遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』   作:femania

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注意事項

・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。

これでOKという人はお楽しみください!

遊介は果たして勝てるのか?
それとも作者の意地悪で負けて、主人公を変更されてしまうのか?
決着の時です。

9月20追記 
閲覧していただいた方から、ミスの指摘がありました。ただいま訂正案を考え中です。それまでは、ミスの部分は飛ばしていただき、ストーリーをお楽しみください。
→9/21 たぶん訂正完了です。(苦し紛れ)


12話 英雄の守護竜

【24】

 

ハルト LP5400 手札2

モンスター ⑦ 超銀河眼の時空竜

魔法罠 伏せ1

 

遊介 LP2300 手札0

モンスター 

魔法罠 伏せ1

 

(ハルト)

□ □ ■ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

  ⑦   □     EXモンスターゾーン 

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ ■ □ □   魔法罠ゾーン

(遊介)

 

「何故立つ。お前はあいつと同じ血を持っているのに。仲間を売り自分が楽になることを選ぶあいつと同じ血を持っている貴様が、なぜそうまでして立つんだ」

 

ユートも瑠璃も、今の遊介を見て絶句していた。

 

遊介は立っていた。しかし無事とはとても呼ぶことはできない。

 

遊介はハルトを見る。しかしその視界はぼやけている。目を閉じたいという欲求が、決意を揺さぶってくる。

 

服はところどころが焼かれていた。それが演出なのか本当の火傷なのかは判別がつかない。

 

大きく息を吸い、そして吐きだす、というただの呼吸活動すら意識的に行わないと体に酸素が届かない。

 

(だめだ……まだ倒れちゃだめだ!)

 

遊介は必死にそう自分に言い聞かせることで何とか己を保っている。

 

「遊介、もうやめろ!」

 

ユートの声が聞こえても、遊介は頑なにディスクを構え戦う姿勢を見せる。

 

「お前はもう限界だ!」

 

長年レジスタンスで戦ってきたユートの忠告は正しい。それは分かっている。

 

それでも遊介はデュエルディスクを構え、戦いの続行の意思を示した。

 

退けない。自分をここまで導いてくれた仲間のために、自分に命を預けてくれている仲間のために。誰かを守れるヒーロー気取りにしてはずいぶん無様な格好だったが、それでも遊介は仲間を失いたくなかった。

 

命賭けの世界でできた本当の仲間にひどい目に遭ってほしくなかったのだ。

 

体をふらつかせながらも、何とか意識を保ち、デッキに手を置いた。

 

「今にも血反吐吐きそうな最悪な顔だな。何故お前はそこまで戦う。この世界に来るまで知りもしなかった赤の他人のために」

 

「……悪い、かよ……」

 

「悪いに決まっている。どうせお前もユートや瑠璃を利用しようとしていた。そして自分たちが命の危機に瀕した時、容赦なく2人を地獄へ生贄に捧げるんだ。そんなことを僕が認められると思うのか?」

 

「そんなこと、するわけない!」

 

「黙れ。絶対にお前はそうする。お前は、その手で友を殺す」

 

2人は分かり合えない。思想が違いすぎる。

 

遊介はあらゆる出会いを肯定する。その中で、希望を見つけて生きていく。

 

ハルトはあらゆる可能性を悲観的に見る。徹底的なリスク排除。そうすることで自分を、仲間を生かそうとする。

 

2人は相容れないのだ。

 

遊介は何故話が通じないのかをようやく理解した。

 

これ以上の言葉を述べることなくカードをドローする。

 

 

ターン6

 

 

「俺のターン!」

 

カードを引いた。そして見た。モンスターカードだったことに安心し、遊介は伏せカードを発動する。

 

まだ戦意は、戦う意思は途絶えていない。

 

「罠カード。『リコーデット・アライブ』。墓地のリンク3サイバースを除外して、エクストラデッキからコード・トーカーモンスターを1体特殊召喚する。俺は墓地のデコードトーカーを除外して、エクストラデッキから、パワーコード・トーカーを特殊召喚!」

 

縋るように差し出した手。それに応えたのは赤きコードトーカーだった。

 

「悪あがきを……」

 

確かに2300であれば、次の黄金の竜の攻撃を受けても遊介のライフは100残る計算になる。

 

ハルトはそこまでを想像した。

 

しかしながら、遊介にとっては、この赤いサイバースの戦士は、危機を打開する希望の1手であった。

 

パワーコード・トーカー

リンクマーカー 左 左下 右下

ATK2300/LINK3

 

余計な言葉を言う余裕は今の遊介にはない。淡々と作業を進める。

 

「手札のドットスケーパーを、パワーコードトーカーのリンク先に通常召喚」

 

ドット・スケーパー レベル1 攻撃表示

ATK0/DEF2100

 

「バトル!」

 

そして遊介はすぐにバトルフェイズを宣言した。

 

「頭が沸いたか?」

 

遊介は反論しなかった。頭は既におかしくなっている。ねじが数本飛んでしまっている。脳で思いついた言葉は本来吟味されてから、音声をつけられ飛ばさるが、今の遊介にはその吟味をするだけの余裕はなく、思いついたことをそのまま口から発射してしまう。

 

「安心しろよ……俺は諦めたわけじゃない」

 

遊介はためらいなく宣言する。

 

「パワーコードトーカーで、ネオタキオンを攻撃!」

 

赤い戦士は飛翔する。そして黄金に輝く時空竜へとまっすぐ突撃していく。金の時空竜はその赤い戦士を迎え撃つべく黄金の炎を口元に宿し始めた。

 

「この瞬間、俺はパワーコードトーカーの効果を発動する! このカードが相手モンスターと戦闘を行うとき……、リンク先の、はぁ、はぁ、モンスター1体をリリースして、その攻撃力を倍にできる! 俺はドットスケーパーをリリース!」

 

赤い戦士の力はこの効果を持って倍増する。

 

パワーコード・トーカー ATK2300→4600

 

先に放たれようとしていた炎を、パワーコードトーカーは自らが持つフックショットのような武器を放ち、三つ首の一つに当てることで阻害する。

 

「パワーターミネーションスマッシュ!」

 

遊介が必死に叫ぶと同時刻に、攻撃力が倍加したパワーコード・トーカーは黄金の竜を貫いた。

 

(勝)パワーコード・トーカー ATK4600 VS 超銀河眼の時空竜 ATK4500(負)

 

「く……」

 

ハルト LP5400→5300

 

ハルトに与えたダメージは微々たるもの。しかし、ハルトの真の切り札である超銀河眼の時空竜を破壊できたことに大きな意味がある。

 

しかしハルトは、相変わらず表情を変えない。自分のモンスターが消えてなお、己の勝利を疑わない。

 

(まだ……なにか……)

 

遊介は己を蝕む嫌な予感をぬぐうことができなかった。

 

遊介 LP2300 手札0

モンスター ⑧ パワーコード・トーカー ⑨ ドットスケーパー

魔法罠 

 

(ハルト)

□ □ ■ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

  ⑦   ⑧     EXモンスターゾーン 

□ □ ⑨ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

(遊介)

 

 

ターン7

 

 

「時空竜を倒した。それで?」

 

「なに?」

 

「この程度で終わりなら、僕は、兄さんのギャラクシーアイズデッキは、エクシーズ世界最強などとは呼ばれない」

 

「な……な!」

 

遊介は限界が近い。先ほどのパワーコード・トーカーの1撃もモンスターが来なければ不可能だった。すでに遊介のデュエルは運頼みの領域なのだ。

 

誰が言ったかは分からないが、遊介はこの言葉を思い出す。『奇跡とは、二度と起こらないから奇跡と呼ばれる』

 

「僕のターン。ドロー」

 

ハルトは静かにカードを引く。

 

ハルト LP5300 手札3

モンスター

魔法罠 伏せ1

 

その光景を遊介は見た事がある。瑠璃にとどめを刺すときと動きがほぼ同じだった。

 

それは勝利を確信しているが故の行為であるならば。そう考えるだけで冷や汗が肌を伝うことがしっかりと感じられる。

 

「装備魔法。『銀河零式』(ギャラクシーゼロ)を発動。自分の墓地のフォトン、もしくはギャラクシーモンスターを攻撃表示で特殊召喚する! 僕は墓地のギャラクシーアイズフォトンドラゴンを特殊召喚!」

 

そのカードは最初から手札にありながらもずっと使わずに残していたカード。自らの魂たる竜を再びこの戦場に呼び戻すために彼が残していた手段。

 

モンスターが居ないこの状況さえも、ハルトには想定の範囲内だったということ。

 

(なんて……奴だ)

 

再び現れた銀河眼の竜を前に遊介はハルトの力を甘く見ていたことを知った。

 

銀河眼の光子竜 レベル8 攻撃表示

ATK3000/DEF2500

 

それだけでは終わらない。ハルトはさらに手を残していたのだ。

 

「この装備魔法にはデメリットがあるが、今は関係ない。僕はさらにマジックカード、フォトンサンクチュアリを発動。自分フィールド上に、フォトントークン2体を特殊召喚する」

 

現れた2つの光の玉。

 

フォトントークン レベル4 守備表示

ATK2000/DEF0

 

「僕はこのターン、光属性のモンスターしか出せない。だがそれも関係ない。僕の手札は光属性だ。そして先ほど引き当てたカードを出すため、フォトントークン2体をリリース。フォトンカイザーをアドバンス召喚する。

 

二つの球は一つに混じり、光り輝く円環を顕現させた。その中から現れたのはフォトンモンスターの皇帝。

 

フォトン・カイザー レベル8 攻撃表示

ATK2000/DEF2800

 

「このカードの召喚に成功したとき、デッキからフォトンカイザーを特殊召喚できる」

 

「もう1体……!」

 

その皇帝はもう1体遊介のフィールド上に現れた。

 

レベル8のモンスターが3体。

 

遊介が恐れていた事態が現実になろうとしていた。

 

ハルトはここで深呼吸をする。そして、覚悟を決めた真剣な顔つきになる。

 

「俺の仲間に近づいた罪。未来に犯すであろう貴様の罪。俺はそのどれをも認めない。ここですべてを断罪する。さあ、懺悔の用意はできているか!」

 

そんなものはしない。遊介はそう決めている。

 

しかし、ここでそんな強がりを言ったところで耳を傾ける人間はいない。

 

なぜなら、断罪を拒む者は既に負けが確定しているから。

 

「俺はレベル8のギャラクシーアイズ、そしてフォトンカイザー2体でオーバーレイ!」

 

青き銀河の竜は光となり、2人の皇帝とともに遥か空へと飛翔していく。そこにできた黒い渦をめがけて。

 

到着。ハルトの手に赤い槍が握られる。

 

「逆巻く銀河よ! 今こそ怒涛の光となりて、我が僕に宿れ!」

 

口上ともに天上へ投擲された槍。

 

その時、銀河の爆発を見違えるほどの神秘的な色の爆発が起こった。

 

「降臨せよ。我が魂! ネオギャラクシーアイズフォトンドラゴン!」

 

そして天より現れたのは黄金の時空竜と同等の力を持った、赤き光子竜。身に宿す力はさらに大きく、それは顕現するだけで空気を震わせ、存在のみであらゆる生命を平伏させるほどの、力の化身。

 

超銀河眼の光子龍 ランク8 攻撃表示

ATK4500/DEF3000

 

「あ……ああ……」

 

遊介にはまだ戦う気力はあった。が、手立てが残されていなかった。

 

先ほどの1撃が本当に最後の1撃だったのだ。

 

ハルトはそれを分かってか、もはや遊介に対して警戒はしていなかった。ここから先は倒すべき敵との戦いではなく、処理すべき雑魚排除という雑務となっていた。

 

「ネオギャラクシーアイズの効果! ギャラクシーアイズフォトンドラゴンを素材としている時、フィールド上に表側表示で存在しているカード効果をすべて無効にする。フォトンハウリング!」

 

威嚇の波動。たったそれだけで時空竜を破ったパワーコードも畏怖してしまう。

 

遊介はその時、何を感じていたか。

 

それはたった一言で表すことができる。

 

絶望。

 

次の1撃を体が耐えることはできない。仮に耐えられても、もはや遊介には――

 

生半可な敵ではないことは知っていた。

 

エクシーズ世界最強であることも分かっていた。

 

そして、自分が勝てる可能性は低すぎることも分かっていた。

 

それでもここにきて戦いを決意したのだ。しかし、それすらも驕りだった。

 

なぜなら、勝てる可能性が低いのではなく、勝てないからだ。

 

この時。今までどんな痛みにも必死に耐えて、どんな試練も乗り越えてきた遊介の闘志がついに枯渇してしまった。

 

「これで終わりだ。LPは残るが所詮はたった100。そしてお前のデッキにはもはやこのモンスターを乗り越える手段はない。その前にお前の精神が持たないだろうがな。バトルだ。ネオギャラクシーアイズフォトンドラゴン。パワーコードトーカーを攻撃」

 

超圧縮された光子のエネルギー波。遊介はそれが感覚的に先ほど己を瀕死へ追い込んだ裁きの一撃と同等の力を持っていることを悟った。

 

「ああ……ああああ……」

 

ただ、うろたえるしかできない遊介。

 

「もうだめだ。やめてくれ!」

 

「お願いやめて……やめて!」

 

ハルトに命乞いを続けるユートと瑠璃、しかし、

 

「もはや奴に逃げ場はない。泣いて命乞いをしようと僕は聞き入れない。僕は害をなす可能性があるものをすべて排除する。僕の、最後の仲間を守るために」

 

ハルトは指さす。己の魂たる赤き光の竜が倒すべき標的へ。

 

「アルティメットフォトンストリーム!」

 

(勝)超銀河眼の光子竜 ATK4500 VS パワーコード・トーカー ATK2300(負)

 

放たれた一撃を遊介は受け入れた。

 

先ほどが黄金の炎と比喩するならばこちらは灼熱の赤炎。ハルトの抱える怒り、憎しみの炎の具現化だった。

 

すでに遊介の目は何も情報を入れていない。

 

溶けていく。痛みではなく、自分がこの世から消えていくような喪失感。

 

体は衝撃に耐えられず浮遊し、戦闘場から強制退場させられた。

 

目を開けていようとも、意識はブラックアウトしていた。

 

遊介は天空の闘技場だけでなく、天使の住まうこの聖域から落下し、そのまま地上へと墜落していく。

 

「遊介ぇぇ!」

 

チームメイトの悲鳴が天を貫いた。

 

遊介 LP2300→100

 

「ターンエンド」

 

ハルトは、デュエルの終わりをあえて宣言しなかった。遊介は落下で物理的外傷を受け死ぬ。それには、リーダー特権の仲間のLPの自動譲渡は関係ないうえに、チームは強制解消となる。それはそれでいい幕引きだと思ったのだ。

 

ハルト LP5300 手札0

モンスター ⑩ 超銀河眼の光子竜

魔法罠 伏せ1

 

(ハルト)

□ □ ■ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

  ⑩   □     EXモンスターゾーン 

□ □ ⑨ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

(遊介)

 

 

【25】

 

 

(だめか……)

 

もう死ぬ。遊介はそう思った。

 

(だめなのか……)

 

負けたのだ。遊介はそう思った。

 

もはや体はどこもかしこも痛みすらあげず、なにも反応しようとしない。

 

遊介はデュエルディスクを見た。LPは100残っている。

 

しかしもう戦おうとする気力が沸いてこなかった。

 

それがどうしようもなく悔しかった。

 

(何が悔しい)

 

己に問い詰めた。

 

(瑠璃を助けられなかったことか。何を言う。俺ははヒーローではないはずだ。誰かを助けるだけの力はなかった)

 

また考えた。

 

(ならチームリーダーとして無様だからか。そりゃそうか。俺は勝てない。仮にDボードを呼んで奇跡的に戻れたとして、その後はどうしようもない。俺は負けてきっと誰かを殺してしまうんだ。あいつの言う通り、俺が殺した)

 

正しい。正しいが足りなかった。

 

(やっぱり格好悪いからか……。それも……そうなんだけど

 

やはりそれだけでは足りなかった。『それだけでは』。

 

(……いや、そうか……そうだな)

 

その答えは簡単なことだった。遊介は自問自答でもはや意味のない答えを得た。

 

「ははは……もう死ぬ……」

 

その時、デュエルディスクが光った。

 

「ん……?」

 

正しくはディスクが光ったのではない。その中に入れていたかカードが光ったのだ。遊介はそのカードを手に取る。

 

それは以前キングとのデュエルで失敗したストームアクセスで手に入れたなにも書かれていないリンクモンスター扱いのカード。

 

そのカードが光り輝く。すると下の方から紫の竜巻が遊介目掛けて龍のように昇ってきたのを見た。

 

遊介は無抵抗にその竜巻に巻き込まれる。体が凄まじい勢いで浮かせられていく。

 

竜巻の中。

 

遊介はまた、かつて一度だけ出会ったことのある竜の姿を見た。まるでそのデータストームはその竜が起こしたかのようにその竜はデータストームの中心に居たのだ。

 

いつものデータストームとは違う。その竜巻は遊介になんの危害も与えなかった。包み込むようにして優しく、天にある戦いの場へと運ぶ運び屋。

 

竜は遊介を見る。

 

何も書かれていないカードはまるでその竜を求めるように輝いた。

 

「お前……やっぱり、あの火山の竜巻の……」

 

竜はその言葉が分かったのか、ゆっくりと頷く。

 

「ごめんな。あの時、失敗しちゃって」

 

竜はそれでも遊介を見続けていた。

 

遊介は未だすべてが見えないその竜の正体に気が付く。この竜であれば、どんなに強力な相手でも戦うだけの力がある。

 

遊介は自分の思いをぶつける。

 

この竜に協力してほしい。その思いをありったけ。

 

「俺は負けられない。絶対に勝たなくちゃいけない。そのために君の力を貸してほしい。俺は」

 

竜は頷いた。

 

「いいのか? 俺は――と違って頼りないぞ?」

 

それでも竜は頷いた。竜の決意も堅かったのだ。遊介を助けるために、データストームを起こして助けた時点で、その竜は、すでに自らの力を使う主を決めていた。

 

何故。と遊介は思う。しかし、それは野暮な質問だった。

 

まだ何も書かれていないカードを前に差し出す。

 

「この前の続きだ。今度こそ、俺と一緒に来てくれ」

 

竜巻の中に咆哮が響き渡る。

 

カードの中に力が注ぎ込まれていく。

 

テキストにその竜の名前が刻まれていく。

 

その名は――。

 

 

【26】

 

 

竜巻が戦闘場のすぐ近くに発生する。

 

「ち……なんだ、こんな時に」

 

ハルトもこの気象異常に驚いていたが、ユートと瑠璃には嬉しい知らせが来た。

 

その竜巻の中から、助からないと思われた男が現れた。

 

「貴様……」

 

すでに心も折れたかとハルトは判断していた。しかし、遊介に宿るその目は、未だ希望を失っていなかった。

 

「往生際が悪いことだ。さっさと死んだ方が楽になれたものを」

 

「ああ。正直、今ももう、次に倒れたら俺は立てないだろうな」

 

と自分を評しながらも、

 

「それでも……俺には、絶対に負けられない理由が3つある」

 

と、自分が心のどこかで憧れていたヒーローを遊介は真似た。

 

「1つ。俺は友達を失わないためにこの世界に来た。それは彩や松だけじゃない、ユートや瑠璃、マイケルやブルームガールもだ。2つ。俺はチームリーダーだ。俺が死ねば代わりに誰かが死ぬ。そんなことは、ここまで俺を導いてくれた仲間に申し訳が立たない。そして3つ」

 

その言葉はこの場の誰にも衝撃を与える一言を言い放った。

 

「何より負けたら……格好悪いだろう?」

 

遊介はにやりと笑って言い切った。

 

ユートと瑠璃は唖然とする。そんな理由で限界の体を動かしてまだ戦うのかと。

 

そしてハルトは、

 

「何を言い出すかと思えば……貴様、とうとう壊れたか」

 

と、憤りを超えて呆れしかなかった。

 

しかし、遊介は今自分が言ったことを恥じていない。

 

「俺は何も後悔なんてしていない。俺は最後まで諦めない」

 

遊介はデッキに手を置いた。

 

今にも意識がまた飛んでいきそうな状態、戦いの状況、どちらで見ても、猶予は次のターンしかなかった。

 

「行くぞ……!」

 

 

ターン8

 

 

「俺のターン! ドロー!」

 

遊介は最後のドローを行った。

 

遊介 LP100 手札1

モンスター ⑨ドットスケーパー

魔法罠

 

そして最後のターン。遊介の頭の中には今引いたカードに見覚えがなかった

 

「ファイアウォール、お前がくれたのか……現れろ! 未来を導くサーキット!」

 

天空に召喚のサーキットが現れる。

 

「召喚条件はレベル2以下のサイバース1体。俺はドットスケーパーをリンクマーカーにセット、サーキットコンバイン! リンク召喚、現れろリンク1、トークバックランサー!」

 

最初に呼んだのは、小さなサイバースの槍使い。

 

トークバック・ランサー

リンクマーカー 下

ATK1200/LINK1

 

「そして俺は魔法カード『カウンタープログラム』を発動。リンク召喚に成功したとき、俺のライフが相手ライフの数値の半分より低く、自分モンスターの攻撃力の合計が相手モンスターの攻撃力の合計より低い場合、デッキからレベル4以下のサイバースモンスターを効果を無効にし、自分リンクモンスターのリンク先以外に、可能な限り守備表示で特殊召喚できる! ただし、このターン発動以降、俺はサイバースリンクモンスターしか特殊召喚できない。俺はこの4体特殊召喚!」

 

ドラコネット レベル3 守備表示

ATK1400/DEF1200

 

ビットロン レベル2 守備表示

ATK200/DEF2000

 

サイバース・ウィザード レベル4 守備表示

ATK1800/DEF800

 

バックアップ・セクレタリー レベル3 守備表示

ATK1200/DEF800

 

「このターンでケリをつける」

 

「できもしないことを。今のお前のデッキにそんなカードは存在しない」

 

「なら、試してみるか?」

 

不敵な笑いを浮かべる遊介。

 

ハルトは身構えた。その笑みが本物に見えたから。

 

「俺が未来を託すのはこいつだ……! 現れろ未来を導くサーキット!」

 

再びリンク召喚のサーキットが開く。

 

「召喚条件はモンスター2体以上! 俺は、カウンタープログラムで呼んだ4体をリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン!」

 

先ほど呼び出した4体が流星となり、合計4つの光が上下左右に煌めいた。

 

「これこそが俺の、サイバースの新たなる可能性! あらゆる敵を拒み、焼き尽くす、電脳世界の守護を司る竜。今、迫る敵を排斥するため、その姿を現せ!」

 

そして現れるのは竜巻の中で出会い、遊介を主と認め、その男を守る守護竜。

 

「リンク4! ファイアウォールドラゴン!」

 

白き体と青い光を宿す黒い翼。サイバース族真のエースモンスターが遊介を守るために舞い降りた。

 

ファイアウォール・ドラゴン

リンクマーカー 上 下 左 右

ATK2500/LINK4

 

「リンク4……!」

 

ハルトも現れたその竜にただならぬ何かを感じ警戒する。

 

しかし、その警戒は無意味と化す。

 

ハルトは確かにあらゆる事態を想定して戦う戦士である。しかし、ファイアーウォール・ドラゴンの効果は、そもそも、対策する方法が少ない。

 

「ファイアーウォールドラゴンの効果! このカードと相互リンクしているモンスターの数まで、自分または相手のフィールド、墓地のモンスターを対象として発動! ファイアーウォールドラゴンと相互リンクしているモンスターは上にあるエクストラゾーンのトークバックランサー1体。よって、俺は1体、ネオギャラクシーアイズフォトンドラゴンを対象にする。そのモンスターを持ち主の手札に戻す!」

 

「な……んだと……!」

 

ハルトは初めて顔を歪めた。

 

「ようやく……驚いてくれたな。これが俺の新しいエースの力だ。エマージェンシーエスケープ!」

 

電脳世界の竜から激しい電撃が放たれる。

 

赤い竜はその電撃に焼かれる。凄まじい攻撃力を持つその竜も、その電撃には耐えきれない。

 

光子の竜は、皮肉にも自らが光の粒子となって四散する。

 

そして、ハルトのフィールドはがら空きになった。

 

「く……」

 

ハルトは遊介を睨む。

 

それはそのはず。なぜなら、すでにLPが削りきられる理由は自らで説明していたからだ。

 

「現れろ未来を導くサーキット! 召喚条件はサイバース族リンクモンスター1体。俺はトークバックランサーを素材に、ファイアーウォールドラゴンの右のリンク先に特殊召喚する。出でよ、セキュアガードナー!」

 

セキュア・ガードナー 

リンクマーカー 右

ATK1000/LINK1

 

「さらに、墓地の『リコーデッド・アライブ』の効果。EXモンスターゾーンにモンスターが存在しないとき、このカードを除外し、除外されているコードトーカー1体を特殊召喚する。俺はファイアフォールドラゴンの左に、除外されたデコードトーカーを特殊召喚する」

 

デコード・トーカー 

リンクマーカー 上 左下 右下

ATK2300/LINK3

 

現れた2体のリンクモンスター、そしてファイアウォール・ドラゴンの総攻撃によって削られる総LPは5800.止めを刺すには十分な攻撃力。

 

「くそ……貴様!」

 

「お前は強かった。強かったよ。でも侮ったな。これでお前に勝つ!」

 

そして、最後の宣言を行う。

 

本当に最後だった。これを耐えられたら、もう体が耐えられない。どうか終わってくれという願いを込めて、

 

「バトル!」

 

遊介は叫ぶ。

 

「セキュアガードナーでダイレクトアタック!」

 

攻撃は入った。ハルトは必死に攻撃を受け止める。

 

「ぐ……」

 

ハルト LP5300→4300

 

「デコードトーカーでダイレクトアタック!」

 

紫の戦士の大剣による斬り上げ。その衝撃に耐えられず、ハルトは打ち上げられた。着地は背中からになり、凄まじい痛みがハルトに襲い掛かる。

 

「が……!」

 

(攻撃が通った! あの伏せは発動できないカード……!)

 

ハルト LP4300→2000

 

「ファイアウォールドラゴンでダイレクトアタック!」

 

遊介はこれが最後だと信じた。

 

ファイアウォールドラゴンの翼が変形し、体が赤く染まり、そして翼があった竜の後ろが炎の壁を表す円状の力場を生成した。

 

「テンペストアタック!」

 

撃ちだされた紅蓮の炎のごときレーザーを撃ち放った。

 

これで終わる。

 

遊介はそう信じた。

 

しかし――、もう一度言う。ハルトはエクシーズ最強の戦士。

 

伏せカードが発動できない無駄なカードであるはずがなかった。

 

「罠カード、『フォトン・プロテクター』。この戦闘で戦っている俺のモンスターは戦闘では破壊されず、さらに俺がこの戦闘で受けるダメージは0になる!」

 

ハルトの前に青白い光の盾が現れた。その盾が、レーザーを受け止め、その爆発から、ハルトを守り切る。

 

「な……!」

 

「この程度で……終わると思ったか。貴様になど負ける俺ではない。さらなる効果により、俺は墓地のフォトンモンスターを1体手札に戻す。俺は墓地のギャラクシーアイズクラウドドラゴンを手札に戻す」

 

そしてギャラクシーアイズを蘇らせるカードを手札に戻された。

 

遊介は黙っている。

 

ハルトはそれを、今度こそ敗北を認めた証としてとらえた。

 

「これで貴様の攻撃は終わった。次のターン。俺が墓地のギャラクシーアイスを蘇らせ、その攻撃で終わらせる」

 

そう。それが真実。

 

結局遊介はハルトに勝つことなどできなかった。

 

ファイアーウォールドラゴンという奇跡をもってしても、ハルトに遊介は叶わないのだ。

 

――というのが、ハルトが知る真実。

 

「それはどうかな?」

 

遊介は、言ったのだ。まだわ終わってはいないということを。

 

「何……?」

 

「俺の攻撃が終わったと思ったら大間違いだ。墓地の、『パラレルポート・アーマー』の効果! 墓地のリンクモンスター2体、トークバックランサーとパワーコード・トーカー、そしてこのカードを除外し、俺のフィールド上のモンスター1体、ファイアーウォールドラゴンは、このターン2回攻撃ができる!」

 

「なんだと!」

 

ハルトの絶叫、そしてそれを塗り替えるように、遊介は本当の最後の1撃を叫んだ!

 

「ファイアウォールドラゴンの攻撃! テンペストアタック!」

 

背中の炎の円があらぶり、紅蓮の炎が撃ち出された。

 

「くそ……がぁあああああ!」

 

これ以上をハルトは防げない。

 

最後の1撃は、遊介の祈りは、勝利への執念は、通じたのだ。

 

ハルト LP2000→0

 

デュエルディスクに見たことのない画面が出たのに遊介は気づく。

 

『就任おめでとうございます。新たなエリアマスター。この世界のルールはあなたが決めることができます』

 

「そうか……勝ったんだな」

 

遊介はその場で意識は失わなかったが、横に倒れてしまった。

 

ルールはいつでも設定できる。遊介は一つだけ設定して残りは後回しにした。

 

そのルールは。光の世界において、命を賭けたデュエルを禁止すること。それは現在デュエルを行っている者含め光の世界全員に適用される。

 

「これで……」

 

最後の戦い、遊介に勝利の女神は微笑んだ。




長くなりましたが、前後編分けず一気読みがいいと思い、1つにまとめています。
第1シーズンラストのデュエルはいかがだったでしょうか?
たった8ターン書くのにこれほどの文章量となり、自分でも驚いています。
しかし、皆さんに面白いと思っていただければ幸いです。

実はハルトはプレイングミスをしています。この戦い、本来は遊介に勝ち目はありませんでした。その点について少し捕捉をすると、ハルトも少し感情的になっていたのでしょう。兄のように冷静に最善手を討ち続けるにはまだまだ未熟という描写のつもりです。そういう点から見ても遊介の勝利は奇跡として映えるのではないかと考えています。

さてデュエルはラストですが、第1シーズンはもう少しだけ続きます。
今回もアニメの次回予告風にお別れしましょう。

(次回予告)

1つの大きな戦いは終わった。しかし、その戦いがもたらしたのは、新たなる戦いが始まる合図のファンファーレだった。白スーツの男が天空の戦闘場に現れ語ったのは、ヌメロンコードの真実だった。

「お前らは俺が倒すべき敵ってことだな」

次回 遊戯王VRAINS―もう一人の『LINK VRAINS』の英雄― 「戦いの真相」 イントゥ・ザ・ブレインズ! 
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