ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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全開からの続き。サブタイに特に意味はないんだぜ

P.S この話の続きを予約投稿後すぐ書いたら二千文字くらいでデータ飛んだんだぜ


もしもしポリスメン

 授業はそこそこに暇を覚えながらもぐだぐだと時間は過ぎて終わった。

 友奈が試しに背伸びをしてみると、凝り固まった背中から骨の音が聞こえてくる。最近はあまり体を動かしていなかったからか、それとも単に一時間近い時間、体を動かさなかったからか。どっちが原因かは分からないが、自分の体の中から鳴った音に何となくの爽快感を覚え、横を見れば車椅子用の机から普通の机に己の席を変えた美森が同じように背筋を伸ばしていた。そして夏凜の方を見れば、夏凜は両手を前を突き出して体を伸ばし、園子は丁度隣になった銀が頭を叩いて起こしている。

 立ち上がり気を付け、礼、拝をしてから座ればすぐにSHRの時間がやってくる。その時間を特に聞くことも無いだろうとボーっと、シャーペンの尻を机の上に叩きつけながら頬杖を突く遊びをしていたら案の定特に何事もなくSHRは終わり、最後に立ち上がり気を付け、礼、拝で解散だ。立ち上がったまま伸びすぎてしまったシャー芯をシャーペンの中に格納し、筆箱や教科書を含めた私物を全部鞄の中にしまい込んでしまえば帰る準備は完了だ。

 だが、なんとなく手に取った特に思い入れの無いシャー芯が大量に入ったケースを片手に、教科書を片手で仕舞いながらケースの蓋を横にずらして戻して、と繰り返す意味のない遊びをし、教科書を鞄の中にしまい終えると、横の美森がこちらに視線を飛ばしてきた。

 

「友奈ちゃん、準備はいい?」

「あぁ、ちょっと待って。もう少しで片付けれるから」

 

 ちょっと無意味に遊び過ぎたせいで片付けが若干手間取ったとは思わない。特に何も思う事はなく筆箱にシャー芯のケースをしまって、筆箱を今度は片手に持ってから鞄の中へ。同時にこっちへ歩いてきた夏凜を迎えて歩き出そうと思ったが、今日はお客さんが約二名ほどいるのを忘れていた。

 一歩だけ前に出した足をそのままに振り返れば、そこにはちょっと急ぎ気味に園子の手を引いてやってきた銀がいた。

 

「わり、ちょっと園子を起こすのに手間取った」

「大丈夫よ。こっちも今から行こうって思った感じだから」

「そっか。ズラは?」

「もう少し経ったら来るでしょ」

 

 夏凜の言葉を聞き、ふと友奈がハゲ丸の座っている席の方へと視線を飛ばす。

 ハゲ丸はクラス内では比較的仲のいい……というか休み時間の間もよく話していた男子生徒と話していた。夏凜は比較的席が近い方だったからか、彼らの話はもう少し時間がかかると踏んだのだろう。友奈は試しに聞き耳をたててみた。

 

「なぁ、頼むよ。俺に三ノ輪辺りを紹介してくれよ~」

「嫌だっつってんだろ。自分で話しかけろ」

「んな事言われてもよぉ……七十三円あげるから」

「前聞いた時より減ってんじゃねぇか」

「ジュース買っちまった」

「マジでジュース買ってんじゃねぇよボケッ!!」

 

 どうやら男子中学生特有の特に身も蓋もなければ中身もない別段特筆すべきこともない話らしい。だが、女子中学生の会話もどうせ中身があるか無いかと言われれば圧倒的に後者の方が多いため何もいう事はない。強いて変わる部分を言うなら会話とその場のテンションの上がり下がりがどうか程度だ。

 しかし、一緒に聞き耳を立てていたらしい美森はニヤニヤしながら銀の肩を肘でついた。

 

「モテモテじゃない」

「うっせ」

 

 きっと話のタネが友奈なら、美森の膝辺りがハゲ丸の頭部にめり込んだことだろう。しかし、銀なら銀本人を揶揄うだけで終わる。銀はやれやれと首を振りながら美森に背中を向け、自分をあすなろ抱きして眠っている園子をバックすることでそのまま押し付ける。

 するとあら不思議。園子は銀から手を離してそのまま美森の正面から抱き着き、彼女のアポカリプスにその顔をうずめた。しかも寝たまま。

 

「ちょ、そのっち。まったく……」

「園ちゃんってよく寝るんだね」

「お陰で色々成長したもんだ。園子、大分着やせするタイプだから案外ボンキュッボンなんだぜ?」

「ミノさん……はずかしむにゃむにゃ……」

「寝言で会話してる……」

 

 銀の言葉は若干オッサンくさかったが、実際園子の体つきは小学生の頃と比べてかなり肉付きがよくなっている。美森という小学生の頃から大層な物を持っていた反則級は流石に比べる事ができないし、風のような姉貴分として申し訳ないような体つきをしている、とも言えないが、中学二年生の少女としては十分に立派な物を持っているし、入院生活が長かったからか健康状態も徹底され、女子中学生の理想の体つきのとも言える体になっている。

 試しに美森が園子の体を触って確かめてみると、確かに二年前の体と比べて理想的ともいえる成長の仕方をしているのが理解できた。

 

「……まぁ、ぶっちゃけると精霊が物食わなくてもいい感じに体を調整したってのが真実なんだけどな」

 

 そうやって園子を触診している中、銀がそっと勇者達にしか聞こえないように声を漏らした。

 園子は散華の一つの中に胃や腸と言ったものを食べた後に使うような器官をほとんど失った。食べられない事もなかったのだが、食べなくても大丈夫な体になった園子は物を食べる前に本を読んだり小説を書いたりするようになった。結果、彼女の体は何も食べない事によって痩せ続けるという事もなく、いい感じに成長していった結果、スタイルはよくなって槍を振るうのに問題ない健康的な体へと仕上がっていった。

 散華による胃と腸消失で断食ダイエット。正直今の彼女達にとってそこら辺の話題はただのブラックジョークなのでお茶を濁すかのように笑うしかなかった。

 ちなみに、園子が着やせするタイプだという情報を掴んだハゲ丸とその友人は。

 

「……なぁ、乃木さんってマジで着やせするのか?」

「昔プール行ったときはそこまで感じなかったけどな。けど、銀よりはスタイル良かったと思うぞ? 多分、友奈とかなり近い感じの体格だと思う。で、当時のスタイルのいい順だと、クソレ……須美、でもなく東郷、園子、銀の順だった。かと言って銀も貧相って訳じゃなくてどっちかと言ったら活発系な健康的な体つきだったな。ちなみに東郷はお気づきの通りメガロポリスだ」

「マジかよ。ちなみに他の勇者部の人は?」

「夏凜は銀みたいな感じで、友奈は可もなく不可もなし。本当にいい感じの体付きだったな。で、樹ちゃん後輩は可哀想で、風先輩はご想像の通りだ。恐らく遺伝子がいい感じに分かれたんだろうな」

「クッソ、お前がマジで羨ましいわ……」

「いい事だらけじゃないぞ?」

 

 当時と比べて直接的にセクハラをしているわけじゃないハゲ丸ではあるが、彼女たちの水着姿を脳裏に刻んでいないわけがない。特に桂時代にハゲ丸は須美、園子、銀の水着姿をバッチリと脳裏に記録していたのだ。そこから今の身長と先ほどの情報を統合すれば、脱いだらどんな感じなのかは言うまでもなく何となく理解できる。

 しかし、そんな事を教室内で口にされたら軽くセクハラされたも同義だ。にっこり笑顔を浮かべた夏凜と銀がこちらへ近づいて来てハゲ丸の手を掴み、そのまま窓まで連行すると彼を流れるような動作で窓の外へとポイ捨てした。

 

「ほらな?」

 

 ハゲ丸はムカつく表情で息を吐き、そのまま窓から落ちて行った。下からエグい音と悲鳴が聞こえてきたので軽傷では済んでいないだろう。ハゲ丸の友人は落ちて行ったハゲ丸に対して敬礼をすると、そのまま教室から出ていった。きっと彼の今晩のおかずは大層な妄想となる事だろう。

 そんな男子中学生の会話の肴にされた勇者達は、気にしていないか顔を赤くしているかの二択で、主に美森と園子が前者、後者が他三人だ。

 そんな五人は先程、下手したら殺人になるかもしれない光景を見た、もしくは起こしたのにも関わらず、勇者部室へと歩を進めた。ちなみにハゲ丸は頭から埋まったが特に目立った外傷はなく、無傷同然だった。相変わらずの耐久力である。

 

 

****

 

 

「そんなワケで入部希望の乃木さん家の園子さんなんだぜ!!」

「アンド、三ノ輪さん家の銀さんだ。チャランポラン侍の銀さんじゃないからな~」

 

 そうして放課後の時間、園子と銀は新たに勇者部に入った仲間として部室で歓迎を受けていた。既に部室内の黒板に書かれている部員の名前の中には七人目、八人目の名前が書かれており、既に受け入れ態勢は万全。拒む理由もなく迎え入れる理由しかないというのが丸わかりの状態だった。

 そこそこ広い勇者部室ではあるが、八人も詰めるとそろそろ狭さを覚えてくる。物を片付けてスペースを広げないといけないかもしれないと言う風のオカン気質な考えを他所に、ハゲ丸は部長の代わりに入部届を回収、風が先生に出すためのプリントを纏めた箱の中に一緒に入れると、流れるような手つきで全員分の紅茶とコーヒーを注ぎ配膳。そして持ってきたモンブランを配膳した。

 

「……執事?」

「否定はしないわ」

「どうぞお召し上がりを、お嬢様方」

 

 最近になっていよいよパティシエムーブというか主夫ムーブが極まってきたハゲ丸。これでハゲていなければなぁ、と全員が思うが後の祭り。全員でコーヒー、もしくは紅茶を飲みながらのケーキタイムだ。美味しいケーキを食べながら紅茶、コーヒーを飲んで授業で疲れた気分をリフレッシュ。一方でハゲ丸は後ろで何かを書き纏めると、そのままそれをメモにして立ち上がった。

 

「んじゃ、ちょっと俺は歓迎会用に色々買ってくるんで。俺の分のモンブランは……そうだな。友奈か樹ちゃん後輩、食っちまっていいぞ。で、余ったモンブランが二つあるから園子と銀が食ってくれ」

「お、マジで? んじゃ遠慮なく」

「わーい! ズラっちのモンブランがもう一個~!!」

「じゃあ樹ちゃん。残りのモンブラン半分こしよっか」

「あ、いいですね! じゃあ遠慮なく半分もらっちゃいますね」

 

 サラッと歓迎会用にと言って何かを買いに行ったハゲ丸。そして残った三つのモンブランは結局友奈、樹、園子、銀が食べる事となった。誰かが余分に食べる読みで大目に作ってきたのが功を奏した。

 今日は特に依頼もなく、全員が部室に集合している。だからこそハゲ丸は何かを買いに行ったのだが、果たして時間内に戻ってくるのだろうか。一応、何か買って来たら部費で落とそうと風がモンブランを口に運びながら決めていると、どうやら樹と園子、銀はそこそこ親交を深めたらしく、銀に樹が可愛がられている。具体的には抱きしめられて撫でられている。どうやら妹系の後輩は彼女の姉としてのセンサーにビンビン引っかかったらしい。

 対して園子は風の方へと視線を向けていた。

 

「おっ、なになに? アタシの溢れ出る女子力にでも気が付いた?」

「女子力というよりは……オカン力?」

「つまりは女子力ね! 何よ乃木! 分かってんじゃない!!」

 

 園子的には特に何も考えず風の方を見ていたのだが、風の人当たりの良さによってすぐに関係がよくなった。それぞれの呼び方については一応下の名前だったり役職名で呼ぶことで決まった。樹は二人の事を普通に名前で、風は園子を乃木と呼び、銀は普通に銀と呼ぶことにした。

 理由としては、単純に園子の場合はそっちの方がかっこいいから。東郷、乃木といい感じにカッコいい苗字の後輩が二人で来たのがちょっと彼女の中にある中二心にヒットしたらしい。園子は勿論全員あだ名、銀は普通に名前だ。

 

「で、ズラのやつ結局部活中にどこ行ったんです? 買い物って言ってましたけど……」

 

 そうして歓迎会もいいムードを保ったままそこそこの時間が経ち、ふと銀が風に質問した。

 そう言われ、風は少し悩んだが結局分からないのでさぁ? と言葉を返した。

 直後。

 

「はいお待たせ。俺特製、鍋焼きうどんだ。材料買ってきて家庭科室を調理部から借りて作った出来立てだからあつあつの内に食ってくれ。ちなみに、先生はうどんで買収したから注意される心配もなしだ」

 

 ハゲ丸が両手に鍋を持った状態で部室に乱入してきた。

 その手には香川県民にとっては無視できない匂いを漂わせる鍋があり、その中には食べられるのを今か今かと待ち望んでいるうどんとその具が煮え立っていた。

 一瞬で会話が消滅し、全員の視線がハゲ丸の持っている鍋に注がれる。かめやには置いていない鍋焼きうどん。美森がハゲ丸がやってきた瞬間に机の上に設置したコンロの上に鍋を置き、同時に美森が全員分の紙皿を用意して配る。そうしたら後はお食事タイムだ。

 大食いの風が夢中でうどんを啜り、量が心もとなくなればハゲ丸が先んじて用意しておいた具とうどんを煮て、美森がサササッと友奈の分を確保しつつ、誰かが煮えていないうどんと具を取らないようにしっかりと食べれるゾーンと食べられないゾーンを分ける。二人の息の合ったうどん調理と食べ盛りの女の子たちの食欲は正しくベストマッチだった。

 

「いやー、ハゲ丸あんた。ササっと出てって何しに行ったのかと思ったらまさかうどんを作ってくるなんて。こりゃ来年の勇者部食事&デザート担当はあんたに決まりね」

「あら風先輩。私はぼた餅係から降格ですか?」

「東郷はぼた餅係兼和食係。ハゲ丸は食事係とデザート係よ」

 

 予期せぬうどんの襲来に完全に上機嫌な風。友奈も樹も笑顔でうどんを食し、夏凜もトッピングににぼしとサプリが存在していた事に満足して自分の皿の中ににぼしとサプリを入れながらうどんを楽しんでいる。

 対して園子と銀は、まさか部活動中にこんな本格的なうどんが食べられると思っていなかったのか少し困惑していたが、一口食べれば食欲に負けてそのままうどんの虜だ。こうやってうどんを所かまわず食べるから周りからはうどん部、なんて言われるのだが、恐らく今の彼女たちはそう言われてもうどん部でいいや、なんて思うに違いない。

 

「うん、今日もいい感じに作れた」

「よくこんな短時間で作れたわね」

「今の時代、コンビニには何でも置いてあるんだよ」

 

 ハゲ丸と美森のうどん料理の腕は大体イーブンだ。だが、うどんにも様々な種類が存在し、その幾つかは相手の方が上手いと理解しているので特に戦争は起きない。特に美森が友奈のためだけに作ったうどん、なんて用意しようものならきっとハゲ丸のうどんはどれも完敗するだろう。

 そこら辺の料理の腕は互いに競って高め合う感じなので一応は称賛する。二人とて喧嘩が好きという訳ではないのだ。

 

「ズラっち、部活動って美味しいんだね~」

「いや、そういう訳じゃないんだけど……まぁ、俺がいる間は美味しいって属性も加えてやるから。これから楽しみにしておけよ?」

「うん! これから毎日が本当に楽しみだよ~!」

 

 無邪気な笑顔を向ける園子を見るとハゲ丸自身も自然と笑顔になり、そのままわしゃわしゃと園子の髪を乱暴に撫でた。特に園子も嫌がらないし、園子の髪はサラサラで触り心地がよかったのでそのまま暫く撫でていた。

 

「もしもしポリスメン? ちょっとハゲが乃木さん家のお嬢さんをですね」

「おいクソレズ。それはシャレにならねぇから止めろ」

 

 そして誰かが通報しかけるのもお約束である。




ハゲが美少女の頭を撫でる事案。これはもしもしポリスメン案件ですねぇ……

最近車校とバイトと学校で体がボドボドですが私は元気です。ただFGO六十連爆死により傷が思ったよりも深いようで、サポ欄でシトナイとパライソちゃん見るたびに呪詛と舌打ちが止まりません。精神的な苦痛が一番つらいです。多分イベントで回収した石と呼札合わせたら七十連はしたと思いますが、連敗記録更新中。これはまた三か月以上星4以上の鯖出ないルート(一か月ぶり三回目)ですね分かります。執筆が癒しなんじゃあ……

まぁそんな事はさておいて。これで園子様と銀ちゃんの転校話は終了。次回は……国防仮面かなぁ? 結局、特典ゲームができていないのでアニメで見た通りにやるしか道が残されていない。


P.S マ〇ドのカケテミーヨとチーズバーガー×2を食うというデブ一直線の飯が止められない。チーズうめぇ。昼はきつねうどん、夜はマックっていう生活が疲れた体にとても心地よい。あとエクバ2でトライバーニング使ってクソゲー押し付けるの楽しい。金が飛ぶけど

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