ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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自分は、ヒーローの生き方こそが一番美しくて強い物だと思っています。特撮の中で戦うヒーロー達の生き様は次代の子供達に受け継がれて行ってほしいとも。

桂、藤丸はある意味ではそんな自分のエゴと妄想を全部引き受けてくれた勇者なのかもしれません。


ヒーロー

 銀の声が聞こえる。

 銀の戦う音が聞こえる。

 銀の悲鳴が聞こえる。

 でも諦めない銀の啖呵が聞こえる。

 それなのに動けない。

 桂はそんな自分が恐ろしい程憎く、今にでも殺してやりたいほどだった。

 転んでも立ち上がることができれば、それだけでヒーローだ。お前の信じている物は間違ってはいない。お前の中のヒーローは間違ってはいないと心が告げているが、それを裏切る体がある。

 銀が戦っているのに、動けない体に絶望する自分が居る。

 

「動けよ……動いてくれよ!! 銀が戦ってるんだ!! 血ぃ吐いてんだよ!! 俺の中のヒーローはこんなモンじゃ終わらねぇだろ!!」

 

 ウルトラマンは、例え死んだとしても何度でも奇跡を起こし不可能を可能にして巨悪を打ち倒した。

 仮面ライダーは、何度倒れようと何度でも立ち上がり、自分の体を張ってでも明日を作りだしていった。

 スーパー戦隊は、一人で勝てなくてもチームで立ち向かい、負けてもボロボロになっても立ち上がった。

 でも桂はそれができていない。

 一度受けたダメージを抱え込んで立つには体が小さすぎた。まだ体が完成していなかった。精霊バリア越しの攻撃でも、桂の一段階以上は低い性能の勇者装束は衝撃を殺しきれず、彼に立てない程のダメージを与えてしまった。

 それでも、彼が見てきたヒーローは立ち上がった。

 三分という短すぎる制限時間を超えて、死んでしまっても。それでも何度でも復活し、そして絶対に悪を許さなかった。人々をその大きすぎる背中で守った。

 何度変身を解除されても、何度地に這っても。それでも立ち上がり戦う事が明日を作るのだと信じて、奇跡だって起こして戦った。

 だけど、桂という少年はそれができない。

 奇跡なんて起こらない。勇者システムという決められた物事しかできない彼には。

 

「男なら歯を食いしばって守り抜けよ!! 誰かのために強くなれよ!! 傷ついて倒れても! 負けても! 何度でも立ち上がれよ!! そうじゃなきゃここに居る意味がねぇんだよ!! 今を正しいって肯定できなきゃヒーローじゃねぇだろ!!」

 

 自分に激を入れながら立ち上がろうとする。

 しかし、彼の体はいう事を聞いてくれない。それどころか、地面が愛しいのか今にも倒れようとしている。

 

「覚悟決めただろ!! 自分らしくあるために! 自分らしくなるために!! 迷わず立ち上がるんだ!! ヒーローになるんだ!!」

 

 だけど、いつだって奇跡は人の手によって起きるのだ。

 桂の足が動き、起き上がる。

 いつだってそうだ。ヒーローはこうやって立ち上がってきたのだ。勇気を奮い立たせて守ってきた。だから、勇気が尽きなければヒーローは何度だって立ち上がる。その胸にある光を絶やさぬ限り。

 

「諦めるな!! 前を見ろ!! その勇気を絶やすな!!」

 

 桂の周りにガクアジサイとタイムの花が咲く。

 ガクアジサイ。謙虚の花言葉を持つソレは、きっと桂に相応しい物だ。

 自ら盾というパッとしない役に付いて。でも役に立つ存在。

 そこにタイムの花が混ざっていく。その花言葉は――

 

「その勇気で、限界を超えろ!!」

 

 勇気。

 

「満開ッ!!」

 

 二つの花が咲き乱れ、桂が完全に見えなくなり、二つの花が咲く。

 

 

****

 

 

 銀は、片腕を持っていかれながらも見た。二つの花の中心でこちらを見て、すぐに空を飛びこちらへ飛んでくる桂の姿を。

 

「なんだよ……主人公かっての……」

 

 孤軍奮闘。獅子奮迅の活躍を見せていた銀は、片腕を持っていかれそこから大量の血を流しても膝を付かない。膝を付いてしまってはもう立てないと分かっているから。全身に矢が刺さっていても。それでも立っている。

 そこに空を飛び、巨大な鏡で一気にバーテックス達を吹き飛ばした桂が合流する。

 

「大丈夫か銀!」

「ったく……これで大丈夫に見えるか? 腕が片っぽ取れてんだぜ?」

「そ、それは……ごめん」

「冗談だよ冗談。来てくれただけで十分だ」

「冗談に聞こえねぇんだよ……でも」

 

 桂は千切れ飛んだ銀の片手から斧を借りると、それを手に銀の前に立つ。

 

「ここからは俺も戦う」

「そりゃありがたいけど」

 

 しかし、それを銀は残った片手だけで後ろへ下がらせ、斧を構える。

 

「アタシの片腕の弔いってことでアタシが前だ」

「……分かったよ。なら、俺はお前をこれ以上傷つけさせない」

「あぁ。そして……ズラ。絶対に、生きて帰るんだ。園子と須美を悲しませるわけにもいかないしな」

「そりゃそうだ。まぁ、背中は任せな。存分にやってこい」

 

 桂がそっと銀の背を押す。それを受けて銀は一人の時よりも遥かに速く飛び立ち、そのまま蠍座のバーテックスの尻尾を両断した。

 

「人間様のたましいをナメんなってんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 片腕だけでも彼女は戦う。右手がなくても左手一本だけで。

 そのまま蠍座を仕留めてしまおうと、斧から炎を出し蠍座を細切れにし始める。だが、そうはさせないと射手座が射撃戦をしかけてくるが、飛んでくる矢を見た瞬間、桂が空中を舞い銀と自分に当たりそうな矢を全て斧と鏡だけで弾き飛ばしていく。

 無数とも呼べる矢の中から自分と銀が当たりそうな矢だけを弾いていく。そして銀が半分ほどまで蠍座を解体し終わったところで桂が鏡を巨大化。そして精霊の力を鏡へと乗せる。

 

「返せ、八咫鏡!!」

 

 そして降ってきた矢をそのまま反射。蟹座と射手座を剣山にする。

 だが、これでも時間稼ぎに過ぎない。バーテックスは何度でも再生して復活するのだから。だが、それなら復活する前に一体を確実に戦闘不能にする。

 銀一人だけならできなかった芸当。攻撃を避けながらでは絶対にここまでうまくはできなかった。しかし、桂が復活したということは攻撃を一切気にせず戦えるという事だ。その状況で銀が桂の期待に応えられないわけがなかった。

 

「銀、挟撃だ!!」

「あぁ!!」

 

 そして、桂が銀の片腕の代わりとなって共にバーテックスの解体に入る。

 きっと、満開前ならこうもいかなかった。しかし、満開した桂はそれがプロトタイプで出力が低かったとしても次代勇者に匹敵する能力を持ち合わせる。それはつまり、銀よりもカタログスペック上は上を言っているという事なのだ。そんな桂が、銀と追従して共にバーテックスを倒す事ができないわけがなかった。

 

「だりゃあああああああああ!!」

「やられちまえええええええええええ!!」

 

 そのまま蟹座と射手座が復活する寸前。

 二人は蠍座を解体し終える。

 

「まずは一体!!」

「このまま行くぞ!!」

「おう! このまま終わらせて帰るんだ!! 遠足を終わらせるために!!」

 

 そして、勇者二人は残り二体のバーテックスを倒すため、その足を動かした。

 

 

****

 

 

 須美と園子は、恐らく鎮花の儀が終わった後なのであろう時に目を覚ました。

 樹海の光は暗く。もう戦いは終わっている事は分かった。

 

「わっしー……みのさんと、ずらっち、は?」

「たぶん……あっち」

 

 二人の体はボロボロだった。

 もう立ち上がるのすら困難なほどにボロボロで。でも銀と桂を迎えに行かないといけないという一心でその足を動かす。

 足を引きずりながら歩き、そして銀と桂を探す。

 二人の歩みは牛歩とも言える物で。それでもしっかりと地面を踏んでゆっくりと前へ前へと進んでいた。

 そうして歩いて何秒か。もしかしたら何分、だったかもしれない。その先で、二人は見つけた。

 倒れる桂と。そして立ったまま何も言わない銀を。

 

「ミノさん……ズラっち……!」

「本当にやってくれたのね……凄いわ、二人とも……!」

 

 だが、その途中で二人は歩みを止めた。

 桂は血まみれで倒れており、銀は右腕がなく。そして出血も止まっていたからだ。二人の武器は地面に突き刺さっており、地面の黒い血が既に相当な時間経過しているのだと理解させた。

 

「みの、さん……? ずらっち……?」

「も、もうすぐ樹海化が解けるわ。そしたら病院に行かないと……」

「お土産も……お土産も渡さないと……」

 

 二人の頭の中に最悪な光景が思い浮かぶ。

 二人はもう死んでいて。でも死ぬ直前に三体のバーテックスを撃退したんじゃないかと。二人は、その命を懸けてこの世界を救ったんじゃないかと。

 

「――あぁ……そっか。そうだよな。だったらこんなトコで寝てられないもんな……」

 

 だが、その予想は銀の声で裏切られた。

 銀は血まみれになりながらも振り返り、笑顔を見せた。疲れ果てて、生気もほとんど感じられないが。しかし生きていると感じさせるその笑顔を見て、二人の中にあった最悪の想像が一瞬にして消えた。

 

「ミノさん……ミノさん!!」

 

 そんな銀に園子が抱き着く。それを何とか倒れずに抱き留めた銀は、足で桂をつついた。

 

「ほら起きろズラ。寝坊だぞ」

「……ぐ、あ、あぁ……気絶してたのか」

「戦いが終わったらバタッと倒れやがって」

 

 それで起きた桂もフラフラになりながらも立ち上がり、鏡を拾い上げた。

 桂も桂で酷い状態だった。腹と左手には何かが刺さった後があり、そのせいで噴き出した血が全身を汚している。満開した物の途中でそれが切れてしまい、それでも戦った桂にできた名誉の負傷とも呼べるものだったが、立ち上がると案外つらい。銀の方も脇腹だったり足だったりに同じものが突き刺さっていたため、血は止まっているが今すぐにでも倒れてしまいたいほど激痛が走っている。

 須美は心配させないでよ、と言いながら桂を叩こうとして、手を引っ込めた。これ以上怪我人に鞭打つわけにはいかないと思ったからだろう。代わりにでもお疲れ様、と一言かけて彼を労った。

 

「これで、園子との約束……みんなで料理を教えるって約束が果たせるな。な、ズラ」

 

 でも、これでこの世界の平和は守られた。

 銀の片腕は無くなったが、それでも約束を果たすことはできる。銀はそれが嬉しくて、桂にも声をかけた。

 しかし。

 

「え? そんな約束……したっけか?」

 

 桂はそれを覚えていなかった。

 それに一瞬銀は思考が止まった。

 

「な、なに言ってんだよ。今日しただろ? 園子にみんなで料理を教えるって……」

 

 明らかに何かがおかしい。三人に悪寒が走る。

 

「そうだっけか……? そもそも俺ってお前らの前で料理できるって言ったっけ? 少なくとも一度も料理を披露していなかったような……」

「は、ハゲ……あなた、一体何を……? 銀の家で料理したって……」

「そもそも俺って銀の家に行ったこと無いぞ? あれ? でも銀の家族構成知ってるし鉄男くんに貸した玩具も……あれ? 何貸したんだっけ。そもそも俺っていつ銀の家族と顔を……?」

 

 一度目の崩壊は防いだ。

 だが、崩壊の足音は。終わりはゆっくりと進行してきていた。




藤丸の花はガクアジサイ。そして桂の花はタイム。未来と過去の勇者システムが混ざっていた当時の桂くんは二つの花を咲かせて戦い、そして守り抜きました。

そしてその代償は皆さんご存知の通り……

恐らく、次回からギャグは少なくなると思いますが、きっとこの話を回想しているわすゆ組がいい具合にギャグを織り交ぜてくれると信じて。

あと高難易度のジャガーマン倒せません。あんなん無理でしょ
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