遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
・小説初挑戦です。至らない部分はご容赦を。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。
これでOKという人はお楽しみください!
今回はいよいよデュエル回です!
【4】
――スターターデッキを配布します――
アバターを作り、いよいよ『LINK VRAINS』の世界に入ろうとした瞬間に遊介に聞こえてきたメッセージ。遊介はディスクにデータとして入った初期デッキを確認する。
(サイバース!)
まず一安心した。これですぐに勝負を挑まれても対応できない事はない。スターターデッキには、アニメ1年目に主人公playmakerが使ったカードの一部で七割、面白いカード三割の40枚で構成されている。しかし、
「エースモンスターはなしか……」
肝心のエースモンスターは充実していなかった。リンクモンスターの数も3体。
「レアカードはしっかり集めろ。ということかな」
遊介は一応そういうことで納得し、いよいよその世界へと足を踏み入れる。
〈第一階層 セブンスフィールド バトルシティ〉
意識が覚醒した時、遊介は目の前の自分の姿にまず釘付けになった。いつもの冴えない可哀そうな高校1年生ではなく少しは見た目で冒険をしている。髪は濃い目の青に染め、瞳の色も藍色に染めている。しかしあまり変化はないように見える。それは、おしゃれというものを知らない悲しき男子の精いっぱいのあがきであるが故ではなく、単に操作ミスで決定ボタンを押してしまいこれ以上の変更が不可能になってしまったからだ。
こちらの世界ではデュエルディスクで様々な行動ができるのは、前情報を確認し知っているため、遊介はさっそく自分のステータスを確認した。
「レベル1、スキルなし、保有ライフポイント8000、マネーポイント1000、デッキ名なし。まあ、当然だな」
遊介は画面を閉じ、次に周りを見渡した。
高層ビルが立ち並ぶ都市。何の意味もないただの風景かと思いきや、遊介はところどころに特徴的な装飾を施している店を発見する。カードやスピードデュエルをするためのDボードなどは買うことができることは知っているが、隠しショップではないことが判明し一安心した。
しかし、遊介はこの街に底知れぬ何かを感じている。それは単に、都会としては人が少ないように見えるからか。それとも。
(でも、悪夢で見たような感じじゃないな)
悪夢の中の世界は本当に戦場だった。しかし、今はこの場から見える光景を表すならば、静寂の都市という一言が最も似合っている。
遊介はデュエルディスクを見たが、説明書のようなものは存在しなかった。いまある情報は自分のステータスと、ここが第一階層のバトルシティであることだけだ。
「じゃあ……歩くか」
目指す場所はバトルシティの中央にそびえ立つ塔。見上げてもどこまで続いているか分からない高い高い塔だった。何か分かるかもしれない、という期待を胸にその塔の根元があるであろう方向へと進んでいく。
途中、カード屋があったのを見て、遊介は情報収集ができれば吉と考えて寄ることにした。
店内に入ると、見た目が奇抜な連中が数人。中には木のようなふざけた格好をしているプレイヤーもいる。全員が遊介をギロリとみるが、それは一瞬であり、
「もしかして初心者か?」
サングラスにスキンヘッドという現実世界では関わったらアウトの可能性があるプレイヤーと問いに肯定で返すと。
「このタイミングってことは、外だとここがヤバい場所だって分かってるよな。物好きもいたもんだ。だが嫌いじゃないぜ。ようこそ、殺戮と死の溢れるデュエルバーサーカーの集うリンクブレインズへ。俺はマイケルだよろしく」
粋な笑顔で遊介を歓迎した。内容は全く穏やかではないものの、遊介もあいさつを返すことにする。
「遊介です」
松や彩が自分に気づくように名前は変えていない。しかし、苗字は入れていない上、名前に奇跡的に『遊』の字が入っている事から、アニメリスペクトのファンのアバター名だと勘違いし、本名と気づく人間はあまりいないと遊介は判断している。
「遊介。まだ右も左も分からないだろう?」
「まあ」
「ならしばらくここを拠点にしな。ここは俺の店だ。まだ品ぞろえは少ないが、決闘禁止エリアだから、ここに居れば安全だ。俺が死なない限りな」
ハハハハハハハハ、と陽気に笑うカードショップの店主。
「決闘禁止エリア?」
「そうだよな。まだこの世界のルールも分かってないんだよな。まあ、少しづつ教えてやる。カードを見ながら耳を傾けな」
遊介は提案の通り、カードを見始める。品ぞろえが少ないのは始まって12時間も経っていないので仕方がないがそれでも100種類あるのは、店主の腕によるものだろうと遊介は推測する。
「この世界ではデュエルがすべて、勝てばマネーポイントをもらえる。負ければ保有ライフから賭けた分のライフを失う。マネーポイントはこの世界で生きるために重要だからな。腹が減ったまま1週間、水分不足で3日そのままだと死んぢまうときた。だから食料とか衣服とか家とか、生きるために必要なマネーを稼ぐためにデュエルをする。保有ライフがゼロになったら本当に死ぬ」
「本当に死ぬ?」
「ああ。アルターってやつが言っていた。最初の公式アナウンスでな。それにログアウト不可能。もうこの世界は命がけだ」
「そうなんだ」
遊介は今朝の悪夢に出てきたあの青年の顔を思い浮かべ、嫌な気分になる。まさか本気だったとはと、正気を疑った。
「で、一つ重要なことがある。外は当然どこでもデュエルを挑まれる。そのデュエルは賭けが行われる。お互いの保有ライフポイントを賭けてデュエルするんだ。保有ライフの少ないほう中から、最低4000でライフを賭ける。賭け分の数値がお互いの賭け分であり、初期ライフが決定されてデュエルが開始されるんだ。そして勝てば賭け分は戻ってくる。負ければ賭けた分は失う。例えば、保有ライフ8000の遊介が、保有ライフが4000のごろつきにデュエルを挑まれるとするだろ? すると、保有ライフの低いゴロツキが残りの4000を賭ける。すると強制的に遊介も4000賭けたことになって、お互い初期ライフ4000でデュエルが始まるってことだ」
「複雑だな」
「あとはスキルだが。にいちゃんはアニメを見てるかい?」
「ああ。見てるよ」
「なら、そのイメージでいい。発動は条件を満たしていればいつでも使える」
「でも俺、なにもなかったぞ」
「おかしいな。だれでも1つは持ってるはずなんだが……」
遊介はカードを見ている中で、1枚欲しいものが見つかった。
(サイバネット・バックドア!)
サイバースデッキには必須と言っても過言ではない1枚であり、スターターデッキには入っていないカード。しかし、値段は3000と現実は非情である。
「ただし、俺の店みたいに、決闘禁止エリアでは、デュエルはできるが賭けはできない特別ルールができるようになる。だからデッキと腕を鍛えるにはここがいいのさ」
得意げに話してきた店主だが、遊介がじっと見ていたカードを確認すると、ケースの中から取り出した。
「欲しいなら、1枚やるよ」
「ええ! でも」
「へへへ。いいってことよ。この見た目でなかなか人も寄ってくれないんだ。今後もひいきにしてくれるんなら、お前さんの度胸に免じて1枚お近づきの印にってことで」
「いいのか?」
「おう! 男に二言はねえ」
遊介は、後でたっぷりこき使われるかもしれないと思ったが、素直に好意に甘えることにした。早速受け取ったそのカードをデッキに投入する。
右も左も分からない中で面白い男に出会えたのは良かった、と遊介の不安は少し晴れる。
「ありがとう」
「いいってことよ!」
再び、ハハハハハハと笑う店主。
しかしその笑い声はかき消された。店の前に人が一人落下して叩きつけられた衝撃音による。
「なんだぁ?」
マイケルは異常事態にすぐ反応し外に出る。遊介も外へと出た。
「女の子……?」
見た目は遊介と歳はあまり変わらない。長髪の桜色の髪が特徴の可愛いというより、きれいな女子。
「ブルームガール! どうした?」
「く……」
彼女の上に表示されたライフが8000から4000に下がった。保有ライフの減少であることは先ほど説明を受けたばかりである影響で遊介にはすぐに分かる。つまり、このブルームガールがデュエルに敗北したのだ。
「皆さん逃げて……! ルールブレーカー持ちです。この店のルールが破壊される。襲われたら、戦うしかなくなってしまう!」
「でもよ……あんたは」
「もう1度戦って時間を稼ぎます。お世話になった店主さんに、これ以上迷惑を掛けたくない!」
「そんな、俺だってあんたみたいな女の子、放っておけないぜ」
「私を甘く見ないでください。女だって戦うときは戦います。守られる存在じゃない」
遊介には言っている事を100パーセント理解できなかったが、それでも雰囲気からまずいことになっているのは明らかだった。
ブルームガールと呼ばれた少女が遊介を見る。
「あなたは……デュエル部の!」
まるで遊介を知っているかのような口ぶり。
「なんであなた! どうしてここに来てしまったの!」
徐々に目つきが恐ろしくなってくる。刃のように鋭い瞳。遊介には見覚えがあった。まさかと思ったが、恐る恐る聞いてみる。
「会長……?」
遊介は堂々と地雷を踏みぬいた。
ブルームガールは急に顔を赤らめると、遊介に怒鳴りつける。
「なによ! この馬鹿!」
「会長も……デュエルやるんだ……」
それがとんでもない地雷だったようで、遊介は腹を殴られる。
「ぐふ」
「何よ! 私はやっちゃいけないっていうの!」
「そんなことは……」
「いいじゃない。学校の外でくらい。はっちゃけて遊んで何か問題ある?」
「いえ……ないです」
言ったというより、今の遊介の言葉は言わされたに近い。遊介は穏やかになっている見た目でも、可能な限り逆らわないことを心に決めた。
ブルームガールはそれで満足したのか、話を本筋に戻した。
「急ぎましょう! 奴はもうここまで来ている!」
ブルームガールは辛そうに立ち上がる。マイケルが肩を貸し、すぐに走ろうとする会長を抑える。これでも空中から地面にたたきつけられたのであり、デュエリストでなければ死んでいた、という話も頷ける大けがだ。
しかし、ブルームガールの健闘虚しく、『奴』はすぐそこまで来ていた。
「見つけたぞ」
Dボードに乗り空中から、遊介たちを見下ろす人影。遊介はその姿を見た瞬間震えを感じる。体を冷や汗が伝うような気がした。
「なんて殺気だ……奴は、海堂セイト」
誰だそれ、という言葉は遊介から出てこなかった。睨むだけで恐怖を与えるセイトの視線は、まるで殺意そのもの。初めて感じる殺気に、遊介は口が動かない。
「バーサーカーの中のバーサーカー。目に映る奴に徹底的に潰して回ってるっていう話だったが。話によるともう、20この世から消してるって噂の」
「正しくは21だ」
「細かいことはいいだろ! バーロー」
「そこの女を殺せば21だ。差し出せ。そうすれば今日は見逃してやる」
殺す。時にふざけて現実世界で使うその言葉は、この世界では本物。デュエルとはこの世界では決闘のことであり、負けたら命を失う。
いざ現実として目の前に現れると、遊介は恐ろしくて足が震えた。
「皆さん、逃げて!」
ブルームガールは必死に逃げるように叫んで説いた。
セイトとよばれた男は遊介を見ると、
「そこの男でもいいぞ。誰であろうと殺せれば問題はない」
と、遊介をさらに怖がらせるようなことを言う。遊介は足が震えたが、向けられた殺気に少しばかり慣れ、動くようになった口で訊く。
「なんで……そんな殺そうとするんだ」
「おかしなことを言う。ヌメロンコードを手に入れるために、この世界を制覇する。第一階層の踏破条件は、マネーポイント500000以上で中央の塔を突破すること。ならば、デュエルでポイントを稼ぐのは当然の行為だろう?」
「そんなに欲しいのかよ」
「俺には叶えたい夢がある。だから求める。お前たちだって同じなはずだ。この世界から脱出するためには、ヌメロンコードを手に入れるしかない」
「何!」
「そんなことも知らんとはな。だが。そんなことは関係ない。ちょうどいいからお前に選ばせてやる。俺が殺すのはお前か、そこの女か?」
遊介に委ねられた選択。セイトが本気であるとこは、遊介には十分伝わっていた。
(あいつ……ヤバい。戦ったらただじゃすまない。……けど)
ブルームガールを見る。保有ライフはあと4000。次にやられたら、会長は死ぬ。その事実はたとえどんな我が儘を言おうと変わらない。
格好いいデュエリストを目指す。この夢が嘘でないと自分で信じるならば、遊介は己に言い聞かせ、自らの行動を決定した。
(なら……この場で一番の選択は簡単だ)
遊介は迷わなかった。
「遊介くん! ここは私に任せて!」
「いや……俺が受ける!」
「遊介くん! 分かってるの。これは遊びじゃ」
「でも、怖くないわけじゃないけど。俺はまだ死なない。会長よりは俺の方がいい」
「ちょっと! あなたね! 彼は本気なの。それにあなたはまだ、この世界のデュエルを分かってない!」
「それでも。ここで震えて待って、あなたを見殺しにするかもしれない、なんて格好悪いのは嫌だ。だから行きます」
「遊介くん! 人の話を――」
遊介は駆け出した。デュエルディスクを動かし、Dボードを呼び寄せる。初期型は初回ログイン時にプレイヤーに支給されている。もちろん遊介がボード乗るのは初めてであり、ふらふらと心許ない軌道を描きながらも、何とかバランスをとっている。
「良いだろう。ならお前を殺す」
「ついてこい!」
遊介はセイトに誘いをかけ、セイトはそれに乗じ、遊介の後ろをついて行く。セイトが先導してデュエルの設定を提案した。
「スピードデュエル! 俺はライフを4000賭ける。俺の保有ライフは今賭けた4000のみ。お前も賭けてもらう」
デュエルディスクは思ったより高性能であり、音声認識で、今のやり取りからデュエルの条件を整えた。そして、デッキから四枚のカードを引く。
「お前も殺す。すぐに仕留める」
「簡単には負けないさ」
「余計な時間は使わない。サレンダーならいつでも認めよう」
「ふざけるな。勝つのは俺だ」
「なら、せいぜい足掻くことだな。雑種」
二人は叫ぶ戦いの開始の合図を。
「スピードデュエル!」
「スピードデュエル!」
遊介の長い長い戦い。その最初の一戦が始まった。
【5】
遊介 LP4000 セイト LP4000
「先行は俺がもらう! 俺のターン」
セイトの掛け声と共に、遊介の最初の戦いが始まる。
ターン1
セイト LP4000 手札4
「俺はカイザーシーホースを召喚」
カイザーシーホース 攻撃表示
ATK1700/DEF1650
セイトが最初に呼び出したのは、藍色の鎧をまとった戦士。
「カードを1枚伏せる。ターンエンド」
セイト LP4000 手札2
モンスター カイザーシーホース
魔法罠 伏せ1
序盤ということもあり、セイトが先ほど見せた殺気に比べ拍子抜けなほど、穏やかなものになった。
しかし、遊介は油断はしない、1ターン目から全力で叩き潰すための策を考える。
「行くぞ。俺のターン ドロー」
ターン2
遊介 LP4000 手札5
「おおっと」
遊介がDボードに乗るのは初めてであり、1つ1つの行動が遊介のバランスを崩す原因になる。足を器用に動かし、バランスを取りながら、データストームの流れに乗ろうとする。
「気をつけて!」
ブルームガールの忠告に遊介は素直に相づちを返す。
ボードのバランスを取れた頃に、遊介は攻撃を開始した。
「リンクスレイヤーは自分フィールド上にモンスターがいないときに、特殊召喚できる!」
リンクスレイヤー 攻撃表示
ATK2000/DEF600
遊介が最初に呼んだのは、水色の刃を操る戦士だった。最初にこのモンスターを呼ぶと調子が良いデュエルができることが多い。遊介はこの大切なタイミングで幸運に恵まれたことに感謝した。
「リンクスレイヤーの効果。手札を2枚まで墓地へ送り、送った数だけの相手フィールドの魔法、罠カード対象にして発動する。対象にしたカードを破壊する。俺は手札を1枚墓地へ送り、お前の伏せカードを破壊させてもらう!」
遊介の言葉と同時に、放たれた刃が相手の伏せたカードを破壊する。
ーーはずだった。
「罠カード。威嚇する咆哮!」
リンクスレイヤーの破壊効果に重ねて発動を宣言された。
威嚇する咆哮はこのターンの攻撃宣言を封じるカード。よって遊介はこのターン攻撃ができない。
(くそ……)
遊介は心のなかでは悔しがったが、その無様な姿を見せることはない。
「カードを1枚伏せる」
「ターンエンドか?」
「この程度では止まらないさ」
攻撃ができないと分かり、盤面を整えるか、戦力を温存するか、2つの選択肢が遊介にはあった。遊介は後者を選んだ。
(弱気だと、あいつは倒せない。それに)
遊介の頭には、憧れのヒーローが戦う姿が描かれている。弱気では、このデッキを使う資格はない。遊介は己を鼓舞し、強く出る。
「まだ通常召喚を行っていない。俺はスタックリバイバーを召喚!」
スタックリバイバー 攻撃表示
ATK100/DEF600
「さらに、自分フィールド上にサイバースが存在するとき、手札から、バックアップ・セクレタリーを特殊召喚できる!」
バックアップ・セクレタリー 攻撃表示
ATK1200/DEF800
白の機械と、紫を基調とする服を纏った端麗な女性が遊介の場に新たに現れる。
場に3体のモンスター。彼らは光に包まれ、天空へと駆け上がる。
「現れろ! 未来を導くサーキット!」
天空に8個の三角形を携えたゲートが表れた。
(おお……すげえ!)
今まではテレビの向こうでしか見られなかった光景に興奮しながら、遊介は召喚の口上を続ける。
「アローヘッド確認! 召喚条件はトークン以外のモンスター2体以上! リンク召喚! 現れろ! リンク3、サイバースアクセラレーター!」
サイバース・アクセラレーター
マーカー 右 左 下
ATK2000/LINK3
これがスターターデッキに入っていた唯一のLINK3モンスター。ゆえに、スターターデッキのエースと言うべきモンスター。遊介はスターターデッキと聞き、別のモンスターを想像していたが、このモンスターでも悲観はしていない。
「リンク召喚の素材にしたスタックリバイバーの効果! 同時にリンク素材にしたレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる。俺はバックアップ・セクレタリーを特殊召喚」
バックアップ・セクレタリー 守備表示
ATK1200/DEF800
先ほどゲートへ向かった紫の女が再び遊介の場に舞い戻る。
「これでターンエンドだ」
(とりあえずはこんなところだな。さて、相手がどう出てくるかだけど……)
遊介は場を、自分ではこれ以上なく万全に整えたつもりだ。しかし、それを見てセイトの顔は微塵も変わりはない。
遊介 LP4000 手札0
フィールド サイバースアクセラレーター バックアップ・セクレタリー
魔法罠 伏せ1
ターン3
「俺のターン」
セイト LP4000 手札3
モンスター カイザーシーホース
魔法罠
セイトは静かにカードをドローする。
「……まずは洗礼だ。覚悟しろ」
「なに?」
「俺は魔法カード、フルバースト・ブルーを発動。このカードを手札から発動するとき1番目の効果を発動する。手札の光属性レベル7以上のモンスターを相手に見せて発動。このターン相手は伏せカードを発動できない。また、相手に見せたモンスターが召喚に成功し、このターン相手モンスターを破壊した場合、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える」
「なんだと!」
遊介はこの1枚で、自らの戦術が破られたのを察する。
遊介が伏せていたのは罠カード立ちはだかる強敵。戦術は以下の通り。サイバース・アクセラレーターはバトルフェイズにリンク先のサイバース族モンスター1体を対象に、ターン終了時まで攻撃力を2000上げる効果をもつ。その効果は相手のバトルフェイズにも発動できるので、バックアップ・セクレタリーの攻撃力は2000アップして3200に。その後伏せてあった立ちはだかる強敵を使用する。このカードは相手の攻撃宣言時自分フィールド上のモンスター1体を選択。相手はそのモンスターにしか攻撃できず、相手の攻撃表示モンスターはすべてそのモンスターに攻撃しなければならない。これで攻撃力が上がったバックアップ・セクレタリーに強制攻撃をさせれば、たとえ攻撃力3000のモンスターを召喚されても、返り討ちにできるほどの防御は可能になる。
しかし、この戦術はあくまで、伏せカードが発動できればの話なのだ。
「どうした? 苦い顔をしているな」
「く……」
「さて準備は整った」
「まだカードを見ていない」
「見せている。拡大した方がいいか?」
遊介は絶句した。それはこの後すぐに現れるであろうモンスターだった。白い鱗、白い翼、青の瞳。長い遊戯王の歴史の中1、2を争う有名で強力なモンスター。
「それは……」
「見せてやる……、これがお前を滅ぼす、俺の相棒!」
セイトは天高くそのカードを掲げた。
「この竜こそ、強靭、無敵、最強の名を冠する我が切り札! 俺の復讐の道を照らす希望! ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン!」
嵐が巻き起こった。
本来であれば、レベル8のモンスターを呼ぶには2体の生贄が必要になる。しかし、セイトが出したカイザーシーホースには、光属性モンスターをアドバンス召喚する際、1体で2体分の生贄とすることができる。
故に降臨できるのだ。その竜は。
青の瞳は、遊介を見定める。自らの顕現とともにその竜は大きな咆哮をあげた。
青眼の白龍 攻撃表示
ATK3000/DEF2500
「本物の……!」
「さあ、この意味が分かるな?」
セイトは自らのエースモンスターを読んでなお笑みをこぼさない。放つのは相手を殺そうとする憎しみ、殺気の二つ。
「復讐ってなんだよ!」
遊介は先ほどの口上が気になり訊いたが、
「死にゆく貴様に関係などない!」
聞く耳をセイトは持たない。
「このカードはフルバースト・ブルーの効果で見せたカードだ。よってこのカードの攻撃によって相手モンスターを破壊した時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」
遊介のフィールド上には2体のモンスターがいるがともに攻撃表示。フルバースト・ブルーの効果によってどちらに攻撃されても3000ダメージが確定する。
「くそ……!」
「まずはこの一撃耐えて見せろ! ブルーアイズで、サイバース・アクセラレーターに攻撃!」
セイトが手を勢いよく突き出す。それと同時に、白の竜は口に光を溜め始めた。
そして。
「滅びのバーストストリーム!」
あまりにも有名な口上をもって、全てを破壊する白く太い光線は撃ちだされた。
サイバースアクセラレーターだけではない、遊介ごとその破壊光線は巻き込んでいく。
(勝)青眼の白龍 ATK3000 VS サイバース・アクセラレーター ATK2000(負)
サイバースアクセラレーターは時を置かずして消滅し、
「ぐああああああああ!」
遊介はライフをごっそり持っていかれた。
遊介 LP4000→1000
遊介は雰囲気で叫んだわけではない。
(熱い! 熱い! 痛い! ぐぅう!)
体を焼かれてるような感覚が遊介を支配していた。そしてそれは、白の光に包まれている間続く。
やがて白い竜の咆哮は収まり、白の光が消えていく。
「はあ……はあ……」
「これが痛みだ。貴様が何のつもりで俺にデュエルを挑んだか知らんがな。無知な貴様にはぴったりの洗礼だっただろう」
「うう……ぐ……」
喚かないが、遊介は涙を抑えられなかった。単に痛すぎただけ、されど、痛みはそれほどのレベルだったのだ。
「先ほども言ったがサレンダーは止めない。いつでもするといい。この世界では1ターン目から可能だ」
遊介はこの世界を甘く見ていたことを実感した。
この世界はデュエルの世界。しかし、まだ遊びの部分があると勘違いしていたのだ。しかし、今の一撃でそれも打ち砕かれた。
遊介は己を恥じた。この程度の痛みで涙をする自分に。この世界に来る前に覚悟は決めた。それを早くも折られかけている自分に。
遊介は迷うことはない。どれほどの痛みを得ようと、自分の憧れたヒーローはそんな世界を戦ったのだ。ならば、憧れているのならば、なおさら逃げるわけにはいかない。
(俺は……まだ!)
「戦える!」
全身が悲鳴を上げる中、遊介は立ち上がった。
「ほう……貴様が俺が見た中で3人目。少しは殺しがいがあるということか。だがどうする。貴様には今、その貧相なカードしか残されていない。そこからはい上がれるというのなら上がってみろ。俺はこれでターンエンド」
セイト LP4000 手札1
モンスター 青眼の白龍
魔法罠
ターン4
「俺の……ターン!」
遊介 LP1000 手札1
フィールド バックアップ・セクレタリー
魔法罠 伏せ1
遊介は気丈にはふるまうが、実際、追い詰められているのは確かだった。
「ドラコネットを召喚」
ドラコネット 攻撃表示
ATK1400/DEF1200
「ドラコネットの召喚に成功した時、手札・デッキからレベル2以下の通常モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。デッキから、ビットロンを特殊召喚」
ビットロン 守備表示
ATK200/DEF2000
モンスターの召喚はできる。しかし、それまでだ。遊介には肝心の相手モンスターを滅するモンスターがすでにいない。攻撃力3000を超える方法は現状存在しない。
遊介は焦る。しかし、それが分かってしまった以上焦ったところでなにも変わらないのは明白。
(クソ……ここまでか)
遊介は拳を握りしめる。
(ふざけるなよ……あんな勢いよく飛び出しといてこのザマなんて)
遊介が下を見ると心配そうに見つめるブルームガールとマイケルが目に映った。
「どうした? まさか何もできないんじゃあるまいな?」
セイトは煽る。
そして自分は何もできない。
遊介はそんな状況が悔しくて悔しくて仕方がなく、そして無性に怒りが湧いてきた。
(こんなことだめだ。考えろ! 考えろ! このターンじゃなくても、逆転できる方法はないか?)
しかし、焦り、そして混ざる様々な感情を抑えきれず考えはまとまらなかった。
(ヤバい……何とか、何とか!)
このままでは負ける。死へと一歩近づく。遊介はそれを自覚し助けを求めた。何に対してかは分からないが、解決策を求めた。
ピコン。
(……なんだ?)
デュエルディスクが反応を示す。恐る恐る触ってみると、今まで何もなかったスキルの項目が点滅している。中をのぞくと、デュエルの前まではなかった項目は増えていた。
LV1 ストームアクセス LP1000以下の時、データストームを呼び出し、ランダムにリンクモンスターを1枚エクストラデッキに加える。
(これは……playmakerの……)
藁にもすがる遊介の思いに応えたのか、単なる偶然か。それは今関係ない。遊介は迷わずそのスキルを行使する。
「スキル発動!」
遊介の横にデータストームが巻き起こる。
遊介は飛び込んだ。勝つためにはこれしかない。そう信じることで頭の思考すべてを使っていて、その中が危険であることをすっかり忘れている。
「何? 血迷ったか?」
セイトがこのような事を言うのも無理はない。それは竜巻であり、巻き込まれればただでは済まないことは明白。
現に、
「うおおおおお……ああああああ!」
吹き飛ばされそうになっているのを必死に耐えている遊介。
(負けるかっての!)
何とか立ち上がり、そして竜巻の中心。命の鼓動のようなものを感じるところへ遊介は手を伸ばす。
「風を掴む! ストーム……アクセス!」
データは青い光として集中し、1枚のカードの形になってゆく。
そして手に入ったそのカードは、
(やっぱり、まずはお前だな!)
遊介にとって満足のいくカードだった。
「現れろ。未来を導くサーキット!」
再びゲートを開く。
「召喚条件は、効果モンスター2体以上! 俺はドラコネット、ビットロン、バックアップセクレタリーの3体をリンクマーカーにセット!」
遊介の指示のもと、3体のモンスターがゲートへと吸い込まれていく。そして、希望となりえるそのモンスターは現れた。
「リンク召喚! 現れろ! デコード・トーカー!」
紫の体、そして紫光の剣を持つ戦士が、新たな遊介のエースとして降臨する。
デコード・トーカー
マーカー 上 右下 左下
ATK2300/LINK3
「ほう、新たなモンスターか。だが2300だな。俺のブルーアイズには届かない」
「それはどうかな?」
「何?」
デコード・トーカーが来たことで、遊介には新たな攻め手が思い浮かんでいる。
「リンクスレイヤーの効果で墓地へ送ったマジックカード。サポートプログラム・サモンの効果発動。サイバースリンクモンスターを召喚した時、このカードと、墓地の召喚されたリンクモンスターと同じ数のマーカーを持つリンクモンスターを除外。特殊召喚されたモンスターのすべてのリンク先に、デッキからサイバース族、レベル4以下のモンスターを攻撃表示で特殊召喚できる。俺は左下にサイバース・ヴィザード、相手フィールドだけど、上にドットスケーパーを特殊召喚!」
サイバース・ヴィザード 攻撃表示
ATK1800/DEF800
(相手フィールド)
ドットスケーパー 攻撃表示
ATK0/DEF2100
「そして、デコード・トーカーの攻撃力は、リンク先のモンスター1体につき500アップ。パワーインテグレーション!」
デコード・トーカー ATK2300→3300
「さらにサポートプログラム・サモンによって特殊召喚されたモンスターをリンク先に持つリンクモンスターの攻撃力はさらに500アップ」
デコード・トーカー ATK3300→3800
「な……!」
「バトル! デコードトーカーでブルーアイズを攻撃! デコード・エンド!」
紫の大剣が迎え撃つ白の閃光を斬り裂き、そして、胴を深く斬り裂いた。
(勝)デコード・トーカー ATK3800 VS 青眼の白龍 ATK3000(負)
青眼の白龍の体が、光の粒子となって消えていく。
「ぐ……」
セイト LP4000→3200
初のダメージ。しかし遊介は喜びに浸ることなく次の攻撃へと転じる。
「サイバース・ウィザードでドットスケーパーを攻撃!」
(勝)サイバース・ウィザード ATK1800 VS ドットスケーパー ATK0(負)
ドットスケーパーも破壊され、セイトのフィールドはがら空きになる。
「ぐあ!」
セイト LP3200→1400
「この瞬間リンク先のモンスターを1体失い、デコード・トーカーの攻撃力は500ダウンする。そして、ドットスケーパーはデュエル中に1度、墓地へ送られた場合に特殊召喚できる。ターンエンド」
デコード・トーカー ATK3800→3300
ドットスケーパー 守備表示
ATK0/DEF2100
「く……!」
相手が苦悶の表情を浮かべ、初めて自分の思い通りの展開になったことに喜びを感じる遊介。
一方のセイトは、悔しさを露わにはしていないものの、焦りは全く見せていない。
「やるな……!」
「どうだ。サイバースデッキ」
「ああ。少し、侮っていたことは認めざるを得ない。だが、お前を殺すことに変わりはない」
「なんでそんなに殺しにこだわる」
「簡単なことだ。一人殺せば、マネーポイント10000が手に入る。一番効率がいい」
「自分も死ぬかもしれないんだぞ」
「そんなもの。とっくの昔に覚悟を決めている。ヌメロンコードを手に入れるまでは止まらない」
ブレない態度に遊介もこれ以上問うのをやめた。遊介にとって格好いいデュエルをすることは本気であると同時に、それは彼にとっての本気であると思ったからだった。ならば、質問や説得などは通じない。
遊介 LP1000 手札0
フィールド (エクストラゾーン)デコード・トーカー (自分フィールド)サイバース・ウィザード ドットスケーパー
魔法罠 伏せ1
ターン5
「俺のターン! ドロー! ……ちっ。今日は最初から引きが悪いな」
セイトはドローしたカードを気に入らなさそうに手札に加える。
セイト LP1400 手札2
モンスター
魔法罠
「俺は魔法カード死者蘇生を発動!」
「死者蘇生……マジか」
遊介はここで気づく。セイトが常に手札に1枚残していたカードがあることを。それが死者蘇生であれば、この状況も、セイトが考えていた状況の可能性があることを。
警戒レベルを遊介はさらに上げる。
「蘇れ! 我が相棒。ブルーアイズホワイトドラゴン!」
青眼の白龍 攻撃表示
ATK3000/DEF2500
「俺はさらにカードを1枚伏せる」
そして、復活したブルーアイズとともに、セイトの殺気が再び最高潮になった。
「バトルだ! ブルーアイズでサイバースウィザードに攻撃!」
このままでは負ける。遊介は迷わず、伏せていたカードを発動した。
「罠カード。立ちはだかる強敵。相手の攻撃宣言時に発動する。俺は自分フィールドのモンスター1体を選択する。デコード・トーカーを選択する。そしてお前のモンスターはこのデコード・トーカーしか攻撃対象にすることができない!」
セイトは納得したように、ほお、と口を動かした。
「さっきのサイバースアクセラレーターは、このコンボを狙っていたのか。これは、先ほどフルバースト・ブルーを使っておいて正解だったな」
セイトは勝利を確信したような笑みを浮かべる。このままでは白龍を失うにも関わらず。
「ならばブルーアイズ。デコード・トーカーを潰せ。滅びのバーストストリーム!」
遊介は相手の特攻に困惑しながらも、
「迎え撃て、デコード・トーカー!」
そのまま戦闘を継続する。
しかし、ここまで隙のないデュエルを行っているセイトが、なんの策もないことはなかった。
「墓地のフルバースト・ブルーの効果! 墓地に存在するこのカードはフィールド上にブルーアイズモンスターが攻撃宣言を行った戦闘のダメージステップ時に発動できる。ダメージステップ時にこのカードを除外し、戦闘を行うブルーアイズの攻撃力を1000ポイントアップする」
「え……」
青眼の白龍 ATK3000→4000
「儚い希望だったな」
(勝)青眼の白龍 ATK4000 VS デコード・トーカー ATK3300(負)
「うあああ!」
破壊の白光を全身で食い止めながらも、破壊されたデコード・トーカー。その爆風が遊介を襲う。
遊介 LP 1000→300
「ぐ……ぅ、ぁ……」
再び体中に痛みが迸った。遊介は再びうめき声をあげてしまう。
「俺はこれでターンエンドだ。ちなみに言っておくが、ライフがゼロになった時の痛みはその比じゃない。サレンダーすればその痛みは味わうことはないぞ。その方が余計な手間も省けるしな」
「ふざけるな……」
セイト LP1400 手札0
モンスター 青眼の白龍
魔法罠 伏せ1
ターン6
「俺の……ターン!」
デコード・トーカーを失った遊介。残りのサイバー・ウィザードとドットスケーパーで戦うことができる何かが来るよう祈った。
「ドロー」
遊介 LP300 手札1
モンスター サイバース・ウィザード ドットスケーパー
魔法罠
まだ希望は続いていた。
「魔法カード。貪欲な壺! 俺は墓地のモンスターを5体デッキに戻し、新たに2枚デッキからカードをドローする。俺は墓地の、ドラコネット、ビットロン、バックアップ・セクレタリー、リンクスレイヤー、スタック・リバイバーの5体をデッキに戻す!」
5枚のカードをデッキへ戻し、再び祈るようにデッキに人差し指と中指を置いた。
「そして、2枚ドロー!」
引いたカードは強力な破壊効果を持つカードでも、強力なモンスターでも、死者蘇生でもなかった。
しかし。遊介は諦めなかった。そのカードに己の最後を託すことに決めた。それに十分なカードを引いたのだ。
「俺はカードを2枚伏せ。ターンエンド!」
「万策尽きたか?」
「そう思うなら、俺を殺してみろよ」
「元より攻撃を緩めるつもりはない。意味のないカードを伏せている可能性もあるからな」
遊介 LP300 手札0
モンスター サイバース・ウィザード ドットスケーパー
魔法罠 2枚
ターン7
遊介にとって運命のターン。このターンのセイトの行動によっては、負ける可能性も十分ある。
「俺のターン! ドロー……まあ、良いだろう」
セイト LP1400 手札1
モンスター 青眼の白龍
魔法罠 伏せ1
「俺はホワイト・オブ・エンシェントを召喚」
太古の白石 攻撃表示
ATK600/DEF500
そして遊介の命運を決める瞬間は始まる。
この時。遊介が伏せた最後の2枚が、勝利への道しるべを導き出した。
「罠カード。トランザクション・ロールバック! LPを半分支払い、相手墓地の通常罠カード1枚を対象にして発動。このカードはその通常罠と同じ効果を得る! 俺が対象にするのは、お前の墓地の、威嚇する咆哮!」
遊介 LP300→150
「な……!」
「セイト。これでお前のブルーアイズは攻撃できない!」
「なるほどな。時間凌ぎか」
そしてセイトの考えを遊介は否定する。
「いいや。これでいい。このターンさえ凌げばいいのさ」
「何……?」
セイトのメインフェイズが終了するとともに、遊介はもう1枚の伏せカードを発動する。
「速攻魔法。サイバネット・バックドア! 自分フィールドのサイバース族モンスター1体を対象にして発動。そのモンスターを除外し、除外したモンスターの攻撃力より低い攻撃力を持つサイバース族モンスター1体を手札に加える。俺はバックアップ・セクレタリーを手札に加える」
「なるほど。サーチか」
「いいや。目的はそれじゃない。除外されたモンスターは次の俺のスタンバイフェイズに戻ってくる。そしてそのモンスターはそのターン……直接攻撃ができる!」
「なに!」
セイトは初めて驚きの表情を浮かべた。
遊介はそれを見ることができてうれしかった。自分の戦術が認められたこと。確かに相手の脅威になり得ること。それが己の実力を認められたかのように感じたからだ。
「どうする、セイト!」
「……何もできん。ターン……エンドだ」
セイト LP1400 手札0
モンスター 青眼の白龍 太古の白石
魔法罠 伏せ1
ターン8
「俺のターン!」
勢いよくドローしたカードは、サイバネット・ユニバース。
遊介 LP300 手札1
モンスター ドットスケーパー
魔法罠
「スタンバイフェイズ。サイバース・ウィザードは俺のフィールドに戻ってくる!」
サイバース・ウィザード 攻撃表示
ATK1800/DEF800
(巡ってきた勝機。絶対に逃しはしない!)
「バトル! このターン、サイバース・ウィザードは相手プレイヤーへ直接攻撃ができる! サイバース・ウィザードで、ダイレクトアタック!」
遊介の覚悟の1撃が、彼の叫びととも、電脳世界の魔術師から放たれた。
「……く……」
セイトは俯く。
そして、LPを削り取る1撃が炸裂した。
「ぐ……ああああ!」
セイトは爆炎に飲み込まれていく。彼を焼き尽くす炎が上がった。
――しかし。
「く、ハハハ」
炎をかき消し、セイトは笑い始めた。狂ったように、そして楽しそうに笑ったのだ。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「なんで……笑ってんだ……?」
彼は死ぬ。保有ライフが0になり命が尽き果てる。
「この戦い。高ぶるぞ。私情は持ち込まないつもりだったが……この滾る戦い。全身のアドレナリンが掻き出され、血液が沸騰する感覚。たった一瞬の間だったが、この感覚はかつての友とのデュエルを思い出させる!」
セイトは歪んだ笑顔で叫んだ。
「速攻魔法。神秘の中華なべ! 俺のフィールド上のモンスター1体を生贄に捧げ、そのモンスターの攻撃力、もしくは守備力分の数値だけLPを回復する。俺はホワイト・オブ・エンシェントを生贄に、その守備力分だけ、LPを回復!」
セイト LP1400→1900
「そして、お前の攻撃を受ける。そうすることで、俺のLPは100残る!」
セイト LP1900→100
遊介は唖然としていた。垣間見た海堂セイトの狂戦士としての一面、その激しさに対して。そして自らの最後の攻撃を防がれたことに対して。
「そんな……」
「万策尽きたか。……低い攻撃力を知略でカバーし俺とここまで戦えたことは褒めてやる。貴様には、久しぶりに楽しませてもらった礼に、ブルーアイズの力をたっぷり刻み込んでやる。さあ、ターンエンドの宣言をしろ」
万策尽きた。その表現に微塵の間違いもない。明らかな実力差を前に、何度も奇跡に助けられてようやくつないだ最後の勝機を潰されたのだ。
遊介は今度こそ認めなければならない。自らの敗北、そして、ブルーアイズの力を。
「ターンエンド……」
「エンドフェイズ。ホワイトオブエンシェントの効果! このカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズに、デッキからブルーアイズモンスターを特殊召喚! 来い、ブルーアイズホワイトドラゴン!」
青眼の白龍 攻撃表示
ATK3000/DEF2500
「そんな……」
遊介の顔は恐怖で歪んでいた。
遊介 LP150 手札2
フィールド サイバース・ウィザード ドットスケーパー
魔法罠
ターン9
「俺のターン! ドロー!」
セイト LP100 手札1
フィールド 青眼の白龍 青眼の白龍
魔法罠
遊介はこれ以上、何かを言う力は残っていない。
「スキル発動。ブルーソウル! ライフが1000以下の時、手札のブルーアイズモンスターを1体墓地へ送り、デッキからブルーアイズモンスター1体を特殊召喚! 来い3体目のブルーアイズ!」
青眼の白龍 攻撃表示
ATK3000/DEF2500
3体の白龍が並んだ。まさしく圧巻の一言に尽きるその光景を前に、遊介は己の弱さを痛感するしかなかった。
「さあ、我が魂を象徴する竜よ。目の前の敵を一匹残らず破壊しろ! 総攻撃だ! 滅びのバーストストリーム!」
(勝)青眼の白龍 ATK3000 VS サイバース・ウィザード ATK1800(負)
遊介 LP150→0
「うわああああああ!」
全身を貫く痛み、視界を埋め尽くす滅びの光。精神を食う敗北。
Dボードから、足を滑らして落下している事すら、遊介は己の状況に気が付いていなかった。
「よく覚えとけ。この世界は貴様の想像を超えるデュエリストなど数多い。俺を興じさせた礼に今日は退いてやる。次戦う時までに、腕を磨いておけ。俺にもっと、全身を焼き尽くすほどの享楽をよこせるほどには、強くなっとけよ」
海堂セイトがそう言い残し、光の先へと消えていくのを、遊介はただ見ることしかできなかった。
遊介は落下していく。地面へ。
そう、これは始まりに過ぎない。
これから遊介が歩む、死闘を繰り返す修羅の道の入り口に過ぎないのだ。
デュエル1回分を詰め込んだので長かったと思います。ご容赦ください。
まさかの主人公が初戦黒星スタートでしたが、いかがだったでしょうか。
今後も10日に1話更新できたらとおもうので、遊介の戦いの旅路を見守ってください。次回から本格的にストーリーが進んで行きます。楽しみにお待ちいただければと思います!
感想を頂けると嬉しいです。今後の執筆活動の支えになります。
読んでくださり、ありがとうございました。
次回もお楽しみに!