ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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気が付いたら一万文字超えてたんだぜ!!

ついでにくめゆ勢のゆゆゆい参戦、おめでとうございます!


ダークゲーハ将軍

「……ハゲ、あんた銀に何言ったのよ」

「ちょっとからかっただけなんだよなぁ……」

 

 外へ放り投げられて庭で犬神家していたハゲ丸は、偶然近くに居た美森と園子に何とか救出されズラについた土やら何やらを払ってから頭に乗せた。

 普段、あまり暴力に訴えない銀がこうしてハゲ丸に暴力を訴えたという事は何かしらハゲ丸が銀の琴線に触れるようなことを言ったという事だ。それが分かっているため美森は溜め息交じりに座っているハゲ丸を見下ろし、園子は苦笑しながら荷物を運んでいる。

 銀があんな風にハゲ丸を放り投げたりしたことはあまり多くない。だからこそ、直接銀が手を出した事に美森は若干驚きつつも呆れていた。

 

「からかったって?」

「まだ将来の夢はお嫁さんなのかって」

 

 美森はその言葉に若干フリーズしたが、すぐにそんな事もあったわね、と懐かしむ。

 対して園子は苦笑しながらも一度荷物を置いてハゲ丸に近づいた。

 

「ミノさん、昔から乙女チックな思考は変わってないからね~」

 

 何度も言うが、勇者の中で一番乙女な思考を持っているのは銀だ。美森と園子の先代勇者組は論外。現勇者組と比べても銀がトップクラス。風は女子力女子力言いながら女子力失っていってるし。樹は論外だし。友奈と夏凜はそんな事考えて無さそうだし。

 というか、まともに女の子しているのが銀くらいしか居ないというのが現状の勇者達だ。

 

「みたいだな。お前らもあんまり変わってないけど」

 

 そして論外と言われた先代勇者組ではあるが、その理由は昔からほとんど変わっていないから、とも言える。

 園子は趣味というか性癖というか、そこら辺が腐ってしまっているが、それ以外はあまり変わっていない。美森は友奈ガチ勢となり色々と内面が狂ったというか変わってしまってはいるが大本は大体変わっていない。変わったのなんて友奈ガチ勢であることくらいだ。

 故に、あまり変わっていない。銀も園子も、美森も。ついでにハゲ丸も。歳相応の成長こそしたもののそれ以外は大体が二年前から変わっていない。

 

「わっしーのお餅は凄く変わったけどね~」

「セクハラはやめなさい」

「女の子同士だからええじゃないかええじゃないか~」

「わたしの胸どころか全身は友奈ちゃん専用よ」

「……お、おう」

「ちょ、そのっち、いきなりドン引きしないで。無言で距離取らないで……!」

 

 急にナチュラルに重い事を言い出した美森に対して園子がドン引きする。勇者部の面々はこれに慣れてしまっているが、これが普通だ。この反応が普通だ。

 笑顔でスライド移動しながら美森から一定の距離を取り続ける園子と、それを病み上がりの足で精一杯追う美森。だが、園子の表情からしてこれは美森をからかっているだけだと気が付く。相変わらず美森いじりが好きなようでハゲ丸は若干安心しながらも、あの二人の過去を思い出す。

 ハゲ丸……いや、桂が別にいいだろうと放置していたが故にフリーダムが爆発した過去の二人を。

 

 

****

 

 

「新入生用のオリエンテーション……かぁ」

 

 小学六年生となって早数か月のある日。担任である安芸先生から朝のSHRで告げられた新たな行事は、今年新しく入ってきた一年生に対して何かしらのオリエンテーション……というよりも出し物を行って交流を行おうという物だった。確かに、一年生の頃そんな物をやらされた記憶が……ない。少なくとも須美と桂は。

 

「そんなのがあったのな」

「あれ? ズラっち知らないの?」

「いや、俺四年生にこっち来たから」

 

 桂と須美はここから電車で一時間程度の場所にある地域から大赦の指示で引っ越してきた転校生だ。神樹館小学校にもその時に転入したのだが、その際に試験等があるのを知り、必死に勉強したのは未だに桂の脳裏には残っている。

 何せ神樹館は格式の高い小学校だ。神樹様の名を冠しているのは伊達ではない。故に、転入するのにも相応の学力等が必要であり、桂はそれを努力で何とか突破した人間だ。須美は元々頭がよかったようで特に勉強しなくても余裕だったとは言っていたが。

 なので、桂と須美はこの神樹館小学校で一年生の内に受けたというオリエンテーションを知らない。一応安芸先生からの説明で大体は分かったが、それでも何をしたらいいのか分からない。分からないのだが。

 

「相手は真っ白な小学一年生……将来を見越して愛国心の深い子供たちを育成する事こそが私達勇者の役割とも言えるわね!!」

「いや、ねーよ」

「黙りなさいハゲ」

「ぶっ!?」

 

 冷静にツッコミを入れた桂ではあったが、直後に須美から足払いをくらい、そのまま顔面から地面に倒れた。そのまま何とか起き上がろうと一度四つん這いの形になったが、その上から須美が座る事によって桂をそのまま椅子にして桂を完全にいない者として扱いながら会話を再開した。

 

「で、なにするの~?」

 

 そしてそれを気にしない園子。ある意味大物だ。銀は一応桂の心配をしているが、桂なら大丈夫か。と謎の信頼を寄せて放っておくことに。対して桂くんは。

 

「美少女のお尻の感覚……ありがとうございますッ!!」

「キモッ!!? キモイわよハゲ!!」

「あだぁ!?」

 

 わざと気持ち悪い事を言って須美を退けようとしたが、結果は須美に頭を叩かれて黙らされた。でも直後に須美は立ち上がったので一応結果オーライだった。園子 と銀のこちらを見る目が若干きつくなったのは事実だが。

 

「で、どうすんだ須美」

「キモいから話しかけないでハゲ」

「うるせぇクソレズ」

「誰がクソレズよ」

「銀で鼻血噴出してただろうがクソレズ」

 

 須美は何も言わなかった。代わりに肘が桂の脇腹に刺さった。

 肘への返事は同じく肘。結構鈍い音がして須美が小さく空気を口から漏らした。続いて須美の返事は拳。思いっきり桂の脇腹に突き刺さり桂が脇腹を抑えながらよろめいた。そんな元気な返事に対する返事は、貫手。それが思いっきり脇腹に突き刺さった須美はぐふっ。と悲鳴を漏らしながら脇腹を抑えて地面に両膝をついた。

 

「アイムウィナー」

 

 右手を上げる桂を見て思わず溜め息を吐いた園子と銀は決して悪くない。

 暫くして須美が立ち上がり、一度桂の足を思いっきり踏んでから会話を再開した。

 

「私は出し物をして国防の良さを知ってもらうつもりよ」

 

 桂の足を踏み躙りながら須美は言うが、桂はケロリとしている。この程度で思いっきり悲鳴を上げる防御特化勇者ではない。

 須美の舌打ちを聞きながら、桂は須美に対して質問する。

 

「出し物? ヒーローショーみたいなものか?」

「そうね。大体間違ってはいないわ。ほら、前そのっちが夢で見た国防仮面っていうのがあったじゃない?」

 

 園子が夢で見た国防仮面。一瞬何のことか分からなかったが、そう言えばそんな事を前にイネスで話した気がすると何となく全員が思い出した。

 あまりにも国防仮面の図がイケていない。というか若干ダサかったので記憶から消去していたのだが、どうやら須美はあのデザインをカッコいいと思っていたらしく今でも覚えていた。

 あったなぁそんな物、と言う桂。あったのよ、と返す須美。

 

「その衣装を着て歌と一緒に子供たちに愛国心と護国について知ってもらうのよ!! そしてゆくゆくは……」

「おい、コイツ一人でプロパガンダ計画してんぞ」

「まぁまぁ。わっしーが楽しそうだしいいじゃん?」

 

 園子のいつも通りなお気楽な一言に桂は頭を抱えたが、どうせそんなプロパガンダ、半分も成功しないだろうと思いながらため息交じりで須美の考えを了承するのであった。なお、銀はその間ずっと苦笑していた。

 

 

****

 

 

 それからオリエンテーションの準備は着々と進められた。

 銀と桂が国防仮面登場まで子供たちを引き付ける紙芝居を読み聞かせる役。ついでに桂はBGMを適当な特撮のBGMの中から厳選してくる仕事も兼任している。

 そして須美と園子は国防仮面一号二号に扮して子供たちを洗脳……ではなく子供たちに愛国心と護国精神を埋め込むために最も効果的であろう歌と振付を考えている。園子のノリの良さと今まで以上に燃えている須美に銀と桂の溜め息が増えたのは言うまでもない。

 だがそうしてずっと同じことをしているのはなんやかんやで飽きてしまうし疲れも溜まってくる。そんなわけで。

 

「気晴らしに市民プールか……」

 

 作業の疲れを癒すためにプールに来ていた。

 園子からいきなり水着を持ってきてと言われたときは何をするのかと思ったものだが、その理由は貸し切りにした市民プール。早めに水着に着替え終えた桂は浮き輪を膨らませながら園子と銀、ついでに須美を待っていた。

 

「おぉ~! ひっろーい!!」

「人が居ないとすげぇ優越感あるな」

 

 そして最初に更衣室から出てきたのは、園子と銀だった。

 銀と園子はピンクと赤が基調の可愛らしい水着を着ている。桂は内心で眼福眼福と呟きながら園子に膨らませたばかりの浮き輪を手渡す。

 

「ありがとズラっち」

「いや、いい物を見せてもらったお礼だよ」

 

 その言葉に園子は首を傾げたが、これは例外も存在するが男にしか分からない感覚だ。園子は分からなくてもいい。

 首を傾げる園子と銀がプールに入るのを見送ってから桂は最後の一人である須美を待つ。

 別にそこに対する特別な意味はない。ただ、クラス一。いや、学年一。いや、神樹館小学校一のスタイルを持つと言っても過言ではない須美の水着姿をこの目でしっかりと。水に入る前に目に焼き付けようと思ったからだ。

 そして待つこと数十秒。園子と銀とは遅れて須美が更衣室から出てくる。

 その水着は。

 

「……なによハゲ。こっち見て」

 

 競泳水着。ついでに白い水泳キャップ。

 色気なんて知らないと言わんばかりの一部マニア向けしそうな水着を着て須美は更衣室から出てきた。国防国防言っている彼女は可愛い水着を着るという思考をどこかに置いてきてしまったらしい。桂のテンションが一気に下がり、思わず溜め息 を吐いてしまった。

 

「人を見て溜め息って……失礼ね」

「いや、さぁ……流石にその水着は色気がないというか何というか」

 

 青色の競泳水着は確かにマニア受けだったりはしそうだが、まだそこまでのマニアではない桂からしたら須美の水着はガッカリとしか言いようがなかった。

 須美は勇者足るもの水着にうつつを……と言っているが既に桂の耳にそんな言葉は入ってこない。二年後の彼女はちゃんと可愛い水着を着ているのだが、あれは友奈の言葉とかがあったんだろなぁ、と現代のハゲ丸は物思いに耽った。

 須美が準備体操している間に桂はプールに入り、浮き輪に体を預けて浮いている園子の元へ。

 

「園子さんや園子さんや。須美さんの水着はどう思いますか?」

「もうちょっとセクスィーでフリッフリな水着を着ないとあのスタイルが勿体ないと思いますぞ」

 

 園子もスタイルはいいのだが、それを超える須美のダイナマイトスタイル。それがあんな色気のいの字もないような水着に隠されているのは勿体ない、というのが園子と桂の談。どっちでもいいだろ……と苦笑するのが銀。

 

「いい? 私達は勇者なのよ? それが浮世だっていては国防の一つも満足にできはしないわ」

「勇者だって息抜きは必要だろうが。園子隊長。須美の水着を今度新調させる作戦を提示します」

「ズラっち新兵の案を採用します」

「え? 俺新兵?」

 

 自分の階級に若干の遺憾が発生したものの、どうせ今回限りだとそれを忘れる。

 えっちらおっちらと準備体操を終わらせた須美はそのままプールに飛び込む……なんて事はせずにゆっくりと入水。至福とでも言いたげな表情でゆっくりと桂たちの元へと歩いてきた。

 

「しっかし、貸し切りプールなんて初めてだ。手続きしてくれた園子に感謝だな」

「ふっふっふー。これこそが権力!」

「僕の求めていた力……!」

「権力アームズ!」

「収拾付かないからやめなさい」

 

 悪ノリを始める園子と桂であったが須美に止められてしまいブーイング。それを無視した須美は園子の乗っている浮き輪を思いっきりぶん回すと銀の方へと振り向いた。

 

「さぁ銀、競争よ!」

「おっ、乗った!」

 

 なんやかんやで須美も貸し切りプールという物にテンションが上がっていたのだろう。

 笑顔で銀に勝負を挑むと、そのまま二人は全力で向かい側まで泳いで行った。そして取り残されるのは園子と桂。

 

「元気だなぁアイツ等」

「ズラッちは混ざらないの?」

「俺はプールや海ではゆっくりするのが好きだからいいんだよ」

 

 と誤魔化す桂。だが、園子様は全てを察したようでニヤニヤしながら桂の頭を見た。

 詰まる所、彼はズラが取れるのが怖いのだ。ハゲが露見する事が怖いのだ。黒色の新種のクラゲが水面に浮いてくるのが嫌なのだ。

 

「ズラッち、ズラ外したら〜? ここにはわたし達しかいないよ〜?」

「それでも嫌なんだよ。ほら、浮き輪引っ張ってやるからどっち行きたいか言え、おしゃまなお嬢様」

「わたしおしゃまじゃないよ〜?」

 

 と、言いながらも浮き輪を引っ張られて移動する園子はボーッと空を眺めながらもどこか楽しげだった。

 

 

****

 

 

 貸し切りプールで遊び尽くした後、四人は学校へと戻ってきた。須美、園子、桂は大分余裕がある感じではあるが、全力全開フルスロットルで遊び尽くした銀は疲れ果てていた。

 手には紙芝居を作る用のクレヨンを持ち、今にもばたんきゅーと言いそうな感じで突っ伏している。

 

「つかれたー……ねむーい……」

「ミノさんすっごいはしゃいでたもんね〜」

 

 対する須美と園子は当日の衣装を縫っている。

 そして桂は。

 

「まぁ元気なのはいいじゃねぇか。変身ッ!」

『鋼のムーンサルト! ラビットタンク!』

 

 その隣で仮面ライダーのベルトを腰に付けて遊び……と言う名の動作確認を行っていた。

 もしも国防仮面が滑った際は桂の私物であるウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊の玩具でお茶を濁すという作戦を立てており、現在桂はその玩具全部の動作確認を遊びながらしている。

 ちなみに、桂の担当する部分は全部終わっている。

 

「ってかズラ凄いな。そんなに玩具持ってるなんて」

「まぁ趣味だし? じゃあ次はこれで……天空・シノビチェンジ!!」

 

 しっかり掛け声付きで動作確認を行う桂を銀は苦笑しながら見届け、園子はちょっと休憩と言って桂の持ってきた玩具を漁る。

 そして須美はそんな桂を見て子供ね、と呟いた。

 

「子供で結構。特撮は大人ファンも多いんだよ。で、園子はどれにするよ」

「じゃあわたしはこれ〜。いくよズラッち!」

「おう!」

『ウルトラタッチ!! ギンガビクトリー!!』

 

 そして二人一緒に動作確認を始める園子&桂。いつの間にか銀も休憩と口にしてから桂の持ってきている玩具を漁る。

 その間も須美はせっせと国防仮面の衣装を作り続けており、もうちょっとで国防仮面一号の衣装は完成する所だ。

 

「おっ、この玩具持ってんのか」

「それがどうかしたか?」

「いやな。鉄男が欲しい欲しい言ってたんだけど小遣い足らなくて諦めてたんだよ」

「鉄男くんが? 遊びたいんなら貸すけど」

「え、マジで?」

「壊さなきゃ構わねぇよ」

 

 そんな訳で桂から、オリエンテーションが終わり次第玩具を借りることになった銀。それを見て思わず須美が溜め息を吐いていたのは言うまでもない。

 

 

****

 

 

 オリエンテーション当日。椅子や机が片付けられた教室の中で六年生が一年生のために用意しておいた出し物や遊びを披露し、交流を深めている。どこの出し物や遊びにも一定数の一年生が居り、六年生はやってきた一年生に対して精一杯交流を深めようと努力している。

 そして勇者達はと言うと。

 

「ずしーんずしーんと怪獣の魔の手が日本に迫る! この土地は俺達が生きるのに最も適した土地だ!! そう叫びながら怪獣は日本を、四国を蹂躙していく!」

 

 ストーリーの監修を様々な特撮を見てきた桂と、現在進行形で人気web小説を書いている園子が行った紙芝居を、弟たちの世話によって身に着けた技術によって銀が上手く一年生の子達の心を掴みながら紙芝居を読んでいく。

 西暦の時代にあったという紙芝居屋の使っていた道具一式を真似て作った手作り紙芝居道具を動かしているのは、現在特にやることのない桂だ。

 

「こんな図々しい怪獣が四国に向かって攻めてきた! さぁ、こんな状況、君たちならどうする!?」

 

 そして勿論、紙芝居を読むだけではなく紙芝居を見ている一年生の子を巻き込むように話を振るのも忘れない。

 いきなり話を振られた子供たちは、色々考えながらも自分の考えを口にする。

 

「え、えっと、逃げる!」

 

 その言葉は、逃げる。

 確かにそれはいい選択でもある。力を持たない者なら誰だってそうする。うんうん、と桂は紙芝居を置いている台の後ろで頷く。

 ある程度意見が出たところで、桂が教室の外で待機する園子と須美から合図を受け取り、そっとそれを銀に伝える。それが伝わったところで銀は頷きステップを次に進める。

 

「逃げるのも大事だ。だけど、アタシ達には神樹様が付いている! だからこそ、勇気を出して戦おう!! 国防仮面と一緒に!!」

 

 さぁ、ここからが桂の出番だ。

 銀の言葉と同時に自分の携帯のプレイリストからヒーローが登場するのに最も相応しいと思ったBGMを選択。それを隠したスピーカーから流し、銀の声と共に子供たちを煽る。

 

「さぁ、みんな一緒に! 国防かめーん!」

『国防かめーん!!』

 

 子供達のテンションは最高潮と言ってもいい。

 そして掛け声と同時に、BGMを止める。次の瞬間、桂は雷が落ちる音を一回だけ、須美と園子が教室の扉を開けると同時に鳴らし、まるで雷鳴の如く二人が現れたかのように演出する。更に教室の外から桂がリモコンで操作したライトが二人を逆行で照らし、更なるヒーローらしさをアピールする。思わず銀が小さく声を上げてしまう程の、ヒーローショーとして完璧な演出。

 

「国を守れと人が呼ぶ!」

「愛を守れと叫んでる!」

『全員、気を付け!』

 

 素早く銀と桂が紙芝居の道具一式を横へとスライドさせ、子供達の目に付かない場所にやってから須美と園子に合図。二人は勇者として鍛えた身体能力を全力で無駄に発揮しながら先ほどまで銀と桂が居た場所に立ち、敬礼する。

 

『憂国の戦士、国防仮面ッ! 見参ッ!!』

 

 二人の声が響くと同時に子供達の歓声が響く。それを見届けた銀と桂は誰にも見えない場所で座り込む。

 あとはあの二人の独壇場……ではあるのだが、一応前日急に用意した演目を一つやるために桂は急いで制服の下に着こんでいた衣装を、制服を脱いで銀に装飾等を付けるのを手伝ってもらいながら駄弁る。

 

「なんか成功してるっぽいな」

「子供ってのはヒーローに憧れて、そのヒーローが目の前に出てきたならテンション上がっちまう物なんだよ。知らないご当地ヒーローでもね」

「そんなもんか?」

「そうだよ。で、更にテンションを上げるには悪役が必要ってわけだ」

 

 桂はいかにも特撮の悪役! とでも言いたげな衣装と仮面を被って素顔を隠し、ついでにズラを取ってハゲを晒し、小学生っぽくないけどもどこか子供っぽい。一年生の子達がもしかしたらこうなってしまうかもしれないと思ってしまうような悪役の姿に扮する。

 国防仮面の衣装と比べると安っぽいのは否めないが、しかし立派な悪役だ。

 用意しておいた杖を片手に立ち上がり、少し咳ばらいをしながら準備を終わらせ、銀とハイタッチしてから覚えておいた台本の台詞を口にする。。

 

「フハハハハ! そこまでだ、国防仮面!」

「むっ、何奴!!」

「我はダークゲーハ将軍! この国を支配するために生まれた真の支配者だ!!」

 

 精一杯声を低くしながら素早い身のこなしで現れる桂。いきなりの悪役の登場に子供達は固唾を呑んで国防仮面を見守る。ちなみに、名前は五秒くらいで考えた即席の物だ。即席の物ではあるが、こういう者が案外ヒーローショーには似合ったりするものなのだ。

 須美と園子がゆっくりと歩きながら桂と場所を交換する。ここは悪役が一旦目立たなければ子供たちにインパクトを与えられない。すぐにやられてしまっては子供たちのテンションを下げてしまうからだ。

 

「この土地は良い物だ。神樹様の力によって守られたこの土地こそ、我の支配する国に相応しい」

「つまり、あなたが黒幕という事ね!」

「そうとも。故に……まずはこの場にいる子供達を我が手で支配してくれよう!」

 

 難しい話はなるべくなしにして、そしてなるべく早く話を終わらせてから見ている子供達を巻き込む。これもお約束だ。もっと長いヒーローショーなら、ストーリーをちゃんと作るのだが、今回は即席の物だ。この程度が限界だった。

 本来なら人質役として一人、子供を連れてくるのがいいのだが、それをやるには人手が足りない。なので、桂は杖の先を向けるだけでそれを終わらせる。そして、その杖を模造刀で弾くのが、近接戦を得意とする園子だ。

 

「そんな事はさせない!」

「この国は、そして子供達は!」

『私達、国防仮面が守る!』

 

 叫びながら桂に向かって須美が切りかかり、桂が数回のバックステップで後退。須美と園子に場所を明け渡し、二人が決めポーズしながら子供達の方を向いて叫ぶのを見届けてから、桂はこの先の展開をしっかりと思い出して杖を握りなおす。

 ここからは結構本格的な殺陣を行う事になる。園子と桂が小さく小競り合いをし、須美は大きな攻撃を繰り返して桂はそれを避ける。一方的にならない様に時々桂が反撃をして、二人がピンチかも! という時に園子が子供達から声援を貰って桂を撃退……というのが今回の台本だ。

 

「ならば貴様達を先に倒してやろう! 覚悟しろ、国防仮面!」

「望むところだ!」

「覚悟、ダークゲーハ将軍!」

 

 そして始まる、勇者として鍛えた結果、大人ですら目を見張るような実力を手にした園子と桂だからこそ行えるド迫力の殺陣。そこに須美が混じり、あくまでも国防仮面一号を魅せるように桂と園子が立ち回り、須美は目立つ大振りの攻撃を桂に向け、桂はそれを必死に防ぐ。

 ある程度国防仮面側が子供達から見ても優勢となった時に、桂が園子に合図。園子の刀を思いっきり弾き、回転しながら後退して誰も見えない所で待機している銀に合図。銀が頷いたのを見てから杖を構える。

 

「くっ、こうなれば奥の手だ! くらえ、ダークサンダーアタック!!」

 

 いかにもそれっぽい技名を口にしながら杖を振り上げ、そして須美と園子へ向かって振り下ろして攻撃するフリをする。それが合図となって銀が雷が走る感じの効果音を携帯から鳴らす。そしてそれを聞いてからそれっぽく吹き飛んでそれっぽく膝をつく二人。

 

「まさかこんな奥の手を隠していたなんて……! 私達二人だけじゃ厳しいかもしれない!」

「だったら、ここにいる子供達の力を借りよう! みんな、私達に力を貸して!」

「あなた達の応援が私達の力になる!!」

 

 そして更なるお約束。

 ヒーローは会場に居る子供達の力を借りる。

 子供達の応援の言葉を聞いて立ち上がる二人。そして二人が目で銀に合図したのを見てから桂は数歩後ずさる。

 

「なんだと……!? まさか、これが国防の力だとでもいうのか!!」

「そうだ! これこそが国防の力!」

「くらえ必殺!!」

『十文字国防斬り!!』

 

 そして応援を受けた二人がそれっぽい切り札で桂に向かって切りかかり、桂はそれを受けてフラフラと後ずさり、銀の近くまで移動する。

 

「ぐぅ!? まさかこの我が負けるだと……っ! だが覚えておけ。我はいつでも貴様達を支配するために地獄の底でその時を待っているぞ!」

「その時はここにいる子供達が国防仮面となってあなたを倒すわ!」

「富国強兵の元に!!」

 

 最後に桂がそれっぽい悪役の捨て台詞を吐いてから倒れるように銀の元へ転がり込み、一息ついた。

 

「さぁ、みんな! これからもダークゲーハ将軍は私達を襲ってくるかもしれないわ!」

「だから、みんなで楽しく体操をしながら国防を学びましょう!」

 

 そして最後に元から予定していた国防体操を流し、考えておいた振付をしながら踊る二人を見ながら桂はダークゲーハ将軍の衣装を脱いでズラを被る。

 

「ふぅ、なんか楽しいな、ヒーローショー」

「よく決まってたよ、ダークハゲ将軍様」

「せめてダークゲーハにしてくれっての……っていうかさ」

 

 制服を着直して国防体操に耳を傾ける桂。

 国防体操という名で歌われているこの歌なのだが。

 

「……完全にプロパガンダなんじゃ」

「しっ。楽しんでるからいいんだよ」

「いえ、やりすぎです」

「そうそう、やりす……えっ?」

 

 もうこの歌詞、先ほどのヒーローショーも含めるとプロパガンダとして成立してしまっているんじゃ、と考えた桂だったが、その言葉はやりすぎという一言で誰かに纏められた。

 桂がゆっくりと後ろを向いた。銀も同じように後ろを向いた。

 そこには我等が担任の安芸先生が。

 

「一年生の子達も楽しんでるからいいけど……これはやりすぎです」

『……す、すんません。調子に乗りました……』

 

 この後、勇者達は安芸先生からやりすぎだとお説教を貰いましたとさ。

 

 

****

 

 

「なんつーか……あの時の俺はまだ若かったなぁって」

「国防仮面、懐かしいね~」

 

 気づけばハゲ丸は園子と美森と一緒に思い出話に花を咲かせていた。

 国防仮面としてプロパガンダ……ではなく洗脳……でもなくヒーローショーを行った楽しくも慌ただしかった時のことを。

 衣装はまだ存在しているようで、園子はすぐに引っ張り出してこれるとは言っているが、美森も園子もこの二年間で身長も伸びているしスタイルも良くなっている。当時の衣装はとてもじゃないが入らないだろう。

 

「ヒーローショーできるって思ったらついつい興が乗っちまってなぁ」

「ズラっち、特撮大好きだもんね~」

「まぁ、俺の行動原理でもあるからなぁ。いいもんだぞ、特撮ってのは……っていうかなにしてんだクソレズ」

 

 ハゲ丸が懐かしむように語っていたが、ふと美森が何かを考えこんでいるのを発見した。

 まさか何か良からぬことを……とは考えたが、この会話から何か良からぬことを企むとは思えなかったので一応普通に聞いた。話を振られた美森は一瞬呆けたが、すぐに返事を返した。

 

「な、何かしらハゲ」

「いや、何してんだよ。急に固まって」

「いえ、なんでもないの。ちょっと考え事を」

 

 考え事。そう言われると迂闊にこちらから踏み込めない。

 そうか、とハゲ丸は口にしてから休憩終わり! と一言叫び、銀の元へと戻っていった。

 しかしハゲ丸は知らない。この時の会話が美森に要らん事をさせる原因になったのだと。




なんか筆が乗った結果こうなった。桂くん特撮大好きだからね、仕方ないね。

そしてプロパガンダ……洗脳……ヒーローショーを成功させたリトルわっしー達。やっとこさアニメ版四話に突入できそうだ。

……あのミノさん死亡フラグを大量に建築した三話の最後の短編、どうしよう。
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