遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。
これでOKという人はお楽しみください!
フォーチュンカップというライディングデュエルの頂上決戦で優勝して以来、俺はプロデュエリストとして、生計を立てられるようになった頃の話だ。
「遊介、おめでとう!」
俺の彼女である、彩を始めてシティへと連れてきたことがあった。
彼女とは、俺が3年前シティへと赴いた時から、文通は何度かしているが会った事はなかった。故にこうして会うのは3年ぶりであり、前よりも色っぽくなった彼女を見て若干興奮しているところだ。
大会優勝したその夜、豪華絢爛の光都市、イェーガー10世と名乗る市長の施策により整備された夜景を見せた時に、笑顔で言われたこの言葉を俺は今でも覚えている。
彩は幸せそうに笑っていた。
それが俺にとっては、人生で一番と言っていいほどに嬉しかった。
「まさか遊介が大会王者になる日が来るとは……私は諦めちゃったけどその分、なんか私も夢がかなったみたい」
「まあ、プロなんて一握りだからな。だったら、普通の就職をする道を選んだ方が堅実だし、彩は間違っていないと思うぞ?」
「えへへ、そう言ってくれると嬉しいな。私も、自分が諦めちゃった分、心行くまで遊介を応援できるしね、だから、とても嬉しい」
本当であれば高級ディナーを振る舞うような光景なのだが、俺もフォーチュンカップに向けてDホイールの整備やその他諸費ですでに借金をしている状態だったため、優勝賞金は借金の返済にすべて充てざるを得なかった。なので食事はグレードが変わることがなかったが、それでも、
「本当にキレイ……」
「大会で成績を残した人しか入れないラウンジだからな。ここから見える都市夜景は世界で1番だって市長も言ってたよ。それこそ、王者しか見ることが許されない景色だ。お前と2人で見るって昔」
「ああ、子供の頃のね」
サテライトの貧しい地域が出身である俺と彩は、いつか、シンクロ世界で1番になってやると夢を語り合ったことがあった。具体的にどうやるのか、などとまるで考えず、とにかくシティで成功し、都会で裕福に食ってやろうと。
「いやあ……ここまで本当に来たんだ。それも、あれからまだ10年くらいしか経ってないけど感慨深いっていうか」
「まあ、俺の場合、とても運がよかったからな」
「そうなの?」
「シティに最初に出た時にさ。唯一俺が出れた公式試合が、前のフォーチュンカップの前座試合だったの覚えているか?」
「もちろん。見てたよ。キングの力を見せるためだからって、一般公募のデュエリストをキングがひねり潰す光景をテレビ放送するやつでしょ」
「そうそう」
「あれ、なんか生贄とか言われてるやつ」
「そうそう、生贄生贄」
「なに嬉しそうに言ってるのよ。プロを目指している人の心を何回も折っている儀式だって聞いてるわよ。未来を潰すとか本当にいけ好かないやり方じゃない」
「まあ、そうなんだけどな。でも俺はそれがなかったらだめだったよ」
「どういうこと?」
俺はそこからのサクセスストーリーを、順を追って説明することにした。
事は先ほど前のフォーチュンカップの前座でデュエルをしたことから始まる。この時俺は絶対王者ジャックアトラスの再来と言われた、アーロンとのデュエルを行った。結果は敗北、徹底的に抗戦してやるつもりだったのに、まさか4ターンで終わりになるとは思いもしなかったものだ。俺の目指す場所と、現実にここまで差があるのかと、若干心も折れかけた。しかし、その程度の気力で王者を目指しているつもりはなかったし、5秒落ち込んだ後は元通り、デッキや戦術の反省会をしていた。
その時、それをたまたま見かけたアーロンから、
「さっきのデュエル、面白いものを見せてもらった。その礼だ」
と、俺に、規模は小さいものの、各地で行われているデュエル大会の案内とアーロン直筆の推薦書をもらった。
「いいのか?」
「ああ、俺は見込みのある奴には、どんどんデュエルを盛り上げてもらいたいと思っている。お前はきっと、俺の前に再び昇ってくると思っていてな」
「そりゃどうも。なら俺も、あんたの期待に応えないとな?」
「ふ……まあ、ほんの少し期待して、次の大会までは待つことにしよう」
それがアーロンとの初邂逅だった。
フォーチュンカップ、シティ1番のライディングデュエルチャンプを決める戦いに出るには、市民の人気をとるのが1番だ。
そのために俺は名前を売らなければならない。各地のデュエル大会を巡って、とにかくデュエルをした。
さすがはシティだけあって、サテライトでは無敗の俺も、何度も敗北したものだ。最初はそれで馬鹿にもされたし、サテライトに帰れとも言われた。しかし、めげることなく、とにかく戦った。
ここまで見て分かるように、俺は精神はタフなのでいじめには耐えられた。しかし問題は別にあった。小さなデュエル大会は優勝しないと賞金が出ず、仮にもらえても、とてもではないがシティで生活するには厳しい金額だった。バイトだけでは到底生活もできず、とうとう借家も追い出される始末。いったいどうしようとホームレス生活への期待不安の未来を想像していた頃に、俺に第2の出会いがあった。
瑠偉、そして瑠奈の2人だ。なんとも幸運なことに、デュエルファンの2人は俺のことも知っていて、俺のファンだという。
「遊介兄ちゃんがデュエルを教えてくれるなら、俺んち住んでいいよ!」
「瑠偉! この人に迷惑なんじゃ」
いや、俺としてはむしろありがたいが、迷惑かどうかを訊くのは俺の方だろう。と思ったのだが、聞いてみると二人の親は海外に出張へ出ていて、今は兄弟2人で過ごしているらしい。家の人には、家事のお手伝いさんとして俺を登録してくれるそうなので、俺は年下の子の優しさに全面的に頼り、家に住まわせてもらうことになった。
瑠偉も瑠奈も本当にいい子だ。俺は、その兄妹に恩を返すためにも、大会のない日は瑠偉の特訓に飽きることなく付き合ったし、瑠奈に勉強も教えてあげた。高学歴ではない俺でもさすがに11歳の子供にものを教える程度の教養は持っている。というか、シティにつく前に必死に勉強してきたので、何とかなった、というのが正しいのだが。
住居は解決、だがまた問題が発生した。それは、俺のDホイールだ。ある時故障してしまった時に、直すだけのお金がないとなり、今後のデュエリスト生命に大きな不安が残る状態に。その時、瑠偉が、父親の伝手で知り合ったDホイール修理の名人を紹介してくれた。
それが、不動星矢、そして黒羽鳥羽利の2人だ。星矢はDホイールの開発科学者で、鳥羽利は修理の天才。二人は、身寄りのない何人かの子供を預かり養いながら、修理屋を営んでいる。
「何よこれ。ポンコツじゃん。 買い替えな!」
「鳥羽利。そんなことを言うな。彼にとっては愛着のある機体のはずだ」
瑠偉の知り合いとだけあって性格は違うにしろいいやつそうだったのがよかった。これなら俺の唯一のポンコツ機体も喜ぶというものだ。
「星矢、まさかただとは言わないでしょうね!」
「そうだな、さすがに無料とは言えないか」
そればかりはもう仕方ない。
「たのむよー、星矢」
「お子様は黙って、向こうのガキどもと戯れてろ」
「鳥羽利姉ちゃんには聞いてない!」
瑠偉の駄々こねも、鳥羽利がほっぺを引っ張り中断された以上、やはり金は必要だった。
しかし、星矢の救済措置がここで舞い降りたのは俺にとっての光明だ。
「俺が今開発しているモーメントがある。それを取り付けてテスト走行を担ってくれるなら、タダでもいい。それなら、修理代くらいは科研費から出るだろう」
「本気!」
「もちろん、爆発等、事故を起こす可能性もないとは言えない実験と引き換えだ。やってみる気はあるか?」
俺は二つ返事で了解した。
それ以来は瑠偉、瑠奈の家で済みながら、星矢の元でテスト走行、2回事故で死にかけたが、それでも何とか生還し、俺は将来発売される新型と同等の改造をされた機体を手に入れた。
深刻な問題を2つの解決し、さらに素敵な出会いを繰り返した俺は、その幸運をものにするためにさらにデュエルに磨きをかけ、次々と大会で優勝を勝ち取る。
そしてようやく、フォーチュンカップへ招待されたのだ。
驚いたのは、星矢や鳥羽利も参加するということだ。2人とも飛んでもないデュエルの腕を持っていて、アーロンと因縁があり、その決着をつけると言っていた。さらに俺はそこで俺と同時期に名前が売られ始めた、ユーゴというデュエリストも招待されていた。
植物使いのデュエリストとの激闘から始まり、俺はそんな強敵たちと戦い、そして最後、頂点で待っていたアーロンに再会したのだ。そして俺はそこで勝利し、ようやく、頂点へと上り詰めた。
「すごい……幸運重なりすぎでしょ?」
「ま、まあ、後で不幸に見舞われなければいいけど……」
「きっと神様が、たくさん頑張った遊介を認めてくれたのよ」
「そうか、そうだといいな」
「ところで、アーロンさんと連絡先とか交換した?」
「ああ、まあ」
「私に紹介してよ! キングとお近づきになりたい!」
「お前、下心見え見えだぞ…」
「えへへへへ」
俺は幸せだった。これ以上を望まないくらい。俺は行き着くところまで行きついた。これから先はみんなに希望を見せるプロとして戦っていくものだと疑いはしなかった。
しかし、そう幸運が続くわけもなかった。
ある日の試合のことだ。
ライディングデュエル中に俺の相手だった選手のDホイールが故障し、爆発事故を起こしてしまった。出場した選手は怪我、ライディングデュエルの危険を世に広める大問題となった。
俺は相手の選手を引っ張り出し、そして必死に助けた。それでも、片足を失い、ライディングデュエルはもはやできない体となったのだ。
原因は明らかだった。何度も星矢の修理を見ていれば、素人でも分かるメンテナンスミス。その時のエンジニアは不憫なことに、さっさと出せというスポンサーに移行に「
――数日がたった後、俺は目を疑う記事を映像ニュースで見た。
『悪魔の所業 遊介選手、Dホイールへの細工。勝利を掴むため、最悪の行動に出た男』
当然身に覚えはない。そもそも俺はDホイールを細工して、爆発転倒させるような機械いじりの技術も持ち合わせていない。
これは相手プロのスポンサーになっていた貴族の陰謀だったの知るのはすべてが終わった後だった。エンジニアを脅迫し、わざわざ自分の選手を犠牲にしてまで、俺の名声を破壊したかったそうだ。
事実無根の記事は瞬く間に拡散し、さらに巧妙にできた合成画像や、買収された証言者まで用意する狡猾さ。報道はこれを機に徹底的に俺を追い込むことで、会社の利益に繋げようと奮闘し、報道に踊らされる市民によって、いつしか俺は、悪魔のデュエリスト呼ばわり。
それでも、アーロンや星矢やユーゴは俺の無実を主張し、それを証明しようとしたが、世間はそれを許さなかった。いつしか俺はあらゆる大会に出場することができなくなり、最後にはプロの引退宣言を迫られる始末だった。
これ以上、迷惑はかけられないと、俺は瑠偉や瑠奈に黙って家を出て、誰にも言わず故郷に戻った。いや、まだあきらめたわけではない。ほとぼりが冷めればワンチャンあると思い、今は身を隠すことにしたのだ。
しかし、その貴族の俺に対する怒り――もっとも、田舎あがりが生意気な顔をするのが許せないという身勝手な理由だったが――は凄まじかったらしく、俺は故郷に戻ったときに奴が残したとどめを身をもって体感した。
彩が――売られたという。
俺がプロになったのは彼女に格好いいところを見せたかったからだ。そしてその彼女がいなくなった。この意味は非常に大きかった。それ以来俺はあらゆる行為に意味を見出せなくなった。
そして堕落した俺を見られたくはなかったから、俺は故郷からも逃げた。誰にも見られないように身を隠し、独学で、闇のデュエルと呼ばれる儀式を勉強した。
使う相手はただ1人。俺をここまで陥れた貴族を殺すため。
イリアステルが攻めてきた日を俺はしっかりと覚えている。
奴らは強かった。
信じられないくらいに強かった。
でも、俺達だって負けてはいなかった。
白い悪魔、何するものぞ。俺達には希望があったのだ。200年前、ダークシグナーから世界を救った赤き竜、その末裔たちがネオドミノシティに偶然――否、運命によって集まり、再び赤き龍の力と眷属たる6体の神龍を携えて戦ってくれた。
セカンドオーダーなどと、バカみたいなルール破りの効果ばかりを持つカードを使う相手に、新たなシグナ―と、その仲間も一歩も引けを取らずに戦っていた。
それは俺の故郷、この世界では分かりやすいようにシンクロ世界と言ってしまっているが、そのシンクロ世界に伝わる伝説のシグナ―たちに引けを取らなかったのではないだろうか。
一方俺個人としては情けなかった。本当は俺も、デュエルを悪用してシンクロ世界のために戦わなければいけなかったのだ。しかし、その頃の俺には、イリアステル等どうでも良かった。この混乱を利用して、俺は復讐を果たし、死んでいけばいい。
しかし、その最期の願いを叶える前に、燃える街の中をさまよっているところで、俺は奴に会ったのだ。
アルター。この世界を襲撃した首謀者だった。
「何のようだ」
「差別が横行し、努力を踏みにじり、俺を裏切り、すべてを奪ったこの世界、そしてに生きる人々、それらは、生きる価値などない愚廃極まった世界だ。お前のその願望をかなえてやろうと思ってな」
「俺はそんなことは欠片も思っていない」
「自覚していないだけだ。お前は闇に手を染めた。行き場のない刃は復讐を終えても収まることはない。その証拠に、お前はこの世界を看過している」
「それは」
「それは、この世界をお前は守るべき世界と見ていないからさ。世界が滅べば自分も死ぬ。残るのは人々の死体と、夢も希望もない世界。そんな未来が待っているのなら、たとえ生粋の悪人だって不安ぐらいは持つさ。だがお前はそれを持っていない」
事実だ。俺は欠片も加勢をしようとは考えなかった。俺を助けてくれたシグナ―のみんなが命を賭けて戦っているのに。
俺はなんて屑野郎だ。
「あ。あああああ」
「だが心配することはない」
アルターはデュエルディスクを置いていく。
「なんだ、これ」
「君にチャンスをあげよう、あらゆる願いを叶えるチャンスを。覚悟が決まったら来ると言い。新たな世界で、君が失ったすべてを取り戻すための戦いができる」
「まさか。そんなこと」
「彩ちゃんを、取り戻したくはないのか?」
「……それは」
明らかに何かを企んで、俺はそれに利用されようとしている。それくらいは分かる。
しかし、彩が生き返るというのなら、迷いはしない。復讐をしても、大して満足しないのなら。俺は、夢物語を追い続けている方が性に合いそうだと思った。
「俺は……」
「一度行ったら二度と戻れない。その世界は闇のデュエルが当たり前の命がけの世界だ。ヌメロンコードを求めて人々が戦う世界だ。それでも行くか?」
次の瞬間には、アルターはそこにいなかった。
彩が生き返る? 彩が生き返る!
たとえ嘘でも構わなかった。たとえ、その先で死んでも構わなかった。
夢がかなうときの心の躍動を俺は知っている。生きる意味の必要性を俺は知っている。
俺に迷う理由はなかった。
行けるようになるのは、シンクロ世界が滅んだ後だと書いてあった。だから俺は、滅ぶのを待った。どれほどの犠牲が出ようと、見て見ぬふりをしながら、来る俺のための戦いに備えた。
「……ドン引きだな」
「だろ? でも聞きたいって言ったのはお前だからな」
「なるほど、お前が過激派ばかりの解放軍にいる理由が分かった気がする」
「だろ? 俺もまあ、善い人間ではないってことだ」
その日、俺は、松とアゼルとともに、水の世界の工場跡を目指していた。水の世界の工場近くで、解放軍の各地を統べる幹部と合流する予定であり、その後、工場跡へと赴く予定になっている。
その世界ではエリアマスターの権限で徒歩と公共交通以外の移動を禁止されているため、ある程度は徒歩で移動しなければならないのだ。足は忙しいにしろ、口は暇なので、談笑をしながら、集合場所に向かっている。
彼が過去を語ることになったのは、以前、良助が黒歴史としてアルターに惨敗した話を聞いた代わりに、俺も黒歴史を言えと言われたからだ。
しかし俺の歴史ははっきりガチの黒歴史だ。良助が眉間にしわを寄せているのも無理はない。語ろうと思えばもっとエグい話もできたのだが、これ以上は俺も心穏やかではいられなくなるのでやめることにする。
「珍しいな」
「アゼル君、なんだね」
「お前、今まで過去を語りたがらなかったのに、今はそんな悠々と語って」
「ああ、それな、たまたまだ……って言いたいけど実はそうじゃない」
「何か理由が?」
「単なる個人的な事情だ。アゼルはこの後のエデンとの交渉を頑張ってくれればいい」
「……釈然としないが、まあ、そうだな」
アゼルも普段は納得はしないような男なのだが、今回は緊張しているようで、俺の言うことを素直に聞いてくれた。それは、それだけエデンという組織の恐ろしさを感じ取っているということだ。
エデンとの会談は、向こうから持ち掛けられている。リーダーのリボルバーを名乗る奴が直接手紙を送ってきたのだ。わざわざ、部下に各地のアジトの受付に律儀に直筆で。何より恐ろしいのは、カモフラージュしてあるはずの、アジトの場所を向こうがすべて知っているという点だ。
それに関してはすぐに、向こう側に聞けば決着はつくだろう。隠しアジトとはいえ、人が出入りすればさすがに予想はつくのかもしれない。
俺が不安を感じているのはそこではない。アゼルには今余計な心配はかけたくないので言わないが、良助には言っておきたいと思う。
「良助、エデンにも遊介ってやつがいるらしい」
「ああ、知っている」
「俺はさ、気になってるんだ。向こうの遊介はお前の求める本物なのか、それとも別の世界の俺なのか」
「さあな。それで?」
「おいおい、気になるじゃねえか。向こうの遊介はなんでそんな組織にいるのかってさ」
「そうか? たまたまだろう」
「エデンだって言ってしまえば過激派だ。このデュエルで死ぬなんて馬鹿げた世界から逃げたい奴だってこの世界の人口の半分はいる。あいつらが掲げているのは、そんな半数に真っ向から反抗する、『この世界の永続』を理念にしている」
「ああ、知ってる。エデンの遊介は、なんと言うか、過激なんだろ?」
「リボルバーが組織の陽なら、奴は陰だ。目的の遂行のために、暗殺も謀略もなんでもやる。俺と同じで、奴も何か闇がある。警戒するに越したことはないだろ?」
「だからって今から考えても仕方ないんじゃね?」
それはそうか。と、俺は良助の言いぶりに賛成してしまった。
確かに、今から警戒しても仕方ない。まだ会ったこともないしどうしようもないだろう。
「もうすぐ集合場所だ」
アゼルの指示もあり、俺はこの話を終了させた。
解放軍の幹部は、エリアごとのリーダー、そして俺と良助、アゼルの9人である。それ以外は一般兵とでも言っておこう。
そして頼もしいのは、その6人のうち3人は、イリアステルとの戦争を経験している実力者だ。良助が会うのは初めてだろう。
一人目は融合世界出身の万丈目準。
「こいつが、遊介が言っていた良助とかいう……」
「サンダー……?」
「俺をサンダーだと? お前、ふざけてるのか?」
「何……サンダーじゃない……?」
「貴様……ふざけているようだな」
良助が出合い頭に何かを言っているが、俺にはよくわからない。サンダーなんて、真面目をキャラの彼には似つかわしくないだろう。使うデッキはドラゴン族主体、エースモンスターは光と闇の龍。エースこそ融合ではないが、彼の実力は解放軍中でもトップだ。
ちなみに解放軍のリーダーのまっちゃんというのは彼のプレイヤーネームだ。なんでも、自分の情報を可能な限り隠すことにメリットがありそうだと思ったとか、誰かに唆されたとからしい。そしてそのふざけたネームを見たアゼルは、自分ではなく、彼をデータ上のリーダーにして、実際のリーダーであるアゼルは、名前すら公になることはなく軍の運営をできる。これについては、リーダーを討伐されるというリスクが大幅に減る。
2人目、エクシーズ世界からやってきたトーマス・アークライト。水の世界の裏デュエル上で猛威を振るっているところをアゼルがスカウトした。
「遊介、いつになったら俺のファンサービスを受けに来るんだ。最近は雑魚狩りばかりで、飽き飽きしているんだぞ。そのうちお前らに喧嘩を売りに行くぞ」
「まあまあ、俺達は競争関係であり協力関係。イリアステルを潰すっていう目的は一致してるんだ。お互いに利用し合う関係として、これからも仲良く」
「くだらねえ。お前らは一番にイリアステルに戦いを仕掛けるっていう話だからそれに乗るっていう条件だ。あまりダラダラしてると俺もキレそうになる」
「……ミハエルは見つかったのか?」
「いや、アイツ、どこに居やがるんだ。ったく、復讐は2人でって言ったのはあいつなのによ」
「いやあ、弟を待つなんて、優しいお兄ちゃん――」
すごい怖い顔で睨まれた。怖い。
そしてイリアステルとの戦争経験者三人衆、最後の1人が、ペンデュラム世界からやってきたという、沢渡という男。
「アゼル、とうとう俺に頼るとは、いい判断だぜ?」
「まあな。ランサーズの特使だと自信満々に言ってくれたんだ。実際期待してるぜ?」
なんでも奴はランサーズというイリアステルを倒す軍団として各世界を旅してきたとかなんとか。
「任せとけ、この俺様がいればな。その代わり、分かってるよな?」
「ああ、しっかり働いてくれたら、解放軍とランサーズの同盟も考えてやってもいいぞ?」
「オーケー、お助けキャラの力を見せてやる」
頼もしい味方を呼べて解放軍も勢いづいている。その他3人の幹部は先に偵察に行ったという話だ。解放軍の実質リーダーであるアゼルの言うことくらい聞いてほしいが、解放軍は元より馬鹿で血の気の多い集団なので仕方がないといえば仕方がないといえる。
これほどの戦力が揃えば、エデンと万が一のことがあっても、簡単に全滅ということはないだろう。
「さて、それじゃあ、行こう。エデンのリボルバー様がお待ちだ」
アゼルの号令で、この場に集まった人間は、彼について行く。
しかし、不思議なものだ。この場にいる人間は、普段アゼルの言うことは聞かないようなやつばかりなのに、全員来るとは。
もしかすると、エデンに彼らも何か因縁があるのだろうか。
この場で分かるはずもなかったが、何か不穏な気配を俺は感じ始めた。
(後編へ続く)
お待たせしました。
非常に遅くなりましたが、番外編4です。
遅くなった理由としては、今回は物語の構成の見直しをしていたらいつの間にか、という感じです。その分、面白くしていくつもりなのでお許しください。
後編もすでに執筆は終わっているので、見直しが終わり次第すぐに投稿します。
お楽しみに!