遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』   作:femania

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注意事項

・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。

これでOKという人はお楽しみください!

ラスボスの初デュエルです。
いろいろと馬鹿らしい効果をそろえていますが、そこはラスボスらしさということでご容赦を……。


番外編3 解放軍の理念 後編

アーククレイドル。

 

天空の城と言われ、俺はかつて見た映画を思い出し、そのイメージが強かったが、そこまで見た目愉快なものではなかった。

 

風の球体障壁を纏っているそれは、城を逆さにしたような形をしている。逆三角錘のドームに入りそうな形をしている。

 

今は届かない。風の障壁は俺が想像していたものよりもすさまじかった。雷雲ではなく、本当に竜巻のようなバリアで、少し触れるだけで、触れた場所がミンチになりそうな勢いだ。

 

その近くをDボードで走るのはいささか危険に思えるが、そうもいってはいられない。

 

俺は後ろを振り返る。

 

「どうだ。見にくいかもしれないが、素晴らしいだろう、俺の居城は?」

 

「ああ、非常に気に入らない形だ」

 

「そうか、そう言ってくれると、有難い」

 

何がありがたいのか。

 

随分とふざけた態度だ。

 

今から俺の殺されるかもしれないというのに。

 

「そう怖い顔をするなよ?」

 

「……グレイ」

 

「ん?」

 

「この名前を憶えているか?」

 

最初、この世界に来た頃、デュエルで死ぬかもしれない、しかしデュエルをしなくても餓死する、その自分に迫る恐怖に震えることしかできなかった俺を救ってくれた恩人。

 

「……覚えているとも。融合世界のデュエルアカデミアの生徒だろう」

 

「ラスボスのくせに記憶力はあるんだな」

 

「ああ。俺は君たちがこの世界で紡ぐ物語を見て愉しんでいるからね。登場人物くらいは記憶するさ。デュエルアカデミアは融合世界の最後の人類の希望だった場所だ。天上院吹雪、三沢大地、エドフェニックス、クロノス校長、丸藤翔、数々の素晴らしいデュエリストも始末してきたが、彼は最後まで俺の手から逃れて生き残った実力の持ち主だ」

 

「つまり、邪魔だったから消したと?」

 

「まさか、確かに素晴らしい敵だったことは認めるが、そんな個人的な理由で彼を殺しはしないよ」

 

邪悪な笑みだった。奴は笑ったのだ。

 

「そう言えば、最初に配ったルールブレイカーが、デュエルポイント200000で売れると発表した頃だったかな。彼が死んだのは」

 

「貴様!」

 

「はははは、いやいや、何も彼を殺す気はなかったんだ。ただ、グレイ君含め、ルールブレイカー持ちという目標が入れば、殺し合いも活発になるかなぁって思ってな」

 

そのせいでグレイは卑劣な罠に嵌った。10対1で戦わなければならない状況まで追い込まれたあいつは、最後まで、俺が帰りを持っていたねぐらの場所を吐かなかったそうだ。

 

「そういえば、あの時、彼はルールブレイカーを持っていなかったな」

 

今思えば、俺はあの時鈍感だっただけで、最初からあいつは狙われていたのだろう。しかし、恐怖で動けなかった初期の俺を見捨てることもできず、俺を自分のねぐらに招待して、俺の精神が安定するまで、俺をかくまってくれていたのだ。

 

いつかは恩を返したかった。あんないい奴が死んでいいはずがなかった。

 

「金目当てで襲撃が増えた。それさえなかったらあいつは死ななかったかもしれない」

 

「そうだな。なら、その恨み。ここで生産するチャンスだということだ」

 

ここまで言っても奴は悪びれることはない。

 

いいだろう。これ以上の語らいは不要だ。

 

「……ぶっ殺す」

 

「まっつん。いや、良助君。来るがいい。このアルターが君の怒りを受け止めてあげよう」

 

そのスーツを赤く染めてやる!

 

「スピードデュエル!」

「スピードデュエル!」

 

これが、この世界での最後の戦いだ。奴の仇を討つ。

 

良助 LP4000 手札4

モンスター

魔法罠

 

アルター LP1000 手札0

モンスター

魔法罠

 

(アルター)

□ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □   メインモンスターゾーン

□   □   EXモンスターゾーン 

□ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ □   魔法罠ゾーン

(良助)

 

 

ターン1

 

「先攻は俺がもらうけど、何もできないな。ターンエンド」

 

アルターはにこにこしながら、すぐにターンエンドを宣言した。

 

本当に何もしないつもりか。

 

舐めているのか、それとも、その何もない状態から勝つつもりなのか。

 

しかし、そんなことをここで考えても仕方がない。

 

いつも通り、しかし、最大限の警戒をして奴と戦うだけだ。

 

 

ターン2

 

 

運命の1枚、カードを引く。

 

「俺のターン!」

 

良助 LP4000 手札5

モンスター

魔法罠

 

天空の城が纏う風のバリアの余波か、風はすさまじく。少しでも気を抜けば転倒して下へと真っ逆さま。おそらく墜落すれば命はない。

 

ボードの操作にも気を付けなければならない。

 

「俺はマジックカード『ソーラー・エクスチェンジ』を発動する。手札のライトロード1枚を墓地へ送り、カードを2枚ドロー! その後デッキからカードを墓地へ送る」

 

何もしてこない。

 

当然だ。奴のフィールドには何もない。

 

しかし、どうにも嫌な予感がする。万全の状態を整えておかなければ。

 

「俺はさらに『光の援軍』を発動する。デッキからカードを3枚墓地へ。そしてデッキからレベル4以下のライトロードモンスターを手札に加える。俺はライトロードアサシンライデンを手札に加える」

 

俺はさっそく最上に近い形で戦術を組めそうだ。

 

これならば、攻撃と防御が独立する。仮にモンスターを全滅させられても、何とかなる。

 

「俺はマジックカード、『フォトンサンクチュアリ』を発動、フォトントークン2体を特殊召喚!」

 

フォトントークン レベル4 守備表示

ATK2000/DEF0

 

「現れろ、我が行く道照らすサーキット!」

 

俺はトークンの内の1体を指定した。

 

「召喚条件は光属性レベル4以上のモンスター1体。フォトントークン1体をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン! リンク召喚。リンク1。裁きの光輪!」

 

裁きの光輪 

リンクマーカー 下

ATK0/LINK1

 

「裁きの光輪の効果。1つ目の効果は、このカードのリンク先に、デッキのライトロードモンスター1体を選択し攻撃表示で特殊召喚する。俺はウォリアーガロスを特殊召喚!」

 

「ただし、このモンスターを召喚したターン自分はエクストラデッキから召喚できるカードは他の光輪かライトロードに限られる、だろ?」

 

「それも知ってるのか」

 

「さっきのデュエルでは必要なかったら言ってなかったけど、このような効果もしっかり宣言すべきだ」

 

奴の言う通りだ。この後の展開はライトロード限定だ。他のモンスターも呼べてればより戦術も広がるが、さすがにパワーバランスが多少考慮された結果だろう。

 

ライトロード・ウォリアー ガロス レベル4 攻撃表示

ATK1850/DEF1300

 

ここまでは先ほどのデュエルと同じ流れだが、ここから先は違う。

 

さすがに気合だけで奴を倒すつもりはない。俺は奴を倒すための秘策として用意したカードを使うことくらいは考えてきた。

 

策は詰められるだけ詰めている。さすがに手札0の相手を殺すことくらいはできるつもりだ。

 

「俺はさらにライトロードアサシンライデンを通常召喚!」

 

俺が呼んだのは先ほど手札に呼び寄せたモンスター。暗殺者とは思えない煌びやかな刃を持った上半身ほぼ裸の男である。

 

ライトロード・アサシン ライデン レベル4 攻撃表示

ATK1700/DEF1000

 

「ライデンの効果。メインフェイズ、デッキからカードを2枚墓地へ送る」

 

すでに、墓地に相当数のカードがたまった。残念なことに裁きの龍が1枚墓地へ行ってしまったが、それは些細なことだろう。

 

「……ライトロードカードがない。これ以上の効果は望めない」

 

「残念だったな。ギャンブルに勝てないのは悲しいことだ」

 

ニヤリと笑う奴の姿は自然体だ。強がっている様子には見えない。何かあるのか。

 

――いや、何もない。そう信じて戦うのみだ。

 

「別に、こいつで賭けに出たわけじゃない。俺の目的はこの先だ。現れろ。俺の行く道照らすサーキット!」

 

天に登場したサーキット。個々から呼ぶのは、リンクモンスターの中でも強力なリンク4だ。

 

「アローヘッド確認。召喚条件は、ライトロードモンスターを2体以上、もしくはリンクモンスターを1体以上含めた、光属性のモンスター4体。俺は場に存在するすべてのモンスターをリンクマーカーにセット!」

 

個人の信条として、あまりモンスターの数は減らしたくはない。しかし、召喚ができる好条件を逃す理由にはならない。特に、こいつは。

 

「リンク召喚。現れろリンク4。導きの光輪!」

 

姿は裁きの光輪の紫色バージョンだ。放つ光は少し禍々しさを帯びている紫色。

 

導きの光輪

リンクマーカー 右上 上 左下 下

ATK0/LINK4

 

「攻撃力がないな。いいのか?」

 

奴はどうやらおしゃべりをしたいようだ。わざわざそのようなことを聞くということは、俺に今呼び出した奴について語らせたいということだろう。

 

そんな挑発をしなくても、すぐにこいつの効果は説明するつもりだ。

 

「構わないさ。このカードをエクストラデッキから特殊召喚した時、1つ目の効果を発動する。デッキから、ライトロードモンスターを1体、このカードのリンク先に特殊召喚する。俺は、サモナールミナスを特殊召喚する」

 

これは裁きの光輪と同じ効果だ。そして導きの光輪にも当然、カウンターに関連する効果がある。

 

とりあえずは、今指定したモンスターを召喚しよう。

 

ライトロード・サモナー ルミナス レベル3 攻撃表示

ATK1000/DEF1000

 

「そして導きの光輪にはシャインカウンター1つを、ライトロードモンスターをリンク先に召喚、特殊召喚のたびに置く」

 

「先ほどに似た戦術だな。なるほど。君のデッキは、ライトロードにすでに存在したシャインカウンターをメインにした戦術をとる、新たなライトロードの使い方を提示しているようだ」

 

「それでお前は死ぬ」

 

「どうかな?」

 

その状況で何をするというのだ。と、奴に言おうとしたがやめた。奴はおそらくあえてこの状況に自分からしたのだ。ならば何かをするはずだ。

 

故に、こちらも容赦はできない。徹底的に攻撃を仕掛ける。

 

「俺はサモナールミナスの効果を発動する。手札を1枚墓地へ送る。そして、墓地のレベル4以下のモンスターを蘇生する。俺は墓地のアサシンライデンを呼び戻す!」

 

俺は再び暗殺者呼んだ。先ほどルミナスは導きの光輪の左下に呼び、そして次の暗殺者は光輪の下に呼ぶ。再びリンク先なので、カウンターが乗ることになる。これでカウンターは2つ。

 

ライトロード・アサシン ライデン レベル4 攻撃表示

ATK1700/DEF1000

 

そして、当然これで終わるつもりはない。

 

「俺は墓地の『シャインチャージ』の効果を発動する。このカードがこのターンに手札から発動されていない場合、手札の光属性モンスター1体を墓地へ送ることで、このカードを手札に加える。俺は手札のモンクエイリンを墓地へ」

 

この効果はデュエル中に1度しか使えないが、墓地に送られても使えるという効果はありがたい。光輪はとりあえず、カウンターを4つ乗せなければならないので、このカードには毎度助けられている。今回も、墓地に送られたのが幸運だった。

 

「そして今手札に加えたシャインチャージを発動する。導きの光輪にシャインカウンターを2つ置く」

 

「4つになったな、そいつの効果がそろそろ発動できる頃か」

 

そう、裁きの光輪と同じだ。4つ溜めるのが条件。そしてリンク4なので、その効果も強力だ。

 

「ああ。俺は導きの光輪の効果を発動。シャインカウンター4つを取り除き、リンク先に存在するライトロードの攻撃力を2倍にする。そして、上昇した攻撃力分の数値、お前にダメージを与える!」

 

攻撃力上昇。その数値を計算すると。

 

ライトロード・サモナー ルミナス ATK1000→2000

ライトロード・アサシン ライデン ATK1700→3400

 

その上昇値の合計は2700。奴を仕留めるに十分な数値となった。

 

導きの光輪、その中央の穴に光が集束した。竜のブレスに負けない破壊光線を放つ。

 

「お前には2700のダメージを負ってもらう!」

 

この一撃、これで終わりだ。

 

このまま通ればの話だが、通るに決まっている。なぜなら、奴の場には何もない。

 

「早速止めかぁ」

 

奴はそれでも笑っている。分からない。奴のどこからかそんな余裕が出るのか。

 

「さあ、死ね」

 

「無理だ」

 

奴は指を鳴らした。

 

そして次の瞬間。奴のフィールドに1枚のカードが現れる。

 

どこから、どうやって?

 

「驚いてくれた何よりだ。口がぱっくり空いているぞ?」

 

阿呆な顔を晒してしまったらしい。しかし、それくらいに納得がいかない状況だ。

 

「さあ、ここから俺の余裕に理由について、ネタ晴らしと行こう!」

 

よく見ると奴の出したそのカードは奴が先ほど絶対の自信を持っている理由であるセカンドオーダーのカードだった。

 

「『セカンドオーダー・生命の根源』。ダイレクトアタックを受ける時、このカードがデッキに存在するなら、デッキから発動できる。このターン受けるダメージを0にし、LPを1000回復する」

 

アルター LP1000→2000

 

「デッキからだと……」

 

「驚いてくれたか?」

 

発射直前だった破壊光線は、奴の魔法によって阻止され光は霧散する。

 

奴の効果によれば攻撃も無意味だ。しかし、この程度はおそらくやってくるだろうと思っていた。これならば、まだ気にするほどではない。

 

「導きの光輪の効果を受けたライトロードモンスターは次の相手ターンのエンドフェイズまで戦闘、効果では破壊されず。そのモンスターとの戦闘で俺の受けるダメージは0になる。そして導きの光輪は、ライトロードモンスターが自分フィールドにいるとき、攻撃対象に選択されない」

 

「その後のケアもばっちりだ。さすがだな」

 

「お前のお世辞には嘘がまみれているように聞こえる」

 

「いや、態度が軽いだけだよ」

 

へらへら笑っているのもおそらくは勝ち筋が見えているから。俺にはその方法は想像もつかない。

 

しかし、退く道はない。奴を倒すまで、負けるわけにはいかない。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「おや、もう終わりか?」

 

「ああ。とりあえずこのターンはこれでいい」

 

そう、これでいい。たとえ、嫌な予感があってもこれ以上何かをすることはできないのだから。

 

良助 LP4000 手札0

モンスター ① 導きの光輪 ② ライトロード・サモナー ルミナス

      ③ ライトロード・アサイン ライデン

魔法罠

 

(エリアマスター)

□ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □   メインモンスターゾーン

□   ①   EXモンスターゾーン 

□ ② ③   メインモンスターゾーン

□ ■ □   魔法罠ゾーン

(良助)

 

しかし、負けたわけではない。

 

まだ、やりようはある。

 

「エンドフェイズ、ルミナスの効果で3枚、ライデンの効果で2枚のカードを墓地へ」

 

墓地に送ったカードを確認し、俺は効果を発動する。

 

「『ライトロー・レイピア』の効果。このカードがデッキから墓地へ送られた場合、自分フィールドのライトロードに装備する。俺はアサシンライデンに装備」

 

ライトロード・アサシン ライデン ATK3400→4100

 

これで俺のターンは終わり、奴のターン。

 

このターンを凌がれるのは想定内だ。問題は次のターン。いよいよ奴が動く。

 

先ほどデュエルでたった2枚から状況を覆したセカンドオーダー、その真の使い手を名乗るのなら油断はするべきではない。

 

 

ターン3

 

 

「では、俺だな? ここからはたっぷり楽しんでもらおう」

 

奴はカードを引いた。

 

そして不敵に笑って見せた。

 

アルター LP2000 手札1

モンスター

魔法罠

 

「さて、ここから俺の独壇場だ。刮目して見ておけよ?」

 

「黙れ、その余裕はすぐに消えることになるさ」

 

「期待しておこう」

 

奴が発動したのは魔法カード。

 

「フィールド魔法。『セカンドオーダー・財の塔』を発動」

 

気のせいか、先ほどまで見えなかった金色の塔が城の上に建ったような……?

 

アルターはそのカードを効果を読み上げる。

 

「発動時、デッキから神装兵器カードを1枚手札に加える。俺は『神装兵器・黒の大杯』を手札に加え、発動!」

 

その直後、真下に黒い海が広がった。見た目禍々しい液体で入浴したら体が溶けそうに見える。

 

「これは?」

 

「大きな杯の水面だよ。実際に湖が現れたわけじゃない。黒の大杯の効果。俺は属性を1つ選択する。選択したモンスターを杯の水へと誘う」

 

黒い海は俺のライトロードを吸引し始めた。否、それだけではない。その黒い液体の中から得体の知れない暗黒の帯が俺のモンスターに向かって伸び、巻き付き、水へと引きずり込んでいく。

 

ジュウウ――という溶ける音が聞こえてくる。

 

「これは……?」

 

「俺は君のライトロードの属性である光属性を選択。飲み込まれたモンスターはフィールドに残るがどんなことをしてもフィールドを離れない。当然あんな溺れている状態では攻撃も、表示形式の変更もできない。そして君は飲み込まれたモンスター1体につき500、お互いのエンドフェイズにLPを失う」

 

失う。これではダメージにカウントされない。そしてどんなことをしてもフィールドを離れないというのは、召喚の素材にもできないという意味に取れる。だとするならば、俺のモンスターはただ邪魔になるだけということ。

 

しかし、ライトロードとして存在するならば、それで十分。まだ俺のフィールドには1体分の空きがある。

 

「そして財の塔の効果。神装兵器を発動した時、デッキから、原初の大火を特殊召喚する」

 

ようやく奴は最初のモンスターを呼んだ。

 

原初の大火 レベル7 攻撃表示

ATK0/DEF0

 

奴の呼び出したモンスターはモンスターと言うべきではない。なぜなら、宝石から金色の炎が出ているだけだ。

 

「原初の大火の効果。このカードをリリースし、デッキの中の好きなカードを5枚、デッキの一番上に好きな順番で置くことができる」

 

奴は悩むことなくカードを5枚デッキトップに置いた。

 

「そして財の塔の効果。1ターンに1度。デッキの上からカードを3枚めくり、セカンドオーダー、もしくは神装兵器カードをめくった中にあるだけ任意の数手札に加える」

 

「なぁ!」

 

馬鹿らしい声が出てしまった。

 

「驚いてもらえて何よりだ。もちろん先ほどデッキは操作している。俺はデッキの上に置いたカードを3枚手札に加えるよ」

 

一気に3枚ドローしたのと同じだ。ふざけたカード効果だ。

 

そして、アルターはいた手札に加えたカードを使ってくる。一体どんな効果だというのか。戦々恐々としてしまう。

 

「さて、勝負だ。俺は永続魔法『セカンドオーダー・不夜の理』を発動する。フィールド上の神装兵器と名のつくモンスターの攻撃力は自分のターン2倍になり、このカードが存在する限り相手から受けるすべてのダメージは半分になる」

 

急に辺りが眩しくなった。太陽がこのカードに反応している?

 

「そして俺は永続魔法『神装兵器・太陽の宝剣』を発動。このカードはモンスター扱いとなり、フィールドに特殊召喚される」

 

召喚と言っておきながら、奴はその剣を自らの右手に装備した。

 

「お前、何をする気だ」

 

「処理がモンスター扱いなだけだ。武器なんだから、誰かが振るわなければ意味がないだろう?」

 

さも当たり前のように言っているが、俺はあんな奴を見るのは当然始めてだ。俺はその攻撃力を見る。

 

神装兵器・太陽の宝剣 レベル8 攻撃表示

ATK2500/DEF0

 

「セカンドオーダー不夜の理の効果で攻撃力は2倍!」

 

神装兵器・太陽の宝剣 ATK2500→5000

 

手札1枚からここまで状況を持っていくとは。

 

仮にそれが5枚もあれば、と考えるだけで恐ろしい。これが奴の力。

 

だが、ただで負けるつもりはない。そろそろ頃合いだ。

 

俺は奴のライフを削るべく、スキルの発動を宣言する。

 

「スキル発動! ライトロードの招集! フィールド上のライトロード1枚につきデッキからカードを4枚墓地へ送る! その後墓地へ送られた光属性モンスターの数以下のレベルを持つ光属性モンスターを、墓地から手札に加える!」

 

先ほどオネストが墓地に送られていた。俺はデッキから8枚のカードを墓地へ送る。

 

送られたモンスターはちょうど4枚。十分だ。

 

「送られたカードは4枚。俺は墓地のオネストを手札に戻す!」

 

しかし、奴はすぐに対処してきた。

 

「『セカンドオーダー・罰する雷』を手札から発動!」

 

「なに!」

 

「手札誘発は最近のトレンドだろう。このカードは無条件に相手の手札を1枚破壊し、除外する」

 

雷が降り注いだ。俺に――。

 

全身に異物が貫通する痛みを受ける。

 

この程度では気を失わないがきつい。そしてオネストのカードは手から消えていた。

 

アルターそのカードはまだ勢いを止めない。

 

「その後、俺はデッキからカードを1枚ドローする」

 

優雅にカードを引くアルター。

 

1枚。たったそれだけだ。しかし、先ほども言ったが、1枚で奴は十分なのだ。それが再び手に加わった。

 

「バトル……は行わない」

 

「なんだと?」

 

「マジックシリンダーとか使われたら怖いし」

 

にっこりと笑って宣言した。

 

まさかあいつ、俺のデッキを分かっているのか。確かに俺のデッキには、マジックシリンダーが存在する。

 

しかし、今伏せているカードは違う。

 

「もっとも、バトルを行わなくても、十分倒せそうだ」

 

「なんだと」

 

「そうそう、その顔だ。驚いてくれよ? もっともっと」

 

邪悪に笑うアルター。すでに勝利を確信しているつもりか。しかし攻撃をされなければ次のターンが来る。まだやりようはあるはずだ。

 

「太陽の宝剣の効果。バトルフェイズをスキップ。このカードの今の攻撃力の半分のダメージを相手に与える」

 

「ちっ、2500……!」

 

「そうだ。受けてくれよ、これが太陽の祝福を受けた剣の輝き」

 

奴は剣を構えた。剣が輝き、膨大なエネルギーが、まるで竜のブレスの前兆であるかのように収束している。

 

しかし、上等だ。

 

俺が伏せている罠は、『反転のバリア ミラージュ・フォース』。相手からうけるダメージを相手にやり返すカード。モンスターは守れないが、効果ダメージでも、戦闘ダメージでも発動できる優秀なカードだ。

 

俺は罠の発動を宣言しようと、デュエルディスクを操作する。

 

――?

 

反応しない。どういうことだ!

 

その答えはアルターが宣言した。

 

「この効果に対し、相手は、モンスター効果、魔法、罠カードを発動できない!」

 

「なんだと……!」

 

「さあ、天より見下ろす神々よ、刮目して見よ。そして驚嘆せよ! 我が宝剣の光輝、あらゆる邪悪を焼き尽くす太陽の現身! グロリアスバースト!」

 

光輝の一撃、竜にも負けない光熱の放射が襲い掛かった。

 

叫ぶまでもない。

 

というか叫べない。言葉を失うほどの攻撃が、俺の体を焼き尽くそうとする。

 

良助 LP4000→1500

 

Dボードから落ちた。

 

そして、俺のモンスターがすでに死んだような目で浮かんでいる真下の黒い海に落下する。

 

突如力が失われていく感覚に襲われた。全身が俺の体ではないような感覚。

 

怖い。怖い。

 

この感覚は、あの日、奴にデスゲーム宣言をされたとき、すべてを理解したあの感覚に似ている。

 

俺は、グレイの仇を取らなければならないのに。

 

「ああ。くそ!」

 

上がれない。足に何かが巻きついている。

 

「ああ、落ちたか。悲しいな。そこまでか」

 

「まだ!」

 

「エンドフェイズ、お前の周りにいる仲間1匹につき君は500のLPを失う。これで……0だ」

 

「クソ……、貴様ぁ!」

 

「君はとても頑張った。だがまだ足りない。俺と戦うには足りなすぎる。俺を本当に倒したければ、まずは人の想像を超えるデュエルを目指すべきだ。そうすれば、いつか俺に、ダメージを与える日は必ず来るさ。君には見込みがあるからね」

 

体が海に沈む。

 

徐々に奴が遠ざかっていく。

 

力が入らない。

 

必至にもがいて、奴の魔法から逃げようとした。

 

しかし、無理だった。

 

俺は海の底に引きずりこまれた。

 

――?

 

――?

 

――。

 

良助 LP1500→0

 

 

【4】

 

 

俺の黒歴史になったその出来事を聞かせてやったのは、遊介によく似た目の前の男と、解放軍のリーダー。

 

シンクロ世界の遊介との出会いはずいぶん前だ。情けない形だった。グレイが死に、バトルシティで失意のどん底にいた俺を見て、興味本位で助けたらしい。

 

この偽遊介には感謝している。奴が所属していた解放軍にスカウトされることになったが、解放軍では飯が支給されるので、餓死を心配しなくなっただけでも、心はずいぶんと落ち着いた。

 

今では遊介と同じくらいの立場に昇進し、多少自由に動けるようになった。

 

そんな頃に先ほどまで語った出来事が起こり、見事な負け戦だったため、目の前のシンクロ使いの遊介には今さっきまで笑われていたところだ。

 

奴とのデュエルで負った負傷は想像よりひどく、俺は1週間は歩けなかったのだ。

 

――俺は全く懲りていない。未だ、俺の中には、奴を殺すための火は灯っている。解放軍は俺の思想によく似た奴らが集まっている。独りでだめなら、今度は人数をそろえて数で勝負すれば良い。

 

解放軍はこの世界を終わらせるためなら多少の犠牲を厭わない。原住民も、この世界の存続を目指す人間も、解放を望まず戦わない人間もすべて敵、ただアルターを倒すためだけにあらゆる世界から集まった復讐者の集団。

 

軍というだけあって、定められた規則が絶対である。例えば、1日4000ポイントを全員に課して、外の人間に賭けデュエルで戦いを挑むことが義務であり、相手は誰でもいい代わりに、もしも達成できなかったら、公開処刑として、解放軍の仲間と賭けデュエルをしなければならないらしい。他にもいろいろあるがさすが百か条すべてをここに並べると嫌気がさすのでやめることにする。

 

最初に解放軍のバトルシティ支部に案内されたときは、年甲斐もなく驚き、興奮したものだ。外向けはただのNPCが使っているDボード販売会社に見えるが、その地下には、悪の組織か何かと勘違いするようなアジトが広がっている。秘密基地だけあって、中身の面白さは抜群だ。

 

俺は解放軍でも特別扱いになっている。解放軍に厄介になっているのは、イリアステルを倒すためなので、俺はしょっちゅう命令に逆らい自由にやらせてもらっていた。そのため何度も公開処刑の賭けデュエルを行ったが、それを勝ち続けた結果、その実力が認められ、例外的に幹部に迎え入れられた。

 

まあ、手に負えない猛獣扱いなので、放し飼いするしかなかったのだろう。

 

それが解放軍に入ってからしばらくたった俺の今の現状だ。幹部になると多少自由が認められるので、俺はその自由行動権を使い、堂々とバトルシティのエリアマスターを倒しに行ったのだ。まさかアルターが出てくるとは思わなかったが、収穫もあった。さすがにその情報は共有してやろうと、報告書とともに、アルターと会った時の話をしている。

 

「はははは。まさか、独りで突っ込んでコテンパンとはなぁ」

 

「笑うんじゃねえよ遊介もどき」

 

「ふ……」

 

「お前もニヤリって感じで笑うな、アゼル」

 

馴れ馴れしく話しているが、俺が今言葉を向けたのが、解放軍のリーダー、アゼル。グレイの融合世界からの知り合いだそうで、解放軍の創設者。俺はどうやら融合世界の人間と縁があるらしい。

 

この解放軍は、リーダーの意向、つまり、目の前のアゼルの決定が絶対だ。アゼルが他の地区に闘争を申し込むといえば、他の世界に遠征をするし、イリアステルと戦うといえば解放軍はイリアステルと戦う。つまりは最高権力者であり軍の絶対君主だ。

 

これが救いようのない屑であれば俺はその場で奴を殺していたが、アゼルは現場判断を尊重し、部下の意見も取り入れながらも、高い決断力で物事を決定していく。まさに理想の上司を感じさせる解放軍の行政手腕を見せている。

 

その甲斐もあってか、解放軍はそこそこの巨大組織として、今ではリンクブレインズで、エデンの次に巨大な組織にまで成長した。

 

解放軍に集まった連中は、俺も含めて、奴が掲げた信条に同調した人間たち。

 

一、死ぬことを恐れるな。生きられないことを恐れろ。毎日、勝利のために前進し、無駄な日々を過ごすべからず。

 

一、犠牲を恐れるな、その先で得られる価値の大きさを信じろ。俺達が戦い死んだ奴の何十倍の人間が救われる。

 

一、慣れ合いをするな、競い合え。解放軍のメンバー同士は友であり、また競う相手である。負けない意思を持ち続けることが己を強くする。

 

このようなアゼルの信条で、イリアステル打倒を掲げた解放軍は、俺としては、居心地はそんなに悪くないように思える。

 

最も、俺は命令を聞かない問題児であるため、規則をきちんと守っている奴らの心は知らないのだが。

 

しかし、そんな問題児を未だ解放軍においてくれているアゼルは、やはり器は大きいと言える。俺も奴の強さ、その心意気は素晴らしいものだと思っている。だからこそ解放軍の命令は聞かずとも、アゼルとはこうしてよく話をする仲になろうと思えた。

 

「俺にも一言声を掛けてほしかったな、まっつん。お前には確かに自由行動権を与えているけど、言ってくれれば俺も一緒に行ったのに」

 

「あんたはリーダーだろ。勝手に突撃して自爆した奴なんか放っておけばいいのにさ」

 

「そうはいかないさ。グレイが最後まで護った男だ。俺がその意思を継がなくてどうする」

 

「結局飼い犬かよ」

 

「言うことを聞いてくれればもっといいんだがな」

 

「お断りだ。俺は俺の方法でイリアステルに迫る。だがまあ、お前らがどうしてもっていうなら付き合ってやる。餌をもらってる身分だからな」

 

「ああ。近々な」

 

「何かあるのか?」

 

「エルフィの報告によると、エデンが解放軍に報復らしきことを始めたらしい」

 

「そんなの、解放軍の水地区の支部の奴が勝手に手を出したからだろ」

 

「それだけで済めばよかったんだがな。どうやら向こうのリーダーは攻撃されたことで怒り心頭らしい、エデンは解放軍を完膚なきまで破滅させる意向だそうだ」

 

そこに口を出してきたのはシンクロ遊介だった。ちなみに、シンクロ遊介とは、シンクロ世界の遊介の略である。

 

「うわあ、藪蛇」

 

「いや、あそこは獅子の住処だったかもしれない。なにせ、リーダーのリボルバーは、信じられない強さを誇っているからな」

 

「アゼルよりも強いかなぁ」

 

「それは戦ってみないと分からん。しかし、こちらの損害賠償案を秒で蹴られた以上、戦うしか残されていない」

 

アゼルは一度ため息をつく。

 

「まっつんの勝手な行動とはいえ、ようやくアーククレイドルに手が届きそうだったからな。この機会にすぐにでも、戦力を整えて、今度は解放軍の主戦力でアルターに挑もうとした矢先にこんなことになるとは」

 

アゼルも気苦労が絶えないだろう。巨大な組織である以上、部下の行動の責任追及や辻褄合わせをしなければいけない件は絶え間なく襲い掛かってくるはずだ。

 

まあ、俺は手伝ってやる気は微塵もない。

 

「……とりあえず飯行くか。お前らも一緒にどうだ?」

 

シンクロ遊介が応える。

 

「後から行くよ。それより、他の支部のリーダーと連絡とっとけば? 場合に寄ったら俺たち主戦力組だけじゃ止められないかも知れないし」

 

「そうだな、助言有難い」

 

アゼルは部屋を後にする。残ったのは俺と、シンクロ遊介。

 

先に向こうが口を開いた。

 

「しかし、まさかアルターに戦いを挑むなんてな。命知らずにもほどがある」

 

「戦ってみなくちゃ分からないだろ」

 

「ははは。まあな。でも、クソ強かったろ?」

 

「ああ。信じられないほどに」

 

「アゼルも心配してたぜ。なにせ、あの戦い、放送されたからな?」

 

何? そんなの初耳だ。

 

「知らなかったのか? あの性悪白スーツのことだからそれくらいはやってのけるだろ」

 

「くそ、公開処刑じゃねえか」

 

「まあ、ドンマイ。これに懲りてしばらくは俺の遊び相手になってくれよ。最近は幹部になっちゃったから、俺が動くほどの命令をアゼルしてくれなくて暇なんだ」

 

「お断りだ。デュエル以外は受けないぞ。俺はデッキの改良と腕を磨くのに忙しい」

 

「また百人斬りでもするのか。なら俺も一緒にやらせろ」

 

「どんだけ暇なんだよ」

 

「まあ、お前の相棒ポジだから、俺」

 

「俺の相棒?」

 

そんな存在、譲るはずはない。

 

「俺の相棒はグレイだけだ」

 

「意外だな、リンク遊介か彩ちゃんとでも言うと思ってたのに」

 

「そっちはダチだ。相棒は、俺にはもう必要ない」

 

「キザだねえ。別にいいだろ、俺も一緒にいくぜー」

 

このシンクロ遊介は、どうも一緒に居るだけで、違和感がありまくりだ。たまに殴りたくなるくらい。俺の知っている遊介はこんなに軽い奴じゃない。

 

しかし、前に一度だけ聞いたことがあるが、こいつもこいつで結構な過去があったようだ。それでもこんな前を向いて生きているのだから、その精神の強さは多少見倣うべきかもしれない。

 

そう思っているうちに、少しずつ、こいつにも慣れてきた。

 

「……飯行くぞ」

 

「おう。まっつん、今日は何にする?」

 

俺は立ち上がって、部屋を後にした。

 

 

 

俺はしばらくは解放軍にいるつもりだ。いつかアルターに勝つまでは、せいぜいこの組織を利用しなければならないからだ。

 

俺のやることはこれからも変わらない。奴を倒すまで全力で走り続ける。

 

それだけだ。

 

(番外編3 終)




良助のデュエルと、彼が解放軍にいる理由を簡単に語ったこの話、いかがだったでしょうか。彩は運命的な出会いで、エデンと出会い、そしてそこで絆を育んでいるのに対し、良助は成り行きで入り、それを利用するだけ利用するだけの施設としか思っていない。2人の立場や考え方の違いを出してみました。

今回出てきた解放軍の新キャラの掘り下げは、事情により番外編4に回しています。そして4については予告なしです。

特に驚かせるようなことをする気があるわけではありませんのでそこはご安心ください。まだ主要キャラが死ぬようなこともありませんので、番外編4も、お楽しみにお待ちください。

次の話は、およそ2週間後になります。しばらくお待ちいただければ幸いです。
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