遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』   作:femania

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注意事項

・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。

これでOKという人はお楽しみください!

久しぶりの投稿です。遅くなりましてごめんなさい!
デュエルは話の構成的にありませんが、お楽しみいただければと思います。
ちなみに次回はデュエル有りなので、もう少しお持ちください。

番外編2の後編です。遊介の妹がエデンに吸収されてしまう経緯とは?


番外編2 兄を求めて 後編

「はぁ……幸せ……」

 

私は彩さんに拾われました。

 

自分の知る相手に保護されるというのはとても幸運だったと思います。アバターを現実の姿と全く変えなかったのが功を奏したと言えるでしょう。

 

最初は彩さんかどうか分かりませんでしたが、私の主観で語ることを許されるのならこの彩さんは本物です。

 

にいは知りませんが、彩さんは二人きりの時はボディタッチが激しいです。ことあるごとに私に体を触ってきます。

 

スキンシップのつもりなのでしょうが……。

 

「あのぉ……」

 

「なあに?」

 

「いくら何でも……腕を組むというのは……」

 

「いいじゃない。それともお姫様抱っこの方がいい? もちろん抱っこされるのは薫ちゃんだけどネ!」

 

ノリノリでこのようなことをしてくるのです。溺愛されているといえば聞こえはいいですが、街中では恥ずかしいのでやめてほしいと思います。

 

しかし、助け出されてから、ここまで歩いてくる間、この世界のことをいろいろ教えていただきました。おかげで、この世界における基本的なルールはしっかり理解できました。

 

正直驚きました。この世界は本当にデュエルで生き死にが決まってしまうなんて。

 

より一層、にいが心配になります。すぐにでも探しに行きたいですが、その欲求は抑えることにしました。

 

今私は、どうやら巨大組織に保護されたということらしいです。今は、『リボルバー』という名前でこの世界を生きている彩さんと、秘書である二人、三波さんとリゼッタさんが近くでいろいろと難しい話をしています。

 

「リボルバー様。現在のポイントが800を超えました。チーム戦ランキングでは現状第2位です」

 

「2位かぁ、何とか1位になれないものかな」

 

「1位は解放軍です」

 

「でもあいつら原住民や戦う意思のないやつ、またこの世界に来たばっかりの奴とか、弱そうなやつとかを狙い目にしてるんでしょ? モラルがないわモラルが」

 

彩さんが現実世界ではかけていないサングラスをかけている姿はカッコいいです。

 

「リゼッタどうするべきだと思う?」

 

「……本当に1位になろうというのなら、幹部クラスの連中をもっと働かせて、解放軍を根絶やしにするか、解放軍と同じように戦わないとだめですよ。相手を選り好みしている場合ではないと思いますが?」

 

「過激だねぇ。まじかぁ……じゃあ、前者で」

 

「決断速いですね」

 

「うじうじ悩んだって仕方なくない? 根絶やし……とまではいかないけど、徹底的に解放軍をサーチして、ボコっていけばいいんじゃない?」

 

「人道的に決めるのなら、幹部の多数決を取るべきでは?」

 

「その必要はなし。だって私、リーダーだから。リーダー決定権を行使するわ」

 

「では、そのように皆さんに通信で伝えます。多分クレーム来ますけど」

 

「いいのいいの。文句あるなら私倒して新しいリーダーになるべし! って約束でしょ」

 

どうやら聞く限りでは、彩さんは巨大組織『エデン』というチームのリーダーらしいです。そして、独裁者的思考を先ほどから躊躇いなく見せています。でも、我が儘っぽさは現実世界でもあったので、違和感はありません。彩さんの我が儘をにいと松さん2人で必死に止めるというのが、いつもの3人の光景でした。

 

彩さんはこの世界でもあまり変わらず過ごしているようで安心しました。

 

「リボルバー様。その子はどうしますか?」

 

「どうするも何も、抱き枕に……なんてね。しばらくは私が面倒見るから。気にしないで」

 

ちなみに抱き枕は本気かもしれないです。現実世界でも、彩さんは私の家に泊まるとき、いつも私をそれっぽい扱いにして隣で寝ていたことが何度もあります。

 

流れで面倒を見られることになっていますが、それはそれで嫌ではありません。むしろ一人で彷徨うくらいなら、この世界で生きるイロハを教わる間は、見知った人に頼れる状況はとても幸運なことだと思います。

 

本当はにいではないのが残念ですが、さすがにこれ以上は高望みでしょう。

 

「じゃあ、カオリンはしばらく私のモノね。やったー」

 

嬉しそうに笑ってくれるのは、私も嬉しい限りですが少し将来が不安になったのは気のせいだということにします。

 

「カオリン……面倒! 普通に名前で呼んでいい? 他のみんなにはアバター名を呼びやすくしたってことにしとくから」

 

「はい。私もその方がありがたいです。あの、彩さんはやっぱり、リボルバー様って呼んだ方が?」

 

「何言ってるの。いつも通り。今までと同じように、仲良くしましょう? 今まで通り、私のことは彩お姉ちゃんで。……で本題だけど、薫ちゃんはちょっと他の人とハンデがあるから、そのハンデが埋まるまでは、私たちに拉致……もとい保護されます。よろし?」

 

「はい」

 

「じゃあ、決まり。それじゃあ、これからしばらくともに過ごす私の働きバチ達に会いに行きましょう!」

 

嬉しそうに笑った彩さん。私の手を握って走り出しました。彩さんの仲間なのできっといい人がいっぱい……とはいかないような気がします。先ほどの会話を少し聞くだけでわかりますが、彩さんは今牛耳っている組織に圧制を敷いている模様です。

 

きっと、彩さんに恨みがある人がいるんだろうなと、先行きが不安になりました。

 

 

【4】

 

 

アジト、というよりは仮設のテントに近い見た目でした。小学校の頃に運動会で来賓の人が涼んでいたテントによく似ています。それを街の中の公園っぽいところを貸し切り状態にして遠慮なく広げていました。

 

クレームなどなんのその。文句があるならデュエルをしろと、張り紙に書いてあります。もしかするとチームエデンは私の想像以上に危なっかしい組織の可能性が出てきました。

 

「ただいまー」

 

彩さんが手を振った先には、かなりボロボロになっているデュエリストの姿が数名いました。その中には私が求めた人物が――、

 

「にい――」

 

嬉しくて走り出そうとしたところを、彩さんに止められました。

 

「ぬか喜びさせたくないから言うけど。アレ偽物よ」

 

「あれって、でも、あれはにいです、遊介です」

 

「見た目はね。見た目はそうなのよ。中身はクズだけど」

 

思いっきり罵倒しています。にいと同じ姿の人間を罵倒しています。

 

そしてそれは向こうにも聞こえていたようです。

 

「お前、やめろ。出会う前から悪印象を植え付けやがって。ていうか、俺がまるで遊介じゃないみたいな言い方だな。俺は正真正銘遊介だ」

 

「そうなのよ。本物を騙る偽物なの」

 

「違うってんだろ!」

 

「あら、じゃあ、あなたは遊介? この子が探している遊介? 違うでしょ。ならいいじゃない偽物で」

 

「どうしてそうなる! 俺は紛れもない本物だ」

 

「じゃあ、聞いてみる? 妹さんはどう思うか」

 

彩さんはこちらを見ます。

 

声、見た目、全く同じです。私には本物にしか見えません。しかし、この話の流れ的にきっと私の知っているにいではないことがわかります。あれがただのそっくりさんだということも。

 

「いや、いいよ。どうせ俺は彼女にとっては『偽』だからな」

 

「ずいぶんと潔く認めるじゃない」

 

「俺の妹じゃないことは確かだ。それについては嘘はつかねえよ」

 

「あんたも妹居るんだ」

 

「正確には『いた』だけどな」

 

過去形。つまり、にいのそっくりさんの妹はもういないということでしょうか。

 

「もしかして、嫌なこと思い出させちゃった?」

 

「いいや。俺が嫌がっったて事実が変わるわけじゃない。その程度は気にしないさ」

 

偽遊介さんは、この話題を無理やり変えました。

 

「ところで、さっきの命令はなんだ。解放軍と戦えだと? こっちはクソ忙しいってのに」

 

「どうせなら1位になりたいじゃない。そのために解放軍のポイント稼ぎをこれ以上減らしながらこっちは稼ぐ」

 

「もう疲れたわ。少し休憩させろ!」

 

「お断りよ今すぐ行きなさい。これはリーダー命令よ」

 

「ブラック反対!」

 

「上等じゃない。文句あるなら私にデュエルで勝ちなさい? もっとも、100戦って1回も勝てないあなたにそれができるならの話だけどね」

 

「くそぉ……勝ち越してるからってぬけぬけと」

 

「はい、いっけー」

 

偽遊介さんはとっても不服そうな顔をしながら公園の外へ向かって行きました。

 

ところで、私はこの後どうなるのでしょうか。このままテントの下で何もせずに待機と言うのは、助けてもらった恩に報いることができません。

 

「三波はあいつの監視ついでにお仕事ね。リゼッタは他のエリアで戦っている人たちに連絡。今から私たちは解放軍をフルボッコにします。ただし、最初も言った通り、保有ライフが4000以下になったら必ずアジトに逃げることを徹底。おっけー?」

 

リーダーらしく、部下に命令を出している彩さんに訊くことにしました。

 

「あの、私は」

 

「彩ちゃんはしばらくテントの下で」

 

「何かできることはありますか?」

 

「え……」

 

「助けてもらってばかりじゃ、その……」

 

「ああ。別にいいのよ。そもそもそれがエデンの本来の仕事だし」

 

仕事、彩さんは自慢げに語ります。

 

「この世界で生きようとしている人達、居場所が欲しい人たちを助けて、この世界を争いがほどほどのまともな世界にする。不当に命は奪われず、ひどい目にも合わない世界にする。それがエデンが戦う理由だもの。……なんて、リーダーになったばかりの私が言うにはまだ早いけど、そういう組織なのよ。ここ。だから多少大変でも、結局それが理想の実現につながるのなら、多少は無理をするの」

 

彩さんは私ににっこりと笑いかけてくれました。

 

「だからね、彩ちゃんは何も心配せず、エデンにかくまわれていいの。もちろん所属は強制しないけど。安全になるまでは……そうね、一緒に寝てくれるだけで、私の疲れも吹っ飛ぶし、それで役に立ってるってことで」

 

私は少しエデンに、怖い先入観を持っていたかもしれません。彩さんが嘘をつくはずもなく、きっとこの組織は、危なっかしいところもあるけど、悪い組織ではないのだと思います。殺気の偽遊介さんも、本気で怒ってはなかったし、三波さんもリゼッタさんも、彩さんを信頼しているようです。

 

「じゃあ、薫ちゃんはそこのテントの私専用の席に座ってゆっくりしてて。ちょっと」

 

彩さんが違う方向を向きます。そこには、ニヤニヤしながら立っている男の人がいました。

 

「あの侵入者を可愛がって来るから。安心して待っててね」

 

と、デュエルディスクを構えてその男の人に向かって行きます。

 

私は言われた通り、テントにある、もふもふのクッションが置いている椅子に腰を落ち着けました。

 

ちょうどテントには水分補給のためか、ゆっくりとお茶を口の中に入れている綺麗な女性がいました。

 

その人はこちらを見て、

 

「ごきげんよう。あなたがリーダーの保護した人?」

 

と優しく語り掛けてくれました。

 

「はい……」

 

「私はミコト。解放軍の幹部を務めさせていただいてます。よろしければあなたの名前をうかがっても?」

 

「カオリン……デス」

 

いけない。緊張でカタコト言葉になってしまいました。

 

「ふふ、愛らしい。リーダーもこのような方を愛でる趣味があるとは。日頃の激しさからは想像もつきませんでした」

 

どうやら私はぬいぐるみ扱いらしいです。先ほどここに来る前に私を連れていくと連絡をしていましたが、何を言ったのでしょう。よく聞いていなかったため、内容は知りませんでしたが、どうも何か間違ったことを吹き込んだようです。

 

もっとも、今から私が何を言っても遅いと思うので、私は諦めることにします。

 

「……デッキ、見せていただいても良いですか?」

 

積極的に話しかけてくれるのは、きっとここでしんみりしないように気を使ってもらっているのでしょう。遠慮するとむしろ失礼に当たるので、私も何とかその話に乗っていこうと思います。

 

デッキを渡した時に、外で悲鳴が聞こえました。彩さんが攻めてきた人をもう追い詰めているようです。

 

「魔法使い族……でも、何も改造していない、雑な作り。もしかして、この世界に来たのは最近ですか?」

 

「はい……その……さっき」

 

「先ほどというのは?」

 

「今日の、1時間前くらいです」

 

「それは……大変でしたね……。よりにもよって今日なんて、私だったら絶望してますよ」

 

「今日? 何かあるんですか?」

 

「今日はイベント戦と言って……今この街は、とにかく血気盛んな戦士が戦い合う地獄と言ってもいい」

 

「そんな地獄にわざわざ戦いに来ているのですか?」

 

「はい」

 

「何のために?」

 

「このイベントは他のチームとの競争。それに勝てれば、チーム全員の減ってしまった分の保有ライフが回復する。そうすれば、多くの人が安心できる」

 

「多くの人?」

 

「エデンのチームメイトです。何人いると思います?」

 

彩さんが率いているので、結構多そうです。

 

「100人とか……?」

 

ミコトさんは首を振りました。

 

「1000人を超えています」

 

1000……?

 

多いです!

 

彩さんはそれほど巨大な組織の頂点に立ち戦っていたと思うと驚きです。

 

「リーダー、人助けって言って、自分のチームに弱い人かくまって、安全に住む居場所を与えているのですよ。私たちのように覚悟を持ってこの世界に来た人ばかりじゃない。中には好奇心でこの世界に招かれて、そして生きることも困難に感じている人がいる。そんな人がひどい目に遭わないようにって」

 

少しにっこりしながら、向こう側で戦っている彩さんを見るミコトさん。ミコトさんも彩さんを信頼しているのが窺えます。

 

彩さんは本当に変わっていないようです。我が儘なようでいて、実は優しい一面も持っている。

 

私は嬉しいです。

 

少し怖かった。しばらく会わないうちに、私の知っている人が変になっているかもしれないと。でも、それは杞憂でした。

 

「うわああああ」

 

情けないこの声は、彩さんの相手から。見ると、彩さんはダメージを全く受けていません。

 

昔から、にいを圧倒する感じでしたが、どうやら彩さんは外でも通用する力を持っていたようです。それは、にいが勝てないはずです。デュエルに関してはにいは弱いですから。

 

「……私はそれが少し引け目に感じてしまって、なかなかリーダーと仲良くできないのですけれど」

 

「え?」

 

ミコトさんが急に話を始めました。

 

「リーダーはみんなのためによく頑張ってくれてる、それでもきっと重い重圧がのしかかっている。……遊介も、あんなこと話さないで、利用するだけ利用して彼女の探している人が見つかったタイミングで手放した方が、彼女も苦しまないだろうに」

 

何か不穏なことを言っています。どういうことでしょう。

 

「ごめんなさい。私もリーダーのことが嫌いではないのです。けれど、これは私たちに問題があって」

 

「問題?」

 

「私たちはどうしてヌメロンコードを求めて戦っていると思います?」

 

ヌメロンコード。触れた人間のあらゆる願いを現実にする超常現象を起こす存在。つまりミコトさんにもそれを使いたい理由があるということ。

 

「なんて……出会ってすぐの貴方には急に言われても困る話ですね」

 

「あ、すみません……」

 

「いいの。でも聞いてほしい。エデンに集まって、特に戦いを選んだ人たちが戦う理由」

 

ミコトさんは写真を見せてくました。

 

「あれ……?」

 

そこには私と、にいも映っていました。ミコトさんや、どこかで見たことのある人たちも。でも、私はミコトさんとは初対面のはずです。

 

「驚きました?」

 

「はい」

 

「安心して。これはあなたではない。別の薫ちゃんです。私の故郷にもあなたそっくりの可愛い子がいた。……あなたに話しやすいのは、雰囲気が似てるからかな……」

 

「もしかして、さっきの偽遊介さんの妹が、この人?」

 

「ええ。だから彼も本当にあなたの兄ではない別の遊介。そして私は、昔からの付き合いだった」

 

懐かしそうに、嬉しそうに、でも、どこか悲しそうにミコトさんは話していました。

 

「でも、今はもういない。もう、あの人たちは死んでしまった」

 

「どうして……」

 

「戦争があったのです」

 

戦争。現実世界では考えられないことだ。でも、ミコトさんは嘘をついているとは思えない。

 

もしかするとミコトさんは本当に、別の世界の人間なのかもしれない。

 

「多くの人は死んでしまった。デュエリストはみんな駆り出されてイリアステルと戦った。もちろん私も。私は生かされて、奇跡的に生き残った。でも、あの遊介の妹はその時、死んでしまった。ユートも瑠璃も、遊馬くんも、テツオくんも、本当に多く死んでしまったわ」

 

だとするならば、おそらく戦う理由は復讐。それが本当ならばミコトさんは、きっとこの世界にいるイリアステルを恨んでいると思います。

 

「ここに来たのは復讐の為なんですね」

 

「それも……ないわけじゃないけれど。でも、イリアステルには勝てない。だから復讐はやれることをすべてやった後で」

 

「勝てない……?」

 

「イリアステルには、彼らを最強としている『セカンドオーダー』カードがある。あれがある限り、絶対に勝てない。なら復讐なんて死ぬ間際でいいの」

 

復讐ではない。ではなんの為でしょうか。

 

「戦争の生で人類は著しく減少した。そして文明をほぼ終わりを告げて、何より食べ物の供給源がほとんどだめになった。もう、あの世界は終わる。人間は限りある数しか生きていけなくなり、数は減少して絶滅する。それくらいに敗戦した後の私の世界はひどかった。でも、ここなら……まだ生きているこの世界なら? 生まれたばかりのこの世界ならまだやり直せる。まだ人が生きられる。今はイリアステルの支配下だけど、少しでも生きて行ける可能性を見出せるのなら、この世界で生きていく。それでいい。私はまだ生きたい、みんなもまだ生きたい人がいる。そんな人の生きる場所を創るために、今できることをしているのです」

 

「すごいです。死ぬかもしれないのに、優しいんですね、ミコトさんは」

 

「ううん。私だけじゃない」

 

ミコトさんは、デュエルディスクに保存している写真をたくさん見せてくれました。

 

あまりいい光景は映っていませんでした。爆発、瓦礫の山、傷ついた人々、しかし、その中でも今日もまた精いっぱい生きたことをしっかりと記録した写真。中の人たちの顔は希望に満ちていました。

 

「三波も。リゼッタも、ケインも、亮さんも、私も同じ。ケインはシンクロの世界から、亮さんは融合の世界から。そしてエデンにはいなくても、他にも多くの人がきっと故郷を滅ぼされている。イリアステルがヌメロンコードを使いたいがために巻き起こした戦争で」

 

「でもそれって、この世界も今戦争中なんじゃ……それじゃ、この世界も同じことに」

 

「同じことにはしない。まだ方法は具体的にはわからないけど、一度世界の破滅を経験しているもの。今度こそ、自分たちが生きられる最後のチャンスを逃さないように頑張る。そんな人たちがエデンの実働部隊として頑張っているのです。何とかヌメロンコードを手に入れられれば、それに越したことはない。この世界に私たちが生きられる永遠をお願いするつもり、ケインも、たぶん遊介も、三波も、リゼッタも」

 

「すごい、ご立派です」

 

「ううん、これはきっと悪いこと。平和な世界が故郷がある人は、そこに帰りたいと思う。あなただってそうでしょう?」

 

「あ……」

 

確かに、元の世界に帰りたいと思う。にいを見つけて、帰らなければと思う。それが正しいことだから。

 

でも、ミコトさんにとっては、この世界に永遠をもたらして、この世界に永住することは正しいことなのでしょう。

 

しかし、だとすると、

 

「帰りたいって人と喧嘩になりませんか?」

 

「なる。ていうか、もう少しなっている。この世界に永住したいという思想の集まりがエデンなら、帰りたい人を集めた組織もあるわ」

 

「それって……まさか」

 

「解放軍。今は軽い小競り合い程度だけど。おそらくどこかで必ず決定的に決裂する。向こうの思想と私たちの理想は、どうあっても噛み合わない部分があるから」

 

ミコトさんはそれが悲しいことだというような雰囲気で語ります。

 

「ミコトさん……」

 

「本当は、リーダーも元の世界に帰りたいと思う。早く友達を見つけて、そして――」

 

一度大きくため息をついたミコトさん。勝利に酔いしれながら次の敵と戦っている彩さんを見て、

 

「リーダーは人がいいから、なんだかんだできっと見捨てない結果を取ってしまうような気がする。あの人は必要悪は許容しても、正義感は強い人だから。本当はこれ以上私たちと関わるべきじゃないのに。……ジレンマですね、あの人の力がないとエデンはここまで大きくなれなかったし、あの人はきっとこれからもエデンを支えるリーダーとしてふさわしいけれど。万が一にでも絆されてしまったら、もしも友人が帰ることを望んだのなら、きっとリーダーはとても苦しんでしまうと思います」

 

ミコトさんは私に頭を少し下げました。まるで頼みごとをするかのように。

 

「薫さん。一緒に居てあげてください。もしもの時に、あなたが近くにいるだけでも、リーダーはきっと心を病まないで済むはずだから」

 

それになんと返せばいいか、私にはわかりませんでした。

 

しかし、ずっと昔からお世話になっている彩さんの為なら、少しはお手伝いできるといいと私は思います。

 

「はい。私も彩さんを支えられるように、早く一人前になりますね」

 

ミコトさんの真摯な姿勢に私はこう答えました。

 

 

 

【5】

 

 

アジトは広く、その中でも食堂は大賑わいです。

 

アジトにいきなり連れてこられた時は驚きました。まさか、海の中にあるなどとは夢にも思いませんでしたが、景色がとてもきれいで、これからしばらくの住居になると思うと、少し心躍ります。

 

そして、台に上ってリーダーは大きく叫びます。

 

「解放軍ざまあみろ……もとい、エデン優勝おめでとう! みんなおっつかれー! 乾杯!」

 

本当の勝鬨というのを私は初めて聞きました。激しい叫び声に似たボリュームですが、聞いていて不快には全くならないさわやかな声です。

 

それもそのはずで、保有ライフが増えたのです。4000だけというよりは4000もです。私も最初に負けてしまった分が元通りになり、心機一転再スタートを切らなければと意気込んでいるところです。

 

つまり、私もエデンに入りました。彩さんのお手伝いができるように、一刻も早く一人前になりたいと願うばかりです。

 

とりあえずしばらくは、亮さんにしっかり鍛えてもらうことにします。私のデッキも改良して、にいに会った時、驚いてもらえるくらい強くなりたいと思います。

 

「薫! こっちこっち」

 

ケインさんに引っ張られ、私は彩さんのところへ放り込まれました。この場に集まった団員全員の視線が集まる彩さんのところです。私なんかでは当然緊張します。

 

「今日から新しい仲間になりました。カオリンでーす。みんな、可愛がってあげてね」

 

「仲良くしてあげてねではないのでしょうか?」

 

「ああ、そうそうそれそれ」

 

まるで私を愛玩動物みたいに……。

 

しかし、ここで文句を言うのは野暮でしょう。今は楽しいひと時、明日から始まる修業の日々に備えて、今日は余計な文句なしでたっぷりと楽しみたいと思います。

 

「カオリンです! プレイヤーネームが呼びにくかったら薫で良いです。よろしくお願いします!」

 

歓迎の声がすぐさま各方向から来ました。

 

これで私も一安心です!

 

 

 

 

数日後。

 

嬉しいものが目に入りました。

 

テレビ画面の先に、にいが映っています。

 

「ファイアウォールドラゴンの攻撃――テンペストアタック!」

 

先のイベント戦で個人1位の人との死闘に勝利したにいは、この一戦でエデンに限らず各地の強力なデュエリストに認められ、一目置かれるデュエリストになりました。

 

その瞬間をテレビ画面で見られてよかった。

 

何より、にいが生きている、その事実がとても嬉しかったです。

 

「よかったね、薫ちゃん」

 

「はい!」

 

(番外編2 終わり)




こんな感じで遊介の妹は彩ちゃんのチームに吸収されました。
これから薫ちゃんの未来は明るいのか暗いのか……それは後のお楽しみです。

投稿遅れましてごめんなさい!
この話の執筆中、パソコンが動作不良を起こし、書きたいのに書けないという状態になっていました。現在は一応修理も終わり、このように復帰しました。が、そろそろ寿命かも……というありがたいお言葉も聞いているので、また投稿が遅かったら、パソコンがぶっ壊れたんだな、と思っていただいて気長にお待ちいただければ幸いです。

次回はいよいよ番外編3です。
番外編3はいきなりデュエルから入ります。最近デュエルは全然書いてなかったのでまたミスる可能性もありますがその時は温かい目で見逃しながら話の内容を楽しんで頂ければと思います!

今考えている構想では、最近アニメで不屈の闘志を見せているあのキャラが使うテーマと、番外編3の主人公を戦わせてみたいと思っています!
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