ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回は前回の続きで東郷さんが助けられてからの話です。ここだけで一話使うようだから進みが遅くなるんだよ……


説☆教

 もう二度と感じる事のないと思っていた温もりと柔らかさに包まれて美森は意識を取り戻した。

 自分の行った行為の代償にとその命を散らさんとした巫女達を助けるためにたった一人壁外へ向かい奉火祭を執り行い、無事に天の神の怒りを鎮める生贄となった筈だった。例え全てを手放そうと、みんなが忘れてくれれば何も変わらないと思い込んで犠牲となったのに。身を包む暖かさは灼熱の獄炎ではなく、柔らかく暖かい物。

 

「……ここ、は?」

 

 声に出しながら目を開いた。

 もう開くことのない瞼を開いた先にあったのは見慣れてしまった病院特有の天井で、個室に眠らされているという事だけはすぐに理解できた。だがどこの病院のどこの部屋までかは分からない。だが、少なくとも自分が死にぞこなったという事だけは確実だという事は理解できた。

 多少リクライニングの効いたベッドの上で少しだけ身じろぎをして正面が視界に入るようにすると、見覚えのある髪が見えた。

 

「あ、東郷さん、起きたんだ!!」

「おっ、案外早かったわね」

 

 その髪を認識して一秒未満で即友奈の物だと断定し、声を出そうと思った時に友奈の声が被さり、その言葉に反応した風の声で恐らくここには勇者部の過半数が居るという事を確信した。

 体の節々が錆びたかのように動かない体を少しだけ動かしてマトモな視界を確保すると、勇者部の過半数ではなく全員が自分の寝ているベッドの付近にいる事が分かった。園子も銀も心配という色をそのまま浮かべたかのような表情をしているし、ハゲ丸はどこか複雑な表情をしている。

 

「ここは……私、どうして……?」

「あのブラックホールの中から友奈さんが助けたんです」

「で、でもそんな事したら炎が……」

 

 口にした疑問には答えが返ってきた。だが、その答えに対して起こる現象は、外の炎が勢いを増してしまう。この四国を包む壁にも影響が出てしまうという事。それを防ぐために生贄となったのにこうなってしまったら元も子もない。炎を収めるために当初と同じように巫女達が犠牲となってしまう。故に美森の額に嫌な汗が浮かんだが、そんな美森の心配を取り除くために夏凜が口を開いた。

 

「事情は全部聞いたわ。その上で言うけど、全部大丈夫よ」

 

 全部大丈夫。その言葉の真意が一瞬分からなかった。そして一瞬の後、都合のいい展開が頭の中を過った。それを肯定せんと風が口を開く。

 

「あんたの生命力がバカみたいに高かったのか、それとも要求された生命力が少なかったのかは分からないけど、火は何とかなったのよ。だからもう誰も生贄に行く必要はなくなったわけ」

「まぁ、その辺は素直に褒めてやる」

 

 風の苦笑しながらの言葉とハゲ丸の少し素直じゃない感じの声に美森が思わず破顔する。

 助かった。全部が上手くいった。都合よくいった。そう思えば自然と笑顔と、同時にソレに対する涙が浮かんでくるものだ。

 だが、全てが笑顔で終わるわけがない。ここには彼女の行為に対して言いたい事を腹の中に溜めている人間が数人いる。その一人である園子がそっと彼女の頭を撫でていたが、もうそろそろいいかな? と先代勇者組を除いた全員に目配せをして意見を伝えると、友奈以外。つまり犬吠埼姉妹がそっと頷いた。

 友奈は少しだけ待って、と両手を合わせると、美森へ向かって口を開いた。

 

「ごめんね、東郷さん。忘れないって約束したのに数日間も忘れちゃって」

「友奈ちゃん……ううん。思い出して助けてくれただけで嬉しいの」

「まぁ、そこら辺に対しては園ちゃんと銀ちゃん、ハゲ丸くんが言いたい事あるみたいだけどね……」

 

 そこらへん。つまり何も言わずに失踪した事。

 え? と美森が友奈に聞き返した直後、これが通算何度目の悩んでも相談せずにどっかぶっ飛んでいった始末なのかを思い出し肝を冷やしたその瞬間。

 

「わっしー。『お話』、しよっか?」

 

 頭を撫でていた園子の手が思いっきり美森にアイアンクローをぶちかました。

 

「いだだだだだ!!? ちょ、そのっち!!?」

「わっしーさぁ……これ、何度目かなぁ? 前回で二度目で今回三度目だよね~? 前回、わたしとズラっちで言ったこと何にも聞いてなかったのかな~?」

「今回ばかりはアタシも結構言いたい事あるぞ? 前回みたいになぁなぁで済ませるために動くと思うなよ?」

 

 アイアンクローの間から見える園子と銀の二人は笑顔だ。笑顔だが、額に怒りの四つ角が浮かんでいる。

 つまり怒っている。自分の起こしたこの惨状に対して。

 当初は生きて帰るつもりがなかったから何も言わずに忘れてもらおうと思い立って行動したが、もし生還できたとしたら何を言われるかなんて少し考えれば分かった事だ。というか、言ったら絶対に止められるから言わなかったのであって。

 今回ばかりは無理だと諦めた結果がこの行動なのだが、そうやって命張って勝手に死にかけて救出されて結果的にこんな風に大団円で終わったのなら後は説教を待つだけの身にジョブチェンジだ。

 だが、予想外な事にハゲ丸はその中に混ざらない。

 

「……今回、俺は何も言わねぇよ」

 

 美森の疑問の視線に対してハゲ丸が口にした言葉は少しばかり信じられない言葉だった。

 今まであれだけ自分の事を説教してきたのだから美森自身、今回ばかりは全部の非が自分にあるとここまでで理解してしまったがために説教が待っていると思っていたのだが、その覚悟が無駄になった事で思わず肩透かしをくらった気分になった。

 

「……お前が身代わりになった巫女の中にさ、俺の後輩が居たんだわ。最初は説教してやる気満々だったんだけど、形はどうであれ後輩を助けてもらったんだ。俺はその後輩がやる事が生贄紛いの儀式だって事知らなかったし、それの身代わりをお前にやってもらった。だから礼こそ言えど、偉そうな顔して説教なんてとてもできないんだ」

 

 彼が口にした巫女の後輩とは、亜耶の事だ。

 彼女は大きなお役目に就くため、これからは会話する事すら難しい。いや、できないとまで言われていたが、それは誰かに受け継がれた。それが美森であり、彼女は知らない内にハゲ丸すら生贄になるという事すら分からなかった亜耶を救っていたのだ。

 美森が壁内に戻りこの世界に彼女の痕跡が戻ってから、それが大赦から事情を聴いた際に明らかになった。故に、ハゲ丸の中には亜耶を助けてもらった感謝と美森の行動に対する怒りが混ざり複雑な事になった。

だが、彼女は結果的に助かり、本来数人の、亜耶を含めた巫女達が生贄となる儀式を誰も犠牲になる事なく終わらせた。過程は褒められないが結果的には上出来に終わった。

 故に、ハゲ丸は説教をしない事を決めた。感謝し、一言文句を言いこそすれど、それ以上をしないという事を決めた。

 それが彼の決断だった。

 尤も。

 

「だからと言って園子と銀の説教が無くなる事は無いけどな」

 

 それで三人分の説教がなくなるわけがないのだが。

 

「え、ちょ」

「須美、亜耶ちゃん後輩の事は感謝してる。何もできなかった俺の代わりに、お前も知らない内に助けてくれて、本当に感謝している。でも、お前の行動に関しては一言二言相談があっても良かったとは思った。まぁ、俺からの言葉はそれだけだ」

 

 呼び方が昔の物に戻っている辺り、本当に感謝はしているのだろう。そしてその後の言葉も彼の本心に違いない。

 だが、彼はもうこれ以上の事を言わない。これ以上感謝はした所でその感謝を園子と銀を止めるという助け舟にする気はサラサラない。故に、ハゲ丸は園子と銀に向かって頷き、園子はゆっくりとアイアンクローに込める力を強め、銀は良い笑顔を作る。

 

「それじゃあわっしー? すこーし『お話』しよっか?」

「もう二度とどっかにぶっ飛ばないようにしっかりとそのバカみたいな思考回路を正さないとなぁ?」

 

 修羅。二人の形相を表すのにこれ以上適任な言葉はなかった。

 間違いなく数時間の説教が待っている。それを理解した美森は思わず友奈達に助けを求めた。

 

「ゆ、友奈ちゃん、助け……」

「ごめんね、東郷さん……今回ばかりはわたしも何も言えないよ……」

 

 しかし、見捨てられてしまった。

 流石の友奈も今回ばかりは擁護する気は無かった。一度目はまだ仕方ない。二度目もしっかりとお灸を据えられたというのを聞いた。だが、三度目ともなると苦笑してそっと視線を逸らすのが精いっぱいだ。

 もし友奈が庇えば、園子も銀もそこそこ怒りを鎮めただろう。だが、彼女の言葉が無い以上、園子と銀の説教は一切の手加減無くもたらされる。

 

「い、樹ちゃ……」

「……ノーコメントで」

 

 故に友奈ではなく、今度はみんなの可愛い後輩である樹に弁明を頼もうとしたが、彼女もそっと視線を逸らした。いつも生意気な彼女だが、今回ばかりは普通に擁護できないので他を当たってくれと視線を逸らすので精いっぱいだった。

 

「ふ、風先輩! 夏凜ちゃん!!」

「いやー……そこの修羅二人を説得できるほど、アタシは強くないんだわ……」

「あたしも流石にね……?」

 

 そして残りの二人も流石に庇いきれない。風も悩んだら装弾してぶっ飛んでいった一人ではあるため気持ちは分からないでもないのだが、だからと言って園子と銀を止めるには少しばかり今回の件は度が過ぎている。夏凜もブチギレしている園子と銀を止める術など持っていないのでお手上げ案件。

 

「ふ、藤丸……」

 

 そして最後の最後、珍しくハゲ丸に助け舟を求めたのだが……

 

「いや、ほんとこれ以上何も言う気ないんで」

 

 最初に言った通り、これ以上彼は何も言う気は無い。

 つまり、何の助け船も無し。前は銀が庇ってくれたが、今回はその銀すらお説教に回っている。

 

「そんじゃ、アタシ達は帰りますか。いやー、全部円滑に終わってよかったよかった」

「風先輩、うどん食べに行きましょう!」

「Hi-ν先輩も行きますよね?」

「ん。まぁ予定も無いし付き合うわ」

「んじゃ俺も。かめや行こうぜー」

 

 そして園子と銀を除いた五人は笑顔でうどんを食べに行った。そしてこの場に残ったのは園子と銀は良い笑顔を浮かべて美森に視線を合わせた。

 

「それじゃあわっしー?」

「ちょーっと、アタシ等と『お話』しよっか?」

 

 後に美森は語る。

 いつも本気で怒らない人たちこそ、怒らせたら一番ヤバいと。

 ちなみに、病室の外では。

 

「そういえばハゲ丸。あんた、サラッと勇者システムをいつの間にか持っていたしそれを使ってたのよね? しかもそれ試作型って事は少しばかり危険もあったのよね? っていうかあんたも何気に厄ネタ抱え込んでたのに相談しなかったわよね?」

「やべぇ逃げなきゃ」

「あ、待ちなさい!! 追うわよ後輩ズ!!」

 

 そのついでに、何気に悩んだら相談をしなかったハゲ丸が説教をかまされたらしいのだが、その真実は友奈、風、樹、夏凜のみが知る。

 

 

****

 

 

「……東郷さんは生贄から解放された。でも、本来五人分の生贄を一人で賄っていたんだから、そもそも生命力は足りない。なのに途中で儀式を中断させてしまった……それで天の神が納得するわけがない」

 

 熱いシャワーを浴びながら鏡で己を見る友奈の目は深刻で、彼女の鎖骨付近にはまるで烙印かのように赤色の紋様が浮かんでいるのだった。

 

「……隠さなきゃ。誰かが不幸な目に合う前に、わたしが全部隠して終わらせないと……」

 

 友奈の目は決意を孕みながらもどこか悲し気だった。




ゆゆゆいでしずくガチャ引きまくってるんですが全然出ません。闇メガネさんがすり抜けてきました。いや、強いからいいんだけどさ……
しずく欲しいンゴ……どうにかして引きたいンゴ……でも自分の編成だとそろそろエキスパートのスピード討伐が限界に近づいてきたのでキツイ……友奈の章のハードとエキスパート一気に消化して石集めてるんですけどホント辛いです。ぐんちゃん、そのっち(小)、クソレズの紫パ、どうやったらこれ以上強化できるだろう……

さてさて、今回で勇者の章二話までが終わりましたが、後アニメ的には四話。この作品だと何話分になるのやら……なんとかして早めに勇者の章終わらせておきたい所……

次回は不穏な日常についてを書く事になりますかね。でも三話の分が終われば折り返しなので頑張って面白おかしく終わらせるゾー!!

……さて、しずくのために石集めなきゃ。座敷童に貢ぐんじゃぁ……
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