ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

3 / 184
基本的にプロットも無ければネタもない。

完全にその場のノリと酔いで書いている作品である。


ピカリン

 とあるうどん屋、かめや。そこで勇者部一同は部活動終了後に集まり、談笑交じりの相談をしていた。

 その相談の内容とは、勿論ハゲ丸くんの事だ。

 

「誰か、あの不毛地帯を治す方法思いつかない?」

「うーん……やっぱり思いつかないかも……」

「無理なんじゃないかな?」

「樹、あんたそんなに毒を吐く子だっけ?」

 

 風は問題児ばかりとも言える勇者部の面々にため息を吐きながら本日二杯目のうどんを完食し、三杯目のおかわりを注文する。

 はてさて、これからどうしたものか。

 当初、できるのならハゲ丸を勇者部に勧誘しろと大赦に言われていたため、ハゲ丸の顔を見たとき、風はあれ? もしかしてこの子……と思った。そして名前を口にされたときは友奈と東郷にナイス、と言いかけた。が、直後に彼の頭を見て涙が出そうになった。

 もしもこれで自分の班が当たりだったら、と考えると。彼は友奈と樹に無邪気にハゲを指摘されながら東郷から常に罵倒されるという軽い地獄に陥りながらも勇者というお役目を果たすことになる。もういいだろっ!! と叫びたくなるような境遇。だが大赦と友奈達天使は無慈悲である。

 

「友奈ちゃんに心配されてる……もう全身の毛を毟られればいいのに……」

「東郷……あんた……」

 

 こいつの友奈好きもどうにかしなきゃなぁ。なんて思い、現実逃避気味にうどんを啜る。既に三杯目のうどんも半分以上が風のブラックホール胃袋の中に吸い込まれている。

 しかし、これでは折角勇者部に引き入れたハゲ丸くんの胃袋に大ダメージを与えてしまう結果になる。特に美森の直接的な罵倒によって。というか、ハゲも治る見込みがないのだからどっちにしろハゲ丸くんには胃袋への大ダメージだけが残る結果になるだろう。

 あーもう、と風は三杯目のうどんが入っていた丼をテーブルに叩きつけるように置きながら四杯目のうどんを注文し、東郷へ物申す。

 

「東郷、あんた流石に言い過ぎよ。いいじゃない、あの程度のスキンシップくらい」

「えぇ、それはわかってるんですけど……」

 

 だが、帰ってきた言葉はどうにも煮え切らない物。東郷自身自分のことがよくわかっていないような。そんな感じだった。

 

「どうしてでしょうか……あのハゲに対しては遠慮が無用と言うべきでしょうか……そんな感じがして」

「にしても、このハゲは言い過ぎでしょ……」

 

 遠慮が無用だと思ったのだとしても、直接このハゲとぶちまけるのは流石にやりすぎだろうと。それはどうも美森も同じように思っていたらしく、それもそうですね。と納得した。したのだが……

 

「また髪の話してる……」

「うぉっ!!?」

 

 美森が納得した直後、風の後ろから今日散々聞いた男子の声が聞こえた。

 四杯目のうどんが机の上に置かれるのを確認する前に風は自分の後ろを確認する。そこに居たのは真っ黒の髪のヅラを被ったハゲ丸くんだった。

 

「あ、ハゲ丸くんだ」

「ハゲ丸先輩?」

「あ、ハゲだ」

「ごふぅ」

 

 そして無邪気な一撃を二回受けた後、無常なる美森の一撃によりハゲ丸くんは地に伏した。

 

「ハゲ丸ぅぅ!!? あ、じゃなかった。藤丸ぅぅ!!?」

 

 倒れ伏したハゲ丸くんを風は、名前を呼び間違いながらも肩を貸して起こし、そのまま適当に他の席から引っ張ってきた椅子に座らせる。ちなみに、風と樹、友奈と美森で並んで座っているため、ハゲ丸くんは自動的にお誕生日席に座ることとなった。

 お誕生日席に座ったハゲ丸くんは精神的なダメージから吐血しかけているが、何故か美森の言葉だけは、直接的な罵倒でも友奈と樹のような無邪気な一撃程度にしかダメージを感じないため、まだ再起は可能だった。

 

「ハゲ丸くんもうどん食べに来たの?」

「あ、あぁ。親から晩飯は食ってこいって言われてな……」

 

 ちなみに、ハゲ丸の親はちゃんと髪の毛ふっさふさである。

 

「でも奇遇ですね。ハゲ丸先輩もかめやにはよく来るんですか?」

「そ、そこそこな……っていうか、ハゲ丸はやめて……」

「うるせぇハゲ」

「がふっ」

「あ、ハゲ丸くんが死んだ!」

「この人でなし!!」

 

 本当に容赦ないなぁ……と風は遠い目をしながらうどんを啜る。

 ハゲ丸は美森からのストレートな一撃を受けてもなんとか立ち上がり、きつねうどんを注文した。そして暫くしてうどんが届き、ハゲ丸はそれを啜る。一応、ハゲ丸も男なのでうどんの量は大盛だ。年頃の中学生という物はよく食べるものだ。だが、それ以上に食べている風が存在しているため、ハゲ丸も、普通の女子よりは食べるなぁとは思ったが、その程度で終わってしまう。

 そうしてハゲ丸が一杯目のうどんを食べている間に風は五杯目のうどんを食べている。流石の勇者部の面々も風の食いっぷりに驚いているようだ。

 しかしながら、風の胃袋はかなり限界に近づいてきている。が、食べる。

 その理由は、単純。

 勇者部の面々がかなり自由過ぎたせいで軽くストレスが溜まったので、やけ食いがしたかった。それだけだった。

 

「犬吠埼先輩ってよく食うんだな……もしかしてみんなも?」

「お姉ちゃんの胃袋が特別なだけです……」

 

 勇者部の面々も、体を動かした後はそこそこ食べるかもしれないが、風に関しては本当に異次元だった。

 

「うどんは女子力を上げるのよ! ハゲ丸も、食ったら食った分だけ髪の毛が生えるかもしれないわよ!!」

「きつねうどん十杯追加でお願いします!!」

「ハゲ丸くん!? それは無茶だよハゲ丸くん!!」

 

 流石にこれは能天気にはいられないと思った友奈の制止も意味がなく。ハゲ丸は運ばれてきた十杯ものきつねうどんを全力で食らい始めた。

 なお、ハゲ丸はきつねうどんを全部食べることはできたがそのまま動けなくなってしまい、友奈、樹、風でハゲ丸を担いで彼の家まで送っていったのであった。ちなみに風はこの後夕飯もちゃんと食べた。

 

 

****

 

 

 翌日。

 ハゲ丸は普通に登校し、いつもどおり、話の合う友人達と朝は話して授業を受けて。普通の中学生のようなことをしていた。まさか友奈と美森以外のクラスメイトは彼がハゲているとは知らないため、ハゲ丸はいつもヅラがずれていないか心配になり、頭を叩かれかけると全力でよける。

 そして、ハゲという単語に異常なまでに反応する。

 友奈も美森も、この場で彼をハゲ丸と呼ぶわけにもいかないので、話しかけるときはちゃんと藤丸と呼んでいる。呼んでいるのだが。

 

「そういえばこの間のドラマで面白い台詞があったわね」

「面白い台詞?」

「えぇ。このハゲーっ! って。議員の人が叫ぶのよ」

 

 そんな会話が聞こえてくるものだからハゲ丸は気が気でない。というか、ハゲという単語を出すたびに美森がハゲ丸の事を見てくるため、確実にハゲ丸を揶揄うためにこういう事をしているのだろう。

 だが、何故か彼女からの言葉はドキッとはするが、それ以上ではないため基本的にスルーできる。

 そんなことが幾度かあって、そして時間は授業中。ハゲ丸は窓際一番後ろの席なのであまり教師の視線が来ないのをいいことにスマホを覗き見ていた。ちなみに、見ているのはハゲの治療法が書かれた画面である。もう何度も見たそれを、もしかしたら髪を生やすための手掛かりがないかという淡い希望をもって何度も何度も見続ける。

 そんな時だった。

 

「うわっ!?」

 

 友奈が声をあげた。

 何かあったのか? とハゲ丸が意識を戻すと、今までで一度も聞いたことがない特徴的なアラームが鳴り響いていた。なんだこのアラーム、と思いながらも、ふとハゲ丸はその音が、急に自分の携帯からも鳴っていることに気が付く。

 どうやら美森の携帯も同じように鳴っているらしく、ハゲ丸と美森は顔を合わせた。

 何かしたの、このハゲ。何もしてねぇよ。とアイコンタクトで会話し、じゃあこの、消そうと思っても消えないアラームは一体何なんだと視線を携帯に戻す。

 携帯には『樹海化警報』と表示されており、何とも言い難い不安がハゲ丸を襲う。

 そして。

 

「あれ? 止まった……あ、あはは~。お騒がせしまし……あれ?」

 

 時間が止まった。

 ほかの生徒は誰一人と動く事無く。教師も立ったまま止まっており。そして、試しにノートを持ち上げて落としてみれば、重力が仕事をしない。試しにヅラを取ってみても誰も反応しない。ちょっと空しい。

 

「ど、どうしよう東郷さん……」

「そうね……とりあえず、教室から出てみましょう。ハゲ、何があっても友奈ちゃんは守りなさい。あなたの命の万倍は友奈ちゃんの命は重いのよ、ハゲ。分かったらはいかイエスで答えなさいハゲ」

「ハゲハゲうっせぇよ!! そんなに人の心を傷つけて楽しいかお前!?」

「えぇ、とっても!!」

「ぶっ飛ばすぞこの野郎!!?」

 

 満面の笑みで答えた美森を殴ってやりたい気がしたハゲ丸であったが、とりあえずはこの、漫画やアニメでしか見ないような異常事態をどうにかしなければならないと。ハゲ丸は友奈と美森の前に立って教室から出ようとする。サラッと二人の前に立つ辺り、男としての自覚はあるハゲ丸だった。

 そして教室を出てから。本当に学校から音という物が消え去り、唯一ある音は自分たちの発生させるものだけなのだと思い知る。

 

「ハ~ゲハゲハゲハゲ達磨~」

「結城さん。そこの腐れ外道を殴ってくれないか」

「あ、あはは……」

 

 そして美森がかなり不快な歌を歌っていたため本格的に殴りたくなったハゲ丸であった。こいつ、車椅子から放り投げても自力で立って追っかけてくるんじゃないかと言わんばかりには美森は余裕そうだった。

 が、実はこの中で最も余裕がないのは美森であり、怖さを紛らわすためにこんな変な歌を歌っているというのは彼女以外知る由はないだろう。

 ハゲ丸は握った拳を開きながらそっと廊下の窓から外を見た。

 校舎の外からは、虹色の光が迫ってきていた。

 

「……うん?」

 

 虹色の光が。

 三人に向かって。

 迫ってきていた。

 

「な、なんかヤバイの来てるよぉ!!?」

「ハゲ! 盾になりなさいハゲ!!」

「ばっきゃろう! こんなの俺一人盾になってどうにかなるわけアッーーーーー!!?」

 

 そうして三人は虹色の光に飲み込まれたのであった。




何故かハゲ丸くんに対してクッソ辛辣な国防芸人。ハゲ芸人と国防芸人で何か共鳴しているのでしょう。

そしてとうとう全員からハゲ丸と呼ばれるうえに地の文でもハゲ丸くんと呼ばれるハゲ丸くん可哀想。

まぁ次回は勇者部の勇者化ですね。変身バンクはゆーゆといっつんとそのっちのバンクが大好きです。クウガ系の変身も好きですがあざといくらい可愛い変身バンクも大好きです。


ちなみに、みんなのハゲ丸くんの呼び方は、ゆーゆはハゲ丸くん、いっつんはハゲ丸先輩、フーミンは藤丸orハゲ丸、みもりんはハゲです

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。