ハナトハゲ   作:黄金馬鹿

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今回はサブタイ通り藤丸家のとある一日について五千文字程度で……のはずが思いっきり一万文字超えたという。

最早五千文字で一本書くことが不可能になっているのではないかと訝しむ今日この頃。


とある藤丸家の一日

 藤丸家の座敷童、しずくの一日は朝、ハゲ丸が朝食を作ってから始まる。

 朝食が完成すると同時に亜耶に起こされ、あくびをしつつ最低限の身だしなみを整えてからハゲ丸と亜耶の座る席に向かい、共に朝食を食べる事から始まる。

 大赦の方から世界を救った報酬として振り込まれている金により居候生活をしている現状だが、ほぼほぼニートみたいな生活を送っているしずくはこの生活が気に入っていた。外にはおつかい以外では基本的に出掛けていないが、しっかりとハゲ丸が家を空けている間の家事は手伝っているので居候としての責務は果たしているし、虐待してくる親もいないし。

 シズクの方はそんな毎日が退屈なのか時折体を乗っ取っては外で暴れまわって帰ってくるが、そんなシズクもこんな毎日は悪くないと思いながら最近習得した感覚共有を使ってラーメンを食べているので特に不自由している事もない。

 順風満帆な毎日。それがしずくが戦った末に得た物だった。

 

「んじゃ、二人とも。今日は園子とちーちゃんが来るからおつかいは五人前お願いな」

「はい、わかりました!」

「らじゃ……」

 

 とは言ってもお使いは基本的に亜耶の仕事で、しずくは部屋の中でも亜耶の手が回らない場所の家事をするだけなのだが。

 ハゲ丸が鞄片手に出ていったのを見てから、まずはしずくが自分達の使った食器類を洗い、亜耶が鼻歌交じりで掃除洗濯を行う。掃除が趣味だけあって、楽しそうに掃除するのを尻目に、昼食の準備も同時にある程度済ませた後、二人は勉強タイム。

 しずく的には不本意な時間だが、流石に世界を救った立役者の一人が中卒なんてカッコ悪いにも程がある上に、居候させてもらっている以上は学生としての本文を果たすため、渋々やっている。

 とは言っても、しずくも何気に神樹館の生徒だった少女だ。その学力はどちらかと言えばいい方であり、今日のノルマを詰まることなくパッパと終わらせていく。何気に地頭はよくスペックはそこそこ高いのがしずくである。コミュ力などは結構致命的だが。

 そして時間がお昼になれば自分の勉強ノルマも亜耶のノルマも終わるので今日の当番であるしずくがラーメンを作り、それを二人で昼ドラを見ながらいただく。

 

「……この女の人ヒステリックすぎ」

「こういう人って本当にいるんですか?」

「……まずない」

 

 画面上でヒステリックな叫びをあげながら愛人の女性が本妻の女性に刃物を振り回して迫っているシーンが写されていた。神世紀なこのご時世、こんな事はまず無いのだが、この昼ドラが作られたのが西暦の時代という事を考えると、西暦の時代はこういう事が普通にあったんじゃ……と思ってしまう。

 とりあえずラーメンを食べ終えた二人はごちそうさまと手を合わせ、ラーメン鉢を水に浸けてからしずくがメモを片手に買い物に行き、亜耶が掃除を再開する。

 風呂の掃除や自分としずくの部屋の掃除を終わらせると、丁度その時にしずくが帰ってくる。

 

「……国土、手伝って」

「はーい」

 

 両手いっぱいの荷物を持ったしずくから一つ買い物袋を受け取って、涼しい顔をしているしずくとは反対に一生懸命冷蔵庫の前まで買い物袋を運んだ亜耶は、任せれば最後冷蔵庫の中でダンジョンを作り出すしずくの代わりに買ってきた物を冷蔵庫に詰めていく。

 それを終わらせた亜耶にしずくが買い物中に近所のおばちゃんから貰ってきたらしい飴を分けて、後は自由時間だ。

 時刻は午後の二時。ちょっと早い放課後になると、亜耶は遠方から遊びに来た芽吹と会うためにおめかししてから出掛け、しずくは家の中でゲームに励む。

 この間千景に対して大人げなくどや顔でマリカー勝負をした際にぼろっくそにされた事が堪えたので練習中なのだが、カーブする度に体が左右に揺れる彼女が千景の作りだした廃人顔負けの記録を塗り替えれるわけがなく、ぐぬぬと唇を噛むのみ。

 結局今日もイライラする前にそっとマリカーを止め、千景から借りた名作RPGをプレイする。西暦の時代、名作と言われた作品故にストーリーが面白く、このゲームをプレイする事はしずくの楽しみとも言えた。

 戦闘とシナリオを楽しみ、午後の五時。時折休憩を入れながらプレイしていたゲームをセーブして電源を切った辺りで芽吹と遊び倒してきた亜耶が帰宅。

 

「……国土、おかえり」

「ただいまです。あ、これ、芽吹先輩からしずく先輩にって」

 

 亜耶を迎えたしずくが亜耶から手渡されたのは芽吹からのお土産だった。

 一体何が、と思い中を見てみれば丸亀城のプラモデルだった。その箱の上には芽吹からの張り紙まで貼ってあり、しずくもモデラーになりましょう。と書いてあった。

 なりたくないのだが、貰えるものは貰える主義なしずくは少し引き攣った笑顔で亜耶からそれを受け取った。まさか本人が居ないのに亜耶に押し付ける訳にもいかない、というのも理由だ。

 ハゲ丸が帰ってきたらハゲ丸のプラモを作る道具を借りて作ってみようと思い至り、一応部屋にそれを持っていった。

 

 

****

 

 

 暇になったしずくが亜耶と一緒にまたマリカーで体を斜めにしながら家主を待つこと一時間程。勇者部の活動を終わらせたハゲ丸が帰ってきた。その後ろには最近はよく見る顔になった園子と千景が居る。

 

「ただいま~」

「おじゃましま~す」

「お邪魔……します……」

 

 どうやら今日は外での活動は無かったらしく、特に三人とも汚れているという事はない。園子と千景は汚れていたら一旦家に帰ってお風呂に入ってから来るので汚れているという事は無いのだが。

 

「あ、おかえりなさい、藤丸先輩」

「……おか」

「もう二人ともすっかりウチの居候だな。じゃあ俺はすぐに飯作るから、女子組はゆっくりとしていてくれ」

 

 そしてハゲ丸は帰ってすぐに夕飯の支度にかかる。これはいつもの事なので四人も受け入れ、園子は亜耶と一緒にファッション雑誌を開きながらどんな服が欲しいか、どんなアクセサリーが似合うかなど、女子っぽい事を話している。勇者部の中では絶対に聞くことが無いであろう会話だ。

 対してしずくと千景は二人揃ってゲームの協力プレイ、もしくは対戦プレイだ。今日はしずくが持っているガンアクションゲームを二人プレイするらしく、千景の指が恐ろしい速さと正確さでボタンを打ち、そんな千景に何とかしずくも追いつく。

 そんなほんわかする光景を見つつ、ハゲ丸はしずくの買ってきた食材を一瞥して使う食材を選別。それを使って手際よく調理を進める。

 今日の夕飯はいつも通りうどん……ではなく、この冬ピッタリなみんなで食べれて調理も簡単なミルフィーユ鍋だ。

 亜耶に買ってきてもらった大きな白菜を広げ、そこの上に豚肉を乗せ、更にその上から白菜、豚肉と交互に二つの食材を重ねながらある程度の高さになるまでそれを積み上げミルフィーユ状にする。続き、鍋にバターとにんにくを入れて香りが出るまで炒めてからミルフィーユを切り分け、五人用のそこそこ大きい鍋にぎっちぎちになるまでほぼ隙間なくそれを敷く。

 その上から日本酒、水、塩と胡椒、その他薬味等を入れてから鍋の蓋をしてじっくりことこと煮込む。

 

「ズラっち~。お腹空いたよ~」

「もうあと五分くらいだから待ってなって」

 

 園子からの注文を聞き、苦笑しながら言葉を返し、そろそろいいだろうと鍋の蓋を開ければ、そこにはくたくたになるまで煮込まれた白菜に挟まれる火が通った豚肉。更にほんのりバターとにんにくの食欲をそそる匂い。

 その上から更に追いバターをしてミルフィーユ鍋の完成だ。

 その匂いに釣られたのか、いつの間にか食べ盛りな少女達はハゲ丸が鍋を運ぶ前にササっと自分達とハゲ丸の分の皿と箸、それから飲み物にポン酢を用意して席に座っていた。

 

「はい、今冬ピッタリの白菜と豚肉のミルフィーユ鍋だ」

 

 そして出てきた鍋は、とても食欲をそそる匂いを醸し出していた。

 肉よりは野菜が好きな亜耶、野菜よりも肉が好きなしずく。どちらも満足できるように両者半々に使ったミルフィーユ鍋に食べ盛りな少女達は目を輝かせている。ついでに、ハゲ丸がしめに用意した物にも、だ。

 これ以上待たせるわけにもいかないので、既にポン酢が適量入っている小皿を見て苦笑しながら手を合わせ。

 

「そんじゃ、いただきます」

『いただきます!』

 

 後は全員でミルフィーユ鍋を食べるだけ。

 うどんやラーメンが好きとは言えど、美味しい物は美味しい。しずくも亜耶も、そして今日一日学校や勉強で頭を使い疲れた園子と千景も、ミルフィーユ鍋を美味しそうに食べている。

 それを見てそっと亜耶の写真を撮って芽吹に送り付け、飯テロふざけるなありがとうございますという芽吹の怒りながら感謝する言葉を受け取ってからハゲ丸もミルフィーユ鍋を食べる。

 味の調整も何度か親が家にいる間にトライして確認してもらったので問題なし。白菜と豚肉もいい感じに火が通ってポン酢の酸味がそれらの味を引き立ててくれる。ミルフィーユ鍋は大成功だった。

 暫くして五人でミルフィーユ鍋を食べ終えるが、ここで全員がある言葉を思い浮かべる。

 少し物足りない。

 そこでハゲ丸はすぐに予め用意しておいた鶏がらスープの素と塩コショウを使いミルフィーユ鍋の汁の味をササっと整えてから、そこにしめを投入した。

 四国県民が愛してやまないうどんを。

 

「ってな訳でしめはうどんだ。こいつを煮込んでしっかりと食べれるくらいまで火が通ったら、それをよそって、その上からこのバターとねぎをかけてやれば、塩ラーメン風のうどんだ。これなら山伏さんも満足できると思うぞ?」

 

 そう、こんな鍋を作っておきながらしめを用意しておかないわけがない。うどんに合うように調整しないわけがない。

 ちゃっかりと鍋を食べながらもうどんを食べるという影の目標を達成したハゲ丸は塩ラーメン風うどんを全員分作り、後はしめのうどんをゆっくりと味わう。

 気が付けばうどんは姿を消し、汁も一緒に飲んでしまった。少しばかり体重を気にしている千景がやっちまったと言わんばかりに視線を逸らしていたが、園子が大丈夫大丈夫、と肩を叩いて励ましていた。

 

「そんじゃ、しめも食った所で食後のデザート、プリン・ア・ラ・モードだ。今日は鍋だったし量は少なめにしてみた」

 

 そして後はパティシエの本領発揮の時間。

 鍋と小皿の代わりにやってきたのは透明な専用の容器に盛り付けられた美味しそうな手作りプリンと、それを彩る白くて甘い生クリームに可愛らしくプリンの上に乗るさくらんぼ。そしてカットされたバナナとオレンジ、メロンがプリンを引きたてつつもその自己主張を止めない。

 ミルフィーユ鍋を食べた後なのであまり量はないが、それでもお洒落なそのプリンと仲間たちは年頃の女の子の心を掴んで離さず、お腹いっぱいと言っていたはずの少女達は自然とスプーンを手に取り、プリンを口に運んでいた。

 そして自分の分のプリン・ア・ラ・モードと亜耶の思わずと言った感じの笑顔の写真を芽吹に送れば、電話がかかってきた。ちょっと自室に入って電話に出てみると。

 

『何よあの美味しそうな鍋とプリンは!! こっちはパ……じゃなくてお父さんとお母さんが仕事で居ないから家でカップ麺なのよ!!? ひもじくなるし食べたくなるじゃない!!』

「ははは。悔しかったらこっち来い。来たらプリン・ア・ラ・モードだろうがパフェだろうが作ってやるよ」

『言ったわね? 言っちゃったわね!? だったら雀と弥勒さんを連れて今度突撃するわよ!?』

「別にいいって。パティシエの修行にもなるしな。是非とも味見と感想をお願いするよ」

『マジで善意だけで言っているだけあって煽りきれない……! あ、あと亜耶ちゃんの写真、ありがとう。また亜耶ちゃんアルバムが厚くなるわ』

「なんかお前もクソレズっぽくなってきたなぁ……」

 

 どうしてか某青い無鉄砲と同じ臭いを芽吹から感じ始めているが、まだ亜耶に実害が行っていないのでハゲ丸は何も言わずに電話を切った。

 そして居間に戻って自分の分のプリン・ア・ラ・モードを食べたハゲ丸は女子陣が食べ終えた器を回収し、そのまま皿洗いに移行する。亜耶が代ろうとしてきたが、大丈夫大丈夫と言ってそっと亜耶を女子陣の中に返した。

 そうして戻ってきた亜耶をしずくが迎え入れ、ソファに園子、亜耶、しずくの順で座り、千景が園子の膝の上に座って四人でバラエティ番組を見始める。

 

「確かこれって西暦の番組の再放送だよね~?」

「うん……無人島、生活……」

 

 丁度やっていたのはかつて西暦の時代にやっていた番組の再放送であり、テレビの中では男性二人が無人島でサバイバル生活をしている様子が写されていた。

 家らしきものを作り、魚を銛で突いては獲ったどーと叫び、そして料理はしっかりといただく。そんな様子をボーっと四人で見ながらしずくはラーメンさえあれば無人島でも生きていける、なんて変な確信をしていた。

 そんな少女達を後ろからハゲ丸がコーヒー片手に眺めつつ、自分も番組を見る。塩と水さえあれば勇者部全員いればやれるな、なんて変な確信を抱きながら。

 そして時刻もいい感じに遅くなり、そろそろ良い子は寝る支度を済ませる時間だ。

 

「園子、ちーちゃん。そろそろいい時間だけどどうすんだ? 明日休みだし、泊まるなら泊まるで客室を解放しておくけど」

 

 そしてハゲ丸がそんな事を聞いた。

 年頃の少女が同い年の少年の部屋で泊まる、となると少しばかり邪な雰囲気でも生まれそうなものだが、生憎とハゲ丸は泊まりに来た友達に手を出せるほどハートが強くないし、園子も千景もハゲ丸の事は信じているので特に何かが起こるわけはない。

 それに、園子と千景は既に一度、藤丸家に泊まった事がある。調子に乗って藤丸家に居続けた結果、帰るには遅すぎる上に冷えすぎている時間になってしまい、どうしようかとなった時にじゃあ泊まればいいやとなって泊った事が。

 なので藤丸家に泊まる事に特に抵抗はないため。

 

「あ~……じゃあ泊まろっかなぁ。帰るのめんどくさくなっちゃった~……」

「……私、も」

 

 結果的にこうなる。

 お客さん用の部屋が一つあるのでそれを使えば部屋の方は問題無し。

 次いで問題は。

 

「ういうい。着替えは?」

 

 着替えとなるのだが。

 

「あ、この間来た時に一式置いていったんだ~」

「客室に……おいて、あるわ」

「マジか。気づかなかった」

 

 実は泊まった後にもう一回藤丸家に来た後、また泊まる事があってもいいように着替え一式を置いてあるので問題はなかった。ハゲ丸が一応客室に確認しに行くと、確かに二人の服が入っているらしいトートバッグが置いてあった。

 

「そんじゃ、俺は風呂掃除を……」

「あ、お昼前にしておきましたよ」

「お、マジか。助かるわ、亜耶ちゃん後輩」

 

 えへへ、と笑う亜耶にまたハゲ丸が浄化されかけたが、なんとか気合で現世に残った。

 

「じゃあ風呂沸かしてくるから、沸いたら順番に入ってくれ。俺は最後に入るから」

「家主が最初じゃないの~?」

「野郎の入った風呂に入りたいか?」

「……ズラっちは一番最後にお願いね~」

「はいはい」

 

 まぁそうなると美少女四人が入った後の風呂に入るという事になるのだが、そこは役得という事で。きっと誰かに聞かれれば抹殺案件なのでこの事は墓まで持っていく事間違いなし。

 一番風呂は客人という事で園子が貰った。バスタオルや着替えをしっかりと持って行ってラッキースケベの確率をゼロに抑える辺り、流石園子だ。

 そして暫くの間暇な時間が生まれたので、しずくは予め着替えやら何やらを取り出しに自室へと向かった。しずくが立ったことで一人分余裕ができたソファにはハゲ丸が座り、コーヒー片手に亜耶と千景と共に暫し番組を見ていると、しずくが戻ってきた。

 さて退くか、と立ち上がろうとしたハゲ丸だったが、その前に千景がしずくに席を譲り、そして千景はそのままハゲ丸の前まで移動してくると、そのままハゲ丸の膝の上に座った。

 

「……人肌がある、ほうが……おちつく……」

 

 ハゲ丸は己の心臓が萌えと尊さによって停止した錯覚に陥り、鼻から熱い物が出てきかけた。

 兄と呼ばれている以上は変な気を千景に抱くことはないが、それでも妹代わりのような千景にこうされてしまっては流石のハゲ丸も、一瞬青色暴走弾と後輩命防人の二人の気持ちが分かったような気がしてしまった。

 守護らねば。そんな言葉がハゲ丸の頭を過ったのだった。

 ハゲ丸にも愛されていると知っているからこそ。兄として愛してくれているから妹として愛したいという感情を抱いた千景が特に何の気もなく行った行為だったが、どうやらハゲ丸にとってはこうかばつぐんもばつぐんだったらしい。

 

「千景ちゃんって甘えん坊さんなんですね」

「……そう、かも」

 

 そして天使同士の会話に再びハゲ丸は心臓が停止してそのまま天に召される錯覚を覚えた。これを相手に平常心で居ろという方が無理だ。きっと園子も同じような錯覚を覚える事だろう。

 

「……藤にぃ。後で、ゲーム……しない?」

「おういいぞ。全然やってやるさ。当然やってやるさ」

 

 もう死んでもいいかもなんて思いながら千景を膝の上に乗せてこの世に産まれてきた事を神樹様に感謝していると、丁度園子が風呂から出てきた。

 

「出たよ~。次入って~」

「……じゃあわたしが」

 

 そして園子とは入れ違いにしずくが風呂へと向かい、まだ髪も少ししっとりとしてヤケに色っぽいパジャマ姿の園子がしずくの座っていた所に座った。

 

「あれ、ちーちゃんがズラっちの膝の上に乗ってる~」

「……おちつく、から」

 

 千景は頬を染めながらそう呟いた瞬間、園子が胸を抑えた。

 

「や、ヤバいよ……破壊力がヤバいよ……」

「同感だ。もしやこれは神樹様崇拝の代わりになるのでは……?」

「神樹様崇拝じゃなくてちーちゃん崇拝……もしかしたら神樹様崇拝よりも効果的かも……」

「ない、と……思う……」

「あはは……」

 

 園子とハゲ丸のふざけあいに千景が冷静にツッコミを入れ、元神樹様の巫女であった亜耶が苦笑する。消えてしまったとは言っても神樹様崇拝はまだまだ続いている。むしろ更に強まったといってもいいのでどちらを崇拝した方が効果的なのか。それは当人たちにも分からない。

 気が付けば無人島生活バラエティは最終日を迎え、無人島生活をしていた二人組は最後らへんで小麦粉を丸めた物をちねって米を作っていたが、アレは何だったんだろうかとハゲ丸は冷静に思いつつ、コーヒーを飲み干した。

 そして後はハゲ丸と千景がゲームをはじめ、それを園子と亜耶が観戦。そして風呂から出てきたしずくが亜耶と入れ替わり、ハゲ丸が休憩と称して時折しずくにコントローラーを渡し、時折四人で対戦をする。

 亜耶が風呂から出てきたら、千景の番だ。千景がハゲ丸の膝の上から降り、風呂へと向かっていき、ゲームに火が付いたハゲ丸としずくが本気の対戦を行い、園子と亜耶は少しばかりお眠なのか舟を漕いでいる。

 

「波動拳!」

「そにっくぶー」

「かかったな! 竜巻旋風……」

「さまーそっ」

「あばっ!?」

 

 ハゲ丸リュウが思いっきりしずくガイルにボコられているのだが、本人たちが楽しそうなので特に外野である園子と亜耶は口を挟まなかった。

 そして暫くすると、千景が風呂から出てきた。

 

「藤にぃ……最後……」

「おっ、分かった。じゃあこっから山伏さんをボコってくれ」

「わかった、わ……」

「それ、反則……!」

 

 そしてハゲ丸と千景がチェンジした瞬間、千景リュウがしずくガイルを蹂躙し始めたのを尻目にハゲ丸は風呂に入った。

 ゆっくりと湯船に浸かり、最近になって騒がしくも楽しくなった毎日の疲れを癒してからササっと風呂から出てドライヤーを意味もなく動かして髪の毛を乾かしている風に装ってから一度も濡れていないズラを被り、また居間へ戻ると。

 

「四国の上位ランカーも……大したこと、ない」

 

 千景がCシャドウ名義でオンラインに潜り、上位ランカーに対して完勝を決め込んでいた。流石の腕に思わずしずくが目を見開き、ハゲ丸もマジか、と小さく呟いていた。

 前々から感じていたゲームの腕の差を改めて実感しつつ、ふと園子と亜耶のゆるふわコンビの方を見ると、二人は椅子に座った状態で互いの肩を支えに夢の世界へと旅立っていた。どうやら寝るのが趣味な園子といい子の模範みたいな亜耶は襲ってくる眠気に耐えられなかったらしい。

 

「全く……二人とも、ここで寝てると風邪ひくぞ。自分のベッドで寝てこい」

『ふぁい……』

 

 肩を揺すりながらそう言えば、二人は返事をしてふらつきながら客室へとふらふら歩いていった。

 あれ、そっちでいいの? とハゲ丸がツッコミを入れる間もなく客室へ入っていった二人。思わずそっと客室の中を覗くと、亜耶は園子に抱き枕にされた状態でベッドに入って寝ていた。おっ、天使かな? と呟いたハゲ丸はパシャっと写真を一枚撮って芽吹へと送信。帰ってきた返信は尊すぎて死ぬ、だった。

 こいつも要注意人物行きかなぁ、と頭の中で芽吹をやべーやつの位に昇格させたのち、居間に戻った。

 

「さて、あの金色コンビが寝ちまったから俺等ではしゃぐとしますかね」

「夜通し……ゲーム」

「眠くなるまでやるぞ。俺は園子程いい子じゃないしな」

「……藤丸もそこそこ夜更かししてるし」

「特撮見てると時間忘れてなぁ」

 

 そんなワケで後はハゲ丸、しずく、千景の三人で格闘ゲームをしたりパーティーゲームをしたり、PvEゲームで協力プレイをしたり。気が付けば日付変更から数時間という時間までゲームをプレイし続けたのだった。

 

 

****

 

 

 亜耶が園子と寝てしまったため、千景は亜耶の部屋で寝る事となり、しずくとハゲ丸はいつも通り自分の部屋で寝る事となった。

 寝る前にしずくがプラモを作るための道具を借りに来たが、特筆すべきはその程度で電気を消して暫く。そろそろ意識を失いそうな心地よい眠気に襲われたハゲ丸は朝、起こされた時用に頭に固定しているズラが今もあることを確認してから改めて寝ようとした。

 が、丁度その時。控えめにドアがノックされた。これはしずくではない。亜耶もこんな時間に起きてくるとは思えない。じゃあ誰だ? と思いつつもとりあえずは客人を迎え入れることにした。

 

「入っていいぞ」

 

 ハゲ丸の声に従って入ってきたのは、しずくでも亜耶でも園子でもなく、なんと千景だった。

 

「ちーちゃん? どうした、なんかあったか?」

 

 どうして千景が来るのかは不明だが、もしかしたら遊び足りなかったのか。それならそれで別に千景が寝るまで徹夜してでも付き合うのだが、少しばかり千景の様子が変だ。

 何か恥ずかしがっているというべきか。何か言おうとしては口を閉ざしてを繰り返している。

 それを十数秒ほど繰り返して、ようやく千景は口を開いた。

 

「そ、その……一緒に、寝て……ほしくて……」

 

 小さな声だったが、それは千景の我儘だった。

 思わず少しばかり呆然としてしまったが、なんだ、そんな事かとハゲ丸は呟いてからベッドの端の方へと体を寄せた。

 

「それぐらい別にいいよ。ほら、入ってきな」

「……ありがと」

 

 なんだか今日の千景は甘えたがりだ。いつもは学校でも夕飯を食べに来た時でもここまで引っ付くことはそうそうない。一緒に皿洗いをしたりゲームをしたり。家族のような距離感で接していたが、ここまで距離が近いのは初めてだ。

 千景をベッドの中に迎え入れ、とりあえずどうすべきかと思っていると、千景が自らハゲ丸の胸元に近寄ってきた。

 

「……その、一人だと……夢見が、悪くて」

「夢見が?」

「西暦の……昔の、夢ばかり……見るから……」

 

 その言葉を聞いて少しばかりハゲ丸の顔が引き攣った。

 昔の夢。千景が村八分にされ苛められていた時の夢。それを千景は一人で寝ると、いつも夢に見ていた。

 何もこんな幸福を手に入れた自分を責めているからではない。最早トラウマというレベルにまで染み付いてしまったその苛めが、幸福を手に入れ家族を手に入れ、愛を知り受け入れた千景を未だに苦しめているからだ。

 

「でも……園ねぇと一緒に、寝ると……見ない、から」

 

 それを園子に相談したら、園子は千景に一緒に寝る事を提案した。そうして一緒に園子と寝ると、千景は悪夢を見る事無く、園子や勇者部のみんなと遊んだりゲームをしたり、そんな幸せで楽しい夢を見るようにあった。

 それ以来、千景はずっと園子と一緒に寝ている。だから今日もと思ったのだが、まさかの園子と亜耶が一緒に寝ぼけて寝てしまうという何とも可愛らしいハプニングが起こってしまった故に、千景はこうしてハゲ丸の元へと来た。

 

「……そうか。なら、一緒に寝るか」

「……うん」

 

 ハゲ丸はそれ以上を聞かなかった。聞く必要もなかった。

 

「それに……お父さんと、こうやって……寝ることも、なかったから……藤にぃと、一緒に寝れて……嬉しい」

「お父さんじゃなくて兄貴としてだけどな」

 

 呟く千景をベッドの中でそっと抱き寄せ、背中を鼓動のリズムで軽く叩きながら目を閉じた。それから暫くして少しだけ目を開けて千景の顔を見てみると、千景は穏やかな表情で目を閉じて寝息を立てていた。

 どうやら悪夢を見る事無く、穏やかに眠っているらしい。それを見てハゲ丸は一息ついて安心した。

 

「……おやすみ、ちーちゃん。いい夢見ろよ」

 

 既に寝ている千景にその言葉を囁き、改めてハゲ丸も眠りについた。

 願わくば彼女のこれからの人生に、多大なる幸があらんことを願って。




なおこの翌日、芽吹、雀、夕海子の三人が藤丸家に襲撃しハゲ丸の作ったスイーツを堪能しつくしたとか。

と、いう訳で序盤はお留守番しているしずく、亜耶のくめゆ組の話。そして中盤以降はハゲ丸、園子、千景も参加してとある一日の風景をお送りしました。なんだかこいつ等友達間でやる事の範疇超えているような……

そしてやっぱりメインで書いちゃうロリぐんちゃん。そんなロリぐんちゃんのデレと妹としての甘え。親父があれですし、きっと親と寝た事なんて物心ついた時にはもうなかったんじゃないかなって。そんな感じで本来親に、そして兄弟に向ける我儘の感情をハゲ丸に向けたぐんちゃんでした。

多分この状態のぐんちゃんをのわゆにぶち込むだけでも大分違うよなぁって。コミュ障で愛されて存在を認められるために戦う原作ぐんちゃんじゃなくて、そこそこコミュ力があって、愛を知っているから友愛を確かに誰かのために戦えるぐんちゃんとじゃ。

と、こんな風にハゲ丸に対してもかなり距離が近いぐんちゃんですが、フラグが建つことは無いのでご安心を。ぐんちゃんにあるのは父や兄に向けるような家族愛なので。あくまでも兄として見ている感じですな。

まだ日常編は続きますぞ。少なくともタグが郡千景(汚染完了)になるまでは日常編が続きます。
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