遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』   作:femania

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注意事項

・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。

これでOKという人はお楽しみください!

話がイベント戦どころじゃなくなってしまいました。
イベント戦はで彩ちゃんと松がエンジョイしまくっているので
その話は12話終了後、番外編で書いてみたいと思います。
とりあえず、本編を進めましょう。


9話 誇り高き王者

【17】

 

イベント戦はもうすぐ終了する。

 

残念ながら遊介はこのイベントを楽しめたとは全く言えない状況だった。

 

初戦から見事に攻撃を仕掛けられ、挙句の果てに瑠璃を誘拐された。

 

しかし、その後は瑠璃の心配をしている暇がなかった。

 

なぜか次々と天使に狙われ、遊介とチームメイトは何人か倒しながら、光の世界からの脱出をするしかなかったのだ。瑠璃のことが気が気でないユートのことを思う遊介は気が重かったが、天使は放っておくと容赦なく数人ががかりでデュエルを仕掛けてくる。

 

「遊介! 限界!」

 

ブルームガールの悲鳴とマイケルのウインクをみた遊介は、

 

「隣のエリアに逃げるぞ!」

 

とチームメイトに指示を出し、Dボードで必死の逃走を行った。

 

それでも天使に追いつかれたり、先回りされたりは珍しくない。その天使をデュエルて倒し続ける。

 

結局光の世界と炎の世界との境界まで戦い続け、夜の19時まで予定されていたイベント戦は、その予定通り終了間際になってしまった。

 

それほどの時間を経てようやく光の世界の出口に迫った。

 

しかし、体力も精神力もともに尽きかけている中で、残り十人と相対する事態になり、

 

「もうやだー……」

 

とブルームガールが悲鳴をあげた。

 

「ブルームガール。これが終われば一息つける」

 

「そうは言っても……」

 

天使は1人1人がなかなかの腕を持っていて、1体1でも簡単に勝てるような相手ではない。

 

「10人相手とか……それに……」

 

既に賽は投げられた。天使が全員先攻を取り、攻撃力2400を超えるモンスターを並んでいる。

 

「あんなのどうすればいいの……」

 

3時間ほどたち、ようやく冷静になったユートは、

 

「……あれを使うしかないか……」

 

と追い詰められた時の策を解放しようとしている。

 

遊介も、何とかこの場を気にるける1手を考えるが。

 

(2、3人なら何とかなりそうだけど……)

 

それ以上戦闘を続ければ犠牲者が出ることは間違いないと予測している。

 

ハルトにさらわれた瑠璃、そして柚子という少女を助けるためにも、体勢を立て直しもう一度この世界に来るためには、まずはこの場を生き残らなければならない。

 

全員の生存逃亡はとんでもなく低い可能性であることに間違いはないが、迷っている場合ではないのだ。

 

「おいおいぃ! 何弱気になってんだお前ら!」

 

この場で強気なのはマイケルのみ。

 

「マイケル……」

 

「遊介、男たるもの、常に堂々と、そして優雅にだ」

 

「ここでジョークとは……元気だな」

 

「じょ、ジョークじゃねえよ」

 

「優雅……」

 

「ジョークじゃねえっての!」

 

遊介は自分が囮になることも考えた。しかし、自分がまければ結局全員の命を奪っていく結果につながる。囮には一番適さない。しかし、誰かに囮を命じるほど非情な選択も取れなかった。

 

「遊介……、私……が」

 

「ダメです」

 

「でも、それ以外にどうやって……」

 

「それは……」

 

答えられない未熟なリーダーにため息をつくと、

 

「じゃあ、後はよろしく。絶対瑠璃を助けてきなさい」

 

「ダメだって……」

 

「馬鹿ね。こういう時は、より生き残りやすい方をとるの!」

 

と檄を飛ばし、天使の軍団に突っ込もうとする。

 

「待って!」

 

遊介の言葉に耳も貸さずに、ブルームガールは最後の花を咲かせようとディスクを構えた。

 

(誰か……神様……仏様……助けてくれ……)

 

遊介は普段絶対に思わないようなことを心で念じたのだった。

 

祈りは。

 

――届いた。

 

白のDボードに乗った金髪の男が炎の世界の方面からやってきたのだ。

 

「フン……4対10か……。仕方あるまい。俺が手を貸してやろう」

 

歳は遊介と同じくらい。身長も同じくらいの英国風の少年。腕にはユートや瑠璃と違う、遊介が見たことのないディスクをつけている。

 

「構わないな?」

 

遊介に問う男。

 

「うん……」

 

と、あまりに急な来客で驚き、つい自然に頷いてしまう遊介。

 

それを見て不敵な笑いを浮かべたその少年は、天使たちに向かって宣言する。

 

「これより先は、この俺が拠点とするフィールドだ。キングは挑戦者は拒まない。だが、侵略者を通す義理はない。警告する。これ以上行こうというのならこの俺が相手になるぞ!」

 

その警告を聞いても、撤退の意思を見せない天使たちにキングは叫ぶ。

 

「ならば……そこで燃え尽きるがいい!」

 

キングを自称するその少年は、デッキからカードを4枚引き抜く。

 

「俺のターン! 相手フィールドにのみモンスターが存在するとき、バイスドラゴンは特殊召喚できる。ただし、この効果で特殊召喚したこのカードの攻守は半減する!」

 

緑の翼膜を持った竜が最初に現れた。

 

バイス・ドラゴン レベル5 攻撃表示

ATK2000/DEF2400

 

バイス・ドラゴン ATK2000→1000

 

「チューナーモンスター。ダークリゾネーターを召喚!」

 

遊介は次に現れた悪魔が持っていた物が何か分からなかった。

 

ダーク・リゾネーター レベル3 攻撃表示

ATK1300/DEF300

 

そして、その少年は言った。遊介がこの世界に来て初めて見る召喚法。

 

謎の器具を持った悪魔が3つの光の玉に変わり、そして緑の3つの円に変換される。その縁の中心にバイス・ドラゴンが通っていく。そして、バイス・ドラゴンもまた白の星に変わり、列をなした。

 

「王者の鼓動。今ここに列をなす。唯一無二なる覇者の力。その身に刻め! シンクロ召喚!」

 

そして、円の中心を光が貫いた。

 

「現れよ、かの王の魂を受け継ぐ竜! レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!」

 

光の中より現れたのは伝説の竜。紅蓮の悪魔を連想させる竜が現れた。

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃表示

ATK3000/DEF2500

 

(あれは……)

 

遊介はその竜を間近で初めて見た。

 

(すげえ……)

 

それ以外の言葉が出ない。

 

「レッドデーモンズドラゴン。焼き尽くせ!」

 

腕の禍々しい闇が封じられている腕から炎を撃ちだす。炎は広がり、天使が召喚した従僕たち全てを焼き尽くした。

 

そして天使たちのLPをすべて奪ったのだ。

 

その姿は正に圧巻の一言で表すにふさわしい。

 

王者という自称も頷ける。

 

「ええ……」

 

遊介は自分達があんなにもてこずった天使たちを一瞬で滅ぼした王者の姿をただ見るしかなかった。

 

「お前」

 

「は……はい?」

 

「炎の世界に来るのか?」

 

「あ、できれば逃がしていただきたく……」

 

遊介は自分がなぜか敬語になっていることに気づいていない。

 

「そうか……。では来るがいい。貴様らを王の戦いの場へ招待してやろう。ついて来い」

 

颯爽と去っていく王者。

 

その後ろ姿を五秒間。誰も何も言えなかった。

 

「何をしている。ついて来いを言っただろう?」

 

「は……はい……」

 

そしてそのまま去っていく白の外套を、なんとなくその背中について行った。

 

【18】

 

次元戦争。シンクロ世界でもその被害は凄まじかった。

 

シンクロ世界は競争社会。明日を生きること厳しい貧民と財を捨てるように使い贅沢を極める上流階級の対立が常に続く社会戦争の世界。

 

貧民は生きてそして勝ち組になるためにはデュエルしかない。貧民はプロデュエリストになり上流社会に認められて初めて社会に対する影響を持つ。

 

上流階級に認められたデュエリスト、そしてそのデュエリストを支える者については、絶対的て不可侵な社会権限をもつ事を認められている。その理由はかつて起こった戦いが理由になっていた。

 

不動遊星、ジャック・アトラス、クロウ・ホーガン、十六夜アキ、龍亞、龍可の双子。この6人を中心に、シティとサテライトが手を取り合い人々を救った戦いがあった。ダークシグナーとの戦いはシンクロ世界では知らぬ人間はいないほどの伝説として語り継がれている。

 

その時代より200年が経過した。英雄たちが願ったすべての人間が手を取り合う世界はついに訪れなかった。しかし、英雄に倣い、下から這い上がってくる者にチャンスを、そして成果を残した者には、正しい評価を。サテライト出身の英雄、不動遊星の生き様に敬意を表し、シンクロ世界ではそれが絶対正義となっていた。

 

しかし、新たな敵はそんな折に現れる。

 

白スーツの軍団。イリアステルを名乗る人間が、シンクロ世界に降り立ち破壊活動を始めたのだ。伝説の赤き竜はその危機に再び姿を現し、運命的に己の力を宿す竜のカードを持つ6人に世界を守る使命を与えたのだ。

 

その6人はこれもまた運命なのか、不思議な魅力を持つ人々だった。

 

『スターダスト』を持つ者はシティ最高の科学者の見習いで、一度彼と話すと彼の性格や言動に心を掴まれ、自然と協力したくなるような人格者の卵だった。

 

『レッドデーモンズ』を持つ者は、かのキング、ジャックアトラスの再来と呼ばれた天才デュエリストだった。

 

『ブラックフェザー』を持つ者もプロデュエリストであり、稼ぎを恵まれない子供たちに稼ぎの半分を寄付する、黒の英雄だった。

 

『ブラックローズ』持つ者は、医者を目指す少女。近年増えているサイコデュエリストの被害者を救うために勉強をしながらも、裏デュエル上でお金を稼ぐ魔女の一面を持つ者だった。

 

『エンシェントフェアリー』『ライフストリーム』持つ者は、上流階級の世界に住む双子の姉と弟が持っている。

 

6人は赤き竜の導きによって、運命的な出会いを果たし、やがてイリアステルとの戦いの中心人物として英雄的行動で人々を導きながら、懸命に戦った。その姿はかつてのシグナ―達を思わせるものだったという

 

――しかし。

 

イリアステルはダークシグナーとは比にならないほどの力をもった組織だった。

 

シティは壊滅。シンクロ世界のほとんどは廃墟と化し、世界人口は8割減。そして、赤き竜の使者たる、この時代の新たなシグナ―達も苦戦を強いられ、ついに敗れてしまった。敗れたシグナ―たちの命を救うため、力を使い果たした竜たち。赤き竜は彼らに新たな力を与え、蘇ったシグナ―を守るように祈りを込めた。

 

『スターダスト・ドラゴン・ラストヴェイン』『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』『ブラックフェザー・ドラゴン・アサルト』『ブラックローズ・ドラゴン・ティーラリア』『エンシェント・フェアリー・ドラゴン・シャーレイ』『ライフ・ストリーム・ドラゴン・フレア』

 

新たな生命を注がれた竜は、各シグナ―の守護者として、シグナ―たちの戦いを支えた。

 

イェーガー統括シティ長官の尽力、氷室、牛尾、ユーゴ等有名なプロを筆頭としたレジスタンス活動、そして蘇ったシグナ―の尽力をもって、ようやく大局的な勝利を収めたのだった。

 

「いやあ、強いなぁ。楽しいなぁ。やっぱりイリアステルだけで腕を競うよりも質の高いデュエルができる」

 

アルターを名乗るその男だけは、誰が戦っても勝つことはできなかったが、破壊活動に満足したアルターがその世界を去って、戦争は終了したのだ。

 

 

【19】

 

 

炎の世界。『煉獄の聖域ムスペル』

 

その世界は一つの大きな火山の中に全てだ。緑はなく、黒に近い岩の大地で成り立っている。

 

まずは溶岩が普通に流れる山肌に存在する主街区『ダレイ・ブラーグ』。設定では、ここは岩石を、特に宝石と呼ばれるものを外部に出荷し、他のエリアから多くの生活必需品を輸入することで生活が保たれている。気温は50度を上回ることは日常茶飯事で、これから身を護るために、耐火性能の高い岩盤でできた家に住み、水属性のモンスターを使役して生活環境の気温低下をすることでようやく、猛暑日程度の熱さになる。

 

そして、火山の中に入ると、このエリアのボスが存在する炎の大神殿につながっている。しかし、火山はよく噴火するため、噴火しない7日に1度程度しか、挑戦するチャンスはない。

そしてこの世界にはもう1つ、主街区からつながっている、謎の浮島の道が目玉としてある。それも岩でできているもののなぜ浮かんでいるのかが不明であり、まるでバイクのコースのように細長い形になっていて、陸上や競馬、競輪の競技場でよく見る道になっている。

 

そのような浮島が5つほど、ぷかぷか浮かんでいるのだ。

 

「自己紹介がまだだったな。俺はジャック。ジャック・アーロン。本名はまた別だが、人々にこの誉れ高き名を最初におくことを許されている。お前らもその名で覚えてくれ」

 

遊介は目の前の人間がジャックと自己紹介しても違和感がある。遊介の中でジャックとは、傲慢の象徴であり、白とシルバーの服を着た金髪で背の高い男というイメージが離れない。

 

目の前の少年は服装とこそ似ているものの、髪型も違う、背は遊介と同じ程度しかない。とてもキングには見えない存在だった。

 

しかし、レッドデーモンズという名のモンスターを使役していることが、王者の証拠であると遊介は考えた。ユートが別の世界から来たならば、この男もまた別の世界から来たのだと自分で納得する。

 

「俺はこの世界に、アルターという男にリベンジするために来た。キングとして受けた屈辱を払うために。そしてついでに俺の故郷を救うために」

 

「故郷……」

 

「お前の噂は聞いている、ユート、エクシーズ召喚とやらを使う凄腕デュエリストだと聞いているが」

 

「あなたのことも知っている。ユーゴが教えてくれた。あなたのこと、そしてシンクロ世界のことも」

 

「ほう、あいつが。俺も何度か戦ったことがある。勝ちを譲ったことこそないが、奴もなかなか面白いデュエルを毎回見せてくれる。俺が戦っていて飽きない奴は珍しい」

 

溶岩の高熱による高温にくたくたになりながら、遊介たちはアーロンについて行く。は天高くに浮かぶ島を指さした。

 

「俺は5つある浮島のデュエルサーキットの中でも最も高いところに君臨している」

 

「君臨しているって……」

 

「俺のテリトリーだ。普段はあの街に厄介になっているが、その代わり、悪しきデュエリストから街の原住民を守っている。ついでにエンターテイメントを含めて、頂上のサーキットはあるときは敵の処刑台であり、ある時は人々を楽しませる娯楽となる」

 

既に主街区を我が物顔で歩くキング。しかし、道中すれ違う人間はアーロンのことを好意的に見ている人間が多かった。

 

主街区の大通りで、

 

「なんか買っていけ。俺が顔を出せば多少は飯と飲み物くらいならタダで譲ってくれるだろう」

 

と粋な計らいを提案された遊介は、実際に数少ない屋台の串焼き屋を訪れる。アーロンが客人だと言うと、彼の言う通り、タダで串焼き2本が譲渡された。

 

(キングすげー)

 

と、肉をかじりながら、目の前の男が本物であることを実感した。

 

「19時か……。結果は見なくていいのか?」

 

アーロンの問いかけに、遊介は首を傾げる。

 

「あ……!」

 

ブルームガールは慌ててデュエルディスクを見た。

 

そこに『第2回イベント戦結果発表!』と大きく書かれた画面が出たことで遊介も思い出す。

 

遊介とマイケルはブルームガールが開いた画面をのぞき込む。

 

チーム戦 第5位までのチームに所属しているプレイヤーがLP4000分回復します。

 

1位  チーム『エデン』       所属1515名 リーダーネーム リボルバー  3200ポイント

2位  チーム『解放軍』       所属1324名 リーダーネーム リョウちゃん 1800ポイント

3位  チーム『サティスファクション』所属6名   リーダーネーム 不動星也   720ポイント

4位  チーム『players』       所属6名   リーダーネーム 遊介     230ポイント

5位  チーム『海堂コーポレーション』所属250名  リーダーネーム 海堂セイト  180ポイント

 

「おお……!」

 

遊介はすぐに自分のライフを確認する。

 

既に4000は支給され、残り保有LPが8000になっていた。

 

「遊介、俺ら天使30人くらいしか倒してないよな……?」

 

つまり点数の大部分をヴィクターが稼いでくれていたのだ。

 

(これは……今度このネタで脅迫しに来るな……)

 

嫌な予感と一緒に、遊介はヴィクターに感謝した。

 

一方、

 

「星也……、お前、俺を除け者にしたな……。この世界に来てから顔を出さないと思えば……」

 

と、アーロンは不機嫌そうに結果発表の画面を見ていた。

 

「やったね……なんて言っている場合じゃないけど……」

 

ブルームガールが呟く。それに反応したのはキングだった。

 

「何を言う。大いに喜ばしいだろう?」

 

「でも私たち、仲間を」

 

「だとしてもだ。喜ぶべきことを喜び、悲しいことには悲しむ。だが、感情をいちいち別のところに引っ張っていては、精神が疲弊する」

 

と、妙に説得力のある言い方を遊介に見せるように行った。

 

ちなみに、遊介にはさらに胃が痛くなる広告をアルターは最後につけ足していた。

 

『仲間を攫われた? 4位のリーダー遊介君がそんな危機的状況だ。さあテレビをご覧の諸君。相手は、ボス……と呼べばいいのかどうかは分からんが、個人戦1位の天城ハルト。この世紀の1戦、見逃す手はないぜ! そこで私アルターが、常々この世界で退屈しているデュエリストを楽しませるためのリンクブレインズの公式放送デュエルの第1回として、そのデュエルを中継するぞ! 遊介君は囚われの姫を助けられるのか。……もしかすると遊介君じゃないかもしれないけど! そうなったら許してほしい。放送日時はまだ未定。だが、常に注意して待ってろよ、アディオス!』

 

(ふざけるなよ……!)

 

遊介の腹は溶岩に負けないくらいぐつぐつと煮えたぎっていた。

 

主街区をそんなこんなで貫通した遊介たちの前に現れたのは、数台のバイク。

 

(まさか……)

 

「Dホイールだ。乗れるか?」

 

本物を初めて見て気持ちが昂る遊介。

 

しかし遊介とブルームガールはすぐに首を振る。学校の方針で免許の取得は特例を除いて禁止されていたため二輪免許を持っているはずもない。

 

「ならばお前たちはDボードでついて来い」

 

「俺は乗れるぜ?」

 

「マイケルだったか。なら、サーキットにつくまでの間、暇つぶしに付き合え。いささか街からでは遠いのでな」

 

王者はまたも勝手に提案をするが、

 

「いいぜぇ。つきあってやる」

 

マイケルはその暇つぶしを受けて立った。

 

「どうするんだ?」

 

「ライディングデュエル。知っているか?」

 

「ああ……なるほど。いいぜ俺はできる」

 

マイケルは堂々と言い切った。ライディングデュエルなどできるのかとツッコミを入れようとした時に、遊介は気づく。

 

残念ながらごつごつした岩場と多くのところで溶岩が流れる中で、バイクの暴走は無理があるだろう。という一般的なツッコミではなかった。

 

(そう言えば、マイケルのこと……あまりよく知らないんだよなぁ)

 

思い返してみて、マイケルは、自分のことをほとんど語らないことを遊介は思い出す。

 

「遊介。私たちはどうする?」

 

ブルームガールの質問の意味は、先に行って待ってるか、暇つぶしをみるか。

 

「……」

 

「じゃあ、見てくのね」

 

「何も言ってない」

 

「見たいって顔してる」

 

心を読み通したブルームガール。それは超能力ではなく、遊介がバイクをちらちら見ているところから分かることだった。

 

実は遊介も、ブルームガールも、マイケルのデュエルを見るのは初めてである。人物像が未だはっきりしないマイケルを知るチャンスだと思い、ブルームガールもまた、見学に反対はしなかった。

 

「お前には、この後のメインディッシュの前座になってもらおう」

 

「前座じゃねえ。お前のキングの称号は俺が頂くぜ?」

 

もはや恒例行事と言わんばかりの煽り合いも終わり、お互いのバイク、Dホイールのエンジンをつける。

 

そして、

 

――『スピードワールド・エクストラ』セット完了。デュエルモードオン。オートパイロットスタンバイ――

 

「ライディングデュエル……」

「アクセラレーション!」

 

マイケル      LP4000

ジャック・アーロン LP4000

 

掛け声とともに、アーロンとマイケルが勢いよくアクセルを踏んだ。

 

アーロンが使うDホイールは『ホイール・オブ・フォーチュン』という、一つの巨大な車輪が回転する特注の機体。そしてマイケルの乗る機体は、見た目こそ特徴はないものの、性能は悪くない者である。

 

「いくぜぇ!」

 

気合を入れたマイケルの掛け声を聞くと、アーロンはなぜかスピードを緩める。

 

「先攻はくれてやる」

 

「いいのか?、じゃあ遠慮なく!」

 

そしてマイケルが大きく息を吸い込んだ。

 

ターン1

 

「俺のターン!」

 

マイケルは鼓膜を攻撃しているのかと見違えるほどの声をあげた。

 

マイケル LP4000 手札5 スピードカウンター 1

モンスター

魔法罠

 

フィールド

 

(ジャック)

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

  □   □     EXモンスターゾーン 

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

(マイケル)

 

「俺は、サモンコアを召喚!」

 

サモンコア レベル3 攻撃表示

ATK0/DEF0

 

マイケルが最初に出したのは、鋼色の球の体に、赤いエネルギー中枢が中央で怪しく光る謎の物体だった。

 

(機械……?)

 

「うわー、絶対獣系だと思ったのに……」

 

ブルームガールは丁寧に口に出して、自身の意外であるという主張を行った。

 

今まで、マイケルは魔法と罠しか使ってこなかった。メインは罠モンスターであり、装備魔法や他の罠でそれを強化して戦うというスタイル。しかし、マイケルが自分で『本気のデッキにはモンスターを入れているし戦い方も違う』と言っていたのを、遊介は覚えていた。

 

マイケルは空中でそんな話をされているとは知る由もない。

 

「……」

 

しかし、楽しむ余裕は遊介にはなかった。気持ち的に追い詰められていたのだ。

 

――ふと。

 

遊介は向かい風を感じた。

 

その風は遊介を拒むのではなく、向かい風で合っても、心を震わせ、鼓舞するような感覚の風だった。

 

(なんだ……?)

 

遊介は何の確証もないながら、その風は何かが起こしているという確信があった。

 

一方そんな事は知らないマイケルが戦いを始める。

 

「サモンコアの効果は後でな。俺はスピードスペル、シルバーコントレイルを発動! スピードカウンターを1つ取り除き発動する。俺のフィールド上のモンスター1体の攻撃力を1000アップ。サモンコアを選択!」

 

サモンコア ATK0→1000

 

「サモンコアの効果! このカードの攻撃力が上がったとき、デッキからサモンコアを可能な限り特殊召喚できる! 俺は2体のサモンコアを守備表示で出す」

 

サモンコア レベル3 守備表示

ATK0/DEF0

 

「ほう……面白い効果を持っているな」

 

「まだまだ。俺はチューナーモンスター、シンクロコアを召喚!」

 

次に現れた新型は、緑の塗装をされたボディであるものの、それ以外はサモンコアとあまり違いはなかった。

 

シンクロコア レベル3 攻撃表示

ATK0/DEF0

 

「シンクロ使いか……」

 

「俺は先にこいつを出すぜ」

 

マイケルは握り拳を天空へ上げる。

 

「俺はレベル3のサモンコア2体でオーバーレイ!」

 

マイケルが宣言したのはエクシーズ召喚の宣言。

 

「マイケル、エクシーズもするの?」

 

遊介に訊くブルームガール。当然本気のデッキを初めて見た遊介がそんなことを知る由もない。苦笑いしかできない。

 

マイケルはそんな観客2人に手を振った。

 

「俺はレベル3モンスター2体でオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚! 現れろ、ナンバース30! 破滅のアシッドゴーレム!」

 

現れたのは酸を放出する怪しい巨人。ランク3でありながらすさまじい力を持つ存在。

 

No.30 破滅のアシッド・ゴーレム 攻撃表示

ATK3000/DEF3000

 

「ナンバーズだと……」

 

ユートが驚くのも無理はない。ナンバーズはエクシーズ世界にしかない107枚のモンスターカード。それをマイケルが持っているということは、マイケルはエクシーズ世界に居たということ。

 

そしてさらに驚くべきは、そのマイケルはシンクロ召喚を使うということ。

 

「ほう……」

 

「驚かないんだな。自称キング?」

 

「自称じゃない。俺はキング、ジャック・アーロンだ」

 

「なら、今からお前をもっと驚かさせてやる」

 

マイケルはさらにモンスターを召喚すべく、手札に手を伸ばす。

 

「フィールド上の、エクシーズモンスターのオーバーレイユニットをすべて取り除き、エクシーズコアは特殊召喚できる!」

 

酸の巨人の周りに回っている球体をすべて吸い込み、黒の塗装をされたコアは現れる。

 

エクシーズコア レベル3 攻撃表示

ATK0/DEF0

 

「エクシーズコアの効果! このカードを自らの効果で特殊召喚した場合、俺は2つの効果から1つを選択して発動できる。俺は2番目を選択。俺は次ターン終了時まで手札から罠を発動できるようになるぜ」

 

「その程度では驚かんぞ?」

 

「そう言うな。俺はさっそく手札から罠カード。供物と恩恵を発動! このカードは俺のフィールド上のモンスター1体を対象に発動する。そのモンスターを相手フィールドに移す。その代わり、俺のモンスターは次のターン。戦闘では破壊されない」

 

エクシーズ素材がなくなったアシッドゴーレムが相手の場へと捧げられた。コントロールが奪われたモンスターはエクストラモンスターゾーンのモンスターでも、メインモンスターゾーンへ移動する。

 

「アシッドゴーレムはお前にやるよ」

 

王者の座す白い車体に酸が滴り落ちる。アーロンはそれを器用に躱して見せたが、それは正しい判断だった。酸は容赦なく落ちた場を溶かした。

 

「そして、供物と恩恵のさらなる効果で、俺はカードを1枚ドロー。さらに俺はシンクロコアとエクシーズコアでチューニング!」

 

そしてマイケルは続けてシンクロ召喚の宣言を行う。

 

緑の機会が召喚の円に、黒い機会がその中を潜り抜け、シンクロ召喚は成立した。

 

「来い! レベル6、大地の騎士ガイアナイト!」

 

現れたのは、二振りの槍を持った、青き鎧をまとう騎馬兵。

 

大地の騎士ガイアナイト レベル6 攻撃表示

ATK2600/DEF800

 

「シンクロコアを素材にして召喚されたガイアナイトは、攻撃力を500アップする!」

 

ガイアナイトの槍が緑の光膜につつまれる。

 

大地の騎士ガイアナイト ATK2600→3100

 

「俺はこれでターンエンドだ。どうよ?」

 

「ほう。早速大きく動いたな?」

 

「まあな。生憎手札が悪くてな。この程度しか用意できなかったが」

 

「観客を楽しませるには良い余興だったぞ。褒めてやる」

 

「まあ、もう1つ贈り物は用意してあるんだ。楽しくやろうぜ。俺はこれでターンエンドする」

 

走るバイク。スピードを全く緩めないまま熱風を斬り裂き、王の座がある浮島にめがけて走り続ける。

 

まるで恐れを知らない2人。溶岩にあと10センチで落ちるのではないかというところも余裕の表情で走り抜けていく。

 

「怖くないのかしらね……」

 

ブルームガールのボヤキに、遊介はただ首を縦に振った。

 

マイケルはキングに問いを立てたのは、それとほぼ同時刻。

 

「キング。一つ聞いていいか?」

 

「なんだ?」

 

「何故俺を助けた?」

 

「理由がいるか?」

 

「はぁ?」

 

アーロンは一度ため息をついてから言う。

 

「俺がそうしたいと思った。俺がそうしなければ後悔すると思った。だから助けた。大義的な理由などその程度であり、そしてまた至高の理由だろう」

 

「つまり、なんとなく?」

 

「ふん。その低俗な言葉と一緒にされるのは不愉快だが、そういうことだ」

 

マイケルは、それを聞くと、大きく笑い声をあげた。

 

「ハハハハハハ! そりゃいい。あんた、いいやつだな」

 

「デュエルの続きだ。これ以上問答は必要ないだろう?」

 

「ああ。そうだな」

 

マイケルは嬉しそうにニヤニヤと笑顔を浮かべていた。

 

マイケル LP4000 手札1 スピードカウンター0

モンスター ② 大地の騎士ガイアナイト ③ サモンコア

魔法罠 

 

フィールド

 

(ジャック)

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ ① □ □   メインモンスターゾーン

  □   ②     EXモンスターゾーン 

□ □ ③ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

(マイケル) 

 

 

ターン2

 

「俺のターン!」

 

アーロンはデッキからカードをドローする。

 

アーロン LP4000 手札5 スピードカウンター 2

モンスター ① No.30 破滅のアシッドゴーレム

魔法罠 

 

アーロンの攻撃を待たずして、口を開いたのはマイケル。

 

「相手のスタンバイフェイズ。破滅のアシッドゴーレムの効果! オーバーレイユニット1つを取り除くか、2000ダメージをコントローラーは受ける!」

 

「ほう……」

 

「オーバーレイユニットがないなぁ?」

 

アシッドゴーレムの持つ『破滅』とは、相手にのみ向けられたものではない。むしろ、自分に降りかかる災厄でもあるのだ。

 

アシッドゴーレムから、酸が滴り落ちた。アーロンの方に直撃する。酸は体を侵食し、凄まじい苦痛を使用者に与える。

 

「……ぐ……」

 

ジャック・アーロン LP4000→2000

 

「どうだぁ?」

 

「なるほど……これは面白い」

 

そしてマイケルは追い打ちをするように宣言した。

 

「ちなみに、アシッドゴーレムはその裸の状態じゃ攻撃はできないぜ。さらにお前は特殊召喚もできない。お前の行動は罠じゃなくても縛られているってこった」

 

「思った以上だ。貴様……さぞ元の世界では実力者だったのだろうな」

 

「キング。サレンダーなら……」

 

しかし、ここまで言ってなお。ジャック・アーロンの自信に満ちた顔は一切揺らがない。

 

「何を言う。貴様は先攻として素晴らしい腕を見せた。ならば俺がすることはただ1つ!」

 

そしてキングの戦いは始まる。

 

最初に手札から選んだのは、モンスターカード。

 

「お前のカードは確かに召喚を制限する。だが、それは特殊召喚のみ! 俺は手札のビック・ピース・ゴーレムを、アシッドゴーレムをリリースして、アドバンス召喚!」

 

酸の巨人は光の粒子となって拡散した。そして、その粒子は、新たな巨人の姿を模して、形作られていく。

 

ビック・ピース・ゴーレム レベル5 攻撃表示

ATK2100/DEF0

 

この行為は多くのことを示している。

 

「うお……」

 

マイケルはその事実に口を開けて何かを言おうとしたが、何も出なかった。

 

通常召喚によってアシッドゴーレムが消滅。それにより特殊召喚の解禁。そして攻撃力が2000以上あるモンスターの召喚。この3つの条件をたった1枚で行ったのだ。

 

しかし、キングたるアーロンはこの程度では止まらなかった

 

「スピードスペル、オーバーブースト! 俺のスピードカウンターを4つ増やす!」

 

2枚目に出したマジックカードは、スピードカウンターを上昇させるカード。ライディングデュエルで最も重要になるカウンター4つ増やした。

 

そして今まで後ろを走っていた白い王者の座はマイケルを追い越して前に出る。

 

スピードカウンター 2→6

 

「そして、さらに俺はスピードスペルサモンスピーダーを発動する! スピードカウンターが4つ以上あるとき、手札のレベル4以下のモンスターを特殊召喚できる!。俺はダフレアリゾネーターを特殊召喚!」

 

現れたのは、天使との戦いでチューナーの役割を果たしたモンスターに似た悪魔

 

フレアリゾネーター レベル3 攻撃表示

ATK300/DEF1300

 

「おいおい……」

 

マイケルは唾を飲み込む。レベル3のチューナーとレベル5のモンスターがいる状況。天使を一掃したあのモンスターが来た状況と同じだった。

 

「俺はレベル5のビックピースゴーレムに、レベル3のフレアリゾネーターをチューニング!」

 

そして、つい先ほどみた光景は繰り返される。

 

「王者の鼓動、今ここに列をなす。唯一無二なる覇者の力、その身に刻め!」

 

溶岩がその悪魔の登場を恐れるかのように流れ、地面を侵食し始めた。

 

「現れろ。かの王の魂を継ぐ竜。レッドデーモンズドラゴン、スカーライト!」

 

紅蓮色の竜は姿を現した。

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト 攻撃表示

ATK3000/DEF2500

 

「フレアリゾネーターを素材にしたシンクロモンスターの攻撃力は300アップ!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ATK3000→3300

 

「まじか……」

 

マイケルはあからさまにうろたえていた。

 

「ガイアナイトの攻撃力を挙げたのは、モンスターを警戒してのことだろう?」

 

「ああ……」

 

「その判断は正しい。だが、運がなかったな」

 

「何……?」

 

「勝利はわが物、ということだ」

 

するとアーロンは器用にDホイールの向きを反転させる。

 

「先ほど天使たちを焼き尽くした炎はまさに次の一撃。俺はレッドデーモンズドラゴンの効果を発動する! 1ターンに1度、このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ特殊召喚されたモンスターをすべて破壊する!」

 

「はぁ? すべてだとぉ!」

 

「食らえ、王者の一撃。アブソリュート・パワー・インフェルノ!」

 

右の腕から激しい炎が上がる。溶岩の熱気をも超えるその炎は、マイケルを守るモンスターは全て赤い濁流に飲み込まれ、その炎で溶かされていく。

 

マイケルのモンスターはすべて破壊された。

 

「なん……」

 

「これで終わりではない! 破壊したモンスター1体につき、500のダメージを相手プレイヤーに与える! 破壊したモンスターは2体。1000のダメージを受けろ!」

 

そしてモンスターを溶かしつくした炎から放たれる熱風がマイケルを襲う。

 

「あちい!」

 

マイケル LP4000→3000

 

「あちい……って、おいおいおい! もしかしなくてもこれは……」

 

まだ紅蓮魔竜は戦闘を始めてすらいない。次の1撃をマイケルが受けきることはできない。

 

「ふん……」

 

そしてアーロンは、この状況をまるで当たり前の光景だと言わんばかりに誇っている。

 

「くそ……こりゃ、……マジか」

 

「当然だ。お前はキングと戦った。ならばお前は俺にひれ伏すしかないこの状況は運命として定められていたものだ」

 

アーロンは、遊介を見た。遊介がそれに気づくと、アーロンは再びマイケルに向き直り、そして語る。

 

「強者との戦いは常に、幾多の試練が訪れる。俺は与え、そしてお前はそれに挑む。弱者よ、勝利とはその先にあるものだ」

 

「……こんな時にご説教かよ。なんてな……この無様さじゃ、なんも言えねえな」

 

「無様なのは当然だ。言っただろう。これは定められていた運命だと」

 

アーロンはマイケルを指さし、そして声高らかに宣言する。

 

「バトル! レッドデーモンズドラゴン、スカーライトでマイケルにダイレクトアタック! 灼熱の、クリムゾンヘルバーニング!」

 

紅蓮魔竜の口から放射された炎はマイケルを焼き尽くす。その命をすべて溶かしつくした。

 

「ぐ……おおおおお!」

 

マイケル LP3000→0

 

そして、キングはDホイールを再び反転させて、その圧倒的デュエルを最後にこの言葉で締めた。

 

天高くを指さし、高らかに勝鬨をあげる。

 

「キングは独り! この俺だ!」

 

既に遠く離れた街からは万来の喝采が聞こえる。

 

このデュエルは中継されていたのか、再びキングの威光を示すデュエルの1回として、炎の世界の主街区に住む人々に勇気と希望を与える1戦となった。

 

「……あれ?」

 

マイケルは自分の保有しているLPを確認すると、その数が減っていないことに気づく。

 

ライディングデュエルの敗者のDホイールは、それを示すように、急激にスピードが落ちる仕掛けが発動する。すでに時速0キロメートルになっていたDホイールからマイケルは降りると、近くで止まったアーロンを見る。

 

アーロンは何が言いたいのかをすぐに把握し、その答えを述べた。

 

「このフィールドは俺が購入したのだ。ここでのデュエルは俺が決める。俺が裁くならば命を賭ける戦いだが、俺が楽しむなら、それは命を問わないデュエルにもできるさ」

 

頭からヘルメットをはずしたアーロンがデュエルに満足いったような顔で話す。

 

「まあ、それくらいは当然だろ。こんな形で死ぬのは御免だからな」

 

そこに空を待って2人とデュエルを見ていた遊介とブルームガールが下りてきた。

 

「お疲れ。マイケル」

 

「おう。まったく。こんなボコボコにされるとは思わなかったけどなぁ」

 

遊介が持っていたタオルをマイケルに渡す。マイケルはそれで流れるように出る汗をぬぐった。

 

そんな遊介に不意打ちをしたのは、

 

「では、前座はここまでだな。遊介……だったよな?」

 

「前座?」

 

「この俺ジャック・アーロンは、貴様にデュエルを申し込む!」

 

アーロンだった。

 

「え……え?」

 

「だからこそ。我々はあの頂きの闘技場に向かっているのだからな」

 

「え……?」

 

「この戦いは大一番。イベント戦で入賞を果たしたチームリーダーとの戦いができるのだ。この機を逃すことはあり得ない」

 

「え……ええ!」

 

「これは、町の皆も楽しめる、エンターテイメントになるだろうな」

 

ジャック・アーロンは指をさす。すでに戦いの場は近くだった。

 

中央に巨大な炎の竜巻が渦巻くデュエルレーン。

 

遊介は、ジャック・アーロンの策謀に嵌っていたことに、ようやく気が付いたのだ。しかし、時すでに遅し。遊介は圧倒的強者との戦いを強いられる、王者の定めた運命を進むしかない。




こんな感じで第9話です。お楽しみいただけたでしょうか。
1話が長くなってしまい申し訳ありません。以後はまた前後編に分けるなどの対処をしていきたいと思います。
そして今回はジャック・アトラス……ではなく、その後継者的な存在のジャック・アーロンくんに出てもらいました。

5D'sの世界が、一番未来がどうなったか気になる世界観だと思ってます。特にシグナ―の竜はどうなったのかが気になり、アニメの最終回が終わったころはいろいろと妄想をしていました。私の中での結論は、シグナ―の竜は多くの人に渡りながらも最終的には、かつて自分とともに戦ったシグナ―に似た人間に託されていくような気がしました。ジャック・アーロンは、そんな妄想の中で、キング称号の後継者として思いついたキャラクターです。

そんな中でアークファイブで、レッドデーモンズが変化しているのを見て、自分の妄想した未来のシグナ―たちが、その変化した竜を使って戦うという設定にできればおもしろそうだと考えました。その結果が、今回のシンクロ世界の設定になってます。

今回はあまりに急展開にしてみましたが、もし話についてご質問等がありましたら遠慮なく送ってください。また感想も随時お待ちしています。
次の話は来週までには出したいと思っています。

さて、次回は遊介とキングが戦います。
遊介はここまで1勝1敗。輝かしい勝利を手にすることはできるか?
第10話『竜巻で待つ者』お楽しみに。

(実験)←「VRAINSの次回予告風に次回予告をしてみる」

立ちはだかる悪魔。立ちはだかる王者。挑戦者を叩き潰すのは圧倒的な力。彼は誘う。王たる俺に叛逆せよと。彼は諭す。英雄とは何たるべきかを。遊介は今、試練を越えるためカードを引く!

「俺は……あいつに負けられないんだ!」

次回。遊戯王VRAINS もう1人のLINKVRAINSの英雄 『竜巻で待つ者』
イントゥ・ザ・ブレインズ!

難しいですね。また思いついたらやってみたいと思います。

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