ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回はラブレター回。っていうかこんな感じで一話使ってたらわすゆ完結までどれだけかかるのか……


ハゲレター

「そういえばさ、園子に来たラブレターなんてあったよな」

「あぁ、あったあった。確か、学校でだっけか」

 

 

****

 

 

 休暇、とは言っても学校は勿論ある。小学生とは言えど学生の本文は勉強だ。それを蔑ろにできるわけがない。故に勇者は平日は学校へと向かう。

 そうして学校へ向かっていつも通りに席にランドセルを置いてからこれまたいつも通りに園子の席へと集まる。どうして園子の席かと言うと、園子は大抵早めに学校に来て机で寝ているからだ。その後に須美が来て、桂が来て、最後に朝のホームルーム直前に銀がやってくる。そんな感じだ。だから、先に来ている園子の席に集まってしまおうという感じで集まっている。 

 この日もそれは変わらず、朝のホームルームまで三人で話して、それから一度ホームルームのために自分の席に戻り銀がやってきて、そしてもう一度今度は四人で集まる。そうして話している最中だった。

 

「あれ? なんか机の中にあるよ~?」

 

 そう言いながら園子がサンチョのドデカぬいぐるみが詰められた机の中から一つの手紙を取り出した。園子の机の中を一瞬見た須美はギョッとした。どうしてサンチョのぬいぐるみがみちっ。と入った机の中から手紙を傷一つなく取り出せるのか。というか、どうしてそれが傷一つなく入っていたのか。これが分からなかった。

 だが、取り出されたのはまさかのハートのシールで封がされたピンク色の便箋。銀と須美はよく分かっていないようだったが、桂だけはマジか。と一言呟いた。

 

「て、手紙? 果たし状か!?」

「不幸の手紙かもしれないわ!!」

 

 いや、お前ら……という桂の呟きは二人の意識には介入できなかったようだ。

 園子はちょっと不思議そうな顔をしながら何の気もなくその場で丁寧に便箋を開き中から手紙を取り出して口にして読み始めた。

 

「えっと、最近気が付けばあなたを見ています」

「やっぱり果たし状!!?」

「呪いよ! 呪術よ!!」

「須美、それだけはないから」

 

 あまりの発想の飛躍っぷりに思わず桂がツッコミを入れる。その瞬間、須美がえ? と言わんばかりの目で桂を見る。見つめ合う二人。目と目が合う瞬間だが特に好きだと気が付かない。そんな感情が沸くわけがない。

 だが、その二秒後には一瞬で桂の背後に移動した須美がそのまま桂に何故かパロスペシャルを極める。

 

「がああああああああ!!?」

 

 思わず悲鳴を上げる桂。何故だ、と声を大にして叫びたかったが、先に口から悲鳴が出てしまう。というか何故パロスペシャル。

 もう須美の考えていることがよく分からない。桂はパロスペシャルを受けながらも鷲尾須美という少女の一から十までを理解することを諦めた。そんな惨状が巻き起こる教室。外から実はとんでもない物を見たと言わんばかりのしずくが目を見開いていたのだが、当時の桂はそれに気が付いていない。

 惨状が巻き起こる中、園子は手紙の内容を読み進める。

 

「私はあなたと仲良くしたいと考えています」

「仲良くなってから呪い殺すつもりね!!」

「おまっ、いい加減にあああああああああああ!!?」

 

 顔を赤くする銀と、未だに気が付いていない須美。いつの間にかパロスペシャルはキン肉バスターに代わっており、桂が既に二、三度キン肉バスターをお見舞いされている。どうしてこんなことに、と泣きたくなる桂だった。小学生のしずくが思わずドン引きしている。

 園子は特に桂を助けようとはせずに手紙を読み進める。

 

「お役目は大変でしょうけど、それを支えたいと思っています……だって」

 

 園子の顔色は特に変化ない。銀の方は勘づいているのか顔を赤くしている。

 しかし須美だけは気が付かず、キン肉バスターからアルゼンチンバックブリーカーへと技を変えて桂の背骨を今にも折らんとしている。流石の桂くんもプロレス技に対する防御態勢は持ち合わせていないので顔を真っ青にしている。須美は最早無意識なのかプロレス技を一切解除しようとしない。

 そんなカオス空間の中、三人の中では一番女の子な心を持っている銀が顔を赤くしながら口を開いた。

 

「も、もしかしてこれ……最初にラが付くものじゃ……」

「羅漢像ね!!」

「アタシはお前の常識を疑いたくなるよ」

 

 アルゼンチンバックブリーカーからタイガースープレックスに技を変えて桂の頭を床に叩きつけた須美がこれまた見当違いの答えを繰り出す。そろそろ桂くんが虫の息になり始めている。

 

「じゃなくって! ラブレターだよラブレター!! 恋文!!」

「え? ラブレター? そう、ラブレター……ん゛!?」

 

 (TEN)(TEN)(TEN)

 

「ラ、ラブラブラブラブ!!?」

「ごふぅ!?」

 

 脳の理解の範疇を超えたらしい須美がそのまま暴走。タイガースープレックスしていた桂に地獄の断頭台を叩き込んで気絶させた。しずくがそっと教室から離れていった。南無。

 

「あ、ズラっちが死んだ」

「この人でなし!!」

 

 そして結構冷たい園子と一応ネタには乗っかる銀。

 しかし、園子がラブレターを貰ったのは事実。桂は口から魂を吐き出しながらもその魂から「そりゃ園子って可愛いもんな~」と言葉を口にしている。須美がそれを踏んで桂の口の中に戻しながら未だに茹だった頭で叫ぶ。

 

「どうするのそのっち!! 恋文なんて貰って!!」

 

 それよりも桂くんを助けてあげてください。

 焦る須美と顔を真っ赤にして口数が少なくなる乙女な銀。やはりこの中で一番女子力が高いのは銀であった。

 しかしラブレターを貰った園子は特に顔色が変わっていない。ラブレターを受け取っても特に気にしていない。気にする必要が無いと言わんばかりの表情だ。

 その理由を園子はすぐに口にした。

 

「だってこれ女の子からだよ? 多分これ、ラブレターじゃなくて口にできない感じの感情を書いただけだよ」

「……へ? ラブレターじゃない?」

「結構勘違いしやすい文面だけどね~」

 

 園子が平然としていた理由はこれだった。

 銀はなんだ。と言いながらも露骨にホッとして、須美は舞い上がったというか恥ずかしい事を結構してしまったという事実に未だに顔を赤くしている。

 

「まぁ、ラブレターでも良かったんだけどね~」

『へ?』

 

 なお、当時から園子は結構腐る傾向があった。

 

 

****

 

 

「ちなみにさ、園子っていつからBLとかGL見始めたんだ?」

「入院してから二か月くらいだったかな? でもラブレターを貰った時から既に興味はあったみたいだぜ?」

「えぇ……腐るの早すぎない?」

「それな。ってか、一番面白かったのはその後だろ! ほら、須美ん家の親父さんに隠し撮りしてもらったアレ!」

「あぁ、あれか!!」

 

 

****

 

 

 ラブレター事件は周りの盛大なる勘違いという結果に終わった。桂はその後保健室に運び込まれ、須美と銀、それから園子は普段通りに授業を受けた。

 そして授業も終わり帰った須美ではあったが、もう一つの事件は須美が帰ってから起こった。なお、この事件は須美の父がそっと隠し撮りしていたのを園子、銀、桂に流した。

 

「須美様、これを」

「へ?」

 

 須美が鷲尾家のお手伝いさんから便箋を貰ったのだ。

 それを受け取った須美は、先ほど園子の件があったことからもしかしたらこれはラブレターなのではと思い顔を赤くしながら外へと駆けだしていく。

 もしかして自分にもラブレターが来たんじゃ、と思い、ドキドキしながら、自分宛と書かれた便箋を手に一度呼吸を落ち着かせる。付き合うかどうかはさて置いて、こういうのは受け取るだけ嬉しい物だ。最も、未来の彼女たる美森は受け取ったところで特に心が動かないだろうが。

 しかし須美は違う。ドキドキしながらそっと便箋の中を開いての手紙を、本文を見た。

 その内容は。

 

『鷲尾さんは優等生ですが注意するときに口うるさい気がします。気を付けてください』

 

 その数時間後。

 

「不覚ッ……!! たかが紙切れ一つに浮かれて色めき立つなんて、何たる不覚ッ!!」

 

 焚き上げをしながらその前で今まで見たことのない表情をしながら叫ぶ須美の姿がバッチリと撮られていた。なお、その映像は細かく震えていたので撮影者たる須美パパが声を殺しながら笑っていたのがすぐに理解できた。そしてそれを見た園子、銀、桂は家で大爆笑した。

 

 

****

 

 

「くっ、くく……!! お前よくこれ保存してたな……っ!!」

「だっはははは!! こんなん保存するし笑うに決まってんだろ!! は、はらいたい……くははははは!!」

 

 当時の映像を見て大爆笑をする銀とハゲ丸。しかし、今やセメントで友奈一筋の美森がここまで狼狽してキャラ崩壊を起こす事なんて珍しい事だ。恐らく今の美森はクレームの手紙をラブレターと勘違いすることなんてないし、貰ったとしても友奈が居るからとバッサリ切ることが目に見えているからだ。

 故にこの映像は貴重。既に銀のパソコンと園子のパソコンにもバックアップが保存されているくらいだ。ちなみに、このクレームの手紙は銀が適当な知り合いに書いてもらった物なので、とんでもないマッチポンプである。

 

「ひー……ひー……やっぱおもしれぇ……!!」

「っ……!! っ……!!」

 

 何度かそれをリピートして楽しむハゲ丸と銀。もう狼狽しまくってしまくって、そしてクレームの内容を見た時の顔とその後の行動にもう腹がよじれそうになっている。

 だが、二人は気が付かない。そんなに大爆笑する物だからついつい様子を見に来た人間が、ハゲ丸の後ろに居ると。

 

「へぇ……楽しそうね。ハゲ、銀」

「ふっくく……へ?」

「人に作業させておいて自分たちは笑っているなんて、これはお仕置きが必要ねぇ」

 

 ハゲ丸の後ろに居たのは、この大爆笑の原因となった芸人。美しい程の黒髪が今日はまるで地獄の門のように見える、幽鬼でも背負っているのではないかと思う程の自分たちの仲間。

 サーっと顔から血の気が引く銀。そして逃げようとしたが掴まるハゲ丸。

 

「サボらないで働きなさい!! 神威の断頭台ッ!!」

「ぐえーっ!!?」

 

 そしてハゲ丸が神威の断頭台をくらって倒れた。南無。美森も二年前から成長しているのである。

 銀は桂が神威の断頭台の餌食となっている間にそそくさとその場を離れてなんとか難を逃れていた。ちゃっかりしている少女である。

 なお、ハゲ丸はこの五分後には普通に復活した。ハゲ丸の方も当時と比べて耐久度が成長しているのである。




まだ足が動くようになってからあまり日が経っていないのに神威の断頭台をやらかした東郷さんでしたが、東郷さんとハゲ丸なので気にしないでください。

リトルわっしーの方も徐々に東郷さんに近づいてまいりました(無意味にハゲ丸をボコる所とか)。次は……国防仮面とプールか。っていうか国防仮面の所書くの難しいし園子の夢とかどないせぇと……ww

あのプールの話って、よくよく考えるとプールに行ってから学校に戻ってるんですよね。あれ、学校のプールだったんですかね……にしては周りに人いないし……謎だ。

あ、これは関係ないんですけど、最近アズレン復帰しようかなと思ったんっすよ。ベルちゃん狙いで。でもなんかベルちゃんの入手方法が面倒すぎて……ネプコラボ辺りで放置してたんで色々とインフレしてるのもあって何したらいいのかよく分からない……w

9/7
一部描写変更

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