遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』   作:femania

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注意事項

・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。

これでOKという人はお楽しみください!

まっつん初登場です。しかし、ちょっと昔と変わっているかも?

少し長くなってしまいました。ご容赦いただければ幸いです。


番外編3 解放軍の理念 前編

「やめてくれ……」

 

命乞いをする人間を見るのは果たして何度目だろうか。

 

くだらない。なんて無様な姿だ。この世界で大きな顔をしても意味ないだろうに。

 

この世界で生きようなんて奴の気が知れない。たぶん、そこの男と俺は相容れないだろう。

 

「悪いな。死んでくれ」

 

俺は光の戦士の一撃を持って、目の前の命をまた一つ摘み取った。

 

ポイントはこれでようやく500000。人間やろうと思えばできることは多いのだろうと実感する。

 

最初にこの世界に来た時は心躍ったものだ。

 

デュエル好きであった俺には、この世界はとても魅力的だった。最初は目の前でモンスターが動いているのは怖かったが、それも慣れで何とかなる範囲だった。

 

現実と同じく楽しめると思っていたあの頃。

 

しかし、アルターと名乗るクソ野郎のせいで、リンクブレインズは地獄になった。

 

死ぬためにデュエルをするなどと馬鹿げている。なんでそんなことのためにこの世界でデュエルをしなければならない。

 

しかし、この世界から出る方法はただ1つ、ヌメロンコードを手に入れることだけ。

 

ならばその後やることは決まった。

 

500000ポイント? エリアマスター?

 

大変そうに聞こえるからと言って、そこから逃げても、生きている限りデュエルで殺される可能性はある。。

 

だからずっと戦ってきた。全力でここまで来た。

 

目の前で死んだ男を看取ることもなく、バトルシティの中央の塔、最後の階段を上る。その先は屋上、地上500メートルの闘技場で、バトルシティのエリアマスターが存在するはずだ。ようやくここまで来たのだと思うと、これまでの数週間も報われるというものだ。LP回復の希少なイベント戦も無視して、ひたすらポイント集め、バトルシティ中央の塔の攻略の準備に時間を注いだ甲斐もあった。

 

「あれは……」

 

下からは見えなかったのに、塔の頂上に来た今、空中に浮かんでいる城の一部が見えた。

 

「来たのか、問題児」

 

そして、俺の追い求めた最後の相手がそこにいる。

 

俺が問題児と言われる理由は相当数思いつく。だが、その中でも俺の一番の悪行は、

 

「1か月立たないうちにずいぶん殺してきたな。125人とか、はっきり言って大量殺人者だ」

 

「イリアステルの犬か」

 

「犬は犬でも、アルター様を護る番犬と言ってほしいな。俺は第1階層最終ボスなんだぜ?」

 

「どうでもいい」

 

ここまで3週間。たったそれだけしか経っていないのに、死者は1万人を超えている。

 

「こんなふざけた世界で、人々を殺し合わせるその性根が気に入らないんだよ。首謀がお前でないしろ、手を貸しているお前も同罪だ」

 

何も振り返らず、殺してきた人数は数知れず、それでも、この世界を終わらせるために戦ってきた。この前も俺のダチが死にかけたんだ。これ以上待ってはいられない。ここでお前を殺し、アーククレイドルへの道を拓く」

 

「まっつん。いい気迫だ。これなら俺の倦怠も晴れるというもの。デュエルだ」

 

目の前で目障りなイリアステルの社員が挑発を始めている。

 

舐めるな。

 

この世界に来てから、全ての時間を捧げてきたのだ。

 

たった3週間だと笑うのなら構わない。しかし、俺の捧げてきた覚悟は本物だ。

 

どんな手を使っても、彩や遊介をこの手で救えるのなら、俺は迷わない。

 

「バトルシティのエリアマスター。ここでお前の息の根を止める!」

 

「来い。挑戦者。クライマックスにはまだ早いことを知ってもらおう」

 

「デュエル!」

「デュエル!」

 

良助 LP4000 手札5

モンスター

魔法罠

 

エリアマスター LP4000 手札5

モンスター

魔法罠

 

(エリアマスター)

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

  □   □     EXモンスターゾーン 

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

(良助)

 

「先攻はチャレンジャーからだ」

 

どうやら俺が先攻らしい。

 

絶対に舐められていると感じたが関係はない、ここで奴は敗れ死ぬのだから。

 

 

ターン1

 

 

初手は悪くない。次に引くカードが何であれ、止まることはないだろう。

 

「俺のターン」

 

良助 LP4000 手札5

モンスター

魔法罠

 

「俺は魔法カード『フォトン・サンクチュアリ』を発動」

 

このカードが初手で来る時の勝率は高い。

 

「俺のフィールド上にこのカードはフォトントークンを2体を守備表示で特殊召喚する」

 

フォトントークン レベル4 守備表示

ATK2000/DEF0

 

この1枚で向こうも分かっただろう。俺が使うのは光属性のデッキだ。そして俺は幸運なことにその中でも最も有名で強さも保証されているカードが初期デッキに入っていた。それを軸にしている。

 

「現れろ、我が行く道照らすサーキット!」

 

俺はトークンの内の1体を指定した。

 

「召喚条件は光属性レベル4以上のモンスター1体。フォトントークン1体をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!」

 

今でもこの口上を言うのは大人げなく恥ずかしいところもあるが、それもやり続ければ慣れてくるものだ。それに、言わないと召喚しようとしてもディスクが反応しない仕様になっているようなので仕方がない。

 

「リンク召喚。リンク1。裁きの光輪!」

 

格好悪い言い方だが、光り輝くドーナツである。いや、最も、それほど格好悪いモノではないのだが、俺にはそういう以外に思いつかない。このカードは現実世界になかったオリジナルカード。俺の初期デッキに入っていたようだ。

 

裁きの光輪 

リンクマーカー 下

ATK0/LINK1

 

そしてこの裁きの光輪、俺が予想するよりもかなりいい能力を持つカードだった。もしかすると俺では考えもしない方法で、悪用できる禁止カードレベルの可能性を秘めているほどに。

 

「裁きの光輪の効果。1つ目の効果は、このカードのリンク先に、デッキのライトロードモンスター1体を選択し攻撃表示で特殊召喚する。俺はウォリアーガロスを特殊召喚!」

 

裁きの光輪が光の柱を発生させ、その中から現れたのは、光の戦士。レベル4ながらなかなかに優秀な働きをしてくれる。

 

もっともライトロードの戦士たちは、その全員が優秀だ。俺の勝利を支えてくれている。

 

ライトロード・ウォリアー ガロス レベル4 攻撃表示

ATK1850/DEF1300

 

「裁きの光輪の2つ目の効果! このカードのリンク先にライトロードを召喚した時、このカードにシャインカウンターを1個置く。その数1個につき、自分フィールド上のライトロードの攻撃力は300アップする。そして、このカードにシャインカウンターが乗っている限り。他のライトロードモンスターが存在する場合、このカードを相手は攻撃対象にできず、このカードの効果は無効にされない」

 

ライトロード・ウォリアー ガロス ATK1850→2150

 

リンク1のくせに効果は盛沢山だ。そういう奴は現実世界ではおよそ悪用されて制限を受ける傾向にあるが、この世界は制限などの概念はない。その代わり、サンダーボルトを筆頭とする禁止カードは、世界に1枚しかないなどの、レアリティの高さが凄まじい。

 

その点で言えば、初期デッキにこのように入っていたのは嬉しいことだと思う。

 

「さらに、手札のライトロード・パラディン ジェインを通常召喚!」

 

ライトロード・パラディン ジェイン レベル4 攻撃表示

ATK1800/DEF1200

 

「裁きの光輪の効果により、パラディンジェインの攻撃力はアップ」

 

ライトロード・パラディン ジェイン ATK1800→2100

 

先ほどは戦士と言ったが。騎士と言わなかったのは、このモンスターが居るためだ。こいつは本当に騎士って感じの身なりである。

 

最初のターンは攻撃できない。ならば、防御を固めるのが良い。俺は防御を固めると言えば、1体の強力なモンスターを呼ぶよりは盾を増やす事を意識する。

 

「俺はさらにカードを1枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、パラディンジェインの効果でデッキからカードを2枚墓地へ送る」

 

この世界はカードが実物をセットすることでできるホログラムなので、わざわざカードを墓地へ送るということを手動ですることなく、ディスクが勝手に処理してくれる。もちろん実物カードを使うモードも選べるらしいが、この世界ではライトロード使いの俺は処理の少ないホログラムモードでやっている。

 

「さらにウォリアーガロスの効果。自分のライトロードモンスターの効果でデッキからカードが墓地へ送られた場合、さらにカードを2枚墓地へ送る」

 

俺は今送られたカードを確認する。残念ながら墓地で使えるような効果はなかったが、悲観することはない。

 

「今送ったカードの中には、ライトロードモンスターが1体。そのため俺はカードを1枚ドローする!」

 

ドローも宣言するだけで自動的に手札に加えることもできるのだが、これだけは俺も手動で行っている。これはどうも癖になっているようで、これがないと違和感があってデュエルに集中できないのだ。

 

俺はカードをドローしてこのターンを終えた。最初にしてはやや不安が残る盤面だが、こればっかりは初期手札に左右されるので仕方がないだろう。

 

最終的に勝てばいいのだ。

 

 

良助 LP4000 手札3

モンスター ① 裁きの光輪 ②フォトントークン 

      ③ ライトロード・ウォリアー ガロス ④ ライトロード・パラディン ジェイン

魔法罠 伏せ1

 

(エリアマスター)

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

  □   ①     EXモンスターゾーン 

□ □ ④ ③ ②   メインモンスターゾーン

□ □ ■ □ □   魔法罠ゾーン

(良助)

 

 

ターン2

 

 

「まずは様子見と言ったところか? 予想ではもっと激しいものだと思っていたが……」

 

「さっさと始めろイリアステル」

 

「そう急かすな。少しは心に余裕を持ったらどうだ?」

 

余裕だと?

 

ふざけるな。悠長に生きることなどあり得ない。

 

目の前で人が死んでしまうことなど、そんなの間違っているに決まっている。それを許容する人間をなぜ許すことができようか。

 

「では始めよう。俺のターン」

 

エリアマスター LP4000 手札6

モンスター

魔法罠

 

「マジックカード『ハイドライブ・スカバード』を発動する。自分フィールドにハイドライブトークン1体を特殊召喚する」

 

見たことのないモンスターが出た。

 

サイバース族、と言えば遊介が使っているのだが、アイツはこんな不気味なモンスターは使っていなかったはずだ。

 

ハイドライブトークン レベル1

ATK0/DEF0

 

「現れろ、イリアステルの未来回路!」

 

早速リンク召喚。リンク1、攻撃力の心配はない。しかし、未知のモンスターが相手では、油断は好ましくないだろう。

 

「召喚条件はハイドライブモンスター1体。ハイドライブトークンをリンクマーカーにセット。リンク召喚、現れろ! フローハイドライブ!」

 

リンクしたモンスターもサイバース。風属性の不気味なモンスターだ。青い体躯と碧頭に不細工な口をしている。

 

フロー・ハイドライブ

リンクマーカー 下

ATK1000/LINK1

 

「そして、ハイドライブブースターを通常召喚する」

 

ハイドライブ・ブースター レベル1 攻撃表示

ATK0/DEF0

 

そして先ほどのトークンによく似たモンスター。まさか、また呼ぶつもりか。

 

その予感は、どうやら当たっていたらしい。

 

「現れろ、イリアステルの未来回路! ハイドライブ・ブースターをリンクマーカーにセット。呼び出すモンスターは同じ、フローハイドライブ!」

 

再び同じ奴が、今度は先ほど呼び出した奴のリンクマーカーの先に現れた。

 

雑魚を次から次へと、一体何をする気なのか。

 

「さて、もう幕引きはやめてくれよ?」

 

「なんだと?」

 

「俺はリンクマジック『裁きの矢(ジャッジメント・アローズ)』を発動!」

 

リンクマジック? 聞いたことのないカードだ。

 

「リンクマジックは、リンクモンスターのリンク先になった魔法・罠ゾーンにのみ発動できる」

 

「不便なマジックだな」

 

「いいや。その分の釣りがくるというものさ。そもそもこのカードが発動できれば、このカードのリンク先にも、エクストラデッキからのモンスターを呼べる」

 

なるほど。確かによく見るとカードにリンクマーカーが付いている。上、右上、左上。このカードを発動できれば、エクストラデッキのモンスターも使いやすそうだ。

 

敵のカードを褒めてどうするんだ。

 

しっかりしなければ、奴は敵、殺そうとする意志以外必要ない。

 

「マジックカード、『ハイドライブ・リビルド』。自分フィールド上のハイドライブモンスターを破壊する。エクストラモンスターゾーンのフローハイドライブを破壊する」

 

「呼んでおいて破壊とは、ずいぶんと馬鹿なやつだな」

 

「そうでもないさ。フローハイドライブは破壊されたとき、ハイドライブトークンを1体特殊召喚することができる」

 

「なに……!」

 

また呼ぶのか。ずいぶんと多い。

 

ハイドライブトークン レベル1 攻撃表示

ATK0/DEF0

 

「羽虫が好きなようだな」

 

「ああ。虫も毒を持っていれば侮れないだろう? 俺のデッキはそういう類のものだ。さらにハイドライブリビルドの効果を発動する。破壊したハイドライブが墓地で効果を発動した時、墓地のハイドライブモンスター1体を特殊召喚する。俺は墓地のハイドライブブースターを特殊召喚する」

 

ハイドライブ・ブースター レベル1 攻撃表示

ATK0/DEF0

 

「さて、行くぞ? 現れろ。イリアステルの未来回路。俺は呼び出したハイドライブトークン1体をリンクマーカーにセット。リンク召喚! 現れろ、リンク1、バーンハイドライブ!」

 

次に現れたのは、赤い龍と言うべきだろう。

 

バーン・ハイドライブ

リンクマーカー 下

ATK1000/LINK1

 

そしておそらく奴は続けてくる。

 

しかし、攻撃力を見る限りでは、なんの問題もなさそうな相手に見える。おそらく、問題なのは、この先だ。何が出てくるか。おそらくリンク3。それも、わざわざリンクモンスターを呼んでいる辺り、何かあるはずだ。

 

「現れろ。イリアステルの未来回路。召喚条件はこれまでと同じだ。俺はハイドライブブースターをリンクマーカーにセット。リンク召喚。いでよ、リンク1、クーラントハイドライブ!」

 

先ほど現れたのが炎龍ならばこれは氷の竜。またもリンク1のモンスター。

 

クーラント・ハイドライブ

リンクマーカー 下

ATK1000/LINK1

 

「さらに永続魔法『プロパティ・プロジェクター』を発動させてもらう。このカードはハイドライブリンクモンスターのリンクマーカーの合計が3以上存在するとき発動できる。以下の6つの効果をそれぞれをデュエル中に1回のみ発動できる。ただし、ターンに1度という制限はない」

 

デュエル中に1度などという効果はたいてい厄介な効果だ。

 

それを使ってくるということは本気で俺を潰しに来ているということ。

 

それはそれで非常に厄介だ。

 

未だ底が見えない奴のデッキ。このターンを耐えきれれば次も見えるというものだが、果たしてそう上手くいくか。今から心配になる。

 

情けない。これほど人道から外れてなおここに来たくせに、俺はまだ、遊介や彩のように自信満々の馬鹿には慣れないらしい。

 

「始めよう。プロパティプロジェクターの効果。俺は相手のパラディンジェインを選択し発動。第3の効果! 風属性ハイドライブが存在するとき、選択した相手モンスターを風属性に変え、そのモンスターの攻撃力を0にし、自分フィールド上の風属性ハイドライブの攻撃力を下げた数値アップ!」

 

「ちっ」

 

「舌打ちするな。そんな怖い顔で」

 

ライトロード・パラディン ジェイン ATK2100→0

 

フローハイドライブ ATK1000→3100

 

「さらにプロジェクターの効果を発動しよう。今度はウォリアーガロスを選択する。自分フィールド上に炎属性のハイドライブが存在するとき、選択したモンスターを炎属性に変え、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える!」

 

先ほどから効果が凶悪過ぎる!

 

炎の龍から火の玉が発射され、俺はそれを受けるしかない。

 

爆炎。

 

熱くないわけがない。

 

これまで散々痛い目にはあっているが、それでも慣れないのは火傷の類だ。あれは衝撃や裂傷などとはわけが違う。

 

良助 LP4000→2150

 

奴は攻撃の手を止めない。

 

「ぐ……」

 

「さらにプロジェクターの効果! 俺は裁きの光輪を指定する。水属性ハイドライブが存在するとき裁きの光輪を水属性にして、相手の手札を2枚墓地へ送る!」

 

「はぁ?」

 

「さあ、選択権はお前にある。選んで墓地に送るがいい」

 

なんて効果だ。ずるい効果盛りすぎではないか。

 

しかし、そこにカードとして在る以上仕方がない。ケチをつけるのは後にしても、今は状況を冷静に見るべきだ。

 

俺はカードを選んで墓地へ送った。先ほどカードをドローできたので、それでも手札が寂しい状態ではない。

 

「そして、ハイドライブリンク1モンスターの共通効果。自分と同じ属性のモンスターが相手フィールド上にいる場合、ダイレクトアタックを可能にする」

 

「そうか……」

 

つい口が滑ったが、属性を変えた理由はようやくわかった。

 

ハイドライブモンスターの真骨頂はこの効果ということか。ダイレクトアタックは予想していなかった。

 

ここで、ダイレクトアタックを無様に受ければ敗北は必須。なるほど、奴の思惑通りに事が運んでいるようだ。

 

「バトル。まずはバーン・ハイドライブでダイレクトアタック!」

 

防ぐ必要はない。受けてもまだ耐えられる。

 

「この瞬間、リンクマジック、ジャッジメントアローズの効果! このカードのリンク先のモンスターが戦闘を行うとき、その攻撃力は倍になる!」

 

「何?」

 

「つまり、お前が受けるのは2000だ!」

 

バーン・ハイドライブ ATK1000→2000

 

火球が放たれる。

 

俺は防御の構えをとった。

 

――ぐ。

 

爆炎。

 

目が焼けなかっただけよかったが、一瞬眩暈がした。

 

良助 LP2150→150

 

バーン・ハイドライブ ATK2000→1000

 

「続いて、クーラントハイドライブでダイレクトアタック!」

 

クーラント・ハイドライブ ATK1000→2000

 

また、2000か。

 

よくできたデッキだ。モンスター頼りの馬鹿相手ではそれで通用しただろう。だが、こちらも伊達に100以上殺していない。

 

その程度で倒れるほど、柔ではないつもりだ。

 

「墓地のネクロガードナーの効果! このカードを除外し、この攻撃を無効にする」

 

飛んできた氷の弾丸を何とか防ぐ。

 

クーラント・ハイドライブ ATK2000→1000

 

しかし、問題はもう1体だ。今のフローハイドライブはそもそも攻撃力が高すぎる。それがさらにリンクマジックとやらで攻撃力が倍になるのだ。それはもう脅威以外の何物でもない。

 

「フローハイドライブでダイレクトアタック!」

 

フロー・ハイドライブ ATK3100→6200

 

「先ほどの耐えも、これで無意味だな!」

 

「果たしてそうかな?」

 

「何?」

 

まさか、攻撃を防ぐつもりがなかったなどと言うつもりじゃないだろうな。

 

わざわざ口にはそのようなこと出さないが、もしそう思っているのだとすれば、とんだ思い違いだ。

 

俺はわざわざ、その攻撃を待っていたのだから。

 

「罠カード『ドレイン・シールド』! 相手モンスターの攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分だけ、自分のライフを回復する!」

 

「な……!」

 

澄ました顔がようやく歪んだか。

 

もっとも、その程度で嬉しく思うことはない。奴らは享楽殺人者なのだ。俺の目の前で、この世界で一緒にやっていこうと決意した新しいパートナー――グレイと名乗り、俺を頼ってくれたその年下の後輩を、お前らはイベントなどと言いながら殺したあの光景は今でも鮮明に覚えている。

 

特にイリアステルの人間は惨たらしく殺してやる。

 

「俺のライフは、今攻撃をしてきたその攻撃力、6200分回復する」

 

良助 LP150→6350

 

「なあ……!」

 

「これでお前の攻撃は終わったな」

 

「く……ははは。これは一本取られたな。墓地の守りを使った時点で、勝利を考えたが……」

 

「舐めるなよ……!」

 

つい握りしめる拳に力が入る。

 

だが、憎い。俺は憎い。目の前に立っている白いスーツの奴らが。そしてこの世界を肯定しようとする奴らが。

 

どれだけ冷静ぶっても、その怒りだけは収まらないのだ。

 

そして、奴らの牙が、今度は俺の大好きな親友に向けられるかもしれないと考えたら――。

 

奴は平然とメインフェイズ2に入る。

 

「ならば、こちらも防御を固めよう。現れろ、イリアステルの未来回路!」

 

「今度は何を……!」

 

「召喚条件はハイドライブリンクモンスター2体! 俺はフィールドの、バーンハイドライブ、クーラントハイドライブをリンクマーカーにセット! リンク召喚! 現れろ、ツインハイドライブナイト!」

 

今度はまともな人型のヤツが現れた。右と左にそれぞれ不細工な剣を一本ずつ持っている。

 

ツイン・ハイドライブ・ナイト

リンクマーカー 右 左

ATK1800/LINK2

 

防御を固めるという言葉の意味を俺はそこで理解した。

 

それはおそらくジャッジメントアローズがあるからだろう。あれは何も攻撃時とは言っていない。防御の時も攻撃力は2倍。

 

最低でもこちらは3600を超えるモンスターではないと攻撃ができない。

 

「さらにカードを1枚伏せる。ターンエンド」

 

さすがにエリアマスターだけあって、俺がライフを6000回復しても動揺はないようだ。俺とて、相手を動揺させるためだけにドレインシールドを入れたわけではないので、大して文句はない。

 

 

エリアマスター LP4000 手札0

モンスター ⑤ ツイン・ハイドライブ・ナイト ⑥ フロー・ハイドライブ

魔法罠 ⑦ プロパティ・プロジェクター ⑧ 三本の矢 伏せ1

 

(エリアマスター)

□ ⑦ ⑧ ■ □   魔法罠ゾーン

□ ⑥ ⑤ □ □   メインモンスターゾーン

  □   ①     EXモンスターゾーン 

□ □ ④ ③ ②   メインモンスターゾーン

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

(良助)

 

「さすがにそう簡単にはいかないか。だが、ツインハイドライブナイトがいる限り、俺が素材にした炎、水属性のモンスターの効果は無効化される」

 

「だが、裁きの光輪は自らの効果で、その効果は無効化されない」

 

「厄介だなぁ……」

 

「それはお互い様だろ。それに、そうお前の思い通りにならないことを俺が証明してやる」

 

「ならカードを引くといい。それほどの強がりを言ったのだ。すぐターンエンドなんてやめてくれよ?」

 

当然だ。

 

 

ターン3

 

 

「俺のターン!」

 

俺はカードをドローする。

 

奴如きに止まってはいられない。俺はこのまますぐにイリアステルの本拠地たる、天空の城アーククレイドルへと進まなければいけないのだから。

 

このターンで王手をかける!

 

良助 LP6350 手札2

モンスター ① 裁きの光輪 ②フォトントークン 

      ③ ライトロード・ウォリアー ガロス ④ ライトロード・パラディン ジェイン

魔法罠 

 

「俺はウォリアーガロスとパラディンジェインでオーバーレイ! 召喚条件はレベル4モンスター2体。オーバーレイネットワークを構築!」

 

2体のライトロードは天に上り上空に現れた渦の中へと飛び込んでいく。そして地上に光が落ちた。その中に入る者こそ、俺が呼び出したモンスター。

 

「現れろ! ライトロード・セイント ミネルバ!」

 

ライトロードは人型が多いため、モンスターというには違和感がある。特にこいつはなかなか美女の部類に入るのではないだろうか。ライトロードを知らないどこかの異界から来た馬鹿がナンパをしていたのを見た事がある。あれはこの世界に来てから唯一の笑い話だろう。

 

ライトロード・セイント ミネルバ ランク4 攻撃表示

ATK2000/DEF800

 

「裁きの光輪の効果。ライトロードがリンク先に召喚されたことで、このカードにシャインカウンターを1つ乗せる。そしてカウンターが2つになっているため、ミネルバの攻撃力は600アップ」

 

ライトロード・セイント ミネルバ ATK2000→2600

 

「ミネルバの効果! オーバーレイユニット1つを取り除く。デッキの上からカードを3枚墓地へ! その中にライトロードカードがあった場合、その数までカードをドローする!」

 

俺は自動的に送られたカードたちを見る。

 

――あった。それも2枚。これは幸運、というべきか、むしろ多すぎくらいにライトロードを入れているので当然というべきか。

 

「あったのは2枚。俺はカードを2枚ドロー。先ほどの損害分は補填させてもらう」

 

「ほう……だが、攻撃力がひ弱だな」

 

「ああ。別にこいつで戦うわけじゃないし、もう用はない」

 

そう。別にまともに相手をする必要はない。

 

ライトロードを強者のデッキにしている圧倒的な力を見せる時だ。

 

「俺はマジックカード。『シャインチャージ』を発動する。フィールド上にライトロードと名のつくモンスターが存在するとき、フィールド上のモンスターにシャインカウンターを置くことができる。俺は裁きの光輪に2つのシャインカウンターを置く」

 

裁きの光輪には4つのシャインカウンターが乗った。これはさすがに分かると思うのでこれ以上の説明は奴には省くが、カウンターが増えたことで、フィールド上のライトロードの攻撃力はアップする。

 

ライトロード・セイント ミネルバ ATK2600→3200

 

だが、これは一時的なものだ。

 

「俺は裁きの光輪の3つ目の効果を発動。このカードのシャインカウンターを4つ取り除き、デッキからジャッジメントドラグーン1枚を手札に加える!」

 

ライトロード・セイント ミネルバ ATK3200→2000

 

「なに……?」

 

これが俺が狙っていた効果。

 

デュエルの最初からこいつを手にすることだけを考えてきた。

 

「そして、魔法カード『光の援軍』を発動。デッキからカードを3枚墓地へ送り、その後デッキからレベル4以下のライトロードモンスターを手札に加える。そして、今手札に加えたライトロードマジシャンライラを通常召喚する」

 

ここからは詰めだ。不安要素を徹底的に消していく。俺が呼び出したのはライトロードの魔術師。

 

ライトロード・マジシャン ライラ レベル4 攻撃表示

ATK1700/DEF200

 

「召喚したライラの効果を発動する。このカードを守備表示にして、相手フィールドの魔法もしくは罠カードを1枚破壊する。俺は、お前の伏せたカードを破壊させてもらう!」

 

ライラの光弾は間違いなく、奴の伏せカードを撃ちぬいた。

 

しかし、奴は破壊されるのも計算の内らしい。

 

「今破壊されたカードは、罠カード『古き秩序の崩壊』。このカードが破壊された時、デッキからセカンドオーダーと名のつくカードをデッキから手札に加える。デッキから『セカンドオーダー・輪廻転生の法』を手札に加える」

 

セカンドオーダー? また聞いたことのないカードだ。

 

しかし、今は迷うところではない。奴が加えたカードがどんなものであれ、攻められる瞬間を見過ごしてはならない。

 

俺はこのまま続ける。

 

「準備は整った。邪魔なカードも消えたことだ。俺の墓地には4種類以上のライトロードがいる。貴様の息の根を止めるのは、このカードだ! 来い、ジャッジメントドラグーン!」

 

威光を示す龍。ライトロードで戦った先に顕現する圧倒的な光の力を纏う龍。これが今の俺のエースモンスターだ。

 

裁きの龍 レベル8 攻撃表示

ATK3000/DEF2600

 

「……これが。そうか。確かに、これを持っているならば、強いな」

 

奴も妙な納得感を出している。奴も知っているのだろう。このカードの破格な効果を。それを俺は今から顕現させる。

 

「裁きの龍の効果。LPを1000支払い発動。このカード以外のフィールドのカードをすべて破壊する!」

 

言うだけなら単純だが、シンプルに素晴らしい効果だと分かる。何せ、何かなければ、このカード以外のすべてを俺の目の前から消してしまうのだ。

 

――今の俺の前の光景のように。

 

良助 LP6350→5350

 

「く……」

 

このまま新たにモンスターを出せればよかったが、残念ながら通常召喚は既に行ってしまった。ここはダイレクトアタックしかない。

 

「ジャッジメントドラグーンで、ダイレクトアタック! デッドエンド・ジャッジメント!」

 

放たれた一撃、龍なので破壊光線になってしまうが、それもさすがライトロードと関係する龍だけあって神々しき見た目の1撃だ。

 

その一撃は間違いなく、

 

「がああ!」

 

奴に痛手を与えた。

 

エリアマスター LP4000→1000

 

まだ3ターン目なのだが、ここまで長かったような気がする。しかし、奴は瀕死状態と言っていい。手札はモンスターカードのみが残り、王手はかけた。後は奴がどう出るかだ。

 

「クソ……」

 

未だ強がりともとれる笑みを見せる奴に俺は宣言する。

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

良助 LP5350 手札1

モンスター ⑨ 裁きの龍

魔法罠 伏せ1

 

(エリアマスター)

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

  □   □     EXモンスターゾーン 

□ □ ⑨ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ ■ □ □   魔法罠ゾーン

(良助)

 

 

ターン4

 

 

「ここまでやるとは、たった1か月で、よくもそこまでデッキを構築できたものだ」

 

「さっさとしろ。サレンダーするなら俺は止めない」

 

「ふふ。貴様に見せよう。これが、我々に与えられた力だ」

 

「ずいぶんとした自信だな」

 

不敵な笑みを続け、カードを静かにドローする。

 

エリアマスター LP1000 手札2

モンスター

魔法罠

 

おそらくは奴が手札に加えたカードのことなのだろうが、一体、どのような効果なのか。

 

「永続魔法、『セカンドオーダー・輪廻転生の法』を発動する」

 

だが無意味だ。

 

その程度の逆転法の対策をしていないはずがない。

 

「罠カード、『神の宣告』! 俺のLPを半分にする」

 

代償は大きいがこればかりは仕方がない。

 

良助 LP5350→2675

 

「お前が発動した魔法は無効にさせてもらう!」

 

これでいい。奴の逆転の1手目は防げる。

 

「残念だが、その手は無理だ」

 

「何?」

 

どういうことだ。

 

「セカンドオーダーカードは、同じセカンドオーダーカードの効果以外では無効化されない」

 

なんだそりゃ!

 

馬鹿げている。それではせっかく払ったライフも無駄だ!

 

「残念だったな?」

 

無意識に歯を食いしばっているのは、発動されたそのカードがヤバいということを感じているからだ。

 

「セカンドオーダーの力を見せよう。輪廻転生の法の効果。手札のカード1枚を墓地へ送る。墓地のエクストラデッキから召喚したモンスターをすべてデッキに戻す。その後、戻したカードと同名のモンスターを最大5体まで選び、あらゆる制限を無視し特殊召喚できる! 生きて、そして死んだ者たちよ。今こそ再び生を受け、誕生することを、この新たなる秩序が許す! 降臨せよ!」

 

馬鹿げた光景が前にある。

 

フロー・ハイドライブ

リンクマーカー 下

ATK1000/LINK1

 

バーン・ハイドライブ

リンクマーカー 下

ATK1000/LINK1

 

クーラント・ハイドライブ

リンクマーカー 下

ATK1000/LINK1

 

ツイン・ハイドライブ・ナイト

リンクマーカー 右 左

ATK1800/LINK2

 

先ほどまで立ちはだかっていたやつらがすべて蘇りやがった。

 

なんだあのカードは。効果がふざけているにもほどがある!

 

「攻撃力がないと安心しているな?」

 

もちろんそれで奴が終わるはずもない。こうした以上おそらくさらに上の奴を呼ぶはずだ。

 

「現れろ! イリアステルの未来回路! 召喚条件は炎、水、風、地属性全てを含めたハイドライブモンスター2体以上! 我がフィールドすべてのモンスターをリンクマーカーにセット。リンク召喚! これこそが我が真の切り札。アローザル・ハイドライブ・モナーク!」

 

これまでの中で、もっともデカい奴だ。羽虫だったハイドライブもリンク4ともなればここまで来るのか。

 

アローザル・ハイドライブ・モナーク

リンクマーカー 上 下 左 右

ATK3000/LINK4

 

かなり危なくなってきている。攻撃力も十分ある。それに、奴の効果によっては一気に窮地に立たされる。

 

「モナークの効果! このカードにハイドライブカウンターを4つ乗せる。そしてこのカウンター1つを取り除きさらなる効果を発動。ジャッジメントダイス! 1ターンに1度さいころをふり、出た目に応じた属性をもつモンスターを破壊する。光属性は5だ。祈るがいい」

 

ここで運任せか。

 

一瞬呆れたが、次の瞬間には嫌な予感が襲い掛かった。

 

この世界のデュエルはすべてコンピュータでルール判定をしている。そしてディスクはイリアステルの製品だ。

 

おそらく、5が出る。

 

「出た目は5だ。光属性を破壊! そして破壊したモンスター1体につき500のダメージを受けてもらう」

 

やはり――。

 

俺の龍は自ら破裂するように爆散する。そしてその衝撃が俺に伝わってきた。

 

良助 LP2675→2175

 

「驚いていないな」

 

「お前……乱数調整をしたな……!」

 

「何の話だ?」

 

「とぼけるな! 現実で実際にさいころを振っているならともかく、コンピュータで出すさいころの判定には乱数を使わざるを得ない。だが、お前のディスクのコンピュータは、ランダムに数字を持ってくるのではなく、AIが適切だと思った数を持ってくるようにプログラムされている」

 

「……さて、なんの話だか?」

 

「貴様……」

 

「それに、仮にそうしていたところでなんの問題がある。実際現実世界でも6分の1の確率で出るだろう。ならば文句を言われる筋合いはない。さあ、つづきだ」

 

こちらとしても証拠をつかんでいるわけではないし、そもそもここは裁判所ではない。奴の口車にのるのは不快極まりないが、仕方がない」

 

このまま攻撃を通すつもりはない。

 

「フィールドのジャッジメントドラグーンが相手により破壊されたことで、裁きの光輪の効果を発動できる! このカードを特殊召喚する!」

 

俺の戦いはまだ終わっていない。奴が調子に乗ったところで、未だ戦いは続いている。

 

ならば、俺は勝利のために手を打ち続けるのみ。

 

裁きの光輪

リンクマーカー 下

ATK0/LINK1

 

「そして、裁きの光輪は、自分の効果で特殊召喚された時、最後の効果を発動する。墓地の裁きの龍1体につき、次の俺のターン終了時まで攻撃力を1000アップし、それを元々の攻撃力として扱う。先ほど破壊された1体が墓地にいるため、攻撃力は1000」

 

裁きの光輪 ATK1000

 

「たった1000.残念だな。君のフィールドには守るカードはない。ここは攻撃させてもらおう。アローザル・ハイドライブ・モナークで、裁きの光輪を攻撃!」

 

奴は思いっきり宣言した。

 

当然だ。有利であればそれを堂々と見せびらかす。その心境も納得できる。俺だって、この世界で馬鹿みたいに戦うまで、まだデュエルが楽しかったころはそうだった。

 

そして、大体彩はここでニヤリと笑うのだ。

 

――馬鹿ね。ただで通すと思ってるの?――

 

今、まさに、そんな状況であることを、奴は知りはしないだろう。

 

奴は負けたくなければ警戒すべきだった。俺が光属性を使っていることがわかったなら、当然。

 

「今、攻撃と言ったな?」

 

「ああ。その最後の――な……!」

 

奴はまさしく、かつて俺が彩にしてやられたときと同じ顔をしている。口をポカンと開けてアホの顔をしている。

 

久しぶりに、愉悦を感じる瞬間だ。

 

俺はしっかりと奴に見せていた。奴も、そのカードはあまりに有名過ぎるので分かったはずだ。だからこそああやってフリーズしている。

 

「手札のオネストの効果。俺の光属性モンスターが先頭を行うダメージステップ時、このカードを手札から墓地へ送る。エンドフェイズまで、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分、裁きの光輪の攻撃力をアップする」

 

「馬鹿な……!」

 

裁きの光輪 ATK1000→4000

 

「終わりだ」

 

裁きの光輪は、元が攻撃力ゼロとは思えない光のエネルギーの集束を行い、それを発射する。奴の巨大な眷属はその光に焼かれ、消え去った。

 

「うああああああ!」

 

これが奴の断末魔。

 

たとえエリアマスターでも、大した違いはなかった。

 

これでまた、グレイも浮かばれるか……などと思ったりもした。

 

(負)アローザル・ハイドライブ・モナーク ATK3000 VS 裁きの光輪 ATK4000 (勝)

 

エリアマスター LP1000→0

 

 

【2】

 

 

目の前で倒れている奴に特に何の感想も抱かなかった。痛みでのたうちまわっていようとも関係ない。しっかりと役目は果たしてもらおう。

 

「おい。アーククレイドルへの道を拓け」

 

「あ……ああ……くそ……くそぉ」

 

無様に横になっている奴を俺は蹴った。

 

「がはぁ!」

 

「早くしろ」

 

「ま、待て、早まるな」

 

「知らん。そこで死んだら、俺が貴様のディスクをいじって自分でやる」

 

「今は、まだ、早すぎる」

 

戯言が止まらない性格のようだ。仕方がない。

 

ここで殺すとしよう。エリアマスターでも、ディスクの不死設定を解けば、俺に負けた今の状態では即死ぬだろう。

 

罪悪感はもうない。今俺に在るのは、イリアステルへの憎しみと、この世界を終わらせる義務感のみだ。

 

俺は奴のディスクに手を伸ばそうとした。

 

「少し待ってくれないか?」

 

後ろから聞いたことのある声がした。

 

何も言わなくても俺には分かる。

 

俺がこの世界で一番恨んでいる男の声だ。

 

その方向を見る。

 

白いスーツの男が、珍しくデュエルディスクを構えて立っていた。

 

「やあ、プレイヤーネームまっつん」

 

「アルター」

 

この世界のラスボス。

 

「まさか、この早さでそこの101位に勝てるデッキを構築し、天空の城にたどり着こうとする人間がいるとは……正直意外だった。これだからヌメロンコードの戦争は止められない。こうやっていつだって俺の予想は裏切られる。それが面白くてたまらない」

 

奴は心底面白そうに笑っている。

 

ふざけるな。

 

ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!

 

「怖い顔だね。まっつんくん」

 

「俺はずっとお前を倒すことだけを誓ってここまで来た。デュエルだ!」

 

「ああ。そうか。それはご苦労だった、何せ、ここまで来たんだ。本気なのは分かる。そして、俺がここに来たのは、そんなまっつん君の意向を叶えるためだ」

 

俺の意向を叶える?

 

「チャンスを上げよう。今ここで俺と戦うチャンスを。先ほどのデュエルを見た。君は資格を示した。この俺と戦う資格を」

 

「上等だ。俺はここでお前を潰す」

 

「はははは。その調子だ。今回は出血大サービス。俺は手札0、ライフ1000からスタートしよう。場所は、あの頭上、天空の城の周り、今天空の城は烈風のバリアに覆われている。その周りでスピードデュエルだ。どうかな。俺はスキルは使わないが、君は使える。素晴らしいハンデだと思うのだが?」

 

本当であれば断るという選択肢はない。

 

しかし、勝つ気があるのかというほどのハンデを自分で言っている。当然裏があるだろう。

 

俺がそう考えているのを見透かすように、奴は言った。

 

「ああ。不安なのか。当然だ。これほどのハンデおかしいにもほどがある。ではよろしい。その真意を伝えよう」

 

アルターはカードを1枚、デッキから見せた。

 

「セカンドオーダーの力をまだ君は一端しか見ていない。あの城を解き放つということは、このカードの真の使い手99人をこの世界に放つということだ。まだこの世界に同等に戦える人間はいないとイリアステル首相の俺は考えている。だが、もし君が力を示したら、解放するのもやぶさかではない。つまりはテストだ。セカンドオーダー、真の力に君がどれだけ対抗できるかね」

 

「報酬はあるんだろうな」

 

「もちろん俺を倒せばゲームクリアだとも。君は、それを望んでいるんだろう?」

 

明らかな罠。

 

だが、そんなことはどうでもいい。

 

俺はDボードをこの場に呼び出す。

 

「いいだろう。その誘い、受けてやる!」

 

(後半に続く)




まっつんこと良助が本格登場です。
初期の構想では、主要キャラはVRAINS主要キャラの代わりに、テーマデッキを使うつもりだったので、まっつんのデッキは剛鬼デッキ、前回の薫は、転生炎獣デッキ、を使う予定でした。

しかし、最近鬼塚が戦闘スタイルをチェンジしてしまったため、ダイナレスラーはまだよくわかっていない中でまっつんに使わせることもできず、結局、数多くデュエルをしても長続きしそうなライトロードデッキというところに落ち着いています。鬼さんはいずれ……。
逆にハイドライブは1発ネタとしては十分なカードがそろったのでここで出しました。残念ながらハイドライブ使いのエリアマスターさんは、ここから先不屈の闘志を見せることはできません。本編50話(遊戯王アニメでおよそ1年分の話数)、番外編を少しやるにしても65話くらいを目標にしているので、名乗ることすら敵わないキャラはもう出番はないでしょう。

さて、次回はいよいよ、アルターの初デュエルです。
イリアステルの皆さんはバリバリオリジナルカードで戦いますので、丁寧に書いていきたいと思います。今後もお付き合いよろしくお願いいたします。
後編もお楽しみに!

(最近やり忘れていたアニメ風次回予告)

あの日。生きる希望を失ったあの瞬間から、犠牲を悲しく思うのをやめた。殺人鬼にまで身を墜としてなお、心の闘志は消えていない。今、すべての悪を断つため、光の戦士が、追い求めてきた仇敵に挑む。

次回 「解放軍の理念 後編」 イントゥ・ザ・ブレインズ!
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