遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
こちらは後編です。お楽しみください。
ターン6
遊介が未だ希望を捨てないその態度を見てシンクロ遊介は考える。
当然、今伏せたカードが逆転の1手である可能性が高いと。
ならば、とシンクロ遊介は確実に勝利を掴むため、最後のだめ押しを実現するカードを求める。
「俺のターン」
運命の1枚。これで遊介の未来も占われる。
シンクロ遊介はカードを引いた。
そして――。
シンクロ遊介 LP1200 手札2
モンスター ⑦ AFW・プリズムフォース
魔法罠
シンクロ遊介は、持ち前の幸運で、自らの運命を操った。
これこそが、数多くの敵を打ち倒してきた、天より授かった勝負運である。
「俺は速攻魔法、『継がれる闘気』を発動! このカードは、墓地の戦士族モンスター1体を除外して発動する。俺のフィールド上のモンスターの攻撃力を次の相手ターンのエンドフェイズ時まで1000ポイントアップする。俺はスカーウォリアーをゲームから除外!」
AFW・プリズムフォース ATK2500→3500
「さらに除外したのがシンクロモンスターだった場合、相手フィールド上のマジック、トラップカード2枚まで破壊する。お前が前のターン伏せたカード2枚を破壊させてもらう!」
「な……」
遊介が最後の希望を託したカード。その伏せられたトラップは、無惨にも見事に破壊される。
「残念だな。このカードは初期から愛用している俺の愛用カードなんだ。まあ、このターン俺はこのカード以外の魔法、罠を発動・セットはできないんだがね。それでも、こういう場面では強い」
「くそ……」
本気で悔しがる遊介。
シンクロ遊介の勝利は無情にもここで決まる。
先ほどのターン遊介が何とか手繰り寄せた逆転の手。
それはこんなにもあっけなく崩れ去った。
この場を風をきる音だけが支配する。
勝利を確信したシンクロ遊介に最早言うべきことはない。対して、敗北が迫る遊介にもまた出てくる言葉はなかった。
「バトルだ」
「罠カード『ドップラー・フェーズ・コーティング』」
これは防がれる。それを分かり切っているからこそ、遊介の声に覇気はない。
「無駄だ。プリズムフォースの効果! その罠の発動は無効にさせてもらう。プリズムリフレクション!」
放たれる光。
「罠カードを無効にしたことで、そのカードを再びセット。お前は1000のダメージを受ける」
襲い掛かる雷撃。
遊介 LP1400→400
「マスター!」
響き渡る悲鳴。
そして、ファイアウォールドラゴンは破壊される。
今の遊介がファイアウォールドラゴンを失えば、もはや勝機はない。
「プリズムフォースで、ファイアウォールドラゴンを攻撃!」
勝利を確信したシンクロ遊介は、勝負を決める1撃を撃ち放つ。
エリーは目を閉じた。
己のマスターの敗北を見たくないから。
――――。
エリーが次に目を開けた時。
そこには、攻撃をされたはずのマスターが、未だLPを0にしていない状態で立っていた。
「なんで……?」
「そもそもおかしいとは思わなかったか?」
遊介があそこで『ドップラー・フェーズ・コーティング』を使用する意味はない。なぜなら、そもそも防がれるから、ということに加え、発動してしまえば、そこで遊介の負けが決まる。
発動さえしなければ、攻撃を受けても遊介のLPは残っていたはずなのだ。
しかし、そうはしなかった。遊介は自らLPを削ったのだ。
勝つために。
「さっき破壊されたトラップカード。その名は『ファイアウォール・プロテクト』。このカードはサイバースモンスターへの攻撃を無効にし、自分フィールド上のサイバースモンスター1体の攻撃力を次の俺のターンのエンドフェイズまで800アップする効果をフィールドで発動できる」
「そのカードは破壊しただろう?」
「だが、ファイアウォールドラゴンがフィールドにいる時のみ、このカードはさらなる効果を2つ発揮する。1つは、お互いのスタンバイフェイズ、墓地のサイバースリンクモンスターを除外し、このカードを自分フィールド上にセットする。そしてもう1つ。これが今発動する効果だ!」
遊介の目には、先ほどの意気消沈した状態からは想像できないほどの光を帯びている。
その目をエリーは知っている。
闇に世界の激闘の中で、あの目をしたマスターは――勝つ!
遊介は叫ぶ。己の逆転へ道標を。
「2つ目。相手モンスターの攻撃宣言時、墓地のこのカードを除外! このターンのバトルフェイズを強制終了する。その後、フィールド上で表側表示で存在するモンスターの効果を無効にする!」
「な……んだとぉ! マジか!」
この反撃はシンクロ遊介にとっても予想外だった。
遊介の先ほどの意気消沈はすべて、演技だったのだ。
守護竜は発動した罠の力を得て、再び翼に炎の壁を展開する。そこから放たれるのは、いつも自身の効果で放たれる電撃の攻撃をさらに拡張した怒涛の雷撃。
それをまともに受けた戦士は、倒れはしないものの、苦悶の叫びをあげる。
己の権能を封じられる自らのエースを、目を見開いて刮目するシンクロ遊介。
してやったり。という顔で遊介は声をあげる。
「どうだ?」
「……驚いたぜ」
「それは良かった。俺としては破壊されてもされなくても良かったってことだ」
「ピエロめ」
「勝つためならその程度はする」
感情の凹凸による相手の誘導。それは実はヴィクターがよくやる手法の1つであり、本人曰く、人は感情と切り離せない生物だからこそ、相手の感情を読み取って行動を起こすこともあるから、それを利用しない手はないだろう、と、遊介は聞いている。
もっともこれは誘導というわけではなく、シンクロ遊介が攻撃を躊躇わなければ、結局はこの結果になった。遊介が意気消沈して見せたのは単に驚かせるためだという意味合いが強い。
「やってくれたなぁ!」
そして騙された方のシンクロ遊介は悔しそうにしながらも、一方で楽しそうな顔もしていた。
「いいぜお前。俺が考えていたよりは随分とイケるやつになってきたな」
シンクロ遊介のこの言葉は、遊介にはさほど意味のない言葉に聞こえた。
しかし、ここには確かに意味があった。
シンクロ遊介が「イケるやつ」という相手は、真に彼が戦うべき敵に送る言葉である。つまりここまでのデュエルを見て遊介はシンクロ遊介の雑魚判定を覆したということ。
「後はこのままイケる状態で俺を倒せるかどうかだぜ?」
もっともそんな個人的な話が遊介が知る由もない。
「そうだな。お前が俺を雑魚っていった評価、覆してやるさ」
遊介はシンクロ遊介に宣言する。
「ファイアウォールプロテクト、3つ目の効果を使用した時、自分のライフが1000を下回っている場合、デッキからサイバース族のレベル4以下モンスターをデッキから1枚手札に加える、俺はクロックワイバーンを手札に加える」
その効果を聞き届けたシンクロ遊介は、
「なら、楽しみに次のターン、待つことにするさ。ターンエンド」
とターンの終了を宣言する。
シンクロ遊介 LP1200 手札1
モンスター ⑦ AFW・プリズムフォース
魔法罠
(シンクロ遊介)
□ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ メインモンスターゾーン
⑦ ⑧ EXモンスターゾーン
□ □ □ メインモンスターゾーン
□ ■ □ 魔法罠ゾーン
(遊介)
ターン7
「俺のターン!」
遊介はデッキからカードを引く。
引き当てたのはレベル4のビットルーパー。今手札にあるカード2枚では残念ながらそプリズムフォースを突破できない。
しかし、遊介は思う。
(このターンが、あのプリズムフォースを倒すラストチャンスだ……!)
次のターンを許せば、自分で言っている通り、1枚から新たな攻め手で攻撃されさらに不利になる。その予感があるからこそ、このターンにできれば決着をつけたいところ。
「行くぞ!」
己に気合を入れ、Dボードを加速し始める。
「お前、何を?」
「忘れがちかもしれないが、スキルにはレベルがある」
「つまり、お前が使うのはストームアクセスではないと?」
「ああ、見せてやる。これがアップデートされたスキルだ!」
データストームと名付けられた竜巻が吹き荒れる。まるで遊介の呼びかけに答えるように。そして遊介はその中に飛び込んだ。
膨大な電脳世界の情報リソース。
遊介の新たなスキルは、それを利用する際の可能性を広げるスキルだった。
「行くぞ……! スキルレベル2! ハイストームアクセス! 自分のライフが1000以下の時、手札のモンスター1体を裏側表示でゲームから除外する! その後、データストームからランダムにレベル4以下のサイバースモンスターを1体手札に加える!」
吹き荒れる嵐に手を伸ばす。そして先ほどドローしたモンスターを除外し、新たなカードを手に加えるため、その発動を宣言する」
「俺はビットルーパーを除外! 風を掴む! ハイスト―ムアクセス!」
嵐の中に突っ込んで、わざわざカードを引き出す。
シンクロ遊介は初めてその光景を見て、
「傍から見ると、あれ、正気の沙汰じゃねえな」
と、自分と同じ顔をしながら嵐から脱出した遊介を評した。
そして、その遊介は自分のターンを開始する。
「行くぞ。クロックワイバーンを召喚!」
遊介が召喚したのは、今手札に加えた新たなモンスターではなく、先ほど手札に加えたモンスター。ワイバーンという名前の通り、竜の姿をしたモンスターだ。
クロック・ワイバーン レベル4 攻撃表示
ATK1800/DEF1000
「クロックワイバーンの効果! 自身の攻撃力を半分にして、自分フィールドにクロックトークンを特殊召喚する!」
クロック・ワイバーン ATK1800→900
クロックトークン レベル1 守備表示
ATK0/DEF0
「そしてデータストームによって手に入れたモンスター、コードラジエーターの効果。コードトーカーモンスターをリンク召喚するとき、手札のこのモンスターも素材にできる」
「つまり、素材は3体分あるってことか」
シンクロ遊介の言葉に頷き、遊介は召喚を宣言する。
「さらに現れろ、未来を導くサーキット。召喚条件はサイバース族モンスター2体以上! 俺は、クロックワイバーン、クロックトークン、そして手札のコードラジエーターの3体をリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン! リンク召喚! 現れろ! リンク3、エクスコードトーカー!」
未来を導くサーキット、そこから現れたのは闇の世界で手に入れ、遊介を今も支え続ける、緑のエースモンスター。
エクスコード・トーカー
リンクマーカー 上、左 右
LINK3/ATK2300
「ここで新たなコードトーカー……」
シンクロ遊介が手に入れていた情報ではこれもまた知り得ないカード。
(闇の世界で、よほどの実りがあったようだな……!)
シンクロ遊介の予想通り、遊介は確実にレベルアップして帰ってきている。
その修業成果こそ、かつてでは倒し得ない相手を倒すに至るこの瞬間。
「エクスコードトーカーのリンク先にいるモンスターの攻撃力は500アップ。よってファイアウォールドラゴンの攻撃力は500アップ!」
ファイアウォール・ドラゴン ATK2500→3000
「攻撃力が……!」
プリズムフォースにもファイアウォール・ドラゴンにも言えることだが、効果に文句はなくとも、攻撃力は十分高いとは言えない。それを補う方法があればよいが、ないと、この状況のように、あっという間に攻撃力を凌駕される。
しかし、遊介はその先を見据えている。
「そして、コードラジエーターの効果。このカードがコードトーカーのリンク素材になって墓地に送られたとき、相手モンスター1体を対象に発動する。そのモンスターの攻撃力を0にする! 俺は当然、プリズムフォースを対象にする」
光の戦士はその効果により、輝きが極限まで弱まっていく。その姿を後ろから見たシンクロ遊介は、寂しそうにその背中をただ見守った。
AFW・プリズムフォース ATK3500→0
「攻撃力0って、、本格的にこれはぁ……」
「やばいって?」
「……くそ、まさか負けるとは」
シンクロ遊介はため息をつく。手札を持つ手も、だらんとしたに落とし、空を見上げた。
対して遊介は今から倒すべき相手をしっかりと見つめる。
今度こそ、凄まじい力を見せたそのモンスターを破壊するために。
「バトルだ。ファイアウォールドラゴンで、アーティフィシャルウォリアー、プリズムフォースを攻撃!」
標的に指をさす。守護竜はそれに応え、再び翼を変形させた。
撃ち放つは、すべての敵を撃ち払う、嵐を巻き起こすほどのエネルギーを携えた紅蓮の火炎。
「テンペストアタック!」
その業火は、遂に、光輝の戦士を焼き尽くした。
(勝)ファイアウォール・ドラゴン ATK3000 VS AFW・プリズムフォース ATK0(負)
そしてその攻撃の衝撃を直々に受けて、シンクロ遊介は衝撃に耐えきれず墜落する。
「……やっぱ初手が弱かったか。楽しかったぜサイバースの遊介!」
シンクロ遊介 LP1200→0
シンクロ遊介は衝撃に耐えきれず、下へと墜落していった。
「マスター」
嬉しそうに近づくエリー。主の勝利の己が勝利のように喜ぶエリーを見て、がっかりさせなくてよかったという安堵感に遊介は浸っていた。
先ほどまで包囲をしていた解放軍も、シンクロ遊介の敗北を見て散っていた。
「やっぱりマスターは強いです! あんな奴、敵じゃないですね」
しかし、それには遊介は反論をせざるを得ない。
「いや、どうだろう」
「勝利したではありませんか」
「それなんだけど、腑に落ちないことがあるんだ」
「腑に落ちないこと?」
「あいつ、手札をずっと1枚残してた。それに、スキルも使ってない。もしかすると本気じゃないのかもしれない」
「あ……たしかに……」
デュエリストとしてはその真意を考えずにはいられない。
しかし遊介は迫るエリーの故郷の危機を優先することにした。
「今考えても仕方がない。行こう、エリー。光の世界に加勢だ」
「はい。了解です」
Dボードを再び加速させ、ようやく懐かしき光の世界へと突撃していく。
***************************************
「お前」
デュエルディスクから流れてくる音声を、墜落したシンクロ遊介は聞いていた。
「良助。どうだ光の世界は」
「その前にお前のことだ。聞いてたぞ、全部」
「まじで……いやあ、これは恥ずかしいところを」
「お前、なんでスキル使わなかった?」
「スキルかぁ。俺、あれ邪道な感じがして嫌なんだよね。やっぱデュエリストならカードで戦わないと。それにほら、アゼルは、遊介の危険度知りたいって言ってたからさ。あいつが本気を出せるようにってことでひとつ」
「手札の『シンクロ・リフレクト』使わなかったのもそれか?」
「そうゆうこと、それにさ、楽しかったからいいんだよ」
シンクロ遊介は遠くなっていく遊介を見ていった。
「アイツはイケるやつだ。まだまだ生かしておく価値がある。イリアステルとの戦いに向けて、まだ死なれても困る、って言えるくらいには強かったぜ」
「アゼルには伝えておく。けど、わざと負けなんて」
「いいや。あれは負けだよ。俺はあれでも勝てると思ったからそうした。その判断がミスだった。だから俺の負け。あいつは強かったよ」
「……いいのかよ。ライフも減ったんだぞ」
「いいよ」
シンクロ遊介は天を仰ぎながら口を開いた。
「俺はプロだった男だ。今は腐っているとしてもな。だから、楽しむためのデュエルと、人を殺すためのデュエルは使い分ける。それくらいのプライドはまだ残ってるさ」
良助は、
「なあに格好つけてんだ。さっさと合流しろよ?」
と、厳しく一蹴し通信を切った。
「ははは、結構最後のは本気で言ったつもりだったんだけどな」
シンクロ遊介はへらへらと笑いながら、再びDボードに乗り、光の世界を低空飛行で目指し始めた。
長い……。
しかし後悔はしていません。だってこの2人とデュエルは、第2シーズン開幕にふさわしい激闘にするつもりでした。いかがだったでしょうか。遊介も成長しています。以前に比べれば少しは主人公らしくなったように見えたでしょうか?
さて、遂にファイアウォール・ドラゴンがOCGで禁止になってしまいました。アニメでは不遇の扱い、OCGでは牢屋行き。さすがにこの話でも1度扱いを考え直さなければならないかもと不安に駆られましたが、結局ファイアウォール・ドラゴンはこのまま使っていくことに決定しています。なので、禁止カードを出すのはNGなどとは言わずに、せめて扱いだけはこの話の中では優遇していきたいと思います。
その優遇の1つが専用サポートカードの使用です。今回はオリジナルカードで表現しましたが、最近ではアニメでもファイアウォール・ガーディアンという期待の新星が来てくれたので、今からどう使うか考えている最中です。
ちなみに作中の『ファイアウォール・プロテクト』の効果は以下の通りです。
『ファイアウォール・プロテクト』 通常罠
②③の効果は、「ファイアウォール・ドラゴン」が自分フィールド上に表側表示で存在する場合に発動できる。①相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にする。その後自分フィールド上のサイバース族モンスター1体を選択し、そのモンスターの攻撃力を、次の自分のターン終了時まで800ポイントアップする。②自分、もしくは相手のスタンバイフェイズ時、墓地のサイバース族リンクモンスター1体を除外して発動する。このカードを自分フィールド上にセットする。この効果でセットしたこのカードはセットしたターンに発動できる。③相手の攻撃宣言時、このカードを墓地から除外し、ライフを半分支払って発動する。このターンのバトルフェイズを終了する。その後、自分のライフが1000以下のならば、デッキから、レベル4以下のサイバース族モンスター1体を手札に加える。
こんな感じのカードを今後も使っていきながら、ファイアウォール・ドラゴンを輝かせることを考えています。
次回で遊介君は本当に光の世界に帰還します。ようやく仲間と再会するわけですね。ちなみに次の遊介君デュエルまでは、2回、間を挟みます。仲間の活躍が続くのでそこはご了承ください。
(アニメ風次回予告)
解放軍の襲撃に割って入ったのは3人目の遊介。エクシーズ世界を滅ぼしたという最悪の裏切り者。彼はかつての同胞にこう語る。生き抜くために裏切ることの何が悪いと。それが黒竜の逆鱗に触れることも知らずに。
「勝負だ遊介。多くの同胞の無念を受けろ!」
次回 遊戯王VRAINS ~『もう1人のLINKVRAINSの英雄』~
「レジスタンスの裏切者」
イントゥ・ザ・ブレインズ!