パーソナリティは皆さんご存知の通りゆーゆ、フーミン、イっつんの三人、ですけど……
まぁこの三人がマトモにラジオをできるわけもなく?
讃州中学の放送室内。ブース内には友奈、樹、風の三人が台本を片手に軽い打ち合わせを行っており、その外では他の勇者部達が慌ただしく作業を行っている。が、園子と千景は指示を出す係なのでインカムと、自宅から持参したヘッドセットを装着して時計を確認するだけ。
そして放送開始まで残り数十秒、という所で園子と千景がインカムとヘッドセットのスイッチを入れ、指示を出す。
「準備はいい~?」
「OPセット……こっちは……大丈夫……」
「それじゃあ、さん、に、いち~……」
ブース内で聞こえていた園子と千景の言葉が消え、代わりに樹がこの間カラオケで新録してきたOP曲、カラフルワールドが流れ始める。著作権やら何やらなんて校内放送なので関係なし。
そのOP曲が流れてすぐに中にいる風が口を開く。
「勇者部、活動報――」
「へっくちっ!!」
「こおおぉい!!?」
さぁスタート、という所でまさかの友奈がくしゃみを暴発。結果、風の言葉は不自然に途切れた上に変に狼狽えてしまったため変な声が出てしまった。
暫しブース内が何とも言えない空気に包まれたが、よくも最初の言葉を台無しにしてくれたなと言わんばかりに風が友奈の後ろに回り込んで梅干しの刑に処した。必死に逃げようとするが悲しいかな、女子力魔神の力はすさまじく友奈では逃げる事は叶わなかった。
始まって早々コントを始めた先輩と姉をさておいて、樹が改めてと言った感じで口を開いた。
「勇者部活動報告―。はい、今月も始まりました勇者部の活動報告。キャストはいつも通りわたし達犬吠埼姉妹と友奈さんでお送りします」
あーもう滅茶苦茶だよ、と園子と千景の後ろで夏凜が額に手を当てて空を仰いだ。
すぐに銀が中に入って風をなんとか落ち着かせて席に着かせた後、もう最初のコーナー付近まで放送を進めていた樹に一言だけ謝ってから放送に二人も本格的に参加する。
「まぁ概要は樹が言ったからいいとして。もうこのラジオも何回目かしらねぇ。十回くらいかしら?」
「校内放送をラジオって言ってるのお姉ちゃんだけだよね」
「だってそっちの方がなんかカッコいいじゃない」
「えー、みなさん。これが一年遅れの中二病というやつです」
樹の額に風が持っていた小銭が激突し、樹が額を抑えながら悶絶した。どうやら今日の風先輩はそこそこヴァイオレンスな先輩らしい。
だが、風自身そこそこ自分が中二病……というか勇者やってたせいで頭の中が結構ファンタジーに染まっているのは自覚しているのでそれ以上の追撃はせず、跳ね返ってきた小銭を回収してから改めて校内放送を進める。
「ほんじゃ、最初は活動報告からね」
この校内放送は主にそれぞれの部活の活動報告をする場だ。それだけだと流石に時間が勿体ないので色々とそれぞれの部活がコーナーを作ってそれで遊んだり無茶ぶりしたりとしているのだが、勇者部は主にラジオという体裁でこの校内放送を進める事にしているので、校内放送と連動して校内で何かイベントが起こるなどという事はない。
そして、一番重要な活動報告だが、これに関しては結構面倒なので最初にちゃちゃっと終わらせてしまおうというのが風の考えだった。
「はい、今月ですけどぉ……今月も、色々やりました」
「………………えっ終わり!?」
まさかの一言。友奈もここから言葉がつながると思い何も言わなかったのだが、静かな時間が過ぎたので思いっきり驚いてしまった。
今月も色々とやった。やったのだが、まさかこの一言で締められてしまうとは思わなかったのであの友奈すら思いっきり驚いてしまった。
「だって友奈。説明できる?」
が、その言葉を聞いて友奈がそこら辺を考えられる訳もなく。
「…………今月も、色々やりました」
『諦めんなよ!!?』
友奈の言葉に裏に居た夏凜と銀が思わず園子と千景のインカムとヘッドセッドを奪い取って電源を入れ、マイクに向けて思いっきり叫んだ。結果、赤コンビの声が思いっきり入ってしまったのだが、勇者部だからとこれを聞いている人は特に気にしていない。
夏凜と銀の言葉にあははと笑う風と友奈ではあったが、まぁこの三人に何言おうが無駄なので赤コンビが思いっきり溜め息を吐いてからそっと二人にインカムとヘッドセッドを返した。
「外からツッコミが飛んできた訳だけども、気にせずいくわよ~。んじゃ、次は普通のお便り、ふつおたのコーナー」
「えー、もう説明不要のこのコーナー。とりあえず来たお便りに対して普通に返信します」
「じゃあまず一通目! えっと、誕生日が一月十四日、クラスが五組、出席番号が十四番さん」
「ぶっ」
樹が吹き出したが友奈は気にせずお便りの内容を読んでいく。
「えっと、勇者部の皆さんこんにちは。最近勇者部には小学生っぽい子が参加しているみたいですが、本当ですか? あ、本当だよ~」
どうやら最初のお便りは千景の事らしい。
基本的にお便りは友奈達の目に届く前に美森の手によって選別され、その後に夏凜のチェックが入り厳選されているので、順番などはある程度操作されている。そんな中で一番最初に来た辺り、この場で千景の事を知らせておくのがいいだろうと美森が判断したのだろう。
友奈の言葉に風は誰にも見えないのにもかかわらず頷いてから友奈の言葉に説明を加えていく。
「千景の事ね。先生とかアタシ等の友達には言ってあるけど、それ以外には何も言ってなかったから不思議に思ってたのね」
「現状は勇者部名誉部員だね。今小学五年生だって」
「って事で一人の所を見かけても迷子としてどっかに連れて行っちゃだめよ? そんじゃ、次」
これ以上触れると千景の闇を触ることとなるので風はこれ以上の説明はせず切り上げ、次のお便りに手を伸ばした。
次のお便りはどうやら相談事らしい。
「えっと、なになに? 彼氏と上手くいきすぎていて怖いです。これから先大丈夫でしょうか?」
――知るか!!――
風の怒りの言葉と共にお手紙が紙飛行機になり飛んでいった。恋愛ごとでは勇者部の中で一番リードしていると自負している風も、自分の経験以上の事を悩み事としている人間に対してはイラッと来るらしい。
友奈がなんで? と首を傾げ、樹がリア充爆発しろ、と呟き、乱入してきた夏凜が風の頭を一発しばいて戻っていく。
「……えー、はい。折角のお便りを雑に扱うなとの事でした」
「それで、彼氏さんと上手くいく方法でしたっけ? 風先輩なら何か思いつくんじゃないですか?」
「いや、思いつかねーっての」
「でも風先輩って恋愛強者って自分の事を……」
「よーし次行くわよ次!! 樹、後頼んだ!!」
「あーもう滅茶苦茶だよ……」
友奈の無邪気で無慈悲な言葉がザックザク風の心に刺さった。最早涙目の風は樹に次のお便りに行くように指示し、自分は一旦顔を伏せた。告白された程度でイキってすみませんでした、と言わんばかりに雰囲気が暗くなる風と、何がどうしてこうなったのか分からない千景。
そんな千景が外で美森から風の恋愛事情を聴いている中、樹が次のお便りを手にして読み上げる。
「えっと、胸が大きくて周りの視線が辛いです。どうしたらいいですか…………あ゛ぁ?」
「ちょ、樹ちゃん! 女の子が出しちゃいけない声だしてるよ!!?」
「あークソ!! 胸が大きい人はみんなそうやって胸が大きいと辛いとか胸が小さい方がいいとか言うけど胸が小さい人からしたらそんなの自慢でしかないんだよ!!? 中には大きくしたくてもならない人種だって居るのになぁに言ってんのこのアマ!! ぶっこ『ピーッ』すぞヒューマンッ!!」
「ストップ! 樹ちゃん、それ以上いけない!! そろそろ怒られちゃう!!」
コンプレックスを思いっきり刺激されてブチギレた樹が思いっきり暴言を吐き散らすが、なんとか言っちゃいけないワードは園子の手によって即座にピー音が入り、友奈が片羽締めして樹の暴言を物理で止める。
思いっきり極まっているからか樹が片手で友奈の体を叩いてギブアップを宣言するが、夢中な友奈はそれを止めず、徐々に樹の表情が割と本気でマズい物へと変化していく。
これは流石にマズいと夏凜が乱入。友奈を引きはがして虫の息の樹と使い物にならなくなった風を連れて退散。代わりに銀と夏凜が交代で入ってきた。
「さて、放送事故が起こっちゃったけど気にせずいくわよ」
「流石にこんな放送事故草生えるんだよなぁ……っと、次のお便りだな」
犬吠埼姉妹の代わりに入った赤コンビによって今回のパーソナリティが赤トリオへと変化したが、些細な変化だ。銀は先ほどの放送事故が無かったかのように振舞いながら次のお便りを読み始めた。
「えっと。三好夏凛さんがよくサプリを飲んでいるのを見るのですが、あんなに飲んでいたら薬中になると思うんですけど、そこらへんどうなんですか? あー、このサプリ厨は特別な訓練を……」
「問題なんて一切ないわ!! サプリを大量に飲むこと、それは体が鍛えられるという事よ! 何も心配なんてない、何も問題なんてないわ! だからお便りをくれたあなたも安心して薬局にあるサプリを片っ端からちゃんぽんし」
「はいシャラップ」
「わきばらっ!!?」
お便り一発目から夏凜が暴走したが、無事銀の貫手が脇腹に突き刺さった事で夏凜が黙り込み、夏凜の暴走を止める事ができた。思いっきりバイオレンスな方法ではあるが、まぁ勇者部なんてこんなもんなので誰も気にする事はなかった。
とりあえず銀は用法用量をしっかりと守って飲んでいるから安心しろ、と先ほどの夏凜の暴走を聞けば明らかに安心できない言葉を吐いてから次のお便りを読み始めた。
「次。銀ちゃんが少女漫画を買っている所を見ました。趣味なんですか? 趣味だ。はい次」
「銀ちゃん、結構淡白だね~」
「こんなもんだろ。だって少女漫画買ってんのが趣味なのは事実だし。それ以上なんか言うコトってあるか?」
「うーん……どんなものを買ってるかとか?」
「最近は幽遊白書。霊丸、カッコいいよな!!」
「わたしはショットガンの方が好きかなぁ。ショットガーン! って」
本来ツッコミに回るはずの夏凜が現在脇腹を抑えてダウン中なので銀のボケに思いっきり友奈が乗っかり、そのまま幽遊白書についてを語り始めた。どうやら銀は幽遊白書のキャラの中なら蔵馬が一番好きで、友奈は飛影が一番好きらしい。
そんなどうでもいい情報が吐き出されたところでようやく園子の方からツッコミが入り、ようやく次のお便りへ。本来は次のコーナー、風の女子力王のお言葉と樹のタロット占いが入る予定だったが、あの暴走のせいでそれはまた来月へと引き延ばされた。
「裏からツッコミ入ったから次だな。えっと、結城さんには好みのタイプってありますか? らしい。そういやアタシ等ってそういう事話さないから聞いたこと無いな」
ちなみに、その質問が入った瞬間、美森の全神経が友奈の言葉へと向けられたのは言うまでもない。
「あー、確かにそういう事話さないよね~」
「まぁ、色々あったしそれどころじゃなかったからなぁ。で、どうよ友奈。何かあるの?」
「未来悟飯みたいな強くてカッコいい人かな~」
「はい、以上が恋愛ごとに一切合切興味のない年頃の女の子の言葉でした」
「あれー?」
はい解散、と言わんばかりの銀の言葉に友奈は首を傾げるが、恐らくこのお便りを送ってきた人が聞きたかったのはそういう事じゃない。もっと具体的な事を聞きたかっただろうに、と銀は溜め息を一つ吐き、ようやく復活した夏凜を迎え入れて次のお便りへ、と思ったのだが次のお便りが見つからなかった。
どうやら先ほどのお便りが最後の一通だったらしい。本来は時間ゆえにこのお便りまで読まれる事はないのでこれ以上を用意していなかったのだ。
と、なると後はもうエンディングに行くしかない。ちょっと時間が勿体ないが、やる事が無いのだから仕方がない。
「なんかもう厳選したお便りが尽きたからエンディングな」
「適当ねぇ。まぁいっつもこんなんだし特に何も言われないだろうからいいけど」
と、言いつつ夏凜はエンディングのコーナーに使うために箱を三つ持ってきた。
「ってな訳で毎度恒例、エンディングはアタシに任せろ、のコーナー。このコーナーはこの三つの箱の中に入っている紙を一枚ずつ選んでお題を作って、そのお題に添った歌でお別れするって言う考えたやつは馬鹿なんじゃないかって思うコーナーだ」
「これがあるから出たくなかったのよねぇ……」
「そう? 楽しいよ?」
銀と夏凜がこの活動報告の際に表に出てこないようにしている理由が主にこれなのだが、今日は仕方なしに出てきてしまったので本来風と樹がやるこれを担当する事となってしまった。
くじの方は、三人の内誰が、もしくは誰と誰がという事が書かれた紙の入ったボックス、何をテーマにするかという紙が入ったボックス、どんな風に歌い上げるかという紙が入ったボックスの三種類だ。
ちなみに、ここまで嫌がっている二人がどうして他の誰かに押し付けず自ら活動報告に参加したかと言うと、単純にじゃんけんで負けたからだ。
赤コンビがぶつぶつ言いながらくじから紙を一枚ずつ引き、最後に友奈が一枚紙を引く。
「えっと、なになに? 三人で……マジか」
「死なば諸共よ。えっと、今の心情を? あ、これならまだ何とか……」
「ラップバトルだって!」
『三人で今の心情を使ってラップバトルとかできるかぁ!!』
友奈の屑運に赤コンビが思いっきり叫んだが、お題が出てしまった以上は変えられない。夏凜と銀は頭を抱えながらほやほやしている友奈を交えラップバトルを開始するのであった。
「あー、えっと……今の心情、クッソ最高、かと思うかよこのクソ馬鹿野郎……あー駄目だこりゃ……」
「初心者がラップバトルできるわけないでしょうが……」
「わたしのしんじょー! 今がもうさいこー! みんなと一緒の毎日がさいじょー! 気分アゲアゲ 三人いっしょに あとでうどん食べにいこー!!」
『なんかそれっぽい感じにできてる!?』
なお、友奈はそれっぽい詞を作ることはできていた。
****
「はい三人ともお疲れ~」
「一時はどうなることかと思ったわ」
「お疲れ、さま……」
放送を終わらせブース内から出てきた三人は園子と美森、千景にねぎらいの言葉をかけられ、ついでにぼた餅が進呈された。
放送室内の片づけをハゲ丸と迷惑をかけた犬吠埼姉妹がしているのを傍目に銀と夏凜が思いっきり溜め息を吐き、友奈はニコニコ笑顔。
「今日も楽しかった~!」
「あたしゃ疲れたわ……」
「アタシもだ……」
「ラップバトル、結局できなかったね~」
できてたまるか、と赤コンビが叫ぶが園子はどこ吹く風。ひゅーひゅーと吹けもしない口笛を吹きながら言葉を濁す。
「あっ、夏凜ちゃん、銀ちゃん! 帰りに一緒にうどん食べに行こ!」
「あぁ、あれマジだったのね。別にいいわよ、行きましょうか」
「まぁこの三人っていうのも珍しいしいいか」
「じゃあわたしとわっしーとちーちゃんで骨付き鳥でも食べにいこ~?」
「待ってそのっち。夕飯前にそれは重いわ」
「……また、太る」
そんな姦しい六人が放送室から出ていき、ハゲ丸と犬吠埼姉妹が放送室に残された。
「……まぁ、その。あれは仕方ないですって。今日うどん作ってあげますから元気出してください」
「さんきゅーハゲ丸……」
「胸が大きい人全員もげろ……それか死ね……」
その内後輩にも先越されんのかなぁと考えていく内に自ら凹んでいった風と呪詛を吐き続ける樹を何とか上手い具合に操りながら放送室の片づけをしていくハゲ丸だったが、流石に溜め息の一つや二つ、吐きたくなったのであった。
あーもう(原型を留めないレベルで)滅茶苦茶だよ……
そんなワケで勇者部活動報告は途中からメインパーソナリティーが後退するという異例の事態を迎えつつも何とか終わりました。コーナー数、オープニング、活動報告、ふつおた、エンディングの四種類ってクッソすくねぇ!!
基本ベースは勇者部所属でそこに自分でアレンジ加えていった結果こうなりました。どうしてこうなった。というかどうして俺は最後の最後でラップバトルなんていうできもしない事を書いたんだ。
今回はハゲ丸も千景も空気な話でした。というかハゲ丸の台詞が一つしかない件。信じられるか? こいつ、一応オリ主なんだぜ……?
ここまで出番を削減されたり扱いが悪かったりフラグが建てられなかったり話の中心に行けないオリ主もまた珍しい。
次回はどうしましょうかねぇ。多分また勇者部所属の方から引っ張り出してくると思います。そろそろロリぐんちゃんも本格的に汚染しないと……