ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

58 / 184
今回は山も谷もない平凡回ですぞ。
確かわすゆ終わってからこの二人のソロ回って無かったと思うので適当に作ってみた。


赤信号コンビとハゲ

 友奈には幼い頃からやっていることがある。

 知られるとよく意外と言われるのだが、彼女は武術の類を親から習っている。健康のためだとか自衛のためだとか、色々と理由はあるのだが、それによって培われた彼女の中の優しい心が、勇者という物を憧れるようになった切欠でもあるし、勇者として選ばれた理由だろう。

 勇者の任を解かれた彼女だが、それでも時々体に染みついた動きを忘れないように時折体を動かすときがある。素人目では凄いと思う動きだが、本格的にやってきた人間からしてみれば時折やるだけにしては十分に凄いという領域の話。園子や銀のようにそれをしなければならなかった人間、それに熱を入れた人間と比べればどうしても劣ってしまう。

 劣ってしまうのだが。

 

「ハゲ丸くん、もう一回!」

「ちょ、ちょっと待って……今の割といいの入ったからちょっとだけ休ませて……」

 

 園子、銀と同じように訓練して防御特化の技まで覚えたハゲ丸は、ジャージ姿の友奈と組み手をして思いっきり打ちのめされていた。

 というのも仕方のない事であり、ハゲ丸は小学六年生の秋、記憶を失ってから体を鍛えるなんて事はしてこなかった。それこそ今ある体力を維持する程度で、誰かと組手など一切しなかった。記憶が戻ったといえどそれらを忘れてしまった体は中々思い通りに動く事無く、友奈が武術を嗜んでいると聞いたハゲ丸が組み手を頼んだのだが、結果は惨敗。友奈の勇パンを思いっきり顎にくらってちょっと意識が飛んでいた。

 対して友奈の方はテンションが上がりまくり、休日の朝だというのに体が快調そのもの。ハゲ丸のように自由に動かないどころか自由に動かせるため先ほどからハゲ丸をいい感じのサンドバッグにして楽しげである。

 だが、ハゲ丸とてそれで黙っていられない。流石にこのまま一方的に殴られて蹴られては男として恥ずかしいし、何よりも先輩勇者として情けない。

 

「っしゃ! 行くぞ友奈!!」

「うん!!」

 

 そしてもう一度ハゲ丸が立ち上がり、友奈と対面して構える。

 そのまま友奈が両手を前へ出し、右手を斜め下へ振り抜いた直後、その手を今度はハゲ丸へ向けて構えなおし、左手の拳を握る。そのまま一連の流れを頭の中で組み立てた後、そのまま第一歩を踏み出しハゲ丸が防御の姿勢を取る。だがそれに構わず友奈が駆け、そのまま拳のレンジにハゲ丸を入れる。

 

「せい、はっ! 勇者パンチ!」

「よっ、このっ! 一撃が重っ……」

「そこっ! 勇者背負い投げ!!」

「ぐえぇ!!? けどまだだ! まだ終わら――」

「トドメッ! ジェットマグナム!!」

「ぐへぇ!!?」

 

 素早く重い連撃。それを両手で凌ぎながら友奈の勢いに負けて後退していくハゲ丸。そんな彼が怯み、大きく一歩後ろへ退いた瞬間、友奈がハゲ丸よりも小さな身長を活かして滑り込むようにハゲ丸の体の内側へと潜り込み、そのまま足をスライディングで蹴り、彼の体を宙に浮かしてから背負い投げ。

 だが、ハゲ丸とてその程度では終わらない。すぐに立ち上がるが、それすら呼んでいた友奈のジェットマグナムが思いっきりハゲ丸の腹に突き刺さり、ハゲ丸の体が吹っ飛ばされた。

 

「ま、まさかジェットマグナムを使えるとは……しかもジェットマグナムS……」

 

 流石に組み手に付き合ってもらっている手前、ここで美少女の拳ありがとうございますとかふざける事はしないが、しかし友奈の拳は予想以上に重く鋭い。流石爆弾が迫ってくる中一歩踏み込んだクウガ系女子とでも言うべきか。

 武術の腕も申し分なし。もしかしたら鍛えていた当時の自分にだって拳を叩き込む事ができるのではとすら思えてしまう。それぐらいに友奈の拳は強かった。流石勇者の中でもトップクラスの夏凜と並び立つ程の切り込み隊長だ。才能やら何やらの時点できっとハゲ丸とは違うのだろう。

 

「いやー、最近はあんまり組手とかやってなかったけど、やってみると楽しいね!」

「楽しいなら何よりで……ってか組手やってなかったのか? 夏凜とやってると思ったんだけど」

「夏凜ちゃん、わたしとやると手加減しちゃうみたいで。木刀で叩くのはちょっと気が引けるみたい」

 

 それを聞き、納得したように首を縦に振るハゲ丸。

 ハゲ丸だって友奈に対して木造の槍で組手しろと言われたら流石に嫌だ。もし白熱して叩いてしまったら友奈の肌に傷を作ってしまう事となる。流石にそれはやる方の心が折れるし、特に友奈に懐いている夏凜だったらそれだけで自己嫌悪のループを作りかねない。

 友奈とにぼしに対しては即落ちレベルでちょろい夏凜だが、一応彼女も年頃の女の子。結構中身はナイーブな所もあるのだ。特に最近はハゲ丸の作ってきた物を食べ過ぎて、その上ちょっと鍛錬をサボってしまったらしく、必死な形相で双剣を握り型を一通りこなしていたという樹からの報告は記憶に新しい。そう言う樹も最近夏凜のルームランナーを借りたり、風の気晴らしランニングに付き合ったりで必死に体重を落としているのだが。

 

「そういえば友奈ってあんまり体重気にしたりとかしないよな」

 

 そんな事を考えていたからかふと友奈に質問を飛ばした。

 園子は太りにくいからと気にせず、銀もそこそこ運動はしているからと特に気にしないが、友奈が気にしていない理由は聞いたことがなかった。だからふとした好奇心で聞いてみたのだが、聞いてからデリカシーが無いと怒られるかもしれないと思ったが、友奈は本当にそこら辺の会話をあまり気にしないようで、特に表情を変えずに言葉を返した。

 

「わたし、あんまり太らないし、よく動いてよく寝てるから!」

「元気っ子の模範例みたいだな……そういや日付変更まで起きれない程だったっけか」

「ついでに起きられないんだけどね~」

「そりゃ直した方がいいな。よし、じゃあ次頼むわ」

「うん! いっくよ~!!」

 

 その後、ハゲ丸がいいようにぶん殴られて蹴られ続けたのは言うまでもない。

 

 

****

 

 

「馬鹿ねぇ。友奈はセンスの塊よ? 言うならば天才なんだから鈍ったアンタでどうにかなるわけないでしょ」

「じゃあ夏凜はどうなんだよ」

「楽勝……と言いたいけど、結構五分。剣を使っても五分を超えないだろうし、勇者状態なら多分押されるわ」

「珍しい。夏凜が強がらないなんて」

「あによ、あたしが素直じゃないみたいな言い方して」

「事実だろうに」

 

 友奈と手合わせをした翌日の事。

 ソフトボール部の助っ人として勇者部七人の内、一番運動神経がいいであろう夏凜が呼び出され、ついでにハゲ丸も練習試合の審判が不足していたためその審判として呼び出された日の夕方、夏凜は讃州中学のチームをその運動神経と長物を持たせたらピカ一のセンスによってチームの勝利に貢献し、ハゲ丸も何も言わずフェアな状態で審判を行った。

 その日の帰り、ふとハゲ丸が夏凜に今日の夕食はどうするのかを聞いたところ、適当にコンビニ弁当で済ませるという言葉が返ってきた。そして昨日の夕食を聞き、そこもコンビニ弁当と返してきたため、ハゲ丸は急遽夏凜の部屋に突撃して夕飯を作る事を決めた。

 そのまま押しに弱い夏凜の言葉を完全に無視してパパパッと夕食の買い物を済ませたハゲ丸は夏凜宅のキッチンを使ってうどんと、健康にいいサラダ、即席で作ったフルーツポンチを用意し、夏凜と共に食べた。今はその片付けの最中だ。

 

「事実じゃないわよ」

「うっせぇツンデレ」

「違うっての」

「いでっ」

 

 食器を二人で並んで洗っているのだが、ちょっと顔を赤くした夏凜がハゲ丸の足を蹴った。図星も図星でそれ以上の否定を思い浮かべる事ができなかった夏凜のささやかな抵抗はハゲ丸に痛いの一言を言わせることに成功した。

 会話の初めは、この間友奈と組手をした事だったが、彼女にボコられたハゲ丸の自虐的な言葉を夏凜は一蹴した所からだ。そこから夏凜が素直か素直じゃないかという議題になって、結果図星ゆえの蹴りがハゲ丸の足に飛んできた。だがハゲ丸は痛いの一言でそれを済まし、手慣れた様子で使った皿を泡だらけにして夏凜に手渡す。夏凜が丁寧に水でそれを洗い流せばすぐに次の皿が用意されている。

 

「あんた、ハウスキーパーでもやったらいいんじゃないの?」

「もうやってる」

「もうって……あぁそっか。風と樹の」

「今日は依頼があったから行ってないだけで、毎週入り浸ってるよ」

 

 そして勿論、犬吠埼家での家事手伝いというかハウスキーパー業はまだ続いており、今日も依頼が急遽入ったから行っていないが、もし無かったらいつも通りという言葉が似合う足取りで犬吠埼家に向かっていた。その言葉を聞いて夏凜は若干呆れたような溜め息を漏らしたが、それはハゲ丸が未だにそれを続けていることに対してか、姉の家事を負担できない樹に対しての溜め息か。

 少なくとも樹は最近になって料理が紫にならないようになり、味も普通にはなったのだが、まだまだ風や師匠であるハゲ丸以外に出すには若干憚られる腕。一応味はマトモなので食べられない事もないが外見が悪いという致命的欠陥がまだ治っていない。

 

「ってか、年頃の女子の部屋に入り浸ってハウスキーパーって。漫画や小説なら一つか二つは色恋沙汰が起こるイベントなのに、あんたそういう事にはてんで無縁よね」

 

 ハゲ丸の言葉を聞いた夏凜の返答は、昔の夏凜からは想像ができないような言葉だった。

 勇者部に入ってからいい意味で変わってきた夏凜は、昔は時間の無駄と言って切り捨てていた漫画や小説をよく読むようになった。友奈と会話を合わせたいという下心が無い事は否めないが、しかし漫画や小説の中の技をちょっとやってみたり、少女漫画の一コマにドキドキしたりと、結構思春期の少女らしき事を最近はよくしている。

 そうやって変わった彼女だからこそ、こういう事をハゲ丸に言う事ができた。明らかにハゲ丸は周りを見れば誰か一人とそういう関係になりかけてもおかしくないような立場なのに、それがないというのに若干苦笑しながら。

 

「どっちにせよ、全員俺じゃ釣り合わねぇよ。もっといい男引っかけてこい」

「子供の相手ができて性格もそこそこ、家事万能なアンタより上な男って今の同年代じゃそうそう見ないわよ」

「じゃあ俺に釣られてみる?」

「万回死んでから出直せ」

「前前前世じゃ効かねぇレベルの輪廻転生を求めんじゃねぇよ」

 

 サラッと以前の友奈よりも辛口な事を言った夏凜ではあるが、ハゲ丸もこういう事を言われるのは既に織り込み済みなので適当に言葉を返してから最後の皿の汚れを泡だらけにして浮かせてから夏凜に手渡し、夏凜がそれを洗い、後は二人で皿を拭いて食器棚に戻して後片付けは完了。

 

「ふぅ、終わりっと」

「んじゃ、皿洗い終わったし、友奈から借りたドラゴンボールでも読みましょうかね」

「夏凜もドラゴンボール読み始めたのか。ちなみに誰派?」

「タピオン」

「映画じゃねぇか」

 

 悪い? とハゲ丸の言葉に返事をしながら背筋を伸ばしつつ移動し、本棚からドラゴンボールの漫画を手にとってからソファに座る夏凜と、案外ガッツリハマってんじゃねぇかと夏凜の言葉に返事を返してから夏凜が座ったソファの隣に、ちょっと距離を置いてから座るハゲ丸。

 

「にしても、久々に部屋で凝ったご飯食べたわ」

「そんなに久々なのか?」

「基本コンビニだもの。一人暮らしなんてそんなもん」

 

 と、言いながら夏凜がそっと目を部屋の端に向けた。そこにはコンビニ弁当やら家庭ゴミやらが大量に入って一纏めにされたゴミ袋が置いてあった。どうやら明日がゴミの日らしく、明日忘れずに出すために今日まではここに置いておかなければならないらしい。

 

「そんなんだと栄養偏るぞ」

「サプリとにぼしがあるから平気よ」

「そんなんだから身長以外が樹ちゃん後輩並みなぐへっ」

 

 失礼な事をサラッと言ったハゲ丸の顔面が思いっきり殴られた。サラッと二人の脳内では樹の体付きは結構酷いというか、単純に成長できていない子供っぽい体だと共通の認識をされているのだが、当の樹が気が付いていないので大丈夫だろう。声に出さなきゃ吊るされない。実際、樹は勇者部の中で一番スタイルがいいであろう風、園子とは天と地ほどの差があるわけで。

 笑顔でハゲ丸の顔面をぶん殴った夏凜ではあったが、その内心は果たして。少なくとも穏やかではないのは分かっているのでこれ以上彼女の体……特に胸については口に出すのを控える事にした。

 

「いいのよ。あたしの体は剣を振るのに最適化してるんだから」

「じゃあ別に貧乳でもだいじょぺ」

「殴るわよ?」

「じ、人中殴ってから言うもんじゃ無くね……!?」

 

 だが結局的になるのがハゲ丸。今度は人中に思いっきり夏凜の拳がめり込んだが、血が流れなければ跡にもならない時点でハゲ丸の耐久力は軽く人間を辞めているのが見て取れる。というか夏凜の部屋や部室の窓から投げ捨てられて無傷で生還した時点で相当耐久力がおかしい事になっている。

 痛がってはいるが無傷なハゲ丸を見て、コンクリートミキサーに突っ込んでも生きているんじゃ……と若干思ってしまう夏凜だったが、流石にそこまで人外ではないだろうと勝手に悩んで勝手に納得した。

 

「そもそも、女の子に胸の話とかしたら殴られるに決まってるじゃない」

「おんなの、こ……?」

「どうやら女の子の扱い方をこの木刀でインストールしてあげる必要があるようね……?」

「お客様お客様お客様!! 困ります!! あーっ!! お客様!! 困ります!! あーっ!! 困ります!! あーっ!! 困ります! お客様!! 困ります!! あーっ!! あーっおお客様!!」

「うるさい死に晒せぇ!!」

「ぎゃーす!!」

 

 冗談を口にしたら木刀を持った夏凜に追い掛け回されたのだが、結局ハゲ丸が夏凜の部屋から出てきたのはこれから一時間後であり、彼の頭には大量のタンコブが積み重なっていた事から何が起きていたかは、見る人が見ればすぐに分かるだろう。




この話の中でちょっとおかしい所が幾つかあるよ!! みんな分かったかな!!?

あ、グリッドマン最新話、OPに出てきたリアルのアカネちゃんっぽい子がまさかアノシラス二世だとは……これはSSSS.GRIDMANは電光超人グリッドマンに出たグリッドマンでほぼ確定になるんだとしても、じゃあ裕太は一体……となっちゃって次回が気になります。自分としては、SSSS.GRIDMANの世界はアカネちゃんが作った電脳空間で、そこにアレクシスが来たからグリッドマンが戦ったけど敗北して記憶を失った……とかそんな感じで妄想していたりしなかったり。

まぁそれはさておいて……亜耶ちゃんの声を担当している声優さんが休業してしまったみたいですね……どうかゆっくりと休んでいただいて一日でも早く体調が万全になる事を、ゆゆゆの一ファンとして微力ながら願っています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。