遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。
これでOKという人はお楽しみください!
番外編2です。
薫ちゃんはブラコンというわけではありません。
ただお兄ちゃんが嫌いじゃないだけです。
健全な兄弟愛だということをここで言っておくことにします。
今回使うオリジナルカード
『オーガ・リベンジファイア』 罠カード
①デッキから、ガトリングオーガを特殊召喚。② 墓地のこのカードを除外し、相手フィールド上にセットされている魔法・罠ゾーンに存在するカード1枚を破壊する。その後デッキから、炎属性の「オーガ」モンスターを特殊召喚する。
馬鹿。
裏切者。
ばかばかばかばかばか!
にいのばか! 大嫌い!
なんて居なくなった日に日記に書いたくせに、結局はにいがとっても心配です。
にいは優しいから、きっと、友達を助けに行ったんだと思います。だからわたしもそんなにいのお手伝いができればいいと、ずっと思ってました。
そう思って1週間ほど経ったときののことです。
白いスーツの美男子がうちに来てくれました。驚きました。イリアステルの社章が入っているので、大犯罪者なのですが、ニュースを見る限りでは、全員行方不明と報じられていたはずです。
ちなみに私は結局おばあちゃんの家には行きませんでした。正直嫌な予感はありましたから。きっとにいはあの世界に行ってしまう。だからもしそうなったら私は、この家を守ろうと思ったんです。
でも、その白いスーツの人は言いました。
「君のお兄ちゃん。このままじゃあ死ぬよ」
なんで! とついしがみついてしまいました。
そしたらその白いスーツの人は言いました。
「彼はきっと俺とは相容れない。俺はあの世界の管理者であり、参加者を愚弄するラスボスだからね。そして君のおにいちゃんは勇者だ。彼はいずれ必ず勇者の役目を果たそうとしてしまう。だがそれは不可能だ。彼には実力が足りない。彼には運命を引き寄せる力がない。きっと抱く理想はあまりに大きく、彼を破滅へと追い込むだろう。全てを奪われ、力に、欲望に屈した人間に裏切られ、彼はきっと孤独になってしまう」
どうしてそんなことになってしまうのかは言ってくれなかった。けれど、そのスーツの男の人は私のお兄ちゃんの死亡は確実だと何度も言いました。
「その時、彼には救いが必要だ。全てを諦めて堕落するにせよ、死ぬと分かっていながら立ち上がるにせよ、壊れてヤケになってしまうにせよ。彼が自殺などという最も呆れた最期を迎えないためには、生きる意味が必要だ」
私はその人が何が言いたいかがわかりませんでした。けれど、にいがとってもピンチなのはわかりました。
そしてこの人はきっと、私にもにいのいるその世界に行けと言いたいことも分かりました。
現実世界のにいは今病院に居ます。意識不明。脳にはなんの異変もなく、ただ死んだように安らかな顔でベッドの上で眠っています。VR世界に意識を持っていかれたまま、にいは戻ってきません。
国が今回のリンクブレインズのデスゲーム化については重大なテロと認識しているようで、被害者の皆さんが安静にできる場所を用意してくれました。栄養も点滴でどうにかなっているようで、死んではいないことにどこか安心していました。
しかし、今、このように言われて私はにいが死んでしまうかもしれないことを、改めて思い知りました。
白いスーツの人は私にデュエルディスクを渡しました。
私はその人に、聞きました、
「あなたは兄さんの味方なのですか?」
そしたら、その白いスーツの人はこう答えました。
「私はエンターテイナーだよ。死が隣り合わせのあの世界では、いろいろな人にいろいろなドラマができる。中にはとっても見ごたえがあるドラマもあるものだ。私はその世界の基盤を作った。私は魔王役で出演している物語の舞台をね。そこからどのようなドラマが生まれるかは私も知りようがない。君のお兄ちゃんが紡ぐ物語もまた、良い物語になりそうな予感がある。最期まで見届けたいと願う者として、そしていつかふさわしい舞台で最高の瞬間を作りたいと思っている。だから、そのためのお膳立てくらいはするさ」
といって、私の前からいなくなりました。
その時の私はどうかしていたのでしょう。
それくらいに一人で過ごすのは寂しかったのです。家を守ると言っても、結局一人では寂しかったのです。
私はすぐに、迷わず病院に行きました。
にいが寝ているベッドの近くに行きました。
誰にもディスクを見られないように気を付けながら、走りました。
何度も通っているのでわかります。1日に3回、看護師さんが面倒を見に病室を訪れるはずです。だから私がここで倒れても、きっと面倒は見てくれます。
念のため、パソコンで犯行文っぽいものを作りました。私はイリアステルの人間に無理矢理ディスクをつけられて、事件に巻き込まれたように見せようとしました。そしてそのパソコンは箱にしまって家の庭に埋めました。
にいの隣で横になりました。デュエルディスクを抱くようにして。こうやってベッドに並んで寝るのは少し恥ずかしかったですが、これならきっと見つけてもらえると思いました。
そして私はにいに会えるよう、祈るようにして言いました。
「イントゥ・ザ・ブレインズ」
眠くなりました。
――おやすみなさい。
【2】
目を覚ますと私は街に立っていました。
凄かったです。ここは本当にゲームの中なのかと驚きました。なぜなら、目の前に広がるその光景は、まさに見慣れた都市そのものだったのです。
しかし、その世界が私の故郷とは全く違うことはすぐにわかりました。
「ひゃあああ!」
驚いてしまいました。上空に浮いているモンスターの数々。にいがやっていたデュエルモンスターズのカードに書かれているような化け物があちらこちらに見えました。
手にはデュエルディスクがありました。しかし説明は何もありません。私もにいの影響でゲームをやったことは何度もあるので、ゲームならチュートリアルぐらいはあると思っていましたが新設設計ではないゲームみたいです。
近くにあった電光掲示板には、
『本日イベント開催中! 保有ライフを増やそうぜ! みんな!』
ということが書いてありましたが、一体何のことだかさっぱりわかりません。
とりあえず、近くにマイケルカードショップという店を見つけたのですが、今日はお留守みたいでした。ここでルールを説明してくれる人がいればと思ったのですが残念です。
ここはデュエルの世界だということはCMを見ていて知っています。
イベント中だからでしょうか。街の中ではそこらじゅうでデュエリストが戦っていました。実際にデュエルを見ていると、さすがアニメの世界に張ったと錯覚するほどの世界観と売りにしているだけあります。迫力はテレビの前で見ているより段違いでした。
しかし、なぜでしょうか。不思議と皆さん、デュエルをしているにしては殺気だっているような気がします。とても怖いです。
そこら中で爆発の音が聞こえます。それもとても怖いです。
どうしようか迷いました。残念ながら、にいは近くにいないようなので、とにかくしばらくは1人でいなければなりません。
せっかく意を決してここまで来たのに、それはとても寂しいです。
「解放軍だ! 逃げろ!」
遥か遠くでそんなことを叫ぶ声が聞こえました。軍という言葉が気になります。
もしかするとここか戦争か何かが起こっているのではないか。という考えが頭をよぎり急に不安になってしまいます。
「おい」
不意に話しかけられ、びっくりしてしまいました。
後ろを振り返ると、そこには、
「デュエルしろよ」
悪そうなお兄さんがにやりと笑いながらいました。
『デュエルが申請されました。相手の保有ライフに従いライフは4000でデュエルをスタートします』
「え、え?」
どういうことなのかわかりません。
でも、デッキらしきものがあるのは分かりました。
もしかして私はこれを使いデュエルをしなければならないのでしょうか?
「あの……私……」
「うるせえ!」
「ひ……」
見た目通り、とても怖いです……。
「さっさとやれよ。どうせ断れないんだからよ」
「でも……私……」
実は毎週アニメをにいとみているので、基本的なルールは知っているのですが、実際にやったことはないのです。そんな私にいきなりデュエルを知ろとぶっつけ本番で言われても、私は困ってしまいます。
しかしながら、どうやら向こうのお兄さんは聞く耳を持ってくれていません。
「さあ、デュエルだ」
「あ……ううう」
「さっさと初期手札ドローしろ!」
「は、はい……」
言われるがままにカードを5枚引いてしまいました。
「よし、戦う気ありだな」
「そんな……ことありま」
「ごちゃごちゃ言うんじゃねえ!」
どうしよう。
このデュエルに負けるともしかしたら死んでしまうのかな……。
怖い。せめて最後ににいに会いたかった……。
私、早速ピンチです。
薫 LP4000
チンピラ LP4000
(チンピラ)
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ EXモンスターゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
(薫)
ターン1
薫 LP4000 手札5
モンスター
魔法罠
「てめえの先攻だ!」
「先攻ですか……?」
「さっさとやりやがれ」
せめて少しは冷静に考えさせてほしいです。あんな怖い顔でプレッシャーを与えないでほしいです。
でも、こうなった以上仕方ありません。もしもの時ににいを助けるためには、これくらいのプレッシャーに負けてはいけない。頑張らないといけません。
「私のターン」
手札を見ます。
「魔法使い族……」
魔法使い族が多いデッキです。でもデッキの中を見ていないので、まだどんなデッキかわかりません。それでも手札にあるカードで戦わなければ。
「マジシャンズヴァルキュリアを召喚します」
最初に呼んだのは魔法使いの女の子です。いや、女の子かどうか分からないけれど、もし大人だったら将来はあんな風になりたいと思います。
マジシャンズ・ヴァルキリア 攻撃表示 レベル4
ATK1600/DEF1800
遊戯王のカードによっては動きが複雑すぎてよく分からない時がありますが、今の手札を見る限り、それほど難しい使い方をするカードはありません。
「そしてカードを2枚伏せて、ターンエンドです」
相手にターンを渡すのは少しドキドキします。これから何をされるのか不安になりますが、今できることをしっかり考えて手を打つ。それがにいがデュエルをする時にいつも心がけていることだそうです。
この世界ではデュエルが重要になる以上、私も気を付けていこうと思います。
にいに会うためにもここはなんとしても勝って生き残ろう。
そう思い、つい右手を強く握ってしまいました。
薫 LP4000 手札2
モンスター ① マジシャンズ・ヴァルキリア
魔法罠 伏せ2
(チンピラ)
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ EXモンスターゾーン
□ □ ① □ □ メインモンスターゾーン
□ □ ■ ■ □ 魔法罠ゾーン
(薫)
ターン2
「じゃあ、俺のターンだな」
ところどころ欠けた歯を見せて向こうのお兄さんはカードを引きます。
チンピラ LP4000 手札6
モンスター
魔法罠
引いたカードを見て、少し考えるお兄さん。それを見て、私は少し怖かったです。
何をしてくるのでしょうか。
「俺は……ガトリングオーガを召喚!」
お兄さんが出してきたのは、その名の通り、ガトリングと思われる回転型の弾丸射出機を携えた悪魔でした。
ガトリングオーガ 攻撃表示 レベル3
ATK800/DEF800
「じゃあ、殺すか」
「え……?」
「おいおい、嬢ちゃん。ここはバトルシティだぜ? 次のターンがあるなんて生ぬるいことは考えないことだ」
きっとあのガトリングオーガという奴はそのままではいけない。このモンスターを召喚した時のあのお兄さんの目は、恐ろしい目をしていたように見えました。
カードの発動をするタイミングは気を付けなければなりませんが、ここで使わないと後悔する気がしたので発動します。
「速攻魔法、『ディメンション・マジック』。魔法使い族モンスターが存在するとき、私のフィールド上のモンスター1体をリリースし、手札から魔法使い族モンスター1体を特殊召喚します。わたしはフィールドのマジシャンズ・ヴァルキリアをリリースして、手札の混沌の黒魔術師を特殊召喚!」
私の手札に残ったうちの1枚は、上級モンスターでした。攻撃力が高く、発動したディメンションマジックとの相性も悪くないです。
現れたのは頼もしい魔術師でした。その背中は頼りになりそうです、
混沌の黒魔術師 レベル8 攻撃表示
ATK2800/DEF2600
「さらに、相手モンスター1体を選んで破壊できる。今召喚された、ガトリングオーガを破壊します!」
「おう、マジかぁ」
魔法カードの効果で発生した電気がオーガを攻撃し、粉々にしました。
これで一安心、と思ったのですが、
「へへへ、少しはやるじゃねえか。しょうがねぇ。俺は魔法カード『ソウル・チャージ』を発動する! 俺は墓地のモンスターを任意の数選んで特殊召喚する。だが、召喚したモンスター1体につき、1000のダメージを受ける。俺は墓地からガトリングオーガを蘇生させて1000ダメージを受ける。そしてこのカードを発動したターン、バトルフェイズは行えない」
ガトリングオーガ 攻撃表示 レベル3
ATK800/DEF800
チンピラ LP4000→3000
「そして俺はカードを3枚セットぉ。行くぜ?」
やはりあのオーガには何かある。それも、わざわざ特殊召喚までしなければいけなかった理由があるはずです。それが今から明らかになるということは、私はまずいことになりそうなことは予想できます。
「ガトリングオーガの効果! セットしたカードを1枚墓地へ送るたびに、相手に800ポイントのダメージを与える! 俺は今伏せている3枚のカードを墓地へ!」
「3枚……!」
「お嬢ちゃんも分かるよなぁ。早速、2400のライフを削られるんだぁ。怖いだろう?」
強面のお兄さんは、悪そうな笑みを浮かべて宣言しました。
「やれ、ガトリングオーガ。ファイア!」
ガトリングから撃ちだされる数々の弾丸が私に――。
「が、ぐ、ああああああ!」
痛い!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
「やめてぇ!」
「やめるわけねえだろぉ! 甘んじて受けな!」
「やああああああああ!」
痛い……痛いよぉ。
薫 LP4000→1600
全身が針でずぶずぶ刺された。それくらい痛い。
「あ……あああ……」
目から涙が出ました。痛い。本当に痛い。
「お嬢ちゃん。ここはバトルシティだ。生半可なデュエルは許されないぜ。耐えられないならさっさとサレンダーしろよ。まあ、そうしたら一歩死に近づくわけだぁ!」
嬉しそうに叫ぶあのお兄さん。
どうしてこんな痛いことをして喜ぶのでしょうか。にいがやっていたデュエルはもっと楽しそうな遊びだったのに。
デュエルっていうのはこんなにひどいものなの。にいを問い詰めたかったです。
――首を振りました。そんなはずはないと思いました。
にいは悪いことはしない。だからこんなことは違うと思います。
でも、にいが毎日こんなことをしていると思うと、にいのことがとても不安になりました。
まだ死ねません。
でもここで負けたら死に近づくと言っていました。ならば負けられません。
「おお、立つのか。お嬢ちゃん」
「ぐ……」
「泣きべそをかいているが、そこらの隠れている腰抜けよりは優秀だぜ嬢ちゃん。さあ、来な。つぎがてめえのラストターンだ。俺は残った手札1枚を伏せて、ターンエンド」
目の前のお兄さんはにやりと笑い、ターンエンドを宣言しました。
「混沌の黒魔術師の効果。私は墓地の魔法カードを手札に加えます。私は『ディメンション・マジック』を手札に加えます」
チンピラ LP3000 手札0
モンスター ② ガトリング・オーガ
魔法罠 伏せ1
(チンピラ)
□ □ ■ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ ② □ □ メインモンスターゾーン
□ □ EXモンスターゾーン
□ □ ③ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ ■ □ □ 魔法罠ゾーン
(薫)
ターン3
「私のターン」
手もすごく痛みますが、私はまだあきらめません。
薫 LP1600 手札4
モンスター ③ 混沌の黒魔術師
魔法罠 伏せ1
手札に来たのは魔法カード。まずはそれを発動して、憂いをなくします。
「マジックカード。『サイクロン』。相手フィールド上の、魔法・罠ゾーンに存在するカードを1枚、破壊する! あなたの伏せたカードを破壊します!」
「マジかぁ、このまま攻撃してくれても良かったんだけどなぁ」
凄い風が起こって、悪いお兄さんが伏せたカードを破壊しました。
これで残りは、あの忌々しい機関銃野郎です。
「私はカードを1枚伏せます」
さきほど手札に戻した速攻魔法を伏せます。
手札には魔法使い族モンスターがもう1体います。十分使う機会はあります。
「さらに私は、装備魔法『ワンダー・ワンド』を混沌の黒魔術師に装備。装備モンスターの攻撃力を500アップします」
混沌の黒魔術師 ATK2800→3300
ワンダーワンドにはもう1つの効果がありますが、今は使う必要はありません。
今伏せているもう1枚の罠カードは、『マジシャンズ・サークル』であり、混沌の黒魔術師で攻撃をする沖に、自分のデッキから魔法使い族モンスターを攻撃表示で特殊召喚できる効果を持ちます。
これで強力な1撃のあと、ダイレクトアタックをお見舞いできるはずです。
「バトル!」
しかし、そう甘くはありませんでした。
「メインフェイズ終了時、俺は墓地の罠カード、『光の護封霊剣』の効果を発動する! 墓地のこのカードを除外! このターン相手はダイレクトアタックできなくなる!」
「え……」
まずい。これではマジシャンズ・サークルの効果を使ってもダイレクトアタックできません。
「魔法使い族は、油断ならないからね。マジシャンズサークルなんか発動されたらこのターンで沈んじゃうから。念のため発動させて貰おうかなぁ」
読まれている。予想は図星です。
これでは仕方ありません。
それでもこのターン、あの悪魔を消し去ることは十分な意味があります。
「混沌の黒魔術師で、ガトリングオーガを攻撃!」
黒魔術師は、渾身の一撃を私のために撃ちだしてくれました。あの忌々しい化け物をこれで撃破です。
「ぐおおっ! ぐ……」
苦しそうな顔をしています。本当に痛がっているようです。
(勝)混沌の黒魔術師 ATK3300 VS ガトリングオーガ ATK800(負)
チンピラ LP3000→500
痛がっている……?
ようやく、この世界のルールを理解できました。
どうやらこの世界では、デュエルのダメージが実体化しているようです。
だから先ほどはあんなに痛かったのだと、そして今の私の攻撃であの悪いお兄さんが痛がっているのだと理解しました。
つまりこの世界ではデュエルは、本当の意味で痛みを伴う戦いだということ。
そう考えると急に恐ろしくなってきました。
しっかりしないと。
私は深呼吸をして、前を見ます。現状、マジシャンズ・サークルを発動しても、直接攻撃はできないので意味がありません。個々は温存して次の機会に備えることにしました。
「私はこれでターンエンドです!」
薫 LP1600 手札1
モンスター ③ 混沌の黒魔術師
魔法罠 伏せ2 ディメンション・マジック マジシャンズ・サークル ④ ワンダー・ワンド
(チンピラ)
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ EXモンスターゾーン
□ □ ③ □ □ メインモンスターゾーン
□ ④ ■ ■ □ 魔法罠ゾーン
(薫)
ターン4
運命のターン。このターンを乗り切れたら、勝利に近づきます。
「俺のターン! ドロー」
チンピラ
向こうの悪いお兄さんは手にしたカードを見て、にやりとまた笑いました。
「さっきのターン破壊されたカード。あれは何だと思う?」
私に訊いてきます。知るはずがありません。
「今教えてやるよ。俺は墓地の魔法カード、『オーガ・リベンジファイア』を発動! このカードを除外して、相手フィールド上の伏せられているカードを1枚破壊する! 俺はお嬢ちゃんの伏せたディメンション・マジック、つまり、そのカードを破壊する!」
向こうのお兄さんは的確に、私の伏せたディメンションマジックを破壊してきました。
まずい。これではまずいです。
もしも、アイツが来たら……。
「さらに、この効果を使用後、デッキの炎属性のオーガと名のつくモンスター1体を特殊召喚する。ただし、このターン俺はバトルフェイズをスキップする。よみがえれ、ガトリングオーガ!」
悪夢再び。その言葉はまさにこのことです。
来てしまいました。アイツが……!
ガトリング・オーガ レベル3 攻撃表示
ATK800/DEF800
「さらに 墓地にあるマジックカード『錬装融合(メタルフォーゼ・フュージョン)』の効果を発動。墓地のこのカードをデッキに加えてシャッフル、カードを1枚ドローする!」
軽やかな手つきでカードをデッキに戻し、再びカードをドローする相手のお兄さん。
そして手札にはカードが2枚あります。
私はやめてくださいと心から思いました。どちらかがモンスターであってほしいと。
「俺は、カードを2枚セット」
しかし、それはかないませんでした。
「さあ、お嬢ちゃん。分かるな?」
勝利を誇る笑みで向こうのお兄さんは私を見ます。
また、痛いのが来る。
「ガトリングオーガの効果! 俺はセットされた2枚を墓地へ送り、1600分のダメージを与える!」
「やめて……!」
「やめねえよ! たっぷりいたぶってやるぜぇ! ファイア!」
再び打ち出された弾丸。
痛くて――痛――。
やめ――。
――。
薫 LP1600→0
少しの間気を失いました。
相手のお兄さんはニヤニヤ私を見つめて、
「ようし、まずは4000ゲットぉ。良かったな。俺達解放軍の礎になれるんだぞぉ?」
解放軍、礎。言っていることの意味が分かりません。
「俺たちがイリアステルを倒して世界を救う礎だ。喜んで命を差し出してくれよ。俺達には500000ポイント必要なんだよぉ。さあ、もう1回デュエルしようぜ! ほら立てよ! なあ?」
もう1回なんて。
怖くてやりたくありません。こんないじめを受けるためにこの世界に来たんじゃない。わたしはただにいに会いたいだけなのです。
「立てよ。立たねえなら勝手に始まるぞ。お前はデュエルディスクだけ差し出しとけばいいよ。あとは俺が全部やってやるからさ。俺がお前をここで殺してやるよ。嬉しいだろ。怖い世界から、痛いのから、お前は解放されるぜ?」
死ぬ?
嫌。嫌。嫌!
私は逃げようと体に力を入れます。
だめです。力が入りません。全身が痛いです。
「てめえ、まさか逃げようなんて思って無いよな。俺達解放軍の礎になりたくないって言わないよな。舐めてんじゃねえぞ。俺達は命かけて戦ってんだよ。イリアステルが作ったこの世界を終わらせるために、最前線に立ってんだ。雑魚はその助けになるなら、命張っても当然だろうが!」
怖い。このお兄さんは怖い。
嫌だ。死にたくない。誰か助けて!
祈りました。神様でも仏様でも、どうせなら悪魔でも構わない。助けてほしいと。
「ちょっと」
女の人の声が聞こえました。
その声は、なぜか聴いた瞬間涙が出るほど安心する声でした。
「なんだてめえ」
「その子いじめるなら、代わりに私をいじめなさいよ。ちょうど相手が雑魚ばっかりで退屈していたところなの」
「ああ。生意気な。俺が誰か分かっていってんのか。ボコボコにしてやるよ」
その女の人は私に笑いかけてくれました。
涙で前が見えなくて、その時は誰か分かりませんでした。
「薫ちゃん。任せて。あなたをいじめたクズは……ここで殺すわ」
【3】
あまりに鮮やかな手際で、私が苦戦したそのお兄さんを軽々と追い詰めました。
その女の人はアニメで見たことのある、オレンジ色のドラゴン型サイバースモンスターを使っていました。
「ひぃ……助けてくれぇ……」
「助ける?」
女の人はものすごく怒っていました。
「私の薫ちゃんをここまでボロボロにしておいて。今にも殺しそうなことをしておいて?」
その姿は先ほどのお兄さんよりも恐ろしく冷酷で、でも私にとってはとても嬉しいことでした。私にためにその女の人は起こってくれたのです。
いつしか立つ気力すら出ない私を支えてくれる人もいました。
「リボルバー様。南東地区制圧。現在我々がチーム1位の成績を維持しています」
「三波、報告ありがとう。リゼッタのほうも、もうすぐ終わるって言ってたし、私もそろそろこの男をいたぶるのは終わりしようかな」
私をいじめたお兄さんは、震えてリボルバーと呼ばれたその女の人を見て腰を抜かしていました。
「あんたは……あんたは……ひいい……。エデンのリーダー……」
「それがどうしたの?」
「助けてくれ。助けてくれ。命だけは、命だけは! そうだ、俺、今からあんたの奴隷にでもなる。だから……」
「馬鹿な男」
その女の人は私をいじめたお兄さんに言い捨てます。
「死になさい。下種。私の薫ちゃんを痛い目に遭わせたその罪、万死に値するわ。トポロジックボマードラゴンで、ダイレクトアタック」
「やめてくれぇぇ!」
容赦はありませんでした。
放たれたレーザーはそのお兄さんを焼き尽くし、遺灰すら残すことはありませんでした。
「リボルバー様。この子、怪我がひどいので……その」
「三波心配しないで。この子は個人的に助けたい子だから。ちゃんと助けるわ。まあ、いつもそんなこと言っているけど。今回は本当に特別」
先ほど見えなかったその顔が見えました。
死にそうになっていた私を助けてくれたのは。
「大丈夫。薫ちゃん」
「彩お姉ちゃん」
にいの大親友。彩さんだったのです。
(前編終わり)
いかがだったでしょうか。
前回の1人称視点につづき、今回も1人称視点で話を進めています。前回とはまた違った感じで少し幼い薫ちゃんという、この作品のヒロイン候補としての一面を引き出せていければと思っています。
彩ちゃんはデュエル初心者だし、こんな結果は仕方ないのです。むしろこの健闘に拍手を送ってあげてください。
そんなわけで、遊介の妹である薫ちゃんがついにこの世界に来てしまいました。しかし肝心の兄には会えず、出会ったのは悪いお兄さんと、薫ちゃん大好きな彩ということになりました。このような形で、薫もまたエデンに身を置くことになります。その詳しい過程は後編で。
今回はチンピラが解放軍の話も少ししていますが。解放軍の話は、次の番外編まで待ってください。今回は薫ちゃん中心で進めていきます。
作中のチンピラはとにかく悪そうに書きました。そして悪いモンスター、ガトリング・オーガはたまたま録画していた5D'sを見ていて思い出しました。あれは4000デュエルでは凶悪ですね。今後はもうこの話で出ることはないでしょう。
さて次回は後編です。後編はエデンのイベント戦お楽しみ会+エデンについてより掘り下げていければと思っています。
後編は10日以内に出せればと考えています。お楽しみに!