ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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ハゲ丸くんがハゲてる理由って何か深い物があるんじゃないかって?

ねぇよんなもん(ガチ)


無意味に光るハゲ

 バーテックスの襲来。それに否が応でも勇者たちは樹海へと召集される。それがお役目だから。

 気が付けば樹海へとその身を投じられていた勇者達とハゲ丸は携帯でバーテックスの来る方角を確認する。そこには、三体のバーテックスが並んでこちらへ、樹海の方へと進んできていた。

 三体の、蠍座、射手座、蟹座のバーテックス。それを見た瞬間、ハゲ丸の脳裏に何か電流のようなものが走った気がした。どこかで見覚えのあるような、ないような。そんな気を覚えながらもハゲ丸はそっと自分の頭を触る。ヅラなし。自分のヅラは異物か何かなのかと思いながらも、そっと精霊、ヤタノカガミを呼び出す。

 それは頭を光らせるだけ、ではあるが。しかし、そっと自分の頭を触ってみると、見えない何かがあるのが分かる。硬い無機物のような、なにか。それがきっと、精霊ヤタノカガミなのだろう。どうして無機物なんだ……と思わないでもないが、しかしビーム系統の技ならこれで跳ね返すことができる、と思う。

 いや、きっとビームだけではなく、他の物も跳ね返せるのでは? と思わないでもないが、そんな試みを咄嗟にやろうとは思わない。

 

「じゃあ、東郷さん。行ってくるね」

「待って、私も……っ……」

 

 行こうとする友奈を引き留めようとした美森だが。しかし、昨日の命を賭けた戦いというのがどうしても恐怖を植え付けてくるのだろう。美森は何も言えない。

 はぁ、らしくないと思いながらも。彼女の肩にそっと手を置いてハゲ丸は友奈に告げる。

 

「俺らの分まで頑張ってくれ、結城さん。俺たちはこっから応援してるから」

「ハゲ丸くん……頭を光らせながら言ってもシュールなだけだよ?」

「無邪気に無慈悲な言葉を刺してくるのやめてくれませんかねぇ……!!」

 

 折角かっこいい事を言ったのに友奈のせいで色々と台無しである。友奈は笑いながら犬吠埼姉妹の隣に並び、そして勇者へと変身する。花びらに包まれた三人は、バーテックスの射程圏内に入る前に自ら飛び立ち、射程圏内に入っていく。

 しかし、三対三の戦い。しかもバーテックスは封印の儀を挟み、御霊を破壊しない限り延々と再生を繰り返し倒しきることは不可能。それ故に、風はまず前衛として出てきているのであろう蠍座と蟹座の封印を行おうとする。射手座を置いておいて。

 それを見た瞬間だった。ハゲ丸がそれはマズい、その二体からやるのは悪手だと。咄嗟に思ったのは。

 急ぎハゲ丸は電話を風に向かってかける。

 

『どうしたのよ、これからって時に』

「まず後ろのやつを! あいつ、絶対に後ろから何かしてくるタイプの敵です!」

『後ろから何か……ってぇ!?』

『あっぶ!?』

 

 ハゲ丸が告げた直後だった。射手座のバーテックスは風と樹へ向かって針のようなものを飛ばしてきた。

 ハゲ丸の忠告がなくても避けられたかもしれないが、しかし二人は忠告のおかげでかなり余裕をもって避けることができた。しかし、その直後に射手座のバーテックス、サジタリウスは雨霰と言っても過言ではないほどの無数の針を二人へ向けて飛ばしてきた。

 それを風は電話を切ってから樹を引き寄せ大剣を盾に防ぐ。しかし、それだけではなく、サジタリウスは針を蟹座へ飛ばず。それを蟹座は反射して友奈の方へ。

 友奈はそれを空中で全て防ぐという荒業を行った。が、直後に友奈は後ろから迫ってきていた蠍座の針をモロにくらい、空中に打ち上げられた後に弾き飛ばされ、更にもう一度下から打ち上げられる。

 しかし、友奈の体には傷はない。よく見れば精霊である牛鬼がバリアでそれを守っていた。が、その時の衝撃は途方もない物であり、友奈は力なく美森とハゲ丸の近くに落ち、そのまま力なく横たわる。

 

「友奈ちゃん!!」

「くそっ……!」

 

 ハゲ丸は自分の端末を見る。しかし、そこには勇者として変身するためのアイコンはない。いや、あるにはあるのだが、八卦のマークがあるのみであり、勇者達と同じような花はそこには写っていない。タッチしても、反応することもない。

 もしも自分に勇者としての力があれば、と思ってしまう。

 

「おい東郷!」

「な、なによハゲ……」

 

 だが、美森は違う。

 美森には戦うための力がある。素質がある。

 それを開花させていないのは、単純に恐怖故だ。

 だから、発破をかける。

 

「お前、このまま結城さんが嬲られるのを見てるだけでいいのか!?」

「そ、それは……」

「あいつらに結城さんの体が貫かれてもいいのか!?」

「友奈ちゃんの、体が……?」

「そうだ! それでいいのか!?」

「友奈ちゃんの、体が……初めてが、バーテックスに……?」

「……ん?」

 

 あれ? なんかおかしくね?

 そう思ったのも束の間。なんか美森の纏う雰囲気が黒い物へと変わっていく。

 あ、これ言葉選択間違ったかもしれんね、とハゲ丸は感じ取り。これからボコられるであろうバーテックス達に対して合掌した。

 

「そうよ……このまま友奈ちゃんの初めてが貫かれるなんて! 友奈ちゃんの処〇膜がバーテックスに奪われるのを見てなんかいられないわ!!」

「うおい!!? なんか違うぞそれ! なに頭で変な解釈してんだこの国防芸人!!」

 

 なんか美森の頭の中ではハゲ丸の言葉がとんでもない跳躍をしてしまったらしい。というか、放送禁止用語がサラッと混ざる辺り、本当に美森が何を考えているのか皆目見当がつかない。いや、ついてはいるのだが、そういう事にしておかないと色々ときつい物がある。

 これは結城さんには言えないな、とハゲ丸はこの言葉を一生胸にしまっておくと決め、一応発破をかけたのだから最後まで見ておこうと東郷の方を見る。

 

「友奈ちゃんの初めては、私の物よ!! 変身ッ!!」

「ってそんな不純な動機で変身できちまうのかよお前!!?」

 

 そして、美森は何やらとんでもない事を口走りながら変身した。変身できてしまった。同時に迫ってきていたスコーピオンバーテックスの針は精霊バリアで弾かれ、直後に花びらに包まれていた美森が何やら服の装飾のような物を地面に伸ばし、それで立ちながら現れた。

 おぉ、立ってる、と思ったのも束の間。直後に美森が取り出した銃はスコーピオンの尾を砕き、そのまま本体の表面を銃弾で削っていった。

 

「と、東郷、さん?」

「友奈ちゃん! まだ膜は無事!?」

「ま、膜……? とりあえず無事だけど……」

 

 あーもう滅茶苦茶だよ、とハゲ丸は頭を抱えた。

 そしてこの後は勇者として覚醒した美森の参戦に勢いが付いた勇者達によってバーテックスはそのまま壊滅していった。ちなみに戦っている間に風と美森は仲直りをしましたとさ。

 勇者を何人も葬ってきた、スコーピオンバーテックスは、誰も死亡することなく御霊を破壊されたのだった。

 

 

****

 

 

「んで、まぁバーテックスも倒して、一応部活再開って感じだったのに……」

 

 勇者としてのお役目を果たした直後。勇者部たちは部室へ戻ってきていた。

 今回はかなり疲れた方だったが、それでも三体ものバーテックスを倒し、残りは八体。もう三分の一を倒したという事実に浮かれた勇者部たちは、どうせならこのまま部活をしてしまおうとなった、のだが。

 風は部室のど真ん中でいつの間にか行われているそれを目にして天井を仰ぎ、外を見て、俯き、ため息を吐いて。額に血管を浮かべながら叫んだ。

 

「なんで東郷とハゲ丸は部室のど真ん中で鍋囲んでんのよ!!」

「先輩、鍋じゃなくて鍋焼きうどんです」

 

 美森とハゲ丸は、いつのまにか持ってきていたコンロと鍋を使い、部室のど真ん中で鍋で煮込まれているうどんを啜っていた。なんともまぁフリーダムなこと。部室内にはうどんのいい匂いが充満している。これには流石の風も腹が鳴ってしまいそうだった。

 

「しかも味噌煮込みです」

 

 しかも味噌煮込みうどんだった。かめや等では絶対に置いていないそれを見て、しかも充満する味噌の匂いと二人の美味しそうな顔に風は一瞬理性が揺らいだが、しかしそれでも部長としての意地で踏ん張る。

 

「美味そうだけどなんで部室のど真ん中!!? というかどうして鍋とコンロと材料があるのよ!!?」

 

 もっともな叫びだった。

 それに対する二人の回答は。

 

「このハゲが昨日の帰り、味噌煮込みうどんが食いたいと言い出しまして」

「東郷もそれに乗ったんで、材料と必要なものを持ち合って、今日の昼にでも食おうかと思ったんですけど」

「先生に注意されて中止したので」

「じゃあここでやってしまおうと」

「友奈! この馬鹿コンビをつまみ出せ!!」

「わー、美味しそう! わたしも食べていい?」

『もちろん』

「樹ィ!!」

「わたしもいいですか?」

『どうぞどうぞ。材料はまだまだあるから』

「なんてこった! マトモなのはアタシだけか!!?」

 

 その通りです。

 こうして勇者部五人のうち四人が味噌煮込みうどんを囲み、美味しそうに食べる。それを見て腹が減らないわけがない。しかも、風に至っては他の勇者同様、かなり体を動かしたのだ。その直後にこんな美味しそうなものを見せられて、食欲が沸かないわけがなかった。

 しかも、料理が得意な美森と、人並みには料理ができるハゲ丸がこのうどんを作り上げたのだ。しかも、うどん故にこだわり抜いて、だ。それが美味しくないわけがない。現に、友奈と樹はかなり美味しそうな顔でそれを食べている。それが嬉しいのか、美森もハゲ丸も次々とうどんを彼女らの皿に盛っては新しく麺と具を追加してを繰り返していく。

 風の喉を生唾が通っていく。

 食べたい。食らいつきたい。腹いっぱいになるまで食べてしまいたい。

 味噌ベースの汁がうどんにたっぷりと絡み、しみ込み、しかもそこに崩れた卵黄までが乗り。しかも具はそれぞれしっかりと味がしみ込んでおり、それでいて新鮮。素材の味を活かしつつ、味噌の風味を足し、味をしっかりとしみ込ませる。

 豆腐も、ネギも、白菜も、更にはかまぼこまで。どれもこれもが味噌色になっており、食欲をそそる。香川県民としての血が、このうどんを欲している。

 だから、ここはビシッと。最上級生としてビシッと注意をしなければならない。

 

「くっ……! ここは部長として」

「お姉ちゃん、あーん」

「あーん……うまっ!? なにこれ美味しい!!?」

「ほら犬先輩、ここにまだまだありますよ」

「わっほい!!」

 

 しかし、うどん好きの血には勝てなかったようだ。

 この後滅茶苦茶うどん食った。その後滅茶苦茶(先生に)説教された。




この作品でシリアスが長時間続くわけないだろいい加減にしろ!! その犠牲としてみもりんの初変身が犠牲となりました。致し方なし

あ、この作品でもわっしーはあっち方面でやべーやつですよ。いや、元からゆーゆの部屋に侵入するやべーやつですけど(誤解)

そしてなんやかんやで息ぴったりな芸人コンビ。なんでだろうなあ(迫真)

で、次回から三話ですけど……三話までって一か月ちょっと間が空いてるんですよね。にぼっしーをとっとと出すか、何か幕間を挟むか

ちなみに、自分は愛知付近出身です。でもうどんは普通に好物です。明日のお昼はうどんにしよう。

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