前回の続きから、VSリブラ・バーテックス戦終了までが今回の話です。ズラっちのズラがバレます。
というか時々わっしーの名前漢字が間違ってないか不安になる。なんでかわっしーだけ
銀とハゲ丸が引っ越しの荷物を居間で一緒に纏めている最中だった。唐突に居間と廊下を繋ぐ扉が開いた。
「ミノさん、こっちは終わったよ~」
「おっ、園子。ありがとな」
そして入ってきたのは、もう体も八割以上が元に戻った園子だった。
不自由だった片足も、内臓の大半も戻ってきた園子は既に退院を許され、現在は乃木の家にあった自分の私物を讃州中学付近のアパートへと運び込んでそこに住んでいる。時期に園子も讃州中学に通う事を許され、そのまま讃州中学の二年生として銀と共に学校生活を送る事になるだろう。ちなみに、どうして八割も戻ってきたのに学校に行けていないかと言うと、戻ってきていない部位に心臓が含まれているためだ。心臓が無いと鼓動が無い上に脈もない。ついでに言えば園子の体温が人間としての下限をぶっちぎってる状態なので、少なくとも心臓が戻るまでは登校が許されない。
若干埃にまみれた、ジャージ姿の園子は銀とハゲ丸が座りながら談笑していた場所に近づき、自分もそこに座った。そして銀の携帯に写っていた自分たちの一番最初に撮った写真を見て声を漏らした。
「うわぁ、懐かしいねぇ。でもどうして急に?」
「ちょっと二年前の事で話が盛り上がってな」
「へぇ~」
座る動作一つからも上品さがにじみ出る園子を見て、ハゲ丸はなんとなくの懐かしさを感じる。
自分たちのリーダーとして引っ張ってくれた彼女だが、その実は結構なお嬢様だという事を時々忘れそうになってしまうが、こうして上品な所を見るとふと思い出す。
しかし、よく考えれば彼女がそんなお嬢様っぽい所をみせたことなんて数える程度しかなかったので忘れるのも当然だろう。
「いや~。懐かしいね~」
そう言いながら園子はそっと銀の携帯に写っている写真をスライドした。順番的に表れるのはこの後に撮った写真。一番最初の戦いを乗り越えてから撮った写真だった。
「あ、ほら、この写真とか!」
****
園子が思いついた策。それは、かなりの強硬手段とすら言える作戦であったが、同時に現状では一番マシだとも言える作戦だった。
途中、銀が水球に顔面を覆われるという事件が発生した物の、銀はそれを飲み干す事でどうにかした。なお味はサイダーが途中で麦茶に変化するという、とてもじゃないが想像できないししたくない味だったと言う。ちなみに、後日桂が再現した。
そして、ある程度離れてゆっくりと話せるようになってから園子は自分の作戦を口にした。それは、桂の負担が一番大きい作戦ではあったため園子が自分がその役目を変わろうか? と聞いたが桂がそれを拒否し作戦を了承。すぐに作戦は実行に移される事になった。
桂を先頭に後ろに三人がつき、アクエリアス・バーテックスを正面から見据える。
「っしゃ! 行くぞ!!」
桂が自分に気合を入れて走り出す。
そしてすぐに後ろを三人が、桂を追い抜かない速さで追いかける。
これが園子の作戦。単純に盾役を前に出してそれ以外の勇者が相手が射程圏内に入り次第攻撃し、バーテックスを撃退するという単純明快な物。だが、それをするには仲間を信じる心と連携が必要になってくる。
「桂、本当に大丈夫か?」
「心配すんな。男ってのは女を守るときは――」
その瞬間だった。
アクエリアス・バーテックスは近づいてくる勇者達に気が付く、すぐに迎撃するために水を放射してきた。
先ほど、園子をガードの上から弾き飛ばそうとした放射。それを見てから桂はすぐに水を受け流すために鏡を構え、そして全力で踏ん張ってそれを受け止める。
「自力以上のナニかが出てくるもんなんだよッ!!」
水はそのまま鏡に面に沿って受け流され、あらぬ方向へと飛んでいく。
「今だ、行けっ!!」
先ほどまでの戦いから、アクエリアス・バーテックスはこの水の放射を同時に二発以上放てないという事が分かっている。何発も撃てるのなら、射程圏内に入ってきた勇者達に対してずっとこれを撃っているだけで迎撃なんてできてしまうからだ。
だが、それをしないということは一発しか撃てない。もしくはリチャージが必要だという事だ。だからこそ、盾役は一人。もしもを考えて二人いる程度で十分なのだ。
だからこそ、自らの体を張って水を受け止めた桂を信用し、その期待に応えなくてはと勇者達は飛び立つ。
「ミノさん!!」
「行くぞ園子!!」
銀と園子の、近接戦闘を得意とする二人が左右からバーテックスを挟撃する。
だが、バーテックスもそれを分かっている。分かっているからこそ、水の放射を一旦止めて水球を二人へ向けて放つ。が、水の放射を止めるという事は。
「かかったな間抜けが!!」
完全防御特化をフリーにするという事である。
水の放射が無くなったその瞬間、桂は鏡を右腕から外し、それを浮かせて銀の方へと飛ばした。そして飛ばした鏡を自分の思考だけで動かしていき、全ての水球を銀に当たる前に防いでいく。
対して園子はアクエリアス・バーテックスの上空から傘状に展開した槍の上に乗って落ちる事によって安全にアクエリアス・バーテックスに近づいていく。
そしてアクエリアス・バーテックスが完全に銀と園子の射程圏内に入る。
「行くぜオイ!!」
「ゆゆうじょうパワー!!」
銀の双斧から炎が噴き出し、園子の槍の先端で浮遊している三つの矛先が広がり、紫色のエネルギーを纏う。
次の瞬間、二人は高速でバーテックスの周囲を駆け回りながら一気にバーテックスの体を、再生を許すことなく削っていく。更に。
「こっちも行くわよ!」
「任せろ!!」
声をかけて息を合わせ、須美がフルパワーの矢を放つ。
それを桂が途中で鏡で上空へ反射。反射した矢を更に反射して、更に反射してと繰り返していき上空で矢の勢いを全く殺さずに滞空させておく。その間に須美が弓矢のエネルギーをチャージし、二射目を用意する。
そして。
「これで!」
「ラスト!」
銀と園子がバーテックスの体積を半分以上。七割方削り終える。
だが、まだだ。まだ勇者達の攻撃は終わっていない。
「こっちも!」
「仕上げだ!」
須美の弓からフルパワーの矢が射られる。更に桂が上空でずっと反射させておいた矢を最後にバーテックスの方へ向けて矢を反射させる。
その結果、須美のフルパワーの矢が二発同時にアクエリアス・バーテックスに刺さる。刺さった矢を中心に花弁のようなものが展開され、一秒か二秒か経ったその時、爆発こそしなかったが矢が消失すると同時にアクエリアス・バーテックスの体が一気に削り取られる。
もしもバーテックスの全身が無事ならこの程度のダメージなら誤差だろう。だが、ほぼ致命傷と言える傷を受けていたアクエリアス・バーテックスにとってフルパワーの矢二発分のダメージは完全なるトドメとなる。
四人が並び、体のほとんどを削られたアクエリアス・バーテックスを見つめる。
そして。
「あっ……樹海が……」
樹海全体が光を放っていく。
バーテックスを撃退できるまでダメージを与えた時に発生する現象。バーテックス撃退の証。
「鎮花の儀……」
園子が呟いた。
そして、光が満ち溢れアクエリアス・バーテックスが消えていく。それを見送ってから、桂が須美に向かって手を上げた。
「やったな」
「……えぇ。私達の勝ちね」
『やったぁ!!』
桂と須美がハイタッチし、園子と銀が手を合わせて飛び跳ねる。
こうして小学生勇者達の初陣は銀が多少の傷を負ったものの、無事に終わったのだった。
****
「その後だったっけ? この写真を撮ったのって」
銀が自分の携帯に写っている写真を指差した。そこには、多少の生傷を負った銀と、園子と、須美と、桂の笑顔が保存された写真が写っていた。
そうそう。とハゲ丸が頷き、園子が懐かしいねぇ。と口にした。
最早二年前の話ではあるが、二年経った今でもこの話は。いや、これを含めた、自分たちの話は綺麗な宝物だ。公に話すことはできないが、それでも宝物だと言い切れるくらいに、この勇者として戦った二年前の話は四人にとってかけがえのない物だ。
「ってか、今思うと精霊バリアってズルだよな。アタシ等はなかったせいで生傷ばっかだったのに」
「お風呂入ると染みるんだよね~」
「しかも武器を持つ手が次の日痛いのなんのって」
「特にズラはダメージを一手に引き受けてたからな。確か初戦の次の日、右手が肩から上に上がんなかったんじゃなかったっけ?」
「マジで上がんなかった。クッソ痛かったからさ。お前らも生身で消防車の放水を俺の神獣鏡で受け止めてみ? 絶対に次の日腕が肩から上に上がんないから」
「嫌だよ痛いし疲れるし」
「どうかん~」
その後はイネスに行って親睦を深めたり。改めて友達になったり。名前やあだ名で呼び合うようになったり。
「まさかあの時にズラって呼ばれるとは思わなかったよ……めっちゃドキッとした」
「あはは……あの時はズラっちがハゲてるって知らなかったからねぇ」
「いやー、懐かしいなぁ。暴風でズラのズラが飛んでいった事件」
それは、初戦から半月後に起こった二戦目の話だ。
****
樹海化。勇者達を戦いに誘う現象が再び起こった。
授業中だったという事もあり、若干銀と桂が元気になった状態で二回目の戦い。リブラ・バーテックスとの戦いに臨んだ。挑んだのだが。
「風強すぎよ!! どうにかしなさい桂!!」
「ズラっちどうにかしてよぉ!!」
「桂ァ! 今何キロォ!!?」
「お前ら俺に無茶ぶりしスギィ!!」
「使えねぇなズラァ!!」
「黙れ銀時!!」
「アタシはちゃらんぽらん銀髪侍じゃねぇからな!!?」
園子が傘を展開して踏ん張り、須美と銀が園子を支え、桂が吹き飛ばないように銀の腰にしがみついている。前回の戦いではかっこよく盾役を引き受けたと言うのに今回は女子の腰にしがみついている始末。情けない時とカッコいい時の差がありすぎる。
そんな情けない桂は銀の腰に片手でしがみつきながら片手で頭を押さえていた。
「ってかこれどうすんだよ!? ズラ、どうにかしてくれ!!」
「だから俺に無茶ぶりを……」
その瞬間だった。
桂の、自分の頭を押さえていた手から力が抜けてしまい、とある物が吹き飛んでしまったのは。
「え?」
「は?」
「へ?」
それを見てしまった三人が思わず声を上げた。
飛んでいったもの。それは、髪の毛。
桂が必死に右手で抑えていた髪の毛だった。それが、全部。全部一気に吹き飛んでいった。
つまり。
桂がハゲになった。
ズラっちの髪の毛はズラだったのだ。
「……おい」
桂が三人に声をかけた。
三人は見て見ぬふりをした。
「おい。こっち向けよ。向けってば」
気まずい。気が付けばバーテックスも空気を読んだのか風が止んでいた。
「なんか言えよ。どうせなら笑えよ。笑ってくれよ。笑えよベジータ」
何か言えるわけがない。直視できるわけがない。
そっと桂から目を離した三人は、桂に話しかける方法が見つからず、桂を完璧に無視して生傷を増やしながらゴリ押しで何とか鎮花の儀を発生させたのだった。
なお、桂はその間にズラを回収してからずっといじけていた。
****
「いやー、あれは衝撃的だったよなぁ」
「だってズラっちの髪の毛が吹っ飛んでいってツルッパゲなんだもん」
「俺の精神的ダメージが一番大きかったのを忘れないでくれ……」
当時のハゲ丸はその後かなりいじけた。なんとか鎮花の儀を発生させたものの、ハゲ丸はレ〇プ目状態で爪を噛みながら三角座りして動こうとはせず、銀、園子、須美はどうしたらいいのか分からずただそっと目を逸らすだけだった。
完全に不幸な事故だった。だからこそ、何もかける言葉が考えられなかった。
結局桂はその後、銀と須美によって両手を抱えられて運ばれて行き、園子は何かの間違いで桂のズラがずり落ちない様にズラを抑えていたと言う。
「あの時は本当になんて言えば分からなかったからなぁ」
「それね~。あの時ばかりは本当に言葉が浮かんでこなかったもん」
「今でこそ笑い話だけどな」
ハゲ丸の言葉に笑う銀と園子。それに釣られて笑うハゲ丸。
当時、暫くハゲ丸のズラの件は触れてはいけない物と化していたため、二年前は本当に笑い話になんてならなかった。それっぽい事を言おうものなら全員が冷や汗を流しながらそっと目を逸らす程だ。
小学生にしてツルッパゲというのは小学生の女子ですら笑い話にできない程なのだ。
「ん? 姉ちゃん達何笑ってんの?」
そうして笑っている三人に偶然通りかかった銀の弟である鉄男が見つけた。鉄男はダンボールを手にもっており、それを見たハゲ丸と園子は、まだ自分たちの座っている居間付近の引っ越し準備がまだ途中だったのを思い出した。
銀もそれを思い出したのか苦笑いをしながら鉄男に声をかける。
「あぁ~……こっちの話だからお前は須美を手伝ってやってくれ」
「終わってんなら姉ちゃんと桂兄ちゃんが手伝えばいいじゃん……」
「実は終わってねぇんだ」
「何してんのさ……まぁいいけど。金太郎、須美さんの手伝いに行くぞ~」
「は~い」
鉄男がダンボールを持ったまま、後ろに居たのだろう金太郎と共に美森の手伝いに向かった。
それを見てから銀達も立ち上がり、居間の荷物をダンボールに詰め始める。その最中に、園子がふとハゲ丸に質問を飛ばした。
「あれ? そういえばズラっちっていつから鉄男くん達と知り合いになってたんだっけ?」
「え? あぁ……いつだっけか」
「あの後だろ? ほら、園子が隊長になって、合宿に行った後にアタシがズラに鉄男の面倒任せた時」
「あ~はいはいはい。あれね。クソレズと園子がここを覗いてたあの時」
それは、園子が安芸先生から四人のリーダーと任命された時から始まる、ちょっとした勘違いや認識のズレが起こしてしまった、苦いようで微笑ましい記憶。
そんなわけでアクエリアス・バーテックス戦の続きとリブラ・バーテックス戦でした。三人の中に防御特化が一人でも居ればミノさんと園っちの二人が近接戦闘に入るから安定性増すと思うの。
そして当時から狙撃手一人による二か所同時スナイプを行っていた模様。ハゲ丸くんの当時の勇者システムは精霊バリアの有無と身体能力程度しか変わってないので基本的にハゲ丸くんにできることはズラっちにもできる感じでござい。
これ、花結になると二人のハゲと二人のレズ&ロリコン&闇眼鏡による八発同時狙撃とかできるようになるんじゃ……ハゲ二人が四発も弾を滞空させれたらの話ではありますけど……ww
FGOとグラブル回さないと……だけど面倒……