ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回は美森IFでちょっとゆるーく、勇者部の面々との会話や二人の学生時代の話など。なんかこう、美森IFで書き足りないなぁ? と思った部分を勝手に書いてみたり。

まぁ前みたいなダラッダラな二人をご覧ください。


美森IFその2:園子様と飲み会

「……ズラっち、わっしー」

「ん?」

「なぁに、そのっち」

 

 とある日の喫茶「シャルモン・ブラーボ」。ハゲ丸が店を持つならと考えた名前を持つ喫茶店の中、既に営業時間外ではあるが友人のよしみで来客している園子は今日もワインを片手にカウンター席でやさぐれていた。

 最近は仕事もそこそこ早く終わるようになり……というかハゲ丸がマフィアよろしく防人を連れて大赦のお偉いさんの何人かを脅迫した結果、追われるようになり、園子はここ最近婚活をそこそこしていた。

 まぁ結果はお察しの通りなのだが、その結果彼女と銀は仕事の終わりによくシャルモン・ブラーボに来店するようになった。

 ハゲ丸と美森の夫婦している所を見ると心が折れそうになるか血涙が出そうになるのだが。

 

「二人って恋愛関係になってからもう四年経つんだよね?」

「まぁ、そうなるな。なんやかんや美森とここに住み始めて四年になるし」

「荷物持って押しかけてからもうそんなにもなるのね……大学出ると人生あっという間ねぇ……」

 

 しみじみと彼女は言うが、その度に園子は今にも血涙を流しそうだ。というか吐血しそうだ。

 園子様の胃は既にストレスで壊滅寸前なのである。最早白髪という形でストレスが浮き彫りになっている以上、もう吐血まで秒読みとも言えてしまうが。

 

「……それで、二人の付き合い始めた時の事を聞きたいな~って」

「別にいいけど……お前、マジで大丈夫か? 自分で傷抉る形にならない?」

「憩いの場所がここしかない時点で察してよ……」

「……うん、ごめん。そのワインはサービスにしとくから頑張れよ」

 

 と言ったところでさて、とハゲ丸は口にした。

 話すにしても何を話そうか。

 彼と美森は言う程恋人らしい事はしてこなかった。夫婦の営みなんて話す訳にもいかないし、かと言ってラブコメにありそうなイチャイチャなんてしてこなかったし。本当に惰性に付き合っているという言葉だけをぶら下げて生活してきた訳で。

 キスだって付き合ってるワケだししてみる? という感じで最初にしたのは互いにトゲが取れ始めた辺り、付き合ってから一年後の話だ。

 

「……駄目だ。美森、なんか言ってやれ」

「思いつかないからってぶん投げないでほしいわ。私も思いつかないんだもん」

「……なんでそれで結婚まで行ったのさ」

「結構ずるずる引っ張った結果がこれだしな。あ、美森。酒は止めとけよ」

「分かってるわよ。ジュース飲むだけ」

 

 普通に夫婦やっている二人を見て園子様が唇を噛んで酒を一杯豪快に煽った。そこまでダメージが入るなら来なきゃいいのに、が二人の意見なのだが、仕事終わっても行く場所がここしかないのが園子様。家に近いのが悪い。

 そろそろ話を引っ張ると園子様のご機嫌が悪くなるか変な酔い方してまた客室に放り込む事になるので適当に何か話をする事に。

 

「じゃあ……そうだな。美森と付き合ってから一週間ぐらいの時を話すか」

 

 ハゲ丸は自分の分のカクテルを作り、美森は冷蔵庫の中から勝手にオレンジジュースを取り出して勝手にグラスに注ぎ、不機嫌園子様に惚気話を聞かせることにした。

 

 

****

 

 

 美森が酔っ払って付き合ってと言い、断るとしょうもない事になりそうだからと了承した日の翌日。まだ店を出してから日の浅いハゲ丸は起床から開店までの短い時間を使って仕込みと腕を上げるための菓子作りに励んでいた。

 高校生の頃、バイト代わりに偶々近所にあった評判の洋菓子店に弟子入りし、高校卒業と同時にそこの店主に認められ改めて園子お付きのパティシエに。それから一年経ち、園子に許可を貰い、そして彼女に借金して作ったこのシャルモン・ブラーボも開店から一年とちょっとが経過したそんな日だった。

 基本的には経営もかつかつなので一人で回している店故にこういう時間は気兼ねなく自分の時間に仕える。それに若干の至福感を覚えていると、かなり乱暴に店の扉が開かれる音がした。

 まだ開店には二時間ほどある。まさか強盗か何かが来たわけでもないだろうと思いつつ乱暴な客を出迎えることにした。

 が、その乱暴な客を見てハゲ丸は目を見開いた。

 

「……誰かと思ったら東郷か。一体どうした? そんなスーツケースやら何やらを持ってこんな朝早くに」

 

 入ってきたのは目を赤く腫らした、昨日から恋人関係となった美森だった。

 昨日のアレは気の迷いだから忘れろ、とでも言いに来たのだろうか。それとも友奈に嫌われたから高跳びする前の挨拶にでも来たのか。

 何かは分からないが一応恋人という事で丁重におもてなしをしようとしたが、美森が次に言った言葉でハゲ丸は仰天した。

 

「私、今日からここに住むから」

「……はい?」

 

 ここに住む。

 となると同棲という事だろうか。

 

「いや、まぁ……別に二階三階部分が家になってるし持て余してる部屋はあるから使ってもいいけど……」

 

 一応美森が今現在、友奈とルームシェアしている事はハゲ丸も知っている。今、美森は大学生であり将来は歴史……西暦時代の研究者となる道を驀進中なのも一応幼馴染という事もあり聞いている。

 なので単純に美森が友奈と一緒に暮らすには今は色々と無理臭いという事でここに来たのも何となく予想はできた。

 一応二階、三階部分は将来の事を見通して結構広めに作ってあるので美森一人を住まわせる事には何も異論はない。一応は恋人なのだし。

 

「……一応家賃替わりにここでアルバイトもするわ」

「ん、そりゃありがたいけど……ってかお前昨日の事一応覚えてるよな?」

「覚えてるわよ。それに私は伊達や酔狂であんな事を言う軽い女でもないわ」

「そっか。まぁ俺は別に何も言わんよ」

「……ありがと」

「気にすんな。一応彼氏だしな」

 

 という事で今日は臨時休業。店の看板に今日は休業ですと書き込みドアのCLOSEと書かれたプレートはそのままに。この店の常連はハゲ丸が本来は園子専属のパティシエであり、休業は結構な頻度でする事というのは理解されている。

 というかそれは割と有名な話なので急な臨時休業はこのシャルモン・ブラーボを周りの言葉に釣られて行ってみようと思った人からすればちょっと不幸だった程度で終わるのだ。

 閑話休題。

 そんなワケで今日を臨時休業にしたハゲ丸は美森を裏の階段から二階の居住スペースに案内した。

 

「……外から入るのね」

「一応内側からも入れるけど、この荷物じゃちょっと面倒だからな。内側からだとせめーんだ、これが」

 

 まだ友奈に軽蔑された傷跡が拭えてないのか傷心していますと言わんばかりの美森。これは今日も自棄酒かね、とハゲ丸は溜め息を吐きながらも美森の荷物を片手に自宅へと案内した。

 自宅はかなり質素であり、ハゲ丸が使っているのは主に二階部分。一部屋を寝室、それ以外の二階の部屋を玩具置き場とプラモ部屋にし、それ以外の部屋は基本的に物置か埃を被らせているという状態。

三階はもし住み込みのアルバイトなどを雇った場合や嫁を貰った際のために作ったのだが今は未使用だ。

 

「っつーわけで三階部分は使っていいぞ。一応三階にもトイレはある。キッチンとか使いたいんならここのを使ってくれ。基本、三階は部屋が幾つかあるだけだ」

「……結構いい所に住んでるのね」

「まぁな。それに評判も良くて収入もそこそこあるから三年後くらいには園子へのローンも完済予定。どうよ、この完璧な将来設計」

「……二十歳のくせして人生いい方向に向かってるじゃない。なのに私は友奈ちゃんに……」

「あーはいはい、暗い事はやめやめ。それについても話すとして、今は掃除すんぞ。三階部分、結構埃がすげーんだから」

 

 こいつと恋人できんのかなぁ、と思ったハゲ丸ではあったが、まぁ相手から恋人解消されない限りはダラダラと関係は続ける気ではある……というか特に好意も無いのに付き合ってしまうと言ってしまった以上はしっかりと責任は取るつもりだ。

 ――その結果、ダラダラと関係を引きずって惰性の末の結婚を提案する事になるのをこの時、ハゲ丸は知らなかった――

 二時間程度で何とか三階部分と二階部分の使いそうな部屋の掃除を終わらせ、美森が私室とする部屋を決め、そこに美森の荷物を運び込んだ。

 どうやらベッドは友奈と一緒に寝ていたため無いらしく、他の家具なども後で買いに行く事となった。それ以外の私物は全部持ってきたらしく、美森がそれらを片付けている間、ハゲ丸はベッドや美森が欲しいと言った家具の相場をネットで見つつ時間を潰した。

 

「……終わったわ」

「うい。んじゃ、ベッドとか買いに行くか。車出すから乗ってくれ」

「……車まで持ってるのね」

「中古車で園子に借金までしたけどな。まぁすぐ完済できたけど」

「もしかして優良物件だった……?」

「高校時代の友人からはよく勝ち組って言われてるよ」

 

 今更ながらハゲ丸の人生が明らかに勝ち組ルートなのを見て美森は若干戦慄した。まさか身近にここまでの優良物件が存在するとは思わなかったからだ。

 よくもまぁ二十歳でここまで勝ち組ルートに乗れたものだ。これも全部自分の努力とコネの成果という物なのだろう。美森は彼の自家用車に乗り共に足りない家具を買いに出かけた。

 

 

****

 

 

「……え? なに? そんなにあっさりと同棲始めたの? そんな誰かを泊めるみたいなノリで?」

「正直、あの時はこの人も私を慰めるためにあんな告白紛いの事を受け入れたと思ってなかったから、同棲を断られるのは視野に入れてたのよ。一応実家に帰る事も検討してたし」

「まぁその結果がこれだ。一応彼氏としての責任は果たさなきゃってな」

「けどあの時あなたが私を受け入れてくれたから、私はそんな人生勝ち組な上に優しくて気遣いのできる人の妻になれて」

「俺は学者で家事も人並み以上にできる美人の嫁さん貰えて更に人生勝ち組ルート。しかも子供までできるから更に人生勝ち組。ここ潰れても園子との契約があるから仕事には困んねぇし」

「その幸せが憎い……憎すぎる……!! っていうか中学生の時の二人を見てたらお前ら誰だよレベルなんだけど……!!」

 

 一通り同棲に至るまでのあれこれを聞いた園子は今にも血涙を流しながら吐血しそうだった。ついでに彼女の言ってる事は二人も頷いてしまう程度には最もな事だった。

 実際、友奈と仲直りをしてから一か月くらいは中学生の頃のノリで互いに言いたい放題していたので当時の自分達を見れば園子もその内別れるでしょと言いながら酒を飲んだのかもしれないが。

 同棲の後はへこむ美森に対して友奈と仲直りするためにハゲ丸が裏で色々と動いたり美森の精神のケアをしたりして、美森からしっかりと謝らせた結果、まさかの友奈が普通なら絶交案件のアレを許すと言う大天使っぷりを見せつけた。

 それから一か月程が経過し、二人の間にあった中学生のノリみたいな罵倒のし合いが消えた頃か。二人が一応互いに呼び方を変えてから暫くが経った頃のシャルモン・ブラーボを貸し切っての勇者部での飲み会にて、二人は付き合っているという事を暴露した。

 

 

****

 

 

「まぁそんな感じで俺達付き合うことにした」

「案外恋人関係になっても変わらない物よねぇ」

『ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?』

 

 美森がシャルモン・ブラーボの二階部分から姿を見せた事から始まった追及。それに対して普通に二人はそこに至る経緯で何があったのかを軽く説明し、結果、信号機トリオは大声をあげて驚いた。

 二人はその反応が分かっていたため耳を塞いでいたが、友奈は耳元で叫ばれたため顔を顰めた。

 一応友奈は美森と仲直りをした際、ルームシェアはせずに自分は彼氏であるハゲ丸の家で同棲することにしたと伝えたため彼女はもう二人の関係を知っていた。とは言っても彼女も最初に聞いたときはあははご冗談を、と言ってしまったが。

 

「アタシなんてどんだけ彼氏作ろうとしても作れなかったのに……まさかよりにもよって東郷に先を越されるなんて!!」

「わたしなんて事務所から暫くは恋愛禁止とか言われてるんですよ!? なのに……なのにぃ!」

「まさか東郷がねぇ……マジで意外だわ」

「そうね、私もホントにどうしてこうなったのか……あと風先輩は後でお話がありますので」

 

 もう言われたい放題である。そんな風に言われる所以は一応理解しているのだが、それでもここまで言うことは無いだろう。特に風。

 流石にカチンと来た美森が額に青筋を浮かべているが、そんなの知った事かと言わんばかりに好き放題言う風。酒も入っているせいであーもう滅茶苦茶だよとハゲ丸はカクテルをせっせせっせと作っていく。

 一応樹には同情するが、果たして恋愛禁止が解かれてもこんなのに彼氏はできるのか。

 風は今、かつては長かった髪を切って短髪に。樹は逆に髪を伸ばして清楚系な感じになっているが、まぁ二人とも中身がアレなので婚活でもしない限りはきっと恋人なんて夢のまた夢だろう。

 唯一普通に彼氏を作っていそうな夏凜だったが、どうやら彼女には巡り合わせがなかったというかお眼鏡に叶う男が近くに居ないとか。

 友奈はまだそこら辺は興味がない様子。果たしてこの天然人たらしが色を知るのはいつになるのやら。もしかしたら終身そんな事気にせず独身を貫くのかもしれない。

 

「でも恋人になったからって特に何か変わったわけでもないしなぁ」

「そうね。特に何もしてないし」

 

 ついでに付き合い始めて一か月経つが、初キスが一年後という訳でまだキスすらしていない。故に一緒に住んでいるという事以外は何も変わったことは無く。強いて言うなら美森が住み込みバイトのような物を始めた結果、下心が見えている男が来るようになったくらいだろうか。

 ちなみに美森にはしっかりと家賃を差し引いた給料は渡しているため普通に二人とも同年代からしたら小金持ちだったりする。

 その金も最終的には共有財産となるのだが。

 

「え? 普通に恋人になったんならキスとかセ〇クスとかしてんじゃないの? 毎晩毎晩ズッコンバッコォ!!?」

「風先輩、下品です。普通にキスも夜の営みもしてませんよ」

 

 美森の持っていた空のボトルが軽く風の頭に落とされ、風が頭を抑えたまま机の上に突っ伏す。そこまで強く叩いてない……というか軽く当てただけなのですぐに復活するだろう。ぴゅあっぴゅあな友奈がアルコールとは別の理由で顔を真っ赤にして固まっているので再起動をかけつつ美森が特にそういう事はしていないと話す。

 そっと樹と夏凜がハゲ丸の方を見るが、勿論ハゲ丸もソレに頷く。

 

「実際ダラダラ関係を引きずってるみたいな感じだしなぁ」

「まだ同居人って感じが否めないのよ。付き合ってると言っても言葉だけみたいな感じで」

「いっつつ……でも彼女、ないしは彼氏いない歴=年齢よりはマシでしょうに」

「まぁ、そりゃあそうですけど」

 

 一応ハゲ丸も二十歳を越えたという事で恋人居ない歴が年齢に直結しているのはどうにかしたいなぁとは思っていたので美森が彼女になった事で恋人ができた同級生共にこれ以上揶揄われなくて済むという面ではありがたいとは思っている。

 美森も大学内で色々と変な噂をされたり変な男に目を付けられたりする事も無くなるのでいい感じに虫よけが作れたとは思っている。

 

「んじゃ、アタシは最終的に別れるに一票」

「お姉ちゃんと同じく一票」

「んじゃあたしは最終的に結婚するで。なんかこのままズルズルと引き摺って結婚しそう」

「じゃあわたしも結婚するで」

「負けたやつは焼き肉奢りで。あ、ハゲ丸と東郷はどっちにしろ焼き肉奢られるって事で」

「こいつら人の将来で賭け事し始めやがった。まぁタダ飯あざーすって事で」

「とりあえずメモっておきましょうか。みんなのサイン付きで」

 

 ちなみにこの三年後、本当に二人が結婚する事となり、その報告を焼き肉屋でする事となったのだが、その際に犬吠埼ダブルラリアットが決まったりした。あのダブルラリアットは四人分の焼き肉を奢る羽目になった二人の怨念も籠ったラリアットだったのだ。

 この日はこんな感じでワイワイガヤガヤと騒ぎ合って解散。この日以降、勇者部は全員がフリーな時間ができ次第、シャルモン・ブラーボで飲み会をするのが定例となった。

 なお、飲み会の際に二人が思いっきり風と樹に対して彼氏いない歴で煽るがお約束となるのだが、これもどうでもいい事だろう。

 

 

****

 

 

「よーんーでーよー!! わたしも呼んでよー!!」

「だってお前仕事忙しそうだったし……」

「連絡しても既読付かなかったし……付いたとしてもごめん無理の一言だし」

「もっと強引に呼んでくれたらわたしも飲み会に参加してるよ!! というか次からわたしとミノさんも混ぜてよ!!」

「別にいいけども」

 

 惚気ばかりでは園子様の胃に穴が空きそうだったので箸休め的な感じで付き合ったと報告した後のあれこれを言ってみたのだが、結果的に園子様の機嫌を損ねる事になってしまった。

 まぁ忙しいからと変な気を回すよりはダメ元で聞いてみるのが確かに正しかった。そっとこの店で一番高い酒をサービスとして出して園子様の機嫌を取る。

 この飲み会のせいで酒のメニューがどんどん増える喫茶店、シャルモン・ブラーボ。その内、夜中は美森を店主としたバーとして機能するかもしれない。

 

「っていうかもっとこう、無いの!? なんかこう、甘ったるい話!!」

「甘ったるい話……? 無いけど」

「即答!?」

「そのっち、私達の結婚は恋愛漫画みたいなのじゃなくて惰性の末の結婚よ。何を求めても無駄なの」

「出てくんのは惰性の塊だぞ?」

「しーろーよー!! もっとこうネタになるような事しーろーよー!!」

 

 酔っ払ったせいで園子様のキャラがぶれっぶれである。今日は客室行き決定だ。

 はてさて、どうしたものか。こうも園子がかなりめんどくさい酔っ払い化すると彼女を満足させる以外には解放される手段は無い。

 とは言っても本当にラブコメ漫画みたいなあんなことやそんなことは起こっていない。本当に同居人感覚で一緒に住んで、気が付いたら結婚していたみたいな感じだ。そこに甘ったるい話を期待されたところで。

 

「あっ、そういえば美森が実は大学内でモテていたって話があったな」

「あぁ、あの。なんか知らない内に私が学校のアイドル扱いされてたのよね。学校一の美人とか言われて」

 

 それは二人が付き合ってから大体二年の時が経過した、二十二歳の頃。彼女の周りが就活に忙しい時期に起こった珍事件だ。

 当時の美森は既に卒業に必要な単位を既に取り終わり、卒業研究も順調だったため留年する事も無く卒業し学者コースは確実だった。そんな順調な学生生活の間に起こった一幕。

 

「実際お前の容姿ってホントに美人さんそのまんまだしな。しかも胸もデカいからそこら辺の男受けもいいし。モデルやっててもおかしくないよな」

「何度か街中でスカウトされたけど全部断ったのよ。興味ないし」

「そうだったのか。そりゃ気づかなかった」

「言ってないもの。仕方ないわ」

「サラッと惚気るなー!!」

 

 サラッと惚気た二人ははいはい、と顔真っ赤な園子様のために当時の事を語る。

 

 

****

 

 

 美森は同棲を始めてからは弁当をハゲ丸に作ってもらい、それを昼に食べるようにしていた。色関連で突かれるのを嫌がる彼女はその弁当を自分で作ったと嘘を吐き(ハゲ丸もそれは了承済み)、彼女は弁当を持参して昼を済ませていたのだが、ある日それを忘れてきてしまったのだ。

 特に用事も無ければ美森も取りに戻るのだが、運の悪い事に美森はその日、弁当を取りに戻れるほどの時間的余裕がないスケジュールを組んでしまった。

 財布も使わないからと持ってきてないので頭を捻っていた美森ではあったが、ダメ元でハゲ丸に相談してみた所、その日は偶々客が少なかったらしく、美森に弁当を届けて戻る程度の時間なら休憩と言う名目で一旦店を離れる事ができたらしい。

 不幸中の幸いというやつだ。なので美森は自分の所属する研究室の前までそれを持ってきてほしいと軽い我儘を言い、行き方を送付。快く応じたハゲ丸は普通に車で美森に弁当を届けに来た。

 ハゲ丸の着いたという報告を受けてすぐに美森は席を立ち、研究室の前に立っていたハゲ丸を見つけた。

 

「ホントに来てくれたのね。助かったわ」

「ん、まぁこの程度なら別に迷惑の範疇にも入らんさ。可愛い彼女のピンチだしな」

「もう、おべっかばっかり」

「今日日聞かねぇな、その言葉。まぁいいや。ほい、弁当」

「ありがと。財布も無いからホントに助かったわ」

「だから財布くらいは持ってけと……まぁいいや。所で俺がここまで来て大丈夫なのか? なんか視線吸ってるっぽいし落ち着かねぇんだけど……」

 

 と言いながらハゲ丸が廊下の方に視線をやると、どうやらこちらを見ていたらしい女学生が慌てて目を逸らしていた。

 案外大学はそこら辺のセキュリティは緩いので学生を装えば入ることは結構簡単だったりする。何かの施設を使うとなると流石に色々と問題はあるが、忘れ物を届ける程度なら特に問題にもならない。

 しかし研究室が並ぶ所で弁当を渡すとなるとやはり視線は吸ってしまう。

 

「まぁ気にしないで。それにここまで来たんだしどうせなら研究室の中とか見てく?」

「冗談は止してくれ。視線で穴が空いちまう」

「あら、私は気にしないわよ?」

「俺の心配をしてくれ。ってか研究室のドアから誰か見てんぞ」

「え?」

 

 と言いながらハゲ丸が視線でドアの方を見ると、確かにドアの隙間から美森の所属する研究室に所属する女学生が数人、二人の様子を覗いていた。

 あらま、と美森。なんか面倒な予感、とハゲ丸。気づかれた女学生達はそっとドアから出てきて二人をこっちこっち、と申し訳程度にある談話スペースに誘導した。ここで断ると面倒な事になりそうなので二人は渋々それに従った。

 

「東郷さん、その人誰?」

「なんかさっき彼女とか聞こえたけど……」

 

 どうやらバッチリと最初から会話を聞かれていたらしい。ハゲ丸がちょっと肘でどつくと、ごめん、と美森が両手を合わせた。

 やっぱり面倒事だ。こっから絶対に色々と質問が飛んでくる。

 嘘を吐いてもいいのだが、そうすると先ほどの可愛い彼女とか言ったことに対するアレこれが説明付かない。

 

「まぁお察しの通り彼氏よ」

「お察しの通り彼氏です。あ、これ俺の名刺です」

 

 まぁこうなってしまっては仕方ない。一応売名行為も兼ねてハゲ丸は女学生たちに名刺を差し出した。一応美森も製作に携わった名刺を渡すと、女学生たちはそこに書いてある文字を見てビックリした。

 何せ当時、シャルモン・ブラーボはここ最近でできた名店としてそこそこ有名だった。なので名前を出せば知る人ぞ知る、みたいな感じになっていた。

 そんな店の店主である。

 

「えっ!? あの店の店主!?」

「っていうか二十二歳って……同い年!? うそっ!? それでお店持ってるの!?」

 

 まぁそこに名刺に書いてある年齢も合わさればここまで驚かれる。

 普通に考えて二十二歳で自分の店を持っているなんて言ったら驚くのが普通だ。勇者部の中ではやりかねんとなっていたので驚きこそすれどやっぱり、という感覚がデカかったのだが。

 

「まぁ、色々とありまして。美森とは小学生の頃からの知り合いでね」

「まぁ腐れ縁からの発展ね」

 

 一応適当に馴れ初めだけ話してこれで十分? と美森が口にする。

 しかしまだ学生故にそういう色事は大好きな女学生達はまだそれでは終わらないようで。

 

「東郷さんって結構男子の中では人気だったのにね」

「誰が告白するかとか色々と言われてたのに」

「……らしいぞ? 美森」

「悪いけど初耳よ。え? なに? そんな事が裏で話されてたの?」

 

 知らない内に人気者にされていた美森は目を丸くしている。だがハゲ丸は特に驚いていない。

 何故なら美森はガワだけ見れば大和撫子をそのまんま絵にかいたような美女。中身まで見た上に過去を見ればやべー奴感は浮彫になるのだが、そうじゃなかったら大和撫子で、胸も大きくて、身長もそこそこあるが男から見たら普通にいい感じ。誰か一人くらいはホの字になってもおかしくないだろうと。

 後にも先にも彼女の本性を知るのは勇者部だけになるのだが。

 

「誰が私に告白するか考えてたのかは分からないけど、私と付き合える男は後にも先にもこれくらいよ。多分告白されても全部断ってたわね」

「付き合ってなくても?」

「付き合ってなくても。というかこいつと付き合ってるのも私が自暴自棄になって変な事言ったのが切欠だし」

 

 まぁ付き合ってなかったらなかったで思いっきりその心は友奈に向かっているので友奈以外と付き合うなんて確実になかったわけではあるが。

 

「惰性に続いてるもんなぁ、この関係。終わらせる気もないしな」

「なんやかんや今の生活が気に入ったのよ。あなたの家、快適だし」

「一軒家、いい物だろ?」

「最高よ。アパートみたいに壁の気にしなくていいし。正直あなたよりいい男、同年代に居るのかしら。一軒家持ってて安定した職を手にしてて、コネもあって自家用車まで持ってる。しかも家事はできて子供の世話も得意中の得意で優しくて……あーこれもう無理ね。言ってて分かったけど勝てる男というか学生がいないわ」

「お前からそこまで褒められたの初めてだよ」

「奇遇ね。私も初めてここまで褒めたわ。まぁ欠点としてオタク趣味かしら? まぁ私は特に気にしないから無いに等しいわね。あともう一つは……言わないでおいてあげる。でも最近は筋肉もついて似合い始めてるわよ」

「目指せシャルモンのオッサン」

 

 最早二人の会話が夫婦のソレみたいな感じが既にしているのは気のせいではないだろう。目の前の女学生二人もポカンとしているし。

 まさか目の前の男がそこまでいい感じの物件とは思わなかったらしい。こんな若いうちから勝ち組ルートの乗っているなんて普通は思う事も無いだろう。そう思えば少なくともこの学校に居る男の中で現状彼に勝る優良物件なんて居ないとすら言える。というか大学四年生代の年齢でそこまでできている人間の方が稀だ。

 そんな稀をゲットした美森さん。本人は特に勝ち組とかはまだ思ってないのだが、話を聞いていた女学生達は明らかに目の前の二人が勝ち組ルート驀進中としか思えない。

 

「これじゃあウチの学生じゃ歯が立たないよね~」

「というか東郷さん、そんな人と付き合えてズルいかも」

「これが幼い頃に作っておいた腐れ縁の末よ。あと一応言っておくけど、私に男友達はコイツ以外居なかったわ。マジでコイツだけよ」

「俺は女友達が多い方だけど、その中でもまさかこれと付き合うなんて思ってもいなかった。マジで人生どうなるか分かんねぇよな?」

「えぇ。マジでどうなるか分からないわ」

 

 もう互いに互いの事を言いたい放題だが実際その通りだし二人ともふざけて言いあっているので特に互いに互いの言葉を咎めたりしない。それどころか中学生時代のノリで普通に漫才までできるレベルだ。コントとなると手が出始めて最後にハゲが空を舞うのでしないが。

 しかし、本当に人生とは何があるか分からない物だ。まさか美森も小学校に入ったばかりの頃は勇者になって神を打倒してその時にできた仲間とこうして恋仲になるなんて思ってもいなかった。

 本当に人生何があるか分からない物である。割と本気で。

 

「ちなみに、この事誰かに言ったりしていい?」

「構わないわよ? 変な虫が集るくらいならそれで分散してくれれば願ったりかなったりで研究に集中できるし」

 

 もうこうなってしまった上に変な虫が湧いてくる可能性があるのなら潰しておくべきだと美森は付き合っているという事を誰かに伝える事を許可した。今までは誰からもそんな目で見られていないと思っていたのだが、それが違うのなら早急に手は打つべきだ。

 というかそれで問題が起これば割と解決には面倒な手間がかかりそうだ。物理的な強硬手段を取られたとしても自衛はできる程度の腕はまだ残っているが、変にこじれたらハゲ丸の筋肉がうなりを上げて更に面倒が起こる。

 なので一応予防策だけは先に打っておくことにした。寝取り趣味の人間が居たら更に興奮しそうではあるが。

 

「美森がそう言うなら俺も別に。あ、シャルモン・ブラーボは不定期に臨時休業決め込むんで何かあれば予約の方を。一応美森の友達だし名刺を見せてくれればちょっとは割引するよ」

「え、マジで!? 今度行こうよ!」

「うんうん!」

「ちなみにこいつの腕はあの乃木家のお嬢様が専属にするレベルよ。味は保証するわ」

「是非とも友達と一緒に来てくれ。」

 

 その言葉を聞いて更に女学生たちはテンション鰻登り。今は大赦のトップに居る乃木家の園子様が腕を買う程だ。それが分からない程ではない。

 サラッと宣伝して売り上げを増やせばその分だけ自分達が自由に使えるお金も増えるので美森も隙あれば宣伝に乗っかる。その結果はどうやらそこそこいい方向に向きそうなので思わず二人でハイタッチ。多少の割引をした所で客を沢山連れてきてくれれば割引した分なんてすぐに取り返せる。

 明日から忙しくなるぞぉ、と呟くハゲ丸。頑張りなさいと背中を叩く美森。

 

「うんじゃ、帰りますかね。けどなんか面倒だし臨時休業にするのも手だよなぁ……」

「そんなボヤかないの。ハグくらいならしてあげるから頑張りなさい」

「んじゃお言葉に甘えて。あ~……やっぱお前抱き枕の才能あるわ」

「毎日してるくせに何言ってんのかしら。ほら、満足したら仕事に戻る」

「ういうい」

 

 ちょっと恋人っぽい事をした二人はじゃあまた後で、と言って別れた。ハゲ丸はこのままシャルモン・ブラーボに戻って接客業の続きだ。そして美森は弁当も受け取った事だし安心して研究の続きだ。

 さて、と肩を回しながら研究室に戻ろうとした美森だったが、ふと後ろの方で固まっている女学生を見た。

 

「どうかしたの?」

「い、いやー……なんか進んでるなーって」

「彼氏いない組からしたら天上の存在だなーって」

「何言ってるのよ。もう二年は一緒に暮らしているし自然とこうなるわよ。ハグもすればキスもするし」

「も、もしかして夜とかは……」

「それ以上言ったらセクハラで警備員に突き出すのも止む無しね?」

 

 まぁ夜中に抱き枕にしていると言った時点でお察しなのだが。果たしてその真相は何なのか。それは二人のみぞ知る。

 

 

****

 

 

「……え? 終わり? もっとこう、わっしーがなんかこう、変な男に襲われてズラっちがボロボロになりながらも助けるとか……」

「ねぇっすわ」

「そんなの漫画とアニメの世界だけよ」

 

 一応似たような話はあることにはある。

 まぁ想像通り美森に変なチャラ男が絡みつき、美森を寝取ろうとか考えていた馬鹿がいたのだが、流石にイラッと来た美森がハゲ丸がヘルプを依頼。即参戦。某ドリアンなアーマードライダー一直線な彼の威圧とリアル瓦割りによってチャラ男は一瞬で美森に絡むのを止めた。

 また、どうやら美森に本気の恋をしたらしい男がハゲ丸に別れろとか言った時もあったがニッコリ笑って筋トレの成果としてリンゴを握りつぶして「数分後の貴様の姿だ」をリアルでやったら男は何も言わずに顔を青くして帰っていった。折角搾りたて☆アップルジュースを用意してあげたのに。

 筋肉は大体の事を解決してくれる。そしてシャルモンでブラーボなあのオッサンは偉大な人だとハゲ丸は改めて認識した。目指せリアルシャルモンのオッサン。

 

「なんていうか……ほんっと、相手が悪いとしか。っていうかズラっちそんなに鍛えてたんだ……」

「おう。実は細マッチョだぞ。シャルモンのオッサン目指してたらこうなった」

「まぁ、私とこの人を好き勝手したいんならそのっち以上の権力が必要って事ね」

「勇者部を敵に回して無事でいられる人間は居ない」

「その言葉を冗談で返せないあたり凄いよね、ほんと~……」

 

 と、言った辺りで園子がうつらうつらしてきた。どうやら酔いが完全に回って眠気に変わってきたらしい。

 これはそろそろお開きかなとハゲ丸はコップを回収してサッと洗ってから園子を背負った。もうその頃には園子は赤い顔のまま自分が何されているのかすら分からず舟を漕いでいた。

 これにて突発的な飲み会は終わり。後は園子を寝かせて明日の朝、一緒に朝食をとってハゲ丸はいつも通り仕込みを、美森は論文を書きながら安静に。美森が産休のため新しく雇ったアルバイトと共にいつも通りの一日を経営してまた明日。そうやって二人の結婚生活は山も谷も無く、中学時代の波乱なんて無かったと言わんばかりに平和に過ぎていくのである。

 

「そういや美森。お腹の子、性別分かったのか?」

「あら、言ってなかったかしら? 男の子と女の子よ」

「……ん? オカマ?」

「双子。産むのが大変そうねぇ」

「……そう言うのって分かったら言うもんじゃねぇの?」

「分かったの先週なのよ。あんまり怒らないでほしいわ」

「いや、怒らねぇよ。でも男の子と女の子か……俺等の嫌な部分な似ないでほしいな」

「ハゲな所と人の話を聞かない所ね。さて、そのっちも寝かした事だし私達もお風呂入って歯を磨いて寝ましょうか」

「あ、じゃあ寝る前にこう、よくあるあれ。お腹に耳を当てて赤ちゃんのさ」

「してもいいけど……まだ何も聞こえないわよ?」

「うっ……じゃあ聞こえるようになったら教えてくれ。やるから」

「はいはい。困ったお父さんだこと。これじゃあお父さんのテンプレを歩んでいきそうね。娘から洗濯物別にしてとか言われて凹んだり」

「う゛っ……」

「もう死んでる……って馬鹿やってないでとっととお風呂入るわよ」

「あいよ。この調子じゃ俺は尻に敷かれそうだ……」

「敷いてあげるからとっとと歩いた歩いた」

「うーっす」

 

 こうして藤丸家のとある一日は今日も幕を閉じたのであったとさ。




なんやかんや夫婦生活はいい感じにできてるようですよ? こういう夫婦って結構いい感じに回っていい感じに続いていく物だと自分は思います。

多分ハゲ丸くんは息子に特撮を見せ続けたり東郷さんは和の良さを娘に説いたりする事でしょう。

そして徐々にシャルモンのオッサン化が進んでいくハゲ丸くん。君の筋肉の行く末は一体。多分オカマ化しかけた瞬間嫁息子娘からのキモイ発言で矯正が入るので多分このまま正当進化を続ける事でしょう。

そんなこんなでお送りしました美森IF。次回は恐らくリクエストで貰った話を書くと思います。それか園子IFの続きか。やっぱり園子IFは初めてって事で内容が結構薄味でしたからね。何とか他のIFと被らない感じのラブコメを考えます。
漫喫とか行ってなんかこう、ラブコメチックな物でも読んでこようかなぁ……レパートリー増やさないと……
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