れてハゲ丸と友奈が振り向き、それを目撃する。

 振り向いた先に居たのは、大赦の仮面を着け、同じように大赦の制服を着た大赦の人間だった。それが、何人も。何十人も現れ、勇者たちを囲んだ。

 ただならぬ雰囲気。思わず端末を取り出す友奈とハゲ丸。既に勇者に変身した美森が銃を構えるが、それを銀が書当てだけで腕を抑えてから首を横に振る。敵ではないと。

 

「この子達に乱暴しちゃだめだよ? わたしとミノさんのお客さんなんだから」

 

 その言葉に大赦の者たちは何もしなかった。代わりに、ただ園子に向けて膝をつき、そのまま頭を伏せるだけ。最早機械としか思えないようなその素早い行動に三人は若干恐怖した。

 

「……大赦もね、このことを隠すのは優しさからだったと思うんよ」

 

 その中で、園子だけが会話を続ける。

 

「もしも満開の真実にバーテックスの事を全部最初から知らされていたら、きっと心が戦う前に折れちゃったかもしれないから」

 

 特に、樹や美森のような者は、ほぼ無限に湧いてくるバーテックスと、身体機能の喪失をし続けながら戦えと言われたら勇者とならなかっただろう。きっと、友奈、風、夏凜は戦うだろうが、それ以外が、ハゲ丸も含んだそれ以外が戦ったかどうかは分からない。

 でもね、と園子が続ける。

 

「わたしは、知っておいたほうがいいって思ったの。もしも知っていたなら、最初から全力で楽しんで、後悔なんてもうしないようにしていただろうから」

 

 銀の片手が無くなる前に、いっぱい銀と手を繋いで料理を一緒にしただろう。

 美森とハゲ丸の記憶が無くなる前に、忘れても忘れきれないくらいにいっぱい遊んだだろうから。

 失くすのなら、失くすのを前提に、沢山沢山。溢れてしまう程思い出を作っていたから。

 

「……ねぇわっしー」

「……私、かしら」

「あぁ、そういえば今は東郷さん、だったね」

 

 園子は、勇者装束を解除した美森のズラについているリボンを見た。

 髪の毛を失っても、絶対に手放さないという心と共に巻かれているリボンを。

 

「そのリボン、とっても似合ってるね」

「……えぇ。大切なリボンだから。褒めてくれて嬉しいわ」

 

 そして園子は言う事を言い切ったと、頷いてから三人を帰してあげてと口にした。

 大赦の職員に連れていかれる勇者達。その中で友奈が一度だけ振り向き、園子に問う。

 

「システムを……この勇者システムを変える方法はないんですか!?」

「……」

 

 その言葉に対する沈黙は、肯定ではなく、否定。

 つまり、現状存在しないという事。

 でも、と園子は口にした。

 

「いつの時代も、人は奇跡を起こして歴史を紡いできたの。だから、もしも奇跡が起きれば……」

 

 言葉は続かなかった。

 だが、その奇跡が。神の思惑も、システムに固定された現象も、何もかもを覆すことができる人の身でしか起こせない奇跡が起こせるのだとしたら。

 勇者部の身に起きている、散華による身体機能の喪失は無くなるのかもしれない。

 

 

****

 

 

「そういえば、園子、足どうした?」

「え? なんか外ってちょっと暑かったから両足をベッドに作った穴に突っ込んでから、中で扇風機動かして冷やしてたんよ。おかげで快適だったよぉ?」

「……あの三人、お前の足見てちょっと驚愕してたぞ?」

「え?」

「絶対に戦いの中で無くなったか散華で無くなったかって想像してたぞあれ。言わなかったけど」

「……やっべ」

「……今度会った時にフォロー入れれそうなら入れておくよ。忘れてなければ」




ハゲのせいでシリアスがシリアルになってしまったという。

そんな中で一応言う事全部言ったのでご満悦なそのっち&銀ちゃん。あと、アニメだと足が見えなかったのでこんな感じでそれを再現。ゆーゆ達の想像以上にピンピンしてるんよ~

次回は……あれですかね。東郷さん連続自殺未遂事件。

さぁ、フーミン先輩の爆発が近いぞぉ……

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