遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。
これでOKという人はお楽しみください!
話の途中でセブンスターズが倒されていることになってますが、これについては
ジャックともう一人に関して、番外編で書きたいと思います。
いよいよシーズン1も大詰めです。
シーズン1最後のデュエル。とくとご覧あれ!
【22】
遊介が目覚めたのは夜中だった。
そこは炎の王国ではなく、懐かしのマイケルの店だった。
店に用意されたソファの上で寝かされていた事に気づき、すぐ起き上がろうとしたが、
「……あれ」
と、つい独り言を行ってしまったのは、感じたことがない柔らかな感触が手にあったからだった。
「会長……」
ブルームガールが遊介の手を握っていた。既に寝落ちしてしまっていたが、ただ腹を殴られて意識を失っただけながら、遊介のことを心配し、様子を見ていてくれたのだった。その手はいつもの厳しい姿から一転、優しさを象徴するような温もりを感じた。
「……ありがとうございます」
女の子らしい柔らかなその手から己の手を離し、気づかれないようにそっと手を離し、ソファから離れる。そしてデュエルディスクの様子を確認する。
(うわ……)
腹を殴られてからちょうど24時間以上経過していることに気づいた。すでに戦いは終わってしまったかと懸念したが、遊介はそんな気がしなかった。
メンバー表を見ると、メンバー全員がまだ生きているのを確認できる。
「瑠璃はまだ生きている。よかった」
それだけ確認できれば十分だった。すぐに外に出る。
「待て」
中からなんとジャックが現れたのだった。
「なんで……」
「あの紫のが暴走して先行しただろう。今のままでは天使を突破するのにいささか戦力不足なのではないかと思ってな?」
「いいのか?」
「ああ。どのみち天城ハルトは次に炎の世界に来る可能性もあった。奴を来る前に叩くにはいい機会だ。奴の保有LPは昨日のイベントで12000になっているだろう。8000削って残り4000にすれば狂戦士でもない限りはしばらくおとなしくなるだろうさ」
「あんたは炎の世界にこだわっているんだな」
「当然だ。なんせ俺は炎の世界のマスターになったからな?」
「マスター?」
ジャックは遊介のしっくりこないような表情にあっけにとられる。
「お前……まさか、マスターを知らないのか?」
「あ……まあ……」
てへへ、口で言う代わりに、頭に手を当てた遊介にジャックは説明を始める。
「セブンスターズを倒した者にはその世界のルールを決める決定権が与えられる。すなわち、その世界の王になれるということだな」
「待ってくれ……ジャックは倒したのか。昨日の時点じゃ……」
「お前と戦った後、お前らについて行く前に倒してきた。なかなか強かったな。俺のLPを1000まで追いつめたのだ。褒めてやりたいところだ。それはさておき。俺はそれを使い、炎の世界全体を、炎の神殿および浮島のデュエルサーキット以外で、賭けによるデュエルを禁止した」
「そんなことができるのか……すごいな」
「そして、光の世界は今、天城ハルトがマスターだ。ルールは、賭けるLPは最低8000、それ以下のLPしか持たない場合、デュエル開始時にペナルティが生じる。なかなか厳しい世界にしてくれたもんだな」
「最低8000……」
つまり遊介はこのまま戦いに行ったら、8000でたった1回で命が持っていかれるということになる。
「だが、奴を倒せば変わる。マスターとなった人間を倒せば、倒した人間が新たなその世界のマスターになれるんだ。そうすればその土地のルールを決め放題だぞ? 消費税100%でも文句は出ない」
「いや、それは出るだろ……」
「冗談だ。まあ、でもそんなこともできるほど、ルールは決め放題になる。もちろん、賭けデュエルのルールもな」
アーロンが冗談を言ったことに遊介は少し驚いたが、分かりやすいルール説明に遊介も納得と首を振る。
「天城ハルトがいるのはおそらく光の世界の一番奥だろうな。天使がうようよ飛んで、お前に襲い掛かってくるぞ。全員1人で倒すのは厳しいだろう?」
「ああ。まあ、そうだな……」
「だから俺が手伝ってやると言ったんだ。お前にエールを送った以上、お前にはちゃんとハルトと戦ってもらわないと、昨日のデュエルの格好がつかない」
言い方は俺の為だと一点張りだが、それでもアーロンは遊介を心配しているのだ。それを感じ取った遊介は、
「ありがとう。ジャック」
と礼を述べる。
「き……気にするな。これも俺が勝手にやっている事だ」
「それでも、この世界でお節介してくれるんだから、お前は優しいんだな」
「ふん。キングとして最低限度の礼儀を尽くしているだけだ。気にするな」
店のドアが再び開く音がしたのはその時だった。
「起きてたなら言えよー」
「マイケル。運んでくれたのか?」
「おうよ。お前さんは軽すぎるぜ。もっとデュエルマッスル鍛えとかないと、死ぬぞ?」
「なんだよデュエルマッスルって……」
こんな時でもマイペースなマイケル。ハルトの件で混乱寸前の遊介にはとても頼もしく見える。
「まあ、冗談はさておきな。光の世界は今、天使が全員下に降りて、侵入者を排除するやべーやつになってる。そのまま突っ込んだらぶっ殺されるし、こそこそ隠れながら1人ずつ引き寄せて戦うにも時間が足りない。そんなんじゃ先にユートが着くだろうな」
「じゃあ、どうすればいい?」
「俺とデュエルさ」
「は? ふざけてるのか?」
「そうじゃないっての。お前にはあるだろ。一つだけ、誰も寄せ付けない結界を張る方法が」
「待てよ、俺は魔法使いじゃないぞ」
遊介にはさっぱり理解できなかったが、アーロンにはマイケルが意図することが通じた。
「データストーム。遊介にはそれを意図的に呼べるスキルがある」
遊介はそれを聞き、初めてマイケルの考えを理解した。
「データストームを意図的に起こして、俺がその中に入っていけばいいのか」
「お前には気合を入れてもらわなくちゃいけないがな。それでも、天使はその中に近づけない。データストームの加速を使えば、15分程度で大神殿にはつくだろうよ」
「でも、光の世界では、LPを賭けるなんてことしたら」
「そこは心配すんな。デュエルのルールはデュエル開始時の場所のルールが適用される。俺の店の中で始めれば、俺が設定した賭けデュエル禁止が適用される。そこから外に出ても保有LPが減る心配はない」
その時遊介には、初めてマイケルが頼りがいのあるお兄さんとして目に映った。
「ついでに新カードもゲットよ。どうだ? お前がくたばっている間、俺様が考えた作戦は?」
「いい。いいなそれ。それでいこう。どのみち正攻法じゃ間に合わないからな」
「よし。決まりだ!。すぐに始めるぞ」
遊介はジャックに、ここまで付き合ってくれたお礼を言おうと近づく。それを察したのかジャックはそれを拒んだ。
「礼は奴を倒してからだ。俺達は、万が一データストームに入ってくる天使が居たらそいつに喧嘩を売って、時間を稼ぐ。お前は絶対しくじるなよ?」
「ああ。分かった」
マイケルが店の中から呼んでいるのを聞き、遊介は店に入る。
マイケルから賭け値無しのデュエルを受諾し、デュエルを開始する。Dボードに乗って、すぐに上空へと舞い上がった。
カードショップからDボードが三機、遅れてもう1機が飛び出す。
遊介はその時は知らなかったが、実はこの時点から、アルターの宣言通り、イリアステルによる公式生放送が始まっていた。上空を舞い、ハルトの待つ光の世界に飛び立った遊介を多くの人間がテレビ画面で鑑賞している。
――さて。いよいよ戦いが始まる。遊介君は勝つか負けるか。君もその目でしかと見届けよう! 実況は私アルターがお送りします!――
この夜は、遊介の知らないところでリンクブレインズの特大イベントになっていた。
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チーム『エデン』本拠地にて
「お姉さま……」
「ええ。そうね。もしもの時は助けないと。三波、リゼッタの小隊に出撃準備をさせましょう」
「……にい、死なないで……」
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チーム『解放軍』バトルシティ支部にて
「遊介……頑張れよ」
「まっつん。俺が頑張れって?」
「お前じゃない。俺が知ってる方の遊介だ」
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チーム『海堂コーポレーション』本社
「ほう。あいつが……」
「兄さま」
「ああ。見届けさせてもらおう。俺は少し出てくる。中継を繋いでおけ」
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光の世界に差し掛かった。たった1日ぶりながら遊介は久しぶりとも思えるそこは、自分たちが追われていた頃の五倍の天使が飛行している。
「厳戒態勢だな」
マイケルの独り言に遊介は同意の頷きを行った。
天使たちは新たに現れた3人の人間を視認すると、まっすぐ飛び込んできてデュエルの申請をしようとする。
「遊介。お膳立ては十分だな! 主街区の大神殿についたらすぐにサレンダーして、そのまま天城ハルトのところへ行け!」
「ああ!」
遊介はスキルを選択する。その瞬間、地面と平行に紫の竜巻が吹き荒れた。遊介はその中に迷いなく飛び込んでいく。
今回の目的は、新カードの確保だけではない。この激しい嵐を読み、Dボードを乗りこなさなければならない。
「ぐ……おおおお!」
気合を入れるように、風の中を突き進む。やがてDボードは嵐の力で普段では考えられないような推進力を発生させた。
「風を掴む……。もう少しだ!」
マイケルとジャックとの通信が途切れた。それは2人がデュエルを始めた証。
(天使か……どれくらい強いのか……)
強さが気にならないわけではなかったが、遊介はその考えを頭から捨てる。
「行くぞ……て、え?」
推測15分と言っていたが、すでに大神殿が目の前に来ていた。
(……いや、さすがに速すぎでは……)
どれくらい速く動いていたのだろうか、という推測はしないことにした。この体が今形を保っているのは、スキルの恩恵による奇跡みたいなものだと思うことにして、データストームを消滅させるべく、手を伸ばす。
「ストームアクセス!」
手の中に新たな希望が集約して現実化する。
(エンコード・トーカー。了解!)
データストームは消失し、大神殿の中へとDボードに乗ったまま突撃する。
神殿は複雑な構造にはなっていない。この神殿は、天空にある天使世界への入り口。水晶でできた柱と、赤いカーペットの先に、たった一つの出口があり、その先に天へと続く階段、ではなくエレベーターが一つ存在するのだった。
そしてその前に1人。まるで遊介の道を阻むように立つ少女が居た。
「エリー」
遊介はその名前を呼ぶと、それに反応するように彼女はデュエルディスクを構えた。
「ここから先は行かせない。私を助けてくれた恩人であるあなたでも」
「俺はこの先に行かなければならない」
遊介がもう一歩前に出ようとすると、
「あと一歩でも前に出たら、自動的に戦いが始まる。私を倒さないと、その場から貴方は動けなくなる」
遊介に自分を殺せと、エリーは宣言する。
「どうして?」
遊介は理由を聞いた。エリーは言うのを躊躇った。しかし、彼女は、遊介が退かないと察し、その理由を説明することにした。
「女神は殺されました。光の世界には新しい王が君臨しました。私は光の世界とともに生きる原住民。大人が全員殺されてしまっても、光の世界を捨てはしません。私は、とっても嫌でしたが、生きるために、王に忠誠を誓いました」
「それが俺を邪魔する理由だと?」
「理由なくして王以外の人間を生かすことは大罪であると」
「君はそれを望んでいるのか?」
「そんなの、ただの冷たい世界です。でも、反逆すれば今度こそ、子供は皆殺しなのです。だから、私は」
遊介は、エリーを憐れに思った。
しかし、救う術はないとも思っていた。
今優先するべきは、エリーではなく瑠璃の命。
(だが……やるのか?)
どうしても意を決することができなかった。なぜなら、それを認めてしまうと、まるで正義の為ならどんな命も見殺しにしても構わない、ということを認めてしまうような気がしたからだ。
それを遊介は、とても格好悪いことだと認識している。
「君はどうしたい?」
「そんな問いは無駄です!」
感情的に遊介の問いを拒むエリーだったが、遊介はもう一度問う。
「何が君にとって嬉しい?」
「だから!」
「答えてくれ」
「それは……貴方と戦わないのが一番だけど……」
「俺は今から王を倒す。それで君を自由にする」
「あの方は、あなたには倒せない。強すぎる! あなたはすぐにここから逃げるべきです!」
「……どうして俺に逃げろって言ってくれるの?」
それが彼女の善性だった。光の世界で生きてきた彼女は、遊介を倒すべき敵とは認識しなかった。それが言葉として現れたのだ。
「それは……その……」
「俺は君とは戦いたくない」
「でも……こうするしか」
そこに。問答を差し置いて。
遊介を追い抜き、戦いの場に出た人間が現れた。あまりに急な参戦で、遊介はその人間を止められなかった。
「会長……!」
現れたのは寝ていたはずのブルームガールだった。
「遊介。私をおいて行かないでよ。私もあなたの味方よ」
「いや……寝てたから」
「おかげであなたに追いつくために、貴方が呼んだデータストームに飛び込まなくちゃいけなかったじゃない! 死ぬかと思った!」
「それを俺に言われても……」
ブルームガールは、エリーの警告にあるように、戦いを強制される。デュエルディスクが勝手に起動し、エリーとブルームガールが戦うことになってしまった。しかしブルームガールはその状況に動じることはなかった。
「先行きなさい」
「かいちょ……」
遊介がブルームガールに睨まれたのは、この世界でその呼び方はやめろということ。
「ブルームガール。エリーは」
「心配しない。ほどほどに戦って時間を稼ぐ。その間に終わらせてきて」
しかし遊介の顔は晴れない。遊介の懸念は、すでにデュエルが始まってしまったことにあった。
「もうLPを賭けて戦いが始まった。死んで」
「大丈夫よ。光の世界のマスターを倒せば、ルール変更につき光の世界で行われているデュエルは強制終了になる。ジャックの時に実験したから」
「実験?」
「私たちだって、ハルトに一泡吹かせるために、いろいろ考えたの! でも、あなたが勝たないと意味ないからね!」
遊介はそのことを知らされてはいなかった。
遊介の仲間たちは、すでに戦いを始めていた。ハルトから瑠璃を奪還するために、何をするか、何ができるか。気を失っている間もずっと考え続けていたのだ。
それを知り、自分がいかに良い仲間に恵まれたかを改めて実感する。そして、その働きに報いるためには、勝つしかないと覚悟を決めた。
「――ありがとう!」
「細かい文句はいくらでもあるけど、今は言わないわ。頑張って!」
ブルームガールのエールを胸に刻み、遊介は走り出す。
「待って……」
エリーはそんな遊介を止めようとするが、デュエルが始まってしまった強制力で足が動かなかった。
本当なら止めるべきだと訴える理性と、どこか、ある日急に現れた救世主に期待をしてしまう感情をもつ自分がいた。
「さあ、エリーちゃん。デュエルをしましょう。この世界が変わるまで適当に時間稼ぎをするわよ」
ブルームガールがディスクを構える。
一点の迷いもなく遊介を送り出したブルームガールにエリーはふと疑問が浮かんだ。
「遊介さんは……勝てると思っていますか?」
それに対しブルームガールは、一秒のタイムラグなく答える。
「勝つ。私たちはそのために来たんだもの」
【23】
運命の戦いの場。月と星々は水晶でできた聖火灯る決戦場を優しい光で照らす。
天空の大神殿、その最奥に用意された戦場は、空にあまりに近く、まるで夜空に包まれているのかと思わせるほどの幻想的な風景が周りに広がる。
そこに、囚われの姫は待っていた。
そこに、天城ハルトは待っていた。
最初の来訪者は、約束の人間ではなかった。
「君が来たか。ユート」
ハルトは、懐かしく思う友人の名を口にする。
「瑠璃を取り戻しに来た」
目的を包み隠さず、堂々と言うユートの目には、怒りの炎が宿っていた。
「そう怖い顔をするなよ。瑠璃は殺さないさ。でもあいつは来ないみたいだね」
「お前を止めるのは遊介の役目ではない」
「そうか。だが、約束は覚えているな?」
「俺は遊介の代わりに来たんだ!」
「ふざけるな。僕は遊介が来いと言った。約束は約束だ。遊介が来ないのであれば、それ相応の報いを受けてもらう」
「待て!」
ハルトはそれ以上ユートの声に耳を貸さなかった。右手を出すと、その手は青色に光り輝く。
「やめて……」
恐怖で顔が歪んでいる瑠璃を見ても、ハルトは容赦はない。右手を出すと、手の形をした何かが、瑠璃に迫っていく。
「やめろ!」
ユートは走り出したが、その体に電撃が走る。
「が……!」
「おとなしくしてくれ。瑠璃は殺さないさ」
青い手が瑠璃の中に差し込まれた。
「あぐ……あぁぁ……」
死んだ魚のような目になった瑠璃。その体の中をハルトは容赦なくえぐっていく。
「……逃げているのか。だが、魂は体から出ることはせきない」
瑠璃の目からなみだが零れ落ちる。言葉にならないような異物感と、気持ち悪さが襲い掛かっていた。ユートはその経験を神代凌牙から聞いたことがあり、それを瑠璃が味わっていると思うと言葉にならない苦しみをユートは感じている。
「やめろ! やめろぉ!」
ハルトは聞き入れない。ユートの声を全く耳に入れようとすらしない。
ユートを苦しめる電撃はその威力を増す。黙れ、とハルトが言う代わりにユートにプレッシャーを与えた。
「あ……」
「追い詰めた。引き抜くぞ」
「やめて……!」
「大丈夫だ。君を蝕む余計な魂を潰すだけだ。起きた頃には元通りの君が蘇るはずだ。レジスタンスで一緒に戦った頃の君に。ユートもすぐに君と同じにしてあげるよ」
「だめ……だめ……」
あと5秒。それだけ時間があれば魂の摘出に十分。ハルトは確実に、落ち着いて、処理を進めていく。
(もう……だめ……!)
瑠璃は思ってしまった。諦めてしまった。
そして、5秒。
ハルトは確かに、魂を握った。後は引き抜くだけだ。
瑠璃の命は、そしてその体に宿っている魂は複雑に絡み合っている。引き抜けば瑠璃の魂ごと消えてしまうことを、ハルトは分かっていない。だからこそ、ハルトの行動に迷いはない。
「あ……!」
手が引き抜かれた。
瑠璃は、その瞬間意識を闇に沈められ――。
――なかった。
ハルトはフォトンハンドを強制的に終了させる。そして、ユートへの電撃をも中断させる。彼の視線の先には、約束の男がいた。
「来たぞ」
ハルトは瑠璃から離れ、現れた遊介の方に体を向けた。
「来たか」
「なんで仲間の2人までひどい目合わせるんだ。お前の狙いは俺のはずだ」
「簡単なことだ。僕は、仲間以外のあらゆる人間を信用しない。レジスタンスは常に最悪の事態を想定して戦う者だ。僕は見知らぬ人間を徹底的に排除する。仲間という存在は否定するつもりはない。だが、ここは敵地だ。そこで絆を結ぼうなど、それこそ、利用されて悲劇の引き金になる」
「だから、お前は信用できる人間以外は殺すわけか……」
遊介は3歩前に出た。
「遊介……だめだ!」
ユートが怒鳴ったのはすべて遊介を心配してのこと。しかし、
「ユート。俺はお前と同じチームの仲間だと個人的には思っている。だから、君が大変なときは助けさせてくれ」
遊介は殺気すら感じさせるユートの顔をみても臆することなく言った。
「仲間……貴様が?」
ハルトの目に怒りが灯ったのはその時だった。
「その顔で……その声で、その姿で、仲間だと? ふざけるなよ。所詮貴様も裏切る。あいつと同じ血を持っているのなら、そうに決まっている!」
ハルトの手からロープのようなものが伸びる。そのロープは遊介のデュエルディスクがある腕に巻き付いた。すぐにロープは消えたが、その腕には刻印が刻まれる。
「これでお前はここから逃げられない」
「俺を殺せば、俺はリーダーだ。俺は代わりに他のメンバーから命を奪うことになる」
「その心配はない。ここは今俺の世界だ。この世界ではリーダーを殺したら、そのリーダーが誰から命を奪うかは勝者が選択できる。ユートと瑠璃以外のお前の仲間は、お前を通じてLPを意図的に0にできる。そういうルールにした」
「面倒なルールにしたな」
「本来ならリーダーのチームメイトの命をはく奪するシステムを無効にしたかったがそれはできなかった。しかし光の世界でそんなことができるからこそ、僕はお前をここにおびき寄せた。普通に殺すだけなら、あの後すぐに殺すこともできた」
ハルトはデュエルディスクを構える。
「準備は整った。僕は、エクシーズ世界の僕の仲間を騙そうとした敵であるお前を葬る。今ここで。デュエルモード、フォトンチェンジ!」
遊介は逃げるつもりはなかった。
しかし、LP8000が最低の賭け値、そして負ければブルームガール、マイケル、ヴィクターの誰かが殺される。その2つが懸かった戦いの前であり、改めて意識すると緊張で心臓が爆発しそうだった。
(恐れるな……)
己に言い聞かせて、地面をしっかりと踏みしめる。デュエルディスクを構え、戦いの姿勢になった。
「遊介……」
瑠璃の弱弱しい声に、遊介は、
「大丈夫。そこで見ていてくれ。俺はしっかりけじめをつけるよ」
と答え、心配そうに見るユートに頷いてみる。
ユートは何かを言いたげだったが、それを中断し、
「頑張れ……瑠璃を頼む」
と遊介の戦いを見守ることを宣言した。
遊介のデュエルディスクには断りようのないデュエル申請が来る。
ルールは、初期ライフ8000、手札5枚で行うマスターデュエル。
遊介は決闘を受諾する。
お互いはカードを5枚ドローした。
この戦いに邪魔は入らない、退く道もない。互いは相容れない存在として命を賭けた戦いが始まる。
「ここで死ね」
「いいや死なない。俺はここに勝ちに来た」
――戦いが始まる。
「デュエル!」
「デュエル!」
遊介 LP8000
天城ハルト LP8000
(後編へ続く)
長くなってしまったので、前後編で分けています。
後編はついにデュエルに突入します。ぜひご覧ください!