遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。
これでOKという人はお楽しみください!
活動報告のアンケートにご協力してくれた方、ありがとうございます。
返信はしていませんが、参考になりました。アンケートの結果は、あるチャレンジに使うので助かりました。
活動報告に引き続き乗せていますので、まだまだ回答受付中です。よろしくお願いします。
キングVS遊介です。
キングはなぜ遊介に戦いを挑んだのか……?
原作をご存知の方は、藤木遊作VSリボルバーの、ハノイの塔付近で行われた竜巻っぽいものの近くでのスピードデュエルを想像すると分かりやすいです。
【20】
火山の火口の真上が戦いの場。炎の世界を覆う巨大な火山の火口からは常に3キロ以下の岩を巻き上げる竜巻が吹き、それがこの戦いの場をも貫通して遥か上空まで、世界を繋ぎとめる柱のように存在した。
(不思議だ……なんか、あの竜巻に呼ばれているような……)
竜巻の周りを走るようにDボードで滑空する遊介。その後ろにはジャック・アーロンがしっかりついてきていた。
本来であればライディングデュエルで戦うためのサーキットだったが、遊介がバイクに乗れないため、急遽戦いはスピードデュエルで行われることになった。
「……ちょっと、あんなところで戦うの……?」
不安そうに、サーキットで上空の遊介を心配するブルームガール。
「まあ、こうなった以上仕方ないだろう」
と、やれやれと言いたげなジェスチャーをしながらマイケルが言った。
「あのね……遊介はリーダーなの。何かあったら困るでしょ!」
「しかしなぁ、俺達も助けてもらった手前、あのキング野郎のお願いをないがしろにするのはちょっとなぁ」
「だからってあんなところで戦わなくても……」
それを聞いたユートが、
「大丈夫だ。何かあったら俺が行く」
と聞くに頼もしいことを言った。
しかし、マイケルは、
「おいおい、あんないわばひゅんひゅん飛んでくる魔境に行くってのか?」
と反論し、ユートは一瞬言葉に詰まったが、
「……いや、それでもだ」
と、遊介を見る目に宿した光は失われなかった。
「さすがだなぁ。ようし、もしものもしもの時は、俺も体を張るぜ。仲間だもんな」
わざわざ、ブルームガールの方を見て宣言するマイケル。その行為が意味することを察するブルールガールは、顔を白くしながらも、
「も……もちろん!」
と強がってみせたのだった。
しかし、そんなブルームガールよりも顔面蒼白になりながら、飛んでくる瓦礫を躱し、何とか生き残っている遊介。
(怖い……怖いって……)
普通に当たったら命がアウトな瓦礫に数回狙われているので、そう思うのも無理はない。
ここを戦場にしようと言ったのはキングである。彼もまた迫る瓦礫を躱しながら、苦笑いを浮かべていた。遊介はその件について大いに文句を言いたかったが、それよりも気になることが遊介にはあった。
「一つ聞かせてほしい」
「なんだ? 今更怖気ついたとかはなしだ」
「それはそうなんだけど……、なんで俺達を助けてくれたんだ?」
「なぜと訊くか?」
「ああ。この世界じゃ、チームメイトならともかく、赤の他人を助けるメリットなどないはずだ」
「何を言い出すかと思えば……。そんなもの、貴様の尺度で測るな」
「ええ……」
「俺が助けたいと思ったから助けたんだ。それは俺の決定だ。自分の道は自分で決める。どんな世界であろうと、俺はそうしたいからそう生きる」
迷いなく言い切るアーロン。遊介はその姿に心惹かれるものがあった。
「それに貴様。どうやらこの後大一番が待っているようじゃないか?」
「ああ……それは……」
アルターの大きな宣伝によって一瞬で有名人になってしまった遊介。すでにイベントの結果を含め、たった六人で4位入賞を果たしたチームリーダーとしてその注目度は高い。遊介がイベント戦に参加したのはそのためではあったが、まさか公開処刑をされることになるとは夢にも思っていなかった。
「……」
「迷っているな?」
「え……」
「遊介。戦いとは酷なものだ。人はいずれ自分の限界を超えなければならない。俺も、我が友である、星矢や鳥羽梨(とばり)もそうだった。人はいずれ己の限界を越え、目の前に現れた壁を突破しなければならない。だが方法はいくらでもある。飛び越えてもいい、叩き潰してもいい、時間がかかっても良いのなら迂回する方法を考えてもいい」
「ジャック?」
「どんな方法であれ、その経験は大きな力になるはずだ」
アーロンは遊介を伸ばした人差し指の先に見据えた。
「そして俺はキング。ここに来た客人は、俺のエンターテイメントの相手であり、デュエルで語らうライバルである。ならば、ライバルの試練に助力は惜しまない」
「それはありがたいけど……どうして」
「理由を求めるか? ならば俺は正直にこう答えよう」
その答えを唾を飲み受け止める構えをとった遊介。しかし、どんな構えであってもその行為に意味がないことは言わないでおくのが花だろう。遊介の頭はそれを判断できないほど処理能力をハルトとの一件に注いでいるということを表している。
「俺は、お前に似た男を知っている。正直最初見た時、俺はそいつとお前を見違えた」
「俺に似た奴が居たのか?」
「ああ。そいつはデュエルが好きだった。シンクロ世界はデュエルで成り上がる世界。そいつも本当は認められるはずだったんだ」
「だった……?」
「だが、そいつは富豪の罠に嵌って、愛した女を奪われ、社会的に殺された。たまにいるんだ。デュエルができる程度で粋がるなガキめ、なんて言いたげな奴がな。当然俺の力で完膚なきまで潰してやったが、もう手遅れだった。女は既に裏の世界の奴隷商人に渡って行方知れず。そいつの評価は二度と上がることはなかった。そいつはある日姿を消したんだ。あの時……俺は躊躇したんだ。友であったそいつを助けるべきか、個人の事情に堂々と足を突っ込むことはマナー違反で控えるべきか。後者になることを選んだら、結果俺は友を失うことになった。それ以降、俺は、たとえお節介でも、助けたい人間を助ける。そう決めているんだ」
出会ってまだ1日しかたっていない。しかし、今まで自信の塊であった男が見せた悲しそうに過去を語るその顔は、遊介の心に刺さる何かを帯びていた。
「お前らを助けたのは単なる気まぐれだった。だがお前という存在。そしてとんでもない運命を背負っている状況。それを見てたら、俺の心がどうしてもお前に何かしてやれと叫んだんだ。だからお前にこうして語りあいう機会を求めた」
アーロンは消えかけていた覇気をすぐに取り戻す。
「さて、余計な話をしたな。そろそろデュエルと行こう。お前のルールに合わせて、スピードデュエルで戦ってやる」
「……ああ」
遊介もデュエルディスクを構える。このフィールドはキングがルールを決めることができるデュエルフィールドであり、賭けは行われないルール設定になっている。
「お前があの男と決戦に挑む前に、俺からいくつかアドバイスをしてやる。後悔しないように、お前が戦うためのエールだ。有難く受け取るがいい」
「ジャック・アーロン。あんたは傲慢に見えて、実はいい人なんだな」
「当然だ。俺はキングだからな。俺のデュエルには常に意味がある」
ジャック・アーロンはデッキからカードを4枚引き、
「キングのデュエルは、常にエンターテイメントでなければならない! からな」
と、どや顔で言った。
(気持ちのいい男だ。格好いいな)
格好良いデュエリストを目指す半人前として、一つの完成形が目の前にいる状況に心が躍る。遊介はその胸を借りるつもりで、勝負を挑むことにした。遊介もまた4枚のカードを引いて戦いの準備をした。
「戦いの前に躊躇ってすまなかった」
「やる気になったか?」
「この状況でやる気は起こらないけど、あんたの思い、受け取ることにするよ」
「それでよし! 後は戦いの中で語ることにしよう!」
再び迫ってきた大きな瓦礫を躱した次の瞬間から、2人の戦いが始まる。
「スピードデュエル!」
「スピードデュエル!」
遊介 LP4000
ジャック・アーロン LP4000
ターン1
「俺が先行だ!」
先攻を取ったのはアーロン。
アーロン LP4000 手札4
モンスター
魔法罠
フィールド
(ジャック)
□ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ EXモンスターゾーン
□ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ □ 魔法罠ゾーン
(遊介)
「俺は魔法カード。紅蓮魔竜の儀を発動! このカードは俺のフィールド上にモンスターが存在しないとき、LPを800払い、手札のチューナーを含めて、レベルの合計が8になるように手札からモンスターを墓地へ送り発動する。俺はエクストラデッキから、レッドデーモンズドラゴン、スカーライトを特殊召喚! 俺はレベル6、スカーライトバーサーカーとレベル2のチューナー、レッドリゾネーターを墓地へ送る!」
ジャック・アーロン LP4000→3200
魔法カードが炎上し、そして炎の柱の中から王者の象徴が現れる。
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃表示
ATK3000/DEF2500
(うわ……早速来たか……ってあぶな!)
目の前から弾丸のように迫ってきた小さな岩。それでもスピードがあれば、ただの弾丸であり体を貫かれたときの痛みは想像を絶するものになる。
「さらに俺は魔法カード、紅蓮魔竜の壺を発動する。俺のフィールド上にレッドデーモンズドラゴンが存在するとき、自分のデッキからカードを2枚ドローする」
宣言通り、アーロンは2枚のカードをドローすると、
「カードを1枚伏せてターンエンド!」
カードを伏せてそのターンを終えた。
「く……」
天使たちを焼き払い、マイケルを圧倒的な力でねじ伏せた力の象徴が現れた。
遊介はその存在を見て、眉間にしわを寄せ、腰が引ける。
「恐れるな!」
「え……」
「どんな敵が現れても恐れるな! お前はリーダーなのだろう? ならば、恐れるな!」
「でも俺は……迷ってばかりの頼りないかもしれない」
「迷いは結構。だが、迷いと恐れは違う! 迷うとは立ち向かおうとする証だ。だが恐れとは逃げようとする思想から来るものだ」
遊介はいきなり怒鳴られたように感じたが、
(……確かにそうかもしれないな……)
と、どこか納得もしていた。
ハルト見せた圧倒的な力。結局瑠璃が戦術で1手上回ったことはなく、奇跡を引き当ててなお勝てなかったその男に勝負を挑まれた時、なんと思ったか。
(怖かった……、正直逃げたいと微塵も思わなかったかと言われれば嘘になる)
この世界では、戦いは命を賭ける。生存本能というものが人間にもあるとするならば、その本能がその時に働いたと言うべきだろう。
しかし、遊介は逃げることは決断しなかった。
「奴と戦うんだろう?」
「ああ」
「何故だ?」
「だって……逃げたら……格好悪いだろう」
遊介はその答えが少しヒーロー気取りではずかいいものだと自覚している。しかし、本等にそう思ったのだ。
そしてアーロンは、それを聞いてにやりと笑った。
「それでいい。お前の戦いは間違っていない。大いに立ち向かえ。そして立ち向かうのなら、どんな形でも手を抜くな!」
アーロン LP3200 手札1
モンスター ① レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト
魔法罠 伏せ1
(アーロン)
□ ■ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ メインモンスターゾーン
① □ EXモンスターゾーン
□ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ □ 魔法罠ゾーン
(遊介)
ターン2
「俺のターン! ドロー」
遊介はカードを引く。
恐れるな。手を抜くな。向けられたエールを胸に刻み、カードを選択する。
遊介 LP4000 手札5
モンスター
魔法罠
そこに王者は叫ぶ。遊介が思いもしないことを。
「罠カード、ショック・ウェーブ! 俺のLPが相手よりも低い場合に発動できる。フィールド上のモンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージをお互いが受ける! 俺はレッドデーモンズを破壊し、お互いに3000のダメージを受ける!」
紅蓮魔竜は光り輝く。そして、その体を太陽に変え、熱風と衝撃波を放った。
「ぐ、あああ……」
その熱気は肌が焼き焦がされるかと思うほどだった。遊介は苦悶の表情を浮かべるが、キングはこの熱気にはすでに慣れていて、うろたえたりはしなかった。
遊介 LP4000→1000
ジャック・アーロン LP3200→200
「そんな無茶な……」
「無茶だと思うか?」
「なに?」
「自分にとって強敵とは、常に己の想像を超えてくるものだ。この程度でうろたえるな! 俺はこの瞬間、墓地のスカーライトバーサーカーの効果。このカードを除外し、破壊されたモンスターを次のターンのスタンバイフェイズに、特殊召喚させる」
「つまり、次のターン、レッドデーモンズが戻ってくる?」
「そういうことだ。そしてスカーライトバーサーカーのさらなる効果で、このターン、特殊召喚していないレベル6以下のモンスターから受けるダメージはすべてゼロになる!」
「な……」
「さらに! 墓地の紅蓮魔竜の儀の効果! このカードを除外し、効果を発動する。このターン攻撃力2500に満たないモンスターは、攻撃を行うことができない!」
「やりすぎだろ!」
「天城ハルトもこの程度はやってくるぞ! 超えて見せろ!」
「く……」
遊介は一気に追い詰められたことを自覚する。しかし、
(負けられないよな……、ジャックの言う通り、この状況なんて、あの男ならやりそうだ)
と己を鼓舞して、ディスクを選択する。
己を頭がお花畑というのなら笑えと、勝手に思い込み、遊介は巨大な竜巻の中心へと突撃する。
「貴様……何を……?」
「スキル発動! ストームアクセス!」
遊介は凄まじい破壊を見せつけている竜巻へと身を投じていった。
「ゆーすけー!」
「やめろー!」
「それはまずい。戻るんだ!」
デュエルディスクから流れる緊急通信を完全に無視し、遊介は、その竜巻の中央を目指す。
さすがに恐ろしいほどの石や岩が飛んできて、すべてを躱すことはできない。小さな石が体を何度も貫いていくのを感じたが、それでも竜巻に突っ込んでいく。
(この先に、何かいる……)
遊介も、何の考えもなく竜巻の中に入ったわけではない。
その先に何かが待っている。何度目か分からないその存在を求めた。それはきっとこの逆境を打ち砕く何かなのではないかと思わずにはいられなかった。
たどり着いた。
そこには竜の姿が見えた気がした。
「風を掴む……!」
遊介は手を伸ばす。そこにいる何者かとつながるために。
今までの中で最も大量のデータが、手の中に集約していくのを感じた。
「う……おおおおおお!」
体に異物が入ってくる感覚。全身を中から焼き尽くされるような感覚に襲われる。
「あああああああ!」
しかし、諦めない。手を伸ばし続け、血が出たよう感覚を受け手もその手を伸ばし続けた。
やがて、手にカードが形創られていく。竜の姿が明瞭になっていき、炎の壁のような翼が見え始める。
――しかし。
石に手が貫かれた。
その瞬間、ストームアクセスは中断される。
手に残ったのは、リンクモンスターを表すカードであるものの、モンスターは存在せず、カードテキストも書かれていない、なんの役にも立たないカードだった。
遊介は竜巻の外に飛ばされ、竜巻はまるで遊介が失敗したことに失望してしまったかのように消えてしまった。
「くそ……!」
「平気か?」
遊介は右腕が半分麻痺しているものの、
「ああ。……平気だ」
と強がって見せる。
しかし、内心では、
(くそ……あいつはきっと俺を呼んでただろうに。俺は……)
と、悔しさを隠し切れなかった。
「しかし……、今まで消えなかった竜巻が消えたとは……一体何を?」
「消えた理由は……俺のせいだ」
遊介はそれを淡々と言う。
(今はデュエルの途中だ)
自身に言い聞かせ、手に入れた謎のカードをエクストラデッキに入れると、デュエルを再開する。
「お前、手にけがを」
「問題ない」
「……いいだろう、ならば来い!」
遊介は頷き、そしてカードを手に取る。
「俺は魔法カード、ワンタイムパスコードを発動! セキュリティトークン1体を守備表示で特殊召喚!」
セキュリティトークン レベル4 守備表示
ATK2000/DEF2000
「現れろ、未来を導くサーキット!」
遊介は召喚のサーキットを出現させる。
「召喚条件は、通常モンスター1体! 俺はセキュリティトークンをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン。来い、リンク1、リンクスパイダー!」
リンクスパイダー
リンクマーカー 下
ATK1000/LINK1
「リンクスパイダーは1ターンに1度、リンク先に通常モンスター1体を特殊召喚できる。俺は、ビットロンを特殊召喚!」
ビット! と可愛い声で、蜘蛛の陰に現れる白い妖精。
ビットロン レベル2 攻撃表示
ATK200/DEF2000
「そして、俺はモンスター2体をリリース! デュアルアセンブルムをアドバンス召喚する!」
そして、遊介が呼び出したのは、赤と青の竜を模した強力なサイバース。
デュアル・アセンブルム レベル8 攻撃表示
ATK2800/DEF1000
「ほう……」
「こいつなら、攻撃が通る」
「ほう……?」
しかし、このまま攻撃しては、相手の思うつぼであるような気がした。大きい壁を超えるには、そのための手を打たなければならない。
「装備魔法。サポートプログラム・アタック。このカードは墓地のサイバースリンクモンスターを除外して、サイバースモンスターの攻撃力を、リンクの数1つにつき800アップする。除外したリンクスパイダーはリンク1.その攻撃力を800アップする!」
デュアル・アセンブルム ATK2800→3600
「カードを1枚伏せ、バトルだ!」
遊介は、ジャックの方を向いて声高らかに宣言した。
「デュアルアセンブルムで、ダイレクトアタック!」
と、しっかり攻撃宣言はしたのだが、遊介はこの攻撃が通るとは思っていなかった。
なぜなら王者を自称する者が、あの爪の甘いロックで満足するはずがないと思ったからだ。
「俺は手札のバトルフェーダーの効果。相手のダイレクトアタック宣言時。手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了する!」
現れた悪魔の鐘は、響き渡り戦いの終わりを強制する。
バトルフェーダー レベル1 攻撃表示
ATK0/DEF0
「俺はこれでターンエンド」
遊介 LP1000 手札0
モンスター ② デュアル・アセンブルム
魔法罠 伏せ1
(アーロン)
□ □ □ 魔法罠ゾーン
③ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ EXモンスターゾーン
□ ② □ メインモンスターゾーン
□ ■ □ 魔法罠ゾーン
(マイケル)
「良い。ここまでは合格だ。優等生としてはな」
「何が言いたい?」
「優等生では……あの男には勝てない」
「何?」
「信念を持て。たとえどれほどに敗れようとも、お前の戦う道を疑うな。俺も疑わない。俺は勝利し続け、王者であり続けるというな」
王者はデッキに手を置くと、目を閉じる。
「おい……まさか……」
「そうだ。俺とてこんな無茶をして後始末を考えているわけではない。だが俺はキングだ。俺は常に迫る敵を叩き潰す。それだけのこと」
自ら賭けであることを宣言してなお、その男の強気な姿勢は折れていなかった。
「それが俺が俺である所以であり、俺の信念である」
ターン3
「俺のターン! ドロー!」
右腕に刻まれた赤い痣が光った。ジャックは再びカードをドローをする。
アーロン LP4000 手札1
モンスター ③ バトルフェーダー
魔法罠
「この瞬間、墓地のレッドデーモンズドラゴンは蘇る」
墓地とつながるゲートが広がり、その中から炎を纏って現れたのは不滅の炎。王者の魂の象徴。
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃表示
ATK3000/DEF2500
「何を引いた……?」
「勝利の1手。だがこれは奇跡ではない。デッキが俺に応えたのだ」
そして、それはモンスターだった。
「来い! チューナーモンスター。救世竜、セイヴァードラゴン・ノヴァ!」
現れたのは、竜というにはあまりに小さい翼しか持たない竜だった。
救世竜セイヴァードラゴン・ノヴァ レベル1 攻撃表示
ATK0/DEF0
「だが、これは希望だ」
「何……?」
「これは忠告だ。俺も、そして天城ハルトも、まさかこの程度が真の切り札だと思ったのか? セイヴァードラゴン・ノヴァは召喚を無効化できず、召喚したターン、セットカードの発動をすべて封じる」
「……な……に」
「俺はレベル1の救世竜、レベル1のバトルフェーダー、そしてレベル8のレッドデーモンズドラゴンスカーライトをチューニング!」
救世竜は光り輝く。悪魔の竜とバトルフェーダーを巻き込む大きな光で輝く。
「あれは……!」
「本来であれば人に見せるものではないのだがな。餞別だ。これから大きな戦いに向かって行くお前に、最大の一撃を見せよう」
そして、天を指さし、切り札の一つの降臨を堂々と宣言した。
「研磨されし孤高の光。真の覇者となりて大地を照らす。光り輝け!」
巻き起こる炎。それは戦場すべてを巻き込むほどに大きな力となり、数刻も経たず、その炎を遊介のLPを焼き尽くした。
遊介 LP1000→0
【21】
戦いが終わり本来Dホイールを走らせるはずのサーキットに着地する。
遊介がユートに話しかけられたのはその時だった。
「遊介。ハルトからメッセージが来た」
「メッセージ?」
「この世界に来る前から、連絡を取るための手段は確立している。この世界でも使えたとは驚きだ」
「それで、なんて書いてあったの?」
当事者の遊介よりも先に内容を聞いたブルームガールがユートに迫る。
「いや……今言うから、少し離れてくれ……」
ブルームガールが顔を少し赤らめて離れた。
「俺へのメッセージもあるが、それは省略する。『遊介。お前の覚悟を問う。このメッセージを送ってから3週間待ってやる。光の世界のセブンスターズとの決戦場で待っている。手下の天使を全員倒し、ここまで来て俺を倒せ。もしお前が瑠璃を味方だと言うのなら行動で示せ。もし来なければ、お前を外道とみなし、お前の知り合いと思われるすべての人間を虐殺する』だそうだ」
それは、和解の意思はないという明確な意思表示と、遊介に逃げる道はないという明確な告。遊介の選ぶ道は2つ。1つは戦う。もう1つは、逃げる代わりに仲間を見殺しにする。
「ユート、ありがとう」
メッセージの代弁に礼を述べた遊介。
「ユートとやら」
ジャックが、Dホイールのメンテナンスを終え話に混ざる。
「ハルトのエースは、あれだけか?」
アーロンはメンテナンスの途中、イベント戦のベストデュエル賞をとった、公式録画の瑠璃VSハルトのデュエルを見ていた。
「……いや、まだ、攻撃力4500の奴を3体持っている可能性がある。あれはまだ序の口だ」
(4500……)
先ほどのジャックの時のように、エースだと思っていたモンスターの上を出される可能性が大きいということが分かり、遊介は冷や汗をかく。
するとユートは、
「遊介、次の戦いは俺に任せてくれないか?」
と、急な提案をした。
「でも……それは……」
天城ハルトは、LPを賭けた決闘を辞さないことは明白である。ユートが戦うということはつまり、同じ世界で同じ苦しみを味わった2人が刃を交えてしまうということ。
「……大丈夫だ。ハルトはやりすぎた。俺は……何であっても柚子を助ける。そして」
ユートはまっすぐ遊介を見て、
「新しい仲間を、ひどい目に遭わせたくない」
と、秘めていた決意を露わにする。
「……確かに、それが賢いかもね……」
ブルームガールはユートに賛成した。
「ユートの方が強いのは確か。もし火力戦になってもそれは得意とするところ。遊介よりも勝てる見込みは高いわ」
対してマイケルは、
「でもよ、もし遊介じゃなかったら、あいつなんかやりそうじゃねえか?」
という意見を出す。確かに、とブルームガールは、この意見にも頷いてしまった。
「遊介よ」
ジャックは遊介に問う。
それは正しい。なぜなら戦うも逃げるも、遊介が決めることだからだ。
「……ああ。確かに怖いけど」
遊介は答えに迷いはなかった。
「ジャックにここまで背中を押されて、逃げるなんて選択肢は消えるよ」
「なぜ?」
ユートの問いに、
「だって、それじゃあ、格好悪いだろ」
と、遊介は堂々と言い切った。ユートはその答えに唖然とする。
「ちょっと、死ぬかもしれないのよ?」
ブルームガールが、そんな子どものような返答をした遊介に迫る。
「あなた! 今の貴方の命は、一人の者じゃない。前も言ったでしょう!」
「確かに、それが正しい考え方だろうけど。元々悩んでいたんだ。助けに行くべきか、やめるべきか。こういう時は俺は、自分が正しいと思う方に行く」
「上に立つ者は、私欲を捨ててでも全体の利益を取る! 君はそんな当たり前のことが分からないの!」
「だったら、じゃんけんなんかでリーダーを決めてしまった事を恨んでくれ」
「ちょっとそんな言い逃れはずるいんだから」
「それに、俺を庇って戦って、連れていかれたんだ。けじめをつけるのは俺だ」
「……なによ。ぞんな男らしいこと言っちゃって……」
ブルームガールから、それ以上反論は来なかった。マイケルも、満足そうに笑って遊介を見る。
しかし、ユートは遊介に近づくと。
「すまない」
と言って、衝撃の行動に出た。
「が……」
「なん……」
ブルームガールが驚くのも無理はない。ユートは、遊介の腹を殴ったのだ。
その一撃はあまりに協力で、
「なんで……」
「君をこれ以上巻き込めない。身内の不始末は、俺につけさせてくれ。……今までありがとう」
「ゆー……」
遊介は意識を失った。
崩れた遊介を受け止めることなく、すぐにDボードを呼ぶユート、そしてそのまま、光の世界の方に飛んでいってしまった。
その間3秒。あまりに急な出来事で、誰もユートの暴走を止めることはできなかった。
「遊介……!」
意識を失った遊介を抱き上げるブルームガール。
「何よあいつ……!」
空へと消えていくユートにブルームガールは睨みをきかせていたが、そんな彼女もこの状況をこれからどうすれば良いか、少し悩んでいた。
光の世界。ユグドミレニアスの上空。
そこには天使が住まうもう一つの光の世界の姿があった。多くの浮島。そこに立つ神殿。その中で天使は暮らしている設定になっている。そして、その中でも最も大きい神殿が光の世界の主が住まうところである。
そして、その奥にある戦いの場。円形に並べられた柱と、円から一つ飛び出たところに存在する金色の輝く聖火とそれを灯す聖火台。全てが水晶でできていて、空に近いのは本来は戦士の闘技場として機能するところが、決戦の部隊になっている。
聖火台の近くに、天使二人に監視されながら座らされているのは『柊 柚子』。イリアステルにすでに滅ぼされたペンデュラム世界の数少ない生き残りの1人である。
「あなた……どうして私を殺さないの……?」
「……お前はいつでも殺せる。だが……遊介という男はおびき寄せないとな」
「どうして彼を殺そうとするの……」
「決まっている」
ハルトは柚子にむけて、その真意を語る。
「瑠璃もユートも俺達エクシーズの仲間だ。あいつらにもしものことがあったら僕は兄さんやミハエル、トーマスに顔向けできない」
「だからって彼を殺すことはない!」
「あるんだよ。僕にはある。この殺し合いの世界で、人を利用する以外に絆は生まれない」
「そんなことない!」
「お前はどう考えようとも、少なくとも僕はそう考える。僕は恨まれてでも、僕が正しいと思う方法で、僕の仲間を守るんだ。僕は彼らに近づくあらゆるものを徹底的に排除する」
「どうしてそうなるのよ……」
「どうしてか……」
ハルトは語る。
「忘れるはずもない。エクシーズ世界での奴は俺達を裏切った! もちろんあいつは別人だと分かる。きっと別の世界の守屋遊介だと分かっている。これは単なる八つ当たりだともわかる。だがな、きっとあいつも裏切るんだ……! そんな気がしてならない」
ブレスレッドが光った。そして、柚子は消え、その場には再び紫のしなやかな髪が特徴である瑠璃が現れる。
「遊介は裏切らない! あの遊介君は……!」
「……君の意見は聞かない。僕はなんとしても遊介を殺す!」
既に冷静さを欠いているハルトに声は届かない。
「もし遊介が来なかったら……、君の中にいる他の人格はその場で殺す」
冷酷な一言を口にするハルトに、瑠璃はため息をつくしかなかった。
「遊介……来なくていいから……どうか逃げて……」
10話は以上です。
いよいよ大詰めです。次回はいよいよボスバトルになります。
相手はハルト君です。遊介は勝てるでしょうか。
今回の話では、遊介君複数人説が出てきました。
少し説明をすると、遊介君は融合世界、シンクロ世界、エクシーズ世界にも
同一人物がいます。もちろんこの作品の主人公である遊介とは別人です。
所謂、アークファイブの遊矢君と同じですね。彼らを面白く使っていく予定なので
お楽しみにお待ちください。
シーズン1もいよいよ大詰め!
遊介の決戦をどうか見届けてください。
それでは11話『決戦 黄金に輝く時空竜』お楽しみに!