ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回でくめゆ編はおしまい。くめゆ組はこれからちょくちょく名前が出てくるか電話先として出てくる程度になると思います。

あ、勇者行進曲と勇者部所属ぷにっとを買ったんですよ。それのくめゆ編で芽吹がギャグテイストになってるのに笑いました。あと亜耶ちゃんは天使。しずくってあんなに天然だっけ……?ww

あの話のお陰でくめゆ組をどんなキャラ崩壊が似合うのかが分かった気がするので(本当に気がするだけ)次回以降の本編中で絡んでくるであろうくめゆ組はそんな感じでキャラ崩壊するかと思います。


防人と巫女とハゲ

 ハゲ丸が亜耶や芽吹達と会合してから時はそれなりに経過した。

 ハゲ丸はあの日以降新たな後輩が増え、そして防人達の動向というのを聞くのが少し楽しくなってきた。というのも。亜耶は色々と心配になる程に純粋だからか人の良し悪し、というよりもいい所を見つけそれを伝えるのが上手かった。

 それをSNS越しではあるが聞き、こちらも勇者部について色々と話す。そんな日課とも言えるような物が二人の間には作られていた。亜耶としては勇者の、頼れる感じの先輩。ハゲ丸からはピュアで樹よりも慎重に扱ってなお余るような後輩といった感じだった。

 

「ズラっち、最近結構携帯弄ってるよね~」

「ん? あぁ、ゴールドタワーに住んでる年下の巫女さんとちょっとな」

「もしもしポリスメン?」

「おい。一個下だから事案じゃねぇぞ、おい」

 

 ついでに、忘れてはならないが亜耶もハゲ丸も一個違いの中学生だ。亜耶がいくら小さくても歳的にはあまり変わらないためハゲ丸が亜耶とつるんでいてもそれは事案ではないし、ハゲ丸がロリコン扱いされることもまず無いだろう。事実としてそうであろうと他がどう思うかは分からないが。

 園子にアイアンクローをかましたハゲ丸が携帯を略奪。本当に110番通報しようとしていたことに若干背筋を凍らせながら携帯の電源を切ってから返す。

 

「いやー、だってハゲと巫女さんとかそれ何て同人誌?」

「うん、俺も思ったけど。けど会った事一回しかないからな?」

「一回会って即合体?」

「お前もうちょっとオブラートに包めよ。ってか口に出すなよ残念系美少女。ついでにその手の動きは止めなさい」

 

 右手でわっかを作ってそこに左手の人差し指を入れたり抜いたりする園子の頭に思いっきり手刀を落としてから亜耶から返ってきた言葉に返事をする。

 園子、というか友奈を除く勇者部全員はもう亜耶の爪の垢を煎じて飲んだ方がいいと、ハゲ丸はふと思ってしまう。というか、ハゲ丸の周りの女の子がほぼ全員残念というのが最早笑いを誘うのだが。勇者部は残念系美少女が集う因果にあるのだろうか。大体あっている。

 腐女子で残念な権力持ち美少女の暴走を止めてからハゲ丸は携帯をポケットに突っ込む。

 どうやらこれから防人はとある任務に出るらしく、亜耶は祈祷を捧げるとか。なので暫くは返事をできないそう。

 

「ちなみに。その子の名前って分かる~?」

 

 そしてふと壁の方を見たハゲ丸に園子が問いかけた。

 まさかまた通報ネタで何かする気じゃないだろうかと思い園子を見ると、彼女の目はいつものような軽くて明るい物ではなく、どこか暗い物。真剣そのものとも言えるような物だった。

 こういう時の園子はふざけないし、ふざけると静かにキレる。全力でキレているワケではないが、かなり怖いというのはもう分かっているのでハゲ丸は茶化さず。それでも少しビックリしながら答える。

 

「あ、あぁ……国土亜耶って子だけど」

「国土……あぁ、うん。ありがと」

 

 園子がその名前を聞いた瞬間、顔を伏せた。

 もしかして知っている仲だったのだろうか。亜耶と初対面の時、園子の事を様付けで呼んでいたのを思い出しながら、とりあえず今のうちにメッセージだけ送っておこうかと携帯を取り出し、ふと勇者システムの入ったアプリに目が行った。

 きっと、もう使わないであろうシステム。防人の件にはあまり関わらない。関わらなくても大丈夫だと決め、とりあえず持ってはいるが使わないであろうと思い込んでいるシステム。

 どうせハゲ丸にしか使えないのだからハゲ丸が持っていないと宝の持ち腐れなのだからと。お守り代わりに持っているそれは、目に付いただけで防人達の援護に行きたくなってしまう。やはり、女の子が必死に命懸けで戦っていると思うと今すぐに飛び出したくなってしまう。

 

「……ズラっち」

「ん?」

「その、国土亜耶さんだっけ。もしかしたら、これから先、大きなお役目が来るかもしれないの」

「え? 亜耶ちゃん後輩にか?」

 

 巫女の大きなお役目、と言われてもあまり釈然としない。というよりも何なのか思いつかない。

 園子が小さく奉火祭の……と呟いていたが、その実はよくわからなかった。

 

「……それで、ね。もしかしたら、ズラっちとか防人の人たちと連絡することができなくなっちゃうかもなんよ。ほ、ほら! 大赦って隠し事大好きでしょ?」

「いや、まぁ……確かにそうだけど……」

「だ、だからね! 今のうちに防人の人と国土さんを連れてどこか行ったりした方がいいと思うな!!」

 

 ハゲ丸の返事すら聞いているのか聞いていないのか。それすらも分からない。

 だが、こういう時の園子はいつも何かを隠しているか焦っているかのどちらかだ。それも、相当。

 その大きなお役目というのも、あまりもろ手を振って歓迎できるような物では、きっとないのだろう。そして園子の権力をもってしてもどうにかできないような物なのだろう。

 

「……そのお役目ってさ。(勇者)じゃ、代われないのかな」

 

 だから、代われるのなら代わりたい。

 何かできる事があるならしたい。そう思った。女の子がそんな大変な事をするくらいならと。

 だが、園子は答えなかった。それが答えだった。

 

「……わり。変な事聞いたわ」

「ううん。変な事じゃ……」

 

 いつもは明るい園子がこうも暗い。それだけでハゲ丸のテンションまでが下がった。

 どうにかテンションを上げようと園子に作ってきたジェラートを貢ぐが、それでも彼女のテンションは回復しない。そのまま二人で明後日の方向を見たり携帯を弄ったりジェラートを食べたりと無言の時間を過ごす。ボーっとするのが趣味と言う園子ではあるが、こういう時はボーっとする気も起きないのだろう。せわしなく体のどこかをずっと動かしている。

 ハゲ丸もそんな園子につられてついつい何か手癖を悪くしていた時だった。

 携帯から音楽が自動的に鳴り響いた。それは、園子のものではなくハゲ丸の物。西暦の時代に放映されていた特撮のオープニングだった。

 園子に一言断ってから携帯を確認する。かけてきたのは、先ほど話題に出た亜耶だった。

 

「もしもし」

 

 もう祈祷は終わったのかと、電話越しに適当に聞こうかと思いながら耳に電話を当てた時だった。

 

『藤丸先輩! お願いします! 芽吹先輩を、壁の外に居る芽吹先輩を助けてください!!』

 

 亜耶の必死な声が聞こえた。

 その後ろからは防人達の物なのであろう喧騒が聞こえてくる。恐らく任務から帰ってきたばかりなのであろうが、それを念頭に置いて少し考えると芽吹を助けるという意味が分かってきた。

 芽吹は、壁の外で他の防人達を逃がした。が、まだ帰ってこない。恐らく一人か数人で殿をしている芽吹が危険だから助けてほしい、という事だろう。

 そうやって考える……前に、ハゲ丸はもう口を開いていた。ここまで考えたのは、自分が口を開いて言葉を全部口にした一秒後くらいだった。

 

「わかった。どうしたらいい?」

 

 後輩の前でくらい、格好の一つや二つ決めるのが先輩という物だ。

 それに、女の子が戦っている。そして助けを求めなければいけない状態にある。

 ならば、助ける以外の選択肢なんてない。それが、ハゲ丸が勇者として戦う理由なのだから。

 

 

****

 

 

 三体のバーテックス。それを相手に芽吹はたった一人で二つの銃剣を使い戦っていた。

 仲間は全員逃がした。後は、自分が逃げればそれで終わりだが、バーテックスは逃げるだけの隙を見せてくれない。三体がそれぞれで生まれる隙をそれぞれで全てカバーしてくるのだ。その結果、芽吹には尋常ならざる波状攻撃が行われる。

 もしもこれが友奈達勇者部であれば攻撃を受けても精霊バリアでそのダメージを最低限に抑え、そしてチームワークで一体ずつ殲滅していっただろう。

 だが、防人は違う。一発でも当たれば致命傷。殲滅する手段はなく防戦一方を強いられる。とんだクソゲーだ。

 そのクソゲーを引き受けたのは芽吹自身。故に、文句の一つも言わない。言わず、ただ必死に戦い続ける。これが仲間達を一人も死なさない最良の手段だと自信をもって言えるから。

 実力が一番高い自分が殿を務め、そして仲間を逃がしてから逃げる。言うならば簡単な作戦だ。

 しかし、誤算。というよりも一番その可能性が高いと思いながらも考えずに思っていた事象。それが殿が逃げれずにそのまま死ぬこと。つまり芽吹自身の死亡だ。

 手負いになった夕海子をシズクと雀に運んでもらって。自分は殿。手数は増えて今まで特訓してきた戦い方でなんとか生き残れているが、それでも芽吹が死ぬ可能性の方が高かった。それでも雀やシズクが逃げてくれたのは、人望からなのだろうか。

 芽吹は戦いながら笑う。

 

「全部、繋がっている……! 今までの全部が……!!」

 

 バーテックスの攻撃を銃剣だけで凌いでいく。

 負けるか。負けてたまるか。負けてやるか。死んでなんてやるものか。

 こんな狂った世界で、神なんて不確定で理不尽だけを人間に押し付けて笑うような高慢ちきなムカつく存在に殺されるなんて。

 

「神なんかが。神如きが邪魔をするな……! 人間様が生きる道を踏み荒らすな! 人間が戦う理由を作るな!! 人間を下等生物だと見下すなッ!!」

 

 芽吹の技が冴える。

 神なんて物が送り込んできたこんな存在に。頂点なんて言われる生意気なナマモノに負けてたまるかと。

 意地と根性とプライドでただひたすらに生き抜いていく。

 人間をナメくさった。人間を見下した子供みたいに癇癪起こして理不尽を叩きつけてくるようなクソみたいな存在なんかが。人間を見下しながら人間の媚び諂いに笑い嗤い愉快愉悦と叫ぶような存在が。この時代を生きるどの人間よりもド畜生な腐った根性をした奴が。

 

『人間を、無礼()めるなぁぁぁぁぁぁあ!!』

 

 芽吹の二重の斬撃がヴァルゴ・バーテックスの爆弾を発射する器官を切り裂かんとする。

 そこに。その斬撃の上に打撃が乗った。人ならざるとしか言いようがない攻撃の後押しを受け、本来なら両断できないハズのバーテックスの体を、銃剣は両断して見せる。

 

「だ、誰!?」

 

 だが、そうして後押しを受けた芽吹は困惑する。

 誰がこんな後押しを。誰がこの壁外に来たのだと。振り返れば、すぐに答えがあった。

 

「よう、楠さん。援護しに来たぜ」

 

 振り返ってすぐ目に入ったのは、先日共闘する……と思ったがギャグ的な展開のせいで結局共闘できなかったハゲ丸だった。彼が満開をした状態で片手に槍を持ち空中で芽吹を見下ろしていた。

 芽吹は某然としながらもすぐに銃剣を構え下がる。その隣にハゲ丸が並び、槍を構え鏡を芽吹の周りに滞空させる。

 

「亜耶ちゃん後輩に頼まれてさ。時間稼いでくれってさ」

「亜耶ちゃんが……? あの子、心配性なんだから」

「まぁそういう訳で。今回は槍借りてきたから俺が時間稼ぐ。機を見て撤退してほしい」

「藤丸は? 平気なの?」

「こう見えても槍の扱いと鏡の扱いは一流なんでね」

 

 ハゲ丸は借りてきた園子の槍を構える。

 二年前。ハゲ丸は須美や園子との特訓に付き合う際にそれぞれの武器を借りて模擬戦等を行っていた。何せ、ハゲ丸の武器、というよりも固有装備は特殊な上に防御特化型。基本的に三人のコンビネーションを崩させないように後ろから援護するというのが主な役割だったため、基本的には体を鍛えて反射神経を良くしておくというのがハゲ丸の特訓だった。

 その特訓の手助けとなったのが、園子と銀の近接組との模擬戦だった。その際にハゲ丸は双斧と槍の使い方を学んだのだ。

 ちなみに。園子や銀は一流なんて超えた超一流の域に立っているため、ハゲ丸なんかじゃもう相手にならない。

 

「じゃあ……今回こそ、私の指揮下に入ってくれるかしら?」

「あいよ。どんな無茶ぶりもやってやんよ」

 

 手の甲をぶつけ合いながら、その片手間でヴァルゴが放ってきた爆弾を鏡で絡めとってヴァルゴへと投げ返す。

 それだけで御霊無しのヴァルゴは体の損壊させ、修復に入る。

 

「まぁ、御霊無しだしこんなもんか……」

 

 御霊無しのバーテックスはそこまで強くはない。それこそ満開したハゲ丸一人居れば十分に時間を稼げるくらいの力しか持ち合わせていない。そして更にヴァルゴが撃ってきたビームを八咫鏡の力を纏わせた神獣鏡で跳ね返せばバーテックス三体がそのビームで両断された。

 

「ん?」

 

 ハゲ丸が声を上げた。

 あれ? なんか弱くね? と思いながらも一応芽吹を守るために動きながら相手の攻撃全てに対処していく。

 カプリコーンが両断されてもなんとかその力で地震を起こしてくるが、すぐにハゲ丸が芽吹を抱えて飛ぶことで難を逃れ、ピスケスの突進はハゲ丸が鏡でそれを受け止めて思いっきり跳ね返してやればバーテックス三体がくんずほぐれつしながら吹き飛んでいった。

 僅か数秒で壊滅していったバーテックスもどき達を見てハゲ丸が冷や汗を流す。

 カッコつけたはいいけど相性良すぎてもう終わってしまったと。なんかこう、アニメや漫画だったらここから最終決戦なのにそれ全部終わらせちまったと。

 

「……あれ? 終わったんじゃが」

「なんというか……完全に相性のメタね」

 

 ヴァルゴのビームが戦犯とも言えただろう。きっとアレが無ければ爆弾でもう少し苦戦させられていた。

 しかも相手は御霊が無いからか最後のピスケスによる質量爆弾でそのまま三体が体のどこかを潰され、回復できずにそのまま沈黙している。

 

「……帰りましょ」

「……そうしましょ」

 

 そんな感じでとても釈然としない気持ちを抱えながらハゲ丸は芽吹を大きくした鏡に乗せて運び、道中で芽吹の援護をしに来たらしい防人達も回収してそのまま壁内へと帰ったのだった。

 結局、ハゲ丸が絡むとシリアスがマトモに持たないというのが分かった戦闘であった。

 ちなみに、帰りの道中で芽吹がガンプラ等を作るのが趣味と聞き、ガンダム系統に関してはそこそこの知識があるハゲ丸と意気投合し、連絡先を交換する仲になったとかなってなかったとか。

 

 

****

 

 

 後日談、という物が今回の話にはあった。

 亜耶と携帯で連絡をしている最中、園子の言った亜耶のお役目。それをハゲ丸は意図して聞かなかったが、後日園子からそのお役目は他の人に受け継がれたらしく、亜耶はそのお役目に行かなくてもよくなったと言う。果たしてそれはいい事なのかが最初は分からなかったが、園子の言い方からそれはいい事なのだろうとは思った。

 だが、それでも園子の顔に差している影。それだけが唯一の心残りとも言える。

 ふとハゲ丸がその受け継いだ人は誰なのかを聞いたら、園子は分からないと。どうやら、園子の権力をもってしても情報を得られなかったらしい。得られなかったなら仕方ない。

 ハゲ丸は亜耶と芽吹の二人と仲のいい友人のようにメッセージを送り合いながらふと壁の外を見た。

 防人が何をしていたのかは分からない。分からないが、まだ外にはバーテックスがいて、勇者システムは改良され続けている。もしかしたら、近いうちに何かが起こるのかもしれないと。言いようのない不安に襲われていた。




雀・夕海子・しずく「出番も台詞も少ない……」


くめゆ編は時系列不明みたいな感じでやりましたが、最後がこのまま勇者の章に続くみたいな書き方になってしまった……
多分次回から樹ちゃん後輩とかゆーゆ辺りとの話を書いてからわすゆ行くと思います。わすゆもなるべく短くして勇者の章に時間を割いていきたい……

FGOとグラブルとゆゆゆいで時間が消し飛んでいますが僕は元気です。前からやってるテイルズオブシンフォニアもやらなきゃだし、テイルズ安かったし友達に勧められたからって一気に買ってしまったから積みゲーは溜まるし……とりあえずゆゆゆいの水着園っちが可愛すぎたのでこれからも執筆頑張ります(引けたとは言っていない)

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