遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』   作:femania

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注意事項

・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。

これでOKという人はお楽しみください!

たいそうなタイトルですが、内容はただ女子二人が話しているだけです。女子会です。
むしろタイトル詐欺と思われる可能性もあるかもです。

番外編最後の話、クライマックス感は全くないのんびりした話なので、そのつもりでお楽しみいただければと思います。


番外編5 ブルームガールの秘めた思い

 光の世界はリンクブレインズの中でも唯一、全域にわたって、賭けデュエルが禁止されているエリアになっている。

 

 そこに拠点を置いているのは『players』という小さなデュエルチームだった。エリアマスターが倒され、新たなエリアマスターの座をかけて、サイバース使いとフォトン使いのデュエリストの戦いが起こった。そしてそこでサイバース使いのデュエリストが勝利し、新たなエリアマスターが今の光の世界の平和をつくった。

 

 この知らせはイリアステルの公式放送により放映され、安全となった光の世界には、デュエルを苦手とするデュエリストやそもそもデュエルができないままでこの世界に迷い込んだ人間が、自らの安全のために逃げ込んできた。

 

 彼らは、光の世界への保護を求める代わりに、今までは大人の原住民が行っていた原住民の仕事を代わりに務めることを求められそれに従って慎ましく生きている。

 

 しかし、不安要素も多い。

 

 現在のエリアマスターこと、守屋遊介は行方不明である。各地で同じ顔が観測されているがそれらは偽物。というより別の世界からやってきた同一人物だ。結局、本物の遊介は結局行方不明なのである。

 

 そんな中でさらに厄介なことに、賭けデュエルをあらゆるルールを無視して行うことができる『ルールブレイカー』の配布により、光の世界に来た戦いが不得手な住民に不当な賭けデュエルを仕掛け、デュエルポイントを稼ぐ不法者も現れ始めている。

 

『players』のデュエリストはそんな無法者を相手にデュエルで戦い、拘束、追い返し、悪質な相手には排除という過激な手段をとって、光の世界の安全を守るための慈善活動を行っている。

 

 それもすべて光の世界を拠点にしている『players』のデュエリストとして、エリアマスターが無事帰還するまで、拠点を守ろうという心意気と、そもそもチームメンバーの心が善良なので、いらない被害者が出るのを見過ごせない、という気持ちもあって行動だった。

 

 しかし、不法者の数も多くなってきているのが問題になっている。何しろ『players』のデュエリストの数は、3度のチームイベント戦で上位を占めている割にはその数が少ない。

 

 エリアマスターの守屋遊介。ただし現在行方不明。

 

 トリックスター使いのブルームガール。

 

 毎回使うカードが変わり、デッキの正体のつかめないマイケル。

 

 幻影騎士団を使う実力者ユート。

 

 そしてそのパートナーで、鳥獣族を使う瑠璃。

 

 そして普段は一緒に行動をしていないものの、メンバーとして登録されているヴィクター。

 

 そしてメンバーとしてまともに機能するのは現在、遊介とヴィクターを除いて4人。それに対して、無法者は1日20人以上確認されている。それをたった4人で処理して回っているので、1日の大半をデュエルと無法者の処理で過ごしている。

 

 そのような働きが人々の間に知れ渡り、光の世界の守護者として、デュエリストたちは尊敬されるようになった。

 

 

 

 ある夜の話。

 

 新たに拠点としている2階建て、新たなマイケルのカードショップ、居住スペースの2階のベランダから、今日もブルームガールは空を見上げる。

 

「疲れた……」

 

 今日も7人の無法者とデュエルをして、先ほど夕食を終えたところだった。

 

「何よ……全く。こうも多いと困るわ。なんか最近強くなってきてるし」

 

 ブルームガールはむくれながらベランダに用意された彼女専用のテーブルに腰を下ろす。

 

 今日も月は夜空を星とともに彩っている。ブルームガールはここから毎日空を見上げ、テーブルに乗せた一杯のオレンジジュースをご褒美に飲むのが最近の日課だった。当然糖質多めの飲み物なので、夕食の炭水化物は控えめにして、栄養バランスが偏りすぎないようにしている。

 

 オレンジジュースをぐびっと口に流し込み、

 

「はぁー!」

 

 と、まるで酒を飲んだ後のような叫び声をあげた。

 

 しかし、ここで本日のミスにブルームガールは気が付いた。が、もう遅い。苦言を呈されるのは仕方のないことだとも自覚する。

 

「ブルームガール、ちょっとはしたないわ。外から見られてるかもしれないのに」

 

「く……でもこれだけはやめられない。テーブルという本来座るためじゃない用途で使うものに座っちゃう背徳感、そして、一杯のオレンジジュース。家ではこんなことできないし、ここでしかできない最高の自分へのご褒美よ」

 

 いつもは一人で見上げる月。しかし、今日は同伴者がいた。

 

 そう、瑠璃だ。

 

 以前ハルトを脱出させるため、一度は光の世界を離れたものの、一週間もしないうちに光の世界に戻ってきて、それからは、再びチームメイトとして同居しながらともに生きている。

 

「テーブルに座るだけで背徳感なんて感じる?」

 

「家が結構厳しくてさ」

 

 瑠璃がテーブルの椅子を本来の使い方で使用したのを見て、ブルームガールもまたこれ以上は恥ずかしいと思ったのか、瑠璃に向かい合うようにして、クッションを置いた椅子に腰を下ろす。

 

「ベランダを男子禁制なんて、可愛そうじゃない? ここから見る月も景色も結構きれいだし、彼らにも見せてあげたいけど」

 

「ダメよ、ここはか弱い女子の憩いの場なの。男子は寝てればいろいろ治る」

 

「私はいいの?」

 

「瑠璃は女子じゃない。実はこうやって女子会的なことをやるのも少し憧れてたのよ」

 

「へえ、ふふふ」

 

「お、おかしい?」

 

「ううん。私もこうやって、女の子同士で話すのは久しぶり」

 

 女子二人で女子会と言うかは人に寄るだろうが、ここでは女子会と定義することにする。そしてこの女子会は、実は瑠璃が提案したものだ。

 

 きっかけになったのは、夜にベランダで晩酌みたいなことをするブルームガールを、瑠璃が見たことにある。

 

最近は街のパトロール活動とデュエルも激化して疲れがたまる毎日。その中で、夜のベランダで一人寂しく女の子が月を見ながら、叫んでいたらさすがに通常運転とは思えないだろう。

 

 そこで瑠璃は、そのストレスを少しでも愚痴って軽くできればと思い、その相手役に立候補したのだ。

 

 しかし、ブルームガールは元々ストレス発散というよりは、疲れを吹っ飛ばすためのルーティンみたいなもので、特段苛々していたわけでもない。そのため、瑠璃の提案にむしろ、瑠璃に心配をかけてしまったという自責を負う結果となった。

 

 ブルームガールは瑠璃の提案を無下にすることもできなかったので、ブルームガールは少し考え方を変えることにした。本来はエリーの帰りを待ってから3人で行うはずだった自分が1回もやったことのない女子会なるもの、その事前練習をやってみようという風に。

 

「今日もお疲れ様」

 

「瑠璃こそ。今日何人倒した?」

 

 もっとも最初に語られる話は、とても女子二人から放たれるような言葉ではないのだが。

 

「私は5人程度。そのうち、1人は、まあ、倒しちゃったけど」

 

「あれは仕方ないって。向こうが賭けデュエルを仕掛けてくる以上、光の世界の人を守るにはこっちも、デュエルに乗るしかない。ちゃんと警告もしたんでしょ、自業自得」

 

「でもやっぱり、目の前で死んじゃうのはね……」

 

「まあ、それはね。私も未だ慣れないし。でも私たちが戦ってるから、潔く撤退する人も増えてきたんじゃない?」

 

「うん。結構。私のこと見るだけで謝って逃げる人も増えてきた」

 

「……なんか、私たちが鬼かなんかみたいね。こうして話してると」

 

「おに……、ふふふ、確かに!」

 

 瑠璃が笑い、そしてブルームガールもそれにつられてにっこりと笑って微笑んだ。

 

 場が少し暖かくなる。和やかな雰囲気で会話を始められたことは、ブルームガールにとっては暁光だった。何にせよ、ブルームガールにとっては初の女子会。たった二人で気の知る相手とは言え、自分の初めてを体験することを悪い思い出として残したくはないという気持ちがあるのだ。

 

 瑠璃が笑うのを一時やめて、次の話題へ切り替える。

 

「そういえば、聞くのをすっかり忘れてたけど、なんでベランダで晩酌するの?」

 

「ふぇ?」

 

 瑠璃の唐突な質問にブルームガールは固まる。

 

「夜に一杯ってのは私たちの世界でも大人がよくやってるけど、でも、毎日毎日外ってことはないし、何か理由があるんじゃないかなって思って」

 

「それで昼間……心配かけちゃって」

 

「まあ、最初に言い出したのはユートなんだけど」

 

「ユートが?」

 

「夜に叫んでいて怖い、もしかするともう激務でおかしくなってるんじゃないか、とか言ってたよ。それを私が聞いて、実際に見に行ってみたら本当にやってるんだもん、びっくり」

 

「う……」

 

 自分では押さえていたつもりの、晩酌の後の定番の叫び声。それが意外な人物に不安を与えていたことを知り、ブルームガールは己の所業を少し恥じることとなった。

 

「それは……ユートにも悪いことをしたわ」

 

「まあ、私も貴女のストレスの原因は分かるつもりだしね」

 

「別に私、仕事がストレスなわけじゃないよ?」

 

「そうなの?」

 

「前の世界での家出のストレスに比べれば、デュエルばっかできる今の状況は結構私楽しい。だからストレスっていうよりは単なる疲れだと思う。だから今までは体形維持のために禁止されてたジュースの飲んで、明日も頑張るぞ! って檄を自分に送ってるの」

 

「じゃあ、本当に苛々してるとか、そういうのは?」

 

「ない。それは断言できるよ。だって、マイケルも、ユートも瑠璃も、いい人ばかりと一緒に過ごせるんだもん。少なくとも、家で勉強ばかりよりずっと楽しい」

 

「家よりずっと……そんなに家だと大変なの?」

 

「さっきも言ったけど、親がかなり厳しくてね。私は将来医者か大学教授、もしくは官僚になるしか認めないって感じ」

 

「なんか……結構大変そうに聞こえるわ。今の私じゃ想像できない」

 

「なんか昔貴族かなんかの血筋だったらしくてね。それはもう家だと大変よ」

 

「聞かせてほしいなぁ……なんて」

 

「え?」

 

「もちろん嫌じゃなかったらだけど。私たち、もう長い間チームじゃない。もっとあなたのこと知りたいなって思ったの。だめ?」

 

「……長くなるかもよ?」

 

「もちろん。せっかくこうやって飲み物も用意してるし」

 

 瑠璃は自分の分のジュースを口に含んだ。

 

 自分の家は異常だとブルームガールは自覚しているからこそ、あまり話したくはないと思っている。

 

 しかしブルームガールは話すことにした。なぜなら同様に彼女も瑠璃のことを知りたかった。異世界にまで来て初めて同じ屋根の下で暮らすことができた友達の頼み、それを無下にはしたくなかった。

 

 少し愚痴っぽくなりながらも、元の世界の生活を、ブルームガールは語り始める。

 

 朝は6時起床。20分で5キロのマラソンをした後、朝食は30分かけゆっくりととる。その後10分で外出の支度を済ませ。学校へ行く。

 

 成績は学年1番以外の場合は携帯を没収されるので学業にも相当の覚悟を持って挑む。授業は先生の語る一字一句を聞き逃さないように心がけ、午後は生徒会長として激務をこなす。この生徒会長も必要なキャリアで、ならなければ一家の落ちこぼれとして家を追い出されるから必死に縋りついた役職。

 

 帰ってからは塾。塾の全国模試では上位100以内を取れなければ絶縁を言い渡され一切の家からの援助を受けられないから頑張った。

 

 11時に家に帰ってからはご飯など与えられない。体重は見栄えが良い50キロから55キロの間に維持することを強制されている。親は様づけで呼び、一切の妥協なく目上の人間への尊敬の態度の取り方を含め、あらゆるマナーを監視され続ける。破れば頬を叩かれるので反抗は10歳の時にやめた。

 

 自由時間は夜の12時から。ただしテレビを見ることはできない、娯楽やそれにつながる者はすべて没収され、部屋に残されているのは、将来に役に立ちそうな本。

 

 そんな生活を、高校2年生になるまで毎日。

 

「えげつない……」

 

「私の家はそれが当たり前だったし、その頃は勉強以外は全部堕落、一度手を染めればあとは人間の屑になっていくだけ。なんて戯言、本気で信じてたからね」

 

「辛くなかった?」

 

「いやあ、そりゃぁ……生き苦しかったよ。でも、まあ、その分。私にとってプロデュエリストが戦っている光景は衝撃的だったなぁ」

 

「衝撃的?」

 

「だって、楽しそうだったんだもん。仕事をしてるのに」

 

 魔が差して、監視カメラのカモフラージュを行い、隠されていた携帯電話のテレビ機能で、テレビを見たのが高校2年生の4月10日。その時にやっていた番組がはプロデュエリストがデュエルをしているところだった。

 

 よく分からない遊戯を流しているだけだと、当時のブルームガール、否、麻里は思ったのだ。しかし、それは間違いだった。

 

 麻里は見ていて興奮した。まるで、サーカスを祖父母とたった1度だけ見た時の感動を思い出すくらいに。それはまさしく本物のエンターテイメントだった。

 

 なんて楽しそうなのだろうか。嘘偽りない、繕わないその気持ちは間違いなくあった。

 

 それ以来デュエルに興味を持った。家出の行動は監視され、カードを持つことはできなかったが、英才教育の賜物なのか、カードの効果テキストは一瞬見れば覚えられたため、ルールや遊び方を理解するのに苦労はしていない。

 

「……デュエル好きなのね」

 

「いま語ってみれば、まるで子供のよう。一度見て感動して、それにのめりこんじゃうなんて」

 

 それでも、ブルームガールは家を出れる時期になったら家を出て、プロになりたいという密な夢を持つまでにデュエルにはまっている。

 

 なのでそんなブルームガールにとって、このデュエルの世界は、自分の好きなことにのめりこめる、いい世界なのだ。

 

「ううん。素敵なことだと思う。楽しそう……か」

 

 自分の家というとてもプライベートなことを、とりあえず一段落言い終え、ブルームガールはお返しとばかりに、

 

「じゃあ、今度は私の番」

 

 と、瑠璃に過去の話を迫ろうとした。

 

 しかし、ブルームガールもイリアステルとの戦争の話は既に聞いている。エクシーズ世界でのすさまじい戦いの一部始終を、すでに知っていた。その地上の地獄の光景を、悪しき記憶をそこで引き出す必要ないと考え、聞く話を変えることにした。

 

「ユートと、いつから付き合ってるの? 馴れ初めを含めて」

 

「ええ!」

 

 瑠璃の顔が急に赤くなるのをブルームガールは確かに見た。これは面白い話を聞けそうだ、とブルームガールはニヤリと笑う。

 

「私だってちゃんといろいろ話したのよ。少しくらい教えなさいよ」

 

「でも……その、馴れ初めなんて」

 

 瑠璃は口をつぐんだが、

 

「なによぅ、別に別に言いふらしたりはしないから」

 

「うう……別に嫌じゃないけど、恥ずかしいなぁ」

 

 瑠璃は五秒迷い、そして口を開く。

 

「私がユートに会ったのは、まだ故郷が平和だったころ。兄さんの紹介だったの」

 

「それから?」

 

「ぐいぐい来るね……。でも、それからはよく兄さんと一緒にいる時に話して、自然に仲良くなってたかな。そのうち2人で出かけたりもしたよ」

 

「デートの時はどっちが誘ったの?」

 

「ユートがね、今日は2人で出かけないかって」

 

 あまりに嬉しそうに当時のことを話す瑠璃に徐々に押され気味になるブルームガール。

 

(やっぱり大好きなんだなぁ)

 

 そう彼女を思わせるほどの瑠璃のユート語りは徐々に熱量を増していく。徐々に早口に声量も大きくなっていき、ブルームガールは押され気味に。

 

「そうそう、近くの都市でデュエル大会があってね! その時のユート、とっても格好良かったの! 後ちょっとで負けそうってときも、キリって感じで、それはどうかな、だって」

 

 しかしブルームガールも熱量に圧されているだけで話を楽しんでいないわけではなかった。瑠璃の話すエクシーズ世界の話は、自分の知らない、まるでフィクションの物語のように楽しんでいる。

 

 しかし、夢心地に話を聞く時間は急に終わりを迎える。

 

「ところで、ブルームガールは誰か好きな人はいるの?」

 

 瑠璃の鋭い一撃によって。

 

「え、ええええ!」

 

「ふふふ、私にこんな語らせたんだもの、今度はあなたの番よ」

 

「そ……そんなのいない!」

 

「そうなの。誰か、一目ぼれしたことのある人でもいいのよ?」

 

「いないって」

 

「格好いいって思った人とかは?」

 

 いない。ブルームガールはそう答えようとした。しかし、一瞬だけためらいを見せたのを瑠璃はも逃さない

 

「い……いないわ」

 

「ええ、ほんとにー?」

 

「どうしてそう思うのよ」

 

 ブルームガールの徹底抗議にも瑠璃は怯まない。なぜなら、確かに断言できない何かがあると瑠璃は見抜いたからだ。

 

「だれだれー?」

 

「いない。いないから!」

 

「ちょっと、欠片でもそう思っている人がいれば、教えてよぉ」

 

「いやよ。恥ずかしい」

 

「嫌ってことはいるんだね」

 

「く……」

 

 徐々に不利に始めるブルームガール。

 

 そしてそこにとどめを刺すように、デュエルディスクに連絡が入るのはその時だった。

 

 あまりに唐突だったため、体をビクッとさせながら、デュエルディスクをとる。

 

 そしてその相手は驚くべき相手だった。

 

「もしもし、繋がってますか?」

 

「ゆ、ゆうすけ!」

 

 その瞬間、わずかではあるが顔を赤らめるブルームガールの姿を瑠璃は見逃さない。

 

 もしかして……、と疑惑を持ったが、瑠璃にとっても遊介からの連絡が来たというチームにとってのビッグニュースのため追及は待つことにした。

 

「あんた、どこ行ってたのよ!」

 

 過去最高のブルームガールの怒鳴り声が、光の世界に響き渡る。

 

「耳が……」

 

「ちょっと聞いてる!」

 

「もう少し、ボリューム落としてください」

 

「く……生意気な……」

 

 チーム内の連絡は音声のみの連絡とテレビ電話、そしてメールの3つ。今回はその中のテレビ電話のため、表情もよくわかる。

 

 遊介と、その後ろに隠れながら顔をひょっこり見せるエリーの姿が。

 

「とりあえず無事なのね!」

 

「ああ。今まで闇の世界にいてさ。ちょっと修業してた」

 

「修業って、あんたねぇ、こっちがどれだけ忙しいと思ってんの。そんな個人の事情に時間を割いてもらってる時間はないから。今すぐ帰ってきなさい!」

 

「いや、その……あの戦いの後、闇の世界に拉致されてさ……そこで、海堂の奴の闇の世界攻略を手伝ってたんだよ……」

 

「なんでまたそんなことを」

 

「あいつが勝手に連れてきたんだよ。竜で地下空間に突っ込んだせいで出口も分からず、周りにはデュエルバーサーカーがうようよ、闇の世界はとにかくライフの賭けをしない代わりにデュエルを何度も何度も挑まれて、毎日戦い漬けで大変だった」

 

「感想なんか聞いてないわ。あれから何日経ったと思ってるのよ! 少しは連絡よこしなさい」

 

「それが今までずっと繋がらなくてさ。今朝ようやく闇の世界から出られたんだ。海堂が闇の世界のエリアマスターを倒して、やっと出口が見つかったというか、地図を手に入れたから出られたんだよ」

 

「ふーん」

 

「怒ってる?」

 

「当然じゃない! どれだけ心配したと思ってるの!」

 

「ごめんなさいぃ……でもその分、俺しっかり修業してきたから、期待してくれ」

 

「本当でしょうね。帰ってきたらすぐに見せてもらうから」

 

「ああ」

 

「で、いつ帰ってこれるのよ」

 

「2日後。頑張って生き残ったから、帰ったら帰還パーティーしてほしいな」

 

「図に乗るな。速く帰ってきなさい。すぐに山のような仕事を押し付けてやるんだから」

 

「ええ。もうくたくただよぉ。1日休ませて」

 

「ダメよ。エリーはともかく、あなたはエリアマスターなんだから。働け」

 

「く……悪魔!」

 

「ずいぶんと減らず口を叩くようになったじゃない」

 

 先ほどから当たりは厳しい者の、ブルームガールが嬉しさを隠し切れないほどのニコニコ笑顔で応答している。

 

「でも、とにかく、無事でよかったわ。気を付けて帰ってきてね」

 

「分かった。じゃあ、次は光の世界で」

 

 通信が切れ、ブルームガールは少し残念そうにしながらもデュエルディスクの画面を閉じる。

 

 そして、連絡が終わったことで、遂に瑠璃のブルームガールへの攻撃が幕を開けることとなる。

 

「遊介くんなのね」

 

「ふぁ?」

 

「一目惚れ」

 

「何言ってんの瑠璃!」

 

「隠しても無駄無駄。だって今、どう見てもいつものブルームガールじゃなかったもの。どこで惚れたのよ」

 

「そんなことない。私はその……」

 

「もしかして、ハルトとの戦いのときに何か?」

 

「ない。ない。絶対にないから!」

 

「またまたー」

 

「からかわないでよぉ」

 

 顔が赤いぞ、と瑠璃は追撃をしようとしたがやめておいた。そんなことをしなくてもここまでむきになるという行動自体が、ブルームガールが遊介に何かは思っている事は分かったからだ。今日はそれを収穫に、2日後に帰ってくる遊介との絡みを楽しみに待つことにした。

 

 ブルームガールはそんな瑠璃の悪だくみに気づくことはない。

 

(そりゃあ、まあ、アイツの頑張ってるところ見て、格好いいなって思ったことはあるけど……く……気のせいよ。絶対に気のせい。だってあいつが気になる理由なんてないんだから。しばらく会えなくて寂しいとか、そんなこと絶対にないんだから!)

 

 と、意味もなく自分に言い聞かせている。

 

「じゃあ、遊介君の帰還だもの。パーティーはできなくても、大盤振る舞いの食事くらいは用意しておきましょう?」

 

 瑠璃の提案にブルームガールは賛成の意を示した。

 

 この夜の女子会は遊介の帰還というニュースに寄って、この後は何の食事を用意するかという相談会になった。

 

「今度はエリーも混ぜてやりたいねぇ」

 

「どうせならもっと人数は多い方が面白そうだけど」

 

「できるといいなぁ」

 

 今宵の女子会は、なんの変哲もない話ししかしていない者の、いつもの夜に比べて楽しいものになったらしく、二人の思い出に刻まれることとなった。

 

 今宵はここまで。

 

(終わり)

 




番外編終了です。このような、本編からだと話が逸脱して、テンポが悪くなってしまいそうな話はこのように番外編で書いていきたいと思っています。それもいったんここまでです。

番外編、いかがだったでしょうか?
彩、良助、薫、そしてエデンと解放軍。今後のストーリーに欠かせない彼らの正体に迫った話でした。書き終えて、ちょっと駆け足だったかな、と思っていますが、以前も書きましたとおり、あくまで番外編なので、長くやるのはちょっと違うな、とも思っています。なので、およそ20000文字の中でいかに、彼らを紹介できるか、そこは執筆で結構苦労しました。

満足いくものになったかというと自分ではそうでもないです。もっとも修業を積んで、限られたスペースでいかにキャラクターを魅力的に書けるか、という点もしっかり修業していきたいと思います。

番外編に一区切りつきましたので、ご都合がよろしければ、番外編の感想など何かコメントを頂けると、今後の参考になります。よろしくお願いします。

ちなみに、番外編で書き切れなかったデュエルも多いです。丸藤亮や万丈目準、トーマス、沢渡など、未だかけていない過去キャラデュエルはいずれやっていきます。また、未だ戦うところを見せていない、エクシーズ遊介、シンクロ遊介のデュエルはシーズン2中に行うのでお楽しみにお待ちください。

さて、これまでの番外編で、主要キャラクターの、リンクブレインズの立場はおおむね明らかにしたつもりなので、ここからいよいよ主人公復活、バリバリ本編を進めていきたいと思います!

(アニメ風 次回予告)← 飽きずにやっていきます!

底知れぬ闇の中。あの日痛感した己の弱さと向き合った。光指す大地に舞い戻ったとき、帰るべき故郷の危機を知る。ならば今こそ、今度こそ。自分の力で道を切り拓くため、彼は新たな戦いへと赴いた。

「悪いが、こんなところで負けられないんだ」

次回 遊戯王VRAINS ~『もう1人のLINKVRAINSの英雄』~

   『帰還』

   イントゥ・ザ・ブレインズ!
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