気が付くと。そこはなんかカラフルな樹海でした。なんだこりゃ、とハゲ丸は思った。
振り向けば、そこには自らの体を盾にして守った気でいた少女二人が、目を丸くしていた。なんともまぁ、間抜けな顔ではあるが、そんな事を言ったらうっせぇハゲと返ってきそうなのでお口チャックで彼女らの意識が戻ってくるのを待つことにした。
さてさて。このカラフルな樹海の中でどうするべきか。というか帰れるのかこれ。とハゲ丸は携帯片手に突っ立っている。
「……い、いやぁ、何かなこれ。新手のVRかなにか?」
「それを言うならARよ、友奈ちゃん。ここは現実……だと思うから」
どっちでもいいわとハゲ丸。
しかし、これでようやく二人の意識が現世に戻ってきたため、話を進めることができる。
「で、これからどうす……」
「どうにかしなさい、ハゲ!!」
「初っ端からそれか貴様ァ!!」
「いいからどうにかするのよ! なんのためにハゲてんのよ!!」
「少なくともお前らの便利道具となるためじゃねぇよ!!?」
話を進めることができるかと思ったのだが、結局ハゲ丸と美森は口論になってしまう。しまっているのだが、友奈は仲がいいなぁ、なんて思いながら携帯の画面に目を落とす。
携帯の画面は、何故か彼女の慣れ親しんだ壁紙ではなく、風の言伝によってインストールしたSNSアプリ、NARUCOの物であろう画面へと切り替わっており、そこから動かない。いくつかアプリのようなものはあるが、この画面自体見たことがない物のため、あまり見知らぬアプリを開いてみるという事はしたくなかった。
だが、そんな中で恐れしらずの者がいた。
「ん? なんだこりゃ。適当に開いてみるか」
ハゲだった。
ハゲ丸は自分のヅラが自分の机の上に放置されており、今の頭はツルッパゲの状態であることを忘れてそのアプリを一つ、開いてみた。
その結果。
「……ハゲ。頭が光ってるわよ」
「……お天道様?」
「俺が何したってんだよ……!!」
頭が発光した。それはもう面白いくらいに。
まるで日差しに照らされたハゲだと言わんばかりに煌めくハゲは、どこか暖かい物を感じさせながらも、同時に胸の内から笑いを捻りだしていく。やめて、流石に笑う、と友奈は今にも破顔しそうな顔で耐え、美森はどうせなら一発芸でもやったらいいのに、とハゲ丸のハゲ芸を辛辣に評価する。
だが、その内心での言葉が届いたのか届いてないのか。分からないが、ハゲ丸はそっと自分の頭に両手を翳すと、叫んだ。
「太陽拳ッ!!」
「ぶっふぅ!!?」
そして友奈ダムが崩壊した。
それと同時に。
「ファッ!? 目が、目がぁ!!?」
ハゲ丸が叫んだ瞬間、ハゲ光が急に増し、吹き出してそのまま下を向いた友奈を除いた美森と、そして何故か使用者であるハゲ丸の目を焼いた。
「ぬおおおお!!?」
「は、ハゲぇ!! 何してくれるのよぉ!!」
「うるせぇ国防芸人ッ!!」
「誰が国防芸人よハゲッ!! どうせなら四神の拳でもしなさいよハゲッ!!」
「俺はクリリン派だっ!!」
「私は天津飯派なのよ!!」
どうやら二人ともドラゴンボールの愛読者らしい。友奈も西暦の時代に存在していたバトル物の漫画は、有名な物は目を通したことはあるので話は一応分かる。分かるが、友奈はドラゴンボールの中では未来悟飯が好きなので何とも言えなかった。
ヒートアップしている国防芸人とハゲ芸人は置いておき、友奈は近くの木にどっこいしょ、と座る。なんか変な現象に巻き込まれてしまってこうなってしまったが。もしもこれを解決できる手段がないのだとしたら、ここで三人一緒に餓死待ったなしだろう。携帯は変なことになってるし、それ以外に何も持ってないし、芸人はヒートアップしているし。
美森とハゲ丸の間には、どこか友奈の持つ友情とは違う、旧友のような。昔から知っているから遠慮なしに言葉をぶつけあえるような。そんな感じがしている。というか、完全にノーガードで殴り合っている。もう自分のダメージなんて考えずに思いっきりノーガードで殴りまくってる。
「結城さん!」
「友奈ちゃん!!」
「は、はいっ!?」
なんて思っていたらいきなり白羽の矢が立った。
一体何を、と思い、一応二人の言葉に耳を貸す。
「この現象!」
「アニメや漫画で例えるとしたら、何!?」
なんでそんな方向に話が跳躍してるの。友奈は太陽拳からどうしてそこまで話が飛躍したのか一切合切不明だったし、ついでに言えば未だにハゲ丸の頭が光ってるのが不思議で仕方なかった。が、とりあえずこのままだと二人は延々と口論しているだろう、ということで適当に最近見たアニメの現象を口にした。
「エキゾチックマニューバでいいんじゃないかな?」
まさかのトップ2であった。
もうハゲ丸はヅラを被って頭を光らせてエキゾチックマニューバ!! とでも叫んだらいいと。友奈は至極どうでもいい物を考えるような感じで思った。
が、案外それは好印象だったのか。それとも友奈限定でイエスウーマンとも言える美森と、中二病故になんかその言葉かっこいいと思ってしまったハゲ丸は一緒に頷いていた。
「エキゾチックマニューバか……いいな。元ネタ知らんけど」
「えぇ。友奈ちゃんの言う事は間違いないわ。元ネタ知らないけど」
どうやら二人は少年漫画しか見ないようだ。友奈は苦笑いしながら扱いやすいなぁ、と内心で毒を吐いた。ちなみに、友奈が最近練習していることはスーパーイナズマキックである。
そうして芸人の不毛な争いを静め、友奈はこれからどうしようかと考える。
きっと、この現象は自分の知識だけじゃどうにもできない事なのはなんとなく分かっている。しかし、ここを脱出しない限りは死あるのみだ。
事情通の誰かでも居てくれたらなぁ、と思った矢先だった。友奈の横にある茂みが急に音を立てて動き始めた。それにいち早く気が付いたのは、芸人共だった。
「ハゲ、友奈ちゃんを守るための犠牲になりなさい!」
「お前がなれや国防芸人!!」
と、言いながらも二人同時に友奈の前に滑り込むあたり、息は合っているのだろう。
そんな二人が出迎えたのは、友奈と美森、そしてハゲ丸も知っている人物たちだった。
「あ、いたいた。見つかってよかったわ」
「風先輩……?」
「なんだ、風先輩ね……これじゃあこの事態も一進一退だわ」
「おい説明してやんねぇぞ国防芸人」
なんか思いっきり仲違いしているような感じだが、風と美森の距離感は大体こんな感じなので風も特に気にしていない。その後ろをついてきていた樹は風以外の知り合いを見つけられたからか露骨にホッとしている。
そうしてこの空間に飲み込まれてからしばらくして、ようやく勇者部全員が集結した。いや、何故か勇者部全員が集結したと言った方が正しいだろう。ここには学校の生徒が誰も居らず、ただ勇者部の面々だけが存在しているだけ。偶然こうなった、とは言い切れないくらいには、この状況は不思議でしかなかった。
風はバツの悪そうな表情をしながら、とりあえず現状を説明すると言って、自分の携帯の画面を友奈と美森、ハゲ丸に見せた。
「あまり時間がないから説明するわ。アタシが言って入れてもらったこのアプリは、この事態に陥った際に自動的に機能するようになってるの。SNSは副次品とも言えるわね」
風はかなり焦りながらも、今この場にいる全員の携帯の画面に表示されているアプリについて説明を始めた。
それに対して友奈と樹はあまりついていけていないようだったが、美森とハゲ丸はなんとか理解しようと必死だった。そして風が言って開いた、アプリの中にある一個の機能は地図のようなものであり、それには各々のパーソナルカラーの小さな丸と、そこから少し遠くにある大きな丸を写していた。
大きな丸は乙女座、と書いてあり、それが徐々にこちらへ向かって近づいてきているのが目にとれた。
「……アタシは、大赦から派遣された人間なの」
「大赦から……? そんなの、一言も聞いたことが……」
「言わなかったから。こうやって、アタシ達が選ばれなかったら、黙っているつもりだったから……」
こうして選ばれてしまったから、打ち明けた。だが、選ばれなかったら言わなくても何ら支障のないことだった。
風はバツの悪そうな顔を変えずに説明を続ける。
「ここは神樹様が作り出した結界。アタシ達は、ここで戦うために選ばれたのよ」
「戦うって……なにと」
「バーテックス。ほら、お見えなさったわよ」
風はそっと視線を乙女座の丸がある方角へと向けた。
そこに全員が視線を向けて、息を呑んだ。
少しだが見えたそれは、人間が知る生物とはかけ離れた姿をしており。人間が嫌悪感を抱くには十分な姿形をした、見ただけで悪者だと判断できる物が、そこには居た。
それこそが、バーテックス。乙女座のバーテックス。
「あ、あんなのと……戦うんですか……?」
「無理よ……ハゲの頭に髪の毛を生やす並みに無理よ!!」
「お前こういう時でも喧嘩売らねぇと気が済まねぇのか!!?」
「うるさいハゲ! 黙ってなさいハゲ! あれにチャオズしてきなさいハゲ!!」
「さよなら天さんしねぇから! っつか、俺はクリリン派だっつってんだろうがこの国防芸人がァ!!」
あーあ、もう滅茶苦茶だよ。風は顔を抑えて天を仰ぎ、もう友奈と樹にだけ説明しときゃいいか、と簡単に説明をする。
曰く、バーテックスがこの樹海の先にある神樹様にたどり着き、神樹様にたどり着けば世界は終わる。それを守るのが神樹様に選ばれた少女、勇者である。ハゲ丸はイレギュラーだと。
つまり、この世界の命運は自分たちに懸かっている。そう言われ。恐怖心が押し寄せてこないわけがなかった。
「友奈。樹と、そこの芸人共を連れて逃げなさい」
「そ、そんな! 風先輩を置いていくなんて……」
「いや、割とマジでそこの芸人共邪魔なのよ。お願いだから避難して、割と真面目に」
戦う気すらないうえに口論ばかりするのならそっと遠ざかってもらった方が精神衛生上マシだった。
あー、と友奈は納得してしまい、頬を掻いた。しかし、それに反論したのが、風の妹だった。
「い、いやだよ! お姉ちゃんから離れたくない!」
「樹……いや、あんたいないとあの芸人共止まらないかもしれないから……」
「もう止まんないよアレ! 手遅れだって!!」
樹から、もうどうにもならない人間扱いされた結果、芸人二人の胸に言葉の矢がぶっ刺さり、そのまま二人は再起不能となった。
我が妹ながら容赦ねぇな……と風は戦々恐々しながら、しかしそこまで言うのなら、と小さく笑う。
友奈には、あの芸人共の引率をしてもらわないといけない。特に、ハゲ丸に至っては、見ないふりをしていたが、なんか頭が光っているので狙われる可能性が物凄く高いため、バーテックスの視界に入らないように友奈に誘導してもらわなければならない。
そして、自分は、樹と共に。
「樹、勇気を振り絞りなさい! そうすれば、このアプリの隠された機能が解放されて、アタシ達は――」
風は己の携帯に出現した、大きなオサギリスのマークをタップする。
「勇者になれる!!」
その瞬間、風の体はどこからか出現したオサギリスの花びらに包まれる。
「うん、わかった!」
そして樹も。鳴子百合のマークをタップし、その花びらに包まれる。
花びらに包まれた二人と、バーテックスの視界にそんな二人が入ってしまい。バーテックスから射出されたナニかが二人のいる場所に着弾し、爆発してしまう。
しかし、その爆発の中から二つの影が飛び立った。
それは、勇者となった犬吠埼姉妹だった。
「す、すご……」
そのまま樹海の中を飛び交いながら、いつの間にか召喚していた武器でバーテックスと戦い始める二人。その姿は、正しく勇者だった。
友奈はそんな二人の戦いに見惚れ。すぐに自分の携帯にかかってきた電話に気が付き、それに出る。
『ごめんね、ずっと黙ってて』
電話をかけてきた相手は、今戦っている風だった。片手で大剣を振るいながら、携帯で通話をしている。なんとも器用な、と思わないこともなかったが、友奈はその言葉に対して、無意識のうちに叫んでいた。
「そんなことないです! 風先輩は、わたし達の事を思って、黙っててくれたんですから」
『友奈……ってやばっ!?』
だが、そんな器用な真似がいつまでも続くわけがなく。風の目の前にはいつのまにかバーテックスが居り。
風は咄嗟に大剣を盾に構えたが、バーテックスの攻撃は勇者となって身体能力が増した人間を、防御の上から吹っ飛ばす程度容易なくらいには威力が高かった。
「あ、ちょっと待ってビーム撃つって聞いてなあんぎゃー!!?」
その攻撃をモロにくらった風の悲鳴が聞こえてくる。
なんかギャグっぽいなぁと思った直後。
「お姉ちゃん!! って、なにこれファンネルミサイルかなにかあばー!!?」
樹が追尾してきた爆弾的な何かで吹っ飛ばされた。この姉妹は悲鳴がギャグっぽくなる呪いでもかかっているのだろうか、なんて友奈が思った直後だった。
バーテックスが、こっちを見る。
口論していたハゲ丸と美森が黙り。友奈も思わず一歩後退してしまう。
「こ、こっち見て……」
逃げないと。友奈が反応する前にバーテックスからビームが放たれ――
『協力奥義、ハゲガードッ!!』
咄嗟に前に出てきた美森とハゲ丸が、そのビームをハゲ丸のハゲで受け止めて。
そのまま跳ね返し、バーテックスの体を抉った。
『えええええええええええええええええええええええええ!!?』
「やるじゃないハゲ」
「だろ?」
ハゲ丸と美森がハイタッチする中、その一部始終を見ていた犬吠埼姉妹と友奈が声を上げる。
まさかハゲがビームを跳ね返すとは。というか、ハゲ丸が前に出て、美森がその後ろでハゲ丸を支えて、ハゲが絶妙なコントロールでビームを反射する。なんともまぁ、馬鹿らしい反撃方法だったが、確かにそれは、バーテックスにダメージを与えた。
『……ヤタノカガミ?』
『そういやアカツキって光るとビーム反射できたわね……』
「いやそういう問題ですか……」
だって、ハゲがビームを反射したんだもん。明らかに鏡とかそういうので反射できる次元の攻撃じゃないのに、と。友奈はダメージをくらって寝ているはずなのにボケる犬吠埼姉妹にツッコミを入れながら苦笑する。
だがしかし。
「ほらハゲ! あの爆弾も跳ね返しなさい!」
「いや、実弾は無理だって」
「ちょ」
『アッーーー!!?』
直後にカウンターで放たれた爆弾的な何かが二人の足元を吹っ飛ばし、美森とハゲ丸はそのまま吹っ飛んだ。死んではいないが、受け身も取れずに顔面から落ちているので鼻血が出る程度の怪我はしただろう。
そうやって何故か冷静に状況の確認をしていると、バーテックスは次なる爆弾を既に自身の周りに滞空させていた。それを見た瞬間、ヤバイと。友奈の頭の中の警笛が鳴る。
流石にもう一発くらえば、二人は死んでしまうだろう。
守らないと。助けないと。
爆弾が放たれた時には、既に友奈は動いていた。
「うおおおおおお!!」
叫び、親から教わった武道の型で、友奈はその爆弾を右手で殴り抜く。
「嫌なんだ! 誰かが傷ついて、つらい思いをすることが!!」
普通ならそのまま肉体が爆散してもおかしくない威力のそれを、友奈は無傷で殴り抜いた。
「だから、見ていて!」
その手はピンク色の手甲に包まれており、続きの爆弾へ向けて振り抜いた左足は、振り抜くと同時にピンク色の靴に包まれ。そうして左手、右足と爆弾をその手で迎撃し、爆散させ、同時に両手両足の変身を完了させる。
「私の、変身ッ!!」
更に震脚。そのまま自身の体の側面を思いっきり爆弾へ叩き込み、胴体の変身までを完全に完了させた直後、友奈はいつのまにか出現していた牛のようなマスコットみたいな物を肩に載せ、大幅に強化されたその脚力で空へ向けて、光を纏いながら飛び立つ。
短いポニーテールだったはずの髪は、いつのまにか伸び、色は赤色から淡いピンク色に。髪留めまでもが伸び、友奈を完全な勇者へと変貌させる。
そんな勇者を迎撃すべく、バーテックスは爆弾を射出してくる。しかし、それを友奈は空中で体勢を変えながら殴り、蹴り、爆散させていく。
「スーパー! 勇者ァ!! キィィィィックッ!!」
叫びながら、友奈はそのままバーテックスへ向けて、いつか見た飛び蹴りを。テレビの中で見たその技を、爆弾とビームを蹴り裂きながら叩き込み、バーテックスの体を半壊させ、着地した。
「……わたしは! 仮面ライダー友奈だ!!」
「いや違うからぁ!!」
しかし、どこまでも締まらない上にふざけてしまうのが、勇者部なのであった。
【速報】ハゲの頭、ヤタノカガミになる
なんか特に何も決めずにギャグやろうと思った結果、危機感もへったくれもないシリアルが完成した。その結果がガノタの犬吠埼姉妹とバトル作品オタクの友奈ちゃんでした。
ちなみに、勇者パンチじゃなくて勇者キックにした理由は、最初はスーパーイナズマキックって書いてた名残です。友奈ちゃんならスーパーイナズマキックできると思うの。
友奈ちゃんの勇者衣装クッソ可愛いなぁと思ったところでまた次回